説明

乾燥制御システム、乾燥制御方法、グラビア印刷機

【課題】乾燥装置で消費するエネルギーを低減する乾燥制御システム等を提供する。
【解決手段】乾燥制御システム1が、熱交換器23からの熱風35をグラビア印刷機10の乾燥装置81に送る給気ファン23と、外気33を熱交換器23に送る配管92に設けられた給気ダンパー51と、乾燥装置81からの排気を熱交換器23にリターン排気59として戻す、ダンパー55が設けられた配管95およびリターン排気ダンパー53が設けられた配管96と、乾燥装置81からの排気を外部に送り出す配管94に設けられた排気ダンパー57と、給気ファン21が運転中であるが印刷が行われていないことを検出した場合に給気ダンパー51と排気ダンパー57を閉じる制御装置2と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビア印刷機の乾燥装置における乾燥制御システム、乾燥制御方法、およびグラビア印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷手法の一つとして、グラビア印刷機を用いたグラビア印刷が知られている。図4は、グラビア印刷機の概略構成を示す図、図5は、グラビア印刷のプロセスを示す図である。
【0003】
図4に示すように、グラビア印刷機10は、給紙部および排紙部(不図示)と、複数の印刷部3(3a、3b、3c)等からなる。各印刷部3で、対応する色(例えば、シアン、マゼンダ、イエロー、スミ、特色等)の印刷が行われる。給紙部から供給された被印刷材料13は、複数の搬送ローラ15によって印刷部3a、印刷部3b、印刷部3cの順に搬送されて印刷が行われ、排紙部に送られる。被印刷材料13は、紙、セロハン、OPP(oriented polypropylene)、PET(polyethylene terephthalate)、ナイロン等である。
【0004】
各印刷部3は、圧胴5、版胴7、インキパン9、ファニッシャーロール72、ドクターブレード73、エアシリンダ75、乾燥装置81等を有する。インキパン9には、各印刷部3の色のインキ11が入っている。エアシリンダ75は、圧胴5へかける圧力を調節し、搬送する被印刷材料13に一様な圧力がかかるようにする。
【0005】
図5(a)に示すように、グラビア印刷では、インキパン9上に設けられた版胴7が回転(図のA方向)することにより、版胴7の表面にインキ11が付着する。そして、図5(b)に示すように、ドクターブレード73が版胴7上の余分なインキ11をかき落とし、版胴7の凹部であるセル71にインキ11が充填された状態になる。
【0006】
図5(c)に示すように、被印刷材料13は、版胴7と、版胴7と反対方向(図のB方向)に回転する圧胴5との間を搬送され、その間、セル71内のインキ11が転移され印刷が行われる。印刷された被印刷材料13は、乾燥装置81にて熱風35を吹き付けられることにより、インキ11を乾燥させた後、次の色の印刷部に送られる。
【0007】
グラビア印刷機10は、エネルギーとして、電力、蒸気、圧縮空気、冷却水等を必要とし、特に乾燥装置81では、熱風35を作る際に用いる蒸気の生成と、熱風を吹き付けるために設けられた給気ファンの稼働に電力を大量に消費する。
【0008】
この乾燥プロセスで消費されるエネルギーを低減させる方法としては、長時間印刷を行わない場合に給気ファンの運転を停止し、蒸気及び電力の消費をゼロにするといった方法がある。
【0009】
また、グラビア印刷機10の稼働時に、乾燥装置内の状態によって風量を調節して印刷機稼働時のエネルギーを低減させる方法が提案されている(特許文献1)。
これは、乾燥機入口に温度コントローラと圧力コントローラを設け、温度コントローラによって測定した温度に従ってモジュトロールモータの回転を制御し、熱風と冷風の割合を変える混合ダンパーの開閉制御を行うとともに、圧力コントローラによって測定した圧力に従ってインバータを制御し、給気ファンの回転数を制御するもので、グラビア印刷機の稼働中における乾燥のプロセス条件を見極めてエネルギーを低減させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−344536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前者の方法は、長時間印刷機を停止する際に有効な方法であり、後者の特許文献1の方法は、グラビア印刷機の稼働中に有効な手法である。しかしながら、印刷工程では、印刷を比較的短時間停止する場合があり、このような場合にもエネルギーの消費量を低減できることが望ましい。
【0012】
例えば、本印刷(製品となる印刷)前の色合わせ作業時等には、印刷物を色見本と見比べて、同等の色に合わせ込む作業等に、数分から10数分程度、グラビア印刷機による印刷を行わない時間がある。
【0013】
従来は、このような短い時間でも、乾燥装置では、熱風を作るための加熱用の蒸気生成と、熱風を吹き付けるための給気ファンの稼働を通常通り行っており、電力消費を十分に低減できていなかった。
このように通常の運転を継続するのは、熱風の加熱や給気ファンの稼働を一旦停止させると、再び印刷を開始する際に、熱風の温度や給気ファンの回転数を上昇させ、これを安定させるまで時間がかかり、グラビア印刷機の運転効率を低下させてしまうという問題があるからである。
【0014】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、乾燥装置で消費するエネルギーを低減する乾燥制御システム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述した目的を達成するための第1の発明は、熱交換器からの熱風をグラビア印刷機の乾燥装置に送る給気ファンと、外気を前記熱交換器に送る流路に設けられた給気ダンパーと、前記乾燥装置からの排気を前記熱交換器に戻す流路と、前記乾燥装置からの排気を外部に送り出す流路に設けられた排気ダンパーと、前記給気ファンが運転中であるが印刷が行われていないことを検出した場合に前記給気ダンパーと前記排気ダンパーを閉じる制御装置と、を具備することを特徴とする乾燥制御システムである。
【0016】
前記乾燥装置からの排気を前記熱交換器に戻す流路に、リターン排気ダンパーが設けられ、前記制御装置は、前記給気ファンが運転中であるが印刷が行われていないことを検出した場合、前記リターン排気ダンパーを開くことが望ましい。
前記制御装置は、前記給気ファンが運転中であるが印刷が行われていないことを検出した場合に、前記給気ファンの回転数を、印刷が行われている場合の値よりも低い値とすることが望ましい。
また、前記制御装置は、前記乾燥装置に熱風を供給する流路に設けた温度測定装置により測定される温度情報に基づいて、前記熱交換器に供給する蒸気の量を調整することが望ましい。
さらに、前記制御装置は、前記グラビア印刷機の圧胴の位置に基づき、印刷が行われているか否かを検出することが望ましい。
【0017】
第2の発明は、熱交換器からの熱風をグラビア印刷機の乾燥装置に送る給気ファンと、外気を前記熱交換器に送る流路に設けられた給気ダンパーと、前記乾燥装置からの排気を前記熱交換器に戻す流路と、前記乾燥装置からの排気を外部に送り出す流路に設けられた排気ダンパーと、制御装置と、を有する乾燥制御システムにおける乾燥制御方法であって、前記制御装置が、前記給気ファンが運転中であるが印刷が行われていないことを検出した場合に前記給気ダンパーと前記排気ダンパーを閉じることを特徴とする乾燥制御方法である。
【0018】
前記乾燥装置からの排気を前記熱交換器に戻す流路に、リターン排気ダンパーが設けられ、前記制御装置は、前記給気ファンが運転中であるが印刷が行われていないことを検出した場合、前記リターン排気ダンパーを開くことが望ましい。
前記制御装置は、前記給気ファンが運転中であるが印刷が行われていないことを検出した場合に、前記給気ファンの回転数を、印刷が行われている場合の値よりも低い値とすることが望ましい。
また、前記制御装置は、前記乾燥装置に熱風を供給する流路に設けた温度測定装置により測定される温度情報に基づいて、前記熱交換器に供給する蒸気の量を調整することが望ましい。
さらに、前記制御装置は、前記グラビア印刷機の圧胴の位置に基づき、印刷が行われているか否かを検出することが望ましい。
【0019】
第3の発明は、第1の発明の乾燥制御システムが設けられたグラビア印刷機である。
【0020】
本発明により、制御装置によりグラビア印刷機の印刷の一時停止状態が検出され、一時停止時には、制御装置の制御により乾燥装置から排出される熱風をすべて熱交換器に戻すとともに、外気の流入を防ぐことで、外部から閉じた流路で熱風を循環させるので、熱風の温度を保つための蒸気の消費量を低減できる。これにより、オペレータの作業負担を増やすことなく、省エネルギー化を図ることができる。印刷再開時にも、熱風の温度の安定化のための立ち上がり時間を短くでき、グラビア印刷機の運転効率を低下させることなく印刷を行うことが可能になる。
また、乾燥装置からの排気を熱交換器に戻す流路に、リターン排気ダンパーを設けることで、印刷の一時停止時や印刷再開時の熱風の循環を調整することができる。例えば、印刷の一時停止時にはリターン排気ダンパーを開く。
【0021】
さらに、印刷の一時停止時には、給気ファンの回転数も低減し、さらなる省エネルギー化を図ることが可能になる。また、印刷再開時にも、ファン回転数の上昇のための立ち上がり時間を短くし、グラビア印刷機の運転効率を低下させることがない。
【0022】
加えて、乾燥装置に熱風を供給する流路に設けた温度測定装置からの温度情報に基づいて、熱交換器に供給する蒸気の量を調整することで、熱風の温度の維持を好適に行うことができる。
さらに、グラビア印刷機の圧胴の位置に基づき、印刷が行われているか否かを検出する。圧胴が被印刷材料から離れている場合には印刷が行われないので、印刷が停止している状態を確実に検出することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、乾燥装置で消費するエネルギーを低減する乾燥制御システム等を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態の乾燥制御システム1の構成を示す概略構成図。
【図2】乾燥制御システム1の処理の流れを示すフローチャート。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るリターン排気の説明図。
【図4】グラビア印刷機10の構成を示す概略構成図
【図5】グラビア印刷の概略プロセスを示す図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。なお、既に説明したものと同様の構成を有する要素については、図等で同じ番号を付し、説明を省略する。
【0026】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るグラビア印刷機10の乾燥制御システム1の構成を示す概略構成図である。なお、図1ではグラビア印刷機10の1色分の印刷部3について示しているが、他の印刷部3についても同様である。
【0027】
前述したように、グラビア印刷機10の印刷部3は乾燥装置81を備えている。
乾燥装置81は、熱風35を被印刷材料13に吹き付けるための図1に示す乾燥フード27を備える。被印刷材料13は、複数の搬送ローラ15によって乾燥フード27中を搬送され、印刷されたインキ11の乾燥処理が行われる。
【0028】
乾燥装置81には、乾燥制御システム1として、給気ファン21、熱交換器23、蒸気量調整弁25、測温抵抗体29、給気ダンパー51、リターン排気ダンパー53、ダンパー55、排気ダンパー57、および、これらが設けられた配管91〜96(流路)と、制御装置2が設けられる。
【0029】
乾燥制御システム1では、蒸気31が、給気ファン21により配管91を図のa方向に進み、熱交換器23に入る。熱交換器23への流入量は配管91に設けた蒸気量調整弁25によって調整される。
一方、外気33が、給気ファン21により配管92を図のb方向に進み、熱交換器23に入る。熱交換器23への流入量は配管92に設けた給気ダンパー51によって調整される。外気33(および後述するリターン排気59)は、蒸気31によって加熱される。
【0030】
加熱された空気(熱風35)は、給気ファン21により配管93をc方向に進み、熱交換器23から乾燥フード27(乾燥装置81)に入り、被印刷材料13に吹き付けられる。
被印刷材料13へ吹き付けられた熱風35は、乾燥フード27から排出される。
【0031】
乾燥フード27から排出される熱風35を搬送する配管としては、これを排気37として図のd方向に送り外部に放出する配管94と、これをリターン排気59として図のf方向に送り熱交換器23に戻す配管95、96が設けられる。
排気37として配管94から放出する量、配管95、96を介してリターン排気59として熱交換器23に戻す量は、配管94、95、96にそれぞれ設けた排気ダンパー57、ダンパー55、リターン排気ダンパー53によって調整される。なお、配管96は、ダンパー55より熱交換器23側で配管95に合流する。
また、ダンパー55は制御装置2の制御によらず手動で開閉するものとし、本実施形態においては常時一定開度で開いているものとする。
【0032】
制御装置2は、例えば演算部、メモリ、入出力インタフェース等を有するシーケンサで構成され、グラビア印刷機10の各所から入力される信号に基づき、乾燥制御システム1の給気ファン21、蒸気量調整弁25、給気ダンパー51、リターン排気ダンパー53、排気ダンパー57等を制御する。
制御装置2のメモリには、シーケンサにより後述する処理を行うためのプログラムと処理に使用されるデータが予め格納される。
【0033】
制御装置2には、印刷中か否かを示す信号として、圧胴5の着脱状態(位置)を示す圧胴情報41が入力される。圧胴情報41としては、例えば、圧胴5に位置センサ(図示しない)を設けて、センサ値を制御装置2に入力するようにしてもよいし、制御装置2が圧胴5の着脱そのものを制御している場合には、その制御信号を利用することができる。
【0034】
制御装置2は、圧胴情報41等の入力に応じて、グラビア印刷機10の稼働状態を検出し、給気ファン21の回転数の制御を行うとともに、給気ダンパー51、リターン排気ダンパー53、排気ダンパー57の開度の制御を行う。
【0035】
なお、給気ファン21を回転駆動するには、例えば交流電動機の一種である誘導電動機が用いられる。使用する誘導電動機が4極の場合について説明すると、誘導電動機に流す交流電流の周波数f(Hz)と誘導電動機の極数Pと誘導電動機の回転数N(rpm)(給気ファンの回転数)との関係式はN=120×f/Pとなる。制御装置2は給気ファン21の回転数の制御を行うための信号として回転数指令43を出力するが、回転数指令43は、上記の周波数fの値を示すものとしておく。
【0036】
給気ダンパー51、リターン排気ダンパー53、排気ダンパー57については、制御装置2より、その開閉を示す給気ダンパー開閉指令61、リターン排気ダンパー開閉指令63、排気ダンパー開閉指令67を送信し、各装置を制御する。
【0037】
また、熱風35を乾燥フード27に供給する配管93には、測温抵抗体29(温度測定装置)が設けられ、これにより熱風35の温度が測定される。測温抵抗体29による温度測定値は温度情報47として制御装置2に入力される。
制御装置2は、温度情報47に基づき蒸気量指令49を蒸気量調整弁25に出力して蒸気量調整弁25の開度を制御し、熱風35の温度が低下した場合には、熱交換器23に流入する蒸気31の量を増加させ、熱交換器23での加熱温度を高め、熱風35の温度低下を抑制する。
【0038】
次に、乾燥制御システム1の処理の流れについて、図2を参照しながら説明する。
【0039】
まず、制御装置2は、給気ファン21の運転状態を検出する(S101)。
給気ファン21の運転状態は、例えば制御装置2自体が送信している給気ファン21への回転数指令43の値を利用可能であり、回転数指令43が0Hzならば給気ファン21が停止中、それ以外の値ならば給気ファン21が停止中でなく運転状態にあることが検出できる。
ただし、これに限ることはなく、給気ファン21に、その運転状態を検出するためのセンサ(風量センサなど)を設け、当該センサからの情報を給気ファン21の運転状態を示す情報として制御装置2に入力してもよい。
【0040】
給気ファン21が停止中(S101;停止中)の場合、制御装置2は、グラビア印刷機10が稼働していず、長期間の停止状態にあるものとし、特に制御を行うことなく、給気ファン21の回転数が0rpmの状態を維持する(S107)。また、グラビア印刷機10が稼働状態から停止状態となった直後など、必要な場合には、各ダンパーの開度をグラビア印刷機10の停止時の状態に設定する(S108)。
【0041】
即ち、制御装置2は、給気ダンパー51に給気ダンパー開閉指令61として「閉(角度0度)」を、リターン排気ダンパー53にリターン排気ダンパー開閉指令63として「閉(角度0度)」を、排気ダンパー57に排気ダンパー開閉指令67として「閉(角度0度)」を出力し、給気ダンパー51、リターン排気ダンパー53、排気ダンパー57を(完全に)閉じる。
【0042】
一方、S101で給気ファン21が運転中(S101;運転中)の場合、制御装置2は、さらに、圧胴5の位置によりグラビア印刷機10の印刷中か否かを検出する(S102)。
圧胴5の位置は、前述の圧胴情報41により判定される。圧胴情報41が圧胴5の「着(印刷時の位置にある)」を示す場合(S102;着)、印刷中であるものとし、制御装置2は、給気ファン21の回転数をグラビア印刷機10の稼働中の通常の回転数に設定する制御を行う。例えば、回転数指令43を50Hzとして給気ファン21の回転数を1500rpmとする(S103)。
【0043】
また、制御装置2は、各ダンパーの設定を行う(S104)。
すなわち、給気ダンパー51に給気ダンパー開閉指令61として「開(角度90度)」を、リターン排気ダンパー53にリターン排気ダンパー開閉指令63として「閉(角度0度)」を、排気ダンパー57に排気ダンパー開閉指令67として「開(角度90度)」を出力し、給気ダンパー51と排気ダンパー57を開き、リターン排気ダンパー53を閉じる。
【0044】
この場合、乾燥フード27を出た熱風35は、排気37として配管94を通って放出されるとともに、一部がリターン排気59としてダンパー55を経由して配管95を通り熱交換器23へ入る。
熱交換器23では、給気ダンパー51を経由して熱交換器23に入る外気33と、リターン排気59との混合空気が蒸気31により熱せられることになる。熱せられた空気は、熱風35として乾燥フード27にて被印刷材料13に吹き付けられる。
【0045】
なお、乾燥フード27を出た熱風35の一部のみをリターン排気59として戻すのは、乾燥フード27を出た熱風35は揮発性有機化合物(VOC)濃度が高いため、全てをリターン排気59として熱交換器23に戻すと、外気33と混合した場合でもVOC濃度が高い状態となり、再び熱風35として吹き付けることができないからである。
【0046】
図2の説明に戻る。S102において、圧胴情報41が圧胴5の「脱(印刷時の位置にない)」を示す場合(S102;脱)、印刷が行われていないことになる。即ち、給気ファン21が運転中にも関わらず圧胴5が印刷時の位置になく、グラビア印刷機10が色合わせ作業時などの一時停止状態であることがわかる。
この場合、制御装置2は、例えば、回転数指令43を25Hzとして給気ファン21の回転数を750rpmとし、通常時の回転数(1500rpm)よりも低い値とする(S105)。
【0047】
これにより、グラビア印刷機10が色合わせ作業などで一時停止している場合には、自動的に給気ファン21の回転数を低減して省エネルギーが実現される。また、印刷再開時の立ち上がり時間を短くしてグラビア印刷機10の運転効率を低下させることなく印刷を再開することが可能になる。
【0048】
制御装置2は、さらに、各ダンパーの設定を行う(S106)。
即ち、給気ダンパー51に給気ダンパー開閉指令61として「閉(角度0度)」を、リターン排気ダンパー53にリターン排気ダンパー開閉指令63として「開(角度90度)」を、排気ダンパー57に排気ダンパー開閉指令67として「閉(角度0度)」を出力し、給気ダンパー51と排気ダンパー57を(完全に)閉じ、リターン排気ダンパー53を開く。
【0049】
この場合、乾燥フード27を出た熱風35は、排気ダンパー57が閉じられているので排気37として放出されず、ダンパー55を経由して配管95を通るか、あるいはリターン排気ダンパー53を経由して配管96を通り配管95に合流して、リターン排気59として熱交換器23へ入る。熱交換器23では、給気ダンパー51が閉じられているので、外気33が流入せず、リターン排気59のみが蒸気31により熱せられることになる。
即ち、S106の制御により、給気ダンパー51と排気ダンパー57が閉じられるので、熱風35は外部から閉じた流路を循環することになる。
【0050】
前述したように、制御装置2は、配管93を通過する熱風35の温度を測温抵抗体29により測定し、その温度情報47に基づき、蒸気量調整弁25の開度を制御し、熱交換器23に流入する蒸気31の量を調整している。熱風35の温度が低下した場合には、蒸気31の量を増やし、熱風35の温度を上昇させる。
これは、印刷の一時停止時にも熱風35の温度を保っておくことで、印刷再開する際に再度温度を上昇させて所定の温度に安定させるまでの時間ロスを防ぎ、グラビア印刷機10の運転効率の低下を防ぐためである。
【0051】
そして、本実施形態では、S106の処理により、印刷の一時停止時には、熱風35が外部から閉じた流路を循環し、外気33が流入することがない。従って、外気33の流入、混合による空気温度の低下が防がれるので、熱風35の温度を保つために必要な蒸気31の量を大幅に低減することができる。
【0052】
なお、S104では乾燥フード27からの熱風35の一部のみをリターン排気59とするのに対し、S106において、乾燥フード27からの熱風35を配管94から放出せず全て循環させることができるのは、印刷が一時停止されているので、乾燥フード27から排出される熱風35に含まれるVOC濃度が低いためである。
【0053】
上記のS104、106、108の処理後は、S101に戻り、S101〜108の処理を繰り返す。
【0054】
以上説明したように、乾燥制御システム1では、制御装置2によりグラビア印刷機10の印刷の一時停止状態が検出され、一時停止時には、制御装置2の制御により乾燥フード27から排出される熱風35をすべて熱交換器23に戻すとともに、外気33の流入を防ぐことで、外部から閉じた流路で熱風35を循環させるので、熱風35の温度を保つための蒸気31の消費量を低減できる。これにより、オペレータの作業負担を増やすことなく、省エネルギー化を図ることができる。印刷再開時にも、熱風35の温度の安定化のための立ち上がり時間を短くでき、グラビア印刷機10の運転効率を低下させることなく印刷を行うことが可能になる。
また、乾燥装置81からの排気を熱交換器23に戻す流路に、リターン排気ダンパー53を設けることで、印刷の一時停止時や印刷再開時の熱風35の循環を調整することができる。例えば、印刷の一時停止時にはリターン排気ダンパー53を開く。
【0055】
さらに、印刷の一時停止時には、給気ファン21の回転数も低減し、さらなる省エネルギー化を図ることが可能になる。また、印刷再開時にも、ファン回転数の上昇のための立ち上がり時間を短くし、グラビア印刷機10の運転効率を低下させることがない。
【0056】
加えて、配管93に設けた測温抵抗体29からの温度情報47に基づいて、熱交換器23に供給する蒸気31の量を調整することで、熱風35の温度の維持を好適に行うことができる。
さらに、圧胴5の位置に基づき、印刷が行われているか否かを検出する。圧胴5が被印刷材料13から離れている場合には印刷が行われないので、印刷が停止している状態を確実に検出することができる。
【0057】
図2で説明した乾燥制御システム1による処理を、8ユニット(8色)の印刷部3のグラビア印刷機10で行ったところ、印刷運転効率を低下させることなく、電力量を1/8に、また、蒸気量を約1/9に低減することができた。
【0058】
なお、上記説明した例では、印刷中の給気ファン21の回転数を1500rpm、印刷の一時停止状態では750rpmとしたが、これに限ることはない。但し、給気ファン21の回転数のおよそ3乗と消費エネルギーとの間に比例関係があり、ある程度まで回転数を下げればそれより回転数を低下させても省エネルギー効果は小さいこと、および印刷再開時に給気ファン21の回転数を上げる際の立ち上り時間を短くすることを考慮すれば、上記したように1/2程度に低減することが好ましい。
【0059】
また、印刷の(一時)停止状態は圧胴5の位置により検出したが、他の方法でもよい。
例えば、圧胴5の近傍に画像センサ等を設け、S102では、被印刷材料13に印刷が施されているか否か(例えば、被印刷材料13に地色以外の部分があるか否か)を検出し、所定の時間に渡って印刷されていない場合、印刷の停止状態とするようにしてもよい。
【0060】
さらに、各ダンパーを開く際には角度90度で開いているが、開度はこれに限らず、適宜所定の開度で開くことも可能である。また、S104ではリターン排気ダンパー53を完全に閉じているが、所定の開度で開くよう制御することも可能である。
【0061】
[第2の実施形態]
図3は、本発明の乾燥制御システムの別の例である第2の実施形態の乾燥制御システム1aにおけるリターン排気の説明図である。
第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、手動のダンパー55を設けたリターン排気59用の配管95がなく、制御装置2により制御されるリターン排気ダンパー58を設けた配管97のみで、リターン排気59を熱交換器23に戻すことである。リターン排気ダンパー58としては、開閉の角度を可変に設定できるものを使用する。例えば、制御装置2からのリターン排気ダンパー開閉指令63により、リターン排気ダンパー58の開度を0度から90度までの範囲で設定可能としておく。
その他の点は第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0062】
乾燥制御システム1aによる制御の流れは、第1の実施形態と同様であるが、グラビア印刷機10での印刷時、S104では、リターン排気ダンパー58へのリターン排気ダンパー開閉指令63を、例えば30度というように、所定の開度で開くものとし、乾燥フード27から出される熱風35の一部を熱交換器23に戻すことになる。
【0063】
以上の処理により、第2の実施形態においても、第1の実施形態で説明したものと同様の効果が得られる。加えて、配管をコンパクトに構成できる利点がある。
【0064】
以上、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0065】
1………乾燥制御システム
2………制御装置
3………印刷部
5………圧胴
7………版胴
10………グラビア印刷機
13………被印刷材料
21………給気ファン
23………熱交換機
25………蒸気量調整弁
27………乾燥フード
29………測温抵抗体
31………蒸気
33………外気
35………熱風
37………排気
41………圧胴情報
43………回転数指令
45………印刷状況
47………温度情報
51………給気ダンパー
53、58………リターン排気ダンパー
55………ダンパー
57………排気ダンパー
61………給気ダンパー開閉指令
63………リターン排気ダンパー開閉指令
67………排気ダンパー開閉指令
81………乾燥装置
91〜97………配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器からの熱風をグラビア印刷機の乾燥装置に送る給気ファンと、
外気を前記熱交換器に送る流路に設けられた給気ダンパーと、
前記乾燥装置からの排気を前記熱交換器に戻す流路と、
前記乾燥装置からの排気を外部に送り出す流路に設けられた排気ダンパーと、
前記給気ファンが運転中であるが印刷が行われていないことを検出した場合に前記給気ダンパーと前記排気ダンパーを閉じる制御装置と、
を具備することを特徴とする乾燥制御システム。
【請求項2】
前記乾燥装置からの排気を前記熱交換器に戻す流路に、リターン排気ダンパーが設けられ、
前記制御装置は、前記給気ファンが運転中であるが印刷が行われていないことを検出した場合、前記リターン排気ダンパーを開くことを特徴とする請求項1記載の乾燥制御システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記給気ファンが運転中であるが印刷が行われていないことを検出した場合、前記給気ファンの回転数を、印刷が行われている場合の値よりも低い値とすることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の乾燥制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記乾燥装置に熱風を供給する流路に設けた温度測定装置により測定される温度情報に基づいて、前記熱交換器に供給する蒸気の量を調整することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の乾燥制御システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記グラビア印刷機の圧胴の位置に基づき、印刷が行われているか否かを検出することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の乾燥制御システム。
【請求項6】
熱交換器からの熱風をグラビア印刷機の乾燥装置に送る給気ファンと、
外気を前記熱交換器に送る流路に設けられた給気ダンパーと、
前記乾燥装置からの排気を前記熱交換器に戻す流路と、
前記乾燥装置からの排気を外部に送り出す流路に設けられた排気ダンパーと、
制御装置と、
を有する乾燥制御システムにおける乾燥制御方法であって、
前記制御装置が、前記給気ファンが運転中であるが印刷が行われていないことを検出した場合に前記給気ダンパーと前記排気ダンパーを閉じることを特徴とする乾燥制御方法。
【請求項7】
前記乾燥装置からの排気を前記熱交換器に戻す流路に、リターン排気ダンパーが設けられ、
前記制御装置は、前記給気ファンが運転中であるが印刷が行われていないことを検出した場合、前記リターン排気ダンパーを開くことを特徴とする請求項6記載の乾燥制御方法。
【請求項8】
前記制御装置は、前記給気ファンが運転中であるが印刷が行われていないことを検出した場合、前記給気ファンの回転数を、印刷が行われている場合の値よりも低い値とすることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の乾燥制御方法。
【請求項9】
前記制御装置は、前記乾燥装置に熱風を供給する流路に設けた温度測定装置により測定される温度情報に基づいて、前記熱交換器に供給する蒸気の量を調整することを特徴とする請求項6から請求項8のいずれかに記載の乾燥制御方法。
【請求項10】
前記制御装置は、前記グラビア印刷機の圧胴の位置に基づき、印刷が行われているか否かを検出することを特徴とする請求項6から請求項9のいずれかに記載の乾燥制御方法。
【請求項11】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の乾燥制御システムが設けられたグラビア印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−10182(P2013−10182A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142450(P2011−142450)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】