説明

乾燥方式

【課題】廃棄物等の縦型乾燥装置を使用する乾燥方式において、被乾燥物を薄膜状に拡げることによる乾燥効率を向上させること。
【解決手段】筒状の乾燥槽4の内部に被乾燥物Fを投入し、乾燥槽内に配設された回転軸6によって回転せしめられる、平面から見て360度の円周範囲の中で複数枚配設され、回転方向と逆方向に上昇する傾斜面を有する基羽根5によって被乾燥物を乾燥槽内面の伝熱面2に接触させて乾燥させる被乾燥物の乾燥方式において、被乾燥物が基羽根の後端から飛び出したとき、回転方向の後方に位置する隣の基羽根のうち、全体的に上方に位置する基羽根にも到達するように、回転方向に隣合う基羽根の少なくとも一部を配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物等を効率よく乾燥させるための乾燥方式に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の乾燥方式としては、乾燥槽を縦型にし、乾燥槽を取巻くようにジャケットを設け、その内部に高温の蒸気あるいは発熱体を設けて被乾燥物を伝熱面に押付けることにより乾燥させる縦型乾燥装置を用いた乾燥方式がある。
従来の縦型乾燥装置を用いた乾燥方式では、円筒形状又は上方に開いた円錐台形状の乾燥槽内に設置した、複数の基羽根を回転させることにより生じる遠心力によって被乾燥物を伝熱面に押付けて乾燥させている。
【特許文献1】特許第3057544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の乾燥方式では、遠心力により被乾燥物が伝熱面に押付けられる際、被乾燥物の垂直断面は、前記特許文献1にあるように、図9のようになり、下側で厚く、上側で薄い、細長い三角形状をなしている。
このような断面形状であれば、下側へ行く程厚さが増すので、下側へ行く程乾燥効率が悪い。
また、従来の乾燥方式では、或る基羽根と、その基羽根の回転方向の後方に位置する隣の基羽根との関係については、当該或る基羽根の後端よりも、先端位置を低くした(すなわち、全体的に上方に位置するのではない)隣の基羽根によって、当該或る基羽根の後端から飛び出した被乾燥物が受け取られるように構成されており、全体的に上方に位置する隣の基羽根によって被乾燥物が受け取られるようにはなっていない。
そこで、本発明は、この種の乾燥方式において、上記の課題を解決し、乾燥効率をさらに向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、筒状の乾燥槽の内部に被乾燥物を投入し、前記乾燥槽内に配設された回転軸によって回転せしめられる、平面から見て360度の円周範囲の中で複数枚配設され、回転方向と逆方向に上昇する傾斜面を有する基羽根によって前記被乾燥物を前記乾燥槽内面の伝熱面に接触させて乾燥させる被乾燥物の乾燥方式において、
前記被乾燥物が前記基羽根の後端から飛び出したとき、回転方向の後方に位置する隣の基羽根のうち、全体的に上方に位置する基羽根にも到達するように、回転方向に隣合う基羽根の少なくとも一部を配設したことを特徴とする被乾燥物の乾燥方式により、前記課題を解決した。
【0005】
最下部に位置する基羽根が掻取板によって回転軸に連結され、乾燥槽底面の被乾燥物をこの掻取板によって乾燥槽の伝熱面側に移動させるようにすると、乾燥効率が一層高まる。
【0006】
さらに、乾燥槽上部にバッフルを設け、このバッフルに、上昇して来た被乾燥物を衝突させることにより強制的に落下させるようにすると、被乾燥物の上昇、落下、再上昇のサイクルが繰返されて、乾燥効率が向上する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、伝熱面に接する被乾燥物の縦断面が、伝熱面全体において、より厚さが均一な薄膜状をなすようにすることができるので、乾燥効率を向上させることができる。
また、乾燥効率を向上させることに伴い、消費するエネルギーを節約することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明する。但し、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
図1は、本発明を適用した縦型乾燥装置(以下、「乾燥装置」という。)の縦断面図、図2は、図1の乾燥装置の最下部の基羽根の一組の平面図、図3は、図1の乾燥装置の最下部の基羽根の一組の正面図、図4は、最下部の一枚の基羽根の平面図である。
なお、図5は図4の5−5線断面図、図6は図4の6−6線断面図である。
【第1実施形態】
【0009】
本発明方式を適用した乾燥装置10は、図1のように、円筒形状(上方に開いた円錐台形状でもよい。)をなし、乾燥槽4の内面の伝熱面2を加熱する手段(図示せず。)を具えたジャケット7と、R方向に回転する回転軸6と、回転軸6に上下4段に設けられた、平面から見て360度以内の、複数の基羽根5を具えている。
各々の基羽根5には、回転方向Rと逆方向に上昇する傾斜がつけられている。 第1実施形態では、基羽根5は、同一平面上に3枚ずつ設けられ、全部で4段、12枚が配設されている。
【0010】
図2は、最下部にある基羽根5の一組の平面図、図3はその正面図、図4は最下部の一枚の基羽根5の平面図である。
図4に示すように、最下部の基羽根5には、回転軸6と連結される掻取板8を設けることで、基羽根5の回転に伴い、乾燥槽底面にある被乾燥物が遠心力により、乾燥槽4の伝熱面2側に移動させられるようにしている。
図5、図6は、それぞれ、図4の5−5、6−6線における断面図である。
また、被乾燥物の性質によっては、基羽根5により上昇して来た被乾燥物を乾燥槽4の底部へ強制的に落とすためのバッフルBを、図1に示すように、乾燥槽4上部に設ける。
なお、最下部の基羽根5は、上部の基羽根より、長さを約2倍程度に長くしてある。
【0011】
本実施形態における被乾燥物の動きを展開図で図解したものが図7である(但し、基羽根5は上下方向に見た場合、一列に整列しているものとし、最下部の基羽根も、上部の基羽根の長さと同じに表示してある。
最下部の基羽根で掬われた被乾燥物は、基羽根の傾きに沿って上昇させられる。被乾燥物は、慣性によって、基羽根5の後端から接線方向へ飛び出そうとするが、被乾燥物には、摩擦力、遠心力、重力が複雑に作用するため、被乾燥物の実際の動きは、同図に矢印で示したように、上方、水平方向、及び下方へと向かうことになる。
なお、上下方向から見たとき、基羽根の位置は、図7のように揃っている必要はなく、互い違いにずれていてもよい。
【0012】
本発明では、或る基羽根から見て回転方向の後方に位置する隣の基羽根の長さ、角度、位置を適切に設定することにより、被乾燥物が基羽根の後端から飛び出したとき、回転方向の後方に位置する隣の基羽根のうち、全体的に上方に位置する基羽根にも到達するようにした。
なお、「全体的に上方に位置する」とは、図7の場合、例えば、中央列最下部の基羽根に対して、右側の列の上から2番目の基羽根のような位置関係をいう。従来の乾燥方式では、中央列最下部の基羽根に対して、右側の列の上から3番目と4番目の基羽根によって被乾燥物が受け取られることしか考えられていない。
【0013】
本件実施形態では、各段の間隔を従来より小さくしたり、基羽根の長さ、角度、位置を適切に設定したり、回転速度を調整したりすることによって、被乾燥物が基羽根の後端から飛び出したとき、回転方向の後方に位置する隣の基羽根のうち、全体的に上方に位置する基羽根にも被乾燥物が到達し、受け取られるようにした。
【第2実施形態】
【0014】
第2実施形態では、基羽根5の高さを全部異なるようにした。
本実施形態における被乾燥物の動きを展開図で図解したものが図8である。同図に示すように、最下部の基羽根で掬い上げられた被乾燥物は、図7の場合と同様にして、基羽根の後端から飛び出したとき、回転方向の後方に位置する隣の基羽根のうち、全体的に上方に位置する基羽根にも到達するようにしてある。
【0015】
以上のようにすることにより、本発明の乾燥方式によれば、被乾燥物を、伝熱面全面にわたり、厚さが揃った薄膜状に近付けることにより、従来より乾燥効率を高めることができる。
なお、言うまでもないが、段の数、各段における基羽根の数・長さ・傾きの角度については図示したものに限定されない。
基羽根の位置が、上下方向、或いは水平面において揃っている必要もない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を適用した縦型乾燥装置の縦断面図。
【図2】図1の乾燥装置の最下部の基羽根の一組の平面図。
【図3】図1の乾燥装置の最下部の基羽根の一組の正面図。
【図4】図1の乾燥装置の最下部の一枚の基羽根の平面図。
【図5】図4の5−5線断面図。
【図6】図4の6−6線断面図。
【図7】第1実施形態の被乾燥物の動きを表した展開図。
【図8】第2実施形態の被乾燥物の動きを表した展開図。
【図9】従来の乾燥装置使用時の被乾燥物の縦断面図。
【符号の説明】
【0017】
2 伝熱面
4 乾燥槽
5 基羽根
6 回転軸
8 掻取板
10 縦式乾燥装置
P 遠心力
B バッフル
F 被乾燥物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の乾燥槽の内部に被乾燥物を投入し、前記乾燥槽内に配設された回転軸によって回転せしめられる、平面から見て360度の円周範囲の中で複数枚配設され、回転方向と逆方向に上昇する傾斜面を有する基羽根によって前記被乾燥物を前記乾燥槽内面の伝熱面に接触させて乾燥させる被乾燥物の乾燥方式において、 前記被乾燥物が前記基羽根の後端から飛び出したとき、回転方向の後方に位置する隣の基羽根のうち、全体的に上方に位置する基羽根にも到達するように、回転方向に隣合う基羽根の少なくとも一部を配設したことを特徴とする、
被乾燥物の乾燥方式。
【請求項2】
最下部に位置する基羽根が掻取板によって前記回転軸に連結され、前記乾燥槽底面の被乾燥物を前記掻取板によって前記乾燥槽の伝熱面側に移動させるようにした、請求項1の被乾燥物の乾燥方式。
【請求項3】
前記乾燥槽上部にバッフルを設け、該バッフルに、上昇して来た被乾燥物を衝突させることにより強制的に落下させるようにした、請求項1又は2の乾燥方式。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−14580(P2008−14580A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−186897(P2006−186897)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(504113329)株式会社KMコーポレーション (4)
【Fターム(参考)】