説明

乳化重合用乳化剤、ポリマーエマルションの製造方法及びポリマーエマルション

【課題】アルキルフェノール系アニオン界面活性剤に匹敵する優れた界面活性能を有し、乳化重合時の乳化安定性、及びエマルションの安定性を良好なものとした新規な乳化重合用乳化剤を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)、(2)及び(3)の群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする乳化重合用乳化剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乳化重合する際に用いられる乳化重合用乳化剤組に関し、さらにそれを用いたポリマーエマルションの製造方法及びその製造方法により得られるポリマーエマルションに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乳化重合用乳化剤としてはアルキルフェノールや脂肪族アルコールにアルキレンオキサイドを付加したエーテル型のポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテルやポリオキシアルキレンアルキルエーテルのノニオン性面活性剤やこれを硫酸エステル化したアニオン性界面活性剤が単独あるいは併用で使用されてきた。
【0003】
ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルは、その生分解生成物の生態毒性が問題視されており、自然環境に排出された場合、生態系に悪影響を及ぼすことが問題となっている。
【0004】
それに伴い、近年、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルといったアルキルフェノールを疎水基に含まない乳化剤への代替が進められている(例えば特許文献1)。
【0005】
しかし、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは乳化重合用乳化剤として、性能は必ずしも充分に満足し得るものではなく、多くの解決すべき問題点が残されている。例えば、重合時の安定性、得られたエマルションの機械安定性、化学安定性、凍結融解安定性、顔料混和性、貯蔵安定性、該エマルションから得られたポリマーフィルムの性質等が挙げられる。
【特許文献1】特開2001−2715
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、重合時の安定性、エマルションの機械安定性、化学安定性、得られたエマルションのポリマーフィルム特性を良好なものとした乳化重合用乳化剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、親水基部分にアルキレンオキサイドとグリシドールの共重合物、及びアニオン性親水基を持つ乳化重合用乳化剤が適していることを見出し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち、本発明は下記一般式(1)、(2)及び(3)の群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする乳化重合用乳化剤である。
【0009】
【化1】

【0010】
(一般式(1)、(2)及び(3)中、R1は炭化水素基を表し、(Gly)は一般式(4)で表されるグリセリン残基、(AO)は一般式(5)で表される炭素数2〜4のアルキレンオキサイドの単独または混合重合によって得られるオキシアルキレン基を表し、(Gly)m/(AO)nは(Gly)と(AO)がランダム付加していることを表し、(Gly)m−(AO)nは(Gly)と(AO)がブロック付加していることを表し、((Gly)i/(AO)k+(Gly)j−(AO)l)は(Gly)と(AO)がランダム付加部分とブロック付加部分からなることを表し、一般式(2)、(3)のブロック付加部分における、(Gly)ブロックと(AO)ブロックの付加する順序、及び一般式(3)のランダム付加部分、ブロック付加部分の付加順序は特に限定されるものではなく、i、j、k、l、m、nは付加モル数を表し、それぞれ少なくとも1以上でm+nは2〜200であり、i+j=m、k+l=nである。)
【0011】
【化2】

【0012】
【化3】

【0013】
(一般式(4)及び(5)中、X1、X2及びX3はGly、AO、水素原子、またはアニオン性親水基であり、少なくとも1つはアニオン性親水基であり、R2は水素原子、メチル基またはエチル基を表す。)
本発明の乳化重合用乳化剤はアニオン界面活性剤及び/又はノニオン界面活性剤と組み合わせて使用することが好ましい。
【0014】
また、本発明のポリマーエマルションの製造方法は、モノマーに対して上記乳化重合用乳化剤組成物を0.1〜20重量%の量で使用し、水性媒体中で前記モノマーを重合させることにある。
【0015】
そして、本発明のポリマーエマルションは、上記ポリマーエマルションの製造方法により得られるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の乳化重合用乳化剤によれば、重合時の安定性に優れ、化学安定性、機械安定性に優れたエマルションが得られる。かつ、該エマルションから得られたポリマーフィルムの特性が良好なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
一般式(1)、(2)、及び(3)の化合物において、式中R1は炭化水素基を表わす。炭化水素基としては例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等が挙げられる。
【0019】
アルキル基としては例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、2級ブチル、ターシャリブチル、ペンチル、イソペンチル、2級ペンチル、ネオペンチル、ターシャリペンチル、ヘキシル、2級ヘキシル、ヘプチル、2級ヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシル、2級オクチル、ノニル、2級ノニル、デシル、2級デシル、ウンデシル、2級ウンデシル、ドデシル、2級ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、2級トリデシル、テトラデシル、2級テトラデシル、ヘキサデシル、2級ヘキサデシル、ステアリル、イコシル、ドコシル、テトラコシル、トリアコンチル、2-ブチルオクチル、2-ブチルデシル、2-ヘキシルオクチル、2-ヘキシルデシル、2-オクチルデシル、2-ヘキシルドデシル、2-オクチルドデシル、2-デシルテトラデシル、2-ドデシルヘキサデシル、2-ヘキサデシルオクタデシル、2-テトラデシルオクタデシル、モノメチル分枝-イソステアリル基等が挙げられる。
【0020】
アルケニル基としては例えば、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、イソペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、テトラデセニル、オレイル等が挙げられる。アリール基としては例えば、フェニル、トルイル、キシリル、クメニル、メシチル、ベンジル、フェネチル、スチリル、シンナミル、ベンズヒドリル、トリチル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ブチルフェニル、ペンチルフェニル、ヘキシルフェニル、ヘプチルフェニル、オクチルフェニル、ノニルフェニル、デシルフェニル、ウンデシルフェニル、ドデシルフェニル、フェニルフェニル、ベンジルフェニル、スチレン化フェニル、クミルフェニル、スチレン化クレシル、ベンジルキシリル、α-ナフチル、β-ナフチル基等が挙げられる。シクロアルキル基、シクロアルケニル基としては例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、メチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、メチルシクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、メチルシクロペンテニル、メチルシクロヘキセニル、メチルシクロヘプテニル基等が挙げられる。
【0021】
更に具体的には、R1はアルコールから水酸基を除いた残基で表される。これらのアルコールは、天然由来のアルコール、または工業的に製造されるアルコールである。
【0022】
天然由来のアルコールとしてはオクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコールなどがある。
【0023】
工業的に製造されるアルコールとしては、プロピレン或いはブテンまたはその混合物から誘導される高級オレフィンを経て、オキソ法により製造される分岐型飽和一級アルコールで、例えばイソノナノール、イソデカノール、イソウンデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノールなどの他、市販品としてはエクソン・モービル社製のExxalシリーズがあり、n-パラフィンやエチレンオリゴマーから誘導されるオレフィンを経て、オキソ法により製造される直鎖型と分岐型のアルコールの混合物として、Shell社製のネオドール(Neodol)シリーズ、三菱化学社製のダイヤドール(Diadol)シリーズ、Sasol社製のサフォール(Safol)シリーズやリアル(Lial)シリーズがある、ゲルベ反応によるアルコールの2量化によって得られるゲルベアルコールには2-エチル-1-ヘキサノール、2-ブチル-1-ヘキサノール、2-エチル-1-ヘプタノール、2-プロピル-1-オクタノール、2-プロピル-1-ヘプタノール、4-メチル-2-プロピル-1-ヘキサノール、2-プロピル-5-メチル-1-ヘキサノールなどがあり、またはパラフィンを空気酸化して製造され、水酸基が炭素鎖の末端以外へランダムに結合しているセカンダリーアルコールなどがある。また、これらのアルコールを2種類以上配合して使用することも可能である。
【0024】
R1は上記に記載の炭化水素基を2種類以上含んでいても良い。
【0025】
また、R1は炭素数6から20のアルキル基またはアルケニル基であることが好ましい。
【0026】
一般式(1)、(2)、及び(3)において、(Gly)は下記一般式(4)で表されるグリセリン残基を表す。
【0027】
【化2】

【0028】
一般式(1)、(2)、及び(3)において、(AO)は下記一般式(5)で表されるオキシアルキレン基を表す。
【0029】
【化3】

【0030】
一般式(5)において、R2は水素原子、メチル基またはエチル基を表す。
【0031】
具体的には、(AO)はエチレングリコール単位、プロピレングリコール単位、又はブチレングリコール単位を表す。
【0032】
一般式(1)、(2)、及び(3)において、i、j、k、l、m、nはそれぞれ少なくとも1以上でm+nは2〜200である。好ましくは2〜50である。
【0033】
一般式(1)中、(Gly)m/(AO)nは、たとえば下記一般式(6)に示すように(Gly)と(AO)がランダム付加していることを表す。
【0034】
【化4】

【0035】
(一般式(6)中、Rは炭化水素基を表す。)
【0036】
一般式(2)中、(Gly)m−(AO)nは下記一般式(7)又は(8)に表すように(Gly)と(AO)がブロック付加していることを表す。また、(Gly)と(AO)のブロックの順序は特に限定されない。
【0037】
【化5】

【0038】
(一般式(7)及び(8)中、Rは炭化水素基を表し、m、nは付加モル数を表し、それぞれ少なくとも1以上でm+nは2〜200であり、i+j=m、k+l=nである。)
【0039】
一般式(3)中、((Gly)i/(AO)k+(Gly)j−(AO)l)は(Gly)と(AO)がランダム付加部分とブロック付加部分からなることを表す。つまり、一般式(6)、(7)及び(8)の付加形式の組み合わせを表す。
【0040】
一般式(1)、(2)、及び(3)において、(Gly)と(AO)の付加形態は特に限定はされないが、ブロック付加の方が該乳化剤組成物を使用したエマルションが低泡性となるため好ましい。
【0041】
また、一般式(1)、(2)及び(3)において、(Gly)と(AO)の付加形態は直鎖状でも良く、下図の様に樹状構造をとっても良い。
【0042】
【化6】

【0043】
一般式(1)、(2)及び(3)において、(Gly)及び(AO)で形成される親水基部分に含まれる末端−OHの内、少なくとも一つはアニオン性親水基に置換している。
【0044】
該アニオン性親水基としては、下記の一般式(9)〜(13)で表される、サルフェート基(9)、フォスフェート基(10)、カルボキシル基(11,12)、サクシネート基(13)が挙げられる。
【0045】
【化7】

【0046】
(式中、R3は二塩基酸からカルボキシル基を除いた残基を表す。M及びM´は水素原子、金属原子、アンモニウムまたは炭化水素基を表し、MとM´は異なるものでも同一のものでも良い。)
【0047】
3は、二塩基酸からカルボキシル基を除いた残基である。このような二塩基酸としては、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;シクロペンタンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等の飽和脂環族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリレンジカルボン酸、キシリレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸;テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ナジック酸(エンドメチレンテトラヒドロフタル酸)、メチルナジック酸、メチルブテニルテトラヒドロフタル酸、メチルペンテニルテトラヒドロフタル酸等の不飽和脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0048】
M及びM´は水素原子、金属原子、アンモニウムまたは炭化水素基を表す。金属原子としては例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属原子(但し、アルカリ土類金属原子は通常2価であるから、1/2)等が挙げられ、アンモニウムとしては、例えば、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、(イソ)プロピルアミン、ジ(イソ)プロピルアミン、モノエタノールアミン、N−メチルモノエタノールアミン、N−エチルモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、アミノエチルエタノールアミン、N,N,N',N'−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン等のアンモニウムが挙げられる。炭化水素基としては上記に記載のものが挙げられる。また、M及びM´は異なるものでも同一のものでも良く、上記記載のものを2種類以上含んでいても良い。
【0049】
一般式(5)において、アニオン性親水基を複数含む場合、一般式(9)から(13)で表されるアニオン性親水基を2種類以上含んでいても良い。
【0050】
合成方法
本発明の乳化重合用乳化剤を得るための反応条件は特に限定されるものではなく、例えば、(1)高級アルコールにグリシドール及びアルキレンオキサイドの付加を行う方法、又は、(2)ポリグリセリン/ポリアルキレンオキサイド共重合体にハロゲン化アルキルの付加を行う方法が挙げられる。
【0051】
(1)の方法では、ランダム付加の場合、高級アルコールに水酸化カリウムを触媒として用い、任意の比率のグリシドールとアルキレンオキサイドの混合物を逐次添加して反応を行う。ブロック付加の場合、高級アルコールに水酸化カリウムを触媒として用い、グリシドールを逐次添加して反応した後、アルキレンオキサイドを逐次添加して反応を行う。ランダム+ブロック付加の場合、高級アルコールに水酸化カリウムを触媒として用い、任意の比率のグリシドールとアルキレンオキサイドの混合物を逐次添加して反応を行った後、アルキレンオキサイド、グリシドールの順に逐次添加して反応を行う。
【0052】
(2)の方法では、まず、グリシドールとアルキレンオキサイドのランダム付加物、ブロック付加物、またはランダム+ブロック付加物を合成した後、ポリグリセリン/ポリアルキレンオキサイド共重合付加物に水酸化カリウム、ハロゲン化アルキルを用いてアルキレーションを行う。
【0053】
そして、次に(1)または(2)の方法で得られた高級アルコールのポリグリセリン/アルキレンオキサイド共重合付加物からなる親水基の水酸基に、種々のアニオン性親水基を導入して本発明の乳化重合用乳化剤を得ることができる。
【0054】
また、必要に応じ精製を行っても良い。
【0055】
高級アルコールのポリグリセリン/アルキレンオキサイド共重合付加物からなる親水基の水酸基へのアニオン性親水基の導入は、公知の方法を用いて行うことができる。例えば、一般式(9)のアニオン性親水基を導入するには、スルファミン酸、クロロスルホン酸、無水硫酸、または硫酸を用い硫酸エステル化することにより得ることができる。一般式(10)のアニオン性親水基を導入するには、五酸化二リンまたはポリリン酸を用いリン酸エステル化することにより得ることができる。一般式(11)のアニオン性親水基を導入するには、モノハロゲン低級カルボン酸(モノクロル酢酸、モノブロムプロピオン酸等)を用いエーテルカルボキシル化することにより得ることができる。一般式(12)のアニオン性親水基を導入するには、二塩基酸(無水物である方が好ましい)を用いてエステルカルボキシル化することにより得ることができる。また、一般式(13)のアニオン性親水基を導入するには、無水マレイン酸でエステルカルボキシル化した後、亜硫酸ナトリウムでスルホン化することにより得ることができる。
【0056】
乳化重合用モノマー
本発明の乳化重合用乳化剤を用いた乳化重合に適用されうるモノマーとしては各種のものを挙げることができ、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、アクリルアミド、アクリル酸ヒドロキシエステル等のアクリル系モノマー、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族モノマー、酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマー、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化オレフィンモノマー、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役系ジオレフィン系モノマー等の他、エチレン、無水マレイン酸、マレイン酸メチル等がある。本発明の乳化重合用乳化剤組成物は、上記モノマーの1種または2種以上の乳化重合または懸濁重合に利用できる。
【0057】
重合条件
本発明の乳化重合用乳化剤を使用した乳化重合反応に使用される重合開始剤は従来公知のものでよく、例えば、過酸化水素、過硫酸カリウム、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド等が利用できる。重合促進剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第1鉄アンモニウム等が使用できる。また、連鎖移動剤として、α−メチルスチレンダイマー、n−ブチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類、四塩化炭素、四臭化炭素などのハロゲン化炭化水素などを用いてもよい。
【0058】
モノマーの添加方法としては、公知の方法が用いられるが、プレエマルション法(モノマー、水を乳化重合用乳化剤にて事前に乳化してエマルションを調製し、それを滴下する方法)を用いることが好ましい。滴下時間は1〜12時間、熟成時間は1〜6時間が好ましい。重合温度は、開始剤の分解温度により調整されるが、過硫酸塩の場合は60〜80℃が好ましい。
【0059】
本発明の乳化重合用乳化剤の使用量は、通常、全モノマーに対して0.1〜20.0%が適当である。なお、より好ましくは、0.2〜10.0%が適当である。
【0060】
本発明においては、上記の乳化重合用乳化剤のみ用いても乳化重合を良好に完結することができるが、更にアニオン活性剤及び/又は他のノニオン活性剤を併用してもよく、これにより乳化重合時の重合安定性が向上し、また後工程における処理特性を向上させることができる。かかるアニオン活性剤、及びノニオン活性剤としては特に限定されないが、例えば、アニオン活性剤としては、脂肪酸セッケン、ロジン酸セッケン、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシアルキレンアルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアリール硫酸塩、アルキルポリアルキレングリコールエーテルリン酸モノー、ジーおよびトリエステルおよびこれらの混合物、アルキルフェノールポリアルキレングリコールエーテルリン酸モノー、ジー、およびトリエステルおよびこれらの混合物、並びにこれらのナトリウム塩、カリウム塩、およびアンモニウム塩などが挙げられ、ノニオン活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルキルポリグルコシド、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。使用量としては、本発明の乳化重合用乳化剤組成物100重量部に対して、0.5〜100重量部含まれることが好ましく、より好ましくは5〜60重量部である。さらに好ましくは10〜30重量部である。
【0061】
また、本発明の乳化重合用乳化剤を使用した乳化重合時の重合安定性を向上させる目的で公知の保護コロイド剤を併用することができる。併用できる保護コロイド剤としては、完全けん化ポリビニルアルコール(PVA)、部分けん化PVA、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリアクリル酸、アラビアゴムなどがある。
【0062】
本発明の乳化重合用乳化剤の他の使用方法としては、ポリマーエマルションの安定性を改善するために、重合終了後添加することができる。
【0063】
作用、その他
本発明の乳化重合用乳化剤より得られるポリマーエマルションは、例えば接着剤、被覆剤、含浸補強剤等として、木材、金属、紙、布、その他コンクリートなどに適用することができる。また、エマルションあるいはラテックスから取り出したポリマーは樹脂、ゴム、ポリマー改質剤等に使用することができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例および比較例により本発明の実施様態および効果につき述べるが、例示は単に説明用のものであって、発明思想の限定または制限を意図したものではない。なお、文中「部」は特に記載がない限り質量基準である。
【0065】
〔製造例1〕
オートクレーブにイソデカノール158部と、触媒として水酸化カリウムを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、撹拌しつつ100℃で減圧脱水を行った。
【0066】
130℃に昇温した後、エチレンオキサイド/グリシドール(88部/148部)の混合物を導入した。導入終了後、反応温度を維持しながら1時間熟成した。70℃になるまで冷却した後、乳酸にて中和して、中間体Aを得た。
【0067】
次に、撹拌機、窒素導入管、及び温度計を備えた反応器に中間体Aを396部、及びスルファミン酸100部を仕込み120℃で2時間反応させて、硫酸エステル化を行った。未反応スルファミン酸を除去して、本発明品Aの乳化重合用乳化剤を得た。
【0068】
〔製造例2〕
攪拌装置、還流冷却管、温度計、窒素冷却管を備えた反応容器に水200部、硫酸10部を仕込み100℃に昇温した。そこへデシルグリシジルエーテル215部を3時間かけて滴下し、反応温度を維持しながら5時間熟成を行なった。反応終了後、脱水、精製を行いデシルモノグリセリンエーテルを得た。
【0069】
次に、オートクレーブにデシルモノグリセリンエーテル232部を仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、撹拌しつつ100℃で減圧脱水を行った。冷却した後、三フッ化ホウ素エーテル錯体を触媒として添加した。40℃に昇温した後、エチレンオキサイド132部を導入した。導入終了後、反応温度を維持しながら1時間熟成した。反応終了後、生成物にイオン交換水を加え溶解し、イオン交換カラムを用いて精製を行った。精製終了後、水をトッピングして、中間体Bを得た。
【0070】
次に、撹拌機、窒素導入管及び温度計を備えた反応器に中間体Bを364部、及びスルファミン酸100部を仕込み120℃で2時間反応させて、硫酸エステル化を行った。未反応スルファミン酸を除去した後、モノエタノールアミンで中和を行い本発明品Bの乳化重合用乳化剤を得た。
【0071】
〔製造例3〕
オートクレーブに2−プロピル−1−ヘプタノール158部と、触媒としてp−トルエンスルホン酸を仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、撹拌しつつ100℃で減圧脱水を行った。
【0072】
130℃に昇温した後、プロピレンオキサイド116部を導入し、反応温度を維持しながら1時間熟成した。それに引き続き、同様の手順でエチレンオキサイド/グリシドール(132部/222部)の混合物を導入した。70℃になるまで冷却した後、水酸化カリウムにて中和して、中間体Cを得た。
【0073】
次に、撹拌機、窒素導入管、及び温度計を備えた反応器に中間体Cを631部、及びスルファミン酸100部を仕込み120℃で2時間反応させて、硫酸エステル化を行い、未反応スルファミン酸を除去した後、イソプロピルアルコールに溶解して中和等量の水酸化ナトリウムを加えナトリウム塩とした。最後に、減圧トッピングを行い本発明品Cの乳化重合用乳化剤を得た。
【0074】
〔製造例4〕
オートクレーブにExxalllを172部と、触媒として水酸化カリウムを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、撹拌しつつ100℃で減圧脱水を行った。
【0075】
130℃に昇温した後、エチレンオキサイド88部を導入した。導入終了後、反応温度を維持しながら1時間熟成した。それに引き続き、同様の手順でグリシドール148部、エチレンオキサイド88部、そしてグリシドール148部の順に導入した。70℃になるまで冷却した後、乳酸にて中和して、中間体Dを得た。
【0076】
次に、撹拌機、窒素導入管、及び温度計を備えた反応器に中間体Dを648部、及び五酸化二リン45部を仕込み80℃で3時間反応させて、リン酸エステル化して本発明品Dの乳化重合用乳化剤を得た。
【0077】
〔製造例5〕
オートクレーブにラウリルアルコール186部と、触媒としてp−トルエンスルホン酸を仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、撹拌しつつ100℃で減圧脱水を行った。
【0078】
130℃に昇温した後、エチレンオキサイド/グリシドール(88部/148部)の混合物を導入した。導入終了後、反応温度を維持しながら1時間熟成した。70℃になるまで冷却した後、水酸化カリウムにて中和して、中間体Eを得た。
【0079】
次に、撹拌機、窒素導入管、及び温度計を備えた反応器に中間体Eを422部、及び無水マレイン酸100部を仕込み80℃で2時間反応させた後、無水亜硫酸ナトリウムによりスルホン化して本発明品Eの乳化重合用乳化剤を得た
【0080】
〔製造例6〕
オートクレーブにラウリルアルコール186部と、触媒としてp−トルエンスルホン酸を仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、撹拌しつつ100℃で減圧脱水を行った。
【0081】
130℃に昇温した後、グリシドール296部を導入した。導入終了後、反応温度を維持しながら1時間熟成した。それに引き続き、同様の手順で、エチレンオキサイド176部を導入した。70℃になるまで冷却した後、水酸化カリウムにて中和して、中間体Fを得た。
【0082】
次に、撹拌機、窒素導入管、及び温度計を備えた反応器に中間体Fを658部、及びスルファミン酸100部を仕込み120℃で2時間反応させて、硫酸エステル化を行い、未反応スルファミン酸を除去した後、イソプロピルアルコールに溶解して中和等量の水酸化ナトリウムを加えナトリウム塩とした。最後に、減圧トッピングを行い本発明品Fの乳化重合用乳化剤を得た。
【0083】
〔製造例7〕
オートクレーブにラウリルアルコール186部と、触媒として水酸化カリウムを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、撹拌しつつ100℃で減圧脱水を行った。
【0084】
130℃に昇温した後、グリシドール148部を導入した。導入終了後、反応温度を維持しながら1時間熟成した。それに引き続き、同様の手順でエチレンオキサイド880部を導入した。70℃になるまで冷却した後、乳酸にて中和して、中間体Gを得た。
【0085】
次に、撹拌機、窒素導入管、及び温度計を備えた反応器に中間体Gを1213部、及びモノクロル酢酸ナトリウム116部と触媒として水酸化ナトリウムを仕込み80℃で3時間反応させてエーテルカルボキシル化した後、精製して本発明品Gの乳化重合用乳化剤を得た。
【0086】
〔製造例8〕
オートクレーブにネオドール23を193部と、触媒としてp−トルエンスルホン酸を仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、撹拌しつつ100℃で減圧脱水を行った。130℃に昇温した後、プロプレンオキサイド174部を導入し、反応温度を維持しながら1時間熟成した。それに引き続き、エチレンオキサイド132部、そしてグリシドール222部の順に導入した。70℃になるまで冷却した後、水酸化カリウムにて中和して、中間体Hを得た。
【0087】
次に、撹拌機、窒素導入管、及び温度計を備えた反応器に中間体Hを721部、及びスルファミン酸100部を仕込み120℃で2時間反応させて、硫酸エステル化を行った。未反応スルファミン酸を除去して、本発明品Hの乳化重合用乳化剤を得た。
【0088】
〔製造例9〕
オートクレーブにネオドール25を206部を仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、撹拌しつつ100℃で減圧脱水を行った。冷却した後、三フッ化ホウ素エーテル錯体を触媒として添加した。40℃に昇温した後、エチレンオキサイド/グリシドール(220部/740部)の混合物を導入した。導入終了後、反応温度を維持しながら1時間熟成した。モノエタノールアミンにて中和して、中間体Iを得た。
【0089】
次に、撹拌機、窒素導入管、及び温度計を備えた反応器に中間体Iを1166部、及び五酸化二リン45部を仕込み80℃で3時間反応させて、リン酸エステル化して本発明品Iの乳化重合用乳化剤を得た。
【0090】
〔製造例10〕
オートクレーブにイソトリデシルアルコールを200部と、触媒として水酸化カリウムを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、撹拌しつつ100℃で減圧脱水を行った。130℃に昇温した後、エチレンオキサイド/グリシドール(88部/148部)の混合物を導入した。導入終了後、反応温度を維持しながら1時間熟成した。
【0091】
それをイオン交換水に溶解し、イオン交換カラムを用いて精製を行った。水をトッピングして、中間体Jを得た。
【0092】
次に、撹拌機、窒素導入管、及び温度計を備えた反応器に中間体Jを438部、及びスルファミン酸100部を仕込み120℃で2時間反応させて、硫酸エステル化を行い、未反応スルファミン酸を除去した後、イソプロピルアルコールに溶解して中和等量の水酸化ナトリウムを加えナトリウム塩とした。最後に、減圧トッピングを行い本発明品Jの乳化重合用乳化剤を得た。
【0093】
〔製造例11〕
オートクレーブにイソトリデシルアルコールを200部と、触媒として水酸化カリウムを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、撹拌しつつ100℃で減圧脱水を行った。130℃に昇温した後、エチレンオキサイド132部を導入した。導入終了後、反応温度を維持しながら1時間熟成した。それに引き続き、同様の手順で、グリシドール222部、そして、エチレンオキサイド132部の順に導入した。70℃になるまで冷却した後、乳酸にて中和して、中間体Kを得た。
【0094】
次に、撹拌機、窒素導入管、及び温度計を備えた反応器に中間体Kを686部、及びスルファミン酸100部を仕込み120℃で2時間反応させて、硫酸エステル化を行った。未反応スルファミン酸を除去して、本発明品Kの乳化重合用乳化剤を得た。
【0095】
〔製造例12〕
オートクレーブにイソトリデシルアルコールを200部と、触媒としてp−トルエンスルホン酸を仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、撹拌しつつ100℃で減圧脱水を行った。130℃に昇温した後、エチレンオキサイド/グリシドール(132部/222部)の混合物を導入した。導入終了後、反応温度を維持しながら1時間熟成した。それに引き続き、同様の手順で、グリシドール222部、そして、エチレンオキサイド132部の順に導入した。70℃になるまで冷却した後、水酸化カリウムにて中和して中間体Lを得た。
【0096】
次に、撹拌機、窒素導入管、及び温度計を備えた反応器に中間体Lを908部、及び五酸化二リン45部を仕込み80℃で3時間反応させて、リン酸エステル化して本発明品Lの乳化重合用乳化剤を得た。
【0097】
〔製造例13〕
オートクレーブにスチレン化フェノールを305部と、触媒として水酸化カリウムを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、撹拌しつつ100℃で減圧脱水を行った。130℃に昇温した後、エチレンオキサイド/グリシドール(132部/222部)の混合物を導入した。導入終了後、反応温度を維持しながら1時間熟成した。70℃になるまで冷却した後、乳酸にて中和して、中間体Mを得た。
【0098】
次に、撹拌機、窒素導入管、及び温度計を備えた反応器に中間体Mを659部、及びスルファミン酸100部を仕込み120℃で2時間反応させて、硫酸エステル化を行った。未反応スルファミン酸を除去して、本発明品Mの乳化重合用乳化剤を得た。
【0099】
〔製造例14〕
オートクレーブにノニルフェノールを220部と、触媒として水酸化カリウムを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、撹拌しつつ100℃で減圧脱水を行った。
【0100】
次に、130℃に昇温した後、エチレンオキサイド220部を導入した。導入終了後、反応温度を維持しながら1時間熟成した。
【0101】
最後に、70℃になるまで冷却した後、乳酸にて中和して、ノニルフェノールEO5モル付加体を得た。
【0102】
次に、撹拌機、窒素導入管、及び温度計を備えた反応器にノニルフェノールEO5モル付加体を440部、及びスルファミン酸100部を仕込み120℃で2時間反応させて、硫酸エステル化を行った。未反応スルファミン酸を除去して、比較品Aの乳化重合用乳化剤を得た。
【0103】
〔製造例15〕
製造例14の方法に準じて、エチレンオキサイドを880部とした以外は同様の条件で反応して、比較品Bの乳化重合用乳化剤を得た。
【0104】
〔製造例16〕
製造例14の方法に準じて、ノニルフェノールの代わりにExxalllを172部とした以外は同様の条件で反応して、比較品の乳化重合用乳化剤Cを得た。
【0105】
〔製造例17〕
製造例14の方法に準じて、ノニルフェノールの代わりにExxalllを172部、エチレンオキサイドを880部とした以外は同様の条件で反応して、比較品の乳化重合用乳化剤Dを得た。
【0106】
〔製造例18〕
製造例14の方法に準じて、ノニルフェノールの代わりにラウリルアルコールを186部とした以外は同様の条件で反応して、比較品の乳化重合用乳化剤Eを得た。
【0107】
〔製造例19〕
製造例14の方法に準じて、ノニルフェノールの代わりにラウリルアルコールを186部、エチレンオキサイドを880部とした以外は同様の条件で反応して、比較品の乳化重合用乳化剤Fを得た。
【0108】
〔製造例20〕
製造例14の方法に準じて、ノニルフェノールの代わりにオレイルアルコールを250部、エチレンオキサイドを880部とした以外は同様の条件で反応して、比較品の乳化重合用乳化剤Gを得た。
【0109】
実施例及び比較例に用いた乳化重合用乳化剤は表1の通りである。
【0110】
【表1】

*1:C10〜C12−オキソアルコール、高度分岐型、エクソンケミカル社製
*2:C12、C13−オキソアルコール、直鎖率約80%、シェルケミカルズ社製
*3:C12〜C15−オキソアルコール、直鎖率約80%、シェルケミカルズ社製
【0111】
〔使用例1〕
アクリル酸ブチル100部、スチレン100部、イオン交換水290部および乳化重合用乳化剤10部を混合して混合モノマー乳濁液を調製し、窒素ガスにて溶存酸素を除去した。次に攪拌機、還流冷却器、温度計および滴下漏斗を備えた反応器に、上記混合モノマー乳濁液を100部仕込み、80℃に昇温し、過硫酸カリウム0.5部を加えて先行重合させた。次いで、重合開始10分後より3時間かけて、残りの混合モノマー乳濁液400部を3時間かけて滴下して重合させた。さらに、続けて重合温度にて2時間熟成した後、冷却してポリマーエマルジョンを得た。
【0112】
使用した乳化重合用乳化剤は表2に示す通りである。また、本発明品のA、B、E〜G、J〜M及び比較品E、Fについては単独で、C、D及び比較品A〜D、Gについては本発明品又は比較品を90重量%と併用ノニオン性乳化剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO20モル付加体)を10重量%を、本発明品H、Iについて本発明品90重量%と併用アニオン性乳化剤としてラウリル硫酸エステルナトリウム塩を乳化重合用乳化剤の10重量%を配合して使用した。
【0113】
得られたポリマーエマルジョンについて、重合安定性、粒子径、機械安定性、フィルムの光沢性をそれぞれ評価した。評価方法は以下の通りである。結果は表2に示す。
【0114】
重合安定性
重合後のポリマーエマルションを80メッシュのろ布を用いてろ過し、ろ布上の残渣を水洗後、乾燥し、その重量をエマルションの固形分に対し%で表示した。
【0115】
粒子径
動的光散乱式粒度分布測定装置(日機装製 MICROTRAC UPA 9340)にて測定しμmで表示した。
【0116】
機械安定性
ポリマーエマルション50gをマーロン型試験器にて荷重10kg、回転数1000rpmで5分間撹拌し、生成した凝集物を80メッシュの金網でろ過し、残渣を水洗後、乾燥し、その重量をエマルションの固形分に対し%で表示した。
【0117】
フィルムの光沢性
ガラスプレート上に0.5mm(wet)のポリマーエマルション膜を作り、室温で24時間放置してフィルムを作成した。このフィルムの光沢性を目視にて○(優)、△(可)、×(不可)の3段階で評価した。
【0118】
【表2】

※1:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO20モル付加体)
※2:ラウリル硫酸エステルナトリウム塩
【0119】
〔使用例2〕
攪拌機、還流冷却器、温度計および滴下漏斗を備えた反応器に、イオン交換水135部、緩衝剤として炭酸水素ナトリウム0.5部を仕込み、80℃まで昇温させ、窒素ガスにて水中の溶存酸素を除去した。これとは別にメタクリル酸メチル75部、アクリル酸エチル171部、アクリル酸4部、乳化重合用乳化剤5部、イオン交換水115部とを混合して、モノマーエマルジョンを調製した。次に、上記で調製したモノマーエマルジョン40部を一括して上記反応容器に添加し、10分間撹拌後、重合開始剤である過硫酸アンモニウム0.5部を加え、10分間撹拌した。次に残りのモノマーエマルジョンを3時間かけて滴下して重合反応を行い、40℃まで冷却後、アンモニア水でpH8〜9に調整してポリマーエマルジョンを得た。
【0120】
使用した乳化重合用乳化剤は表3に示す通りである。また、本発明品のC、D、H〜Mは単独で、E〜G及び比較品A〜Gについては本発明品又は比較品を90重量%と併用ノニオン性乳化剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO30モル付加体)10重量%を、本発明品A、Bについては本発明品90重量%と併用アニオン性乳化剤として直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩10重量%を配合して使用した。
【0121】
得られたポリマーエマルジョンについて、重合安定性、粒子径、化学安定性、機械安定性、起泡性をそれぞれ評価した。重合安定性、粒子径、機械安定性の評価方法は上記の評価方法と同様である。化学安定性、起泡性の評価方法は以下の通りである。結果は表3に示す。
【0122】
化学安定性
ポリマーエマルション10mlに各種濃度のCaCl2水溶液10mlを撹拌しつつ加え、ポリマーが凝析する時のCaCl2濃度(mol/l)で表示した。
【0123】
CaCl2濃度(mol/l):0.1、0.5、1.0、2.0、4.0、6.0
起泡性
ポリマーエマルションを水で2倍希釈し、100mlネスラー管に30cc入れ、30回倒立させてから静置5分後における泡の量を測定した。
【0124】
【表3】

※1:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO30モル付加体)
※2:直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩
【0125】
〔使用例3〕
攪拌機、還流冷却器、温度計および滴下漏斗を備えた反応器に、イオン交換水250部を仕込み、80℃まで昇温させ、窒素ガスにて水中の溶存酸素を除去した。次にアクリル酸ブチル125部とアクリル酸2−エチルヘキシル125部に乳化重合用乳化剤5部を溶解させた混合モノマー液のうち50部を反応器に仕込み、次いで過硫酸アンモニウム0.5部を加えて先行重合させ、重合開始10分後より3時間かけて残りの混合モノマー液205部を滴下して重合させた。続けて重合温度にてさらに2時間熟成した後、40℃まで冷却後、アンモニア水でpH8〜9に調整してポリマーエマルジョンを得た。
【0126】
使用した乳化重合用乳化剤は表4に示す通りである。また、本発明品D〜G、M及び比較品E、Fは単独で、J〜L及び比較品A、Bについては本発明品又は比較品90重量%と併用ノニオン性乳化剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO40モル付加体)10重量%を、本発明品A、Cについては本発明品90重量%と併用アニオン性乳化剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステル(EO8モル付加体)10重量%を配合して使用した。
【0127】
得られたポリマーエマルジョンについて、重合安定性、化学安定性、機械安定性、耐熱着色性、接着性をそれぞれ評価した。重合安定性、化学安定性、機械安定性の評価方法は上記と同様である。耐熱着色性、接着性の評価方法は以下の通りである。結果は表4に示す。
【0128】
耐熱性
ガラス板上に0.5mm厚のポリマーフィルムを作製し、200℃に調整した熱風乾燥器内で30分間熱処理して、ポリマーフィルムの着色を目視で調べた。結果、全く着色が認められない:○、淡い黄色に着色している:△、濃い褐色に着色している:×とした。
【0129】
接着性
5cm幅に切ったPETフィルム上にポリマーエマルションを25μm(dry)の厚さに塗工し、熱処理した後SUS板に貼り付け、ローラ圧着する。接着面が5cm×5cmとなるようにフィルムを剥がし、フィルムの端に200gの重りを吊り下げて剥がれるまでの時間を測定した。
【0130】
【表4】

※1:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO40モル付加体)
※2:ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステル(EO8 モル付加体)
【0131】
〔使用例4〕
攪拌機、還流冷却器、温度計および滴下漏斗を備えた反応器に、蒸留水132部、緩衝剤として炭酸水素ナトリウム0.5部を仕込み、70℃まで昇温させ、窒素ガスにて水中の溶存酸素を除去した。これとは別に酢酸ビニル250部、乳化重合用乳化剤8部、蒸留水110部とを混合して、モノマーエマルジョンを調製した。次に、上記で調製したモノマーエマルジョン40部を一括して上記反応容器に添加し、10分間撹拌後、重合開始剤である過硫酸アンモニウム0.5部を加え、10分間撹拌した。次に残りのモノマーエマルジョンを3時間かけて滴下して重合反応を行い、40℃まで冷却後、アンモニア水でpH8〜9に調整してポリマーエマルジョンを得た。
【0132】
使用した乳化重合用乳化剤は表5に示す通りである。
【0133】
得られたポリマーエマルジョンについて、重合安定性、粒子径、接着性をそれぞれ評価した。重合安定性、粒子径評価方法は上記の評価方法と同様である。接着性の評価方法は以下の通りである。結果を表5に示す。
【0134】
接着性
5cm幅に切った合板上にポリマーエマルションを25μm(dry)の厚さに塗工し、熱処理した後5cm幅の綿製の布を貼り付け、ローラ圧着する。接着面が5cm×5cmとなるように布を剥がし、はがした布の端に1Kgの重りを吊り下げて剥がれるまでの時間を測定した。
【0135】
【表5】

注:( )内の数値は使用した乳化重合用乳化剤の重量比を表している。
*1:保護コロイド剤として部分けん化PVA、けん化度=90%、PVAの重合度=450を使用した。
*2:接着性評価において、−は重合後翌日には凝集物が発生したため試験を実施せず。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)、(2)及び(3)の群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする乳化重合用乳化剤。
【化1】

(一般式(1)、(2)及び(3)中、R1は炭化水素基を表し、(Gly)は一般式(4)で表されるグリセリン残基、(AO)は一般式(5)で表される炭素数2〜4のアルキレンオキサイドの単独または混合重合によって得られるオキシアルキレン基を表し、(Gly)m/(AO)nは(Gly)と(AO)がランダム付加していることを表し、(Gly)m−(AO)nは(Gly)と(AO)がブロック付加していることを表し、((Gly)i/(AO)k+(Gly)j−(AO)l)は(Gly)と(AO)がランダム付加部分とブロック付加部分からなることを表し、一般式(2)、(3)のブロック付加部分における、(Gly)ブロックと(AO)ブロックの付加する順序、及び一般式(3)のランダム付加部分、ブロック付加部分の付加順序は特に限定されるものではなく、i、j、k、l、m、nは付加モル数を表し、それぞれ少なくとも1以上でm+nは2〜200であり、i+j=m、k+l=nである。)
【化2】

【化3】

(一般式(4)及び(5)中、X1、X2及びX3はGly、AO、水素原子、またはアニオン性親水基を表し、少なくとも1つはアニオン性親水基であり、R2は水素原子、メチル基またはエチル基を表す。)
【請求項2】
(a)前記乳化重合用乳化剤及び(b)アニオン界面活性剤及び/又はノニオン界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の乳化重合用乳化剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の乳化重合用乳化剤をモノマーに対して0.1〜20重量%の量で使用し、水性媒体中で前記モノマーを重合させることを特徴とするポリマーエマルションの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のポリマーエマルションの製造方法により得られることを特徴とするポリマーエマルション。



【公開番号】特開2008−156384(P2008−156384A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343387(P2006−343387)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】