説明

乳酸菌発酵米ぬかの製造方法

【課題】乳酸菌による乳酸発酵が良好に進み、安定性・保存性に秀れ、臭みもなく、消化吸収も良く、しかも製造も簡易に行える、純植物性の乳酸菌発酵米ぬかの製造方法を提供すること。
【解決手段】米ぬかに、植物質由来の植物性乳酸菌を接種して乳酸発酵させ乳酸菌発酵米ぬかを製造することを特徴とする乳酸菌発酵米ぬかの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米ぬかを原料とし、乳酸菌により発酵させて乳酸菌発酵米ぬかを得る乳酸菌発酵米ぬかの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
米ぬかは、玄米を精白する際に生成する副産物で、ビタミン・ミネラル・食物繊維を多く含み栄養的にも豊富な食品素材であり、更年期障害を抑制する作用のあるγ−オリザノール、抗酸化剤であるフェルラ酸など様々な機能性物質を含んでいる。
【0003】
また、この米ぬかにはアラビノキシランという多糖類が多く含まれていることが知られている。アラビノキシランはアラビノースとキシロースを構成糖とする多糖類であり、この多糖類には抗癌作用、免疫賦活作用があると言われている。この多糖類のうち分子量の大きいものに抗癌作用、免疫賦活作用があるという説と、分解され分子量が小さくなったものに抗癌作用、免疫賦活作用があるという説とがあり意見が分かれている。
【0004】
このように米ぬかは、非常に有用な食品素材であり、その活用が望まれている。
【0005】
しかしながら米ぬかは、(1)製造後の安定性・保存性が悪い、(2)食感や臭いが悪い、(3)消化・吸収が悪い、などの欠点がある。
【0006】
特に「安定性・保存性が悪い」「食感や臭いが悪い」という欠点は、生の米ぬかには微生物が多く含まれていることと米ぬかには脂質が多いため内因性のリパーゼで油脂が加水分解され酸敗し「ぬか臭」が発生することに起因する。
【0007】
そこで、米ぬかを原料として乳酸菌により発酵させた乳酸菌発酵米ぬかの製造が試みられてきた。
【0008】
特に米ぬかを乳酸菌で発酵させることにより、このアラビノキシランが酸分解したものか、あるいは微弱なヘミセルラーゼ活性により若干分解したものが生じると考えられる。また乳酸発酵により米ぬかからアラビノキシランの溶出が容易になると考えられ、乳酸発酵させることにより未発酵の米ぬかより吸収されやすいアラビノキシランを生成させることが可能となる。
【0009】
しかしながら、従来このような効能を目的として乳酸発酵における様々な手法も提案されてきてはいるが、いずれも米ぬかの乳酸発酵が良好に行われなかったり、前記アラビノキシランが十分に生成されなかったりして、前記(1)〜(3)の米ぬかの欠点が十分に解決されず十分な効果が得られなかったり、また製造が厄介となったり、コスト高となるなど夫々様々な問題があった(特開2001−238664公報など)。
【0010】
【特許文献1】特開2001−238664公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、米ぬかの健康有効成分を食品として有効に活用でき、且つ乳酸菌による乳酸発酵が良好に行われることで米ぬかの欠点であった、前記(1),(2),(3)などの欠点が解決され、安定性・保存性に秀れ、臭みもなく、消化吸収も良く、しかも製造も簡易に行え、純植物性の乳酸菌発酵米ぬかを容易に実現できる画期的な乳酸菌発酵米ぬかの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0013】
米ぬかに、植物質由来の植物性乳酸菌を接種して乳酸発酵させ乳酸菌発酵米ぬかを製造することを特徴とする乳酸菌発酵米ぬかの製造方法に係るものである。
【0014】
また、前記植物性乳酸菌として、少なくとも米・麦などの穀物由来の乳酸菌と、りんご・みかんなどの果物由来の乳酸菌とを用いて複合発酵させ、前記穀物由来の乳酸菌と前記果物由来の乳酸菌との量の設定により風味を設定したことを特徴とする請求項1記載の乳酸菌米ぬかの製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上述のように構成したから、米ぬかの健康有効成分を食品として有効に活用でき、且つ乳酸菌による乳酸発酵が良好に行われることで米ぬかの欠点であった、前記(1),(2),(3)などの欠点が解決され、安定性・保存性に秀れ、臭みもなく、消化吸収も良く、しかも製造も簡易に行え、純植物性の乳酸菌発酵米ぬかを容易に実現できる画期的な乳酸菌発酵米ぬかの製造方法となる。
【0016】
また、請求項2記載の発明においては、例えば穀物由来の乳酸菌で発酵を行うと、濃厚な味わいとなり、また果物由来の乳酸菌で発酵を行うと、エグミが少なく爽やかで酸味が少なくさっぱりとした味となり、野菜由来の乳酸菌ではこの中間の風味となることから、少なくとも穀物由来の乳酸菌と果物由来の乳酸菌とを混ぜ複合発酵させ、この分量を設定することで味の調整を行うことが可能で、他の諸条件や本製品の使用用途や消費者のニーズに応じて味の設定も可能となる一層秀れた乳酸菌発酵米ぬかの製造方法となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0018】
本発明は、牛乳をチーズとするときに用いる動物性乳酸菌を用いず、植物性乳酸菌を用いて米ぬかを乳酸発酵する。
【0019】
植物性乳酸菌は、植物質由来の乳酸菌であり、例えば穀物や果物や野菜やこれらから得られるものなどの植物質由来の乳酸菌であり、動物性乳酸菌を選定せずこの植物性乳酸菌を選定してこれを米ぬかに接種して発酵させることで、米ぬかの乳酸発酵が極めて良好に行われ、米ぬかの欠点であった前述の(1),(2),(3)の欠点などが解決され、安定性・保存性に秀れ、臭みもなく、消化吸収も良く、しかも製造も簡易に行え、純植物性の乳酸菌発酵米ぬかの製造を容易に実現できることとなる。
【0020】
即ち、乳酸菌による発酵でありながらも植物質由来の乳酸菌を選定することにより、米ぬかの乳酸菌による乳酸発酵が良好に進み、米ぬかより吸収され易いアラビノキシランが生成あるいはその溶出が容易となり、安定性・保存性に秀れ、臭みがないだけでなく、消化・吸収にも秀れ、米ぬかの健康有効成分をいかしつつ米ぬかの独特な風味もあり、乳酸発酵により美味さも十分に引き出され、健康イメージの強い純植物性の乳酸菌発酵米ぬかを簡易な手法によって大幅なコスト高となることなく実現できる画期的な乳酸菌発酵米ぬかの製造方法となる。
【0021】
また、例えば穀物由来の乳酸菌で発酵を行うと、乳酸菌発酵米ぬかは濃厚な味わいとなり、また果物由来の乳酸菌で発酵を行うと、エグミが少なく爽やかで酸味が少なくさっぱりとした味となり、野菜由来の乳酸菌ではこの中間の風味となる。
【0022】
このように植物性乳酸菌は、米ぬかの乳酸発酵に秀れると共に、菌種の種類がバラエティーであり、味を様々に変えやすいという特性を持つ。
【0023】
また、例えば穀物由来の乳酸菌と果物由来の乳酸菌とを混ぜ複合発酵させれば、味の調整を行うことが可能で、他の諸条件や本製品の使用用途や消費者のニーズに応じてこの分量を調整設定して味の設定も可能となる。
【実施例】
【0024】
本発明の具体的な本実施例について図面に基づいて説明する。
【0025】
本実施例では、米ぬかを殺菌処理し、これに植物性乳酸菌を加えて(接種して)乳酸発酵させて乳酸菌発酵米ぬかを得て、この乳酸菌発酵米ぬかを自動酸化防止のために、アルミパウチ袋に脱酸素剤を入れて充填封入し、冷蔵保存する。
【0026】
以下具体的に説明する。
【0027】
1 原料米ぬかの殺菌
原料となる米ぬかは高温短時間殺菌済み米ぬかを使用する。米ぬかに高温短時間殺菌処理を施すことにより、米ぬか中の初発菌数を少なくし、且つ内因性のリパーゼを失活させる。
【0028】
例えば、この高温短時間の殺菌処理条件は、蒸気殺菌で100℃、20分間行う。
【0029】
以上の前処理を行うことにより安定的に乳酸菌発酵米ぬか(HOT-Lab Bran)の製造が可能となる。
【0030】
2 乳酸発酵
米ぬかの乳酸発酵のために純粋培養の乳酸菌を一株或いは数株接種する。乳酸菌は米ぬかの発酵に適した植物性乳酸菌を用い、米ぬか重量に対し、10%程度添加して発酵させる。米ぬかを乳酸発酵させることにより吸収性の良いアラビノキシランの生成が可能となる。
【0031】
例えば、具体的には、30℃で3日から7日間発酵させる。
【0032】
また、前述のように殺菌処理した殺菌米ぬかを乳酸発酵させることにより、発酵が正常に進行し、乳酸発酵特有の芳香のある乳酸菌発酵米ぬかが出来る。
【0033】
尚、本実施例での発酵終了後の乳酸菌数は1.6×10個/g、発酵終了後のpHは、4.65であった。
【0034】
3 充填・冷蔵保存
米ぬかの自動酸化を防止するため、前記発酵後、アルミパウチ袋に脱酸素剤と共に封入し、冷蔵庫にて保存する。
【0035】
4 製パンに用いた実施例
前記本実施例により製造した乳酸菌発酵米ぬかをパン生地に混合し、乳酸菌発酵米ぬか入りパンを製造した実施例について更に説明する。
【0036】
前記実施例による乳酸菌発酵米ぬかをパン生地に混合し、乳酸菌発酵米ぬか入りパンを製造した実施例において、以下の三種類(三つの試験区)について比較した。
【0037】
・未発酵米ぬか20%添加
・乳酸菌発酵米ぬか(HOT-Lab Bran)発酵一週間 10%添加
・乳酸菌発酵米ぬか(HOT-Lab Bran)発酵一週間 20%添加
また、パンの製造・成分は以下の表1に示すとおりである。
【0038】
【表1】

【0039】
その結果、乳酸菌発酵米ぬかを10%添加したものが最もパンの伸びが良く、20%添加のものは伸びが控えめであった。いずれにしても未発酵米ぬかを添加したものに比べて乳酸菌発酵米ぬか添加の方がやや伸びは良かった。香りについては、未発酵米ぬか添加のパンはぬかの臭いが強く乳酸菌発酵米ぬかの方がパンの香りがあって評価が良かった。味についても未発酵米ぬか添加のパンはぬかの味があり、乳酸菌発酵米ぬか添加の方が適度な酸味があって食味評価が良かった。
5 生食実施例
本実施例の乳酸菌発酵米ぬかを加熱することなく生のまま食する手段としてこの発酵させた乳酸菌発酵米ぬかに砂糖を混合した後、丸めて団子状にしたものを試作し試食した。その結果、おからのような食感の新規な食品が出来た。
【0040】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施例の製造工程説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米ぬかに、植物質由来の植物性乳酸菌を接種して乳酸発酵させ乳酸菌発酵米ぬかを製造することを特徴とする乳酸菌発酵米ぬかの製造方法。
【請求項2】
前記植物性乳酸菌として、少なくとも米・麦などの穀物由来の乳酸菌と、りんご・みかんなどの果物由来の乳酸菌とを用いて複合発酵させ、前記穀物由来の乳酸菌と前記果物由来の乳酸菌との量の設定により風味を設定したことを特徴とする請求項1記載の乳酸菌米ぬかの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−154534(P2008−154534A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−348166(P2006−348166)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(595093049)株式会社バイオテックジャパン (15)
【Fターム(参考)】