説明

乾燥膜状耐食性冷間成形潤滑剤

【課題】金属基体上に、それと接触して複合不動態化・潤滑性被覆層を形成する潤滑剤組成物の提供。
【解決手段】前記潤滑剤組成物は、有機ポリマー及び/又はワックス分散物;リン酸塩、好ましくは酸性リン酸塩、及び/又はリン酸;及び必要により、界面活性剤、増粘助剤、耐摩耗剤、消泡剤、耐食剤、及び/又は、直鎖状又は分岐鎖状炭化水素を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性液体複合不動態化及び潤滑性被膜組成物及びその使用に関する。特に本発明は、例えば鉄、鋼、及びアルミニウムのような金属の冷間成形で使用するための、ジチオカルバメートを実質的にもしくは完全に含まない極めて有効な潤滑剤組成物に関する。これらの組成物は、金属基体と1回接触し、次に乾燥されて、金属基体表面上に配置された潤滑性被膜を生成し、この被膜は、固体接着性不動態化被膜と固体及び/又は液体潤滑剤との両方を兼ね備え、また、この被覆された基体表面と成形手段(例えば金型)との間の相対運動によって、対象物の、前述のようにして被覆された表面の変形を必要とするすべてのタイプの冷間加工における、前述のようにして被覆された金属基体の冷間加工を促進するのに極めて有効である。
【0002】
さらに詳しく述べるならば本発明は、被加工物(workpiece)が冷間成形される前に、周囲温度において組成物が噴霧もしくは浸漬により被加工物上に被覆され、次に乾燥される単純なプロセスにより、高潤滑性被膜を生成する上記タイプの組成物に関する。本発明はまた、本発明の潤滑剤組成物と、潤滑剤組成物で被覆されている仕掛り品(成形すべき被加工物を意味する)とを使用する、金属の潤滑化冷間成形法に関する。
【背景技術】
【0003】
冷間加工をされている間、金属表面を保護する被膜を金属表面上に形成する多くの水性液体組成物が公知である。これまでで最も有効なものは一般に、鋼鉄基板上の従来の厚膜リン酸塩化成被膜上に、又はアルミニウム基板上の複合アルミン酸カルシウム化成被膜上に、塗布される、亜鉛、カルシウム、及び/又はナトリウムの石鹸であった。(通常、ステアリン酸ナトリウム又は他のナトリウム石鹸塩が、リン酸亜鉛被膜又はアルミン酸カルシウム被膜上に塗布される。前記化成被膜中のナトリウム石鹸と亜鉛又はカルシウムとの反応は、亜鉛もしくはカルシウム石鹸層と、ナトリウム石鹸層の両方を形成すると考えられ、従ってこの種の潤滑剤はしばしば「反応性」潤滑剤と呼ばれている)。しかし、この組合せは、特にリン酸塩被膜に対して使用すると環境的に不利であり、これは、リン酸塩被膜を作成するために使用される液体組成物が、汚染性があると見なされているある種の金属イオン(例えば、亜鉛、ニッケル、マンガンなど)を含むためである。亜鉛及びカルシウム石鹸は実質的に水に不溶性であるが、しかし、冷間加工潤滑剤として使用された時に、冷間加工プロセス部位の周りの空気中に微粉粒子を生成する傾向があるため、最良でも作業場にとって厄介者であり、最悪の場合には有害である。この組合せはまた、化成被膜工程と潤滑剤被膜工程との別々の工程が必要であり、またこの必要に加えて、加工される金属基体を潤滑化する方法を用いる冷間加工を大規模に実施するための装置が必要となるので、経済的に不利である。
【0004】
リン酸亜鉛化成被膜と、それを被覆するステアリン酸塩との組合せの代わりとして、当該分野で種々のポリマーベースの潤滑剤が教示されているが、これまでポリマーベースの潤滑剤は、いずれも、すべての用途において工業的に許容されていなかった。先行技術のポリマー潤滑剤の工業的使用において、しばしば好ましくない特性は、冷間加工物品の表面に掻き傷が発生することである。
【0005】
単一工程において、化成被膜と他の潤滑剤との最良の特性を組合せようとするこれまでの試みについては、発行された米国特許第4,289,546号及び第4,289,547号(これらには共通の開示が多い)、及びこれらの2つの特許において引用されているそれ以前の特許において結果が得られている。これらの特許のすべての教示事項は、長期間の実施すると、鋼材(これは冷間加工中の保護処理される最も一般的な基体である)に用いることは、工業的に許容できないことがわかった。その理由は、鋼鉄から溶解する鉄カチオンが最終的に加工組成物中に蓄積され、これらの連続使用に適さないものにしてしまうためである。
【0006】
さらに最近は、米国特許出願公報第2004−0226629A1号が、金属基板上に、化成潤滑複合被膜を形成するための組成物を開示した。この組成物は、脂肪族炭化水素成分が18又はそれ以上の炭素原子を含有するオキシエチル化脂肪族アルコールと、溶解したリン酸イオンとを含むものである。この化成潤滑複合被膜は、加熱されたリン酸化成浴中で生成される。この組成物及び方法の1つの欠点は、化成被膜の形成中に、鉄の溶解に起因して浴中にスラッジを発生することであった。浴中の鉄は、リン酸鉄粒子を生成した。使用中に、粒子濃度は、最終的に粒子が潤滑性被膜中に取り込まれる濃度に達し、その結果仕掛り加工物にかじりきずと掻き傷とが発生した。
【0007】
本出願人は、金属基体が被覆浴から取り出されるまで、金属基体と被膜組成物との不動態化反応のほとんどを遅らせることにより、これらの先行技術の化成被膜/潤滑剤浴の欠点を克服した。
【0008】
本発明の主な目的は、リン酸塩化成コーティングを用いて、引続き亜鉛石鹸塗布を施す先行技術と比較したとき、冷間成形において一般的に使用されている他の単一工程潤滑剤に適切な冷間加工性能を十分に達成して、上記の環境的及びその他の不便を排除又は少なくとも低減させる潤滑剤及び方法を提供することである。他の、上記とは別に、又は並行する目的は、特に、冷間加工される対象物の、プロセス関連の損耗、さらに詳しくは表面引っかき傷のある表面を不合格にすることによる損耗を低減させることにより、及び/又は成形操作に必要な加圧トン数の低下を達成することにより、冷間成形操作の総エネルギー及び/又は他のコストを低減させることである。さらに他の、上記とは別の、又は並行する目的は、現在の工業的実施のより厳しい条件下での押出し加工に、満足できる潤滑剤を提供することである。
【0009】
特許請求の範囲と実施例中の、又は特に明示される場合を除いて、本明細書中の物質の量又は反応及び/もしくは使用の条件を示すすべての数値は、本発明の広い範囲を示す単語「約」により修飾されることを理解されたい。一般的には、記載の数値限界内の実施が好ましい。また本説明を通して特に明記しない場合は、パーセント、「部」、及び比率の値は、質量によるものである;用語「ポリマー」は、「オリゴマー」、「コポリマー」、「ターポリマー」などを包含する;本発明に関連してある目的に適した又は好適な物質の群(グループ)もしくは類(クラス)の記載は、その群もしくは類の任意の2つまたはそれ以上のメンバーの混合物が同等に適しているか、又は好ましいことを意味する;化学用語中の構成成分の記載は、明細書中に記載されたいずれかの組合せへの添加の時における構成成分、又は明細書中に特定された化学反応によるその場での生成時の構成成分を意味し、かついったん混合した混合物の構成成分間の他の化学反応を必ずしも排除しない;イオン型の物質の特定は、全体として組成物の電気的中性を作り出すために充分な対イオンの存在を追加的に暗示する(こうして暗示的に特定されたいずれの対イオンも、好ましくはできるだけイオン型で明示的に特定される他の成分から選択される;そうでない場合、かかるイオンは、本発明の目的に反して作用する対イオンを避ける以外は、自由に選択される);用語「モル」及びその文法的変化型は、元素、イオン、及び存在する原子の数及びタイプにより規定される他の化学種、ならびに充分な規定された分子を有する化合物に適用される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、実質的に、もしくは完全に、ジチオカルバメートを含まず、水、リン酸塩、及び/又はリン酸;有機ポリマー及び/又はワックス分散物;及び必要により、耐摩耗性添加剤、増粘補助剤、界面活性剤、及び消泡剤を含む、潤滑剤組成物を提供することである。この組成物は、処理浴又は水で希釈することにより処理浴を生成する濃縮物であってもよい。
【0011】
本発明のさらなる目的は、下記成分:
A)少なくとも1種の有機ポリマー及び/又はワックス分散物;
B)少なくとも1種のリン酸塩及び/又はリン酸;
C)必要により、少なくとも1種の界面活性剤;
D)必要により、少なくとも1種の増粘補助剤;
E)必要により、少なくとも1種の耐摩耗性添加剤;
F)必要により、少なくとも1種の消泡剤;
G)必要により、少なくとも1種の腐食抑制剤;及び
H)必要により、A)とは異なる少なくとも1種の液状の直鎖状もしくは分岐鎖状炭化水素;
を含み、前記(A)と(B)の質量比は約10〜約0.1の範囲内にある水性液体組成物を提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、下記成分:
A)乾燥固体ベースで2〜15質量%のポリエチレン分散物;
B)2〜20質量%の酸性リン酸塩;
C)0.1〜1.0質量%の界面活性剤;
D)0.5〜1.0質量%のセルロース性増粘剤;
E)0.0〜4.0質量%の黒鉛、及び/又は0.0〜2.0質量%のMoS2;
F)0.0〜1.0質量%の消泡剤、
を含む水性液体潤滑剤組成物を提供することである:
【0013】
本発明のさらなる目的は、(H)1.0〜10.0質量%の液体脂肪族炭化水素を含む水性液体組成物を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、前記(B)成分が第一リン酸アンモニウムと第一リン酸ナトリウムの少なくとも1種を含む水性液体組成物を提供することである。
【0015】
本発明のさらなる目的は、基体への組成物の均一な塗布を促進するのに有効な量の界面活性剤を含む水性液体組成物を提供することである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、金属被加工物と上記の潤滑剤組成物との反応生成物を含む、金属被加工物上の乾燥膜潤滑剤を提供することである。
【0017】
本発明のさらなる目的は、a)乾燥されている上記の潤滑剤組成物の;及び/又はb)潤滑剤組成物と被加工物の成分から選択される少なくとも1種の物質との反応生成物の、被膜を有する金属被加工物を含む仕掛り品(blank)を提供することである。
【0018】
本発明のさらなる目的は、潤滑性被膜を作成する方法であって:
− 仕掛り金属被加工物に、周囲温度で被加工物上に化成被膜を形成しない潤滑剤組成物を接触させ、
− 被覆金属被加工物を乾燥又は加工する(ここで被覆金属被加工物は、潤滑剤組成物の成分が被加工物の金属表面と反応して、不動態化リン酸塩被膜と乾燥膜潤滑剤を形成する)ことを含む方法を提供することである。
【0019】
本発明のさらなる目的は、組成物が接触される金属基体上に複合不動態化・潤滑性被覆層を形成する方法であって、金属基体を、本発明の組成物により、周囲温度において被覆し、金属基体上の組成物を乾燥して、乾燥中に金属基体上に不動態化被膜が形成されるようにすることを含んでなる方法を提供することである。この方法は、約76.7〜121.1℃(約170〜250°F)の温度で組成物を加熱して、組成物の乾燥を促進し、非揮発性成分と金属基体との化学反応を促進することを含む。
【0020】
本発明の別の目的は、その上に不動態化膜を有する成形金属被加工物と、これを製造する方法を提供することであり、この不動態化膜は、
A)仕掛り金属被加工物を、実質的にもしくは完全にジチオカルバメートを含まず、水、リン酸塩、及び/又はリン酸;有機ポリマー及び/又はワックス分散物;及び必要により加えられた耐摩耗性添加剤、増粘補助剤、界面活性剤、及び消泡剤を含む潤滑剤組成物により、周囲温度(4.4〜37.8℃、40〜100°F)において被覆し;
B)前記仕掛り金属被加工物上の潤滑剤組成物を乾燥して、乾燥膜潤滑剤をその上に形成し;
C)前記仕掛り金属被加工物を成形し、その上に不動態化膜を有する成形金属加工製品を作成する、ことにより製造される。
【0021】
本発明の別の目的は、その上に不動態化膜を有する成形金属加工製品と、これを製造する方法を提供することであり、前記不動態化膜は、工程A)後又は成形工程C)により、被加工物を加熱することにより作成される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本出願人は、冷間成形の前に塗布されたとき、成形物品の表面上に、不動態化膜、すなわち被覆浴から取り出した後に、実質的に完全に形成される膜をとどめる潤滑性被膜形成性液体被膜組成物を発見した。本明細書において「実質的に完全に形成される」とは、好ましさが増大する順に、少なくとも50、60、70、80、90、95、98、又は100質量%の不動態化膜が、処理浴から被加工物を取り出した後に、形成されることを意味する。
【0023】
この潤滑性被膜は、好ましくは、実質的にもしくは完全に、ジチオカルバメートを含まず、水、リン酸塩、及び/又はリン酸;有機ポリマー及び/又はワックス分散物を含む潤滑剤組成物の水溶液もしくは水性分散液中に、金属被加工物を浸漬し;次に乾燥することにより形成される。本出願人はまた、前記水溶液又は分散液が耐摩耗剤、例えば黒鉛及び/又はMoS2を含む時、特に優れた潤滑性能が付与されることを発見した。
【0024】
本発明の実施態様は、金属表面を直接処理するのに適した液体処理組成物、前記処理組成物を乾燥することにより形成される乾燥固体潤滑性被膜、前記形成前後の固体潤滑性被膜を担持する金属加工物、濃縮組成物(それから水で希釈及び/又は他の濃縮組成物と混合することにより処理組成物を形成できる)と、本発明の乾燥組成物により潤滑化される潤滑化金属プラスチック処理方法、及びプラスチック冷間加工用の金属対象物品を、本発明に係る液体処理組成物を、前記金属対象物上に塗布し乾燥することによって、製造する方法を包含する。
【0025】
本発明の水性潤滑剤組成物は下記成分:
A)有機ポリマー及び/又はワックス分散物;
B)リン酸塩、好ましくは酸性リン酸塩、及び/又はリン酸;
C)必要により、界面活性剤;
D)必要により、増粘補助剤;
E)必要により、耐摩耗性添加剤;
F)必要により、消泡剤;
G)必要により、腐食抑制剤;及び
H)必要により、直鎖または分岐鎖炭化水素
を含むものである。
【0026】
一実施態様において水性液体組成物は下記成分:
乾燥固体ベースで2〜15質量%のポリエチレン分散物;
合計で2〜20質量%のリン酸塩、但し前記合計は、下記:
0〜10質量%のリン酸1アンモニウム;
0〜10質量%のリン酸1ナトリウム;
のいずれか1方又は両方を含み、
平均4〜8モルのエチレンオキシドを有する0.1〜1.0質量%のC9-11界面活性剤;
0.5〜1.0質量%のセルロース性増粘剤;
0.0〜4.0質量%の黒鉛、
0.0〜2.0質量%のMoS2
0.0〜1.0質量%の消泡剤
を含むものである。
【0027】
他の一実施態様において、潤滑剤組成物はさらに、C9-11界面活性剤とは異なる0.1〜2.0質量%の第2の界面活性剤、好ましくは別のアルコキシル化アルコール、最も好ましくは平均2〜6モルのエチレンオキシドを有するC12-18界面活性剤を含む。別の実施態様において潤滑剤組成物はさらに、1.0〜10.0質量%の液体脂肪族炭化水素を含む。
【0028】
本発明の潤滑剤組成物における使用に適した有機ポリマー(A)は、ポリエチレン分散物、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリルポリマー、酢酸ビニルポリマー、エポキシポリマー、ウレタンポリマー、及びフェノール性ポリマーである。適切なポリマーは、冷間成形操作中の酸化に対して安定である。ポリエチレン分散物は、他の有機ポリマーとは異なり、酸化的に不安定な基(例えば、ケトン基、アルデヒド基、カルボキシル基、エーテル結合、エステル結合、及び非芳香族性不飽和基)を含まないのであって好ましいものである。有機ポリマー(A)は水溶性又は水分散性でもよい。処理溶液中に存在するポリマーの量は、乾燥固体ベースで、好ましさが増大する順に、少なくとも2、3、4、5、6、7質量%であり、経済的には、少なくとも12、13、14、15、18、20、25質量%以下であることが好ましい。好適な実施態様において、前記ポリマー(A)の量は、約4質量%〜約12質量%である。好ましくはポリマー(A)は周囲温度で固体であり、好ましさが増大する順に、少なくとも100、110、115、120、125、130℃の融点を有する。
【0029】
前記潤滑剤組成物中のリン酸塩(B)は、得られる塩が処理浴中で充分に可溶性であり、組成物の性能に悪影響を与えない限り、1価又は2価金属のいかなるリン酸塩由来のものでもよい。アルカリ金属とアルカリ土類金属の酸性リン酸塩が好ましいが、上記要件を満足する遷移金属の酸性塩も好適である。別の実施態様において、遷移金属の酸性塩は使用されない。ある実施態様においてリン酸の酸性アンモニウム酸塩は、単独もしくは組合せ、例えば、第一リン酸アンモニウム塩及び第一リン酸ナトリウム塩などが使用される。
【0030】
あるいはリン酸塩は、リン酸と、リン酸塩形成用カチオンの1種以上の供給源とを組合せて使用して、処理浴中で生成させてもよい。前記リン酸塩の金属カチオンの供給源として作用する物質が、潤滑剤組成物の性能に有害ではないか、又は、例えば蒸発もしくは沈殿により組成物から容易に除去される陰イオンを含むことが望ましい。リン酸塩のカチオンの適切な供給源の例には、NaOHとNH4OHが包含される。
【0031】
水性潤滑剤組成物中のリン酸塩の総量は、約2.0質量%から、使用されるリン酸塩の溶解度限界までの範囲内にあることが望ましい。水性潤滑剤組成物中のリン酸塩の前記総量は、好ましさが増大する順に、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10質量%であり、35、30、20質量%以下であることが望ましい。少なくとも経済的には、乾燥された潤滑性被膜中の総リン酸塩含量は75質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは50質量%以下である。本発明の好適な実施態様において、リン酸塩は、リン酸2水素アンモニウム、及びアルカリ金属リン酸塩(例えばリン酸2水素ナトリウム)又はこれらの混合物よりなる群から選択される。ある実施態様において、前記混合物は、5〜10質量%のリン酸2水素アンモニウム及び2〜5質量%のアルカリ金属リン酸塩を含むものである。
【0032】
上記事項とは独立に、(A)の(B)に対する比は、好ましさの順に、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.0、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、又は0.1であることが好ましい。
【0033】
ある実施態様において、前記潤滑剤組成物は、少なくとも1種の界面活性剤(C)を含み、この界面活性剤は、前記潤滑剤組成物中の、すべての非水溶性成分の分散を安定化するのに充分な量で存在する。好適な界面活性剤には、非イオン性及び/又はイオン性界面活性剤を包含し、1つの好適な例としては、アルコキシル化脂肪族アルコールであり、これは水溶性又は水分散性であることが好ましい。本発明の目的のためには、前記アルコキシル化アルコールは、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、又はブチレンオキシド(これらに特に限定されない)のようなエポキシドの1モル又はそれ以上と反応してポリエーテルアルコールを与えるアルコールを意味することは、当業者により理解されるであろう。特に明記しない場合は、前記アルコキシレートの末端官能基はアルコール官能基、すなわち−OHである。前記界面活性剤は、好ましさが増大する順に、少なくとも2、3、4、5モルのアルコキシ化、及び好ましさが上昇する順序で18、12、10モル以下のアルコキシ化を含むことが望ましい。エチレンオキシドは、前記アルコキシレートとして好ましいが、プロピレンオキシドは、前記界面活性剤の性能を妨害しない程度に使用される。前記アルコキシル化脂肪族アルコール分子の脂肪族部分は、好ましさが増大する順に、少なくとも3、5、7、9個の平均炭素原子数、を有することが好ましく、また好ましさが増大する順に、18、15、13、11個以下の炭素原子を有することが望ましい。この少なくとも1種の界面活性剤が、式I:
(Cn2n+1)O(C24O)m
(但し式中、n=9、10、11、12、13、14、又は15;かつm=2、3、4、5、6、7、8、9又は10である)に対応する分子を含むことが望ましい。
【0034】
好適な一実施態様においては、少なくとも1種の界面活性剤が、式II:
(Cn2n+1)O(C24O)6
(但し式中、n=9、10、11である)に対応するアルコールから選択された分子を含むものである。別の実施態様においては、複数のアルコキシル化脂肪族アルコール界面活性剤の組合せが使用され、ここではn=9、10、11、12、13、14、又は15;かつm=2、3、4、5、6、7、又は8である。
【0035】
潤滑剤組成物の必用により加えられる成分には、耐摩耗性添加剤(D)、例えばMoS2及び黒鉛など(但し、これらに限定されない);増粘補助剤(E)、例えば当該分野で公知のセルロース性増粘剤が含まれる。他の必要により加えられる成分には、当該分野で既知の消泡剤(F)及び腐食抑制剤(G)が含まれる。エトキシ化アルコールを含有する水性組成物は、時に、それに曝露された金属表面に、しみをつけるか、又はこれを変色させる。これが望ましくない場合は、処理組成物中に適切な腐食抑制剤を、必要により加える成分(G)として、含めることにより前記現象を防止することができる。
【0036】
ある実施態様において、前記潤滑剤組成物は、粘度範囲が5〜1000センチポアズで、融点が70℃未満の直鎖状または分岐鎖状の炭化水素(H)を含有する。前記融点は、炭化水素が周囲温度で液体であるような温度であることが好ましい。このような炭化水素の好適な例は、引火点が100℃より高いものであり、それはポリアルファオレフィン、不飽和炭化水素のポリマー、及びミネラル油を包含する。
【0037】
本発明の処理用水性組成物中の、成分(H)の濃度は、好ましさが増大する順に、組成物の少なくとも0.5、1.0、2.0、2.5、2.9、3.3、3.7、4.1、4.4、4.6、又は4.8%であることが好ましい。成分(H)の濃度が20質量%の高濃度である場合の技術的欠点は知られていないが、経済的には、成分(H)の濃度は、前記好適な最小濃度とは独立に、好ましさが増大する順に組成物の13、11,9.5、8.5、8.0、7.6、又は7.3%以下であることが好ましい。それとは独立に、(A)の(H)に対する比は、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.0、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、又は0.1であることが好ましい。成分(H)の濃度が低すぎる場合、形成される被膜は、厳しい冷間成形操作に要求される充分な潤滑性と可塑性を欠くことがある。
【0038】
前記処理溶液は、被加工物の溶蝕と腐食のリスクを制限するように、少なくとも約3.0のpHを有し、好ましさが増大する順に、約7.5、7.0、6.5、6.0、5.5、5.0、4.5、4.0以下のpHを有することが好ましい。所望の範囲内のpH値に達するために、他の成分のほとんど又はすべてがそこに混合された後に、酸又は塩基を組成物に加えてもよい。酸性化剤が必要な場合には、上記の最大の好適な総リン酸塩陰イオン濃度を超えることなく、所望の範囲内にpHを調節するのに充分な量で加えられることができるなら、一般にリン酸が好適である。アルカリ化剤が必要な場合、面倒になる可能性のある成分を組成物に導入することのない最も安価な選択物として水酸化ナトリウムが通常好適であるが、本発明の目的を妨害しない任意の適切なアルカリ化剤を使用することができる。
【0039】
本発明の水性処理組成物又は濃縮組成物中の必要成分、好適な成分、及び必要により加える成分の絶対濃度は、決して狭く限定されず、その主要な成分の好適な濃度は、主に処理組成物及び濃縮組成物の両方の粘度により決定される。濃縮組成物では、非揮発性成分の濃度は、その容器から濃縮物を取り出し、濃縮物組成物を水及び時に他の物質と混合して処理組成物を形成するのに利用できる装置により、有効に利用できるように、できるだけ高いことが好ましい。処理組成物自体の好適な粘度は、少なくとも一時的に接着性液体膜を処理組成物で被覆された基板上に形成し、それが乾燥されたとき好適な量の非揮発性潤滑性成分を含有するような粘度である。これらの前記好適な量は、基板の正確な選択と冷間加工条件により大きく変動するが、当業者により最小の実験で容易に決定することができる。本明細書に記載の好適な数値は、ほとんどの使用において修正されるべきであって、特別な使用のための一般的ガイドラインとみなすべきものである。
【0040】
本発明の潤滑剤組成物は、ジチオカルバメートを実質的に又は完全に、含まないことが好ましい。前記実質的に含まないとは、本発明の組成物が、好ましさが増大する順に、0.50、0.40、0.30、0.20、0.10、0.001、0.0001g/l未満のジチオカルバメートを含むことを意味する。本発明の組成物にジチオカルバメートの意図的な添加は行われないことが好ましいが、持ち出し(drag-out)又は他の供給源からの混入レベルは本発明の範囲内にある。本出願人は、この添加剤は不必要であり、製造に費用がかさみ、組成物の性能に有害である可能性があることを見いだした。
【0041】
種々の理由(たいていの場合、不要な成分の排除による少なくともコスト節約を含む)により、本発明の組成物は、先行技術の組成物でしばしば使用される種々の物質をほとんど含まないことが好ましい。特に本発明の組成物は多くの場合、(i)化学反応によって、自然(必然的に)に存在する型から修飾されていない天然起源の脂肪油、(ii)亜鉛カチオン、(iii)カルシウムカチオン、(iv)マグネシウムカチオン、(v)6価クロム、(vi)ニッケルカチオン、(vii)コバルトカチオン、(viii)銅カチオン、(ix)任意のイオン形状のマンガン、及び(x)スチレン成分とマレイン酸成分とのコポリマー、のそれぞれを、好ましさが増大する順に、かつ記載された成分の各々について互に独立した好ましさで、5、4、3、2、1、0.5、0.25、0.12、0.06、0.03、0.015、0.007、0.003、0.001、0.0005、0.0002、又は0.0001%より多く含まないことが好ましい。しかし本パラグラフに記載されるすべての好ましさは、本発明の組成物の必要な成分、好適な成分、又は必要により加える成分としての本明細書の具体的な物質の明示的記載に従うものであり、従って必要な成分、好適な成分、又は必要により加える成分として具体的に記載される物質は、それが、先に本パラグラフで好ましくないとした大きな分類に属するメンバーであっても、本発明の組成物中に存在していてもよい。
【0042】
前記潤滑性被膜を沈着させる方法は、金属基体に、本発明の潤滑剤組成物を、選定時間にわたり接触させ、必要により、前記金属基体上の組成物を乾燥し、そして、前記金属基体を成形操作に付すことを含む。本発明による処理の前に、前記金属基体表面は、好ましくは、それぞれのタイプの基板について当該分野でよく知られている方法で、従来のように洗浄され、酸洗され、及び/又は水洗される。
【0043】
本発明の被膜組成物は好ましくは、本発明の方法で金属基体を被覆する時間中、周囲温度に維持される。具体的には、前記被膜組成物は、好ましさが増大する順に、少なくとも35、40、45、50、55、60、65、70°Fの温度であることが好ましく、これとは独立に、好ましさが増大する順に、100、95、90、85、80、又は75℃以下の温度であることが好ましい。これとは独立に、本発明方法による処理中の基体は、本発明の組成物と少なくとも0.5、1.0、1.5、又は2.0分(以後通常通り「分」と略す)、接触することが好ましくまたこれとは独立に、少なくとも経済性のために、15、10、7、5、又は3分以下の時間だけ接触することが好ましい。
【0044】
次に前記金属基体は処理浴から取り出され、通常は乾燥可能にされる。この乾燥は、冷間成形摩擦により発生する熱により、又は外部加熱、例えばオーブン乾燥、により、前記被覆基体を加熱することにより促進されることが好ましい。前記乾燥工程は被膜から水及び他の揮発性物質を除去し、金属表面でより酸性のリン酸塩を生成し、薄い不動態化被膜を生成すると考えられるが、この説に拘泥するつもりはない。こうして、先行技術の水性非反応性潤滑剤で被覆された金属基体の乾燥における瞬時の発錆(flash rusting)の欠点が避けられる。
【0045】
一般に、乾燥工程を加速し、処理組成物の非揮発性成分と、金属基体との間の好ましい化学的相互作用を促進するためには、この液体被膜の乾燥中又はその後に、本発明の方法で形成された液体被覆を熱に曝露することが好ましい。前記被膜が曝露される最高温度は、好ましさが増大する順に、30、40、50、60、70、80、90、又は100℃以上であることが好ましく、これとは独立に、好ましさが増大する順に、180、160、150、140、130、又は120℃以下であることが好ましい。上記事項とは独立に、組成物中の有機ポリマーの融点は、成分(A)の最も好ましい例においては、約130℃を超えるべきではない。前記被膜が、これを乾燥するのに使用される最高温度に曝露される時間は、好ましさが増大する順に、3、5、7、10、12、14、16、17、18、19、又は20分以上であることが好ましく、これとは、独立に、好ましさが増大する順に、90、80、70、60、55、50、又は45分以下であることが好ましい。
【0046】
本発明の組成物の、被膜面密度(specific areal density、しばしば“add-on weight又はmassとも呼ばれる)は、本発明の液体組成物を金属表面に塗布し、乾燥して、前記液体被覆処理された金属表面上に、塗布された液体被覆の固形成分を載置した後において、好ましさが増大する順に、表面積1平方メートル当たり(面密度又はadd-on質量の単位は以後「g/m2」と略記する)、少なくとも5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、9.5、10、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.4、13.7、14.0、又は15.0グラムであることが好ましく、これとは独立に、好ましさが増大する順に、50、45、40、35、30、25、20、20g/m2以下であることが好ましい。潤滑剤の被覆質量は、被覆基体を計量し、界面活性剤の水溶液とソフトブラシの助けを借りて基体から潤滑剤被膜を除去し、次に水洗し、乾燥し、再計量して、除去された潤滑剤の質量を測定することによってのみ決定することができる。次に除去された質量を、表面から被覆層が除去された面積により割って被膜質量に変換する。
【0047】
上記とは独立に、かつ前段落で記載したように測定した潤滑剤の被覆質量に加えて、本発明の方法において、被覆された基体は、好ましくは、約0.001mg/m2〜約1000mg/m2の範囲のリン酸塩不動態化被膜の被覆質量を有することが好ましい。リン酸塩不動態化被覆質量は、当該分野で既に知られているように、クロム酸水溶液中で不動態化被覆層をはがすことにより、潤滑性被膜を試験基板から除去した後には、その質量が低いために、測定がやや困難なことがある。一般に、不動態化被膜の存在の証拠は、成形された部品の、瞬時の発錆に対する抵抗性が認められることにある。
【0048】
不動態化被膜又は潤滑性被膜の被覆質量が小さすぎる時、形成される被膜は、厳しい冷間加工中のかじりきず(galling)、かみつき(seizing)などを防ぐのに充分な潤滑性を与えないと思われる。不動態化被膜又は特に潤滑性被膜の被覆質量が大きすぎる場合には、当該分野で既知の2つの好ましくない現象(洗浄流出(wash out)と潤滑被膜切れ(lube burst))の少なくとも1つが発生する危険が実質的に上昇すると思われる。前記洗浄流出により、小さい曲率半径を有する外部表面の部分、例えば押印識別マーク、又はテーパーの2つの異なる角度間の鋭い変り目、は、冷間加工後には、所望のような特性を維持していない。潤滑被膜切れにより、引き延ばし方向に少なくともほぼ直角の方向に引き延ばさ、潤滑された表面上にひっかき傷が見られるが、一方ひっかき傷が潤滑が不充分な表面に現れる場合、ひっかき傷は引き延ばし方向に少なくともほぼ並行に現われる。
【0049】
本発明の実施は下記の非限定的実施例を参照してさらに理解され、本発明の利点は比較例を参照することにより、さらに理解されるであろう。
【実施例】
【0050】
試験法:円筒形の鋼板仕掛り品を処理溶液中に約1分間浸漬した。次にその表面に処理溶液が付着している仕掛り品を約100℃の温度で約30分間乾燥した。次にこの部品を冷間成形に付した。性能基準は、金型のトン数と押出し後の部品の外観であった。
【0051】
実施例1
本発明の潤滑剤組成物を使用して、80%、90%、及び原液の3つの希釈レベル(各15個)において、合計45部を、上記試験法に従って、前記原液希釈レベルにおいて下記のように測定した。
【表1】

【0052】
比較例1
2〜8%(w/v)のポリリン酸塩、2〜5%(w/v)のジチオカルバメート、5〜12%(w/v)の黒鉛、及び5〜12%(w/v)の二硫化モリブデンを含有する、市場において入手可能なジチオカルバメート含有潤滑剤の処理溶液を用いて、実施例1と同じ部品を上記試験法に供した。成形工程には、151.5トン/ブランクのプレスによる平均出力を要した。
【0053】
実施例1の被覆部品についての成形操作は、仕掛り品当り下記の平均出力が必要であった:100%の場合、147.3トン、90%の場合、147.7トン、及び80%の場合、148.5トン。実施例1の潤滑剤組成物は、市販のジチオカルバメート含有潤滑剤よりも平均4トン少ない処理を可能とした。実施例1の成形後の部品の外観は許容できるものであった。これらは先行技術の被覆部品と同様の外観を有し、鏡面仕上を有し、表面にほとんど全く残渣が存在しなかった。
【0054】
実施例2
試験法:48個の鍛造プレ成形炭素鋼の自動車車軸仕掛り品を、本発明の被膜組成物中に、また表2に記載の各組成物中には、24個の仕掛り品を、それぞれ約1分間浸漬した。次に、表面に前記処理溶液層が付着している仕掛り品を、約100℃の温度で、約30分間乾燥した。次に前記自動車車軸仕掛り品を、100〜200トンの水圧シューラープレスにかけた。4つの金型トランスファープレスは、4つの金型のそれぞれで被加工物を連続的に成形することにより、約25%の直径減少が起きた。潤滑化していない部品が、これらの金型に張り付くことは既知であった。性能基準は、金型のトン数、押出し後の部分の外観、及び金型上の残渣の蓄積であった。
【表2】

【0055】
被覆と乾燥後の部品の外観は、処方1により形成した乾燥膜潤滑剤層にひびわれ(mudcraking)と一部のはげ落ち(flak-out)とこれらの表面上に残った、さびの無い不動態化被膜を示した。処方2においては、乾燥後、ひびわれとはげ落ちはより少ないことが認められた。大部分の部品においては、押出し後の外観は満足できるものであり、2つの処方の間では、同等であった。
【0056】
処方2は、処方1に対して約5%の金型のトン数の改善を示し、金型上の硬い残渣の蓄積はより少なく、成形部品のひっかき傷又はかじりきずはなかった。硬い残渣の蓄積は、成形部品のかじりきず、並びに金型の焼き付き及び摩耗とがあり得るのであるから、長期的に見れば問題である。
【0057】
実施例3
表2の処方2を使用して、実施例2の方法に従って140,000個の車軸を冷間成形した。この数の車軸(560,000回の成形工程数になる)は、金型中に、過度の硬い金型残渣の蓄積無しで行われた。成形後の部品の外観は満足できるものであり、鏡面仕上を有し、表面にほとんど全く残渣は存在しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分:
A)少なくとも1種の有機ポリマー及び/又はワックス分散物;
B)少なくとも1種のリン酸塩及び/又はリン酸;
C)必要により、少なくとも1種の界面活性剤;
D)必要により、少なくとも1種の増粘補助剤;
E)必要により、少なくとも1種の耐摩耗性添加剤;
F)必要により、少なくとも1種の消泡剤;
G)必要により、少なくとも1種の腐食抑制剤;及び
H)必要により、A)とは異なる少なくとも1種の、液状の直鎖状もしくは分岐鎖状炭化水素;
を含み、(A)と(B)の質量比が約10〜約0.1の範囲内にある
水性液体潤滑剤組成物。
【請求項2】
下記成分:
A)乾燥固体ベースで2〜15質量%のポリエチレン分散物;
B)2〜20質量%の酸性リン酸塩;
C)0.1〜1.0質量%の界面活性剤;
D)0.5〜1.0質量%のセルロース性増粘剤;
E)0.0〜4.0質量%の黒鉛、及び/又は0.0〜2.0質量%のMoS2;
F)0.0〜1.0質量%の消泡剤
を含む請求項1に記載の水性液体潤滑剤組成物。
【請求項3】
(H)1.0〜10.0質量%の液体脂肪族炭化水素をさらに含む、請求項1に記載の水性液体潤滑剤組成物。
【請求項4】
前記成分(B)が第一リン酸アンモニウムと第一リン酸ナトリウムの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の水性液体潤滑剤組成物。
【請求項5】
前記組成物の、基体への均一な塗布を促進するのに有効な量の界面活性剤を含む、請求項1に記載の水性液体潤滑剤組成物。
【請求項6】
金属基体上に請求項1に記載の組成物を接触させて複合不動態化・潤滑性被覆層を形成する方法であって、金属基体を前記組成物によって、周囲温度において被覆し、前記金属基体上の前記組成物を乾燥して、乾燥中に金属基板上に不動態化被覆層が形成されるようにすることを含む、複合不動態化・潤滑被覆層形成方法。
【請求項7】
約76.7〜121.1℃(約170〜250°F)の温度で組成物を加熱して組成物の乾燥を促進し、非揮発性成分と金属基体との化学反応を促進することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法により作成された、不動態化・潤滑性被覆層をその上に有する金属基体。
【請求項9】
下記工程:
A)仕掛り金属被加工物を請求項1に記載の潤滑剤組成物で、4.4〜37.8℃(40〜100°F)で被覆し;
B)前記仕掛り金属被加工物上の潤滑剤組成物を乾燥して、乾燥膜潤滑剤を前記ブランク金属被加工物上に形成し;
C)前記仕掛り金属被加工物を成形し、それによって、その上に不動態化被膜を有する成形金属加工製品を作成する、ことを含む、不動態化被膜を有する成形金属加工製品を製造する方法。
【請求項10】
前記不動態化被膜は、前記工程A)の後に前記被加工物を加熱するか、又は成形工程C)により作成される、請求項9に記載の方法。

【公表番号】特表2011−503325(P2011−503325A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534053(P2010−534053)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/012861
【国際公開番号】WO2009/064502
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000229597)日本パーカライジング株式会社 (198)
【Fターム(参考)】