説明

乾燥ゲル粉末の製造方法

【課題】天然物由来の乾燥ゲル粉末を簡単に得るための製造方法を提供する。
【解決手段】天然物由来のポリマーを架橋させて得られるハイドロゲルを湿式粉砕する工程;該粉砕したハイドロゲルに、水混和性有機溶媒を加え、該粉砕したハイドロゲルを脱水する工程;および該脱水したハイドロゲルを乾燥する工程;を包含する天然物由来の乾燥ゲル粉末の製造方法。前記湿式粉砕工程において、前記ハイドロゲルに水混和性有機溶媒が加えられる該製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥ゲル粉末の製造方法に関する。より詳細には、高い安全性を有し、抗酸化剤、紫外線吸収剤などを徐放するための化粧品基材、抗菌作用、抗炎症作用などを有する薬剤を徐放するための創傷被覆剤、DDS基材などとして用いられ得る乾燥ゲル粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然物由来のポリマーは、一般的にバイオポリマーといわれており、例えば、微生物による発酵で得られるポリマーおよび天然物から抽出されるポリマーが挙げられる。天然物由来のポリマー(以下、バイオポリマーという場合がある)は、生体適合性および生分解性に優れた材料である。バイオポリマーを架橋させて得られるハイドロゲルは、生体適合性および生分解性だけでなく、吸水性にも優れており、化粧品基材、創傷被覆剤、DDS基材などとしての利用が考えられる。
【0003】
しかし、バイオポリマーから得られるハイドロゲルは、上記のように生分解性であるため、多量の水分を含む場合は、腐敗し易く、保存安定性が悪い。多量の水分を含むため、包装材料などが制約され、運搬コストがかかり、そして広い保管場所が必要となり、その取り扱いは極めて不利となる。
【0004】
このようなハイドロゲルの保存安定性、運搬、および保管についての問題を解消するために、ハイドロゲルを、一旦、乾燥ゲル粉末に変換することが検討されている。得られた乾燥ゲル粉末に水を加えると、用途に応じた形態に再生することもできる。したがって、乾燥ゲル粉末化を行うことは、ハイドロゲルの有用性を高めるために重要である。
【0005】
特許文献1には、水溶性重合性モノマーと官能基を2個以上有する化合物(架橋剤)とを疎水性有機溶媒中で懸濁重合し、溶媒を除去することによって、高吸水性樹脂を乾燥ゲル粉末として得る方法が記載されている。しかし、この方法によって得られる乾燥ゲル粉末は、モノマーを懸濁重合することによって得られる合成ポリマーに限られ、バイオポリマーを原料として用いる場合は適用できない。
【0006】
特許文献2には、天然物由来のハイドロゲルを機械的に粉砕して、ハイドロゲル微粒子を製造する方法が記載されている。しかし、この方法は、ハイドロゲル微粒子を製造する方法であって、乾燥ゲル粉末を製造する方法ではない。
【0007】
ハイドロゲル微粒子を、通常の乾燥方法で乾燥させるには、多量の水分を蒸発させるために非常に多くのエネルギー(例えば、加熱)を必要とする。ハイドロゲル微粒子を、加熱乾燥のような過酷な条件下で長時間乾燥させると、乾燥工程中に粒子同士が合着してブロック状になる場合がある。粒子同士が合着するのを防止するための手段として、凍結乾燥も考えられるが、装置が高価な割には生産性が低く、有利な方法とはいえない。
【特許文献1】特開2001−40013号公報
【特許文献2】特開平5−15317号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、天然物由来のハイドロゲルの乾燥ゲル粉末を簡便に得るための製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、水混和性有機溶媒にハイドロゲルを浸漬することによって、ハイドロゲルに含まれる水分が排出されることを見出したことに基づき、本発明を完成した。
【0010】
本発明は、乾燥ゲル粉末の製造方法を提供し、該方法は、天然物由来のポリマーを架橋させて得られるハイドロゲルを湿式粉砕する工程;該粉砕したハイドロゲルに、水混和性有機溶媒を加え、該粉砕したハイドロゲルを脱水する工程;および該脱水したハイドロゲルを乾燥する工程;を包含する。
【0011】
1つの実施態様では、上記湿式粉砕工程において、上記ハイドロゲルに水混和性有機溶媒が加えられる。
【0012】
さらに、本発明は、乾燥ゲル粉末の製造方法を提供し、該方法は、天然物由来のポリマーを架橋させて得られるハイドロゲルに水混和性有機溶媒を加え、湿式粉砕しながら脱水する工程;および該脱水したハイドロゲルを乾燥する工程;を包含する。
【0013】
1つの実施態様では、上記ハイドロゲルは、所望の物質を内包する。
【0014】
1つの実施態様では、上記所望の物質は、ビタミンC、リン酸化ビタミンC、ビタミンE、カテキン、エピガロカテキンガレート、緑茶抽出ポリフェノール、ブドウ種子ポリフェノール、ブルーベリーエキス、大豆イソフラボン、グルコサミン、コンドロイチン、コエンザイムQ10、および酸化チタンからなる群より選択される少なくとも1種である。
【0015】
1つの実施態様では、上記天然物由来のポリマーは、ポリ−γ−グルタミン酸、アルギン酸、ヒアルロン酸、キトサン、およびこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0016】
他の実施態様では、上記水混和性有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、第三級ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、およびアセトンからなる群より選択される少なくとも1種である。
【0017】
さらなる実施態様では、上記湿式粉砕工程または上記脱水工程において、上記ハイドロゲルに、さらに無機酸または有機酸が加えられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の方法によれば、天然物由来の乾燥ゲル粉末を簡単に得ることができる。具体的には、ハイドロゲルを水混和性有機溶媒(以下、貧溶媒という場合がある)に浸漬してその含水量を予め低減できるので、続く乾燥工程において必要とされる時間およびエネルギーを低減できる。さらに、貧溶媒中でのハイドロゲルからの水の排出とともに、架橋させる際に用いた余剰の架橋剤などもハイドロゲル中から除去できる。そのため、不要物質の少ない乾燥ゲル粉末を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の乾燥ゲル粉末の製造方法は、天然物由来のポリマーを架橋させて得られるハイドロゲルを湿式粉砕する工程(粉砕工程);該粉砕したハイドロゲルに、水混和性有機溶媒を加え、該粉砕したハイドロゲルを脱水する工程(脱水工程);および該脱水したハイドロゲルを乾燥する工程(乾燥工程);を包含する。
【0020】
ハイドロゲルは、脱水されることによって収縮することがあり、上記の脱水工程を脱水・収縮工程という場合もある。
【0021】
本発明の製造方法によって得られる乾燥ゲル粉末は、天然物由来のポリマーを架橋させて得られるハイドロゲルを原料とする。
【0022】
天然物由来のポリマーは、上述のように、微生物による発酵で得られるポリマー、天然物から抽出されるポリマーなどが挙げられ、一般的にバイオポリマーという。天然物由来のポリマー(バイオポリマー)としては、例えば、ポリ−γ−グルタミン酸、アルギン酸、ヒアルロン酸などのカルボキシル基を有するバイオポリマー、キトサン、ポリリジンなどのアミノ基を有するバイオポリマーなどが挙げられる。
【0023】
本発明に用いられるハイドロゲルは、水溶液中で架橋反応させることによって得られるため、バイオポリマーは塩の形態であることが好ましい。例えば、カルボキシル基を有するバイオポリマーは、アンモニウム塩、アミン塩などのアルカリ塩またはNa塩などの金属塩の形態であることが好ましく、アミノ基を有するバイオポリマーは、塩酸塩、硫酸塩などの無機酸塩または酢酸塩などの有機酸塩の形態であることが好ましい。
【0024】
カルボキシル基を有するバイオポリマーを架橋させるために用いられる架橋剤としては、プロパンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどのアミノ基を2個以上有する化合物、ポリリジン、キトサンなどのアミノ基含有ポリマーなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、生体適合性および生分解性に優れている点で、ポリリジン、キトサンなどの天然物由来のポリマーが好ましい。さらに、より効率よくペプチド結合を形成させるために、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミドなどの縮合剤と、N−ヒドロキシコハク酸イミドなどの縮合助剤とを用いることも好ましい。
【0025】
アミノ基を有するバイオポリマーを架橋させるために用いられる架橋剤としては、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、トリメリット酸などのカルボキシル基を2個以上有する化合物、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ−γ−グルタミン酸、アルギン酸、ヒアルロン酸などのカルボキシル基含有ポリマーなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、生体適合性および生分解性に優れている点で、ポリ−γ−グルタミン酸、アルギン酸、ヒアルロン酸などの天然物由来のポリマーが好ましい。
【0026】
バイオポリマーと架橋剤とを反応させる場合、バイオポリマーの濃度は、好ましくは1質量%〜40質量%、より好ましくは1質量%〜20質量%である。バイオポリマーの濃度が高すぎる場合、得られるハイドロゲルの粘度が高くなり、撹拌が困難になるおそれがある。バイオポリマーの濃度が低すぎる場合、水混和性有機溶媒の使用量が多くなる。
【0027】
バイオポリマーを架橋させる反応は、当業者によって一般的に行われる反応条件下で行われ得、特に限定されない。
【0028】
本発明に用いられるハイドロゲルは、必要に応じて、所望の物質を内包してもよい。本明細書において、「所望の物質」とは、ハイドロゲルの用途に応じた機能を付加する物質のことをいい、例えば、ビタミン、あるいは、抗酸化作用、抗菌作用、アレルゲン抑制作用などを有する物質をいう。
【0029】
このような物質としては、特に限定されないが、例えば、ビタミンC、疎水化ビタミンC、リン酸化ビタミンC、ビタミンEなどのビタミン類;カテキン、エピガロカテキンガレート、エピカテキン、ガロカテキン、エピカテキンガレート、アントシアニジン、ルチン、ケルセチン、タンニン、プロアントシアニジン、クルクミン、ヘスペリジン、ネオヘスペリジン、緑茶抽出ポリフェノール、リンゴポリフェノール、ゆずポリフェノール、ブドウ種子ポリフェノールなどのポリフェノール類;ウコン、ブルーベリーエキス、大豆イソフラボン、グルコサミン、コンドロイチン、コエンザイムQ10、白金ナノコロイド、酸化チタン、酸化亜鉛などが挙げられる。
【0030】
これらの所望の物質は、天然物由来のポリマーを架橋させる際に加えることによって、ハイドロゲルに内包される。
【0031】
粉砕工程では、ハイドロゲルは、含水状態で所望の大きさに粉砕される(すなわち湿式粉砕)。粉砕は、予め粗粉砕した後、本粉砕することが好ましい。粗粉砕は、架橋反応により得られたハイドロゲルを、例えば、スパーテルなどで撹拌することにより行われる。本粉砕では、ハイドロゲルは、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー、ビーズミル、パイプミキサーなどの湿式粉砕に適する装置を用いて粉砕される。本明細書において、粉砕されたハイドロゲルを、ハイドロゲル粒子という。ハイドロゲル粒子の平均粒子径は、最終的に得られる乾燥ゲル粉末の用途によって、あるいは粉砕に用いる装置に応じて適宜設定され得るが、好ましくは10μm〜10mm、より好ましくは、100μm〜3mmである。
【0032】
ハイドロゲルの粘度が高く、粉砕が困難である場合、後述する水混和性有機溶媒を貧溶媒として加えてもよい。すなわち、水混和性有機溶媒を加えた後に粉砕してもよい。水混和性有機溶媒を加えることによって、ハイドロゲルは脱水されて減容(収縮)し、湿式粉砕中の分散液の粘度が低くなり、流動性が回復する。粉砕中に増粘した場合も、途中で水混和性有機溶媒を添加して、粉砕を続けることができる。このように、湿式粉砕工程と後述の脱水工程とが同時に行われてもよい。
【0033】
カルボキシル基を有するバイオポリマーを原料として用いる場合、上記のように、バイオポリマーのカルボキシル基部分を、ナトリウム塩などの水溶性の塩形態にして、ハイドロゲルが調製される。しかし、塩形態のハイドロゲルを乾燥ゲル粉末にした場合、大気中で吸湿して粉末同士が合着するおそれがある。したがって、ハイドロゲルを調製後、無機酸または有機酸を加えて塩形態から遊離酸形態にすることが好ましい。遊離酸形態のハイドロゲルから得られた乾燥ゲル粉末は、塩形態の乾燥ゲル粉末と比べて吸湿性が低減され、そのため粉末同士の合着が起こりにくい。
【0034】
無機酸および有機酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、p−トルエンスルホン酸などが挙げられる。
【0035】
無機酸または有機酸は、水混和性有機溶媒と混合してハイドロゲル粒子に加えることが好ましい。無機酸または有機酸を加えると、ハイドロゲルが均一に中和され、均一な遊離酸形態のハイドロゲル粒子が得られるからである。
【0036】
次いで、上記の粉砕工程で得られたハイドロゲル粒子を、貧溶媒として用いる水混和性有機溶媒に浸漬する(脱水工程)。ハイドロゲル粒子を水混和性有機溶媒に浸漬させると、ハイドロゲル粒子中に含まれる水が、水混和性有機溶媒中に排出される。ハイドロゲル粒子は脱水されて、微粒子サイズに収縮する場合もある。さらに、バイオポリマーを架橋させるために用いた未反応の架橋剤、縮合剤などの不要物質も、ハイドロゲル粒子中から水とともに排出される。
【0037】
貧溶媒として用いられる水混和性有機溶媒は、特に限定されない。例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、第三級ブタノールなどの低級アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類、およびアセトンが挙げられる。これらの中でも、メタノール、エタノール、イソプロパノール、およびアセトンが好ましい。これらの水混和性有機溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよく、あるいは2種以上の溶媒を分散状態に応じて、逐次的に加えてもよい。
【0038】
水混和性有機溶媒へのハイドロゲル粒子の浸漬は、数回繰り返してもよい。この場合、ハイドロゲル粒子から排出された水を含む溶媒を、ろ過またはデカンテーションで除去し、新しく水混和性有機溶媒をハイドロゲル粒子に加える。このように数回の浸漬を繰り返すことによって、ハイドロゲル粒子は、より脱水されて収縮し、非常に含水率の低い微粒子となる。数回の浸漬を繰り返す場合、1回の浸漬ごとに異なる水混和性有機溶媒を用いてもよい。
【0039】
水混和性有機溶媒の使用量は、その種類、ハイドロゲル調製時の水の量などに応じて異なるが、1回あたりの浸漬につき、ハイドロゲルに対して好ましくは1倍容量(等量)〜20倍容量、より好ましくは2倍容量〜10倍容量である。
【0040】
ハイドロゲル粒子を水混和性有機溶媒に浸漬させる時間は、溶媒の種類、量などに応じて異なるが、1回あたりの浸漬につき、作業性を考慮すると、好ましくは1分〜2時間、より好ましくは2分〜30分である。
【0041】
必要に応じて、水混和性有機溶媒に浸漬後のハイドロゲル粒子を、適切な貧溶媒でリンスしてもよい。
【0042】
上記の脱水工程で得られたハイドロゲル粒子を、最終的に、乾燥して乾燥ゲル粉末にする(乾燥工程)。
【0043】
脱水工程後に得られるハイドロゲル粒子は、含水率が低く、ほとんど水分は含まれていない。したがって、ろ過またはデカンテーションによって、水混和性有機溶媒を除去し、好ましくは室温〜150℃、より好ましくは50℃〜100℃で送風乾燥または静置乾燥することにより、乾燥ゲル粉末が得られる。このように、ハイドロゲル粒子は、過酷な乾燥条件に曝されることがないので、乾燥中に粒子同士が合着することもない。
【0044】
本発明の方法によって得られる乾燥ゲル粉末の粒子径は、乾燥ゲル粉末の用途、内包する物質などを考慮して決定され得、特に限定されない。すなわち、上記の粉砕工程において用いられる粉砕装置(ホモミキサー、ホモジナイザーなど)およびその粉砕力に応じて、所望の粒子径を有する乾燥ゲル粉末が得られ得、その乾燥ゲル粉末の粒子径は、好ましくは0.1μm〜1500μm、より好ましくは1μm〜1000μm、さらに好ましくは5μm〜800μmであり得る。乾燥ゲル粉末の平均粒子径は、得られる粉末の粒度分布によって異なり、特に限定されないが、好ましくはミクロン単位から数mmであり得、より好ましくは数μm〜数100μmであり得る。
【0045】
一般に、ポリマーが網目構造(ゲル状態)を保持していない場合には、ポリマーは、溶媒に浸すと溶解してしまう。しかし、本発明の方法で得られる乾燥ゲル粉末は、水に浸すと溶解せず膨潤し、ハイドロゲルを再生する。したがって、本発明の方法で得られる乾燥ゲル粉末は、網目構造(ゲル状態)を保持している。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。しかし、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
1.29gのポリ−γ−グルタミン酸(重量平均分子量200万)を、2gのイオン交換水および4.5gの8w/v%水酸化ナトリウム水溶液に溶解した。次いで、得られた水溶液に、0.03gのジエチレントリアミンを加えて撹拌した。次いで、0.1gのN−ヒドロキシコハク酸イミド(以下、NHSという)および0.17gの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(以下EDC塩酸塩という)を、順次粉末のまま撹拌しながら加えた。添加終了後約2分で、溶液がゲル化し、硬くて脆いハイドロゲルを得た。添加終了の30分後、得られたハイドロゲルをスパーテルで粗粉砕した。ハイドロゲルは崩れやすく、容易に粉砕可能であった。
【0048】
次いで、粗粉砕したハイドロゲルに、20gのメタノールを加え、ホモジナイザー(IKAジャパン製;シャフトジェネレーターT−25、25Fシャフトを使用)を用いて、9500rpmで約10分間、湿式粉砕した。湿式粉砕後、分散液を静置すると、半透明なハイドロゲル粒子が沈降した。
【0049】
次いで、デカンテーションにより溶媒を除去し、新たに20gのメタノールを加えた。沈降したハイドロゲル粒子を、さらに、ホモジナイザーを用いて9500rpmで約3分間粉砕した。半透明のハイドロゲル粒子は、収縮して細かい白色粒子(微粒子)となり沈降した。粉砕から約30分後、デカンテーションによりメタノールを除去し、得られた粒子を80℃で恒量になるまで約6時間送風乾燥して、1.50gの白色の乾燥ゲル粉末を得た。得られた乾燥ゲル粉末の粒子径は、約100〜800μmであり、平均すると約400μmであった。
【0050】
得られた粉末30mgを6gの蒸留水に投入すると、瞬時に膨潤して微粒子ハイドロゲルの分散液となった。したがって、この粉末は、網目構造(ゲル状態)を保持していることを確認した。
【0051】
(比較例1)
実施例1で得られた粗粉砕したハイドロゲルに、メタノールの代わりに、20gのメチルエチルケトン(水と自由に混和しない)を加え、ホモジナイザーを用いて、9500rpmで約3分間湿式粉砕した。粉砕後、分散液を静置すると、二層に分離した。すなわち、上層は、メチルエチルケトンの透明な層、そして下層は、高粘度のハイドロゲル粒子分散液であった。下層に存在するハイドロゲル粒子は透明であり、収縮しているようには見えなかった。
【0052】
次いで、デカンテーションにより上層のメチルエチルケトンを除去し、新たに20gのメチルエチルケトンを加えた。再度、ホモジナイザーを用いて、9500rpmで約5分間湿式粉砕したが、分散液は二層に分離した。
【0053】
デカンテーションにより上層のメチルエチルケトンを除去し、下層のハイドロゲルを80℃で恒量になるまで2日間送風乾燥すると、1.59gの褐色のシート状固体が得られ、乾燥ゲル粉末は得られなかった。このシート状固体を粉砕したが、約3〜10mmの硬いブロック状の固体しか得られなかった。
【0054】
(実施例2)
実施例1で用いたポリ−γ−グルタミン酸1.29gを、2gのイオン交換水および4.5gの8w/v%水酸化ナトリウム水溶液に溶解した。次いで、得られた水溶液に、0.03gのジエチレントリアミンを加えて撹拌した。次いで、0.1gのNHSおよび0.17gのEDC塩酸塩を、順次粉末のまま撹拌しながら加えた。添加終了後1分以内に、溶液がゲル化し、硬くて脆いハイドロゲルを得た。添加終了の30分後、得られたハイドロゲルをスパーテルで粗粉砕した。
【0055】
次いで、粗粉砕したハイドロゲル4gに、5gのエタノールを加えて、透明なハイドロゲル粒子分散液を得た。得られた分散液を、ホモジナイザーを用いて、9500rpmで5分間湿式粉砕した。さらに5gのエタノールを加えて脱水すると、ハイドロゲル粒子が収縮して合着し、一塊になった。
【0056】
次いで、デカンテーションによりエタノールを除去し、新たに10gのエタノールを加えた。合着して一塊になっていたハイドロゲル粒子は、ほぐれて白色粒子になった。デカンテーションによりエタノールを除去し、得られた粒子を70℃で恒量になるまで約8時間送風乾燥して、0.87gの乾燥ゲル粉末を得た。得られた乾燥ゲル粉末の粒子径は、約200〜1000μmであり、平均すると約500μmであった。得られた粉末を蒸留水に投入すると、膨潤してハイドロゲル粒子が再生した。
【0057】
(実施例3)
エタノールの代わりにイソプロパノールを用いたこと以外は、上記実施例2と同様の手順で、恒量になるまで乾燥した0.84gの乾燥ゲル粉末を得た。得られた乾燥ゲル粉末の粒子径は、約200〜1000μmであり、平均すると約500μmであった。得られた粉末を蒸留水に投入すると、膨潤してハイドロゲル粒子が再生した。
【0058】
(実施例4)
エタノールの代わりにアセトンを用いたこと以外は、上記実施例2と同様の手順で、恒量になるまで乾燥した0.8gの乾燥ゲル粉末を得た。得られた乾燥ゲル粉末の粒子径は、約200〜1000μmであり、平均すると約500μmであった。得られた粉末を蒸留水に投入すると、膨潤してハイドロゲル粒子が再生した。
【0059】
(実施例5)
実施例1で用いたポリ−γ−グルタミン酸1.29gを、10gのイオン交換水および4.5gの8w/v%水酸化ナトリウム水溶液に溶解した。次いで、得られた水溶液に、0.03gのジエチレントリアミンを加えて撹拌した。次いで、0.1gのNHSおよび0.17gのEDC塩酸塩を、順次粉末のまま撹拌しながら加えた。添加終了後約5分で、溶液がゲル化し、硬くて脆いハイドロゲルが得られた。添加終了の30分後、得られたハイドロゲルを、スパーテルで粗粉砕した。
【0060】
次いで、粗粉砕したハイドロゲルに、0.5gの濃硫酸と10gのメタノールとの混合液を加えて撹拌した。さらに、約10分後、30gのメタノールを加えると、ハイドロゲル粒子が少し収縮した。ホモジナイザーを用いて、9500rpmで5分間湿式粉砕すると、細かい白色粒子の分散液が得られた。
【0061】
次いで、デカンテーションでメタノールを除去し、新たに30gのメタノールを加えると、白色の硬い粒子の分散液が得られた。デカンテーションによりメタノールを除去し、得られた粒子を70℃で恒量になるまで2時間送風乾燥して、1.41gの白色乾燥ゲル粉末を得た。得られた乾燥ゲル粉末の粒子径は、約50〜500μmであり、平均すると約300μmであった。得られた粉末20mgを0.1規定の水酸化ナトリウム水溶液2mLに投入すると、直ちに膨潤してハイドロゲル粒子が再生した。
【0062】
(実施例6)
実施例1で用いたポリ−γ−グルタミン酸1.29gを、10gのイオン交換水および4.5gの8w/v%水酸化ナトリウム水溶液に溶解した。次いで、得られた水溶液に、0.03gのジエチレントリアミンを加えて撹拌した。次いで、0.1gのNHSおよび0.17gのEDC塩酸塩を、順次粉末のまま撹拌しながら加えた。添加終了30分後、得られたハイドロゲルを、スパーテルで粗粉砕した。
【0063】
次いで、粗粉砕したハイドロゲルに、10gのエチレングリコールモノイソプロピルエーテルを加えた。ホモジナイザーを用いて、9500rpmで5分間湿式粉砕すると、半透明のハイドロゲル粒子の分散液が得られた。さらに、10gのエチレングリコールモノイソプロピルエーテルを加えると、ハイドロゲル粒子は収縮し、白色粒子になった。
【0064】
次いで、吸引ろ過でエチレングリコールモノイソプロピルエーテルを除去し、得られた粒子を110℃で恒量になるまで約8時間送風乾燥して、1.8gの乾燥ゲル粉末を得た。得られた乾燥ゲル粉末の粒子径は、約100〜800μmであり、平均すると約400μmであった。得られた粉末を蒸留水に投入すると、膨潤してハイドロゲル粒子が再生した。
【0065】
(実施例7)
50mgのε−ポリ−L−リジン塩酸塩(重量平均分子量4700)を、10gのイオン交換水に溶解し、さらに0.15gの8w/v%水酸化ナトリウム水溶液を加えて透明な溶液を調製した。次いで、得られた水溶液に、実施例1で用いたポリ−γ−グルタミン酸1.29gを分散させ、4.5gの8w/v%水酸化ナトリウム水溶液を加えて撹拌した。次いで、0.1gのNHSおよび0.17gのEDC塩酸塩を、順次粉末のまま撹拌しながら加えると、溶液は直ちにゲル化した。一晩静置した後、得られたハイドロゲルを、スパーテルで粗粉砕した。
【0066】
次いで、粗粉砕したハイドロゲルに、20gのメタノールを加えると、膨潤して流動性がなくなった。さらに20gのメタノールを加えると、ハイドロゲルが少し収縮して減容した。このハイドロゲルを、ホモジナイザーを用いて、9500rpmで5分間湿式粉砕した。増粘して流動しなくなった。そこで、さらに40gのメタノールを加えて湿式粉砕すると、急激に粘度が下がり、白色粒子が沈降した。
【0067】
次いで、デカンテーションによりメタノールを除去し、得られた粒子を、各20gのメタノールで2回リンスした後、70℃で恒量になるまで約8時間送風乾燥して、1.41gの乾燥ゲル粉末を得た。得られた乾燥ゲル粉末の粒子径は、約50〜500μmであり、平均すると約300μmであった。得られた粉末を蒸留水に投入すると、膨潤してハイドロゲル粒子が再生した。
【0068】
(実施例8)
0.1gのキトサン乳酸塩(甲陽ケミカル株式会社製;FLA−40)を、10gのイオン交換水に溶解した。次いで、得られた水溶液に、実施例1で用いたポリ−γ−グルタミン酸1.29gを分散させ、4.8gの8w/v%水酸化ナトリウム水溶液を加えて撹拌した。キトサンの析出と思われる濁りを生じた。次いで、0.1gのNHSおよび0.17gのEDC塩酸塩を、順次粉末のまま撹拌しながら加えると、溶液は数分後にゲル化した。一晩静置した後、得られたハイドロゲルを、スパーテルで粗粉砕した。
【0069】
次いで、粗粉砕したハイドロゲルに、20gのメタノールを加えて、ホモジナイザーを用いて、9500rpmで5分間湿式粉砕した。粉砕が進むにつれて増粘したので、さらに20gのメタノールを加えた。3分間ホモジナイザーでさらに粉砕すると、溶液は増粘し、糊状になった。40gのメタノールをさらに加えると粘度が下がり、白色粒子が沈降した。次いで、20gのメタノールをさらに加えると、硬い粒子が沈殿した。
【0070】
次いで、デカンテーションによりメタノールを除去し、得られた粒子を、各20gのメタノールで2回リンスした後、70℃で恒量になるまで約8時間送風乾燥して、1.16gの乾燥ゲル粉末を得た。得られた乾燥ゲル粉末の粒子径は、約50〜300μmであり、平均すると約200μmであった。得られた粉末を蒸留水に投入すると、膨潤してハイドロゲル粒子が再生した。
【0071】
(実施例9)
0.2gのヒアルロン酸ナトリウム(重量平均分子量80万)を、10gのイオン交換水に溶解し、透明な溶液を調製した。次いで、得られた水溶液に、0.03gのNHSおよび0.1gのEDC塩酸塩を、順次粉末のまま撹拌しながら加えた。添加終了後、一晩静置すると、溶液がゲル化した。得られたハイドロゲルを、スパーテルで粗粉砕した。
【0072】
次いで、粗粉砕したハイドロゲルに、20gのアセトンを加えて、ハイドロゲル粒子を収縮させた。ホモジナイザーを用いて、9500rpmで2分間湿式粉砕すると、細かく分散して、白色粒子が沈降した。デカンテーションによりアセトンを除去し、新たに10gのアセトンを加えると、硬い白色粒子が沈殿した。
【0073】
次いで、デカンテーションによりアセトンを除去し、得られた粒子を50℃で恒量になるまで約8時間静置乾燥して、0.22gの乾燥ゲル粉末を得た。得られた乾燥ゲル粉末の粒子径は、約200〜1000μmであり、平均すると約500μmであった。得られた粉末を蒸留水に投入すると、膨潤してハイドロゲル粒子が再生した。
【0074】
(実施例10)
0.2gのアルギン酸ナトリウム(ナカライテスク株式会社製;試薬特級、重合度650)を、10gのイオン交換水に溶解し、透明な溶液を調製した。次いで、得られた水溶液に、0.01gのジエチレントリアミンを加えて撹拌後、0.03gのNHSおよび0.1gのEDC塩酸塩を、順次粉末のまま撹拌しながら加えた。添加終了後、一晩静置すると、溶液がゲル化した。得られたハイドロゲルを、スパーテルで粗粉砕した。
【0075】
次いで、粗粉砕したハイドロゲルに、20gのメタノールを加えて、ハイドロゲル粒子を収縮させた。ホモジナイザーを用いて、9500rpmで2分間湿式粉砕すると、細かく分散して、粒子が沈降した。デカンテーションによりアセトンを除去し、得られた粒子を、10gのメタノールでリンスした後、得られた粒子を50℃で恒量になるまで約8時間静置乾燥して、0.2gの乾燥ゲル粉末を得た。得られた乾燥ゲル粉末の粒子径は、約200〜1000μmであり、平均すると約500μmであった。得られた粉末を蒸留水に投入すると、膨潤してハイドロゲル粒子が再生した。
【0076】
(実施例11)
1gのキトサン(甲陽ケミカル株式会社製;SK−10)を、10gのイオン交換水に分散した。次いで、この分散液に0.62gの90w/v%乳酸水溶液を加えて、約50℃で撹拌し、キトサンを溶解した。次いで、得られた水溶液に、0.08gの実施例1で用いたポリ−γ−グルタミン酸と10gの1質量%水酸化ナトリウム水溶液との混合液を加えた。溶液は、若干白濁した。次いで、0.115gのNHSおよび0.192gのEDC塩酸塩を、順次粉末のまま撹拌しながら加えた後、そのまま一晩静置した。溶液がゲル化し、柔らかいハイドロゲルを得た。
【0077】
次いで、得られたハイドロゲルに、20gのアセトンを加えて、スパーテルで粗粉砕した。粗粉砕したハイドロゲルを、ホモジナイザーを用いて、9500rpmで2分間湿式粉砕した。デカンテーションによりアセトンを除去し、新たに20gのアセトンを加え、ホモジナイザーを用いて、9500rpmで2分間湿式粉砕した。
【0078】
次いで、ろ紙で自然ろ過し、得られた粒子を70℃で恒量になるまで約8時間送風乾燥して、0.99gの乾燥ゲル粉末を得た。得られた乾燥ゲル粉末の粒子径は、約100〜800μmであり、平均すると約400μmであった。得られた粉末を蒸留水に投入すると、膨潤してハイドロゲル粒子が再生した。
【0079】
(実施例12)
実施例11で用いたキトサン1gを、10gのイオン交換水に分散した。次いで、この分散液に0.62gの90w/v%乳酸水溶液を加えて、約50℃で撹拌し、キトサンを溶解した。次いで、得られた水溶液に、0.045gのポリアクリル酸(日本ポリマー株式会社製;ジュリマーAC−10(固形分25%))を溶解した1w/v%水酸化ナトリウム水溶液10gを加えて、激しく撹拌した。次いで、0.115gのNHSおよび0.192gのEDC塩酸塩を、順次粉末のまま撹拌しながら加えた。添加終了の約30分後、溶液はゲル化し、不透明な褐色のハイドロゲルを得た。
【0080】
一晩静置後、10gのメタノールを加えて膨潤させて、スパーテルで粗粉砕した。次いで、10gのアセトンを加えて、ホモジナイザーを用いて、9500rpmで1分間湿式粉砕した。さらに、10gのアセトンを加えると急激に粘度が低下した。さらに、ホモジナイザーを用いて、9500rpmで1分間湿式粉砕した。
【0081】
次いで、ろ紙で自然ろ過し、得られた粒子を50℃で恒量になるまで約8時間静置乾燥して、1gの硬い乾燥ゲル粉末を得た。得られた乾燥ゲル粉末の粒子径は、約200〜1000μmであり、平均すると約500μmであった。得られた粉末を蒸留水に投入すると、膨潤してハイドロゲル粒子が再生した。
【0082】
(実施例13)
実施例11で用いたキトサン1gを、8.38gのイオン交換水に分散した。次いで、この分散液に0.62gの90w/v%乳酸水溶液を加えて、約50℃で撹拌し、キトサンを溶解した。次いで、得られた水溶液に、0.081gのイタコン酸を溶解した1w/v%水酸化ナトリウム水溶液10gを加えて、激しく撹拌した。次いで、0.115gのNHSおよび0.192gのEDC塩酸塩を、順次粉末のまま撹拌しながら加えた。添加終了の約1時間後、溶液はゲル化し、透明な褐色のハイドロゲルを得た。
【0083】
一晩静置後、スパーテルで粗粉砕し、10gのメタノールおよび20gのアセトンを加えた。次いで、ホモジナイザーを用いて、9500rpmで1分間湿式粉砕した。デカンテーションにより溶媒を除去し、新たに10gのアセトンを加えた。
【0084】
次いで、ろ紙で自然ろ過し、得られた粒子を50℃で恒量になるまで約8時間静置乾燥して、1.08gの淡褐色の乾燥ゲル粉末を得た。得られた乾燥ゲル粉末の粒子径は、約50〜500μmであり、平均すると約300μmであった。得られた粉末を蒸留水に投入すると、膨潤してハイドロゲル粒子が再生した。
【0085】
(実施例14)
実施例1で用いたポリ−γ−グルタミン酸1.29gを、5gのイオン交換水および4.5gの8w/v%水酸化ナトリウム水溶液に溶解した。次いで、得られた水溶液に、0.176gのL(+)アスコルビン酸(和光純薬株式会社製;別名ビタミンC)を溶解した。次いで、0.1gのNHSおよび0.17gのEDC塩酸塩を、順次粉末のまま撹拌しながら加えた。添加終了後約1分で、溶液はゲル化し始めた。そのまま一晩静置して、柔らかいハイドロゲルを得た。
【0086】
次いで、得られたハイドロゲルに、20gのメタノールを加え、ホモジナイザーを用いて、9500rpmで5分間湿式粉砕した。高粘度の分散液が得られたので、さらに10gのメタノールを加え、ホモジナイザーを用いて、9500rpmで5分間湿式粉砕すると、急激に粘度が低下した。そのまま静置すると、ハイドロゲル粒子が沈降した。
【0087】
さらに、20gのメタノールを加え、ホモジナイザーを用いて、9500rpmで5分間湿式粉砕した。次いで、デカンテーションにより溶媒を除去し、得られた粒子を80℃で恒量になるまで約6時間送風乾燥して、0.83gの黄色の乾燥ゲル粉末を得た。得られた乾燥ゲル粉末の粒子径は、約10〜300μmであり、平均すると約100μmであった。得られた粉末10mgを1gのイオン交換水に投入すると、膨潤してハイドロゲル粒子が再生した。さらに、このハイドロゲル粒子100mgを、1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジルを100マイクロモル含有するエタノール溶液1gに加えて振盪した。最初、溶液は紫色を呈していたが、すぐに色が消えた。したがって、このハイドロゲルは、抗酸化作用を有していることがわかった。この抗酸化作用は、アスコルビン酸(ビタミンC)によるものであり、このハイドロゲルには、アスコルビン酸が内包されていることがわかった。
【0088】
(実施例15)
実施例1で用いたポリ−γ−グルタミン酸1.29gを、5gのイオン交換水および4.5gの8w/v%水酸化ナトリウム水溶液に溶解した。次いで、得られた水溶液に、0.194gのエピガロカテキンガレート(和光純薬株式会社製)を溶解した。次いで、0.03gのジエチレントリアミンを溶解し、0.1gのNHSおよび0.17gのEDC塩酸塩を、順次粉末のまま撹拌しながら加えた。添加終了後約5分で、溶液はゲル化し、淡紫色の不透明な柔らかいハイドロゲルを得た。
【0089】
ゲル化し始めてから3時間後、得られたハイドロゲルに、20gのメタノールを加え、ホモジナイザーを用いて、9500rpmで5分間湿式粉砕し、高粘度の分散液を得た。さらに、10gのメタノールを加え、ホモジナイザーを用いて、9500rpmで5分間湿式粉砕すると、粒子が収縮し、分散液の粘度が急激に低下した。さらに、10gのメタノールを加え、ホモジナイザーを用いて、9500rpmで3分間湿式粉砕し、ハイドロゲルの微粒子分散液を得た。
【0090】
デカンテーションにより溶媒を除去した後、新たに20gのメタノールを加え、ホモジナイザーを用いて、9500rpmで3分間湿式粉砕した。次いで、デカンテーションにより溶媒を除去し、得られた粒子を80℃で恒量になるまで約5時間送風乾燥して、1.14gの淡紫色の乾燥ゲル粉末を得た。得られた乾燥ゲル粉末の粒子径は、約10〜300μmであり、平均すると約100μmであった。得られた粉末10mgを1gのイオン交換水に投入すると、膨潤してハイドロゲル粒子が再生した。さらに、このハイドロゲル粒子50mgを、1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジルを100マイクロモル含有するエタノール溶液1gに加えて振盪した。最初、溶液は紫色を呈していたが、すぐに色が消えた。したがって、このハイドロゲルは、抗酸化作用を有していることがわかった。この抗酸化作用は、エピガロカテキンガレートによるものであり、このハイドロゲルには、エピガロカテキンガレートが内包されていることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明によれば、天然物由来のハイドロゲルの乾燥ゲル粉末を簡単に製造する方法が提供される。このようにして得られた天然物由来のハイドロゲルの乾燥ゲル粉末は、保存安定性に優れ、運搬や保管における取り扱いも容易である。したがって、化粧品基材、創傷被覆剤、DDS基材などとして有用であり、天然物由来の乾燥ゲル粉末の用途を拡大することを可能にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥ゲル粉末の製造方法であって、
天然物由来のポリマーを架橋させて得られるハイドロゲルを湿式粉砕する工程;
該粉砕したハイドロゲルに、水混和性有機溶媒を加え、該粉砕したハイドロゲルを脱水する工程;および
該脱水したハイドロゲルを乾燥する工程;
を包含する、方法。
【請求項2】
前記湿式粉砕工程において、前記ハイドロゲルに水混和性有機溶媒が加えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
乾燥ゲル粉末の製造方法であって、
天然物由来のポリマーを架橋させて得られるハイドロゲルに水混和性有機溶媒を加え、湿式粉砕しながら脱水する工程;および
該脱水したハイドロゲルを乾燥する工程;
を包含する、方法。
【請求項4】
前記ハイドロゲルが、所望の物質を内包する、請求項1から3のいずれかの項に記載の方法。
【請求項5】
前記所望の物質が、ビタミンC、リン酸化ビタミンC、ビタミンE、カテキン、エピガロカテキンガレート、緑茶抽出ポリフェノール、ブドウ種子ポリフェノール、ブルーベリーエキス、大豆イソフラボン、グルコサミン、コンドロイチン、コエンザイムQ10、および酸化チタンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1から4のいずれかの項に記載の方法。
【請求項6】
前記天然物由来のポリマーが、ポリ−γ−グルタミン酸、アルギン酸、ヒアルロン酸、キトサン、およびこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1から5のいずれかの項に記載の方法。
【請求項7】
前記水混和性有機溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、第三級ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、およびアセトンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1から6のいずれかの項に記載の方法。
【請求項8】
前記湿式粉砕工程または前記脱水工程において、前記ハイドロゲルに、さらに無機酸または有機酸が加えられる、請求項1から7のいずれかの項に記載の方法。

【公開番号】特開2008−169313(P2008−169313A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−4361(P2007−4361)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、近畿経済産業局総務企画部、再委託契約「平成18年度 地域新生コンソーシアム研究開発事業(ポリ−γ−グルタミン酸を用いた高機能ハイドロゲル材料の開発)」、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(507012825)DAP株式会社 (1)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】