説明

乗用型作業機の操作装置

【課題】乗用型作業機の運転席周りの操作スペースを確保できると共に、運転席の側方に形成された側面パネルから運転席に向けて突出した操作レバーの良好な操作性を確保できる。
【解決手段】運転席の側方に形成された側面パネルAと、側面パネルAから運転席に向けて先端が突出した操作レバーBと、を備え、操作レバーBは、略直角の回動角度で作業装置の動作ON/OFF状態を切り替え可能であり、長手方向に延びる直線状の柄部b1とその先に形成される先端部b2とからなり、作業装置の動作ON状態と動作OFF状態の一方の状態で、柄部b1の長手方向に延びる一方の辺b1aの大半を側面パネルAの内側に納め、先端部b2が、一方の辺b1aの先端側に繋がり、操作レバーBの操作方向に対向する操作辺b2aを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体の前側に運転席を備えると共に機体の後側に作業装置を備えた乗用型作業機の運転席周りに設けられる操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗用型作業機は、機体の前側に備えられた運転席に作業者が乗り、機体を進行させながら、或いは、機体を移動させた後に、機体の後側に備えられた作業装置を操作するものであり、防除作業、施肥・播種作業、移植作業、散水等の管理作業等を行うものである。
【0003】
このような乗用型作業機の運転席の周りには、機体を走行させるための走行操作と作業装置の作動操作を行う操作装置が設けられている。この操作装置には、各種の操作レバーや操作スイッチが装備された操作パネルや、変速操作を行うための変速レバーが、運転席の周りに配備されている。
【0004】
このような乗用型作業機の一例としては、果樹園などの立木(樹木)に薬剤などを効率的に散布する乗用型防除機が知られている。この乗用型防除機は、機体の前側に運転席を備え、機体の後側に薬剤などを散布するための散布装置が備えられている。この乗用型防除機の運転席周りの操作装置としては、変速レバーが設けられていると共に、薬剤等の散布レバーが設けられている(下記特許文献1参照)。
【0005】
このような乗用型作業機の操作装置における操作レバーは、機体の後方に備えられた作業装置の作動状態を確認しながら操作できるように、運転席の側方に設けられることが多い。操作パネルの配置スペースとしては、運転席の前側にもスペースはあるが、作業者が横又は後を向いて作業装置の作動状態を確認しながら、レバー操作を行うためには、運転席の側方に形成される側面パネルに操作レバーを設ける方が都合がよい。
【0006】
図1は、従来の乗用型作業機の操作装置を示す説明図である。この従来技術では、変速レバー100を操作する作業者の片手(主に、左手)を、この変速レバー100から少しずらすように移動させることによって、操作レバー110に届いて、この操作レバー110を上下に回動させることで、作業装置の動作ON/OFFの切り替え操作を行うことができるようにしている。この操作レバー110は、変速レバー100の近くで、運転席の側方に形成された側面パネル120から運転席に向けて先端が突出しており、上下に回動操作されるものである。
【特許文献1】特開平8−107744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した乗用型作業機は、果樹園等の圃場内を走行するため、立木等の障害物を避けて走行する必要があることから、機体幅を可能な限り狭くすることが要求されている。特に、前述したような乗用型防除機においては、立木の間を通り抜けながら薬剤等の散布作業を行うので、機体の前方を先端に向けて略流線形に絞り込んだ形状にすることで圃場内での良好な走行性を得ることができる。
【0008】
しかしながら、乗用型作業機の機体幅を狭くした場合や、機体の前方を略流線形に絞り込んだ形状にした場合には、必然的に運転席周囲の空間が狭くなり、運転及び作業装置の操作性が悪化する問題が生じる。
特に、図1に示した従来技術のように、運転席の側方に形成された側面パネル120から操作レバー110を運転席に向けて突出させているものでは、操作レバー110の突出量が大きいとそれによって運転席周りの操作スペースが食われて操作性が悪化する問題が生じる。
また、前述したように、乗用型防除機などでは作業装置の動作確認の都合上、操作レバー110を運転席の側方に設けることが要求されるので、機体幅を狭くした場合には、操作レバー110の突出量が大きく影響して運転席周りのスペースを圧迫することになる。
【0009】
更に、図1に示すように、操作レバー110の近傍に変速レバーを配備する場合には、操作レバー110の突出量が大きいと、操作レバーとの干渉を避けるために変速レバー100を運転席側に近づけることが必要になる。これによって、運転席に座る作業者に圧迫感を与えるばかりか、窮屈な状態での運転及び作業装置の操作を強いられるので、更に操作性が悪化する問題が生じる。
【0010】
一方、一般に操作レバー110は、図1に示すように、長手方向に延びる柄部を備えており、柄部の長手方向に延びる一対の辺110a,110bに指を掛けてレバー操作を行うことから、側面パネル120から柄部の各辺110a,110bをある程度突出させておくことが必要である。
【0011】
このような操作レバー110では、運転席周りの操作スペースを確保するために、操作レバー110を短くすると、柄部の各辺110a,110bが短くなってそこに指が掛からなくなり、操作レバー110の操作性が悪化する問題が生じる。特に、図1に示すように、操作レバー110の先端部110cを丸加工したものでは、柄部の長手方向に延びる各辺110a,100bを短くすると、滑り易い先端部に指を掛けることになるので、著しく指の掛かりが悪くなり、満足する操作性が得られなくなる問題が生じる。
【0012】
本発明は、このような問題に対処するために提案されたものであって、乗用型作業機の運転席周りの操作スペースを確保できると共に、運転席の側方に形成された側面パネルから運転席に向けて突出した操作レバーの良好な操作性を確保できること、運転席に座る作業者に圧迫感を与えることなく、変速レバー及び操作レバー等の良好な操作性を得ることができること、を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような課題を解決するために、本発明は、機体の前側に運転席を備えると共に機体の後側に作業装置を備えた乗用型作業機の運転席周りに設けられる操作装置であって、前記運転席の側方に形成された側面パネルと、該側面パネルから前記運転席に向けて先端が突出した操作レバーを備え、前記操作レバーは、略直角の回動角度で前記作業装置の動作ON状態と動作OFF状態を切り替え可能であり、長手方向に延びる直線状の柄部とその先に形成される先端部とからなり、前記作業装置の動作ON状態と動作OFF状態の一方の状態で、前記柄部の長手方向に延びる一方の辺の大半を前記側面パネルの内側に納め、前記先端部が、前記一方の辺の先端側に繋がり、前記操作レバーの操作方向に対向する操作辺を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このような特徴によると、乗用型作業機の運転席周りの操作スペースを確保できると共に、運転席の側方に形成された側面パネルから運転席に向けて突出した操作レバーの良好な操作性を確保できる。また、運転席に座る作業者に圧迫感を与えることなく、変速レバー及び操作レバー等の良好な操作性を得ることができる。
【0015】
更には、変速レバーのシフト変換操作を行うときに、変速レバーを握る作業者の手と操作レバーとの干渉を抑えて、なおかつ、作業者が操作レバーに指先などを掛けて操作する際の操作性を向上させることができる。また、後方の作業装置の作動状態を確認しながら操作レバーを操作するために、運転席の側方に操作レバーを設けたものでも、良好な操作空間を確保と操作レバーの操作性確保の両方を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図2は、本願発明の実施形態の基本構成及び作用を説明する説明図である。本発明の実施形態に係る乗用型作業機の操作装置は、機体の前側に運転席を備えると共に機体の後側に作業装置を備えた乗用型作業機の運転席周りに設けられることを前提としている。そして、この操作装置は、運転席の側方に形成された側面パネルAと、この側面パネルAから運転席側に向けて先端が突出した操作レバーBとを少なくとも備えている。
【0017】
この操作レバーBは、略直角の回動角度で乗用型作業機における作業装置の動作ON状態(例えば、B2の状態)と動作OFF状態(例えば、B1の状態)を切り替え可能であり、長手方向に延びる直線状の柄部b1とその先に形成される先端部b2とからなっている。図示のCは、作業装置の動作切替部であり、例えば、乗用型防除機の場合には、開閉弁部に相当するものである。
【0018】
このような操作レバーBは、作業装置の動作ON状態と動作OFF状態の一方の状態で、柄部b1の長手方向に延びる一方の辺b1aの大半が、側面パネルAの内側に納められている。
また、この操作レバーBの先端部b2が、前述した一方の辺b1aの先端側に繋がり、操作レバーBの操作方向(矢印方向)に対向する操作辺b2aを有している。
【0019】
このような実施形態によると、作業装置の動作ON状態と動作OFF状態の一方の状態で、操作レバーBの柄部b1における一方の辺b1aの大半を側面パネルAの内側に納めて、操作レバーBの側面パネルAから突出した部分を少なくすることで、波線で示した従来の操作レバーに対して突出量を小さくすることができる。
これによって、運転席周りの操作スペースにある程度の余裕を作ることが可能になり、乗用型作業機の機体幅を狭く設計する場合や機体の前側を略流線形に絞り込む場合にも、運転席周りに適当な操作スペースを確保することができる。
【0020】
更には、操作レバーBの先端部b2が、一方の辺b1aの先端側に繋がり、操作レバーBの操作方向に対向する操作辺b2aを有するので、側面パネルAから主に先端部b2のみが突出している状態であっても、作業者はこの操作辺b2aに指を掛けることによって、滑ることなくレバー操作を行うことができる。特に、操作レバーBの操作辺b2aを、操作レバーBの操作方向に対して略垂直の直線辺又は操作レバーBの操作方向に向けて凹状の曲線辺とすることで、良好な指の掛かりを得ることができる。
【0021】
つまり、このような実施形態においては、乗用型作業機の運転席周りの操作スペースを確保できると共に、運転席の側方に形成された側面パネルAから運転席に向けて突出した操作レバーBの良好な操作性を得ることができる。
【0022】
また、本発明の実施形態では、操作レバーBの前述した操作辺b2aは、作業装置の動作ON状態と動作OFF状態の他方の状態(例えば、図示のB2の状態)で、側面パネルAと略平行になるように構成されている。
すなわち、図示B1の状態で略水平になっている操作辺b2aは、操作レバーBの略直角の回動によって図示B2の状態になると、側面パネルAと略平行の状態になる。
【0023】
これによると、操作レバーBが、作業装置の動作ON状態とOFF状態の一方の状態から他方の状態に切り替えられた場合に、前述した操作辺b2aが側面パネルAと略平行になって、更に運転席側の空間を大きく取ることができる。したがって、この状態では、変速レバーの操作などの他の操作を行うスペースを適正に確保することができる。
【0024】
更に、本発明の実施形態では、操作レバーBの先端部b2は、柄部b1の長手方向に延びる他方の辺b1bを直線上に延長した延長辺b2bを有し、前述した操作辺b2aの先端が延長辺b2bに繋がるように構成されている。
【0025】
これによると、操作レバーBが、作業装置の動作ON状態とOFF状態の一方の状態から他方の状態に切り替えられた場合(例えば、図示B2の状態)に、延長辺b2bが側面パネルAから適量だけ突出することになり、作業者は、この延長辺b2bに指を掛けて操作性良く操作レバーBの切り替えを行うことができる。
【0026】
以上、説明した本発明の実施形態においては、操作レバーBの操作方向は、上下方向であっても左右方向であっても良い。また、図1には、操作レバーBが下方位置にあるときに前述した操作辺b2aが略水平状態になり、上方位置にあるときに前述した操作辺b2aが略垂直状態になる場合を示しているが、本発明の実施形態は、これに限らず、操作レバーBが上方位置にあるときに前述した操作辺b2aが略水平状態になり、下方位置にあるときに前述した操作辺b2aが略垂直状態になるもの等を含むものである。更に、本発明の実施形態における操作レバーBは、矩形断面のものに限られるものではなく、円形断面又は長円形断面のものであってもよい。また、操作レバーBが円形断面又は長円形断面の場合には、側面パネルAに沿った操作方向に直交する方向から見た平面視によって、前述した辺b1a,b1b、操作辺b2a、延長辺b2bを特定することができる。
【0027】
以下に、本発明の実施形態として、乗用型防除機(スピードスプレーヤ)の操作装置を例に説明するが、本発明は特にこれに限定されるものではない。しかしながら、乗用型防除機であるスピードスプレーヤの操作装置として、本発明の実施形態は特に有効であり、更には、運転席が設けられる機体の前方を略流線形に絞り込んだ形状のスピードスプレーヤにおいて、運転席周りの操作スペースを効果的に確保すると共に、操作装置の操作性向上を図るのに、本発明の実施形態は特に有効である。
【0028】
≪スピードスプレーヤの構成≫
図3は、本発明の実施形態が適用されたスピードスプレーヤの全体を示す平面図である。
図3に示すように、スピードスプレーヤSは、機体1の前側に運転席2が配置されるオープン型キャビン3(以後、単にキャビンと称する)を備え、後側(最後尾)に散布装置4を装備している。そして、キャビン3の直後に薬剤タンク(薬液タンク)5を装備し、この薬剤タンク5と散布装置4との間にはエンジンルーム6を装備している。
【0029】
ちなみに、エンジンルーム6の内部には、エンジン(図示省略)が収容されており、このエンジンは、後記する前輪9、後輪10の駆動源、散布装置4を構成する後述の送風機4aの駆動源となり、さらには薬剤供給ポンプなどの補機類の駆動源となるものである。
【0030】
また、スピードスプレーヤSは、運転席2の脇に操作装置の一要素である変速レバー7を備えており、この変速レバー7を前後に動かすシフト変換方向と略平行に立ち上がり、運転席2の側方に形成される側面パネル3aを備えている。そして、この側面パネル3aから運転席2に向けて先端が突出しており、後述する開閉弁部15の弁軸15aを回動支点として上下回動する操作レバー8が備えられている。
【0031】
また、スピードスプレーヤSの走行部は、機体1に前輪9,後輪10をそれぞれ備えている。この前輪9,後輪10は、ともにエンジンからの動力を受けて駆動する四輪駆動であり、なおかつ、ハンドル11からの操舵を受けて機体1を進行方向に向ける四輪操舵方式となっている。これにより、果樹園などにおける傾斜地での走行性、或いは立木などを避けた小回り性能などを高めるようにしている。
【0032】
≪キャビンの構成≫
図4は、本実施形態に係る操作装置が配備されるキャビンを斜め後方側から見た拡大斜視図であり、図5は、同縦断面図である。ここでは、図3を適宜参照しながら説明する。
キャビン3は、図3に示すように、ヘッドライド12が備えられている機体1の前側に形成されており、この機体1は、前方に向かって左右両側面を絞り込むように平面視で略流線形に形成されている。この機体1の前側において、機体1の右側(R)のみに出入りデッキ13となる開口が形成されている。
【0033】
このキャビン3は、図3〜図5に示すように、運転席2を備え、デッキ13とは左右逆側の機体側部1a側に、機体1の前後方向にシフト変換可能な変速レバー7を配置している。この変速レバー7は、フロアパネル(キャビン床)3cよりも高い段差部となるサイドパネル3bに設けられている。
【0034】
また、キャビン3には、図4に示すように、側面パネル3aから運転席2に向けて先端が突出しており、側面パネル3aの内側で後述する開閉弁部15の弁軸15aに接続され、上下に回動可能に設けられた、操作レバー8が配置されている。
【0035】
≪散布装置の構成≫
散布装置4は、図3示すように、送風機4aを備えている。この送風機4aは、図示省略の送風ファン、風胴、整流翼などによって構成されている。また、送風機4は、整流翼の送風方向の前方には整流翼を通過してくる気流を、機体1の左右両側および上方に向けて放射状に案内するための吐風口14を外周に沿わせて確保する略円形形状の案内筒(整流板)4bを備えている。
【0036】
そして、吐風口14に沿うように多数の散布ノズル(図示省略)が外向き放射状に配設されており、この散布ノズルから噴霧される薬剤は、吐風口14から放射状に吐き出される高速気流に乗って、機体1の左右両側および上方に向けて遠くまで拡散される。つまり、機体1を走行させることで果樹園などの立木の間を移動しながら、立木に対して効率的に薬剤などを散布することができるようにしている。
【0037】
≪操作レバーの構成≫
図6は、第1の実施形態に係る操作レバーを示す斜視図である。ここでは、図3から図5を適宜参照しながら説明する。
操作レバー8は、散布装置4の多数の散布ノズルから薬剤の噴霧を開始又は停止させる操作を行うもので、散布装置4の動作ON/OFFの切り替え操作を行うものである。薬剤の噴霧を開始又は停止させるためには、操作レバー8によって、側面パネル3aの内部に収容されている開閉弁部15を開弁又は閉弁操作する。
【0038】
なお、操作レバー8は、図4に示すように、機体1の前後方向に並列させた5ヶ所においてキャビン3の側面パネル3aから運転席2に先端が向くように配設されており、キャビン3の前面パネル3d側に備えられている比較的長尺の操作レバー8がメインレバーとなり、このメインレバーによる動作ON/OFFの切り替え操作によって散布装置4の駆動部(送風機4aおよび薬剤供給ポンプなど)を動作又は停止させる。
【0039】
そして、メインレバーを除く他の4ヶ所の操作レバー8における各開閉弁部15の開閉操作によって、四方に散布方向が向いた散布ノズルからそれぞれ薬剤等を噴霧させることができ、散布装置4の案内筒4bの外周にそれぞれ配置された散布ノズルから、同時噴霧或いは部分的な噴霧を行うことができるようにしている。
【0040】
操作レバー8は、図6に示すように、適宜の板厚さと板幅を有する金属材料或いは樹脂材料などからなる帯板材から形成され、必要に応じて基端部付近で略くの字形状に加工されて、その先端側に長手方向に延びる直線状の柄部8aと先端部8bが形成されている。
また、操作レバー8の基端側に形成される取付部8cには、側面パネル3aの内部に収容されている開閉弁部15の弁軸15aに対し、嵌合させて、該弁軸15aを一体に回動させるための略角型形状を呈している孔部16が設けられている。更に、取付部8bの外周2ヵ所には、操作レバー8の回動範囲(主に、90°範囲)を規制するための規制爪17が設けられている。
【0041】
また、操作レバー8の柄部8aは一対の辺8a1,8a2を有しており、操作レバー8の先端部8bは、柄部8aにおける一方の辺8a1の先端側に繋がり操作レバー8の操作方向に対向する操作辺8b1と、柄部8aにおける他方の辺8a2を直線的に延長した延長辺8b2を有している。そして、先端部8bの操作辺8b1の一端が延長辺8b2に繋がるように形成されている。図示の例では、操作辺8b1を直線辺としているが、これに換えて操作方向に向けて凹状の曲線辺にしてもよい。
【0042】
そして、操作レバー8は、図5に示すように、散布装置4の動作ON状態とOFF状態の一方の状態(図示では、操作レバー8の先端が下に向いた状態)で、柄部8aの長手方向に延びる一方の辺(下側辺)8a1の大半を側面パネル3aの内側に納めるようにし、先端部8bにおける下側辺は、主に前述した操作辺8b1のみが側面パネル3aから運転席2に向けて突出するようにしている。この状態では、操作辺8b1は略水平になっている。
また、散布装置4の動作ON状態と動作OFF状態の他方の状態(図示では、操作レバー8の先端が上に向いた状態)では、操作レバー8の上側の辺は、主に先端部8bの延長辺8b2のみが操作パネル3aから突出するようにしており、この状態では、操作辺8b1は略垂直になっている。
【0043】
なお、一例としては、図5において、実線で示す操作レバー8の操作待機位置(先端が下に向いた状態)が、散布装置4の散布動作が止まっている動作OFF状態であり、図示の二点鎖線で示す操作レバー8の操作待機位置(先端が上に向いた状態)が、散布装置4の散布動作が行われている動作ONの状態である。
【0044】
また、操作レバー8は、図6に示すように、必要に応じて柄部8aの先端側と先端部8bを外皮材19によって被覆してもよい。外皮材19としては、作業者が指先などを掛けたときに滑り難い材料で形成することが好ましい。これにより、散布装置4からの薬剤などの散布を開始させるときに、作業者は、略水平面の操作辺8b1に指先などを掛けて、操作レバー8を散布装置4の動作OFF側から動作ON側へと切り替え操作させることができる(図5の実線の状態から二点鎖線の状態)。
【0045】
このように形成されている操作レバー8を採用して、これを変速レバー7に近接させて、変速レバー7を前後に動かすシフト変換方向と略平行に形成された側面パネル3aから運転席に先端が向くように配置し、上下回動自在に装備することで、運転席2の脇に備えられる変速レバー7の配置を操作レバー8寄りに設定することができる。これにより、運転席2と変速レバー7との間隔I(図5参照)は広がり、運転席2の操作スペースを拡張することができ、変速レバー7のスムースなシフト操作が可能となる。
【0046】
運転席2の作業者は、散布装置4の動作OFF側から動作ON側に切り替え操作を行うときに、操作レバー8の先端側に設けられている略水平面である操作辺8b1に指を掛けて操作を行うことができる。これにより、操作レバー8の側面パネル3aからの突出量を小さくして、運転席周りの操作スペースを拡張した場合にも、操作辺8b1に指を掛けて確実に操作レバー8を操作することができる。また、操作辺8b1を滑り難い材料からなる外皮材19で被覆した場合には、操作時の滑りを抑え、操作レバー8の操作性をさらに向上させることができる。
【0047】
また、操作レバー8が、図5に示すように、散布装置4の動作OFF側から動作ON側に切り替え操作されたときに、直線部8b1は、略水平状態から略垂直状態になる。これによって、変速レバー7との間隔Iが更に広くなり、変速レバー7を握る作業者の手が操作レバー8に当たるなどの干渉を防ぐこともできる。これによると、変速レバー7を前後に動かすシフト変換の操作性を向上させることができる。
【0048】
図7は、操作レバーに関する別の実施形態を示したものである。この実施形態では、操作レバー8−1における操作辺8b1が、散布装置4の動作ON側において略水平状態となり、散布装置4の動作OFF側において略垂直状態となる。他の構成要素は前記した実施形態に係る操作レバー8−1と基本的に同じことから同じ構成要素に同じ符号を付することで重複した説明は省略する。また、操作レバー8−1以外の他の構成要素においても、前記した実施形態のスピードスプレーヤSと基本的に同じことから同じ構成要素に同じ符号を付することで重複した説明は省略する。
【0049】
このように形成されている操作レバー8−1を採用すると、図7に示すように、散布装置4の動作ON側(先端が上向きの状態)、そして動作OFF側(先端が下向きの状態)の双方待機位置において、変速レバー7との間隔Iが広くなり、変速レバー7を前後に動かすシフト変換の操作性を向上させることができる。
【0050】
なお、本発明の実施形態の具体的な構成は、前記した実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更などがあっても本発明に含まれることは言うまでもない。
例えば、操作レバー8,8−1を、丸型や角型などからなる棒材などを用いて形成することも可能であり、この場合の操作レバーの各辺は、操作方向に直交する方向からの平面視で特定することができる。
【0051】
なお、操作レバー8,8−1の操作辺8b1は、前述したように、図示のような直線辺であっても良いし、操作方向に向けて凹状になった緩やかな曲線辺であってもよい。このような曲線辺にすることで、凹部に指先が嵌ることで指の滑りを抑え、より良好な操作性を得ることができる。
【0052】
また、変速レバー7、操作レバー8,8−1などの操作装置が配置される運転席2を備えているキャビン3は、オープン型に限らず、周囲をドア,窓,屋根などで囲んだ閉鎖型キャビンとすることもできる。
【0053】
本発明の実施形態における作用効果をまとめると以下に示すとおりである。
(1)操作レバーの側面パネルからの突出量を少なくして、運転席側の操作空間を広く確保した場合にも、操作レバーの先端部に形成される操作辺又は延長辺に指を掛けて、滑ることなくレバー操作を行うことができる。
【0054】
(2)操作レバーの操作性を良好に保ったまま、操作レバーの側面パネルからの突出量を短くすることができ、その分、変速レバーを側面パネル側に配備することができる。これによって、運転席周りの操作空間に余裕を持たせることができる。
【0055】
(3)操作レバーの操作辺が、作業装置の動作ON状態又は動作OFF状態のいずれかで略垂直になるので、その際に運転席側の空間を広くすることができ、また、変速レバーとの干渉を避けることができる。特に、上下にレバー操作を行う場合に、操作レバーの上方切り替え位置で操作辺が略垂直になるようにすると、操作レバーの上方切り替え位置と変速レバーの操作部の高さが重なるような場合にも、変速レバーの操作空間に余裕を持たせることができる。
【0056】
(4)運転席周りの操作スペースに悪影響を与えることなく、機体幅を狭くするか、或いは機体の前方を略流線形状に絞り込むことができるので、操作装置の操作性を良好に保ったまま、乗用型作業機の走行性を向上させることができる。
【0057】
(5)本発明の実施形態は、後方を確認しながら散布作業を行うために操作レバーを運転席の側方に設けることが必要となる、スピードスプレーヤにおける運転席周りの操作装置として、特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】従来例を示す説明図(縦断面図)である。
【図2】本発明の実施形態に係る基本構成と作用を説明する説明図である。
【図3】本発明の実施形態を採用した乗用型防除機(スピードスプレーヤ)の全体及び運転席周りを示した説明図(平面図)である。
【図4】本発明の実施形態に係る操作装置が配置されるオープン型キャビンを斜め後方の外側から見たときの拡大斜視図である。
【図5】同オープン型キャビンの縦断面図である。
【図6】本発明の実施形態における操作レバーを示す斜視図である。
【図7】本発明の他の実施形態を示すオープン型キャビンの縦断面図である。
【符号の説明】
【0059】
A,3a:側面パネル、B,8,8−1:操作レバー、b1,8a:柄部、b2,8b2:先端部、b2a,8b1:操作辺、b2b,8b2:延長辺、1:機体、2:運転席、3:オープン型キャビン、4:散布装置(作業装置)、5:薬剤タンク、6:エンジンルーム、7:変速レバー、S:スピードスプレーヤ(乗用型作業機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体(1)の前側に運転席(2)を備えると共に機体(1)の後側に作業装置を備えた乗用型作業機の運転席周りに設けられる操作装置であって、
前記運転席(2)の側方に形成された側面パネル(A)と、
該側面パネル(A)から前記運転席(2)に向けて先端が突出した操作レバー(B)を備え、
前記操作レバー(B)は、
略直角の回動角度で前記作業装置の動作ON状態とOFF状態を切り替え可能であり、長手方向に延びる直線状の柄部(b1)とその先に形成される先端部(b2)とからなり、
前記作業装置の動作ON状態とOFF状態の一方の状態で、前記柄部(b1)の長手方向に延びる一方の辺の大半を前記側面パネル(A)の内側に納め、前記先端部(b2)が、前記一方の辺の先端側に繋がり、前記操作レバー(B)の操作方向に対向する操作辺(b2a)を有することを特徴とする乗用型作業機の操作装置。
【請求項2】
前記操作レバー(B)の操作辺(b2a)は、前記操作レバー(B)の操作方向に対して略垂直の直線辺又は前記操作レバー(B)の操作方向に向けて凹状の曲線辺であることを特徴とする請求項1に記載された乗用型作業機の操作装置。
【請求項3】
前記操作レバー(B)の操作辺(b2a)は、前記作業装置の動作ON状態とOFF状態の他方の状態で、前記側面パネル(A)と略平行になることを特徴とする請求項1又は2に記載された乗用型作業機の操作装置。
【請求項4】
前記操作レバー(B)の先端部(b2)は、前記柄部(b1)の長手方向に延びる他方の辺を直線的に延長した延長辺(b2b)を有し、前記操作辺(b2a)の一端が前記延長辺(b2b)に繋がることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載された乗用型作業機の操作装置。
【請求項5】
前記運転席(2)の脇に変速レバー(7)を備え、
前記側面パネル(A)は前記変速レバー(7)を前後に動かすシフト変換方向と略平行に形成され、
前記操作レバー(B)は、前記変速レバー(7)に前記先端部(b2)が近接して、上下に回動操作されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載された乗用型作業機の操作装置。
【請求項6】
前記乗用型作業機は、散布装置(4)を前記作業装置とする乗用型防除機であり、
前記操作レバー(B)は、前記散布装置(4)を散布・停止させる散布レバーであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載された乗用型作業機の操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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