説明

乳酸脱水素酵素活性の測定方法

【課題】 新規な測定試薬を用い、比色法によって乳酸脱水素酵素の活性を測定することのできるようにした測定方法を提供する。
【解決手段】 乳酸と酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを基質として乳酸脱水素酵素活性を測定するにあたり、ピルビン酸オキシダーゼおよびペルオキシダーゼを共存させる。
ピルビン酸と還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを基質として乳酸脱水素酵素活性を測定するにあたり、乳酸オキシダーゼおよびペルオキシダーゼを共存させる。
血液、唾液その他の体液、または細胞培養液を検査対象とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乳酸脱水素酵素活性の測定方法に関し、特に新規な測定試薬を用いて比色法によって乳酸脱水素酵素の活性を測定することができるようにした方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳酸脱水素酵素〔L−Lactate:NAD+oxidoreductase(EC1.1.1.27)〕は乳酸と酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)からピルビン酸と還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)への反応、およびその逆反応を触媒する酵素である。本酵素は解糖系の最終段階の酵素であり、ほとんど全ての細胞の可溶性画分に存在する。細胞が障害を受けると、乳酸脱水素酵素は細胞外に漏出し、血中の酵素活性が上昇するため、臨床検査においては重要な検査項目の一つとなっている。
【0003】
また、臨床検査以外にも培養細胞を用いて、生理活性物質による細胞障害、細胞性免疫による細胞障害、補体依存性細胞障害、抗体依存性細胞障害などの試験、および細胞の生存率の測定等にも乳酸脱水素酵素の活性が指標として用いられている。
【0004】
従来、乳酸脱水素酵素が触媒する、乳酸+NAD+→ピルビン酸+NADH、又はピルビン酸+NADH→乳酸+NAD+の反応をNADH量の増減による340nmの吸光度変化を指標に検出し、これによって乳酸脱水素酵素の活性を測定する方法、あるいは正反応において生成するNADHと例えばジアホラーゼを用いてテトラゾリウム塩を還元発色させ、比色法によって乳酸脱水素酵素の活性を求める方法が知られている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−43220号公報
【特許文献2】特開2004−229537号公報
【特許文献3】特開2004−329141号公報
【特許文献4】特開2000−69997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる状況において、新規な測定試薬を用いて比色法によって乳酸脱水素酵素の活性を測定できるようにした乳酸脱水素酵素活性の測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る乳酸脱水素酵素活性の測定方法は、乳酸と酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを基質として乳酸脱水素酵素活性を測定するにあたり、ピルビン酸オキシダーゼおよびペルオキシダーゼを共存させることを特徴とする。
【0008】
化学式1に示されるように、まず乳酸と酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを基質に用いて、試料中の乳酸脱水素酵素によりピルビン酸を生成する。生じたピルビン酸はリン酸、酸素および水からピルビン酸オキシダーゼにより、アセチルリン酸、二酸化炭素、および過酸化水素に変換される。ここで、生成した過酸化水素はさらにペルオキシダーゼの存在下、種々の指示薬の酸化により色素を生成する。この色素を目視することによって乳酸脱水素酵素の活性を簡易迅速に求めることができる。また、この色素による吸光度の変化を指標にして例えば分光光度計によって高精度に乳酸脱水素酵素活性を測定することもできる。
【0009】
【化1】

【0010】
また、本発明に係る乳酸脱水素酵素活性の測定方法は、ピルビン酸と還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを基質として乳酸脱水素酵素活性を測定するにあたり、乳酸オキシダーゼおよびペルオキシダーゼを共存させることを特徴とする。
【0011】
化学式2に示されるように、ピルビン酸と還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを基質に用いて、試料中の乳酸脱水素酵素により乳酸を生成する。生じた乳酸は乳酸オキシダーゼにより、ピルビン酸と過酸化水素に変換される。生成するピルビン酸は乳酸脱水素酵素の基質として回収され、過酸化水素はさらにペルオキシダーゼの存在下、種々の指示薬の酸化により色素を生成する。この色素を目視することによって乳酸脱水素酵素の活性を簡易迅速に求めることができる。また、この色素による吸光度の変化を指標として例えば分光光度計によって高精度に乳酸脱水素酵素活性を測定することもできる。
【0012】
【化2】

【0013】
本発明に係る乳酸脱水素酵素活性測定試薬は、ピルビン酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、乳酸脱水素酵素基質、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドまたはその塩、ピルビン酸オキシダーゼ補酵素、ピルビン酸オキシダーゼ活性剤、リン酸、ペルオキシダーゼ発色基質、酵素安定化剤およびpH緩衝剤を含むことを特徴とする。
【0014】
この乳酸脱水素酵素活性測定試薬におけるペルオキシダーゼ発色基質には、4−アミノアンチピリンとフェノール誘導体又はアニリン誘導体を用いることができる。
【0015】
また、本発明に係る乳酸脱水素酵素測定試薬は、乳酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、乳酸脱水素酵素基質、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドまたはその塩、乳酸脱水素酵素補酵素、ペルオキシダーゼ発色基質、酵素安定化剤およびpH緩衝剤を含むことを特徴とする。
【0016】
この乳酸脱水素酵素測定試薬におけるペルオキシダーゼ発色基質には、2、2’−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)、ロイコ色素、ジフェニルアミン誘導体、ベンジジン誘導体、トリアリルイミダゾール誘導体、またはo−フェニレンジアミン誘導体を用いることができる。
【0017】
本発明に係る乳酸脱水素酵素活性測定キットは、ピルビン酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、乳酸脱水素酵素基質、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドまたはその塩、ピルビン酸オキシダーゼ補酵素、ピルビン酸オキシダーゼ活性剤、リン酸、ペルオキシダーゼ発色基質、酵素安定化剤およびpH緩衝剤を含む乳酸脱水素酵素活性測定試薬を、吸水性基材に含浸させてなることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る乳酸脱水素酵素活性測定キットは、乳酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、乳酸脱水素酵素基質、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドまたはその塩、乳酸脱水素酵素補酵素、ペルオキシダーゼ発色基質、酵素安定化剤およびpH緩衝剤を含む乳酸脱水素酵素測定試薬を、吸水性基材に含浸させてなることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る乳酸脱水素酵素活性測定方法および簡易測定キットは血液、唾液、その他の体液、および細胞培養液を検査対象とすることができる。
【0020】
乳酸脱水素酵素の基質としては、乳酸、乳酸リチウム、乳酸ナトリウム、乳酸アンモニウム、乳酸マグネシウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、ピルビン酸リチウム、ピルビン酸ナトリウム、ピルビン酸アンモニウム、ピルビン酸マグネシウム、ピルビン酸カリウム、ピルビン酸カルシウム等が好適に用いられる。これらの基質は発色液中の最終濃度が0.10〜500mmol/Lとなるように添加することが望ましい。
【0021】
pH緩衝剤としてはpH4〜9において緩衝作用を示す、シュウ酸、マレイン酸、リン酸、マロン酸、クエン酸、ジメチルグルタル酸、乳酸、または、HEPES、HEPPS,Tris,Bicine,Glycylglycine,TAPS等のGoodの緩衝液を用いることができる。特に、ピルビン酸オキシダーゼを用いる場合にはその基質でもあるリン酸をpH緩衝剤として最終濃度が10〜500mmol/Lとなるように用いることが望ましい。
【0022】
ピルビン酸オキシダーゼ、乳酸オキシダーゼおよびペルオキシダーゼは、例えば、植物由来のもの、動物由来のもの、微生物由来のもの、または遺伝子組換えにより調製されたものを用いることができる。添加濃度としてはそれぞれ0.1〜100U/mLが望ましい。
【0023】
ピルビン酸オキシダーゼおよび乳酸オキシダーゼの補酵素として、フラビンアデニンジヌクレオチドまたはその塩を最終濃度が0.5〜100μmol/Lとなるように、チアミンピロフォスフェートを最終濃度が1.0〜500μmol/Lとなるように用いることが望ましい。また、活性化剤としてマンガン、マグネシウム、カルシウム、コバルト等が用いられる。添加濃度としては0.1〜100mmol/Lが望ましい。
【0024】
安定化剤としては、ウシ血清アルブミン等のタンパク質、トレハロース、スクロース等の糖類、エチレングリコール、ポリエチレングリコール等のアルコール類が好適に用いられる。添加濃度としては、0.005〜5%が望ましい。
【0025】
ペルオキシダーゼ発色基質としては、例えば、4−アミノアンチピリンおよびフェノールもしくはその誘導体、またはアニリン誘導体の組み合わせ、3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾンおよびアニリン誘導体の組み合わせ、2、2’−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)、ロイコ色素、ジフェニルアミン誘導体、ベンジジン誘導体、トリアリルイミダゾール誘導体、またはo−フェニレンジアミン誘導体が挙げられる。
【0026】
フェノール誘導体としては、例えば、4−クロロフェノール、2,4−ジクロロフェノール、2,4−ジブロモフェノール、または2,4,6−トリクロロフェノールが挙げられる。
【0027】
アニリン誘導体としては、例えば、N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3、5−ジメトキシアニリン(HDAOS)、N−スルホプロピル−3、5−ジメトキシアニリン(HDAPS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン(DAOS)、N−エチル−N−スルホプロピル−3,5−ジメトキシアニリン(DAPS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3、5−ジメトキシ−4−フルオロアニリン(FDAOS)、N−エチル−N−スルホプロピル−3,5−ジメトキシ−4−フルオロアニリン(FDAPS)、N−(2−カルボキシエチル)−N−エチル−3,5−ジメトキシアニリン(CEDB)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メトキシアニリン(ADOS)、N−エチル−N−(3−スルホプロピル)−3−メトキシアニリン(ADPS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)アニリン(ALOS)、N−エチル−N−(3−スルホプロピル)アニリン(ALPS)、N−(3−スルホプロピル)アニリン(HALPS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメチルアニリン(MAOS)、N−エチル−N−(3−スルホプロピル)−3、5−ジメチルアニリン(MAPS)、N−エチル−N−(3−スルホプロピル)−3−メチルアニリン(TOPS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−メトキシアニリン(TOOS)、N−(2−カルボキシエチル)−N−エチル−3−メチルアニリン(CEMB)または、N−(2−カルボキシエチル)−N−エチル−3−メトキシアニリン(CEMO)が挙げられる。
【0028】
ロイコ色素としては、例えば、ロイコマラカイトグリーン、ビス(p−ジエチルアミノフェノール)−2−スルホニルメタン、ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−3,4−ジスルホプロポキシフェニルメタン、10−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−3,7−ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン、10−[3−(メトキシカルボニルアミノメチル)フェニルメチルアミノカルボニル]−3,7−ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン等が挙げられる。
【0029】
ジフェニルアミン誘導体としては、例えば、ビス[4−ジ(2−ブトキシエチル)アミノ−2−メチルフェニル]アミン、またはN,N−ビス(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−N’−p−トルエンスルホニル尿酸等が挙げられる。
【0030】
ベンジジン誘導体としては、例えば、ベンジジン、o−トリジン、o−ジアニシジン、3,3’−ジアミノベンジジン、N,N’−ビス(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)トリジン、または3,3’、5,5’−テトラアミノベンジジン等が挙げられる。
【0031】
トリアリルイミダゾール誘導体としては、例えば、2−(4−カルボキシフェニル)−3−N−メチルカルバモイル−4,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)イミダゾール、または2−(3−メトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−N−メチルカルバモイル−4,5−ビス(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)イミダゾール等が挙げられる。
【0032】
これら色素原体の使用濃度としては、4−アミノアンチピリンは0.1〜10mmol/L、フェノール誘導体、アニリン誘導体については1.0〜500mmol/Lが望ましい。
【0033】
吸水性基材には通常の濾紙、書道用吸い取り紙、高分子吸収体、不織布などが用いられる。本発明により製造された乳酸脱水素酵素活性測定キットは、検体溶液を浸した後、通常室温で10秒から10分間、好ましくは1分から5分間放置後の呈色を色調見本の色と比較して酵素活性を判定するものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例1における乳酸脱水素酵素活性([LDH])と550nmにおける吸光度の変化量(ΔA550)との関係を示す図である。
【図2】実施例2の結果において乳酸脱水素酵素活性([LDH])と550nmにおける吸光度(A550)との関係を示す図である。
【図3】実施例3の結果において乳酸脱水素酵素活性([LDH])と560nmにおける吸光度(A560)との関係を示す図である。
【図4】実施例4の結果において乳酸脱水素酵素濃度と試験紙の色調のRGB値の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0036】
ピルビン酸オキシダーゼおよびペルオキシダーゼを共存させる方法で乳酸脱水素酵素活性を測定した。乳酸リチウム20mg/mL、リン酸一ナトリウム二水和物15mg/mL、塩化マグネシウム六水和物2.0mg/mLおよびウシ血清アルブミン5.0mg/mLを含むリン酸緩衝液(pH6.0、37℃)890μLを予め37°Cに加温し、ブタ心臓由来乳酸脱水素酵素溶液(0〜50U/mL)を10μL添加した後、下記の発色液1を100μL添加して、反応を開始した。5分間反応後の550nmにおける吸光度(A550)を測定し、LDH非存在下における測定値との差(ΔA550)を乳酸脱水素酵素濃度([LDH])に対してプロットした。
【0037】
〔発色液1の組成(pH6.0)〕
乳酸リチウム 20mg/mL
リン酸一ナトリウム二水和物 15mg/mL
塩化マグネシウム六水和物 2.0mg/mL
ウシ血清アルブミン 5.0mg/mL
4−アミノアンチピリン 0.20mg/mL
チアミンピロフォスフェート 0.11mg/mL
フラビンアデニンジヌクレオチド二ナトリウム 10μg/mL
TOOS 0.24mg/mL
酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド一リチウム 3.0mg/mL
西洋ワサビペルオキシダーゼ 5U/mL
ピルビン酸オキシダーゼ 10U/mL
【0038】
結果を図1に示す。上記の測定条件において、5分間反応後のΔA550は乳酸脱水素酵素濃度の上昇に伴い、ミカエリスメンテン型の飽和曲線状に増大した(図1)。図1に示す測定データの近似式は次の数式1で表される(相関係数0.9996)。
【0039】
【数1】

【0040】
本測定条件において最大発色変化量の1/2を示す乳酸脱水素酵素量は0.12U/mLと求められ、本法により乳酸脱水素酵素活性を定量的に測定できることが示された。
【実施例2】
【0041】
乳酸オキシダーゼおよびペルオキシダーゼを共存させる方法で乳酸脱水素酵素活性を測定した。ピルビン酸ナトリウム0.11mg/mL、リン酸一ナトリウム二水和物15mg/mLおよびウシ血清アルブミン5.0mg/mLを含むリン酸緩衝液(pH6.0、37℃)800μLを予め37℃に加温し、ブタ心臓由来乳酸脱水素酵素溶液(0〜0.5U/mL)を100μL添加した後、下記の発色液2を100μL添加して、反応を開始した。5分間反応後の550nmにおける吸光度(A550)を測定し、乳酸脱水素酵素濃度([LDH])に対してプロットした。
【0042】
〔発色液2の組成(pH6.0)〕
ピルビン酸ナトリウム 0.11mg/mL
リン酸一ナトリウム二水和物 15mg/mL
ウシ血清アルブミン 5.0mg/mL
4−アミノアンチピリン 0.20mg/mL
フラビンアデニンジヌクレオチド二ナトリウム 10μg/mL
TOOS 0.24mg/mL
還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド 3.0mg/mL
西洋ワサビペルオキシダーゼ 5U/mL
ピルビン酸オキシダーゼ 10U/mL
【0043】
結果を図2に示す。上記の測定条件において5分間反応後のA550は[LDH]の増大に伴い、シグモイド曲線状に増大した。図2に示す測定データの近似式は次の数式2で表される(相関係数0.9984)。
【0044】
【数2】

【0045】
本測定条件下においては550nmにおける吸光度の測定値(A550)から数式2を用いて、乳酸脱水素酵素活性([LDH])を算出することができる。本法によっても乳酸脱水素酵素活性を定量的に測定できることが示された。
【実施例3】
【0046】
和光純薬工業製LDH細胞毒性テストワコーを用いて乳酸脱水素酵素活性を測定した。本測定キットはジアホラーゼとテトラゾリウム塩を含み、乳酸脱水素酵素活性を反応系で生成するジホルマザン色素量で検出するものである。
【0047】
緩衝液400μLと蒸留水400μLを混合して予め37℃に加温した後、発色液100μLおよびブタ心臓由来乳酸脱水素酵素溶液(0〜1.0U/mL)100μLを添加して反応を開始した。5分間反応後の560nmにおける吸光度(A560)を測定し、乳酸脱水素酵素濃度([LDH])に対してプロットした。
【0048】
結果を図3に示す。上記の測定条件において5分間反応後のA560は[LDH]の増大に伴い、シグモイド曲線状に増大した。検出シグナルの強弱や検出に要する時間等は発色液の酵素濃度、基質濃度、またpH等の条件によりある程度上下することが考えられるが、請求項1および請求項2記載の乳酸脱水素酵素活性の測定法は従来法を用いる市販の測定キットを使用した場合と比較して遜色なく利用できることが示唆された。
【実施例4】
【0049】
実施例1記載の発色液を書道用吸い取り紙(墨運堂社製、5mm×10mm)に浸漬したのち、遮光下で凍結乾燥を行い、乳酸脱水素酵素活性検出試験紙を得た。得られた試験紙にブタ心臓由来乳酸脱水素酵素溶液(0〜50U/mL)を20μL添加して室温で5分間放置した後、1N塩酸を10μL添加して反応を停止した。発色した試験紙をスキャナーで読み取り、画像処理ソフトウェア(Adobe Photoshop(登録商標))を用いて、色調を数値化(RGB値)した。
【0050】
結果を図4に示す。得られた試験紙は乳酸脱水素酵素との反応により赤紫色に変色した。R値、G値、およびB値の最大変化量の1/2の変化に要する乳酸脱水素酵素量はそれぞれ、1.4−0.5〜1.4+0.5、2.1−0.6〜2.1+0.6、および1.4−0.3〜1.4+0.3(U/mL)と求められた。本試薬濃度条件で作成された試験紙は0〜2U/mLの範囲の乳酸脱水素酵素活性の半定量に適していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸と酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを基質として乳酸脱水素酵素活性を測定するにあたり、ピルビン酸オキシダーゼおよびペルオキシダーゼを共存させることを特徴とする乳酸脱水素酵素活性の測定方法。
【請求項2】
ピルビン酸と還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを基質として乳酸脱水素酵素活性を測定するにあたり、乳酸オキシダーゼおよびペルオキシダーゼを共存させることを特徴とする乳酸脱水素酵素活性の測定方法。
【請求項3】
検査対象が血液、唾液その他の体液、または細胞培養液である請求項1又は2記載の乳酸脱水素酵素活性の測定方法。
【請求項4】
ピルビン酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、乳酸脱水素酵素基質、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドまたはその塩、ピルビン酸オキシダーゼ補酵素、ピルビン酸オキシダーゼ活性剤、リン酸、ペルオキシダーゼ発色基質、酵素安定化剤およびpH緩衝剤を含むことを特徴とする乳酸脱水素酵素活性測定試薬。
【請求項5】
ペルオキシダーゼ発色基質として、4−アミノアンチピリンとフェノール誘導体またはアニリン誘導体を用いる請求項4記載の乳酸脱水素酵素測定試薬。
【請求項6】
乳酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、乳酸脱水素酵素基質、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドまたはその塩、乳酸脱水素酵素補酵素、ペルオキシダーゼ発色基質、酵素安定化剤およびpH緩衝剤を含むことを特徴とする乳酸脱水素酵素測定試薬。
【請求項7】
ペルオキシダーゼ発色基質として、2、2’−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)、ロイコ色素、ジフェニルアミン誘導体、ベンジジン誘導体、トリアリルイミダゾール誘導体、またはo−フェニレンジアミン誘導体を用いる請求項6記載の乳酸脱水素酵素測定試薬。
【請求項8】
ピルビン酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、乳酸脱水素酵素基質、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドまたはその塩、ピルビン酸オキシダーゼ補酵素、ピルビン酸オキシダーゼ活性剤、リン酸、ペルオキシダーゼ発色基質、酵素安定化剤およびpH緩衝剤を含む乳酸脱水素酵素活性測定試薬を、吸水性基材に含浸させてなることを特徴とする乳酸脱水素酵素活性測定キット。
【請求項9】
乳酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、乳酸脱水素酵素基質、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドまたはその塩、乳酸脱水素酵素補酵素、ペルオキシダーゼ発色基質、酵素安定化剤およびpH緩衝剤を含む乳酸脱水素酵素測定試薬を、吸水性基材に含浸させてなることを特徴とする乳酸脱水素酵素活性測定キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−19465(P2011−19465A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168423(P2009−168423)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(391029336)長田産業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】