説明

乾式嫌気性消化装置

【課題】低含水廃棄物を効率的・安定的にメタン発酵できる乾式嫌気性消化装置を提供する。
【解決手段】固形又は半固形の有機性廃棄物A及び嫌気性微生物Bの入口3と出口5とを長手方向一端近傍と他端近傍とに有する円筒形消化槽2内に、消化槽2の中心軸線に沿って貫通する回転軸11とその回転軸11上に軸11と交差向きに固定した支持板対14、15とその支持板対14、15に両端が支持されて両支持板14、15間に延在する複数の撹拌部材16とを有する撹拌機構10を配置する。保温手段30により消化槽2内を嫌気性微生物Bの活性温度に保ちつつ、駆動装置19により回転軸11を駆動する。例えば、支持板14、15を回転軸11上の消化槽2内の一端部位と他端部位とに固定し、撹拌部材16を消化槽2内に全長にわたり延在させる。好ましくは、撹拌部材16を消化槽2内の中心軸線と内周面との間で傾斜又は湾曲させ、消化槽2内の廃棄物Aを中心軸線から内周面にわたり均一に撹拌する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乾式嫌気性消化装置に関し、とくに含水率の低い有機性廃棄物をメタン発酵する消化装置に関する。
本発明は、有機性廃棄物を嫌気性微生物との接触により消化してバイオガスをエネルギーとして回収する廃棄物再資源化型のメタン発酵施設等に有効に利用することができる。
【背景技術】
【0002】
脱水汚泥、生ごみ、食品残渣、家畜廃棄物等の固形状有機性廃棄物を有用資源としてメタン発酵によりエネルギーを回収する再資源化処理の普及が進められている。再資源化方法の一例は、特許文献1及び2が開示するように、有機性廃棄物を混入異物と分別した上でスラリー状(又は液状)に粉砕又は微破砕し、粉砕した廃棄物スラリーをメタン発酵菌等の嫌気性微生物が保持されたバイオリアクター(以下、消化槽という。)に投入し、微生物が活性を示す温度で廃棄物スラリーを微生物と接触させて発酵・分解するものである。この方法は、有機性廃棄物を含水率90%以上のスラリー状に調整するので、湿式嫌気性消化法と呼ばれている。
【0003】
例えば脱水汚泥等のように含水率の低い有機性廃棄物(例えば、含水率65〜80%の有機性廃棄物。以下、低含水廃棄物ということがある。)も、水で希釈することにより湿式嫌気性消化法で再資源化することができる。ただし、例えば低含水廃棄物1トンに希釈水1トンを加えてスラリー状にすると処理対象総量が2トンに増えるので、希釈に応じて大きな容量の消化槽が必要となり、消化槽の保温熱量も増える。また、処理後の消化液をそのまま下水道等に放流できない場合は、消化液中の残留有機物を更に浄化する二次処理施設(排水処理施設等)が必要となり、希釈した場合は二次処理施設も大きくする必要がある。とくに下水道が完備されていない農村地域等では、公共用水域に放流するため高度な二次処理が要求されるので、コスト削減等の観点から二次処理の必要な消化液をできる限り少なくすることが望まれている。
【0004】
これに対し、特許文献3〜5が開示するように、低含水廃棄物を希釈せずに処理する乾式嫌気性消化法が知られている。乾式嫌気性消化法によれば、湿式嫌気性消化法に比して希釈水分だけ処理対象総量を少なくできるので、消化槽の小型化及び消化槽の保温熱量の削減を図ることができる。また、処理後の消化液も湿式嫌気性消化法に比して少ないので、二次処理コストも低く抑えることができる。
【0005】
例えば特許文献3の乾式嫌気性消化法では、図8(A)に示すように、有機性廃棄物Aを粉砕分別工程41において粒径2cm未満に粉砕し、廃棄物Aに通気性及び流動性を与えるため、混合工程42において廃棄物Aの粉砕物より大粒径の粒状通気性副資材(ウッドチップ、小枝・葉、乾燥鶏糞ペレット等)Eと混合する。TS濃度25〜35%に調製した廃棄物Aと副資材Eとの混合物(混合廃棄物)を加温工程43において37℃(又は55℃)に加温した後、嫌気性発酵工程44へ導く。嫌気性発酵工程44において、同図(B)及び(C)に示すように、消化槽44a内の混合廃棄物を撹拌装置44bによってピストンフロー的に押し出すように撹拌しながら嫌気性微生物と接触させて発酵させる。特許文献4及び5は、廃棄物Aを高濃度で消化する乾式嫌気性消化法において、消化槽内のアンモニア濃度の上昇を抑えてメタン発酵の効率を低下させない方法を提案している。
【0006】
【特許文献1】特許第2708087号公報
【特許文献2】特許第3064272号公報
【特許文献3】特開11−309493号公報
【特許文献4】特開2003−053309号公報
【特許文献5】特開2004−017024号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし従来の乾式嫌気性消化法は、有機性廃棄物Aを流動性が低い低含水状態で処理するため、廃棄物Aを均一に撹拌して微生物と接触させることが難しく、湿式嫌気性消化法に比し効率的・安定的なメタン発酵を得にくい場合がある。特許文献3は通気性副資材E等の混合により廃棄物Aの流動性をある程度高めているが、低含水廃棄物Aは粘性が高いため、図8(B)及び(C)に示す消化槽44aの内周面近傍や撹拌装置44bの撹拌翼44cの間隙部分44d等において撹拌が不十分となり、消化槽44a内の廃棄物濃度が不均一になりやすい。廃棄物濃度が不均一になると、局部的な有機酸濃度の上昇やpHの低下が生じ、微生物の死滅や微生物反応の効率低下の要因となる。乾式嫌気性消化法におけるメタン発酵の効率及び安定性を高めるためには、消化槽44a内の廃棄物濃度を均一にすることが有効である。
【0008】
そこで本発明の目的は、低含水廃棄物を効率的・安定的にメタン発酵できる乾式嫌気性消化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
図1の実施例を参照するに、本発明による乾式嫌気性消化装置は、固形状又は半固形状の有機性廃棄物A及び嫌気性微生物Bの入口3と出口5とを長手方向一端近傍と他端近傍とに有する円筒形消化槽2、その消化槽2内をその中心軸線に沿って貫通する回転軸11とその回転軸11上に軸11と交差向きに固定した支持板対14、15とその支持板対14、15に両端が支持されて両支持板14、15間に延在する複数の撹拌部材16とを有する撹拌機構10、回転軸11を駆動する駆動装置19、並びに消化槽2内を嫌気性微生物Bの活性温度に保つ保温手段30を備えてなるものである。例えば、支持板14、15を回転軸11上の消化槽2内の一端部位と他端部位とに固定し、撹拌部材16を消化槽2内に全長にわたり延在させる。
【0010】
好ましくは図2に示すように、支持板14、15の外径を消化槽2の内径と実質上同一とし、撹拌部材16を一方の支持板14(又は15)の回転軸近傍から他方の支持板15(又は14)の外縁近傍へ傾斜させる。または図4に示すように、撹拌部材16を消化槽2内の中心軸線と内周面との間で湾曲させる。更に好ましくは、複数の撹拌部材16に消化槽2の内周面に沿った部材16pを含め、その部材16pにより消化槽2の内周面に付着した有機性廃棄物Aを剥離しながら撹拌する。
【発明の効果】
【0011】
本発明による乾式嫌気性消化装置は、円筒形消化槽内の中心軸線上の回転軸に支持板対を固定し、その支持板対に両端が支持された撹拌部材を消化槽の中心軸線の回りに回転させることにより消化槽内の有機性廃棄物及び嫌気性微生物を撹拌するので、次の顕著な効果を奏する。
【0012】
(イ)消化槽内に全長にわたり撹拌部材を延在させることができ、消化槽内の廃棄物を消化槽の全長にわたり均一に撹拌できるので、局部的な有機酸濃度の上昇やpHの低下を抑え、効率的・安定的なメタン発酵を維持できる。
(ロ)消化槽内の中心軸線と内周面との間で撹拌部材を傾斜又は湾曲させることができ、消化槽内の廃棄物を中心軸線から内周面にわたり均一に撹拌し、消化槽内の廃棄物濃度の不均一の発生を有効に防止できる。
(ハ)消化槽の内周面に沿って撹拌部材を設けることができ、消化槽の内周面に付着した廃棄物を剥離しながら撹拌することができる。
(ニ)消化槽の中心軸線の回転を各撹拌部材の軸線に伝達することができ、撹拌部材をその軸線の回りに自転させつつ撹拌することにより、粘性の高い廃棄物も効率的に撹拌することができる。
(ホ)撹拌部材にヒータ又は熱交換器を内蔵することができ、消化槽内の廃棄物全体を保温しつつ撹拌することができる。
(ヘ)低含水廃棄物を希釈せずに効率よくメタン発酵することができ、湿式嫌気性消化法のように希釈水を加える必要がないので、消化槽の小型化、消化槽の保温熱量の削減、二次処理施設の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、低含水廃棄物AからバイオガスGを回収する本発明の乾式嫌気性消化装置の一実施例を示す。図示例の消化装置1は、長手方向一端近傍及び他端近傍に入口3及び出口5を設けた円筒形消化槽2と、消化槽2内に設けた撹拌機構10及びその駆動装置19と、消化槽2内を保温する保温手段30とを有する。例えば原料槽6に貯蔵した廃棄物Aを固形状(例えば塊状・粒状など)又は半固形状(例えば糊状・ペースト状など)に粉砕した上で嫌気性微生物Bと混合し、保温手段30により消化槽2の内部を嫌気性微生物Bの活性温度(例えば、37℃又は55℃)に保持しつつ、廃棄物Aと微生物Bとの混合物Cを原料供給ライン7から消化槽2の入口3へ投入する。廃棄物Aを撹拌機構10で撹拌しながら消化槽2内に所要時間滞留させたのち、消化液(汚泥)Dを消化槽2の出口5から引き抜きライン8へ引き抜く。なお、本発明の消化装置1は低含水廃棄物Aの処理に適しているが、含水率の高い有機性廃棄物Aを処理することも可能である。
【0014】
図示例の消化装置1は、出口5から引き抜いた消化液Dの一部を入口3へ返送する返送ライン9を有する。微生物担体として例えば、特許文献3で用いるウッドチップ等の通気性副資材に嫌気性微生物Bを含浸させ、嫌気性微生物Bの含浸した副資材を廃棄物Aと混合して入口3へ投入し、出口5から抜き出した副資材を分離回収して入口3へ返送する。なお図示例では、消化槽2を中心軸線が水平(横型)となるように設置しているが、例えば図8(B)に示すように消化槽2を垂直(縦型)又は傾斜させて設置することも可能である。
【0015】
図示例の撹拌機構10は、消化槽2内をその中心軸線に沿って貫通する回転軸11と、回転軸11上に軸と交差向きに固定した支持板対14、15と、その支持板対14、15に両端が支持された複数の撹拌部材16とを有する。回転軸11にモータ等の駆動装置19を接続し、駆動装置19で回転軸11を中心軸線の回りに(矢印R向きに)自転させることにより、各撹拌部材16を回転軸11の回りに回転させる。回転軸11及び撹拌部材16の回転速度は廃棄物Aの形状・状態等に応じて適当に選択できるが、本発明者は1回転/1時間程度の低速回転速度でも粘性の高い廃棄物Aを効率よく撹拌できることを実験的に確認できた。
【0016】
例えば図1に示すように、支持板14、15を消化槽2内の回転軸11上の長さ方向一端部位と他端部位とにそれぞれ固定し、支持板14、15の間に消化槽2の全長にわたる長さの複数の撹拌部材16を支持する。消化槽2の全長にわたる撹拌部材16を消化槽2の中心軸線の回りに回転させることにより、図8(B)及び(C)に示したような廃棄物濃度の不均一な箇所の発生を防ぎ、消化槽2の全長にわたり廃棄物Aを効率よく撹拌することができる。ただし、支持板14、15の位置及び数は図示例に限定されず、廃棄物Aの流動を妨げない範囲内で回転軸11上に3枚以上の支持板を固定し、各支持板対の間にそれぞれ撹拌部材16を配置した場合も同様の効果が期待できる。
【0017】
図2(A)は、撹拌機構10の一例の斜視図である。この撹拌機構10では、同図(B)〜(E)の断面図に示すように、支持板14、15の外径を消化槽2の内径と実質上同一とし、両支持板14、15の中心に回転軸11を貫通させ、一方の支持板14(又は15)の回転軸11近傍から他方の支持板15(又は14)の外縁近傍へ傾斜させて4本の撹拌部材16a、16bを設けている。支持板14の外縁近傍と他方の支持板15の回転軸11近傍とに両端が支持された撹拌部材16a(同図(D)参照)と、支持板14の回転軸11近傍と他方の支持板15の外縁近傍とに両端が支持された撹拌部材16b(同図(E)参照)とを、所定角度(図示例では90度ずつ)の間隔で交互に配置する。撹拌部材16a、16bを回転軸11の回りに回転させると、その回転面に沿った消化槽2内の廃棄物Aを撹拌できると共に、回転面近傍の廃棄物Aを重力により移動させることができる(図1の矢印S参照)。すなわち同図の撹拌機構10によれば、消化槽2の中心軸線から内周面にわたる廃棄物Aを効率よく撹拌することが可能である。撹拌部材16a、16bの本数、間隔、両端の位置等は、廃棄物Aの形状・状態・粘性等に応じて適当に選択できる。
【0018】
好ましくは、図3(A)の斜視図に示すように、撹拌機構10に消化槽2の内周面に沿った撹拌部材16pを設ける(同図(B)〜(E)の断面図参照)。図2の撹拌機構10では消化槽2の内周面近傍に撹拌されにくい箇所(例えば、支持板14、15の中央部分の内周面近傍等)が生じ得るが、内周面に沿った撹拌部材16pを設けることにより、消化槽2の中心軸線から内周面近傍まで廃棄物A全体を効率よく撹拌することが可能となる。また、粘性の高い廃棄物Aは消化槽2の内周面に付着して発酵槽2内における廃棄物濃度の不均一の要因となり得るが、撹拌部材16pによって消化槽2の内周面に付着した廃棄物Aを剥離しながら撹拌することも可能となる。この場合は、図1に示すように、発酵槽2の内周面に付着した廃棄物Aを剥離するための剥離用撹拌羽根18aを撹拌部材16pに取り付けることができる。
【0019】
図4(A)は、図2及び図3に示す直線形の撹拌部材16(16a、16b)、16pに代えて又は加えて、消化槽2内の中心軸線と内周面との間で湾曲する複数の撹拌部材16s、16rを両支持板14、15の間に架け渡した撹拌機構10の一例を示す。各撹拌部材16s、16rは、一方の支持板14(又は15)の回転軸11近傍から他方の支持板15(又は14)の外縁近傍へ回転軸11と交差するように架け渡され、内周面近傍に延在する部分を有する(同図(D)及び(E)の断面図参照)。撹拌部材16s、16rの各々の内周面近傍部分を消化槽2の長手方向にずらすことにより、中心軸11の回転に応じて消化槽2内の全長にわたり中心軸線から内周面まで廃棄物A全体を撹拌し、消化槽2内の廃棄物濃度の均一化を図ることができる。各撹拌部材16の湾曲形状及び両端の位置は、廃棄物A全体を効率的に撹拌できるように、廃棄物Aの形状・状態・粘性等に応じて適当に選択できる。
【0020】
なお、図2〜図4の撹拌機構10では支持板14、15を円盤形としているが、図5に示すように支持板14、15を長円形、楕円形、十字形等とすることができ、撹拌部材16の両端を支持できる範囲で支持板14、15の形状は任意に選択できる。また撹拌部材16a、16b、16p、16s、16rも棒状、板状、螺旋状等の撹拌に適した形状を選択できるが、望ましくは撹拌部材16に、図6に示すように、両支持板14、15に支持する軸17と、その軸17の全長にわたる撹拌羽根(例えば、バッフルプレート、板状羽根、ねじり羽根、螺旋羽根等)18とを含める。
【0021】
消化槽2の保温手段30として、図1の実施例では消化槽2の周壁にジャケット型熱交換器32を取り付け、例えば熱源31から熱交換器32に高温水又は蒸気を送っている。但し、保温手段30は図示例に限定されず、例えば消化槽2の周壁にヒータを取り付けて保温手段30としてもよい。また本発明では、図1に点線で示すように、消化槽2の周壁に代えて又は加えて、撹拌機構10に保温手段30を設けることも可能である。例えば撹拌機構10の回転軸11及び撹拌部材16に熱交換器を内蔵し、その熱交換器を熱源31に接続して消化槽2の内部を保温する。また、撹拌機構10にヒータを内蔵して保温手段30としてもよい。撹拌機構10に保温手段30を内蔵すれば、消化槽2内の廃棄物A全体を保温しながら撹拌することが可能となり、メタン発酵の一層の効率向上が期待できる。
【0022】
[実験例1]
本発明によるメタン発酵効率を確認するため、図1に示す乾式嫌気性消化装置1(消化槽2の有効容積60リットル)を試作して実験を行った。本実験では原料としてドッグフードを用い、乾燥ペレット状のドッグフードを加水により含水率約80%に調整して低含水廃棄物Aを模擬した。模擬廃棄物Aの全化学的酸素要求量(T-CODcr)は500,000mg/リットルであった。模擬廃棄物Aを同量の引き抜き消化液Dと混合し、その混合物Cを滞留時間が15日となる所定量(60リットル/15日=約4.0リットル/day)で消化槽2の入口3に継続的に供給し、同量の消化液Dを消化槽2の出口5から継続的に引き抜いて模擬廃棄物Aとの混合に用いた。
【0023】
消化槽2の内部に図3の撹拌機構10を設置し、撹拌機構10の各撹拌部材16、16pに撹拌羽根18(図6参照)、18a(図1参照)を取り付け、駆動装置19により撹拌機構10の回転軸11を24回転/日の回転速度で回転させて模擬廃棄物Aを撹拌した。また保温手段30として消化槽2の周壁胴部にヒータを設置し、消化槽2の内部を嫌気性微生物Bの活性温度(55℃)に制御した。模擬廃棄物Aを100日間にわたり継続的に消化槽2に供給すると共にバイオガスGの発生量を計測し、模擬廃棄物Aの供給量とバイオガスGの発生量とを比較した。
【0024】
本実験の結果を図7のグラフに示す。同グラフが示すように100日間にわたりバイオガスGの発生量は安定しており、原料(模擬廃棄物A)の供給量に対するバイオガスGの発生量から算出した有機物分解率は100日間にわたり約80%で安定していた。廃棄物濃度の不均一による微生物反応の効率低下が見られないことから、本発明の消化装置1によりドッグフード程度の比較的大粒状の廃棄物Aを消化槽2内で均一に撹拌することができ、80%程度の高効率で安定的にメタン発酵できることを確認できた。また本発明者は、模擬廃棄物Aにプラスチック等の異物を混入して実験を繰り返し、異物が混入した廃棄物Aも本発明の消化装置1により効率的・安定的にメタン発酵できることを確認できた。すなわち本発明の消化装置1によれば、湿式嫌気性消化法のように希釈水を加える必要がないので消化槽の小型化、消化槽の保温熱量の削減、二次処理施設の小型化を図れると共に、異物分別及びスラリー状の微粉砕を必要とする湿式嫌気性消化法に比し嫌気性消化の前処理を簡単化し、有機性廃棄物の再資源化コストの削減に寄与できる。
【0025】
こうして本発明の目的である「低含水廃棄物を効率的・安定的にメタン発酵できる乾式嫌気性消化装置」の提供を達成することができる。
【実施例1】
【0026】
図5は、回転軸11の回転を撹拌部材16、16pの軸17(図6参照)に伝達する回転伝達機構20を設けた撹拌機構10の実施例を示す。図示例の撹拌機構10の撹拌部材16(16p)は、両端が支持板対14、15に回転自在に枢支された軸(以下、枢支軸ということがある。)17を有する。モータ等の駆動装置19で回転軸11を駆動すると、支持板対14、15を介して各撹拌部材16が回転軸11の回りに矢印R向きに回転し、同時に回転伝達機構20を介して各撹拌部材16(16p)がその枢支軸17の回りに矢印T向きに自転する。粘性の高い有機性廃棄物Aは撹拌部材16(16p)に付着しやすく、撹拌部材16(16p)と一体的に回転して撹拌できないおそれがある。図示例のように撹拌部材16をその枢支軸17の回りに自転させながら廃棄物Aを撹拌すれば、廃棄物Aの撹拌部材16(16p)への付着を防ぎつつ粘性の高い廃棄物Aを効率的に撹拌できる。また、撹拌部材16(16p)に剥離用撹拌羽根18aを設け、撹拌羽根18aを枢支軸17の回りに自転させながら撹拌することにより、消化槽2の内周面に付着した廃棄物Aを効率的に剥離できる。
【0027】
図5の回転伝達機構20は、消化槽2の端面に固定した大歯車21と、大歯車21に噛合し且つ撹拌部材16(16p)の枢支軸17に固定された小歯車22とを有する。撹拌部材16(16p)が回転軸11の回りに矢印R向きに回転すると、消化槽2に固定の大歯車21と噛み合った撹拌部材16(16p)の小歯車22が矢印T向きに回転し、撹拌部材16(16a)をその枢支軸17の回りに自転させる。但し、回転伝達機構20の構造は図示例に限定されず、例えば枢支軸17の小歯車22に対向する消化槽2の内周面に内歯車を固定し、その内歯車と小歯車22との噛み合わせにより回転軸11の回転を撹拌部材16の枢支軸17に伝達してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施例の説明図である。
【図2】(A)は本発明で用いる撹拌機構の一実施例の斜視図、(B)及び(C)はその線B−B及びC−Cにおける断面図、(D)及び(E)はその線D−D及びE−Eにおける断面図である。
【図3】(A)は本発明で用いる撹拌機構の他の実施例の斜視図、(B)及び(C)はその線B−B及びC−Cにおける断面図、(D)及び(E)はその線D−D及びE−Eにおける断面図である。
【図4】(A)は本発明で用いる撹拌機構の更に他の実施例の斜視図、(B)及び(C)はその線B−B及びC−Cにおける断面図、(D)及び(E)はその線D−D及びE−Eにおける断面図である。
【図5】(A)は回転伝達機構を有する撹拌機構の実施例の斜視図、(B)はその線B−Bから見た側面図である。
【図6】本発明で用いる撹拌部材の一実施例の説明図である。
【図7】本発明装置の実験結果を示すグラフの一例である。
【図8】従来の乾式嫌気性消化法の一例の説明図である。
【符号の説明】
【0029】
1…嫌気性消化装置 2…消化槽
3…入口 5…出口
6…原料槽 7…原料供給ライン
8…引き抜きライン 9…返送ライン
10…撹拌機構 11…回転軸
12…軸受け 14…支持板
15…支持板
16、16a、16p、16s、16r…撹拌部材
17…(枢支)軸 18…撹拌羽根
18a…剥離用撹拌羽根 19…駆動装置
20…回転伝達機構
21…大歯車 22…小歯車
30…保温手段 31…熱源
32…(ジャケット型)熱交換器
41…粉砕分別工程 42…混合工程
43…加温工程 44…嫌気性発酵工程
44a…消化槽 44b…撹拌装置
44c…撹拌翼 44d…撹拌翼の間隙部分
45…脱水工程 46…好気性発酵工程
47…乾燥工程 48…ふるい分け工程
A…有機性廃棄物(低含水廃棄物)
B…嫌気性微生物
C…混合物 D…消化液(汚泥)
E…副資材 G…バイオガス
R…回転軸の回転向き
S…重力による有機性廃棄物Aの移動向き
T…枢支軸の自転向き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形状又は半固形状の有機性廃棄物及び嫌気性微生物の入口と出口とを長手方向一端近傍と他端近傍とに有する円筒形消化槽、前記消化槽内をその中心軸線に沿って貫通する回転軸と当該回転軸上に軸と交差向きに固定した支持板対と当該支持板対に両端が支持されて両支持板間に延在する複数の撹拌部材とを有する撹拌機構、前記回転軸を駆動する駆動装置、並びに前記消化槽内を嫌気性微生物の活性温度に保つ保温手段を備えてなる乾式嫌気性消化装置。
【請求項2】
請求項1の消化装置において、前記支持板を回転軸上の消化槽内の一端部位と他端部位とに固定し、撹拌部材を消化槽内に全長にわたり延在させてなる乾式嫌気性消化装置。
【請求項3】
請求項1又は2の消化装置において、前記支持板の外径を消化槽の内径と実質上同一とし、前記撹拌部材を一方の支持板の回転軸近傍から他方の支持板の外縁近傍へ傾斜させてなる乾式嫌気性消化装置。
【請求項4】
請求項1又は2の消化装置において、前記撹拌部材を消化槽内の中心軸線と内周面との間で湾曲させてなる乾式嫌気性消化装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れかの消化装置において、前記複数の撹拌部材に消化槽の内周面に沿った部材を含め、当該部材により消化槽の内周面に付着した有機性廃棄物を剥離しつつ撹拌してなる乾式嫌気性消化装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れかの消化装置において、前記撹拌部材に両端が支持板対に回転自在に支持された枢支軸を設け、前記撹拌機構に回転軸の回転を枢支軸に伝達する回転伝達機構を含め、前記撹拌部材の回転軸回りの回転と枢支軸回りの自転とにより消化槽内の有機性廃棄物を撹拌してなる乾式嫌気性消化装置。
【請求項7】
請求項6の消化装置において、前記回転伝達機構に、前記消化槽の内周面又は端面に固定された大歯車と、当該大歯車に噛合し且つ撹拌部材の枢支軸に固定された小歯車とを設けてなる乾式嫌気性消化装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れかの消化装置において、前記撹拌部材にその全長にわたる撹拌羽根を設けてなる乾式嫌気性消化装置。
【請求項9】
請求項1から8の何れかの消化装置において、前記保温手段を、前記消化槽の周壁及び/又は前記撹拌機構に設けてなる乾式嫌気性消化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−255626(P2006−255626A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−78511(P2005−78511)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】