説明

乳癌治療のためのDPPEと他の化学療法剤との併用

患者に乳癌に活性をもつ化学療法剤を投与する、ステージIまたはステージIIの乳癌の改良された術後補助療法を提供するが、これは、その化学療法剤の投与前に、細胞内ヒスタミン受容体におけるヒスタミン結合の強力なアンタゴニストであるジフェニル化合物を最初に投与するものである。このような前処置によって、以前に化学療法を受けていない患者、以前に各種治療(化学療法、放射線療法、および/またはホルモン治療)を受けていない患者、あるいはエストロゲン受容体陰性腫瘍を有する患者の生存期間が、全般により長くなると思われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステージIまたはステージIIの乳癌の術後補助療法に関する。
【背景技術】
【0002】
新たに乳癌であると診断された患者は、癌細胞が腋窩所属リンパ節に広がっている場合(ステージII)、通常、外科手術による腫瘍除去の後、全身療法を受ける。そのような症例、特に、エストロゲン応答性でない腫瘍(エストロゲン受容体陰性腫瘍)を有する女性の症例では、術後補助化学療法が処方される。術後補助化学療法は、癌細胞が腋窩所属リンパ節に広がっておらず(ステージI)、腫瘍細胞がエストロゲン受容体陰性であるときにも、新たに乳癌であると診断された患者に、外科手術による腫瘍除去後に処方される。歴史的に見ると、術後補助化学療法は、4または6サイクル施され、乳癌に対して活性のある薬物からなっている。これらの薬剤には、アントラサイクリン(ドキソルビシンまたはエピルビシン)、およびタキサン(タキソール、ブリストリマイヤーズスクイブによるパクリタキセルの商標)もしくはタキソテール(アベンティスファーマによるドセタキセルの商標)が含まれる。この手法によって、再発の危険が全体として約10%減少している。
【0003】
化学療法の目的は、患者への傷害を最小限に抑えながら、クローン原生腫瘍または悪性腫瘍を完全に根絶することである。しかし、ヒトの癌を管理する化学療法手法の主な制約の一つは、抗癌剤が、一般に正常細胞と腫瘍細胞とを区別できないことである。抗腫瘍剤は、ヒトに使用されるあらゆるクラスの薬物の中で治療係数が最も低く、したがって、重大かつ生命を脅かす可能性のある毒性が生まれる。一般に使用されるある種の抗腫瘍剤は、特定の組織に対して特有かつ急性の毒性を有する。たとえば、ビンカアルカロイドは、神経組織に対してかなりの毒性を有し、アドリアマイシンは心臓組織に、ブレオマイシンは肺組織に特異的な毒性を有する。一般に、主な部類の抗腫瘍剤のほぼすべてのメンバーが、胃腸組織、表皮組織、および骨髄造血組織の正常細胞に対して相当な毒性を有する。
【0004】
一般に、化学物質によるヒトの癌管理についての用量制限的な問題は、抗腫瘍剤が、骨髄造血組織の多能性幹細胞に対して毒性を有することである。この毒性は、大抵の抗癌剤が、分化途中の細胞に対して優先的に機能するが、周期を繰り返す正常細胞と周期を繰り返す腫瘍組織とを区別する能力があまりないことから生じる。
【0005】
いずれもマニトバ大学に譲渡されており、その開示を参照により本明細書に援用する米国特許第6,288,799号、米国特許第5,859,065号、米国特許第5,708,329号、米国特許第5,747,543号、および米国特許第5,618,846号には、正常細胞の増殖を抑制し、悪性細胞の増殖を促進する化合物、詳細には細胞内ヒスタミン受容体に選択的な強力なアンタゴニストを、細胞内ヒスタミンが正常細胞および悪性細胞の受容体に結合しないようにするのに十分な量だけ最初に投与する、癌のin vivo化学療法治療の改良された方法が記載されている。細胞内ヒスタミンの結合が阻害されるのに十分な時間が経過した後、化学療法剤を投与する。化学療法剤の癌に対する毒性作用が高められると同時に、正常細胞、特に骨髄細胞および消化管細胞に対する化学療法剤の有害作用が改善される。正常細胞の増殖を抑制し、悪性細胞の増殖を促進する有用な一化合物は、N,N−ジエチル−2−[4−(フェニルメチル)−フェノキシ]エタンアミンであり、本明細書ではDPPEと略記する。
【0006】
発明の概要
今回、驚くべきことに、第III相臨床試験でDPPE/ドキソルビシンとドキソルビシン単独とを比較した際、転移性もしくは再発性乳癌に罹患しており、以前に化学療法を受けていない、または化学療法、放射線療法、および/もしくはホルモン治療を含む治療を受けていない患者において、生存期間が全般に有意に増大(200〜300%)することが判明した。
【0007】
この観察結果は、DPPEとドキソルビシンの併用によるこのような術後補助化学療法が、ステージIまたはIIの乳癌患者においても、生存期間を全般に現在の手法よりもかなり増大させることを示唆するものである。本発明では、ステージIまたはIIの乳癌患者に、手術後、DPPEおよび類似化合物で前処置した後、任意選択でヒトの癌に活性をもつタキサン系化学療法剤と組み合わせた、ドキソルビシン、エピルビシン、または乳癌に活性をもつ他のアントラサイクリン系化学療法剤で治療することを含む化学療法を受けさせる。
【0008】
したがって、一態様では、本発明は、ステージIまたはIIの乳癌に罹患しているヒト患者における術後補助化学療法の方法であって、手術による腫瘍除去の後、
(a)前記患者に、少なくとも1種の次式のジフェニル化合物
【0009】
【化1】

【0010】
[式中、XおよびYはそれぞれ、フッ素、塩素、または臭素であり、Zは、1〜3個の炭素原子からなるアルキレン基または=C=Oであり、あるいはフェニル基が連結されて、三環を形成しており、oおよびpは、0または1であり、R1およびR2はそれぞれ、1〜3個の炭素原子を含むアルキル基であり、あるいは一緒になって、窒素原子を含む複素環を形成し、nは、1、2、または3である。]または薬剤として許容されるその塩を最初に投与するステップと、
(b)細胞内ヒスタミンの結合が阻害されるのに十分な時間が経過した後、患者に乳癌に活性をもつ化学療法剤を続いて投与するステップと
を含む方法を提供する。
【0011】
本発明を適用する際、ジフェニル化合物と化学療法剤は、一般に静脈内輸液によって投与する。好ましい一手順では、患者に、化学療法剤を投与する前にジフェニル化合物の溶液を所望の期間にわたり投与し、次いで、ジフェニル化合物と組み合わせた化学療法剤の溶液をその化学療法剤の投与期間の間投与する。所望であれば、ジフェニル化合物の溶液を化学療法剤の投与終了後に所望の期間投与して、化学療法剤の投与による副作用を改善する。
【0012】
発明の包括的な説明
本発明では、細胞内ヒスタミン受容体でのヒスタミン結合の強力なアンタゴニストであるジフェニル化合物を使用し、正常細胞の細胞内結合部位(HIC)での細胞内ヒスタミンの結合を阻害するのに十分な量で投与する。このような化合物は、pKiが少なくとも約5、好ましくは少なくとも約5.5である。
【0013】
本発明で有用となる特定の強力な化合物は、次式のジフェニル化合物
【0014】
【化2】

【0015】
[式中、XおよびYはそれぞれ、フッ素、塩素、または臭素であり、Zは、1〜3個の炭素原子からなるアルキレン基または=C=Oであり、oおよびpは、0または1であり、R1およびR2はそれぞれ、1〜3個の炭素原子を含むアルキル基であり、あるいは一緒になって、窒素原子を有する複素環を形成し、nは、1、2、または3である。]である。このジフェニル化合物の薬剤として許容される塩を使用してもよい。
【0016】
あるいは、ベンゼン環が連結されて、次の構造
【0017】
【化3】

【0018】
に従う三環を形成していてもよい。
【0019】
好ましい一実施形態では、次の基
【0020】
【化4】

【0021】
は、ジメチルアミノなどの他のアルキルアミノ基が用いられてもよいが、ジメチルアミノ基であり、別の好ましい実施形態では、ピペラジノなどの他の複素環基が用いられてもよいが、モルホリノ基である。oおよびpは、Zがアルキレン基であるとき通常は0であり、nは2でよい。特に好ましい一実施形態では、Zは、−CH2−であり、nは2であり、oおよびpはそれぞれ0であり、次の基
【0022】
【化5】

【0023】
は、ジエチルアミノ基である。この化合物、すなわちN,N−ジエチル−2−[4−(フェニルメチル)−フェノキシ]エタンアミンは、遊離塩基の形も、またはその塩酸塩もしくは他の薬剤として許容される塩の形も、本明細書ではDPPEと略記する。ベンゼン環を連結するメチル基に加えて、=C=Oなどの他の連結基が用いられてもよい。ハロゲン原子に加えて、他の置換基、たとえばイミダゾール基がベンゼン環上に設けられていてもよい。
【0024】
ここで使用する化学療法剤は、乳癌に活性をもつものである。そのような乳癌に活性をもつ化学療法剤には、ドキソルビシンやエピルビシンなどのアントラサイクリン、ミトキサントロンなどのアントラセンジオン;およびタキソール(ブリストルマイヤーズスクイブによるパクリタキセルの商標)やタキソテール(アベンティスファーマによるドセタキセルの商標)などのタキサンが含まれる。化学療法剤、またはそのような薬剤の混合物は、従来の乳癌療法でのその通常の投与方式と整合性のある方式で、すなわち、その溶液の静脈内輸液によって投与する。本発明の手順で使用することのできる化学療法剤の詳細な組合せとしては、ドキソルビシンもしくはエピルビシンとタキソールもしくはタキソテールが挙げられる。
【0025】
化学療法剤の投与前に患者にジフェニル化合物を投与することは、ジフェニル化合物によって正常細胞および悪性細胞での細胞内ヒスタミンの結合が阻害されるのに必要であり、それによって、結果としては、正常細胞の増殖が抑えられ、悪性細胞の増殖が増大する。
【0026】
化学療法剤を投与する前の、ジフェニル化合物を投与する期間の長さは、そのジフェニル化合物、その投与方式、および患者のサイズに応じて決まる。一般に、ジフェニル化合物は、化学療法剤の投与前に約30〜約90分間、好ましくは約60分間投与する。
【0027】
患者に投与するジフェニル化合物の量は、改善しようとする副作用に応じて決まるが、ともかく正常細胞での細胞内ヒスタミンの結合を阻害するのに十分であるべきである。本発明の有益な効果を実現するのに必要となる量は、使用する化合物、使用する化学療法剤、および使用するその化学療法剤の量に応じて決まる。
【0028】
一般に、ヒトに使用するジフェニル化合物の量は、約8〜約320mg/ジフェニル化合物を投与するヒトのM2であり、胃腸および骨髄の保護には、それぞれ約8mg/M2および240mg/M2が最適用量である。この用量範囲全般にわたり、本発明は、化学療法剤の乳癌細胞に対する化学療法効果を高めると同時に、伝統的な化学療法なら、疾患の過程に関与していない正常な細胞または組織の傷害をもたらす広範な状況において、正常細胞を化学療法剤による傷害から保護する。
【0029】
ステージIまたはステージIIの乳癌の治療では、ジフェニル化合物を約3〜約10mg/患者kgの量で使用し、化学療法剤の投与前に約30〜約90分間かけて静脈内投与し、化学療法剤の投与期間の間維持することが好ましい。転移性乳癌および/または再発性乳癌の患者で実施した本明細書に記載の特定の第III相臨床試験では、塩基の形のDPPE 5.3mg/kg(その塩酸塩の形のDPPE 6mg/kgと等価)を使用し、その水溶液として80分間かけて静脈内投与し、最後の20分間は、特定の化学療法剤の輸液を同時に行った。
【0030】
本明細書で使用する、乳癌に活性をもつ化学療法剤は、ドキソルビシンまたはエピルビシンを約50〜約75mg/患者M2、タキソールを約175〜約225mg/M2、およびタキソテールを約75〜約100mg/M2の合計量で使用する。転移性乳癌および/または再発性癌の患者で実施した、本明細書に記載の特定の第III相臨床試験では、60mg/M2のドキソルビシンを、DPPE溶液の輸液を行った最後の20分間に投与した。しかし、エピルビシンも、同程度に強力であり、ドキソルビシンの代わりに使用してよい。
【0031】
本明細書で記載する限り、第III相臨床試験は、転移性乳癌および/または再発性乳癌の患者で実施し、その一方の群の患者には、DPPEを投与した後ドキソルビシンを投与し、対照群には、ドキソルビシンのみを投与した。臨床試験からの様々なデータを集め、分析を行った。臨床試験の詳細は、実施例1に記載し、データの分析、ならびにDPPEを用いない研究との比較を実施例2に記載する。
【0032】
先述のように、本明細書で報告する第III相臨床試験では、転移性乳癌および/もしくは再発性乳癌に罹患しており、以前に化学療法を受けていない患者、または各種治療を受けていない患者、またはエストロゲン陰性腫瘍を有する患者は、DPPEで前処置したとき、このような前処置を受けていない患者よりも生存期間が全般に長かった。
【0033】
したがって、本発明の別の態様では、ステージIまたはステージIIの乳癌に罹患したヒト患者の生存期間を高める方法であって、(a)以前に化学療法治療を受けていない化学療法治療患者、以前に任意の各種治療を受けていない化学療法治療患者、またはエストロゲン陰性腫瘍を有する化学療法治療患者を選択するステップと、(b)前記の選択された患者に、化学療法治療を所定の間隔を挟んで複数サイクルにわたり受けさせるステップとを含み、
前記サイクルがそれぞれ、
(i)前記の選択された患者に、少なくとも1種の次式のジフェニル化合物
【0034】
【化6】

【0035】
[式中、XおよびYはそれぞれ、フッ素、塩素、または臭素であり、Zは、1〜3個の炭素原子からなるアルキレン基または=C=Oであり、あるいはフェニル基が連結されて、三環を形成しており、oおよびpは、0または1であり、R1およびR2はそれぞれ、1〜3個の炭素原子を含むアルキル基であり、あるいは一緒になって、窒素原子を含む複素環を形成し、nは、1、2、または3である。]または薬剤として許容されるその塩を最初に投与するステップと、
(ii)細胞内ヒスタミンの結合が阻害されるのに十分な時間が経過した後、患者に乳癌に活性をもつ化学療法剤を続いて投与するステップと
を含む方法を提供する。
【0036】
選択された患者には、約21〜約28日の所定の間隔を挟んで約4〜約6サイクルにわたって治療を施すことができる。このような手順では、上で論じた様々な選択肢、材料、および用量を使用してよい。
【実施例】
【0037】
実施例1
この実施例では、転移性乳癌および/または再発性乳癌に罹患した患者を治療する第III相臨床試験について述べる。
【0038】
患者に、ドキソルビシン(DOX)単独、またはドキソルビシンとDPPEの組合せによる治療を施した。遊離塩基の形のDPPEを、5.3mg/kgの用量で80分間かけて静脈内投与し、最後の20分間は60mg/M2の用量のドキソルビシンを投与したが、対照群には、60mg/M2のドキソルビシンのみを与えた。患者に、450mg/M2の累積用量のドキソルビシンが投与されるまで、各サイクルの後に21〜28日の休止期間をおく数サイクルの化学療法を受けさせた。
【0039】
305名の患者がこの調査に参加した。152名の患者をDPPE/ドキソルビシンにランダム化し、153名の患者にドキソルビシンのみを与えた。平均年齢は53歳であり、90%が以前に転移性疾患のための化学療法を受けておらず、60%が内臓疾患に罹患したことがあった。
【0040】
実施例2
この実施例は、実施例1に記載の第III相臨床試験で得たデータを分析するものである。
【0041】
以前に化学療法治療を受けている患者と比較した、以前に化学療法治療を受けていない転移性乳癌患者の生存期間、以前に各種治療(すなわち、化学療法、放射線療法、および/またはホルモン治療)を受けてない患者の生存期間、ならびに以前に治療を受けている患者の生存期間を測定した。生存期間は、DPPE/DOXの組合せおよびDOXのみを与えられた各患者群について決定した。
【0042】
これらの結果を図1(以前に受けた化学療法なし)、図2(以前に受けた各種化学療法なし)、および図3(エストロゲン受容体陰性腫瘍)に示す。これらの図からわかるように、以前に化学療法を受けていない転移性疾患患者について、DPPE/DOXの組合せによる治療では、DOXのみによる治療に比べて、平均生存期間の全般に有意な増大が認められた。すなわち、DPPE/DOXの組合せが29.7カ月(N=87)であるのに対し、DOXのみが16.2カ月(N=90)(P=0.006)であり、あるいは以前に治療を受けていない転移性疾患患者では、DPPE/DOXの組合せが24カ月(N=57)を超えるのに対し、DOXのみが15カ月(N=60)(P=0.001)であり、あるいはエストロゲン受容体陰性腫瘍を有する転移性疾患患者では、DPPF/DOXの組合せが17.4カ月(N=43)であるのに対し、DOXのみが9.3カ月(N=41)(P=0.009)であった。
【0043】
これらの結果は、ステージIまたはステージIIの乳癌患者の術後補助療法が、生存期間に全般に同様の改善をもたらし得ることを示唆するものである。
【0044】
発明の概要
本発明の概要では、本発明は、ステージIまたはステージIIの乳癌患者の生存期間を高める方法を提供する。本発明の範囲内で変更を加えることは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、以下で概略を述べるヒトの第III相臨床試験におけるDPPE/DOXの組合せによる治療の結果をドキソルビシン単独と比較して表すグラフ(実線:DPPE/DOX、点線:DOX)であり、転移性乳癌および/または再発性乳癌に罹患しており、以前に化学療法を受けていない患者の生存期間を示す。
【図2】図2は、以下で概略を述べるヒトの第III相臨床試験におけるDPPE/DOXの組合せによる治療の結果をドキソルビシン単独と比較して表すグラフ(実線:DPPE/DOX、点線:DOX)であり、転移性乳癌および/または再発性乳癌に罹患しており、以前に各種治療を受けていない患者の生存期間を示す。
【図3】図3は、以下で概略を述べるヒトの第III相臨床試験におけるDPPE/DOXの組合せによる治療の結果をドキソルビシン単独と比較して表すグラフ(実線:DPPE/DOX、点線:DOX)であり、転移性乳癌および/または再発性乳癌に罹患しており、その腫瘍がエストロゲン受容体(ER)陰性であった患者の生存期間を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージIまたはIIの乳癌に罹患しているヒト患者における術後補助化学療法の方法であって、手術による腫瘍除去の後、
(a)前記患者に、少なくとも1種の次式のジフェニル化合物
【化1】

[式中、XおよびYはそれぞれ、フッ素、塩素、または臭素であり、Zは、1〜3個の炭素原子からなるアルキレン基または=C=Oであり、あるいはフェニル基が連結されて、三環を形成しており、oおよびpは、0または1であり、R1およびR2はそれぞれ、1〜3個の炭素原子を含むアルキル基であり、あるいは一緒になって、窒素原子を含む複素環を形成し、nは、1、2、または3である。]または薬剤として許容されるその塩を最初に投与するステップと、
(b)細胞内ヒスタミンの結合が阻害されるのに十分な時間が経過した後、前記患者に乳癌に活性をもつ化学療法剤を続いて投与するステップと
を含む方法。
【請求項2】
次の基
【化2】

が、ジエチルアミノ基、ジメチルアミノ基、モルホリノ基、またはピペラジノ基である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
次の基
【化3】

がジエチルアミノ基であり、Zが−CH2であり、nが2であり、oおよびpがそれぞれ0である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ジフェニル化合物が塩酸塩または遊離塩基の形である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記の乳癌に活性をもつ化学療法剤がドキソルビシンである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記の乳癌に活性をもつ化学療法剤が、単独のドキソルビシンもしくはエピルビシン、またはそれをタキサン(タキソールもしくはタキソテール)と組み合わせたものである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記ジフェニル化合物を、前記化学療法剤の前記投与前に約30〜約90分間患者に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記時間が約60分間である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ジフェニル化合物を、前記化学療法剤の投与前に最高で約90分間かけてその溶液の静脈内輸液によって投与し、前記化学療法剤を投与する間も維持する、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記ジフェニル化合物を、前記化学療法剤の投与前に約60分間投与し、前記化学療法剤の静脈内輸液を約20分間行う間も維持する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ジフェニル化合物を約8〜約240mg/前記患者のM2の量で投与する、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記の量が約3〜約10mg/患者のkgである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ジフェニル化合物を約3〜約10mg/患者のkgの量で投与する、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記ジフェニル化合物を塩酸塩の形で約6mg/kgの量、または遊離塩基の形で5.3mg/kgの量で投与する、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記化学療法剤を、ドキソルビシンまたはエピルビシンについては約50〜約75mg/患者のM2、タキソールについては約175〜約225mg/M2、タキソテールについては約75〜約100mg/M2の量で投与する、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記化学療法剤を、約60mg/患者のM2の量で投与する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記のステージIまたはステージIIの乳癌患者が、以前に化学療法治療を受けていない患者である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記のステージIまたはステージIIの乳癌患者が、以前に各種治療を受けていない患者である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記のステージIまたはステージIIの乳癌に罹患しているヒト患者が、エストロゲン受容体陰性腫瘍を有する患者である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
ステージIまたはステージIIの乳癌に罹患したヒト患者の生存期間を高める方法であって、
(a)以前に化学療法治療を受けていない化学療法治療患者、以前に任意の各種治療を受けていない化学療法治療患者、またはエストロゲン陰性腫瘍を有する化学療法治療患者を選択するステップと、
(b)前記の選択された患者に、化学療法治療を所定の間隔を挟んで複数サイクルにわたり受けさせるステップとを含み、前記サイクルがそれぞれ、
(i)前記の選択された患者に、少なくとも1種の次式のジフェニル化合物
【化4】

[式中、XおよびYはそれぞれ、フッ素、塩素、または臭素であり、Zは、1〜3個の炭素原子からなるアルキレン基または=C=Oであり、あるいはフェニル基が連結されて、三環を形成しており、oおよびpは、0または1であり、R1およびR2はそれぞれ、1〜3個の炭素原子を含むアルキル基であり、あるいは一緒になって、窒素原子を含む複素環を形成し、nは、1、2、または3である。]または薬剤として許容されるその塩を最初に投与するステップと、
(ii)細胞内ヒスタミンの結合が阻害されるのに十分な時間が経過した後、患者に乳癌に活性をもつ化学療法剤を続いて投与するステップと
を含む方法。
【請求項21】
前記の選択された患者に、約21〜約28日の所定の間隔を挟んで約4〜約6サイクルにわたって治療を施す、請求項20に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−523825(P2007−523825A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−534899(P2004−534899)
【出願日】平成15年9月5日(2003.9.5)
【国際出願番号】PCT/CA2003/001343
【国際公開番号】WO2004/024131
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【出願人】(501221614)ザ ユニヴァーシティ オブ マニトバ (3)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF MANITOBA
【Fターム(参考)】