説明

乳酸菌数計測方法および乳酸菌数計測装置

【課題】乳酸菌含有検体から乳酸菌を効率良く採取し、乳酸菌を正確に検出し計測することを目的とする。
【解決手段】採取フィルタ7で、ろ過抽出した乳酸菌含有検体を蛍光発光色素で染色し、採取フィルタ7を乳酸菌数計測装置の検査台6にセット、励起光を照射し蛍光発光させ、光電変換素子で撮影した画像を面積解析する。面積解析は、発光点の面積および発光輝度から単体の菌と乳酸菌の塊、異物を区別し、乳酸菌と判断した発光点の面積および発光輝度から、乳酸菌の塊りと判断したものを発光面積の大きさにおける乳酸菌数を算出して乳酸菌数を計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸菌含有検体の乳酸菌数計測をおこなうための乳酸菌数計測方法および計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の計測および検査方法は、栄養成分が含まれる寒天培地に検体を0.1ml滴下しコンラージ棒にて塗抹する塗抹寒天培養法、寒天培地が固まらない状態で検体1mlを混釈する混釈培養法、液体培地にて検体を0.1mlもしくは1ml添加する液体培養法などで培養し、その増殖活性を検出する培養法が用いられている。培養法での検査は、現在最も広く利用されている検出手段であるが、培養に24〜72時間かかること、培養条件(温度、時間、培地栄養成分)が一致しない場合は培養することができないことなどが課題として挙げられる。
【0003】
また、メンブレンフィルターを使用して計測する方法として、アデノシン三リン酸(以下ATP)分解酵素を含む溶液をメンブレンフィルターに施した後、乾燥処理をしたメンブレンフィルターに検体中の微生物をろ過捕集し、必要であれば所要時間培養した後、ATPを抽出するための液体抽出試薬と発光試薬であるルシフェリン・ルシフェラーゼを霧状に噴霧することにより、ルシフェリンとルシフェラーゼがATPと反応して、1分子のルシフェリンの酸化によって1フォトンの発光をし、その発光を高感度CCDカメラで撮り込み微生物を計測していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平9−512713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の検査法である培養法は、検査の結果が得られるまでに24〜48時間またはそれ以上の培養時間が必要となり、生鮮食品などの製造あるいは製品出荷の段階で検査結果待ちを要し、時間的、経済的に大きなデメリットとなっており、場合によっては検査結果が判る前に出荷せざるをえないという課題があり、検体中乳酸菌数を計測するのに要する時間を短時間にすることが要求されている。
【0006】
また、検体中に乳酸菌と同じように発光する蛍光異物等が含まれる検体の検査においては、乳酸菌と同じように発光する蛍光異物等と乳酸菌の蛍光との明確な差が得られず、正確な乳酸菌数の計測ができないという課題があり、正確な乳酸菌数を計測することが要求されている。
【0007】
本発明は、従来の課題を解決するものであり、検体中の乳酸菌数を計測するのに要する時間を短時間に、また、メンブレンフィルターに捕集した乳酸菌と異物を判別し、検体中の正確な乳酸菌数を検出する乳酸菌数計測方法および乳酸菌数計測装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の乳酸菌数計測方法および計測装置は上記目的を達成するために、ろ過抽出した乳酸菌含有検体に、励起光を照射し発光点を光電変換素子で撮影した画像を面積解析して乳酸菌数を計測することを特徴とする乳酸菌数計測方法としたものである。
【0009】
また、面積解析は、発光点の面積および発光輝度から単体の菌と乳酸菌の塊、異物を区別する乳酸菌数計測方法としたものである。
【0010】
また、乳酸菌と判断した発光点の面積および発光輝度から、乳酸菌の塊りと判断したものを発光面積の大きさにおける乳酸菌数を算出する乳酸菌数計測方法としたものである。
【0011】
また、順次撮影した画像から、乳酸菌の数量を積算する手段を有する乳酸菌数計測方法としたものである。
【0012】
また、ろ過抽出した乳酸菌含有検体に染色法を用いる乳酸菌数計測方法としたものである。
【0013】
また、ろ過抽出した乳酸菌含有検体のpHを調整する乳酸菌数計測方法としたものである。
【0014】
また、染色法が蛍光染色法である乳酸菌数計測方法としたものである。
【0015】
また、採取フィルタで乳酸菌をろ過抽出し、第1の試薬と、第2の試薬と、第3の試薬と、第4の試薬の中でいずれか1種類あるいは複数種類の試薬を用いて乳酸菌を染色した後、予め定められた波長域で励起光を照射する光源と、前記励起光によって照射されて発光する予め定めたれた波長域の光を前記採取フィルタの設定した一定面積を受光する受光手段と、前記光源によって照射されて発光した光を設定した一定の時間内に受光し撮影した画像を、その受光した光量が設定したしきい値の範囲で、かつ設定した面積の範囲であるものを乳酸菌と判断する乳酸菌判断手段と、乳酸菌判断手段によって乳酸菌と判断した発光点1個の大きさから、単体の菌と乳酸菌の塊りを判断して、塊りの大きさにおける乳酸菌の数量を算出し、順次積算することで乳酸菌の数量を算出する、前記採取フィルタの1部あるいは全面積の発光点を確認するために、前記採取フィルタあるいは受光手段を移動させる移動手段で、乳酸菌の数量を順次積算する手段を有する乳酸菌数測定方法を行なうための乳酸菌数計測装置としたものである。
【0016】
また、前記採取フィルタが表面形状の変形しないフィルタである乳酸菌数計測装置としたものである。
【0017】
また、前記採取フィルタが色落ちしないフィルタである乳酸菌数計測装置としたものである。
【0018】
また、前記フィルタ上に顔料を担持した乳酸菌数計測装置としたものである。
【0019】
また、前記採取フィルタが暗色のフィルタである乳酸菌数計測装置としたものである。
【0020】
また、前記採取フィルタ上に金、銅、クロム、白金、パラジウムから選ばれる少なくとも1種類の金属成分を含む薄膜が形成された乳酸菌数計測装置としたものである。
【0021】
また、受光手段が、少なくとも乳酸菌の大きさが認識できる面積を有した複数個の光電変換素子である乳酸菌数計測装置としたものである。
【0022】
また、光源を1種類あるいは複数種類であり、予め定められた波長域を1種類あるいは複数種類であり、その1種類あるいは複数種類の波長域で照射された発光する光を予め定められた、複数種類の波長域の光を各々受光する受光手段と、各々の波長域での光量の比から発光した点あるいは面積を乳酸菌と判断する乳酸菌判断を有する乳酸菌数計測装置としたものである。
【0023】
また、複数種類の光源と複数の波長域を受光する受光手段を1種類あるいは設定した種類の前記光源および受光手段を切替て、設定した種類のみ波長域の光源と受光手段で乳酸菌を検知する乳酸菌数計測装置としたものである。
【0024】
また、乳酸菌判断手段によって、設定した面積以上のため微生物以外と認識された発光点の面積を順次積算あるいはその面積を1つと認識して順次個数を積算し、その総面積あるいは総個数が、設定した面積あるいは個数以上のときに注意を表わす注意手段を有した乳酸菌数計測装置としたものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、乳酸菌含有検体において、採取フィルタ上で乳酸菌を捕集することが可能となり、連鎖菌が含まれる乳酸菌においても短時間で検出および計測ができる。
【0026】
また、採取フィルタに捕集した乳酸菌と異物を判別し、検体中の正確な乳酸菌数を検出および計測ができる。
【0027】
また、フィルタ形状の変形や脱色しないフィルタであるため、染色法あるいは蛍光染色法での測定であっても、乳酸菌の検出および計測に影響を与えず精度良く乳酸菌検出および計測ができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態2の乳酸菌数計測装置の一態様を示す構成図
【図2】同フローチャート
【図3】同計測フローチャート
【図4】本発明の実施例の蛍光発光画像の顕微鏡写真
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の請求項1記載の乳酸菌数計測方法は、ろ過抽出した乳酸菌含有検体に励起光を照射し発光点を光電変換素子で撮影した画像を面積解析して乳酸菌数を計測することを特徴とする乳酸菌検出方法としたものであり、効率良く簡単な構成で乳酸菌を検出するという作用を有する。
【0030】
また、面積解析は、発光点の面積および発光輝度から単体の菌と乳酸菌の塊、異物を区別し、検体中の発光物の判断をおこなって計測することができるという作用を有する。
【0031】
また、乳酸菌と判断した発光点の面積および発光輝度から、乳酸菌の塊りと判断したものを発光面積の大きさにおける乳酸菌数を算出し、順次積算することで、乳酸菌の数量を積算する手段を有するものであり、検体中の乳酸菌濃度を正確に計測することができるという作用を有する。
【0032】
また、順次撮影した画像から、乳酸菌の数量を積算する手段を有するものであり、検体中の乳酸菌濃度を正確に計測することができるという作用を有する。
【0033】
また、ろ過抽出した乳酸菌含有検体に染色法を用い乳酸菌を検出するという作用を有する。
【0034】
また、ろ過抽出した乳酸菌含有検体のpHを採取フィルタ表面上で乳酸菌の性質が変化しないように、pHを調整する手段を備える乳酸菌数計測方法としたものであり、検出時の染色性を高め、感度良く乳酸菌を検出することができるという作用を有する。
【0035】
また、前記採取フィルタ上に捕捉した、乳酸菌を染色法あるいは蛍光染色法で検知あるいはカウントする乳酸菌数計測方法であり、発光した乳酸菌を光学的に計測するという作用を有する。
【0036】
また、採取フィルタで乳酸菌をろ過抽出し、第1の試薬と、第2の試薬と、第3の試薬と、第4の試薬の中でいずれか1種類あるいは複数種類の試薬を用いて乳酸菌を染色した後、予め定められた波長域で励起光を照射する光源と、前記励起光によって照射されて発光する予め定めたれた波長域の光を前記採取フィルタの設定した一定面積を受光する受光手段と、前記光源によって照射されて発光した光を設定した一定の時間内に受光し撮影した画像を、その受光した光量が設定したしきい値の範囲で、かつ設定した面積の範囲であるものを乳酸菌と判断する乳酸菌判断手段と、乳酸菌判断手段によって乳酸菌と判断した発光点1個の大きさから、単体の菌と乳酸菌の塊りを判断して、塊りの大きさにおける乳酸菌の数量を算出し、順次積算することで乳酸菌の数量を算出する、前記採取フィルタの1部あるいは全面積の発光点を確認するために、前記採取フィルタあるいは受光手段を移動させる移動手段で、乳酸菌の数量を順次積算する手段を有するものであり、発光した物質と乳酸菌を差別化し計測するという作用を有する。
【0037】
また、前記フィルタが表面形状の変形しないフィルタである乳酸菌数計測方法としたものであり、フィルタ表面の平面性を高め、乳酸菌の検出位置を明確にし、検出・計測時の装置構成を簡略にすることができるという作用を有する。
【0038】
また、前記フィルタが、色落ちしない暗色のフィルタとした乳酸菌数計測方法であり、蛍光検出時バックグランドの輝度を抑え、感度を高くするという作用を有する。
【0039】
また、前記フィルタ上に、金、銅、クロム、白金、パラジウムから選ばれる少なくとも1種類の金属成分を含む薄膜が形成されたものである乳酸菌数計測方法であり、乳酸菌検出時に励起光を照射した際の光の反射を防止することができ、乳酸菌の検出および計測を妨害することなく、正確に乳酸菌の検出および計測するという作用を有する。
【0040】
また、光源を1種類あるいは複数種類であり、予め定められた波長域を1種類あるいは複数種類であり、その1種類あるいは複数種類の波長域で照射された発光する光を予め定められた、複数種類の波長域の光を各々受光する受光手段と、各々の波長域での光量の比から発光した点あるいは面積を乳酸菌と判断し検知するという作用を有する。
【0041】
また、複数種類の光源と複数の波長域を受光する受光手段を1種類あるいは設定した種類の前記光源および受光手段を切替て、設定した種類のみ波長域の光源と受光手段で乳酸菌を検知するという作用を有する。
【0042】
また、乳酸菌判断手段によって、設定した面積以上のため乳酸菌以外と認識された発光点の面積を順次積算あるいは、その面積を1つと認識して順次個数を積算し、その総面積あるいは総個数が、設定した面積あるいは個数以上のときに検知し、注意を表わす手段を有する。
【0043】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0044】
(実施の形態1)
例えば乳酸菌やまた、それを含む各種食品があるが、乳酸菌の検出もしくは計測する場合、従来の検査法である培養法は、検査の結果が得られるまでに24〜48時間またはそれ以上の培養時間が必要となり、製造あるいは製品出荷の段階で検査結果待ちを要し、時間的、経済的に大きなデメリットとなっており、場合によっては検査結果が判る前に出荷せざるをえないということもあるため、迅速な乳酸菌の計測が必要となっている。
【0045】
また、乳製品の成分には、染色試薬や蛍光染色試薬と反応しやすい成分も含まれており、顕微鏡などで観察する場合、非常に難しく、熟練を要する。
【0046】
通常、微生物をメンブレンフィルタ法で測定するためには、0.2〜0.4μmのフィルタでろ過を行い、フィルタ上に捕集された微生物を顕微鏡で観察、あるいは、そのフィルタを培地上に載せて培養する。また、食品分野においては、目的とする微生物を捕集でき、且つ、ろ過に影響が少ない0.4μmの孔径を持つフィルタを用いられることが多い。
【0047】
また、フィルタの種類はPP(Polypropylene)、PVC(Polyvinyl chloride) PC(Polycarbonate)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)、PVDF(Polyvinylidiene fluoride)、MCE(Mixed cellulose esters)、PES(Polyether sulfone)、NYL(Nylon)などがある。
【0048】
例えばPCの材質のように表面がフラット(±2μm以下、好ましくは±1μ以下)で、しかも、放射線を用いて穴をあけており、非常に均一な細孔があいているために、微生物がフィルタ上の表面に埋まることなく捕集されるため、通常用いられている。このようなフィルタは、細孔の柔軟性も悪く、かつ開口率も低いために、細孔以上の粒径の粒子があると、ろ過が困難である。但し、微生物以外の物質や成分がなければ、表面の凹凸も少なく細孔に微生物が埋まることが無い為、その後の顕微鏡観察や特に自動化して機械的に測定する場合においても望ましい。
【0049】
ろ過した後、染色あるいは蛍光染色した乳酸菌を顕微鏡で観察、自動化した装置で測定する場合、色落ちしない暗色のフィルタを用いることで、精度良く測定することが可能である。暗色とは、黒色あるいはそれに近い色であるが、顕微鏡で観察するときに白色光あるいは紫外光など試薬の特性に応じた特定の波長の光を照射した際に照射した光を吸収しない色であることを示している。上記に示したフィルタの材質は、白または白に近いものが多く、特に紫外線を照射したときに反射あるいは自家蛍光して測定が困難になることがある。フィルタは、水に濡れることで、反射は起こしにくくなるが、水に濡れた状態で反射が防止できていることが、フィルタの色としては重要である。通常フィルタの材料は、暗色であることが少ないため、黒または黒に近い灰色で着色が必要で、その方法としては、色落ちがしにくい顔料や墨汁などが望ましい。
【0050】
金、銅、クロム、白金、パラジウムなどから選ばれた金属の薄膜をフィルタ表面に蒸着などで被覆することで、反射を防止することができる。特に金は紫外線の反射率が低い。つまり、暗色とは、黒に近い色を示すとともに光の反射が少ないことを示す。
【0051】
微生物を染色する方法としては、細胞若しくは微生物が付着した検体に第1の試薬である4´,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール二塩酸塩と第2の試薬であるプロピュームイオダイドと第3の試薬である6−カルボキシフルオレセインジアセテートと第4の試薬である4−メチルウンベリフェリル−β−D−ガラクトシドをそれぞれ混合した試薬を接触させる。生死細胞の核酸と結合した4´,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール二塩酸塩は、励起波長359nmの時に励起波長を吸収して461nmの蛍光波長を発し生死細胞の発色させる。また死細胞の核酸と結合したプロピデュームイオダイドは、励起波長535nmの時、励起波長の光量を吸収して617nmの蛍光波長に変え死細胞のみを発色させる。
【0052】
また、他の蛍光試薬として生死細胞用蛍光発光試薬では、例えばYTO11〜SYTO16、SYTO20〜SYTO25、SYTO40〜SYTO45、SYTO17、SYTO59〜SYTO64、SYTO80〜SYTO85、DAPI、SYBRGreen、Hoechst33342、Hoechst33258、SYTO9とがある。また、死細胞用蛍光発光試薬では例えばPropidium Iodide、SYTOXGreen、BOBO−1、YOYO−1、YO−PRO−1、TOTO−1、POPO−3、TO−PRO3、SYTOXBlue、SYTOXOrangeとがある。蛍光試薬によって、それぞれ励起光の波長を設定することで、試薬と反応した生死細胞、死細胞を蛍光発光することができる。
【0053】
また、生菌だけが有しているエステラーゼと反応するものや呼吸活性を検知できる試薬を用いて生菌だけを染色するもの、細胞膜を透過しないために細胞膜が損傷を受けて死んだ場合に、そこから透過してDNAなどの核酸と結合して染色することで死菌だけを染色するもの、同様にDNAなどの核酸と結合するもので、細胞膜を透過する性質であるため、生菌と死菌の両方を染色するもの、特定の微生物だけが代謝する特定微生物由来物質と反応することや特定の微生物とのみ反応する蛍光ラベルを有した抗体やマイクロファージで特定の微生物のみを染色するものなどがある。
【0054】
また、微生物検査を行う場合、サンプル量は多いほど良い。従来の培養法では、0.1mlが最大であるため、ろ過ができることでサンプル量を0.1mlあるいは1ml以上が可能になり、菌濃度は1ml当たりの個数として測定するため、サンプル量が多ければ多いほど感度、精度が向上する。
【0055】
(実施の形態2)
図1は乳酸菌数計測装置の一態様を示す構成図である。この乳酸菌数計測装置は、光源集光手段としてのレンズ1、受光部2を含む。光源3から発せられた励起光から目的の波長を取り出すために励起光分光フィルタ4で分光する。分光された励起光はプリズム5を経て、光路を変化させられる。光路を変化させられた励起光はレンズ1を経て検査台6に設置された乳酸菌の採取フィルタ7を含む部位、即ち、採取フィルタ7と台座8からなる組合せ体の採取フィルタ7の表面に集光される。そこで励起光によって励起された乳酸菌が有する蛍光は、再びプリズム5を透過し、受光部2に到達する。受光部2に到達した蛍光は、目的の蛍光のみを取り出すために蛍光分光フィルタ9を経て、受光部に内蔵された光電変換素子10に到達し、信号化され、認識される。また、図に示していないが、この乳酸菌数計測装置は検査台6を移動する手段を備えており、採取フィルタ7の表面の蛍光発光を全て、若しくは一部を受光することができる。
【0056】
光電変換素子10に到達した461nmと617nmの蛍光において、生菌と死菌は461nmの蛍光発光しており、更に死菌は617nmでも蛍光発光しているので、乳酸菌判断手段11により、乳酸菌若しくは異物と光の波長の違いを蛍光分光フィルタ9で分光後目的の蛍光波長のみが取り出され光電変換素子10に到達し、励起波長359nmを吸収し励起されて461nmで蛍光発光しているものは生菌と死菌を含む乳酸菌と判断され、励起波長535nmを吸収し励起され617nmで蛍光発光しているものは死菌と判断され、461nmと617nmの両方で蛍光発光してないものは異物と判断され、乳酸菌と判断された蛍光は積算されて、その数量が計測される。乳酸菌判断手段11としては、上記判断手順をプログラミングされたマイコン等がある。
【0057】
光源3より発生した励起光は、レンズ1によって集光されるが、その際レンズ1によって励起光を照射する範囲は微小な一定面積に集光される。この場合、微小な一定面積とは微生物の大きさに基づいて設定した場合、一辺0.2μm乃至7.0μm程度の範囲を指し示す。また、現在最も利用されている微生物検出手段の一つである寒天培地拡散法との比較に基づいた場合、寒天培地拡散法によって培養、増殖した微生物の集団によって形成されるコロニーは、その距離が近接している場合、コロニー同士が重なり合う場合があり、最終的に目視で確認した場合、一つのコロニーとして認識してしまう事例が生ずる場合がある。そこで、この場合の微小な一定面積とは、コロニー同士が重なり合わない距離に基づいた場合、一辺100μm乃至500μm程度の範囲を指し示す。つまり微小な一定面積とは、乳酸菌判断手段11にて大きさで乳酸菌と認識できる大きさである。受光部2は、複数の光電変換素子10でフィルタ全体を一度で画像として撮影しても良いし、微小(一辺が10μm以下)で1個の光電変換素子10で撮影後、ひとつひとつの画像を組合わせて、最終的に乳酸菌の大きさを認識しても良い。
【0058】
レンズ1によって集光された励起光の照射時間は、蛍光を発する試薬の消光時間と励起光強度に依存する。試薬の種類によっては、自然界に存在する紫外光によっても分解する場合があり、2秒乃至300秒前後の範囲内で励起光を照射することが望ましい。
【0059】
発光を検出する際、光源3の波長の幅が広いものである場合は、励起光分光フィルタ4によって励起波長を調整、分光することが可能となる。励起光分光フィルタ4は、目的の検出対象に応じて変えられるため、様々な蛍光を発する試薬に対応できる。
【0060】
また、同時に、発光した蛍光波長の幅が広いものである場合は、目的の発光を検出するために蛍光分光フィルタ9を目的の検出対象に応じて変えることで様々な蛍光を発する試薬に対応できる。
【0061】
光源3としては、各種ダイオード、ハロゲンランプ、キセノンランプ、冷陰極管、レーザー、ブラックライト、水銀ランプなどが挙げられる。これらの光源のうち、最大励起波長が比較的限定されているダイオード、冷陰極管、ブラックライトなどは、前記励起光分光フィルタ4および蛍光分光フィルタ9を使用することなく実施できる場合がある。また、ハロゲンランプ、水銀ランプなどについては、励起光分光フィルタ4および蛍光分光フィルタ9を使用する必要がある場合がある。
【0062】
プリズム5およびレンズ1は、必要に応じてそれぞれ紫外光を透過する性質を有する。紫外光を透過する性質を有するものとしては石英ガラスなどが挙げられる。これにより紫外光で励起される試薬などにも対応できる。微生物の採取フィルタ7を含む部位を設置する検査台6は回転能を有する。レンズ1により集光された励起光は、微生物の採取フィルタ7の外周部より中心部へ、若しくは、中心部より外周部へ、半径分の距離を移動する。その際、レンズ1により集光された励起光の位置が外周部に存在するときと中心部に存在するときで検査台6の回転速度を変化させることによって、レンズ1により集光された励起光が外周部に存在するときと中心部に存在するときで励起された試薬が発した蛍光のずれ、残像および残光の発生を防止することができる。
【0063】
図1に示したように検査台6は採取フィルタ7を含む部位を嵌合させるための陥没部分(装置溝)を有し、ここに採取フィルタ7を含む部位をそのまま組み込むことができる形状としてある。なお、この際、例えば、検査台6に、採取フィルタ7がその上に位置するように金属平板を設け、採取フィルタ7が金属平板に押し付けられるような状態で組み込まれるようにすることで、検査台6上で採取フィルタ7が凹凸なく平滑に保持されるようにすれば、採取フィルタ7に捕集された乳酸菌の定量をより確実なものにすることができる。
【0064】
なお、集光した位置を認識する手段を設けることでレンズ1によって集光された励起光の位置を認識し、集光が軌道から逸れないように、また、逸れた場合は再び軌道に戻すように設定されるものである。
【0065】
なお、励起光を照射する微小な一定面積は、正方形を含む多角形に限らず、円形、楕円形などでも可能であり、検体を照射できるものであればよい。
【0066】
なお、励起光もしくは蛍光を分光する手段として回折格子などを利用することも可能である。
【0067】
なお、検査台6の回転速度を調整することで蛍光の残像および残光を防ぐこととしたが、励起光を照射するレンズ1の移動速度を調整することで残像および残光を防ぐことも可能である。
【0068】
なお、集光した位置を認識する手段は、必ずしも励起光の集光位置を直接認識する必要は無く、採取フィルタ7上の軌道を把握するものであればよい。
【実施例】
【0069】
図2は、本発明の乳酸菌含有検体において、乳酸菌検出方法および乳酸菌数計測装置の計測フローチャート図である。
【0070】
検体染色においては、ステップ1にて採取フィルタ7で乳酸菌含有検体を1mlろ過する。ステップ2にて採取フィルタ7表面の乳酸菌以外の残留成分およびpH調整を生理食塩水3mlにて洗浄除去とpH調整を行なう。ステップ3にて、採取フィルタ7にて捕集された乳酸菌を染色する蛍光染色試薬を0.1ml滴下し採取フィルタ7全面に広げて2分間染色を行う。染色試薬は乳酸菌のDNAに結合し染色される試薬を用いた。ステップ4にて染色試薬の余剰試薬を生理食塩水にて0.1ml洗浄を行い検体染色完了となる。
【0071】
測定においては、ステップ5で微生物の採取フィルタ7を乳酸菌数計測装置の台にセットする。この台については、微生物の採取フィルタ7を計測面にセットすることで平面になる状態に構成されており、それにより安定した計測が可能とすることができる。ステップ6にて計測装置により、採取された乳酸菌の計測が行われ計測完了となる。
【0072】
蛍光染色して蛍光発光した画像を図4に示す。図に示すように、蛍光発光点の大きさは様々あり、微小な大きさは、顕微鏡にて観察した結果、菌体が1つのものであることが確認できた。微小な発光物以外の大きさの蛍光発光点は、菌体の固まった連鎖菌であることも確認できた。
【0073】
図3に図1の乳酸菌数計測装置で撮影した1視野の画像について、乳酸菌を計測するフロー図を示す。多数の視野を計測する場合には、このフローを繰り返し、フィルタ全体の面積と測定した面積(視野面積×視野数)の比に計測した乳酸菌数を乗じることでフィルタ全体の乳酸菌数を算出することができる。
【0074】
なお、実施例では、蛍光色素として、単一の染色を実施したが、二重染色することもできる。
【0075】
なお、実施例では、余剰試薬の洗浄工程を記載したが、計測時のバックグランドに影響がなければ、余剰試薬を洗浄する工程を除くことができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の、乳酸菌を含みうる検体において、励起光を照射し撮影した後、形状と面積および発光輝度を面積解析手段で認識させることで乳酸菌の検出を行う、乳酸菌数計測方法および計測装置は、熟練した技能の必要がなく、誰でも容易に計測ができるため、より生産現場に近い所での品質管理に適用できる。また、近年、食品の品質レベルが向上しており、より迅速・高精度・簡単に乳酸菌数を計量できる装置が求められており、従来の検査にかわる方法としても適用できる。
【符号の説明】
【0077】
1 レンズ
2 受光部
3 光源
4 励起光分光フィルタ
5 プリズム
6 検査台
7 採取フィルタ
8 台座
9 蛍光分光フィルタ
10 光電変換素子
11 乳酸菌判断手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ過抽出した乳酸菌含有検体に励起光を照射し発光点を光電変換素子で撮影した画像を面積解析して乳酸菌数を計測する乳酸菌数計測方法。
【請求項2】
面積解析は、発光点の面積および発光輝度から単体の菌と乳酸菌の塊、異物を区別する請求項1記載の乳酸菌数計測方法。
【請求項3】
乳酸菌と判断した発光点の面積および発光輝度から、乳酸菌の塊りと判断したものを発光面積の大きさにおける乳酸菌数を算出する請求項1または2記載の乳酸菌数計測方法。
【請求項4】
順次撮影した画像から、乳酸菌の数量を積算する手段を有する請求項1乃至3のいずれかに記載の乳酸菌数計測方法。
【請求項5】
ろ過抽出した乳酸菌含有検体に染色法を用いる、請求項1乃至4のいずれかに記載の乳酸菌数計測方法。
【請求項6】
ろ過抽出した乳酸菌含有検体のpHを調整する請求項1乃至5のいずれかに記載の乳酸菌数計測方法。
【請求項7】
染色法が蛍光染色法である請求項5または6記載の乳酸菌数計測方法。
【請求項8】
採取フィルタで乳酸菌をろ過抽出し、第1の試薬と、第2の試薬と、第3の試薬と、第4の試薬の中でいずれか1種類あるいは複数種類の試薬を用いて乳酸菌を染色した後、予め定められた波長域で励起光を照射する光源と、前記励起光によって照射されて発光する予め定めたれた波長域の光を前記採取フィルタの設定した一定面積を受光する受光手段と、前記光源によって照射されて発光した光を設定した一定の時間内に受光し撮影した画像を、その受光した光量が設定したしきい値の範囲で、かつ設定した面積の範囲であるものを乳酸菌と判断する乳酸菌判断手段と、乳酸菌判断手段によって乳酸菌と判断した発光点1個の大きさから、単体の菌と乳酸菌の塊りを判断して、塊りの大きさにおける乳酸菌の数量を算出し、順次積算することで乳酸菌の数量を算出する、前記採取フィルタの1部あるいは全面積の発光点を確認するために、前記採取フィルタあるいは受光手段を移動させる移動手段で、乳酸菌の数量を順次積算する手段を有する乳酸菌数測定方法を行なうための乳酸菌数計測装置。
【請求項9】
前記採取フィルタが表面形状の変形しないフィルタである請求項8記載の乳酸菌数計測装置。
【請求項10】
前記採取フィルタが色落ちしないフィルタである請求項8または9記載の乳酸菌数計測装置。
【請求項11】
前記フィルタ上に顔料を担持した請求項8乃至10のいずれかに記載の乳酸菌数計測装置。
【請求項12】
前記採取フィルタが暗色のフィルタである請求項8乃至11のいずれかに記載の乳酸菌数計測装置。
【請求項13】
前記採取フィルタ上に金、銅、クロム、白金、パラジウムから選ばれる少なくとも1種類の金属成分を含む薄膜が形成された請求項8乃至12のいずれかに記載の乳酸菌数計測装置。
【請求項14】
受光手段が、少なくとも乳酸菌の大きさが認識できる面積を有した複数個の光電変換素子である8乃至13のいずれかに記載の乳酸菌数計測装置。
【請求項15】
光源は少なくとも1種類以上であり、光源の波長域を少なくとも1種類以上とし、受光手段は各々の波長域で照射された発光する光を各々の波長域別に各々受光し、各々の波長域での光量の比から発光した点あるいは面積を乳酸菌と判断する請求項8乃至14のいずれかに記載の乳酸菌数計測装置。
【請求項16】
複数種類の光源と複数の波長域を受光する受光手段を1種類あるいは設定した種類の前記光源および受光手段を切替て、設定した波長域の光源と受光手段で乳酸菌を検知する請求項8乃至15のいずれかに記載の乳酸菌数計測装置。
【請求項17】
乳酸菌判断手段によって、設定した面積以上のため微生物以外と認識された発光点の面積を順次積算あるいはその面積を1つと認識して順次個数を積算し、その総面積あるいは総個数が、設定した面積あるいは個数以上のときに注意を表わす注意手段を有した請求項15乃至16のいずれかに記載の乳酸菌数計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−246442(P2010−246442A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97847(P2009−97847)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】