説明

乾燥機

【課題】 設置が容易であって、設置コストおよびランニングコストが安価で、VOCをほぼ全量回収可能な、エネルギー効率の高い乾燥機を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明にかかる乾燥機100の代表的な構成は、空気を加熱する加熱器120と、加熱された空気によって衣類に含まれた溶剤を蒸発させる乾燥室130と、空気を冷却して溶剤を凝縮させる冷却器140と、冷却器において凝縮した溶剤を回収する溶剤回収器150と、加熱器、乾燥室、および冷却器の間で空気をこの順に循環させる循環ダクト180と、冷却器から加熱器に熱を移動させることにより、加熱器に温熱を供給するとともに冷却器に冷熱を供給するヒートポンプと、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライクリーニングに使用する乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からクリーニングの各工程(洗浄、仕上げ、包装等)は、専用設備によって行われている。特に、各工程のなかでも時間を要する乾燥工程を迅速化するため、乾燥機が広く普及している。現在では、全国約4万箇所のクリーニング工場で、約10万台にもおよぶ乾燥機が稼動しているとされている。
【0003】
乾燥機を大別すると、ボイラからの蒸気を利用する蒸気式乾燥機、ガスの燃焼によって加熱された空気を利用するガス式乾燥機、電気ヒータ等によって加熱された空気を利用する電気式乾燥機に分けることができる。このうち、蒸気式乾燥機はクリーニング工場に広く普及していて、現在ではクリーニング工場で使用されている乾燥機の90%以上が蒸気式乾燥機である。その理由としては、クリーニング工場にはスチームアイロン等の蒸気使用機器のために元来からボイラが設置されていたことや、ボイラ燃料として一般的に使用されているA重油が従来は安価であったこと等が挙げられる。
【0004】
蒸気式乾燥機には、ドライクリーニングにおける安全性の面での利点もある。ドライクリーニングとは、水の代わりに有機溶剤を使用して汚れをおとす洗濯方法である。有機溶剤には引火性の高いものが多いが、蒸気式乾燥機はボイラからの蒸気を利用するため燃焼反応がなく、有機溶剤への引火がなく安全である。なお、ドライクリーニングで使用される5号工業用ガソリン、テトラクロロエチレン等は、常温で蒸発・気化するため揮発性有機化合物(VOC(Volatile Organic Compounds))とも呼ばれる。
【0005】
ところで、近年の過熱する価格競争と原油価格の高騰とによって、クリーニング工場ではコスト削減が切望されている。さらに、近年の環境意識の高まりから、クリーニング工場には、VOCの屋外への放出に対しての積極的な対策が求められている。
【0006】
このような問題に対して、従来から様々な対策が提案されている。例えば特許文献1には、溶剤を収容した溶剤貯留層を含む溶剤流路の配管の一部を、通気路内に配設して溶剤クーラとした洗濯乾燥機が記載されている。この特許文献1によれば、従来のように溶剤を冷却するためのクーラを外部に設ける必要がなく、低廉なコストの洗濯乾燥機を実現できるとされている。
【0007】
また、特許文献2には、脱液回転数が下がったら、それに対応してその次の工程である乾燥時に乾燥時間を定められた時間自動延長し、又は乾燥設定温度を一定時間増やす等の何れか、或いは双方を行うドライクリーナの乾燥方法が開示されている。特許文献2の記載によれば、衣料を取り出す際に、臭気を低いレベルに安定化させ、かつ溶剤ロスを少なくするとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−119797号公報
【特許文献2】特開平5−123494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1の洗濯乾燥機では、空気を加熱する乾燥ヒータの熱源(温熱供給)としてボイラを使用し、溶剤ガスを冷却する乾燥クーラの熱源(冷熱供給)としてチラー(冷凍機)を使用している。ここで、冷凍機は熱交換によって大きな排熱を生じるところ、この排熱は単に捨てていたため、エネルギーの無駄および冷却水の無駄を生じているという問題がある。
【0010】
また特許文献1および特許文献2では、屋外に対する吸気および排気を行うために、吸気口および排気口を建物の外壁に取付、さらにこれらに接続されるダクト等の設備が必要となる。このため、初期導入費用としての設置コストがかさむと共に、大きな設置スペース(機器が専有する面積)を必要とする。現在、クリーニング業者の7割が個人経営であって、限られた店舗面積で営業を行っている。このことに鑑みると、特許文献1、特許文献2のような構成では導入しづらく、汎用性に欠けると思われる。
【0011】
また都市部のビルに設置するにはビルの躯体にダクト等の貫通用の開口部を設ける必要があるが、ビルの所有者が係る工事に承諾しないことが多いため、テナントとして設置することは困難である。そのため広い敷地が確保できる地方にクリーニング工場を建設して、そこに乾燥機を設置しているのが現状である。しかし洗濯物を預ける顧客は都市部や住宅地等に多いことから、預かった洗濯物は長距離を搬送して洗濯、乾燥の作業を行う必要がある。このため、洗濯物の輸送に時間と手間とコストを要するという問題があった。
【0012】
さらに特許文献1と特許文献2のいずれの構成においても、VOCを含んだ空気を外部に放出する点においては変わりがない。このため建物が密集した都市部や住宅地等にドライクリーニング用の乾燥機を設置することは難しい。仮にクリーニング工場を地方に建設したとしても、VOCを排出していることに変わりはないため、クリーニング工場の作業者の健康被害に対する懸念は依然として解決されていない。
【0013】
本発明は、このような課題に鑑み、エネルギー効率が高く、かつ溶剤回収率を向上させ、ランニングコストおよび設置コストの削減を図ることのできる乾燥機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明にかかる乾燥機の代表的な構成は、空気を加熱する加熱器と、加熱された空気によって衣類に含まれた溶剤を蒸発させる乾燥室と、空気を冷却して溶剤を凝縮させる冷却器と、冷却器において凝縮した溶剤を回収する溶剤回収器と、加熱器、乾燥室、および冷却器の間で空気をこの順に循環させる循環ダクトと、冷却器から加熱器に熱を移動させることにより、加熱器に温熱を供給するとともに冷却器に冷熱を供給するヒートポンプと、を備えたことを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、ヒートポンプからの冷熱を用いて気化溶剤の潜熱を回収し凝縮させ溶剤を回収すると同時に、その回収した潜熱を加熱器の熱源として空気(循環空気)を加熱し、乾燥室内の溶剤を蒸発させることができる。このようにヒートポンプは冷温同時取りだしが可能であるため、COP(Coefficient Of Performance:成績係数)が高く、当該乾燥機のエネルギー効率を著しく向上させ、ランニングコストを低減させることができる。また、温熱供給用の蒸気配管や凝縮水用のドレン管、冷熱提供用の冷凍機が不要になるため設置コストも低減でき、かつ限られた面積でも容易に設置可能になる。さらに、ヒートポンプは燃焼反応がないため、有機溶剤への引火の可能性が低く安全である。
【0016】
さらに当該乾燥機は、ダクトが循環型であることから、屋外に通じるダクトの設置が不要となり、設置場所の自由度が増加すると共に、設置コストを低減できる。また、気化溶剤(VOC)を外部に放出することなく循環させるため、溶剤回収率を向上させてランニングコストの削減を図ると共に、環境汚染も防止できる。さらに、冷却器によって除湿され乾いた循環空気を用いて衣類の乾燥を行うことから、温度が低くても衣類を乾燥させ得るため、衣類の痛みの軽減を図ることができる。
【0017】
これらのことから、エネルギー効率が高く、かつ溶剤回収率を向上させ、ランニングコストおよび設置コストの削減を図ることのできる乾燥機を提供することができる。
【0018】
当該乾燥機は、ヒートポンプの冷却器側の熱媒体の回路に配置され、熱媒体を冷却器を通過せずにヒートポンプに戻すためのバイパス回路と、熱媒体の温度を検出する熱媒体温度検知部と、熱媒体が所定以下の温度になるまで熱媒体をバイパス回路に通す制御部と、を備えてもよい。熱媒体に冷却器をバイパスさせることにより、装置起動時に熱媒体の温度を所定温度以下に急速に低下させることができる。これにより、間欠的に稼働させる際にも迅速に予備運転を完了させることができ、装置の使い勝手を向上させることができる。また、消費電力の無駄を省きながらすばやく立ち上げることができるためランニングコストを低減できる。
【0019】
当該乾燥機は、循環ダクトに設けられた冷却器を迂回するバイパスダクトと、空気の温度を検知する空気温度検知部と、空気が所定以上の温度になるまで空気をバイパスダクトに通す制御部と、を備えてもよい。循環空気に冷却器をバイパスさせることにより、装置起動時に、乾燥に利用する循環空気の温度を所定温度以上に急速に加熱することができる。これにより、間欠的に稼働させる際にも迅速に予備運転を完了させることができ、装置の使い勝手を向上させることができる。また、外気の熱をヒートポンプの熱源とすることができるので、消費電力の無駄を省きながらすばやく立ち上げることができ、ランニングコストを低減できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、設置が容易であって、設置コストおよびランニングコストが安価で、VOCをほぼ全量回収可能な、エネルギー効率の高い乾燥機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態にかかる乾燥機の概略構成を説明する図である。
【図2】第2実施形態にかかる乾燥機の概略構成を説明する図である。
【図3】第3実施形態にかかる乾燥機の概略構成を説明する図である。
【図4】第4実施形態にかかる乾燥機の概略構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0023】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態にかかる乾燥機100の概略構成を説明する図である。図1に示す乾燥機100は、ドライクリーニング用の回転型乾燥機(タンブラ)である。乾燥機100は、加熱器120と、乾燥室130と、冷却器140と、溶剤回収器150と、リントフィルタ160と、ダクトファン170と、循環ダクト180とを備えている。また、循環経路190と、圧縮機192と、膨張弁194と、凝縮器としての加熱器120と、蒸発器としての冷却器140とから、ヒートポンプが構成されている。
【0024】
加熱器120は、循環ダクト180上に設けられ、循環ダクト180内の循環空気を加熱する。本実施形態では、加熱器120はヒートポンプにおける凝縮器であって、圧縮機192にて圧縮された高温高圧の熱媒体から発生する凝縮熱を放熱させる。これによって、循環ダクト180内の循環空気を60〜70℃に加熱する。加熱器120を通過して加熱された循環空気は、乾燥室130へ向かう。なお、加熱器120において放熱した熱媒体は凝縮して液体となる。
【0025】
乾燥室130は、加熱器120で加熱された循環空気を利用して衣類を乾燥させる。乾燥機100はドライクリーニング用であるから、衣類は液状の溶剤(5号工業用ガソリンやテトラクロロエチレンなど)を多量に含んでいる。乾燥室130は、衣類を収容する回転ドラムや気流を発生させる不図示のファンによって構成されていて、回転ドラムによって衣類を撹拌しながらファンによって衣類に温風を接触させることで、衣類に含まれた溶剤を蒸発させる。乾燥室130へ供給された循環空気は、衣類からの気化溶剤(VOC)を含み、30〜60℃程度の湿った循環空気となって冷却器140へと送られる。
【0026】
冷却器140は、乾燥室130より下流の循環ダクト180上に設けられ、乾燥室130から送られる湿った循環空気を冷却して気化溶剤を凝縮(液化)させる。本実施形態では、冷却器140はヒートポンプにおける蒸発器である。冷却器140では、低温低圧の熱媒体が蒸発して低温低圧の気体となり、相変化する際の潜熱によって冷熱を生じ、乾燥室130から送られる湿った循環空気を冷却する。このとき、循環空気の温度が下がるとその飽和蒸気量も下がるため、気化溶剤は凝縮し、循環空気中から取り除かれる(冷却回収)。冷却器140を通過する循環空気は7℃程度にまで温度が下げられる。なお、冷却器140にて気体となった熱媒体は、圧縮機192へ送られる。
【0027】
溶剤回収器150は、冷却器140において凝縮させた溶剤を回収する。溶剤回収器150では、循環空気中に含まれる溶剤の例えば95%程度を回収することができる。溶剤回収器150に回収された溶剤は、不純物除去や蒸留などの再生処理等を行なった後に再利用される。溶剤回収器150は、回収タンクや回収ポンプ等で構成することができる。また、溶剤回収器150には蒸留塔を並設してもよく、これにより溶剤の回収と再生とを迅速に行うことが可能になる。
【0028】
リントフィルタ160は、加熱器120および冷却器140の手前の循環ダクト180上に配置され、通過する循環空気から糸くず等の塵埃を取り除く。リントフィルタ160によって、加熱器120等への塵埃の堆積やカビの発生が防止されるため、加熱器120等の熱交換性能は好適に維持される。
【0029】
ダクトファン170は、循環ダクト180内の循環空気に流れを発生させる。本実施形態では、ダクトファン170はリントフィルタ160の手前に設けているが、設置位置はこれに限るものではない。
【0030】
循環ダクト180は、加熱器120と、乾燥室130と、冷却器140との間で循環空気をこの順に循環させる通風路である。循環ダクト180は、冷却器140によって溶剤等が回収された循環空気をそのまま加熱器120に導くため、循環空気中に残留した溶剤が外部に放出されない。したがって、作業環境の悪化および環境汚染を防止できる。また、気化溶剤を含んだ循環空気を循環によって何度も冷却し回収するため、最終的には溶剤回収率をほぼ全量となる95%以上にまで向上させることができ、溶剤の再利用率を促進させ、ランニングコストの削減を図ることが可能になる。
【0031】
さらに、循環ダクト180を備えることによって、乾燥機100には排気ダクトや吸気ダクト等の設置が不要となるため、従来の乾燥機と比べて設置コストを低減できる。これにともなって、乾燥機100を設置する建屋の躯体にダクト等の貫通用の開口部を設ける必要がなくなる。したがって、都市部のビルやマンションの一室等であっても、テナントとして容易に設置することができる。また、広いダクトスペースを必要としないため、限られた(狭い)面積にも容易に設置し得る。
【0032】
またダクトを循環型としたことにより、冷却器140によって除湿された乾いた循環空気を衣類の乾燥に利用できる。乾いた循環空気であれば、温度が低くても衣類からより多くの液体を蒸発させ得る。換言すれば、循環型である乾燥機100は、外気を取り込んで乾燥に利用する従来の乾燥機(開放型)と比較して、同等の乾燥性能をより低い乾燥温度で達成することができる。そのため、本実施形態にかかる乾燥機100では、乾燥室130の乾燥温度を下げて衣類の痛みの軽減を図ることができる。
【0033】
循環経路190は、内部に熱媒体(冷媒)を封入している。循環経路190は、圧縮機192と加熱器120と膨張弁194と冷却器140との間に熱媒体を循環させる回路を形成する。なお、循環経路190に用いる熱媒体としてはCOが好適である。自然冷媒であるCOは超臨界サイクルで利用することができ、加熱対象における加熱前と加熱後との間に温度差がある場合、例えば循環空気を7℃から65℃に加熱させる場合に高いCOPを示す。そのため本実施形態にかかる乾燥機100のように、60℃〜70℃の温度で乾燥を行う場合に好適に利用することができる。その他、フロン系の冷媒も熱媒体として使用することも可能である。
【0034】
圧縮機192は、電力を利用して熱媒体を圧縮する。これにより、熱媒体は高温高圧の気体となって加熱器120へ送られる。
【0035】
膨張弁194は、加熱器120で放熱した熱媒体を減圧状態にして膨張させ、低温低圧の液体にする。低温低圧の液体となった熱媒体は冷却器140へ送られる。
【0036】
上記説明のように、ヒートポンプを利用した乾燥機100は、冷却器140と加熱器120との間での熱移動が可能であり、一台で冷熱と温熱を同時に発生させることができる。したがってエネルギーを効率よく利用することができる。またヒートポンプは、ポンプ動力と循環空気の熱とを両方利用するため(1つのポンプ動力によって加熱の仕事と冷却の仕事の両方を行うため)、COPが3.5程度にもなるほど高い。これにともない、当該乾燥機100のランニングコストは、ボイラを利用した従来の乾燥機のそれと比較して約半分に低減できる。さらに、ヒートポンプを利用することで、ボイラを利用する場合よりもCO排出量を7割程度削減することができる。これらのように、本実施形態にかかる乾燥機100は、ボイラや冷凍機を利用する場合よりも著しくエネルギー効率を向上させることができ、かつ環境負荷も低減することができる。
【0037】
またヒートポンプを利用した乾燥機100では、ボイラおよび冷凍機の設置・接続が不要となるため、温熱供給用の蒸気配管や凝縮水用のドレン管や冷凍機の室外機との接続配管も不要となり、これにともなって建屋に開口部等の設置工事を行う必要もなくなる。したがって、従来の乾燥機と比較して設置コストを低減でき、容易に設置することができる。さらに、ヒートポンプには燃焼反応がないため、気化溶剤への引火の危険性もなく安全である。
【0038】
(第2実施形態)
本発明にかかる乾燥機の第2実施形態について説明する。図2は第2実施形態にかかる乾燥機200の概略構成を説明する図である。図2に示す乾燥機200は、第1実施形態にかかる乾燥機100と同様にヒートポンプを利用したドライクリーニング用の回転型乾燥機である。
【0039】
本実施形態にかかる乾燥機200は、第1実施形態において説明した乾燥機100とは、バイパス回路210と、バイパス調節弁220と、熱媒体温度検知部230と、制御部240とを備える点において異なる。以下、第2実施形態と機能および構成が同様の要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
バイパス回路210は、ヒートポンプの冷却器140側の熱媒体の回路に配置され、熱媒体を冷却器140に通過せずにヒートポンプに戻す回路である。本来、熱媒体は冷却器140を通過することで、外部の循環空気から吸熱する。しかし図4(a)に示すように、バイパス回路210を通過する熱媒体は吸熱することなく圧縮機192から加熱器120へ送られ放熱する。すなわち、バイパス回路210によって熱媒体は、吸熱せずに放熱のみ行なうため、急速に温度が下がる。これによって、乾燥機200はすばやく立ち上げることができる。
【0041】
バイパス調節弁220は、バイパス回路210上に設置され、その開度によってバイパス回路210を通過する熱媒体の流量を調節する。バイパス調節弁220としては、例えば電動弁を利用することができる。
【0042】
熱媒体温度検知部230は、膨張弁194を通過した低温低圧状態の熱媒体の温度を検出する。熱媒体温度検知部230の構成としては、例えば温度トランスミッタを利用することができる。本実施形態では、熱媒体温度検知部230は、膨張弁194からバイパス回路210に到達するまでの循環経路190上に設置されている。この位置に配置することによって、膨張弁194を通過直後の熱媒体の温度を適切に検知することができる。
【0043】
制御部240は、熱媒体の温度に応じてバイパス調節弁220の開度を調節する。本実施形態では、制御部240は、熱媒体の温度が目標とする温度より高いときは、その温度からバイパス調節弁220の開度を演算し、その開度でバイパス調節弁220を開かせる。そして制御部240は、熱媒体が所定温度以下になるまで熱媒体をバイパス回路210に通過させる。その結果、熱媒体は冷却器140での吸熱量が減るため、急速に温度が低下する。そして、熱媒体の温度が所定温度以下に到達した場合には、図4(b)に示すように、制御部240はバイパス調節弁220を閉じて、熱媒体を冷却器140に流通させる。
【0044】
このように乾燥機200は、熱媒体に冷却器140をバイパスさせることにより、装置起動時に熱媒体の温度を所定温度以下に急速に低下させることができる。これにより、間欠的に稼働させる際にも迅速に予備運転を完了させることができ、装置の使い勝手を向上させることができる。また、消費電力の無駄を省きながらすばやく立ち上げることができるためランニングコストを低減できる。
【0045】
(第3実施形態)
本発明にかかる乾燥機の第3実施形態について説明する。図3は第3実施形態にかかる乾燥機300の概略構成を説明する図である。図3では、乾燥機300を、第1実施形態と同様にヒートポンプを利用したドライクリーニング用の回転型乾燥機として例示している。
【0046】
乾燥機300は、バイパスダクト310と、ダクト切換弁321〜326と、空気温度検知部330と、制御部340とを備える点において第1実施形態の乾燥機100と異なる。以下、第1実施形態と機能および構成が同様の要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0047】
バイパスダクト310は、循環ダクト180内を流れる循環空気に冷却器140を迂回させるための通風路である。バイパスダクト310を通過する循環空気の経路は、冷却器140を通過しないため、加熱器120によって専ら加熱される経路となる。
【0048】
ダクト切換弁321〜326は、循環空気の流れを、バイパスダクト310または冷却器140へ向かう循環ダクト180のどちらかに切り替える。バイパスダクト310の入口側にダクト切換弁321が設けられ、その出口側にダクト切換弁322が設けられている。バイパスダクト310によって迂回された循環ダクト180上には、その入り口側にダクト切換弁323が設けられ、その出口側にダクト切換弁324が設けられている。
【0049】
冷却器140の前後には、外気から吸気する吸気ダクト312と、外部に排気する排気ダクト314を設けている。そして吸気ダクト312上にはダクト切換弁325が設けられ、排気ダクト314上にはダクト切換弁326が設けられている。バイパスダクト310に循環空気が流通するとき、冷却器140には循環空気が流通しなくなり、ヒートポンプが循環空気から吸熱できなくなるからである。
【0050】
ここで、冷却器140を開通させるダクト切換弁(323、324)と、バイパスダクト310を開通させるダクト切換弁(321、322)および冷却器140に外気を流通させるダクト切換弁(325、326)とは、排他的に開閉するインタロック制御を行う。これらダクト切換弁としては、例えば電磁弁を利用することができる。
【0051】
空気温度検知部330は、加熱器120を通過した循環ダクト180内の循環空気の温度を検知する。空気温度検知部330としては、例えば温度トランスミッタを利用することができる。本実施形態では、空気温度検知部330は、加熱器120から乾燥室130に到達するまでの循環ダクト180上に設置されている。この位置に設置されることで、空気温度検知部330は、乾燥に利用する循環空気の温度を適切に検知することができる。
【0052】
制御部340は、循環ダクト180内の循環空気の温度に応じて、各ダクト切換弁を開閉する。本実施形態では、制御部340は、循環ダクト180内の循環空気の温度が目標とする温度以下であるときに、冷却器140を開通させるダクト切換弁(323、324)を閉じ、バイパスダクト310を開通させるダクト切換弁(321、322)および冷却器140に外気を流通させるダクト切換弁(325、326)を開く。その結果、図3(a)に矢印で示すように、循環ダクト180内を流れる循環空気はバイパスダクト310を通過し、冷却器140を迂回して加熱器120へ戻ることができる。このとき、冷却器140へは吸気ダクト312から外気が吸い込まれ、冷却器140を通過して排気ダクト314から排気される。これにより、ヒートポンプの熱媒体は冷却器140において、外気からの熱を取り込むことができる。
【0053】
制御部340は、循環ダクト180内の循環空気が所定温度以上になるまで循環空気をバイパスダクト310に通過させる。そして、循環ダクト180内の循環空気が所定温度以上になると、図3(b)に示すように、制御部340はダクト切換弁(321、322、325、326)を閉じ、ダクト切換弁(323、324)を開ける。これにより通常運転として、冷却器140においてヒートポンプにより循環空気を冷却することができる。
【0054】
このように乾燥機300では、循環空気に冷却器140をバイパスさせることにより、装置起動時に、乾燥に利用する循環空気の温度を所定温度以上に急速に加熱することができる。これにより、間欠的に稼働させる際にも迅速に予備運転を完了させることができ、装置の使い勝手を向上させることができる。また、消費電力の無駄を省きながらすばやく立ち上げることができるためランニングコストを低減できる。
【0055】
(第4実施形態)
本発明にかかる乾燥機の第4実施形態について説明する。図4は第4実施形態にかかる乾燥機400の概略構成を説明する図である。図4に示す乾燥機400は、第1実施形態と同様に、ヒートポンプを利用したドライクリーニング用の回転型乾燥機である。しかし、加熱器および冷却器が2次冷媒を利用した間接式の熱交換器である点において第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態と機能および構成が同様の要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0056】
乾燥機400は、1次冷媒回路410と、凝縮器としての第1熱交換器420と、2次冷媒回路422と、加熱器430と、蒸発器としての第2熱交換器440と、2次冷媒回路442と、冷却器450とを含んでいる。
【0057】
1次冷媒回路410は、内部に1次冷媒を封入している。1次冷媒回路410は、圧縮機192、第1熱交換器420、膨張弁194、および第2熱交換器440の間に1次冷媒を循環させる回路を形成する。1次冷媒としては上記第2実施形態と同様にCOが好適である。
【0058】
第1熱交換器420は、1次冷媒回路410と2次冷媒回路422との間で熱交換を行なう。1次冷媒回路410を流れる1次冷媒からみて第1熱交換器420は凝縮器にあたり、2次冷媒回路422へは凝縮熱が伝達される。
【0059】
2次冷媒回路422は、内部に2次冷媒を封入している。2次冷媒回路422にはポンプ424が設けられ、第1熱交換器420と加熱器430との間で2次冷媒を循環させる。2次冷媒としては、水を使用することができる。水は比熱容量が高いため冷媒として好適であり、かつ安全である。
【0060】
加熱器430は、2次冷媒から、第1熱交換器420において受け取った凝縮熱を放熱させる。これによって、循環ダクト180内の循環空気を60〜70℃に加温する。
【0061】
第2熱交換器440は、1次冷媒回路410と2次冷媒回路442との間で熱交換を行なう。1次冷媒回路410を流れる熱媒体からみて第2熱交換器440は蒸発器にあたり、2次冷媒からは蒸発熱に相当する量の熱が奪われる(冷熱が供給される)。
【0062】
2次冷媒回路442は、内部に2次冷媒を封入している。2次冷媒回路442にはポンプ444が設けられ、第2熱交換器440と冷却器450との間で2次冷媒を循環させる。2次冷媒としては、2次冷媒回路422と同様に水を使用することができる。
【0063】
冷却器450は、第2熱交換器440において供給された冷熱によって、乾燥室130から送られる湿った循環空気を冷却する。
【0064】
上記説明したように、間接式のヒートポンプを利用した乾燥機400では、加熱器430および冷却器450等には2次冷媒として水が循環している。そのため、高圧の1次冷媒回路410の経路長を短くすることができ、装置コストを低減させることができる。また、1次冷媒回路410を外部に露出させない構成とすることができるため、1次冷媒回路410が外力によって損傷するおそれを低減することができる。
【0065】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、ドライクリーニングに使用する乾燥機として利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
100、200、300、400、 …乾燥機
120 …加熱器
130 …乾燥室
140 …冷却器
150 …溶剤回収器
160 …リントフィルタ
170 …ダクトファン
180 …循環ダクト
190 …循環経路
192 …圧縮機
194 …膨張弁
210 …バイパス回路
220 …バイパス調節弁
230 …熱媒体温度検知部
240 …制御部
310 …バイパスダクト
312 …吸気ダクト
314 …排気ダクト
321、322、323、324、325、326 …ダクト切換弁
330 …空気温度検知部
340 …制御部
410 …1次冷媒回路
420 …第1熱交換器
422 …2次冷媒回路
424 …ポンプ
430 …加熱器
440 …第2熱交換器
442 …2次冷媒回路
444 …ポンプ
450 …冷却器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を加熱する加熱器と、
加熱された空気によって衣類に含まれた溶剤を蒸発させる乾燥室と、
空気を冷却して溶剤を凝縮させる冷却器と、
前記冷却器において凝縮した溶剤を回収する溶剤回収器と、
前記加熱器、前記乾燥室、および前記冷却器の間で空気をこの順に循環させる循環ダクトと、
前記冷却器から前記加熱器に熱を移動させることにより、該加熱器に温熱を供給するとともに該冷却器に冷熱を供給するヒートポンプと、を備えたことを特徴とする乾燥機。
【請求項2】
前記ヒートポンプの前記冷却器側の熱媒体の回路に配置され、熱媒体を前記冷却器を通過せずに前記ヒートポンプに戻すためのバイパス回路と、
熱媒体の温度を検出する熱媒体温度検知部と、
熱媒体が所定以下の温度になるまで熱媒体を前記バイパス回路に通す制御部と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の乾燥機。
【請求項3】
前記循環ダクトに設けられた前記冷却器を迂回するバイパスダクトと、
空気の温度を検知する空気温度検知部と、
空気が所定以上の温度になるまで空気を前記バイパスダクトに通す制御部と、を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−83505(P2011−83505A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−240001(P2009−240001)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】