説明

乗客コンベア

【課題】本発明は、製作が容易で欄干パネルの拡幅を実現し手荷物の移動に伴う手摺への衝突を回避できるのは勿論のこと、欄干の機械的強度の確保が簡単な乗客コンベアを提供することにある。
【解決手段】本発明は、左右の移動手摺21の対向間隔H2よりも広い間隔H1で設置された平坦な欄干パネル24と、この欄干パネル24と移動手摺21との間に生ずる段差を塞ぐ傾斜部材50と、これら移動手摺21と欄干パネル24と傾斜部材50とを支持し前記欄干パネル24よりも外側に設置した支柱22とを備えた左右の欄干20を設けたのである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレーターや電動道路等の乗客コンベアに係り、特に、欄干の実有効幅の拡大に好適な乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、左右の欄干に設けた欄干パネルの対向間隔を広げて欄干実有効幅を拡大し、乗客の手荷物などがぶつかり難くした技術は、例えば特許文献1によって既に提案されている。
【0003】
【特許文献1】W02003/048021号公報(第5図及び第7図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術においては、乗客の手荷物が欄干パネルにぶつかる機会を少なく出来る点で、余裕を持って乗客コンベアに乗ることが出来る。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の第5図に記載の技術は、移動手摺よりも外側に拡幅された欄干パネルが、拡幅するための凹部とその周縁部に傾斜部を形成した、いわゆる椀形状をなしているため、製作に多大な時間と労力を有していた。また、上記特許文献1の第7図に記載の技術は、移動手摺よりも外側に欄干パネルを配置し、この欄干パネルをガラス等で形成し、かつ支柱を廃止して欄干の強度を欄干パネルで確保したものである。しかしながら、図7に示す欄干では、乗客が移動手摺を握って揺らした場合に欄干パネルが容易に撓んでしまい、破損に至る危険性を有している。また、この欄干パネルの撓みを防止するために、欄干パネルを厚くすると欄干パネル自体が高価となり、加工にも多大な時間と労力を有するという課題があった。
【0006】
本発明の目的は、製作が容易で欄干パネルの拡幅を実現し手荷物の移動に伴う手摺への衝突を回避できるのは勿論のこと、欄干の機械的強度の確保が簡単な乗客コンベアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、左右の移動手摺の対向間隔よりも広い間隔で設置された平坦な欄干パネルと、この欄干パネルと移動手摺との間に生ずる段差を塞ぐ傾斜部材と、これら移動手摺と欄干パネルと傾斜部材とを支持し前記欄干パネルよりも外側に設置した支柱とを備えた左右の欄干を設けたのである。
【発明の効果】
【0008】
上記構成のように、平坦な欄干パネルと傾斜部材を用いているので、欄干パネルを椀形状に形成する必要はなく、その結果、製作が容易で欄干パネルの拡幅を実現し手荷物の移動に伴う手摺への衝突を回避することができる欄干を得ることができる。また、前記欄干の機械的強度は支柱によって確保できるので、欄干パネルを厚くして機械的強度を持たせる必要はなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明一実施の形態である乗客コンベアを、図1〜図4に示すエスカレーターに沿って説明する。
【0010】
一般にエスカレーター1は、建築物の上階2と下階3に跨って設置された主枠4をベースに構成されている。主枠4の上階2側には上部機械室となる上部水平部10が形成され、下階3側には下部機械室となる下部水平部11が形成され、上部水平部10と下部水平部11との間には傾斜部12が連結されている。一般的に、上部水平部10の上部と下部水平部11の上部は、夫々乗客が乗り降りするための乗降床10F,11Fで塞がれている。
このように構成された主枠4の上部水平部10と下部水平部11の乗降床10F,11Fの下には、夫々一対の主スプロケット13と従スプロケット14とが軸支されている。前記主スプロケット13と従スプロケット14には無端状の踏段チェーン17が巻掛けられ、この踏段チェーン17に踏段18が連結されている。また、前記主枠4には、踏段18の移動方向両側に沿って欄干20が立設されており、この欄干20の周縁には踏段18と同じ方向に同一速度で回動する移動手摺21が案内されている。欄干20は、前記主枠4に立設された支柱22と、この支柱22の上端に固定具28を介して固定された手摺枠23と、この手摺枠23の周縁に案内されて移動する移動手摺21とが支持されている。前記支柱22の踏段18側には、直線状の平坦な欄干パネル24が位置し、この欄干パネル24の手摺枠23側には、手摺枠23と欄干パネル24との間の段差部を傾斜状に結ぶ傾斜板50を設置している。傾斜板50は欄干パネル24に対し、ボルト29で固定している。一方、欄干20の下方には、欄干パネル24の下部を被う内デッキカバー26と、この内デッキカバー26と前記踏段18との間を仕切るスカートガード27とが設けられており、前記手摺枠23の外側には外デッキカバー25が設けられている。
また、左右の欄干20の前記欄干パネル24が対向する間隔H1は、前記移動手摺21の対向する間隔H2よりも大きくしている。尚、欄干パネル24と手摺枠23との間に設置した傾斜板50は、手摺枠23と欄干パネル24との間の段差を滑らかに結ぶ傾斜状にして乗客の手荷物が手摺枠23等にぶつからず、矢印Cに示すように、円滑に移動方向が変更されるように案内することができるように構成してある。
このように、欄干パネル24は、従来の傾斜部を有した凹形状から直線状の平坦な形状にすることで、製作が容易で生産性を高めることが出来る。また、欄干パネル24の外側に配設した支柱22によって移動手摺21、手摺枠23、外デッキカバー25や傾斜板50を支持したことで、乗客が移動手摺21を握ったり、揺すったりしたことにより生じる応力は支柱22で負担できることから、欄干パネル24での負担がほとんどなくなり、欄干パネル24を厚く形成する必要はなくなる。また、乗客の手荷物が傾斜板50に接触して方向を変更されるときに、傾斜板50に作用する応力も支柱22によって支持できるので、欄干パネル24にその応力を全て分担させる必要はなくなり、欄干パネル24を厚く形成する必要はなくなる。
【0011】
ところで、上記実施の形態は、乗客コンベアとしてエスカレーターを一例に説明したが、
踏板間に段差を生じさせない電動道路にも適用できるのは勿論であり、その場合には、上
記実施の形態の説明及び請求の範囲に記載の踏段を踏板と読み替えることで対応できる。
【0012】
以上説明した様に、本発明によれば、製作が容易で欄干パネルの拡幅を実現し手荷物の移動に伴う手摺への衝突を回避でき、欄干の機械的強度の確保が簡単な乗客コンベアを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による乗客コンベアの一実施の形態を示す概略縦断側面図。
【図2】図1の乗客コンベアにおける上部の欄干部分を示す拡大図。
【図3】図1のA−A線に沿う縦断拡大図。
【図4】図2のB−B線に沿う横断拡大図。
【符号の説明】
【0014】
1…エスカレーター、2…上階床、3…下階床、4…主枠、10…上部水平部、11…下部水平部、10F、11F…乗降床、13…主スプロケット、14…従スプロケット、17…踏段チェーン、18…踏段、20…欄干、21…移動手摺、22…支柱、23…手摺枠、24…欄干パネル、25…外デッキカバー、26…内デッキカバー、27…スカートガード、28…固定具、29…ボルト、50…傾斜板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結されて循環回動する踏段と、前記踏段の移動方向の両側に沿って立設された左右の欄干と、これら欄干の周縁に手摺枠を介して案内され前記踏段と同一方向に同一速度で回動する移動手摺とを備えた乗客コンベアにおいて、前記左右の欄干を構成する欄干パネルの対向間隔を、前記左右の欄干における前記移動手摺の対向間隔よりも広く形成するとともに、前記移動手摺を案内する手摺枠と前記欄干パネル面とをつなぐ傾斜板を設け、前記欄干パネルよりも外側に前記手摺枠と前記傾斜板を支持する支柱を設けたことを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
前記欄干の長手方向の終端部においては、前記傾斜板によりパネル内面と前記移動手摺を案内する手摺枠との間を徐々に前記移動手摺の間隔に接近するように形成したことを特徴とする請求項1記載の乗客コンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−308288(P2008−308288A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157563(P2007−157563)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【Fターム(参考)】