説明

乾溜還元焼結炉

【課題】 電気炉に代わる燃焼熱源による乾溜還元焼成出来る炉
【解決手段】 電気炉は自由に設定温度が選べるので便利であるが高価である。
それに代わる施設が求められているとことに対応できると共に新機構の油の改良ガンタイプバーナーが出来たので図の如き炉壁を備えた乾溜室炉を内蔵した乾溜還元焼成炉を提供するもので低コストで多種多用な用途に活用出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気炉に代わる乾溜方式で、好ましい環境雰囲気を選択しながら効率よく物体の改質熱処理を行う装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物体の改質のために行う熱処理は多くの手段で行われている。
その中で発明者が驚きと感銘を受けたのは、脱脂米糠とフェノール樹脂を混合成型し、窒素ガス置換した電気炉で焼成して含油金属に似たセラミックスとなったと云う事象である。
基礎素材と成果物とのあまりの格差ある変化が窒素ガス雰囲気での焼成によるとは、あらためて焼結における雰囲気の重要なことに開眼された。
【特許文献1】脱脂米糠を原料とするRBセラミックス−東北大学 堀切川一男
【0003】
バイオマスの乾溜による改質炭化にあたって、遠赤外線放射機能のもとで、窒素ガス雰囲気と過熱蒸気雰囲気がもたらす触媒、自媒的機能によって物材のガス化が急速に進行する事象に遭遇した。前項との関連で教えられた可能性をたぐり試行にもとずき多くの提案に至った。
【特許文献2】自燃植物素材遠赤外線炭化装置−特願2004−90516
【特許文献3】熱線放射型電気炉装置−特願2004−137913
【特許文献4】機能性セラミックスの製造法−特願2005−73876
【特許文献5】カオリンセラミックスの製造と利用−特願2005−310449
【特許文献6】薄膜状電熱体の製造及びそれ等を特徴とする加熱装置 特願2004−343077
【0004】
熱を求めて物質を燃やす事は古来から行われて来たが、発明者は粗悪な燃料を用いた燃焼過程でめずらしい自然現象にふれ対向流送風燃焼法にたどり着いた。熱を利用する立場から効率的な「ステファン・ボルツマン法則」事象であることを知り、更に燃やす事を化学反応として考える様にとの指導者からの教えで、試験炉が「化学反応における綜合エネルギー理論」に合致した装置と重なって予想以上の高熱の燃焼熱を得られた幸運でもあったと知らされた。炎を輻射熱線化された電磁波直射に転換され高率の熱交換に至った理論も教えられ、それに基ずき必然的に燃料因子の炭素と空気因子の酸素それぞれが原子化に近ずいて燃焼反応に至らしめる分流火炎環装置の開発につながった。
【特許文献7】高能率熱交換燃焼装置−特許第3030321号
【特許文献8】バイオマスの乾溜ガス化燃焼熱変換発電装置−特願2004−209241
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多くの物質の改質研究や特殊物質の製造に貢献している電気炉は数多い。
しかし装置自体の設備費やランニングコストが非常に高価な外に、被処理物体の種類(ガス発生が多い)や熱処理に当たってその雰囲気にこだわると、発熱体や炉壁ならびに本体に許される範囲は限られていることが多い。
【0006】
本発明は、電気炉が抱える施設費の高価格、電熱源が燃焼熱の30倍とも云われるコスト高、加熱環境雰囲気維持への障害(乾溜ガスによる発熱体の劣化)となること等をさけて外熱による普遍的処理炉を構築してそれぞれの低コスト化を目指すものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前項の課題に鑑み本発明では先ず被処理の対象物を概ね次に絞り込んだ。
▲1▼ バイオマスのガス化、炭化。▲2▼ セラミックス発熱体焼成。
▲3▼ セラミックス等の焼成。 ▲4▼ 石炭のコークス化。
▲5▼ カキ殻等の純CaO化。▲6▼ パームヤシ殻焼成。▲7▼ 蛍石とアスベストの混合焼成。
【0008】
前項被処理対象物の改質を進行するには、温度と、炉壁からの遠赤外線等放射の相乗機能と、環境雰囲気の大きな要因がかかわることが先願試行で明らかになっている。
乾溜処理室炉は内面を恣意的に選択した複数の鉱石粉等で構成される機能性セラミックス炉壁を装着し、処理炉を収容する。加熱炉も同様の炉壁を備え熱源は効率的燃焼バーナーによって必要とされる温度に合わせた燃焼油量で対処する。(特許文献6,7)炉壁構成剤については実施例で示す。
【0009】
乾溜処理室炉の過熱雰囲気は、(0007)−▲1▼、▲2▼、▲3▼、では概ね窒素ガス等の不活性ガスが主体となり、温度も臨海温度も400℃〜800℃程度が試行確認されているが、(0007)−▲4▼、▲5▼、▲6▼、については最適温度が相当高いことが予測され実態が未確認なので、コークス等の炭化剤を並用した積極的な還元乾溜へと雰囲気強化が必要となることから、乾溜ガス自体が可燃性の高くなることが考えられるので慎重な経路で燃焼室に還流する。
勿論発生する乾溜ガスも補収分析して特性(化学変化の実態を反映する)を確認することも本装置の設置目的に入るし、処理剤物質も分析して成果の評価と未達な可能性の考察も重要である。
【発明の効果】
【0010】
本願焼結炉はバイオマスを改質して新しい価値を創出する為の熱処理に能力的にもコスト的にも通用し得る実態を解明すると共に、比較的平易な構造物の焼結も行うもので、今まで解明の進まなかった例えばバイオマス類を改質炭化して燃料とする新エネルギー産業への路を開く扉の位置と役目を荷負い得るものと信じている。
巷には未利用のバイオマスが満ち溢れ環境汚染は危機的ですらある。このときにその解決への路の一つの扉となり得ればそれなりの社会的貢献となろう。
【発明を実施するための最良の型態】
【0011】
未利用のバイオマス資源は広く賦存する。それを再生するに社会的に通用するコストで新しい価値ある物質を造り出さなければならないことは当然である。発明者は20年も前から熱を利用する立場から物質を効率的に燃やすことに取り組み自然現象の教える一つの有効な手段(文献6)にたどりついた思考法に基き、今の社会が緊急に対応をせまられている資源循環に役立つ手段を提案し続けているが活用されるに至らない。行政や評論家が声高に必要性を説くことはあってもその基礎たるべき技術には関心のないかの如き実行態勢が進まない構造的欠陥と呼びたい状況ですらある。発明者の力不足は当然としても、時代的というも過言ではない緊急社会需要に対応する常識的技術情報や行動情報に乏しいのは何故であろうか。その常識的接点が求められている。
【実施例】
【0012】
以下図面に基いて一実施例を説明する。
図 1−は乾溜還元焼成炉の縦断図である。
図 2−は乾溜還元炉の横断図である。
図 3−は分流炎座環を備えた改良バーナー図である。
【0013】
各図において
1−は乾溜還元焼成炉である。2−は加熱炉で、3−は乾溜室である。4−は各部炉壁である。5−は乾溜炉室蓋で、6−の乾溜ガス抜孔と、7−温度検知孔が共通で設けられる。8−は窒素ガス注入孔で内部にガス噴出パイプと連結している。9−はバーナー口で分流炎座環を備えた図3の改良バーナーを設置する。10−は対向流送風噴口、10’−は10−への送風管で図示しない高圧送風機に連結されている。11−は煙突機能管である。12−は加熱燃焼炉温度測定孔で、13−は乾溜室炉受台である。改良バーナーは独立機構なので詳細に後述する。
【0014】
以上の構成に基き構造等を述べる。
本発明を構成する特徴は、利用目的である被処理物質の改質を可能とする高温燃焼加熱手段と、過熱炉並に乾溜室炉の炉壁構造である。
まず高温燃焼と効率的改質乾溜を可能とするには熱に反応して炉壁から発する遠赤外線等の有効熱線に依存する領域が大きいので、多くの試行を経て積上げた(特許文献4)にのっとって構築する。
【0015】
(1)炉壁材料
▲1▼ライフグリーン−石川県金沢市の医王山に産出する鉱石粉。
▲2▼シリカブラック−北海道に産出する火成岩の一種である。
▲3▼ミネラルはねっこ−福島県東白川郡塙町に産出する海洋性生物化石の一種。
▲4▼ホウ酸。
▲5▼マリネックス抽出希釈液−長崎県に産出する純腐植態の泥状物質で、2年に及ぶ特殊処理、精製後抽出された液で、多様な働きがある。
▲6▼酸化マンガン。
▲7▼パームアッシュ−パームヤシ殻焼成炎で多様なミネラルが貴重である。
▲8▼カオリンセラミックス−カキ殻の高温焼成物で水酸化−水和反応に期待。
【0016】
(2)炉壁構築
A.パームアッシュにマリネックス抽出希釈液を加えて抽出したものを40℃に暖めホウ酸を混合すると化学反応して大量の炭酸ガスを放出する。これにより出来た高濃度ホウ酸化学反応物液剤をバインダーにする。
B.ライフグリーン4/14+シリカブラック1/14+ミネラルはねっこ3/14+アルミナセメント2/14を混合攪拌し、48時間30℃に保温静置し親和反応させる。
C.Bにカオリンセラミックス1/14+硫酸マンガン1/14+耐熱キャスター1/14アルミナセメント1/14を加え、マリネックス500倍液で混和し水酸化、水和反応せしめて固化させる。成型は速やかに行い30℃に保温静置する。
D.固化乾燥後窒素ガス置換した熱線放射型電気炉で800℃で焼成するか或いは炭素剤を用いて還元焼結して改質させる。
【0017】
改良バーナーはその筒先に一次着火炎と空気を分流する火炎環を装着するもの。
(特許文献6)の試行過程で得られた知見から発展した装置で(特許文献7)で提案している。「化学反応における綜合エネルギー理論」の教えを具現化した改良機構によると、燃料因子の炭素、同じく空気酸素の各分子状から原子状に改質する解離エネルギーを付与(高熱化)した後に燃焼反応させて、燃焼反応熱の歩止まりを高め燃焼効率を大巾に向上させて高温加熱を可能とした。
【0018】
以上の要因である改良バーナーと対向流送風手段を組合せて高温発熱雰囲気に到達させ、乾溜室炉内温度との相関関係を検証確認し、物質の改質には窒素ガス雰囲気か、より高温度を必要とする物材には積極的に還元雰囲気を形成することによってそれ等の臨界温度の大巾引き下げを可能とする事象例が多いので、比較検証しながら被対象物毎の温度並びに雰囲気を設定し運転する。
【0019】
以下被処理対象物毎の対処を記述する。
▲1▼バイオマスのガス化炭化
木質系をはじめとするバイオマスは窒素ガス雰囲気、過熱蒸気雰囲気のもとで350℃前後で炭化したが、発生するガスの検知確認が必要である。
▲2▼セラミックス発熱体
酸化亜鉛とアルミナに炭化剤とホウ酸を加えたものを高濃度ホウ酸化合物液で混錬して親和反応させ電極棒をくるんで成型し固化後炉内を窒素ガス置換し、800℃ー1,000℃で焼成して不飽和構造体(空孔含有)に仕上げる(特許文献6)。検証確認が難事であるがそれによって反応内容を推理する。
▲3▼セラミックス等の焼成
セラミックスの用途別原料混合比は異なる。炉壁種材は本願炉壁の原料と重なるが、上記のような発熱体の担体となるにはホウ酸を加えると断熱、熱反射機能的となることが確認されている。窒素ガス置換して焼成するが発生ガス検証で反応内容を推理する。
【0020】
▲4▼石炭のコークス化
石炭の乾溜ガス化はコークス化につながる。コークス製造の情報にも積極的窒素ガス置換の技術は少ない。窒素ガス置換または若干のコークスを加えた還元雰囲気で乾溜焼成する。可燃ガスの発生が多いので加熱源に還流するが(特許文献2)に遵じたコークス化に進展する為の基礎試験としての意義がある。
▲5▼カキ殻の焼成
カキ殻はCaが38%余、CO2が57%余を含有する。CO2は結合エネルギーが強いので純CaO化に加熱だけでは不可能に近いので窒素ガス雰囲気に加えてコークス或いは良質炭化剤を加え、強力な還元反応に誘導する。還元反応システムが有効に機能すればCO2のCが分離気化するので加熱源に還流する。乾溜ガスは数多くの時間経過、段階毎に検証も欠かせない。
本項は、2004年夏、キルーンによって1,200℃に焼成したカキ殻と称するものに出合った幸運からスタートし、特願2005−43087以来その物性を活かす多くの提案をしているが、H.17.10.7付で岩手県工業試験場に於いて分析の結果、原資における57%余の炭酸ガスがまだ42%残留しているとの結果が寄せられショックを受けたが、逆に現状物でほれた物材には、まだまだ大きな可能性が残されていた事を教えられたことになり、考察の結果カオリンセラミックスの製造と利用−特願2005−310449に進展している。その出直し思考の積極的還元処理法の基礎を検証する装置、手段、結果予測に重大な期待をよせている。
▲6▼パーム椰子殻焼成
パーム椰子殻はバーナー炎で800℃で焼成するとタイヤ燃焼の如く真黒い炎をあげるのでインドネシヤ以外での焼成が認められないと云う。
徹密でものすごく固いので高分子?の様にエネルギー源と微量要素への期待が高く、又コークスに代わる特徴ある炭素剤となるのではないか?との多くの可能事項が検証結果が得られるものと期待している。
炭素剤との混焼還元乾溜では当然、可燃乾溜ガスの発生が予想されるので数多くの段階での検証と安全な加熱熱源への還流が必要となる。
本項は平成11年提案した成熟固体物質の吸引乾溜ガス化燃焼装置(特願平11−309807)の被対象物に関するものであるが原材の入手が出来ず未達ではあるが自燃植物素材遠赤外線乾溜炭化装置(特開2004−285358)としてほぼ実用可能の域に進展している原点である。また重大な国際的資源循環や地球温暖化対策の炭素ガス取引対象技術に発展させ得る可能性を秘めた技術としての役目を荷える基礎調査でもある。
【0021】
▲7▼蛍石とアスベストの混合焼成
(特許文献5)の基礎を検証確認することになる。
発明者等はH.17年夏カキ殻を1,200℃で焼成したという物体に出合った幸運を活かし、その魅力の丈を追求した(特許文献5)。そこに見えたのは製造と利用にかかわる科学的変化の面白さを天与の妙理と感じた事で、具体的には組成成分の微妙な差が、イオン化されてからの対応範囲に大きな差を生ずるということである。
その諸々の化学変化の関連連鎖の先に、フッ酸廃液の回収と再生(蛍石濃厚液)があり、更に自在なイオン交換性を持つフッ素とアスベスト(珪酸マグネシウム)の融合と再生(フッ化マグネシウム)があった。
本項は今の情報化時代の有難さ(開示された先行技術よりの啓発)から生まれささやかな試行成果が偶然に一致し、重大な社会懸案の解決と資源再生の光が垣間見えて来たと云えるので、本願装置による試行と検証によって解明が進み、稀有の成果となって社会に送り出される期待が高い。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の利用目的とする被処理対象物は、バイオマスを始めとする資源の循環であり、それを助ける器材ともなる。すべては危機的に未利用資源の再生技術を積み上げる基本となる事象の検証と考察に貢献する事となる。従来電気炉を用いての検証を低コストで実施出来る本乾溜還元炉の実現のメリットは大きいと共にそれによって普遍的に実施出来る基礎剤生産と資源再生産業へ誘導出来る道を提供できるのではとの期待が高い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】乾溜還元焼成炉の縦断図
【図2】乾溜還元焼成炉の横断図
【図3】分流炎座環を備えた改良バーナー図
【符号の説明】
【0024】
1.乾溜還元焼成炉。 2.加熱炉。 3.乾溜室炉。 4.各部の炉壁。 5.乾溜室炉蓋。 6.乾溜ガス抜孔。 7.温度検知孔。 8.窒素ガス注入口。 9.バーナー口。 10.対向流送風噴口。 11.煙突機能管。 12.加熱燃焼炉温度測定孔。 13.乾溜室炉受台。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有意の近半円形の断面と、有意の長さの燃焼加熱炉は、内壁に遠赤外線放射機能を有する機能性セラミックス炉壁を装置し、内部に有意の長さと大きさの類似同型の乾溜還元焼成室炉を内蔵し、同室炉には窒素ガス等置換機構も備えおり、加熱熱源には新機構の改良油バーナーによる。改良バーナーは火炎筒に一次着火炎と燃焼空気を分流する火炎環を装着して、燃焼因子の炭素分子、酸素分子にそれぞれ原子化えの解離エネルギーを付与して改質することによって燃料の燃焼熱に変換する効率を大巾に向上せしめて高い燃焼熱を供給する機能を備えている。
上記のそれぞれの機能を組合わせて内蔵する乾溜還元焼成室炉に所要の乾溜熱を供給して設定された機能を達成する機構構造であることを特徴とする乾溜還元焼結炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−178113(P2007−178113A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−381340(P2005−381340)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(397057555)株式会社エスシーアクト (3)
【出願人】(500222630)
【Fターム(参考)】