説明

乾式洗浄装置、乾式洗浄方法、洗浄対象物、および再生装置の製造方法

【課題】付着物が転移した薄片状の洗浄媒体を付着物と分離して循環再利用しながら洗浄媒体が洗浄対象に衝突する速度および頻度の両方を高め、且つ、無駄な圧縮エアの消費を抑えて洗浄品質と洗浄効率を高めることができる乾式洗浄装置および乾式洗浄方法を提供すること。
【解決手段】洗浄対象物1および薄片状に形成され可撓性を有し洗浄対象物1を洗浄する洗浄媒体20を収容する洗浄槽40と、洗浄媒体20を高速気流により洗浄対象物1に衝突させる洗浄媒体加速手段12と、洗浄媒体20に転移した付着物19を吸引および除去することにより、洗浄媒体20を再生する洗浄媒体再生手段30と、洗浄槽40に収容した洗浄媒体20を洗浄媒体加速手段12まで搬送する循環手段22と、を備え、循環手段22が、洗浄対象物1と洗浄媒体20を収容する洗浄槽40の壁面を移動して、洗浄媒体20を洗浄媒体加速手段12まで搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄対象物に付着した塵埃や粉体等の付着物を、液体を使わずに固体洗浄媒体を用いて除去する乾式洗浄装置および乾式洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、資源循環型社会を実現する要求に応えるため、トナーを用いて画像形成を行う複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置の使用済みの製品本体またはその構成部品を回収した後に、分解、清掃、再加工し、部品や樹脂材料等として再利用することが行われている。
【0003】
画像形成装置本体またはその構成部品を再利用するためには、付着した微粒子粉体のトナーを除去する清浄作業が必要であるが、清浄作業に必要なコストや環境負荷を減らすことが大きな課題となっている。
【0004】
例えば、トナーの除去に水や溶剤を用いる湿式の洗浄方法の場合は、付着物を含んだ廃液の処理および洗浄後の乾燥処理のためのエネルギー消費や環境負荷が大きく高コストであることが問題となっている。
【0005】
また、エアブローによる乾式の洗浄方法の場合は、付着力の強いトナーに対しては洗浄能力が十分ではないため、人手によるウェス拭きなどの後工程が更に必要となってしまうという問題がある。
【0006】
また、ドライアイスを用いたブラスト洗浄では、ドライアイスを大量に消費するためランニングコストが高く環境負荷も大きいという問題がある。
【0007】
このような問題に対して、水や溶剤を使用しない乾式の洗浄方法としては、帯電性の洗浄対象物を弾性変形可能な接触部材とともに回転円筒内で撹拌し、除電しながら洗浄対象部材に付着した塵埃の付着力を弱めて除去するようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、ブラスト装置により洗浄対象物から付着物を除去するようにした技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
また、粒状固体の洗浄媒体を搬送管で供給して空気流に混入させるブラスト措置により、洗浄対象物から付着物を除去するようにした技術が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特許第3288462号公報
【特許文献2】特許第2889547号公報
【特許文献3】特許第3468995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載された技術は、洗浄対象物が固定されておらず洗浄対象物の姿勢を制御できないため、洗浄対象物の所望の部位を狙って洗浄することができず、また、接触部材と洗浄対象物の接触力を攪拌のみにより得ているので、洗浄力が十分でないという問題があった。
【0011】
また、攪拌のみでは、接触部材の入れ替えを強制的に行うことができないため、接触部材同士が常に干渉してしまい、洗浄対象物に対する接触部材の接触頻度を高めることができず、付着力の強い塵埃の除去が困難であるという問題があった。
【0012】
さらに塵埃を除去して汚れた接触部材が長時間洗浄対象物の周辺に留まるため、洗浄対象物に塵埃が再付着してしまい、洗浄の速度や品質を高めることができずタクトの増大が生じてしまうという問題があった。
【0013】
また、特許文献2に記載された技術は、仮に薄片状の洗浄媒体を用いた場合、付着物および洗浄媒体の双方が空中に浮遊しやすいものであるため、付着物と洗浄媒体を分離して付着物のみを吸引排出することが困難であるという問題があった。
【0014】
また、特許文献3に記載された技術は、洗浄媒体として粒状固体を用いているため、洗浄対象物の汚れを除去するだけでなく洗浄対象物の表面を削り取って梨地状に荒らしてしまうので、洗浄対象物に傷が付くことが許されない場合には適しておらず、仮に薄片状の洗浄媒体を用いたとしても、薄片状の洗浄媒体は粒状固体に比べて流動性が悪いため、特に大量の洗浄媒体を用いた場合に搬送管が閉塞しやすく、洗浄媒体の安定した供給が困難であるという問題があった。
【0015】
また、洗浄媒体を安定して供給できたとしても、薄片状の洗浄媒体を用いた場合は、洗浄能力を高めるために洗浄媒体が洗浄対象に速い速度で且つ高い頻度で衝突する必要があるため、強い付着力で汚れが付着した洗浄対象物に対しては洗浄時間と除去能力が不十分であるという問題があった。
【0016】
また、洗浄に直接寄与する洗浄媒体以外の部分にも空気流が発生しているため、必要以上の圧縮エアを消費しており環境負荷の低減が不十分であるという問題があった。
【0017】
また、薄片状の洗浄媒体は、一度滞留して積層すると著しく流動性が悪くなるという性質があるため、積層している洗浄媒体を気流による撹拌作用のみで動かすには大量の空気流を必要とするという問題があった。
【0018】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、付着物が転移した薄片状の洗浄媒体を付着物と分離して循環再利用しながら洗浄媒体が洗浄対象に衝突する速度および頻度の両方を高め、且つ、無駄な圧縮エアの消費を抑えて洗浄品質と洗浄効率を高めることができる乾式洗浄装置、乾式洗浄方法、洗浄対象物、および再生装置の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る乾式洗浄装置は、洗浄対象物および薄片状に形成され可撓性を有し前記洗浄対象物を洗浄する洗浄媒体を収容する洗浄槽と、前記洗浄対象物に付着した塵や粉体の付着物を除去するよう、前記洗浄槽内を飛翔する前記洗浄媒体を高速気流により前記洗浄対象物に衝突させる洗浄媒体加速手段と、前記洗浄対象物に衝突して前記洗浄媒体に転移した前記付着物を吸引し該付着物を前記洗浄媒体から除去することにより、前記洗浄媒体を再生する洗浄媒体再生手段と、前記洗浄槽に収容した前記洗浄媒体を前記洗浄媒体加速手段まで搬送する循環手段と、を備え、前記循環手段が、前記洗浄対象物と前記洗浄媒体を収容する前記洗浄槽の壁面を移動して、前記洗浄媒体を前記洗浄媒体加速手段まで搬送することを特徴としている。
【0020】
この構成により、洗浄対象物と洗浄媒体を収容する洗浄槽の壁面が移動することにより、洗浄槽に堆積した大量の洗浄媒体を強制的に洗浄媒体加速手段まで運搬することができる。
【0021】
また、搬送に必要なエネルギーも圧縮エアの気流により搬送する場合に比べて小さく、洗浄工程における環境負荷を小さくすることができる。
【0022】
したがって、付着物が転移した薄片状の洗浄媒体を付着物と分離して循環再利用しながら洗浄媒体が洗浄対象物に衝突する速度および頻度の両方を高め、且つ、無駄な圧縮エアの消費を抑えて洗浄品質と洗浄効率を高めることができる。
【0023】
また、本発明に係る乾式洗浄装置は、前記循環手段が、前記洗浄対象物と前記洗浄媒体を収容する前記洗浄槽の内壁または該内壁の一部を移動して、前記洗浄媒体を前記洗浄媒体加速手段まで搬送することを特徴としている。
【0024】
この構成により、洗浄対象物と洗浄媒体を収容する洗浄槽の内壁または内壁の一部が移動することにより、洗浄槽に堆積した大量の洗浄媒体を強制的に洗浄媒体加速手段まで運搬することができる。
【0025】
また、搬送に必要なエネルギーも圧縮エアの気流により搬送する場合に比べて小さく、洗浄工程における環境負荷を小さくできる。
【0026】
また、本発明に係る乾式洗浄装置は、前記洗浄槽の内壁が、前記洗浄媒体の落下防止用の突起物を有する筒型形状に形成され、前記循環手段が、前記洗浄槽の内壁または該内壁の一部を円周方向に回転して、前記洗浄媒体を前記洗浄媒体加速手段まで搬送することを特徴としている。
【0027】
この構成により、前記洗浄槽の内壁が、前記洗浄媒体の落下防止用の突起物を有する筒型形状に形成され、洗浄槽の内壁または内壁の一部が円周方向に回転することにより、大量の洗浄媒体を確実に洗浄媒体加速手段まで運搬することができる。
【0028】
また、本発明に係る乾式洗浄装置は、前記洗浄槽が、前記内壁に多孔性部材を有するとともに、前記内壁と回転しない外壁との間に負圧に保たれた空間を有する多重構造を備えることを特徴としている。
【0029】
この構成により、洗浄槽の洗浄媒体を収容および搬送する内壁には、多孔性部材を備え、且つ、回転しない外壁との間に空間を有する多重構造であることにより、洗浄対象物から除去した塵埃や粉体等の付着物や、洗浄媒体に転移した付着物を分離および除去して洗浄媒体を再生することができる。
【0030】
また内壁と外壁の間の空間を負圧に保つことにより、除去した塵埃や粉体等の付着物が洗浄槽の内部に戻ることを防止できる。
【0031】
また、洗浄槽の内壁を用いて広い面積で洗浄媒体の再生を行うことができるので、強力で確実な洗浄媒体の再生を行うことができる。
【0032】
また、本発明に係る乾式洗浄装置は、前記洗浄媒体加速手段が、前記洗浄槽の内壁より外側に配置されたことを特徴としている。
【0033】
この構成により、洗浄媒体加速手段を洗浄槽の内壁より外側に備えたことにより、洗浄媒体が重力によって落下するまで待つ必要がなく、洗浄時間の短縮が行え、使用するエネルギーが少なくなるので、洗浄工程における環境負荷を小さくすることができる。
【0034】
また、搬送されてきた洗浄媒体に直接気流を与えることができるため、気流効率に優れ、使用するエネルギーが少なくできるので、洗浄工程における環境負荷を小さくすることができる。
【0035】
また、本発明に係る乾式洗浄装置は、前記洗浄槽内の一部に、前記循環手段により搬送される前記洗浄媒体が前記洗浄媒体加速手段の高速気流により飛散しないよう、遮蔽板を備えたことを特徴としている。
【0036】
この構成により、洗浄槽内の一部に遮蔽板を備えたことにより、搬送途中の洗浄媒体が飛散することがなく、効率的な搬送を行うことができる。
【0037】
また、本発明に係る乾式洗浄装置は、洗浄槽を回転させて該洗浄槽内の下部に堆積した薄片状の洗浄媒体を前記洗浄槽内の上部に搬送する循環工程と、前記洗浄槽内の上部に達して重力により落下する前記洗浄媒体を、高速気流により洗浄対象物に衝突させる洗浄媒体加速工程と、前記洗浄対象物に衝突し該洗浄対象物に付着した付着物を除去してから前記洗浄槽内の下部に堆積した前記洗浄媒体から、前記付着物を吸引して該付着物を前記洗浄媒体から除去することにより、前記洗浄媒体を再生する再生工程と、を備えることを特徴としている。
【0038】
この構成により、搬送に必要なエネルギーを抑えつつ洗浄槽に堆積した大量の洗浄媒体を強制的に洗浄媒体加速手段まで運搬し、繰り返し洗浄を行うことができる。
【0039】
したがって、一定の洗浄媒体により繰り返し洗浄を行うことができるので、洗浄工程における環境負荷を小さくすることができる。
【0040】
また、本発明に係る乾式洗浄方法は、洗浄槽の内壁または該内壁の一部を回転させて該洗浄槽内の下部に堆積した薄片状の洗浄媒体を前記洗浄槽内の上部に搬送する循環工程と、前記洗浄槽内の上部に達して重力により落下する前記洗浄媒体を、高速気流により洗浄対象物に衝突させる洗浄媒体加速工程と、前記洗浄対象物に衝突し該洗浄対象物に付着した付着物を除去してから前記洗浄槽内の下部に堆積した前記洗浄媒体から、前記付着物を吸引して該付着物を前記洗浄媒体から除去することにより、前記洗浄媒体を再生する再生工程と、を備えることを特徴としている。
【0041】
この乾式洗浄方法により、搬送に必要なエネルギーを抑えながら、洗浄槽に堆積した大量の洗浄媒体を強制的に洗浄媒体加速手段まで運搬し、繰り返し洗浄を行うことができるので、洗浄工程における環境負荷を小さくすることができる。
【0042】
したがって、付着物が転移した薄片状の洗浄媒体を付着物と分離して循環再利用しながら洗浄媒体が洗浄対象物に衝突する速度および頻度の両方を高め、且つ、無駄な圧縮エアの消費を抑えて洗浄品質と洗浄効率を高めることができる。
【0043】
また、本発明に係る乾式洗浄方法は、前記循環工程、前記洗浄媒体加速工程および前記再生工程のサイクルを繰り返す毎に、前記搬送工程において、前記洗浄槽、前記洗浄槽の内壁または該内壁の一部を回転する方向を入れ替えることを特徴としている。
【0044】
この乾式洗浄方法により、洗浄媒体が洗浄対象物へ衝突する方向の偏りをなくすことができ、また、洗浄槽内で洗浄媒体が滞留する部分が少なくなるので、洗浄媒体を効率的に使用することができる。
【0045】
したがって、付着物が転移した薄片状の洗浄媒体を付着物と分離して循環再利用しながら洗浄媒体が洗浄対象物に衝突する速度および頻度の両方を高め、且つ、無駄な圧縮エアの消費を抑えて洗浄品質と洗浄効率を高めることができる。
【0046】
また、本発明に係る洗浄対象物は、前記の乾式洗浄方法によって洗浄したことを特徴としている。
【0047】
このため、前記の乾式洗浄方法によって洗浄した洗浄対象物は確実に洗浄され、安定して再利用することができる。
【0048】
また、本発明に係る再生装置の製造方法は、前記の乾式洗浄方法によって、使用済みで回収して分解した装置の部品を洗浄し、洗浄した部品を再度組み立てて装置を復元することを特徴としている。
【0049】
このため、前記の乾式洗浄方法によって、使用済みで回収して分解した装置の部品を洗浄し、洗浄した部品を再度組み立てて装置を復元することにより、安定した再生装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0050】
本発明によれば、付着物が転移した薄片状の洗浄媒体を付着物と分離して循環再利用しながら洗浄媒体が洗浄対象物に衝突する速度および頻度の両方を高め、且つ、無駄な圧縮エアの消費を抑えて洗浄品質と洗浄効率を高めることができる乾式洗浄装置および乾式洗浄方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る乾式洗浄装置の構成を示す斜視図であり、図2(a)〜(c)は、洗浄作用を示す断面図である。また、図3は、乾式洗浄装置の構成を示す断面図であり、図4(a)〜(c)は、乾式洗浄装置の突起物の形状を示す断面図である。また、図5(a)、(b)は、乾式洗浄装置の洗浄媒体再生手段の構成を示す斜視図および断面図であり、図6(a)、(b)は、乾式洗浄装置の洗浄槽の構成を示す断面図である。また、図7は、乾式洗浄装置の側壁周辺の構成を示す断面図である。
【0052】
まず、構成について説明する。
【0053】
図1に示すように、乾式洗浄装置10は、洗浄対象物1に付着したトナー等の各種粉塵からなる付着物19を、高速気流により流動する洗浄媒体20により除去するようになっており、洗浄槽40、循環手段22、洗浄媒体加速手段12および洗浄媒体再生手段30を備えている。
【0054】
この乾式洗浄装置10に使用する洗浄媒体20は、金属やセラミクス、合成樹脂、スポンジ、布等を粒状に形成したもの、棒状、筒状、繊維状または薄片状の固体から形成された可撓性のものから構成されており、材質および形状は、洗浄対象物1の形状や材質などの特性や、洗浄対象物1に付着している付着物19の粒径や付着強度に応じて選択することができる。
【0055】
また、洗浄媒体20としては、上記の材料を、面積が1〜1000平方メートルで厚さが1〜500μm程度の薄片状に形成したものが好適であり、以下、洗浄媒体20が、可撓性の材料を薄片状に形成したものから構成されているものとして説明する。
【0056】
例えば、電子写真方式の画像形成装置に使用する平均粒径5〜10μmのトナー粉体が付着物19として付着した合成樹脂や金属製の構成部品から付着物19を除去するには、樹脂フィルム片や布片、紙片、金属薄片等を薄片状にしたものを洗浄媒体20として使用することが望ましい。
【0057】
図2(a)〜図2(c)に示すように、薄片状の洗浄媒体20を使用した場合、洗浄媒体20がその端部から洗浄対象物1に衝突すると、洗浄対象物1との接触力が洗浄媒体20の端部に集中するため、洗浄媒体20の質量が小さくても付着物19の除去に必要な力を得ることができる。
【0058】
また、薄片状の洗浄媒体20を使用した場合、洗浄対象物1に対する接触力が大きくなると洗浄媒体20が撓んで力が逃げるため、一般的なブラストショット材やバレル加工用の研磨材等を洗浄媒体として用いる場合とは異なり、必要以上の力が洗浄対象物1に加わることがなく、洗浄対象物1を傷つけることがない。
【0059】
さらに、薄片状の洗浄媒体20は、洗浄対象物1との衝突時には撓んで空気から受ける粘性抵抗が大きく作用するため非弾性衝突となり、洗浄対象物1からの跳ね返りが起こりにくく、洗浄対象物1に斜めに衝突した場合は、滑り接触して一度の衝突で洗浄対象物1の広い面積に接触しながら移動し、この接触による掻き取り作用や摺擦作用により洗浄対象物1に付着した付着物19に対して接触面に平行な力を作用させ、小さい力で付着物19を洗浄対象物1から分離でき、洗浄効率を高めることができる。
【0060】
洗浄槽40は、側面から見て筒形状の中空体に構成され、側壁47に洗浄対象物1を投入する洗浄対象物投入口14を有し、洗浄対象物投入口14には開閉自在な蓋50(図7参照)が設けられている。
【0061】
洗浄槽40の円周方向の内壁の一部には、開口部40aが形成され、この開口部40aに洗浄媒体再生手段30が設けられている。
【0062】
また、洗浄槽40には、循環手段22(図3参照)が設けられ、循環手段22は、円周方向の内壁の内面付近を洗浄媒体20の循環経路18としている。
【0063】
洗浄槽40の形状は、回転対称の筒形状とすることが好ましく、円筒形が最も理想的である。
【0064】
図3に示すように、循環手段22は、洗浄媒体20を上方へ搬送するときの落下防止のための突起物42と、洗浄槽40を回転させる回転モータ15を有している。
【0065】
図4(a)〜図4(c)に示すように、突起物42は、洗浄媒体20が落下することなく上方へ搬送することができる形状に形成されており、例えば、図4(a)に示す凹凸形状のものや、図4(b)に示すフィン状のもの、または図4(c)に示すようにフィン状のものに遮蔽板43を固定したものを用いることができる。このうち、図4(a)に示す凹凸形状の突起物42や、図4(b)に示すフィン状の突起物42が加工性が良い形状であるため好適である。
【0066】
洗浄槽40を回転(例えば、図1に矢印Aで示す時計方向)すると、突起物42は、洗浄槽40の内壁の内側下部に堆積した洗浄媒体20を上方へ直接的に搬送するようになっている。
【0067】
このため、エアブローノズルから圧縮空気を噴き出して間接的に洗浄媒体20を搬送する場合と比べて、洗浄槽40の大きさによって異なるが、概ね10〜50%程度のエネルギーを削減することができる。
【0068】
洗浄媒体加速手段12は、加速ノズル12aを有し、コンプレッサーや圧力タンク等の図示しない圧縮空気源から供給される圧縮空気を加速ノズル12aから洗浄対象物1へ向かって噴出させて、洗浄媒体20を洗浄対象物1に衝突させるようになっている。
【0069】
図5(a)、図5(b)に示すように、洗浄媒体再生手段30は、洗浄槽40の円周方向の内壁の一部に配置された分離部材31とフード32により閉空間30aを形成しており、この閉空間30aがホース等の吸引管17により負圧発生源を有する集塵機16に接続され、フード32の内部が負圧に保たれるようになっている。
【0070】
分離部材31は、気体や粉体を通過させるが洗浄媒体20が通り抜けられない小孔31aを多数有し、例えば金網、プラスチック網、メッシュ、パンチメタル板、スリット板等からなる多孔性部材で形成され、洗浄対象物1から分離された付着物19と、洗浄対象物1に衝突し磨耗や欠けが生じたり、長期使用により弾力性が劣化した洗浄媒体20を洗浄槽40の外部に排出するようになっている。なお、小孔31aは、円形のものに限らずスリット状であってもよい。
【0071】
図6(a)、図6(b)に示すように、洗浄槽40を、洗浄槽40の円周方向の壁面のうち、内壁45を分離部材31の小孔31aと同様の小孔45aを多数有する多孔性部材から構成し、外壁46との間に閉空間40bを形成した多重構造にすることで、洗浄槽40の外周の全てを洗浄媒体再生手段30として構成することができる。
【0072】
この場合、洗浄媒体20の搬送中は常に洗浄媒体20の再生を行うことができ、高い集塵効果と高い洗浄品質を得ることができる。
【0073】
図7に示すように、洗浄槽40の内部には、側壁47の洗浄対象物投入口14を挿通する軸61を有するとともに、洗浄対象物1を洗浄槽40の中心部に保持する洗浄対象物保持手段62が設けられている。
【0074】
蓋50と側壁47との間、および蓋50と軸61との間には、洗浄槽40の内部を密閉するためのシール48が設けられている。また、蓋50と軸61との間には、双方の摩耗を防止するベアリング49が設けられている。
【0075】
洗浄対象物保持手段62の軸61は、モータ等から構成され、軸61および洗浄対象物保持手段62を回転させる姿勢移動手段60に接続されている。姿勢移動手段60は、洗浄対象物保持手段62を軸61の軸芯周りに回転することにより、洗浄対象物保持手段62に保持された洗浄対象物1を回転してその姿勢を変化させるようになっている。
【0076】
次に動作について説明する。
【0077】
まず、洗浄槽40に薄片状の洗浄媒体20を投入した状態で、洗浄対象物保持手段62に保持された洗浄対象物1を洗浄槽40の洗浄対象物投入口14から投入して初期位置に位置決めし、洗浄対象物投入口14を蓋50で閉じて洗浄槽40を密閉する。
【0078】
ついで、循環手段22を作動すると、初期状態で洗浄槽40内の底面に落下していた洗浄媒体20は、循環経路18である洗浄槽40の壁面に沿って突起物42によって上昇し、頂点付近に到達すると重力作用により落下し洗浄媒体加速手段12へ運ばれる。すなわち、循環工程が行われる。
【0079】
ついで、洗浄媒体加速手段12に圧縮空気を供給すると、落下してきた洗浄媒体20は、洗浄対象物1の方向へ加速されて高速で洗浄対象物1に衝突する。すなわち、洗浄媒体加速工程が行われる。
【0080】
ついで、姿勢移動手段60により洗浄対象物1を回転させることで、洗浄対象物1と洗浄媒体加速手段12の加速ノズル12aの相対位置を変化させて、洗浄対象物1の全面にムラなく洗浄媒体20が衝突する。
【0081】
ついで、洗浄媒体20が洗浄対象物1に高速で接触または衝突することにより、洗浄対象物1に付着している付着物19が叩き落とされる。叩き落とされた付着物19と洗浄媒体20は、重力により落下し、再び洗浄槽40の底面に戻った後、洗浄媒体再生手段30へ運ばれる。
【0082】
ついで、付着物19が転移した洗浄媒体20は、集塵機16に向かう気流の流れに乗って洗浄媒体再生手段30の分離部材31に吸い寄せられる。洗浄対象物1から剥離して落下した付着物19は、分離部材31を通過し洗浄槽40から排出される。また、洗浄対象物1から洗浄媒体20に転移した付着物19も、分離部材31により洗浄媒体20から分離されて洗浄槽40より排出される。すなわち、再生工程が行われる。
【0083】
ついで、洗浄媒体再生手段30を通過して付着物19が分離された洗浄媒体20は、循環手段22により再び洗浄媒体加速手段12まで運ばれる。
【0084】
上記の一連の動作を1サイクルとしてこのサイクルを繰り返すことにより、洗浄媒体20を洗浄槽40内で循環させながら洗浄対象物1から付着物19を効果的に除去することができる。
【0085】
また、この構成によれば、付着物19が、比較的付着力が強く、エアブローのみでは除去しにくい粉塵等であっても、高速で飛翔する洗浄媒体20が接触、衝突することによって洗浄対象物1から分離することができる。
【0086】
特に、薄片状の洗浄媒体20を用いた場合、洗浄対象物1を傷つけることなく、より高い洗浄品質と洗浄効率が得られるという優れた効果を奏する。
【0087】
さらに、洗浄媒体20に転移した付着物19が洗浄媒体再生手段30で効果的に除去され、洗浄媒体20の清浄度が常に保たれるため、洗浄対象物1から洗浄媒体20に転移した付着物19が洗浄対象物1に再付着することがなく、高い洗浄品質を得ることができる。
【0088】
なお、洗浄対象物保持手段62に接続される軸61および姿勢移動手段60を複数備え、複数の軸61および姿勢移動手段60により洗浄対象物保持手段62が保持する洗浄対象物1の姿勢を複数の軸周りに変化させながら上記の動作を繰り返すことにより、より一層洗浄ムラをなくし、高い洗浄品質を得ることができる。
【0089】
以上のように、本実施の形態に係る乾式洗浄装置10は、洗浄対象物1および薄片状に形成され可撓性を有し洗浄対象物1を洗浄する洗浄媒体20を収容する洗浄槽40と、洗浄対象物1に付着した塵や粉体の付着物19を除去するよう、洗浄槽40内を飛翔する洗浄媒体20を高速気流により洗浄対象物1に衝突させる洗浄媒体加速手段12と、洗浄対象物1に衝突して洗浄媒体20に転移した付着物19を吸引しこの付着物19を洗浄媒体20から除去することにより、洗浄媒体20を再生する洗浄媒体再生手段30と、洗浄槽40に収容した洗浄媒体20を洗浄媒体加速手段12まで搬送する循環手段22と、を備え、循環手段22が、洗浄対象物1と洗浄媒体20を収容する洗浄槽40の壁面を移動して、洗浄媒体20を洗浄媒体加速手段12まで搬送することを特徴としている。
【0090】
このため、洗浄対象物1と洗浄媒体20を収容する洗浄槽40の壁面が移動することにより、洗浄槽40に堆積した大量の洗浄媒体20を強制的に洗浄媒体加速手段12まで運搬することができる。
【0091】
また、搬送に必要なエネルギーも圧縮エアの気流により搬送する場合に比べて小さく、洗浄工程における環境負荷を小さくすることができる。
【0092】
したがって、付着物19が転移した薄片状の洗浄媒体20を付着物19と分離して循環再利用しながら洗浄媒体20が洗浄対象物1に衝突する速度および頻度の両方を高め、且つ、無駄な圧縮エアの消費を抑えて洗浄品質と洗浄効率を高めることができる。
【0093】
また、本実施の形態に係る乾式洗浄装置10は、洗浄槽40の内壁が、洗浄媒体20の落下防止用の突起物42を有する筒型形状に形成され、循環手段22が、洗浄槽40の内壁または該内壁の一部を円周方向に回転して、洗浄媒体20を洗浄媒体加速手段12まで搬送することを特徴としている。
【0094】
このため、洗浄槽40の内壁が、洗浄媒体20の落下防止用の突起物42を有する筒型形状に形成され、洗浄槽40の内壁または内壁の一部が円周方向に回転することにより、大量の洗浄媒体20を確実に洗浄媒体加速手段12まで運搬することができる。
【0095】
また、本実施の形態に係る乾式洗浄装置10は、洗浄槽40が、内壁45に多孔性部材を有するとともに、内壁45と回転しない外壁46との間に負圧に保たれた空間を有する多重構造を備えることを特徴としている。
【0096】
このため、洗浄槽40の洗浄媒体20を収容および搬送する内壁45には、多孔性部材を備え、且つ、回転しない外壁46との間に空間を有する多重構造であることにより、洗浄対象物1から除去した塵埃や粉体等の付着物19や、洗浄媒体20に転移した付着物19を分離および除去して洗浄媒体20を再生することができる。
【0097】
また内壁45と外壁46の間の空間を負圧に保つことにより、除去した塵埃や粉体等の付着物19が洗浄槽40の内部に戻ることを防止できる。
【0098】
また、洗浄槽40の内壁45を用いて広い面積で洗浄媒体20の再生を行うことができるので、強力で確実な洗浄媒体20の再生を行うことができる。
【0099】
また、本実施の形態に係る乾式洗浄方法は、洗浄槽40を回転させて洗浄槽40内の下部に堆積した薄片状の洗浄媒体20を洗浄槽40内の上部に搬送する循環工程と、洗浄槽40内の上部に達して重力により落下する洗浄媒体20を、高速気流により洗浄対象物1に衝突させる洗浄媒体加速工程と、洗浄対象物1に衝突し洗浄対象物1に付着した付着物19を除去してから洗浄槽40内の下部に堆積した洗浄媒体20から、付着物19を吸引して付着物19を洗浄媒体20から除去することにより、洗浄媒体20を再生する再生工程と、を備えることを特徴としている。
【0100】
このため、搬送に必要なエネルギーを抑えつつ洗浄槽40に堆積した大量の洗浄媒体20を強制的に洗浄媒体加速手段12まで運搬し、繰り返し洗浄を行うことができる。
【0101】
したがって、一定の洗浄媒体20により繰り返し洗浄を行うことができるので、洗浄工程における環境負荷を小さくすることができる。
(第2の実施の形態)
図8(a)、(b)は、本発明の第2の実施の形態に係る乾式洗浄装置の洗浄槽の構成を示す断面図および斜視図である。また、図9は、本発明の第2の実施の形態に係る乾式洗浄装置の洗浄槽の構成を示す斜視図である。なお、前述の実施の形態と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0102】
図8(a)、(b)および図9に示すように、本実施の形態では、循環手段22は、洗浄槽40の円周方向の内壁45または内壁45の一部を回転可動にした回転可動面44と、回転可動面44に固定され、洗浄媒体20を上方へ搬送するときの落下防止のために洗浄槽40の円周方向の内壁45または内壁45の一部に配置された突起物42とを有している。なお、回転可動面44は、前述の実施の形態と同様に、回転モータ15により回転するようになっている。
【0103】
この循環手段22により洗浄槽40の回転可動面44を回転することで、突起物42が回転して洗浄槽40の内壁45の下部に堆積した洗浄媒体20を上方へ搬送するようになっている。
【0104】
このため、回転質量を小さくすることができ、循環手段22で使用するエネルギーを少なくすることができる。
【0105】
回転可動面44の材質は、金属、樹脂、ゴム等、突起物42を固定できるものから構成されている。
【0106】
なお、回転可動面44は、図8(b)に示すように、洗浄槽40の円周方向の内壁45の中央部に配置する場合と、図9に示すように、洗浄槽40の円周方向の内壁45の両端部に配置する場合とを実施することができるが、図9に示すように、洗浄槽40の円周方向の内壁45に沿ったワイヤーやリング状の可動部に突起物42を固定した構造とすることにより、最も回転質量を小さくでき、洗浄媒体20を上方へ搬送するエネルギーを小さくすることができる。
【0107】
また、洗浄媒体再生手段30は、回転可動面44、または、回転可動面44以外の内壁45上のどちらにも設置可能であり、使用形態により適時選択することができる。
【0108】
以上のように、本実施の形態に係る乾式洗浄装置10は、循環手段22が、洗浄対象物1と洗浄媒体20を収容する洗浄槽40の内壁45または内壁45の一部を移動して、洗浄媒体20を洗浄媒体加速手段12まで搬送することを特徴としている。
【0109】
このため、洗浄対象物1と洗浄媒体20を収容する洗浄槽40の内壁45または内壁45の一部が移動することにより、洗浄槽40に堆積した大量の洗浄媒体20を強制的に洗浄媒体加速手段12まで運搬することができる。
【0110】
また、搬送に必要なエネルギーも圧縮エアの気流により搬送する場合に比べて小さく、洗浄工程における環境負荷を小さくできる。
【0111】
また、本実施の形態に係る乾式洗浄方法は、洗浄槽40の内壁45または内壁45の一部を回転させて洗浄槽40内の下部に堆積した薄片状の洗浄媒体20を洗浄槽40内の上部に搬送する循環工程と、洗浄槽40内の上部に達して重力により落下する洗浄媒体20を、高速気流により洗浄対象物1に衝突させる洗浄媒体加速工程と、洗浄対象物1に衝突し洗浄対象物1に付着した付着物19を除去してから洗浄槽40内の下部に堆積した洗浄媒体20から、付着物19を吸引して付着物19を洗浄媒体20から除去することにより、洗浄媒体20を再生する再生工程と、を備えることを特徴としている。
【0112】
このため、搬送に必要なエネルギーを抑えながら、洗浄槽40に堆積した大量の洗浄媒体20を強制的に洗浄媒体加速手段12まで運搬し、繰り返し洗浄を行うことができるので、洗浄工程における環境負荷を小さくすることができる。
【0113】
したがって、付着物19が転移した薄片状の洗浄媒体20を付着物19と分離して循環再利用しながら洗浄媒体20が洗浄対象物1に衝突する速度および頻度の両方を高め、且つ、無駄な圧縮エアの消費を抑えて洗浄品質と洗浄効率を高めることができる。
(第3の実施の形態)
図10は、本発明の第3の実施の形態に係る乾式洗浄装置の構成を示す断面図である。なお、前述の実施の形態と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0114】
図10に示すように、本実施の形態では、洗浄媒体加速手段12は、洗浄槽40の円周方向の内壁45より外側に配置されており、多孔性部材からなる内壁45を通して、圧縮空気を加速ノズル12aから洗浄対象物1へ向かって噴出させて、洗浄媒体20を洗浄対象物1に衝突させるようになっている。
【0115】
これにより、洗浄媒体20が重力によって落下するまで待つ必要がなく、洗浄時間を短縮し、洗浄工程で使用するエネルギーを少なくすることができる。
【0116】
以上のように、本実施の形態に係る乾式洗浄装置10は、洗浄媒体加速手段12が、洗浄槽40の内壁45より外側に配置されたことを特徴としている。
【0117】
このため、洗浄媒体加速手段12を洗浄槽40の内壁45より外側に備えたことにより、洗浄媒体20が重力によって落下するまで待つ必要がなく、洗浄時間の短縮が行え、使用するエネルギーが少なくなるので、洗浄工程における環境負荷を小さくすることができる。
【0118】
また、搬送されてきた洗浄媒体20に直接気流を与えることができるため、気流効率に優れ使用するエネルギーが少なくできるので、洗浄工程における環境負荷を小さくすることができる。
(第4の実施の形態)
図11、図12は、本発明の第4の実施の形態に係る乾式洗浄装置の構成を示す断面図である。なお、前述の実施の形態と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0119】
図11に示すように、本実施の形態では、洗浄媒体加速手段12の気流により搬送中の洗浄媒体20が飛散しないよう、洗浄槽40内の一部に遮蔽板43が備えられている。
【0120】
遮蔽板43としては、洗浄媒体加速手段12の気流を防げるものであれば良く、図11に示すように、洗浄槽40内に固定する場合の他に、図12に示すように、突起物42に固定する場合があり、使用形態により適時選択すればよい。
【0121】
以上のように、本実施の形態に係る乾式洗浄装置10は、洗浄槽40内の一部に、循環手段22により搬送される洗浄媒体20が洗浄媒体加速手段12の高速気流により飛散しないよう、遮蔽板43を備えたことを特徴としている。
【0122】
このため、洗浄槽40内の一部に遮蔽板43を備えたことにより、搬送途中の洗浄媒体20が飛散することがなく、効率的な搬送を行うことができる。
(第5の実施の形態)
図13(a)、(b)は、本発明の第5の実施の形態に係る乾式洗浄装置の構成を示す断面図である。なお、前述の実施の形態と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0123】
図13(a)、(b)に示すように、本実施の形態では、洗浄槽40の回転方向が、1サイクルごとに正転と反転との間で入れ替わるようになっている。
【0124】
すなわち、第1の実施の形態で説明した一連の動作を1サイクルとして、このサイクルを繰り返す毎に、図13(a)に矢印Aで示す時計回りと、図13(b)に矢印Bで示す反時計回りとの間で、洗浄槽40の回転方向を逆方向にするようになっている。
【0125】
これにより、洗浄媒体20が洗浄対象物1への衝突方向の偏りをなくすことができ、また洗浄槽40内壁に堆積した洗浄媒体20の滞留部分が少なくなり洗浄媒体20を効率的に使用できる。
【0126】
以上のように、本実施の形態に係る乾式洗浄方法は、循環工程、洗浄媒体加速工程および再生工程のサイクルを繰り返す毎に、搬送工程において、洗浄槽40、洗浄槽40の内壁45または内壁45の一部を回転する方向を入れ替えることを特徴としている。
【0127】
このため、洗浄媒体20が洗浄対象物1へ衝突する方向の偏りをなくすことができ、また、洗浄槽40内で洗浄媒体が滞留する部分が少なくなるので、洗浄媒体20を効率的に使用することができる。
【0128】
したがって、付着物19が転移した薄片状の洗浄媒体20を付着物19と分離して循環再利用しながら洗浄媒体20が洗浄対象物1に衝突する速度および頻度の両方を高め、且つ、無駄な圧縮エアの消費を抑えて洗浄品質と洗浄効率を高めることができる。
【0129】
なお、前述の乾式洗浄装置10を使用して前述の乾式洗浄方法によって、使用済みで回収して分解した装置の部品を洗浄し、洗浄した部品を再度組み立てて装置を復元することにより、安定した再生装置を得ることができる。すなわち、本発明は、再生装置の製造方法として適用することができる。ここでいう、再生装置とは、一般にリユース製品またはリビルト製品と称されるもののことであり、分解、洗浄、再組立により「再生された装置」を意味する。
【産業上の利用可能性】
【0130】
以上説明したように、本発明に係る乾式洗浄装置および乾式洗浄方法は、付着物が転移した薄片状の洗浄媒体を付着物と分離して循環再利用しながら洗浄媒体が洗浄対象に衝突する速度および頻度の両方を高め、且つ、無駄な圧縮エアの消費を抑えて洗浄品質と洗浄効率を高めることができるという効果を有し、洗浄対象物に付着した塵埃や粉体等の付着物を、液体を使わずに固体洗浄媒体を用いて除去する乾式洗浄装置および乾式洗浄方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る乾式洗浄装置の構成を示す斜視図である。
【図2】(a)、(b)、(c)は、本発明の第1の実施の形態に係る乾式洗浄装置の洗浄作用を示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る乾式洗浄装置の構成を示す断面図である。
【図4】(a)、(b)、(c)は、本発明の第1の実施の形態に係る乾式洗浄装置の突起物の形状を示す断面図である。
【図5】(a)、(b)は、本発明の第1の実施の形態に係る乾式洗浄装置の洗浄媒体再生手段の構成を示す斜視図および断面図である。
【図6】(a)、(b)は、本発明の第1の実施の形態に係る乾式洗浄装置の洗浄槽の構成を示す断面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る乾式洗浄装置の構成を示す断面図である。
【図8】(a)、(b)は、本発明の第2の実施の形態に係る乾式洗浄装置の洗浄槽の構成を示す断面図および斜視図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る乾式洗浄装置の洗浄槽の構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る乾式洗浄装置の構成を示す断面図である。
【図11】本発明の第4の実施の形態に係る乾式洗浄装置の構成を示す断面図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態に係る乾式洗浄装置の構成を示す断面図である。
【図13】(a)、(b)は、本発明の第5の実施の形態に係る乾式洗浄装置の側壁周辺の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0132】
1 洗浄対象物
10 乾式洗浄装置
12 洗浄媒体加速手段
12a 加速ノズル
14 洗浄対象物投入口
15 回転モータ
16 集塵機
17 吸入管
18 循環経路
19 付着物
20 洗浄媒体
22 循環手段
30 洗浄媒体再生手段
31 分離部材
32 フード
40 洗浄槽
40a 開口部
40b 閉空間
42 突起物
43 遮蔽板
44 回転可動面
45 内壁
46 外壁
47 側壁
48 シール
49 ベアリング
50 蓋
60 姿勢移動手段
61 軸
62 洗浄対象物保持手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄対象物および薄片状に形成され可撓性を有し前記洗浄対象物を洗浄する洗浄媒体を収容する洗浄槽と、
前記洗浄対象物に付着した塵や粉体の付着物を除去するよう、前記洗浄槽内を飛翔する前記洗浄媒体を高速気流により前記洗浄対象物に衝突させる洗浄媒体加速手段と、
前記洗浄対象物に衝突して前記洗浄媒体に転移した前記付着物を吸引し該付着物を前記洗浄媒体から除去することにより、前記洗浄媒体を再生する洗浄媒体再生手段と、
前記洗浄槽に収容した前記洗浄媒体を前記洗浄媒体加速手段まで搬送する循環手段と、を備え、
前記循環手段が、前記洗浄対象物と前記洗浄媒体を収容する前記洗浄槽の壁面を移動して、前記洗浄媒体を前記洗浄媒体加速手段まで搬送することを特徴とする乾式洗浄装置。
【請求項2】
前記循環手段が、前記洗浄対象物と前記洗浄媒体を収容する前記洗浄槽の内壁または該内壁の一部を移動して、前記洗浄媒体を前記洗浄媒体加速手段まで搬送することを特徴とする請求項1に記載の乾式洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄槽の内壁が、前記洗浄媒体の落下防止用の突起物を有する筒型形状に形成され、
前記循環手段が、前記洗浄槽の内壁または該内壁の一部を円周方向に回転して、前記洗浄媒体を前記洗浄媒体加速手段まで搬送することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の乾式洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄槽が、前記内壁に多孔性部材を有するとともに、前記内壁と回転しない外壁との間に負圧に保たれた空間を有する多重構造を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の乾式洗浄構造。
【請求項5】
前記洗浄媒体加速手段が、前記洗浄槽の内壁より外側に配置されたことを特徴とする請求項4に記載の乾式洗浄装置。
【請求項6】
前記洗浄槽内の一部に、前記循環手段により搬送される前記洗浄媒体が前記洗浄媒体加速手段の高速気流により飛散しないよう、遮蔽板を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の乾式洗浄装置。
【請求項7】
洗浄槽を回転させて該洗浄槽内の下部に堆積した薄片状の洗浄媒体を前記洗浄槽内の上部に搬送する循環工程と、
前記洗浄槽内の上部に達して重力により落下する前記洗浄媒体を、高速気流により洗浄対象物に衝突させる洗浄媒体加速工程と、
前記洗浄対象物に衝突し該洗浄対象物に付着した付着物を除去してから前記洗浄槽内の下部に堆積した前記洗浄媒体から、前記付着物を吸引して該付着物を前記洗浄媒体から除去することにより、前記洗浄媒体を再生する再生工程と、を備えることを特徴とする乾式洗浄方法。
【請求項8】
洗浄槽の内壁または該内壁の一部を回転させて該洗浄槽内の下部に堆積した薄片状の洗浄媒体を前記洗浄槽内の上部に搬送する循環工程と、
前記洗浄槽内の上部に達して重力により落下する前記洗浄媒体を、高速気流により洗浄対象物に衝突させる洗浄媒体加速工程と、
前記洗浄対象物に衝突し該洗浄対象物に付着した付着物を除去してから前記洗浄槽内の下部に堆積した前記洗浄媒体から、前記付着物を吸引して該付着物を前記洗浄媒体から除去することにより、前記洗浄媒体を再生する再生工程と、を備えることを特徴とする乾式洗浄方法。
【請求項9】
前記循環工程、前記洗浄媒体加速工程および前記再生工程のサイクルを繰り返す毎に、前記搬送工程において、前記洗浄槽、前記洗浄槽の内壁または該内壁の一部を回転する方向を入れ替えることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の乾式洗浄方法。
【請求項10】
請求項7乃至請求項9の何れかに記載の乾式洗浄方法によって洗浄したことを特徴とする洗浄対象物。
【請求項11】
請求項7乃至請求項9の何れかに記載の乾式洗浄方法によって、使用済みで回収して分解した装置の部品を洗浄し、洗浄した部品を再度組み立てて装置を復元することを特徴とする再生装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−285613(P2009−285613A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143105(P2008−143105)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】