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乾式摩擦材及びその製造方法
説明

乾式摩擦材及びその製造方法

【課題】乾式摩擦材の全体から前記乾式摩擦材の含有する配合ゴムの反応ガスによってフクレが発生したり、硬度低下となったりして板厚差を悪化することなく、配合ゴムの反応ガスの影響をなくすこと。
【解決手段】配合ゴムを含有する乾式摩擦材において、前記乾式摩擦材の反摩擦面に、その乾式摩擦材の厚みの20%乃至60%の深さの反応ガス抜き孔または反応ガス排出溝を形成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、マニュアルクラッチ、トルクリミッタークラッチ、スリップクラッチ、スラストダンパー等に使用する乾式摩擦材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乾式摩擦材の製造方法としては、特許文献1に示されるように、基材となる長繊維を束ねた繊維束(ガラスロービング)に熱硬化性樹脂を含む含浸液を含浸させて樹脂含浸紐を形成する樹脂含浸工程と、樹脂含浸紐に配合ゴムを付着させるゴム付着工程とを有し、前記含浸液の媒体は水であり、熱硬化性樹脂はメラミン配合率が30%以上80%以下の水性メラミン変性フェノール樹脂である方法が知られている。この特許文献1の技術によれば、樹脂含浸工程でもゴム付着工程でも有機溶媒を使用することなしに、最終製品の乾式摩擦材(クラッチフェーシング等)の性能が低下しない摩擦材用素材を製造することができる。
【0003】
また、特許文献2に示されるように、クラッチフェーシングを始めとする乾式摩擦材の製造方法として、基材、樹脂、及びゴム材を主成分とする乾式摩擦材において、多孔性炭素材料を含有する発明が開示されている。このように、多孔性炭素材料を乾式摩擦材に配合することによって、高回転・高温の条件下においても耐摩耗性が良く、高摩擦係数を維持できる。
【0004】
しかし、特許文献1、特許文献2においても、乾式摩擦材の成形時には、配合ゴムの加硫や熱硬化性樹脂の硬化反応等によって反応ガスが発生する。そして、この反応ガスを成形時に金型を開く操作、つまりガス抜き操作を行うことによって乾式摩擦材中から排出させている。しかし、乾式摩擦材の内部に発生した反応ガスは乾式摩擦材中から排出され難く、この反応ガスが乾式摩擦材内部に残存すると成形金型から乾式摩擦材を取り出すとき、乾式摩擦材の内部に残った反応ガスによってフクレ等の不具合が発生し易くなる。乾式摩擦材の表面にフクレが生ずると、表面の平面に凹凸が生ずることになり平面度の悪化となる。この平面度の悪化は、反摩擦面となる裏面研摩レスの場合に問題となるが、特許文献1及び特許文献2には、その対策を開示するものはない。また、フクレまでには至らなくとも、乾式摩擦材の内部に反応ガスによる空洞が発生すると硬度が低下するという不具合となる場合がある。しかし、特許文献1及び特許文献2には、乾式摩擦材の内部に反応ガスに対する対策を開示するものもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−037797号公報
【特許文献2】特開2000−256652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、乾式摩擦材の成形時に乾式摩擦材中から発生する反応ガスを効果的に排出することができ、フクレによる平面度の悪化や硬度低下等が発生したりすることのない乾式摩擦材及びその製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明にかかる乾式摩擦材は、配合ゴムを含有する乾式摩擦材において、前記乾式摩擦材の反摩擦面側に、前記乾式摩擦材の厚み方向に反応ガスを排出する反応ガス抜き孔、または反応ガス排出溝を形成したものである。
【0008】
請求項2の発明にかかる乾式摩擦材は、前記反応ガス抜き孔、または前記反応ガス排出溝の深さが前記乾式摩擦材の厚みの20%乃至60%としたことにある。
【0009】
請求項3の発明にかかる乾式摩擦材の製造方法は、前記乾式摩擦材の反摩擦面側に、前記乾式摩擦材の厚み方向に反応ガス抜き孔、または反応ガス排出溝を形成するために、前記反応ガス抜き孔、または前記反応ガス排出溝に対応する部位に反応ガス抜き突起を設けた金型で圧縮加熱成形するものである。
【0010】
請求項4の発明にかかる乾式摩擦材の製造方法は、前記反応ガス抜き孔、または前記反応ガス排出溝の深さが前記乾式摩擦材の厚みの20%乃至60%に形成したことにある。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の乾式摩擦材は、前記乾式摩擦材の反摩擦面側に、前記乾式摩擦材の厚み方向に反応ガスを排出する反応ガス抜き孔、または反応ガス排出溝を形成したものであるから、前記乾式摩擦材の内部からの反応ガスを効率よく外部へ排出することができ、前記乾式摩擦材の反摩擦面側に反応ガスに起因するフクレ等による平面の凹凸や硬度の低下等の不具合発生を防止することができ品質が安定する。
【0012】
請求項2の乾式摩擦材は、前記反応ガス抜き孔、または前記反応ガス排出溝の深さが前記乾式摩擦材の厚みの20%乃至60%としている。このため前記反応ガス抜き孔、または前記反応ガス排出溝の形成が前記乾式摩擦材に要求される諸特性へ悪影響を及ぼすことが無く、前記乾式摩擦材の内部から反応ガスを効率よく排出することができ平面度の悪化や硬度低下等の不具合発生を防止することができ品質が安定する。
【0013】
請求項3の乾式摩擦材の製造方法では、前記乾式摩擦材の反摩擦面側に、前記乾式摩擦材の厚み方向に反応ガス抜き孔、または反応ガス排出溝を形成するために、前記反応ガス抜き孔、または前記反応ガス排出溝に対応する部位に反応ガス抜き突起を設けた金型で圧縮加熱成形するものである。したがって、圧縮加熱成形時に形成する前記反応ガス抜き孔、または前記反応ガス排出溝によって乾式摩擦材の内部からの反応ガスを効率よく排出することができ、前記乾式摩擦材の反摩擦面側に反応ガスに起因するフクレ等による平面の凹凸や硬度の低下等の不具合発生を防止することができ品質が安定する。
【0014】
請求項4の乾式摩擦材の製造方法では前記反応ガス抜き孔、または前記反応ガス排出溝の深さが前記乾式摩擦材の厚みの20%乃至60%であるから、前記反応ガス抜き孔、または前記反応ガス排出溝の形成が前記乾式摩擦材に要求される諸特性へ悪影響を及ぼすことが無く、前記乾式摩擦材の内部から反応ガスを効率よく排出排出することができ、平面度の悪化や硬度低下等の不具合発生を防止することができ品質が安定する。また反応ガス抜き孔、または反応ガス排出溝が、金型の反応ガス抜き孔、または反応ガス排出溝に対応する部位に反応ガス抜き突起を設けるだけで形成でき低コスト化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本発明の実施の形態の成形用金型の全体を示す断面の説明図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態1の成形用金型の上型圧縮面を示す平面図(a)、切断線A−Aによる切断の要部断面図(b)、上型圧縮面の変更例の切断線A−Aに相当する切断の要部断面図(c)である。
【図3】図3は反応ガス抜き突起がない比較例の全体の斜視図である。
【図4】図4は本発明の実施の形態1の全体の斜視図である。
【図5】図5は本発明の実施の形態2の上型圧縮面を示す平面図(a)、切断線B−Bによる切断の要部断面図(b)である。
【図6】図6は本発明の実施の形態2の全体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、実施の形態1と実施の形態2において、図中、同一記号及び同一符号は、各々同一または相当する機能部分であるから、ここでは重複する説明を省略する。また、表の同一欄に記載の数値は、数量の大きさを示すものであり、基本的に材料に違いはないので、ここでは重複する説明を省略する。
【0017】
[実施の形態1]
まず、本発明の実施の形態1について、図1乃至図4を参照して説明する。
成型体1は、ゴム中に加硫剤、摩擦調整剤、無機充填材等を配した主原料となる配合ゴムと、乾式摩擦材の強度を向上させる補強繊維と、配合ゴムと補強繊維を結合させる結合材等とを配合した組成物を所定の形状を有する成形用金型に充填して加熱硬化させることによって構成している。
【0018】
ここで、配合ゴム中のゴムには、合成ゴム・天然ゴム等のゴムが使用でき、更に、合成ゴムとしては、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR、二トリルゴムとも言う)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等を単独で、または混合して用いることができる。
また、配合ゴム中の無機充填材として、例えば、銅、アルミニウム、亜鉛等の金属粒子、バーミキュライトやマイカ等の鱗片状無機物、硫酸バリウムや炭酸カルシウム等が使用できる。そして、摩擦調整材としては、例えば、アルミナやシリカ、マグネシア、ジルコニア、酸化クロム、石英等の無機摩擦調整材、合成ゴムやカシューダスト等の有機摩擦調整材、黒鉛や二硫化モリブデン等の固体潤滑材等が使用できる。
補強繊維としては、例えば、ガラス繊維等の無機繊維、芳香族ポリアミド繊維、耐炎化アクリル繊維等の有機繊維や銅繊維、スチール繊維等の金属繊維、チタン酸カリウム繊維やAl23−SiO2系セラミック繊維等が使用できる。
【0019】
また、結合材として、例えば、フェノール樹脂(ストレートフェノール樹脂、ゴム等による各種変性フェノール樹脂を含む)、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂等が使用できる。
これら乾式摩擦材の組成としては、製品に要求される摩擦特性、例えば、摩擦係数、耐摩耗性、振動特性、鳴き特性等に応じて、種々の組成割合を採用することができる。
【0020】
次に本発明の実施の形態1で使用する成形用金型20について、図1及び図2を用いて説明する。
本実施の形態1を成形するする成形用金型20においては、金属製の平板形状の上型21及び金属製の箱型形状の下型22から構成されている。上型21の下面にとなる圧縮面21aには図2に示したように円柱状の反応ガス抜き突起11が設けられている。また、下型22は上面が開放された箱型形状であり、箱型の内部空間に成型体1を形成する組成物を充填し、上型21の圧縮面21aと係合することによって成型体1の形状を特定する。ここで、成型体1は実際の乾式摩擦材を模したものであるが、マニュアルクラッチ(マニュアルトランスミッションとも言う)に使用する実際の乾式摩擦材はドーナツ形状で摩擦面には溝が設けられているのに対し、成型体1は四角形状であり摩擦面に対応する面(底面4)には溝を形成していない。
【0021】
この理由は、本発明の目的が乾式摩擦材の反摩擦面(図4の成型体1の接触面3に相等する)、つまり、上型21の圧縮面21a側にフクレ等を発生させない形状及び発生させない方法であることから、本実施の形態の成形用金型20では試作が容易な箱型とし、摩擦面に相当する下型22の箱型形状内部の底面4を平面として成型体1を平板状に形成し、その効果を確認している。
【0022】
更に、上型21について説明すると、上型21は、図2(a)及び(b)に示すように、縦50mm×横50mm、厚み10mmの平板状で、圧縮面21aに直径1mm、高さ1.7mmの円柱状の反応ガス抜き突起11を設けている。反応ガス抜き突起11は3mmの中心間隔のピッチで配設し、縦横の反応ガス抜き突起11は8本×8本である。
また下型22は、上型21の大きさに合うように縦50mm×横50mm、厚み13.5mmの大きさで内部に縦30mm×横30mm、深さ3.5mmの空間を有している。
【0023】
上型21及び下型22は図示しない通常入手可能なプレス装置のダイベースに固定して使用する。ここで、本発明の実施の形態で使用したプレス装置は下から油圧によって加圧するタイプを使用している。したがって、プレス装置の金型を取り付けるダイベースは上方が固定側となり、下方が可動側となっている。この固定側のダイベースに上型21を取り付け、下方の可動側ダイベースに下型22を固定することで上型21は移動しないが、下型22は油圧の制御によって可動側ダイベースと共に下方に移動することができ、下方への移動によって下型22は上型21から離間する。
【0024】
なお、上から加圧するプレス装置を使用したときは本発明の実施の形態とは逆になり、プレス装置は上方のダイベースが可動側となり、下方のダイベースが固定側となるため上型21が下型22に対して移動し、離間することになる。そして、プレス装置のダイベースは加熱可能となっており、上型21及び下型22はこのダイベースによって加熱される構造となっている。
【0025】
この際、上型21及び下型22の大きさはプレス装置の加熱可能なダイベースの大きさに比べて小さいため上型21及び下型22の温度を所定の温度に制御することができる。この温度制御によって上型21の反応ガス抜き突起11は、上型21の圧縮面21aと同一温度にすることができ、成型体1の反応ガス抜き孔2の周囲接触面の昇温速度を、成型体1の上型21の圧縮面21aと接触する接触面3と同じにすることができる。このため成型体1の内部の昇温速度を反応ガス抜き孔2を設けないときより速くすることができ内部からの反応ガスの排出を速めることができる。
【0026】
そして、成形時に発生する反応ガスは反応ガス抜き孔2を設けないときは接触面3のみからの排出となるが、反応ガス抜き孔2を設けることで接触面3に加えて反応ガス抜き孔2からの排出も可能となり、反応ガスは内部に残存しにくくなる。なお、上型21及び下型22の温度制御は直接上型21及び下型22にヒーター等の加熱手段を設けることによって行うこともできる。
【0027】
次に、本発明の実施の形態1の製造方法について説明する。
プレス装置の加圧に要する油圧を解除して可動側ダイベースを下方に下げて下型22を上型21から離し、下型22の内部空間を出現させる。このとき上型21及び下型22は所定の温度(本実施の形態では215℃)に加熱されている。
【0028】
出現させた内部空間に成型体1を形成する組成物を充填しプレス装置の加圧に要する油圧を上げて可動側ダイベースを上方に移動させる。これによって下型22は上型21に接触し、内部空間に充填した組成物には所定の圧力と温度が加わることとなり、組成物中の配合ゴムの加硫と結合材の硬化が開始し、これに伴い反応ガスが発生する。そのため加圧開始後数秒経過した後、可動側ダイベースを下方に適量移動させて上型21と下型22の間に隙間を生じさせて反応ガスを金型20から排出する。
【0029】
このときの移動は反応ガスが抜けることができればよく、それ以上に大きく開ける必要はない。その後、可動側ダイベースを上方に移動させて下型22を上型21に接触させて再加圧を行う。このように加圧中に上型21と下型22を離間して反応ガスを排出し、再度上型21と下型22を接触させて加圧する操作をガス抜き操作といい、このガス抜き操作を数回行って反応ガスを成型体1内から排出させた。
【0030】
このガス抜き操作の際、下型22に充填した組成物は前述したように加熱された成形金型20の熱によって反応ガスが生成される。このとき本実施の形態1では反応ガス抜き突起11が組成物の内部まで侵入することができるために組成物内部に対し加熱が有効に働き、組成物の反応が進行しやすくなっている。したがって、加圧開始後最初のガス抜きのために下型22が下降するときには組成物の反応による硬化がある程度内部まで進行した半硬化状態で成形金型20が開くことになる。この半硬化状態ではすでに組成物に反応ガス抜き孔2が形成され、この反応ガス抜き孔2から組成物内部からの反応ガスが抜け出るようになる。
【0031】
勿論、上型21に接触した平面部分の接触面3からは反応ガス抜き孔2を設けない従来と同じように反応ガスが排出される。しかし反応ガスは1回のガス抜き操作を行っただけではまだ不充分である場合が多い。それは組成物の反応の進行が途中であることから反応ガスの生成は続いているためである。そこで、反応の進行によって生ずる反応ガスを排出するために、その後もガス抜き操作を行う必要がある。ガス抜き操作回数は乾式摩擦材の大きさ、組成物の内容によって異なるが、反応ガス抜き突起11を設けることで反応ガスの排出が促進されるためガス抜き操作回数の低減が期待できる。
このように、本実施の形態1では、反応ガス抜き突起11を設けた成形金型20によって加熱圧縮し、複数回のガス抜き操作を行うことで反応ガス抜き孔2を有する成型体1を形成した。
【0032】
図3は本発明の実施の形態1との比較のために作成した比較例50である。
本比較例50は、成型体1と同じ組成物を使用し、反応ガス抜き突起11の設置以外は同じ構造の成形金型を使用して同じ成形条件で形成した。表1は実施例としての成型体1と比較例50の各部の厚みを測定したものである。
成型体1(実施例)と比較例50は各々同じ位置を測定し、縦方向及び横方向の各3点、合計9点を測定し、その平均として算術平均(相加平均)を算出すると共に、最大厚み(MAX)と最小厚み(MIN)を選択し、最大厚みと最小厚みの差を板厚差として算出し平面の凹凸の程度(平面度)を表す指標とした。
【0033】
表1の結果から、設計厚み3.5mmに対して、比較例50では最大厚みMAX=3.609mmと最小厚みMIN=3.487mmで、板厚差0.1220mm、算術平均(相加平均)3.558mmが計測及び算出された。これに対して実施例としての成型体1では最大厚みMAX=3.523mmと最小厚みMIN=3.463mmで、板厚差0.06mm、算術平均(相加平均)3.49mmが計測及び算出され、厚みは比較例50及び成型体1とも狙い通りの厚み(設計厚み)に形成することができているが、成型体1の板厚差は比較例50の約半分となっている。つまり、反摩擦面側の接触面3の平面度が向上している。
【0034】
また、JIS D 4421により硬度を測定したところ、比較例50では29HRSであったが、成形体1では60HRSとなり、硬度に差が生じ比較例50に対して成型体1は硬度が増加し、成形体1に対して比較例50は硬度が低下している。これは成形時に組成物中の配合ゴム等から反応ガスが発生するが、比較例50では発生した反応ガスが充分抜けきらずに成形体の内部に閉じ込められて気泡や気孔となり、この気泡や気孔の存在が硬度に影響しているもの推測される。また、この内部での気泡の存在が、成型体1と比べて比較例50の板厚差が0.1220mmと大きく算出された原因と思われる。
【0035】
つまり成形体1では反応ガスの残存が比較例50に比べて大幅に少なくなることで、内部に発生する気泡や気孔の残存が減少し、その結果組成物自体が有する表面硬度からの低下が抑制されて比較例50より高い硬度が発現し、また板厚差も小さく算出されたものと思われる。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
図2に示す実施の形態1の上型21の反応ガス抜き突起11は高さが1.7mmと成形体1の厚み3.5mmに対し厚みの1/2としたものである。発明者らは、成形体1の厚みに対する反応ガス抜き孔2の深さについて検討した。
成形体1の厚みの20%未満の深さの反応ガス抜き孔2とすると、成形体1に反応ガスが貯まり易くなることによるクラック、ヒビ割れ、フクレの発生、反応ガスによる成型後の表面硬度の低下、成形体1の平面度の低下が生じていることが確認された。
【0039】
また、成形体1の厚みの60%以上の深さの反応ガス抜き孔2とすると、成形体1中の反応ガスが十分に排出され、反応ガスによるクラック、ヒビ割れ、フクレが発生せず、成型後の成型体1の表面硬度が上がり、板厚差の減少つまり平面度の向上が確認された。
しかし、成形体1の厚みの60%以上の深さの反応ガス抜き孔2とすると、成形体1の機械的強度が低下する傾向が確認された。したがって、機械的強度を維持したまま反応ガスによるフクレが発生したり、反応ガスにより硬度低下となったりしない反応ガス抜き孔2の深さとして、成形体1を総合的に評価すると、その厚みの20%乃至60%の深さが好ましいことが確認された。
この結果から乾式摩擦材に設ける反応ガス抜き孔2の深さは、反応ガスを効率よく排出するためだけでなく機械的強度を維持する必要性から乾式摩擦材の厚みの20%乃至60%の深さが好ましいといえる。
【0040】
上記実施の形態1においては、図2(a)及び(b)に示した直径1mm、高さ1.7mmの反応ガス抜き突起11は、円柱状の形状を使用している。しかし、本発明を実施する場合には、上面の直径1mm、高さ1.7mmの円柱状反応ガス抜き突起11を、錐状の形状のものとすることができる。特に、円錐、円錐ダイまたは三角錐、四角錐等の角錐、三角錐ダイ、四角錐ダイ等の角錐ダイの形状とすることもできる。円錐または三角錐、四角錐等の角錐、三角錐ダイ、四角錐ダイ等であっても、反応ガス抜き突起11Aの頭部、即ち、反応ガス抜き孔2の底部の形状は、尖鋭ではなく、丸みを帯びた端部とすると加圧力が加えやすくなるので望ましい。
【0041】
[実施の形態2]
上記実施の形態1の成形体1は、その厚みの20%乃至60%の深さの反応ガス抜き孔2を形成したものであるが、反応ガス抜き孔2を形成する上型21の円柱状反応ガス抜き突起11や円錐状等の反応ガス抜き突起11Aの加工精度が悪いと、成形体1中の反応ガスが十分排出できないで、成形体1中に留まることがある。そこで、図5に示す実施の形態2は、格子状の反応ガス抜き突起11Bを成形用金型20の上型21Bに設けて成型体1Bに反応ガスを排出する反応ガス排出溝2Bを形成したものである。
【0042】
このように、本実施の形態2の成型体1Bは、成型体1Bの表面に反応ガスを排出する反応ガス排出溝2Bを形成したものである。ここで反応ガス排出溝2Bを形成するための上型21Bに設けた格子状の反応ガス抜き突起11Bは上型21Bの圧縮面21bと同じ温度に制御されていて、成型体1Bの反応ガス排出溝2Bの昇温速度を成型体1Bの上型21Bの圧縮面21bに接触する接触面3Bと同じにできるため、成形体1Bの内部の昇温速度が速くなり、反応ガスの排出が良くなり、反応ガスに起因するヒビ割れ、クラック等の成形不良が低減できる。また、成型体1Bの内部から加熱することにより、反応ガス排出溝2B付近のガス抜き及びその付近のガス抜きを最初から最後まで継続して行うことができ、効率のよいガス抜きを行うことができる。
【0043】
なお、反応ガス排出溝2Bの深さは実施の形態1と同様に成型体1Bつまり乾式摩擦材の厚みの20%乃至60%の深さの深さとするのが反応ガスの排出効率及び強度確保の観点から好ましい。
また、実施に形態1の反応ガス抜き孔2と、実施の形態2の反応ガス排出溝2Bは別々に設けることもできるし、同時に設けることもできる。
【0044】
以上説明してきたように、本発明の実施の形態1及び実施の形態2は、ゴム中に加硫剤、摩擦調整剤、無機充填材等を配した基材となる配合ゴムと、乾式摩擦材の強度を向上させる補強繊維と、配合ゴムと補強繊維とを結合させる結合材等を配合した組成物を加熱させて特定の形状に成形される乾式摩擦材の摩擦面とは反対の反摩擦面側に、乾式摩擦材の厚みの20%乃至60%の深さの反応ガス抜き孔2または反応ガス排出溝2Bを形成したものである。
【0045】
また、成形金型の反摩擦面側に反応ガス抜き突起を設けて加熱圧縮することで反応ガス抜き孔2または反応ガス排出溝2Bを反摩擦面側に形成する製造方法である。
したがって、反応ガス抜き孔2、または反応ガス排出溝2Bを摩擦面とは反対の反摩擦面側に設けることで、乾式摩擦材に要求される諸特性に影響を及ぼすことが無く乾式摩擦材の成形時に発生する反応ガスの乾式摩擦材中に残存する量が減少することによってフクレ等の不具合や平面度が改善して品質が安定するだけでなく表面硬度を上げることが可能となる。
【符号の説明】
【0046】
1、1B 成型体
2 反応ガス抜き孔
2B 反応ガス排出溝
21、21B 上型
11、11A、11B 反応ガス抜き突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配合ゴムを含有する乾式摩擦材において、
前記乾式摩擦材の反摩擦面側に、前記乾式摩擦材の厚み方向に反応ガスを排出する反応ガス抜き孔、または反応ガス排出溝を形成したことを特徴とする乾式摩擦材。
【請求項2】
前記反応ガス抜き孔、または前記反応ガス排出溝の深さが前記乾式摩擦材の厚みの20%乃至60%であることを特徴とする請求項1に記載の乾式摩擦材。
【請求項3】
配合ゴムを含有する乾式摩擦材の製造方法において、
前記乾式摩擦材の反摩擦面側に、前記乾式摩擦材の厚み方向に反応ガス抜き孔、または反応ガス排出溝を形成するために、前記反応ガス抜き孔、または前記反応ガス排出溝に対応する部位に反応ガス抜き突起を設けた金型で圧縮加熱成形することを特徴とする乾式摩擦材の製造方法。
【請求項4】
前記反応ガス抜き孔、または前記反応ガス排出溝の深さが前記乾式摩擦材の厚みの20%乃至60%であることを特徴とする請求項3に乾式摩擦材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−44357(P2013−44357A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181054(P2011−181054)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000100780)アイシン化工株式会社 (171)
【Fターム(参考)】