説明

乳幼児に対する車両用空調制御システム及びそのシステムを搭載した車両

【課題】 チャイルドシートに着座した乳幼児の生体情報、挙動情報及び環境情報に基づいて空調装置の作動を制御する空調制御システムの提供である。
【解決手段】 チャイルドシート1の背もたれ部3で、着座した乳幼児の背中によって押圧される部分に、乳幼児の体温を検出する温度センサ8と、乳幼児の発汗状況を検出する湿度センサ9を取り付ける。また、チャイルドシート1のベルト5で、乳幼児の胸部を押圧する部分に振動センサ11を取り付ける。これらのセンサ8,9,11によって乳幼児の生体情報と挙動情報(起きているか否か)を検出し、それに応じてフロントエアコン100、リアエアコン200及びオーバーヘッドエアコン300の作動を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャイルドシートに着座している乳幼児の生体情報、挙動情報及び環境情報の少なくとも1つを検出して空調装置の作動を制御するシステム及びそのシステムを搭載した車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一定未満の年齢の乳幼児を車両(例えば自動車)に乗せる場合、チャイルドシートを使用することが義務付けられている。このチャイルドシートを、車両の後部座席に装着する場合がある。運転者は、乳幼児がおとなしく着座している場合であっても、乳幼児の生体情報(温度や発汗状況)が気になったり、時間をおいて乳幼児の挙動を監視したりすることを希望する。このとき、運転者が後ろを振り向くと、運転者の的確な運転が阻害されてしまう場合がある。特に、チャイルドシートを後ろ向きに取り付けているときは、運転者が乳幼児の挙動を監視することは困難である。
【0003】
チャイルドシートに着座している乳幼児が泣き出す原因として、乳幼児が車内の温度を不快に感じる場合(乳幼児の体温は大人よりも高く、大人が快適に感じる温度を不快に感じることがある。)や、チャイルドシートとの接触面での発汗によるムレやそれによる温度上昇等が考えられる。
【0004】
上記の不具合を解消するため、空調装置を設けたチャイルドシートの技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。また、チャイルドシートに着座している人物の生体情報を検出する装置の技術が開示されている(特許文献2を参照)。しかし、これらの技術では運転者が、チャイルドシートに着座している乳幼児の状況を確認する手段がないため、運転者の不安を取り除くには不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−127795号公報
【特許文献2】特開2005−95408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記した不具合に鑑み、チャイルドシートに着座した乳幼児の生体情報、挙動情報及び環境情報に基づいて車両用空調装置を制御する空調制御システム及びそのシステムを搭載した車両を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するための本発明は、
チャイルドシートに着座している乳幼児に対して空調装置の作動を制御する車両用空調制御システムであって、
チャイルドシートに着座している乳幼児の生体情報、挙動情報及び環境情報の少なくとも1つを検出するセンサと、
前記センサによって検出された情報を送信する送信手段と、
前記送信手段によって送信された情報を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した情報に基づき、前記空調装置によって吹き出される空気の温度、湿度、流れ及び清浄度の少なくとも1つを調整する空調装置制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る空調制御システムは上記したように構成され、各センサによって検出された乳幼児の生体情報、挙動情報及び環境情報の少なくとも1つによって空調装置の作動が調整される。この調整は、受信手段が受信した情報に基づき、空調装置によって吹き出される空気の温度、湿度、流れ及び清浄度の少なくとも1つを調整することによって行われる。これにより、チャイルドシートに着座している乳幼児は常に快適な環境下に置かれる。これにより、運転者は、乳幼児を視認するためにその視点を大きく変更することが不要となり、的確な運転を行うことができる。
【0009】
前記センサは、チャイルドシートに着座している乳幼児の複数部位における生体情報、挙動情報及び環境情報の少なくとも1つを検出するように取り付けられ、
前記空調装置制御手段は、乳幼児の特定部位における生体情報、挙動情報及び環境情報のいずれかの値が予め設定された基準値を超えているときに、それらのいずれかの値が前記基準値以下となるように前記特定部位に対して前記空調装置を作動させるようにしてもよい。
【0010】
前記受信手段が受信した情報を運転者に報知する報知手段が設けられていると、運転者は視点をほとんどそのままにして、乳幼児の情報を視認できる。これにより、運転者の安心感が高まる。
【0011】
この報知手段を、車両に対して着脱自在に取り付けてもよい。これにより、チャイルドシートと報知手段を車両から取り外して、別の場所で乳幼児の生体情報、挙動情報及び環境情報を検出して報知手段に報知することができる。
【0012】
前記チャイルドシートには、該シートの背もたれ部に設けられた吹出口から空気を吹き出すシート空調装置が搭載され、
前記センサによって検出された情報に基づき、前記シート空調装置によって吹き出される空気の温度、湿度、流れ及び清浄度の少なくとも1つを調整するシート空調装置制御手段を備えるようにすることが望ましい。
【0013】
これにより、チャイルドシートに着座している乳幼児に対して、さらにきめ細かく空調を調整することができる。
【0014】
前記情報は、Bluetooth(登録商標)によって送受信される。
【0015】
Bluetooth方式は、比較的短い距離の情報の送受信を安定して行うことができるため、システム全体の信頼感が高められる。
【0016】
前記各センサは、前記チャイルドシートに対して着脱自在に取り付けられるようにすることができる。
【0017】
これにより、既存のチャイルドシートを使用して本発明を実施することができる。
【0018】
前記センサのうち、乳幼児の生体情報である乳幼児の体温を検出するセンサは、前記チャイルドシートの背もたれ部で、着座状態の乳幼児の背中によって押圧される部分に取り付けられた温度センサとすることができる。
【0019】
前記センサのうち、乳幼児の生体情報である乳幼児の発汗状況を検出するセンサは、前記チャイルドシートの背もたれ部で、着座状態の乳幼児の背中によって押圧される部分に取り付けられた湿度センサとすることができる。
【0020】
前記センサのうち、乳幼児の挙動情報である乳幼児の起床状態を検出するセンサは、前記チャイルドシートに設けられたベルトの裏面部で、着座状態の乳幼児の胸部を押圧する部分に取り付けられた振動センサとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例のフロントエアコン100のブロック図である。
【図2】リアエアコン300の斜視図である。
【図3】オーバーヘッドエアコン400の斜視図である。
【図4】チャイルドシート1の斜視図である。
【図5】チャイルドシート1と空調装置100のブロック図である。
【図6】表示パネル19の正面図である。
【図7】車両以外の場所にチャイルドシート1と表示パネル19を設置した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
図1は本発明の実施例のフロントエアコン100のブロック図、図2はリアエアコン300の斜視図、図3はオーバーヘッドエアコン400の斜視図、図4はチャイルドシート1の正面図である。
【実施例1】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0025】
最初に、本発明の車両用空調制御システムの構成について説明する。本実施例のシステムを構成する空調装置として、車両のフロントパネルの部分に装着されるフロントエアコン100(図1参照)、トランクルームにブロワーユニットやリアクーリングユニットを設置し、その吹出口を天井面の両サイドに設けたリアエアコン200(図2参照)、天井部にブロワーユニットやリアクーリングユニットを設置し、その吹出口を天井面に設け、主に後部座席の乗員に風を送るオーバーヘッドエアコン300(図3参照)等がある。また、チャイルドシート1に、チャイルドシートエアコン400が内装される場合がある。
【0026】
フロントエアコン100について説明する。図1に示されるように、フロントエアコン100は主ダクト101を備えている。主ダクト101には、車内空気を循環させるための内気吸い込み口113と、車外の空気を取込む外気吸い込み口114とが形成され、内外気切替ダンパー115によりいずれかを切り替えて使用する。これら内気吸い込み口113ないし外気吸い込み口114からの空気は、ファン116によって主ダクト101内に吸い込まれる。
【0027】
主ダクト101内には、吸い込まれた空気を冷却して冷気を発生させるためのエバポレータ117と、逆にこれを加熱して暖気を発生させるヒータコア102(エンジン冷却水の廃熱により発熱動作する)とが設けられている。そして、これら冷気と暖気とが、エアミックスダンパー103の角度位置に対応した比率にて混合され、吹出口104,105,106より吹き出される。このうち、フロントグラス曇り止め用のデフ吹出口104はフロントグラスの内面下縁に対応するインパネ上方奥に、フェイス吹出口105はインパネの正面中央に、フット吹出口106はインパネ下面奥の搭乗者足元に対向する位置にそれぞれ開口し、吹出口切替ダンパー107,108,109により個別に開閉される。
【0028】
具体的には、モータ120からのダンパー制御用の回転入力位相に応じて、ダンパー駆動ギア機構110により、フェイス吹出口105のみを開いた状態(フェイス吹出モード)、フェイス吹出口105とフット吹出口106とを開いた状態(フット・フェイス吹出モード)、フット吹出口106のみを開いた状態(フット吹出モード)、フット吹出口106とデフ吹出口104とを開いた状態(デフ・フット吹出モード)及びデフ吹出口104のみを開いた状態(デフ吹出モード)の間で切り替えられる。各吹出モードの選択は、モード切替スイッチ群75に含まれるモード選択スイッチ(図示せず)を個別に操作することにより行なう。
【0029】
また、内外気切替ダンパー115はモータ121により、エアミックスダンパー103はモータ119により、吹出口切替ダンパー107,108,109はモータ120により、それぞれ電動駆動される。これらのモータ119,120,121は例えばステッピングモータにて構成される。さらにブロワモータ123はブラシレスモータ等で構成され、PWM制御にて回転速度制御することにより吹出し風量が調整される。これらモータ(アクチュエータ)119〜121,123及びエバポレータ117は、フロントエアコンECU150とシリアル通信バス130により接続され、該シリアル通信バス130を介してフロントエアコンECU150により集中制御される。
【0030】
フロントエアコンECU150の実体はコンピュータハードウェアであり、その入出力部には、エバポレータセンサ151、内気センサ155、外気センサ156、水温センサ157及び日射センサ158が接続されている。また、フロントエアコンECU150には、風量設定スイッチ72、温度設定スイッチ73、吹出モードを切り替えるモード切替スイッチ群75、リアデフスイッチ76、内外気切替スイッチ77、A/Cスイッチ78、ファンスイッチ79及びオート切替スイッチ80が接続されている。
【0031】
フロントエアコンECU150は、搭載された制御アプリケーションの実行により、以下のような制御を行なう。
(1)内外気切替スイッチ77の操作入力状態に対応して、内気側及び外気側のいずれかに内外気切替ダンパー115が倒れるよう、対応するモータ121の駆動ICに制御指令を行なう。
(2)A/Cスイッチ78の操作状態に応じて、エバポレータ117の作動をオン・オフさせる。
(3)リアデフスイッチ70の操作に伴い、図示しないリアガラスの電熱線に通電し、リアガラスの曇り除去を行なう。
(4)オート切替スイッチ80の入力状態に基づいて、主空調装置CAの動作モードをマニュアルモードとオートモードとの間で切り替える。オートモードでは、温度設定スイッチ73による設定温度の入力情報と、内気センサ155、外気センサ156、水温センサ157及び日射センサ158の出力情報とを参照し、車内温度が設定温度に近づくよう周知のシーケンスに従い、エアミックスダンパー103の開度調整による吹出温度調整と、ブロワモータ123による風量調整と、吹出口切替ダンパー107,108,109の位置変更とがなされるよう、対応するモータ119,123,120の動作制御指令を行なう。
(5)マニュアルモードでは、風量設定スイッチ72とモード切替スイッチ群75との操作入力状態に対応して、ブロワモータ123による風量調整を行なうとともに、吹出口切替ダンパー107,108,109が対応する開閉状態となるようにモータ120への駆動制御指令を行なう。
【0032】
フロントエアコン100がオートエアコンである場合、その制御は、主空調風の目標吹出温度TAO(Temperature Air Output)を算出することにより行なう。この目標吹出温度TAOは、下記の式に基づいて算出されるものであり、車室内を設定温度TSETに維持するために必要な吹出温度を意味する。
【0033】
TAO=E×(TSET+△T)−F×TR−G×TAM−H×TS+C
TSET:設定温度(通常時には温度設定スイッチ73による設定温度、通信途絶時には記憶されている所定温度)
TR :室内温度(内気センサ155により検出)
TAM :外気温(外気センサ156により検出)
TS :日射量(日射センサ158により検出)
△T,C:補正定数
E〜H :係数
【0034】
なお、リアエアコン200とオーバーヘッドエアコン300の構成はフロントエアコン100とほとんど同一構成なので、その説明を省略する。
【0035】
次に、チャイルドシート1について説明する。本実施例のチャイルドシート1は、6歳未満の乳幼児を車両に乗車させる際に使用される。図4に示されるように、このチャイルドシート1は、乳幼児が着座する着座部2と、該着座部2の後端部に連続して斜め上方に起立する形態で延設され、着座した乳幼児の背中部分を受け止める背もたれ部3と、この背もたれ部3に内装され、背もたれ部3の両サイドに設けられたスリット4から伸縮可能に引き出される2本のベルト5と、着座部2の前部のほぼ中央部から立設する支持部6の上端部に取り付けられ、背もたれ部3から引き出した2本のベルト5の先端部(バックル)を係合させるバックル係合部7とを備えている。
【0036】
本実施例のチャイルドシート1には、着座した乳幼児の生体情報の1つである体温を計測するために、サーミスタ等の接触式温度センサ8が取り付けられている。この温度センサ8は、乳幼児の背中が密着する背もたれ部3の部分に取り付けられている。この温度センサ8により、乳幼児の体温が検出される。なお、この温度センサ8は、背もたれ部3以外にも、または背もたれ部3に加えて、着座部2において着座した乳幼児の大腿部が密着する部分に取り付けてもよい。
【0037】
チャイルドシート1の背もたれ部3で、温度センサ8の隣には湿度センサ9が取り付けられている。この湿度センサ9は、乳幼児の生体情報の1つである発汗状況を検出するためのものである。着座状態の乳幼児は、その背中をチャイルドシート1の背もたれ部3に密着させているため、背中の部分に汗をかきやすい。このため、湿度センサ9を乳幼児の背中が密着する背もたれ部3に取り付けることが望ましいが、例えば大腿部が密着する着座部2に取り付けてもよい。この湿度センサ9により、乳幼児の発汗状況が検出される。
【0038】
また、各ベルト5の裏側には振動センサ11が取り付けられている。この振動センサ11は、乳幼児の挙動情報(乳幼児が起きているか眠っているか。)を検出するものであり、例えば圧電素子によって振動を電気的に検出するものや、自在に移動するコイルが振動したときに磁石に触れることによって振動を検出するもの等を使用することができる。チャイルドシート1のベルト5は、着座した乳幼児の胸の部分を押圧する。そして、チャイルドシート1に着座している乳幼児が手を動かすと、それに伴って当該乳幼児の胸の部分も動く。この動きが振動センサ11によって検出される。即ち、振動センサ11が乳幼児の胸の振動を検出しているときには、該乳幼児が起きているものと判断することができる。もし、乳幼児の胸の動きが少なくなったことが振動センサ11によって検出されると、乳幼児が眠っているものと判断することができる。
【0039】
上記した温度センサ8、湿度センサ9及び振動センサ11は、乳幼児の生体情報を検出するためのものである。このため、チャイルドシート1において乳幼児の体と密着するような部位に取り付けることが望ましい。これに対して、チャイルドシート1の背もたれ部3の上部で、着座状態の乳幼児の頭上となる部分(乳幼児の体と密着しない部位)に、別の温度センサと湿度センサ(以下、それぞれ「第2温度センサ12」、「第2湿度センサ13」と記載する。)が隣接して取り付けられている。これらの第2センサ12,13は、チャイルドシート1周囲の環境情報(この場合、温度(車内温度)と湿度(車内湿度))とを検出するためのものである。一般に、乳幼児の体温は大人の体温よりも少し高く、かつ体温調整機能が未発達である。このため、大人が快適と感じる車内温度、湿度であっても、乳幼児の発汗量が多くなって「あせも」の原因となったり、乳幼児が不快感を感じたりする場合がある。これを防止するため、第2温度センサ12と第2湿度センサ13とにより、車内温度(特に、チャイルドシート1の周囲の車内温度と車内湿度)を検出し、モニタする必要がある。このため、第2温度センサ12と第2湿度センサ13は、フロントエアコン100、リアエアコン300及びオーバーヘッドエアコン400からの送風を直接に受けるような位置に取り付けることが望ましい。
【0040】
このチャイルドシート1の底部には、チャイルドシート1の本体部(着座部2と背もたれ部3)を車両の座席に設置するためのベース部14が設けられている。このベース部14は、チャイルドシート1の本体部を水平面内で回転可能に、かつ任意の角度で保持されるように支持している。このため、車両の走行方向に対してチャイルドシート1の向きを、一定の角度範囲で斜めに設置することができる。これにより、乳幼児の体の正面に風を当てたくない場合には、チャイルドシート1の本体部を少し斜め向きにすることで容易に対処することができる。
【0041】
本実施例のチャイルドシート1には、チャイルドシートエアコン400と送信アンテナ15とチャイルドシートエアコンECU16が内装されている。チャイルドシートエアコン400は、熱交換機能を有するペルチェモジュール等を備え、これによって熱交換された冷風又は暖風をチャイルドシート1の着座部2及び/又は背もたれ部3の複数箇所に設けられた吹出口(図示せず)から吹き出す機能を有している。チャイルドシートエアコンECU16は、各センサ8,9,11,12,13によって検出された情報に基づいてチャイルドシートエアコン400の動作を制御するとともに、送信アンテナ15を介して各情報を受信アンテナ18(後述)に送信する機能を有する。
【0042】
次に、図5を参照しながら、本実施例の空調制御システムのブロック図について説明する。チャイルドシート1側(図5の左側)では、チャイルドシートエアコンECU16に温度センサ8,12、湿度センサ9,13及び振動センサ11が接続されていて、これらのセンサ8,12,9,13,11によって検出された乳幼児の生体情報、挙動情報及びチャイルドシート1の周囲の環境情報(以下、これらをまとめて「情報」と記載する場合がある。)は、送信アンテナ15を介して車両側(図5の右側)の受信アンテナ18に送信される。また、チャイルドシートエアコンECU16には、チャイルドシートエアコン400が接続されていて、チャイルドシートエアコンECU16は、各センサ8,12,9,13,11によって検出された情報に基づいてチャイルドシートエアコン400の作動を直接に制御する。
【0043】
本実施例の空調制御システムの場合、チャイルドシート1側(送信アンテナ15)と車両側(受信アンテナ18)とは、無線方式(例えば、Bluetooth(登録商標)方式)により、情報が送受信される。Bluetooth方式は、2.4GHzの周波数帯を79の周波数チャネルに分け、利用する周波数をランダムに変える周波数ホッピングを行いながら、半径10〜100メートル程度のBluetooth搭載機器と、最大で24Mbpsの無線通信を行うものである。Bluetooth方式は指向性がないため、チャイルドシート1の送信アンテナ15と車両側の受信アンテナ18との間に障害物があっても送受信できるという利点がある。
【0044】
そして、車両の側に設けられたエアコンECU17にフロントエアコン100、リアエアコン200、オーバーヘッドエアコン300及び表示パネル19が接続されている。なお、このエアコンECUは、上記の各エアコン100〜300のいずれか2つ以上が搭載されているときにそれらの作動を制御するものである。もし、車両に搭載されているエアコンがフロントエアコン100のみの場合には、エアコンECU17は、フロントエアコンECU150(図1参照)と同一のものとなる。
【0045】
次に、表示パネル19について説明する。表示パネル19の最上段(チャイルドシート1のイラストが描かれている段)には、チャイルドシート1の周囲の環境情報を表示する環境情報表示部21が設けられている。本実施例の表示パネル19の環境情報表示部21には、チャイルドシート1の第2温度センサ12と第2湿度センサ13とによって検出されるチャイルドシート1の周囲の温度と湿度とをデジタル表示する周囲温度表示部23と周囲湿度表示部24とが設けられている。図6に示される表示パネル19の場合、チャイルドシート1の周囲の温度は26℃であり、同じく湿度は50%である。なお、チャイルドシート1の周囲の湿度は、ダニやウィルス等の有害微生物が繁殖しにくいとされている値(50〜60%)とすることが望ましい。
【0046】
表示パネル19における環境情報表示部21の下方(乳幼児のイラストが描かれている段)には、乳幼児の生体情報を表示する生体情報表示部22が設けられている。本実施例の表示パネル19の生体情報表示部22には、温度センサ8によって検出される乳幼児の体温をデジタル表示する体温表示部26と、湿度センサ9によって検出される乳幼児の湿度(発汗状況)をレベル表示する発汗状況表示部27とが設けられている。なお、図6における表示パネル19の発汗状況表示部27では、発汗状況が最大5レベルのうちの3レベルであることを示している。発汗状況が4レベル以上の場合、各レベルメータを赤色表示して、運転者に報知するようにしてもよい。
【0047】
また、その下方には、乳幼児の挙動情報を表示する挙動情報表示部25が設けられている。本実施例の表示パネル19の挙動情報表示部25には、振動センサ11によって検出される乳幼児の挙動情報として、乳幼児が起きているか否かをレベル表示する挙動表示部28が設けられている。この挙動表示部28は、LED等の複数個の発光体28aを横に並べて設けたもので、振動センサ11が振動を検出するとその大きさに応じて発光体が点灯する。もし、この発光体28aが点灯しなくなれば、乳幼児が眠っているものと判断される。なお、図6における表示パネル19の挙動表示部28では、5個の発光体28aのうちの3つが点灯している(換言すれば、乳幼児が手を活発に動かしている。即ち、乳幼児が起きている。)状態を示している。
【0048】
表示パネル19の最下段には、フロントエアコン100、リアエアコン200及びオーバーヘッドエアコン300を手動でオン/オフする各スイッチ29,31,32と、それらの作動時に点灯する作動表示ランプ29a,31a,32aとが設けられている。また、各スイッチ29,31,32の右側には、各エアコン100〜300の風量を調整するロータリースイッチ33が設けられている。なお、図6における表示パネル19では、フロントエアコン100のスイッチ29の作動表示ランプ29aが点灯しているため、フロントエアコン100が作動中である状態を示している。運転者は、表示パネル19の周囲温度表示部23、周囲湿度表示部24、体温表示部26、発汗状況表示部27及び挙動表示部28で表示される生体情報、環境情報及び挙動情報を視認しながら、手動でフロントエアコン100、リアエアコン200及びオーバーヘッドエアコン300の作動を調整することができる。なお、上記の各エアコン100〜300がオートエアコンの場合、運転者がこれらのスイッチ29,31,32,33は不要となる。
【0049】
この表示パネル19は、車両のフロントパネルの部分に設けられていて、例えばカーナビゲーション装置(図示せず)のディスプレイを使用することができる。そして、運転者がディスプレイ表示をチャイルドシート監視モードとするスイッチ(図示せず)を操作したときに各情報を表示する。
【0050】
本実施例の空調制御システムの作用について説明する。チャイルドシート1に着座している乳幼児の生体情報(体温、発汗状況)、挙動情報(起きているか寝ているか)及びチャイルドシート1の周囲の環境情報(車内温度、車内湿度)はチャイルドシート1に取り付けられた各センサ8,9,11,12,13によって検出される。これらの情報は、チャイルドシート1に搭載されたチャイルドシートエアコンECU16により、送信アンテナ15からBluetooth方式で車両に設けられた受信アンテナ18に向けて発信される。これらの情報を受け取ったエアコンECU17は、それらの情報を表示パネル19に表示する。この表示パネル19は、車両のフロントパネルに設けられているため、運転者は視点を大きく動かすことなく乳幼児の生体情報、挙動情報及び環境情報を把握することができ、運転に支障をきたすおそれがない。
【0051】
もし、これらの情報の値が予め設定された値(基準値)を超えている場合、エアコンECU17はそれらの値を基準値に近づけるようにフロントエアコン100、リアエアコン200及びオーバーヘッドエアコン300の風量、風向等を調整するとともに、チャイルドシートエアコンECU16がチャイルドシートエアコン400の風量、風向等を調整する。このときの調整は、各センサ8,9,11,12,13によって検出された情報に基づき、各エアコン100〜400によって吹き出される風(空気)の温度、湿度、流れ及び清浄度の少なくとも1つを調整することによってなされる。特に、チャイルドシート1が後部座席に取り付けられている場合には、フロントエアコン100の作動はそのままにして、リアエアコン200、オーバーヘッドエアコン300及びチャイルドシートエアコン400のいずれかの作動(風量、風向、吹出口の選択)を制御するようにしてもよい。これにより、乳幼児の体における必要部位にのみ送風をしたり、タイマで設定した時間だけ送風をしたりするというきめこまかい制御が可能となる。
【0052】
このときの調整は、エアコンECU150及びチャイルドシートエアコンECU16が自動で行っても、運転者(又はその他の乗員)が手動でエアコン100〜300のスイッチ29,31,32,33を操作してもよい。
【0053】
リアエアコン200とオーバーヘッドエアコン300の場合、それらの吹出口を調整することにより、乳幼児の特定の部位に対してのみ冷風又は暖風が当たるようにしたり、冷風や暖風が特定の部位に連続して当たらないように一定のサイクルで作動・停止を繰り返すようにしたりすることが望ましい。後者の場合、乳幼児の挙動情報と連動させてもよい。
【0054】
前述したように、表示パネル19は、例えばカーナビゲーション装置のディスプレイを利用することができる。また、表示パネル19を別体のディスプレイとし、フロントパネルに着脱自在とすることもできる。近時のチャイルドシート1では、図7に示されるように、乳幼児を着座させたまま容易に車両の座席から取り外すことができるもの(例えば、首がすわっていない乳児を寝かせる形で着座させるもので、「ベビーシート」等と称されているもの)も存している。このようなチャイルドシート34の場合、表示パネル35を車両から着脱できるようにしておくことが望ましい。そして、チャイルドシート34を車両から取り外して、例えば自宅内に運び込む。そして、チャイルドシート34を自宅内に設置し、チャイルドシート34に着座した乳幼児の生体情報、挙動情報及び環境情報をチャイルドシート1から離れた場所に設置した表示パネル35に無線送信する。これにより、チャイルドシート34から離れた場所で乳幼児の各情報をモニタすることもできる。
【0055】
本明細書では、チャイルドシート1,34に取り付けられた各センサ8,9,11,12,13が検出した情報をBluetooth方式によって無線送信する場合である。しかし、Bluetooth以外の方式(例えば、赤外線、超音波等)で無線送信する場合や、チャイルドシート1と車両とをケーブルで連結して有線送信する場合であってもよい。
【0056】
チャイルドシート1に、上記以外の環境情報を検出するセンサを取り付けてもよい。このセンサとして、例えばアレルギー性疾患を有する乳幼児の場合に、チャイルドシート1の周囲における花粉の有無を検出する花粉センサ等がある。
【0057】
本明細書の実施例で説明したチャイルドシート1は、車両と別体のものである。しかし、車両の座席に予め組み込まれ、必要に応じて引き出して使用する形態のチャイルドシートであってもよい。
【0058】
上記した各センサ8,9,11,12,13と、これらが検出した情報を送信する手段(送信アンテナ15、チャイルドシートエアコンECU16)とが、チャイルドシート1に対して着脱自在に取り付けられるようにしてもよい。これにより、既存のチャイルドシート1,34に対しても本発明の車両用空調制御システムを実施することかできる。また、乳幼児の成長に合わせて、各センサ8,9,11,12,13の取付け位置を変更することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、車両(例えば、自動車)に搭載される空調装置の制御、特に乳幼児に対する空調装置の制御システムとして利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1,34 チャイルドシート
3 背もたれ部
8,12 温度センサ(センサ)
9,13 湿度センサ(センサ)
11 振動センサ(センサ)
15 送信アンテナ(送信手段)
16 チャイルドシートエアコンECU(シート空調装置制御手段)
17 エアコンECU(空調装置制御手段)
19,35 表示パネル(報知手段)
100 フロントエアコン(空調装置)
200 リアエアコン(空調装置)
300 オーバーヘッドエアコン(空調装置)
400 チャイルドシートエアコン(シート空調装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャイルドシートに着座している乳幼児に対して空調装置の作動を制御する車両用空調制御システムであって、
チャイルドシートに着座している乳幼児の生体情報、挙動情報及び環境情報の少なくとも1つを検出するセンサと、
前記センサによって検出された情報を送信する送信手段と、
前記送信手段によって送信された情報を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した情報に基づき、前記空調装置によって吹き出される空気の温度、湿度、流れ及び清浄度の少なくとも1つを調整する空調装置制御手段と、
を備えることを特徴とする乳幼児に対する車両用空調制御システム。
【請求項2】
前記センサは、チャイルドシートに着座している乳幼児の複数部位における生体情報、挙動情報及び環境情報の少なくとも1つを検出するように取り付けられ、
前記空調装置制御手段は、乳幼児の特定部位における生体情報、挙動情報及び環境情報のいずれかの値が予め設定された基準値を超えているときに、それらのいずれかの値が前記基準値以下となるように前記特定部位に対して前記空調装置を作動させることを特徴とする請求項1に記載の乳幼児に対する車両用空調制御システム。
【請求項3】
前記受信手段が受信した情報を運転者に報知する報知手段が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の乳幼児に対する車両用空調制御システム。
【請求項4】
前記報知手段が、車両に対して着脱自在に取り付けられることを特徴とする請求項3に記載の乳幼児に対する車両用空調制御システム。
【請求項5】
前記チャイルドシートには、該シートの背もたれ部に設けられた吹出口から空気を吹き出すシート空調装置が搭載され、
前記センサによって検出された情報に基づき、前記シート空調装置によって吹き出される空気の温度、湿度、流れ及び清浄度の少なくとも1つを調整するシート空調装置制御手段を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の乳幼児に対する車両用空調制御システム。
【請求項6】
前記情報は、Bluetooth(登録商標)によって送受信されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の乳幼児に対する車両用空調制御システム。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の車両用空調制御システムを搭載したことを特徴とする車両。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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