乾燥装置及びインクジェット記録装置
【課題】簡単な構成で擦れを防止して、用紙を乾燥処理することができる乾燥装置及びインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】インク乾燥ドラム51によって搬送される用紙12に対して、送風装置52から温風を吹き当てて、用紙を乾燥処理する。送風装置52の吹出口53には、接触ガード300が取り付けられる。接触ガード300は、コロ304と、羽根車306を備え、羽根車306を吹出口53から吹き出される温風で回転させて、コロ304を用紙の搬送速度と同じ速度で回転させる。これにより、用紙がコロ304に接触したときに、コロ304がスリップするのを防止でき、擦れによる画像の傷を防止できる。
【解決手段】インク乾燥ドラム51によって搬送される用紙12に対して、送風装置52から温風を吹き当てて、用紙を乾燥処理する。送風装置52の吹出口53には、接触ガード300が取り付けられる。接触ガード300は、コロ304と、羽根車306を備え、羽根車306を吹出口53から吹き出される温風で回転させて、コロ304を用紙の搬送速度と同じ速度で回転させる。これにより、用紙がコロ304に接触したときに、コロ304がスリップするのを防止でき、擦れによる画像の傷を防止できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥装置及びインクジェット記録装置に係り、特にドラム搬送される用紙に温風を吹き当てて乾燥処理する乾燥装置及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
汎用の印刷用紙に水性インクを用いてインクジェット方式で印刷するインクジェット印刷機では、コックリング等の発生を防止するため、印刷直後に乾燥処理が行われる。印刷後の乾燥処理は、たとえば、用紙の印刷面に温風を吹き当てることにより行われる。しかし、搬送中の用紙に温風を吹き当てると、気流の影響で用紙が浮き上がることがあり、この結果、印刷面がフレーム等に擦れて、画像が傷つくという問題がある。特に、用紙の先端のみを把持してドラム搬送する場合には、フリーな後端部が浮きやすいという問題がある。この場合、用紙をドラムに吸着保持して搬送することも考えられるが、用紙の吸着保持機構をドラムに組み込むと、装置構成が大型化かつ複雑化するという欠点がある。
【0003】
一方、特許文献1から3には、印刷面が触れそうな場所に回転自在なコロを配置して、印刷面の擦れを防止する技術が記載されている(特許文献1〜3など)。しかし、この場合、コロがスリップすると、画像が擦れてしまうという問題がある。そこで、特許文献4では、モータでコロを用紙と同じ速度で回転させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−106345号公報
【特許文献2】特開2004−122609号公報
【特許文献3】特開2010−69786号公報
【特許文献4】特開2007−152739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように、用紙を吸着保持して搬送する構成では、搬送機構が大型化かつ複雑化するという欠点がある。
【0006】
一方、特許文献4のように、印刷面が擦れる場所にコロを配置し、モータで回転させる構成では、コロのための駆動源が別途必要になるという欠点がある。また、複数個所にコロを設置する場合には、そのコロの設置場所ごとに駆動源が必要になるという欠点もある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、簡単な構成で擦れを防止して、用紙を乾燥処理することができる乾燥装置及びインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決するための手段は、以下のとおりである。
【0009】
[1]乾燥装置の第1の態様は、液体が付与された用紙を乾燥処理する乾燥装置において、回転するドラムの外周部に備えられた把持手段で前記用紙の先端を把持して、前記用紙を前記ドラムの外周に巻き掛けて搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって搬送される用紙に向けて温風を送風する送風手段と、前記ドラムの外周から所定高さの位置に回転自在に設けられ、前記送風手段による送風を受けて浮上する前記用紙を抑えるコロと、前記ドラムの回転、及び/又は、前記送風手段の送風によって前記コロを前記用紙の搬送速度とほぼ同じ速度で同方向に回転させるコロ回転駆動手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本態様の乾燥装置では、用紙の浮上を抑えるコロをドラムの回転、及び/又は、送風手段からの風力を利用して回転させる。この際、コロを用紙の搬送速度とほぼ同じ速度で同方向に回転させる。これにより、コロによって用紙が擦れるのを防止することができる。また、特別な駆動源を必要としないので、シンプルな構造とすることができるとともに、電力消費も抑えることができる。特に、複数箇所にコロを設置する場合には、簡単に設置することができるようになる。コロは、たとえば、用紙が浮上したときに、用紙の表面(液体の付与面)が擦れる場所に設置する。
【0011】
[2]乾燥装置の第2の態様は、上記第1の態様の乾燥装置において、前記送風手段は、前記ドラムの外周に近接して温風の吹出口が設けられ、前記コロは、前記送風手段による送風を受けて浮上する前記用紙が前記吹出口に接触しないように配置されることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、温風の吹出口がドラムの外周に近接して配置される。これにより、乾燥をより促進させることができる。一方、吹出口をドラムの外周に近接して配置すると、用紙が浮上しやすくなる。特に、用紙の先端部のみを把持して搬送する場合には、後端部が浮きやすくなる。そこで、コロを設置して、浮上しても、吹出口に当たらないようにする。これにより、効率よく乾燥処理を行いつつ、用紙の擦れも防止できる。
【0013】
[3]乾燥装置の第3の態様は、上記第1又は第2の態様の乾燥装置において、前記コロは、所定の幅をもって形成され、前記用紙の搬送方向と直交する方向の複数箇所に配置されることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、用紙の搬送方向と直交する方向の複数箇所にコロが配置される。これにより、用紙との接触を最小限に抑えつつ、効果的に用紙の浮きを防止することができる。コロの配置は、たとえば、用紙の幅方向の中央と両端近傍を抑えるように配置する。また、複数サイズの用紙に対応できるように、用紙の幅方向の中央から左右対称に所定の間隔で配置する。
【0015】
[4]乾燥装置の第4の態様は、上記第1から第3のいずれか1の態様の乾燥装置において、前記コロ回転駆動手段は、前記用紙の搬送速度の−10〜0%の誤差の範囲内で前記コロを回転させることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、用紙の搬送速度の−10〜0%の誤差の範囲内でコロが回転駆動される。これにより、コロを完全に用紙と同速度で回転させなくても、スリップを効果的に防止できる。すなわち、コロ側が若干遅くても、用紙が接触した場合には、その用紙にサポートされてコロも同速度で回転するため、スリップの発生を防止できる。一方、コロが用紙よりも速い場合は、コロが用紙上をスリップするおそれがある。そこで、用紙の搬送速度の−10〜0%の誤差の範囲内でコロが回転させる。これにより、設定を簡単に行うことができる。
【0017】
[5]乾燥装置の第5の態様は、上記第1から第4の態様の乾燥装置において、前記コロ回転駆動手段は、前記送風手段の送風によって回転する羽根車と、前記羽根車の回転を前記コロに伝達する回転伝達手段と、からなることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、コロ回転駆動手段が、送風手段の送風によって回転する羽根車と、羽根車の回転をコロに伝達する回転伝達手段とで構成される。これにより、特別な駆動源を用いずに、送風手段の風力を有効利用して、コロを回転させることができる。
【0019】
[6]乾燥装置の第6の態様は、上記第5の態様の乾燥装置において、前記回転伝達手段は、前記ドラムの軸と平行に設けられた回転軸であり、該回転軸に前記羽根車と前記コロとが取り付けられることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、コロと羽根車とが同軸上に配置される。これにより、構成をコンパクト化することができる。
【0021】
[7]乾燥装置の第7の態様は、上記第1から第6のいずれか1つの態様の乾燥装置において、前記コロ回転駆動手段は、前記ドラムの外周に当接して設置され、前記ドラムの回転によって回転するローラと、前記ローラの回転を前記コロに伝達する回転伝達手段と、からなることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、コロ回転駆動手段が、ドラムに接して回転するローラと、そのローラの回転をコロに伝達する回転伝達手段とで構成される。これにより、特別な駆動源を用いずに、ドラムの回転を有効利用して、コロを回転させることができる。
【0023】
[8]乾燥装置の第8の態様は、上記第1から第6のいずれか1つの態様の乾燥装置において、前記コロ回転駆動手段は、外周部が前記ドラムの外周部に近接して配置され、前記ドラムの軸と平行な軸の回りを回転する回転体と、前記回転体の回転を前記コロに伝達する回転伝達手段と、前記ドラムの外周部に一定の間隔をもって交互に配置されるとともに、前記回転体の外周部に一定の間隔をもって交互に配置されるS極とN極の磁石と、からなることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、コロ回転駆動手段が、ドラムの外周部に近接して配置された回転体と、その回転体の回転をコロに伝達する回転伝達手段と、ドラムの外周部に一定の間隔をもって交互に配置されるとともに、回転体の外周部に一定の間隔をもって交互に配置されるS極とN極の磁石とで構成される。これにより、特別な駆動源を用いずに、ドラムの回転を有効利用して、コロを回転させることができる。
【0025】
[9]乾燥装置の第9の態様は、上記第8の態様の乾燥装置において、前記回転伝達手段は、前記ドラムの軸と平行に設けられた回転軸であり、該回転軸に前記回転体と前記コロとが取り付けられることを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、回転体とコロとが同軸上に配置される。これにより、構成をコンパクト化することができる。
【0027】
[10]インクジェット記録装置の第1の態様は、上記第1から第9の態様の乾燥装置を備え、インクが付与された用紙を該乾燥装置で乾燥処理することを特徴とする。
【0028】
本態様によれば、インクが付与された用紙(描画後の用紙)が、上記第1から第9の態様の乾燥装置によって乾燥処理される。これにより、擦れを発生させることなく、用紙を乾燥処理することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、簡単な構成で擦れを防止して、用紙を乾燥処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】インクジェット記録装置の一実施態様を示す全体構成図
【図2】インクジェット記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図
【図3】インク乾燥部の構成を示す側面図
【図4】接触ガードの構成を示す側面断面図
【図5】図4の5−5矢視図
【図6】コロの配置例を示す平面図
【図7】コロの配置の他の例を示す平面図
【図8】インク乾燥部の第2の実施の形態の要部の構成を示す側面断面図
【図9】図8の9−9矢視図
【図10】インク乾燥部の第3の実施の形態の要部の要部の構成を示す側面断面図
【図11】図10の11−11矢視図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0032】
《全体構成》
図1は、本発明に係るインクジェット記録装置の一実施態様を示す全体構成図である。
【0033】
このインクジェット記録装置10は、枚葉の用紙12に水性インク(水を溶媒に含むインク)を用いてインクジェット方式で印刷する記録装置であり、主として、用紙12を給紙する給紙部20と、用紙12の印刷面(記録面)に所定の処理液を付与する処理液付与部30と、用紙12の印刷面にシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、クロ(K)の各色のインク滴をインクジェットヘッドで打滴して、カラー画像を描画する画像記録部40と、用紙12に打滴されたインク滴を乾燥させるインク乾燥部50と、用紙12に記録された画像を定着させる定着部60と、用紙12を回収する回収部70を備えて構成される。
【0034】
処理液付与部30、画像記録部40、インク乾燥部50、定着部60の各部には、それぞれ用紙12の搬送手段として、搬送ドラム31、41、51、61が備えられる。用紙12は、この搬送ドラム31、41、51、61によって、処理液付与部30、画像記録部40、インク乾燥部50、定着部60の各部を搬送される。
【0035】
各搬送ドラム31、41、51、61は、用紙幅に対応して形成され、図示しないモータに駆動されて回転する(図1において、反時計回りに回転)。各搬送ドラム31、41、51、61の周面には、グリッパ(把持手段)Gが備えられる。用紙12は、このグリッパGに先端部を把持されて搬送される。本例では、各搬送ドラム31、41、51、61の周面の2箇所に180度の間隔でグリッパGが設けられ、1回転で2枚の用紙を搬送できるように構成されている。
【0036】
処理液付与部30と画像記録部40の間、画像記録部40とインク乾燥部50の間、インク乾燥部50と定着部60の間には、それぞれ渡し胴80、90、100が配置される。用紙12は、この渡し胴80、90、100によって、各部の間を搬送される。
【0037】
各渡し胴80、90、100は、枠体で構成された渡し胴本体81、91、101と、その渡し胴本体81、91、101に備えられたグリッパGとを備えて構成される。渡し胴本体81、91、101は、用紙幅に対応して形成され、図示しないモータに駆動されて回転する(図1において、時計回りに回転)。用紙12は、グリッパGに先端部を把持されて搬送される。なお、上記搬送ドラムと同様にグリッパGは渡し胴本体の周面の2箇所に180度の間隔で設けられる。
【0038】
各渡し胴80、90、100の下部には、用紙12の搬送経路に沿って円弧状のガイド板83、93、103が配設される。渡し胴80、90、100によって搬送される用紙12は、このガイド板83、93、103に裏面(印刷面の反対側の面)をガイドされながら搬送される。
【0039】
また、各渡し胴80、90、100の内部には、渡し胴80によって搬送される用紙12に向けて温風を吹き出すドライヤ84、94、104が配置される(本例では、用紙12の搬送経路に沿って3台配置されている。)。各渡し胴80、90、100によって搬送される用紙12は、搬送される過程でドライヤ84、94、104から吹き出された温風が印刷面に吹き当てられる。
【0040】
給紙部20から給紙された用紙12は、処理液付与部30の搬送ドラム31→渡し胴80→画像記録部40の搬送ドラム41→渡し胴90→インク乾燥部50の搬送ドラム51→渡し胴100→定着部60の搬送ドラム61→回収部70へと順に受け渡される。そして、この一連の搬送過程で用紙12に所要の処理が施されて、印刷面に画像が記録される。
【0041】
なお、用紙12は、搬送ドラム31、41、51、61では、印刷面を外側にして搬送され、渡し胴80、90、100では、印刷面を内側にして搬送される。
【0042】
以下、本実施の形態のインクジェット記録装置10の各部の構成について詳説する。
【0043】
<給紙部>
給紙部20は、主として、給紙装置21と、給紙トレイ22と、渡し胴23とで構成され、枚葉の用紙12を処理液付与部30に1枚ずつ連続的に給紙する。
【0044】
給紙装置21は、図示しないマガジンにスタックされた用紙12を上側から順に1枚ずつ給紙トレイ22に給紙する。
【0045】
給紙トレイ22は、給紙装置21から給紙された用紙12を渡し胴23に向けて送り出す。
【0046】
渡し胴23は、給紙トレイ22から送り出された用紙12を受け取り、所定の搬送経路に沿って搬送して、処理液付与部30の搬送ドラム31に受け渡す。
【0047】
なお、本実施の形態のインクジェット記録装置10では、用紙12には、インクジェット専用紙ではない汎用の印刷用紙(たとえば、上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする用紙)が用いられる。
【0048】
<処理液付与部>
処理液付与部30は、用紙12の印刷面に所定の処理液を付与する。この処理液付与部30は、主として、用紙12を搬送する搬送ドラム(以下、「処理液付与ドラム」という。)31と、処理液付与ドラム31によって搬送される用紙12の印刷面に所定の処理液を付与する処理液付与装置32と、処理液付与ドラム31に付着した余剰処理液を剥離除去する剥離除去装置33で構成される。
【0049】
処理液付与ドラム31は、給紙部20の渡し胴23から用紙12を受け取り(グリッパGで用紙12の先端を把持して受け取る。)、回転して用紙12を搬送する。
【0050】
処理液付与装置32は、処理液付与ドラム31によって搬送される用紙12の印刷面にインク中の色材を凝集させる機能を有する処理液を付与する。本実施の形態のインクジェット記録装置10では、処理液をローラ塗布する塗布装置で構成され、周面に処理液が付与された塗布ローラ32Aを用紙12の表面に押圧当接させて、用紙12の印刷面に処理液を付与する。
【0051】
塗布ローラ32Aは、処理液付与ドラム31の幅に対応して形成され、処理液付与ドラム31と平行に設けられる。この塗布ローラ32Aの外周面には、供給ローラ32Bが当接される。供給ローラ32Bは、一部が図示しない処理液槽に貯留された処理液中に浸漬され、回転することにより、その外周面に処理液が付与される。供給ローラ32Bは、塗布ローラ32Aの回転に連動して回転し、これにより、その外周面に処理液が付与される。そして、この供給ローラ32Bの外周面に付与された処理液が、塗布ローラ32Aの外周面に転写されて、塗布ローラ32Aに処理液が供給される。
【0052】
処理液付与装置32は、図示しない進退移動機構によって所定の塗布位置と退避位置との間を移動自在に設けられる。処理液付与装置32が塗布位置に移動すると、塗布ローラ32Aが処理液付与ドラム31の外周面に押圧当接される。一方、処理液付与装置32が退避位置に移動すると、塗布ローラ32Aが処理液付与ドラム31から離間する。用紙12に処理液を塗布する場合は、用紙12の通過に合わせて、処理液付与装置32を塗布位置に移動させる。これにより、必要な領域にのみ処理液を付与できる。
【0053】
なお、処理液は、用紙12の印刷領域に対応して付与され、少なくとも印刷領域以上の領域に付与される。したがって、縁無し印刷する場合は、用紙幅以上の幅で付与される。
【0054】
ここで、処理液の付与幅は、供給ローラ32Bから塗布ローラ32Aに供給する処理液の供給幅を調整することにより行われる。このため、供給ローラ32Bには、塗布ローラ32Aとの当接部の上流側に供給幅を調整する機構(たとえば、供給幅に応じて両サイドの余剰分を掻き落とす機構)が設けられる。
【0055】
このような処理液を事前に付与してインクを打滴することにより、フェザリングやブリーディング等を抑止でき、高品位な印刷を行うことができる。
【0056】
剥離除去装置33は、処理液付与装置32で用紙12に処理液を付与する際に処理液付与ドラム31に付着した余剰処理液を処理液付与ドラム31から剥離除去する。すなわち、上記のように、縁無し印刷する場合は、用紙幅以上の付与幅で処理液を付与するため、処理液付与ドラム側にも処理液が付着してしまう。そこで、この処理液付与ドラム31の外周面上に存在する余剰処理液を剥離除去装置33で除去する。本例のインクジェット記録装置10では、処理液付与ドラム31の外周面にブレード33Aを当接させて、処理液付与ドラム31の外周面上に付着した余剰処理液を除去する。
【0057】
以上のように構成された処理液付与部30によれば、用紙12は処理液付与ドラム31によって所定の搬送経路を搬送される。そして、その搬送過程で処理液付与装置32から印刷面に処理液が付与される。印刷面に処理液が付与された用紙12は、その後、所定位置で処理液付与ドラム31から渡し胴80に受け渡される。そして、渡し胴80によって所定の搬送経路を搬送されて、画像記録部40の搬送ドラム41に受け渡される。
【0058】
ここで、上記のように、渡し胴80には、その内部にドライヤ84が設置されており、ガイド板83に向けて温風が吹き出されている。用紙12は、この渡し胴80によって処理液付与部30から画像記録部40に搬送される過程で印刷面に温風が吹き当てられ、乾燥処理される(付与された処理液中の溶媒成分が蒸発除去される。)。
【0059】
<画像記録部>
画像記録部40は、用紙12の印刷面にC、M、Y、Kの各色のインク滴を打滴して、用紙12の印刷面にカラー画像を描画する。この画像記録部40は、主として、用紙12を搬送する搬送ドラム(以下、「画像記録ドラム」という。)41と、画像記録ドラム41によって搬送される用紙12の印刷面を押圧して、用紙12の裏面を画像記録ドラム41の周面に密着させる用紙押さえローラ42と、用紙押さえローラ42を通過した用紙12の浮きを検出する用紙浮き検出センサ43と、用紙12にC、M、Y、Kの各色のインク滴を吐出するインクジェットヘッド44C、44M、44Y、44Kとを備えて構成される。
【0060】
画像記録ドラム41は、渡し胴80から用紙12を受け取り、回転して用紙12を搬送する。画像記録ドラム41には、図示しない吸着保持機構が備えられている。画像記録ドラム41に搬送される用紙12は、この吸着保持機構によって裏面が吸着保持された状態で搬送される。吸着保持機構は、たとえば、用紙12を真空吸着する機構や静電吸着する機構などが採用される。
【0061】
用紙押さえローラ42は、画像記録ドラム41の用紙受取位置(渡し胴80から用紙12を受け取る位置)の近傍に設置される。この用紙押さえローラ42は、所定の押圧力をもって画像記録ドラム41の周面に押圧当接させて設置される。渡し胴80から画像記録ドラム41に受け渡された用紙12は、この用紙押さえローラ42を通過することによりニップされ、裏面が画像記録ドラム41の外周面に密着される。
【0062】
用紙浮き検出センサ43は、用紙押さえローラ42を通過した用紙12の浮き(画像記録ドラム41の外周面からの一定以上の浮き)を検出する。この用紙浮き検出センサ43は、たとえば、レーザ投光器とレーザ受光器とを備えて構成される。レーザ投光器は、画像記録ドラム41の一端から他端に向けて画像記録ドラム41の軸と平行なレーザ光を画像記録ドラム41の外周面から所定高さの位置に投光する。レーザ受光器は、画像記録ドラム41を挟んでレーザ投光器と対向して配置され、レーザ投光器から投光されたレーザ光を受光する。用紙押さえローラ42を通過した用紙12に一定以上の浮きが生じていると、レーザ投光器から投光されたレーザ光が用紙12に遮られ、レーザ受光器で受光されなくなる。用紙浮き検出センサ43は、このレーザ受光器でのレーザ光の受光の有無を検出して、用紙12の浮きを検出する。
【0063】
4台のインクジェットヘッド44C、44M、44Y、44Kは、用紙浮き検出センサ43の後段に配されており、用紙12の搬送経路に沿って一定の間隔で配置されている。このインクジェットヘッド44C、44M、44Y、44Kは、用紙幅に対応したラインヘッドで構成されており、そのノズル面に形成されたノズル列から、画像記録ドラム41に向けて対応する色のインク滴を吐出する。
【0064】
以上のように構成された画像記録部40によれば、用紙12は画像記録ドラム41によって裏面を吸着保持されながら所定の搬送経路を搬送される。渡し胴80から画像記録ドラム41に受け渡された用紙12は、まず、用紙押さえローラ42でニップされて、画像記録ドラム41の外周面に密着される。次いで、用紙浮き検出センサ43によって、浮きの有無が検出され、その後、各インクジェットヘッド44C、44M、44Y、44KからC、M、Y、Kの各色のインク滴が印刷面に打滴されて、印刷面にカラー画像が描画される。
【0065】
ここで、本例のインクジェット記録装置10では、各色ともにインク中に熱可塑性樹脂が分散された水性インクが使用される。このような水性インクを用いた場合であっても、上記のように、用紙12には所定の処理液が付与されているので、フェザリングやブリーディング等を起こすことなく、高品位な印刷を行うことができる。
【0066】
画像が描画された用紙12は、渡し胴90に受け渡され、渡し胴90によって所定の搬送経路を搬送されて、インク乾燥部50の搬送ドラム51に受け渡される。なお、上記のように、渡し胴90には、その内部にドライヤ94が設置されており、ガイド板93に向けて温風が吹き出されている。インクの乾燥処理は、後段のインク乾燥部50で行われるが、用紙12は、この渡し胴90による搬送時にも乾燥処理が施される。
【0067】
<インク乾燥部>
インク乾燥部(乾燥装置)50は、画像記録後の用紙12に残存する液体成分を乾燥させる。このインク乾燥部50は、主として、用紙12を搬送する搬送ドラム(以下、「インク乾燥ドラム」という。)51と、インク乾燥ドラム51によって搬送される用紙12の表面(印刷面)に温風を吹き当てる3台の送風装置52A、52B、52Cと、用紙12の浮上を抑える接触ガード300A、300B、300Cとを備えて構成される。
【0068】
インク乾燥ドラム51は、渡し胴90から用紙12を受け取り、回転して用紙12を搬送する。上記のように、用紙12は、先端部をグリッパ(把持手段)Gに把持されて搬送される(本例のインク乾燥ドラム51では、先端部のみが把持され、後端の固定や吸着保持は行われずに搬送される。)。
【0069】
各送風装置52A、52B、52C(以下、特に区別する場合を除いて「送風装置52」と記載する。)は、インク乾燥ドラム51によって搬送される用紙12に向けて温風(たとえば、80℃)を吹き出す。
【0070】
この送風装置52は、用紙幅に対応して形成され、熱源(たとえば、赤外線ヒータ等)と、ファンが内蔵される。熱源で熱せられた空気は、ファンで送風され、温風として吹出口53(53A、53B、53C)から吹き出される。吹出口53は、用紙幅に対応したスリット状に形成され、用紙12の搬送方向と直交して配置される。
【0071】
各送風装置52は、吹出口53がインク乾燥ドラム51の外周に近接して配置され(インク乾燥ドラム51の外周から約40mm程度の高さの位置に配置される。)。この際、インク乾燥ドラム51によって搬送される用紙12を押さえ込むようにして、用紙12の搬送方向の下流側から上流側に向けて温風を吹き出すように配置される。すなわち、接線方向に対して斜め上方から温風を吹き当てるように配置される。
【0072】
接触ガード300A、300B、300C(以下、特に区別する場合を除いて「接触ガード300」と記載する。)は、送風を受けて浮上する用紙12を抑えて、用紙12の表面(印刷面)が擦れるのを防止する。特に、本例では、送風装置52の吹出口53がインク乾燥ドラム51の外周に近接して配置されていることから、この吹出口53に擦れるのを防止する。このため、各送風装置52に対応して接触ガード300が設置される。
【0073】
接触ガード300は、回転軸に所定の間隔をもって取り付けられた複数個のコロで構成され、インク乾燥ドラム51の外周から所定高さの位置に配置される。本例では、送風装置52の吹出口53に擦れるのを防止するため、吹出口53の下部に配置される。コロは、用紙12が接触したときにスリップするのを防止するため、用紙12とほぼ同じ速度で回転駆動される。この点については、後に詳述する。
【0074】
以上のように構成されたインク乾燥部50によれば、用紙12はインク乾燥ドラム51によって搬送される。そして、その搬送過程で印刷面に送風装置52から温風が吹き付けられて、印刷面に付与されたインクが乾燥される。
【0075】
送風装置52を通過した用紙12は、その後、所定位置でインク乾燥ドラム51から渡し胴100に受け渡される。そして、渡し胴100によって所定の搬送経路を搬送されて、定着部60の搬送ドラム61に受け渡される。
【0076】
なお、上記のように、渡し胴100には、その内部にドライヤ104が設置されており、ガイド板103に向けて温風が吹き出されている。したがって、用紙12は、この渡し胴100での搬送時にも乾燥処理が施される。
【0077】
インク乾燥部50については、後にさらに詳述する。
【0078】
<定着部>
定着部60は、用紙12を加熱加圧して、印刷面に画像記録された画像を定着させる。この定着部60は、用紙12を搬送する搬送ドラム(以下、「定着ドラム」という。)61と、定着ドラム61によって搬送される用紙12に加熱加圧処理を施すヒートローラ62、63と、印刷後の用紙12の温度、湿度等を検出するとともに、印刷された画像を撮像するインラインセンサ64とを備えて構成される。
【0079】
定着ドラム61は、渡し胴100から用紙12を受け取り、回転して用紙12を搬送する。
【0080】
ヒートローラ62、63は、用紙12の印刷面に付与されたインクを加熱加圧することにより、インク中に分散された熱可塑性樹脂を溶着して、インクを皮膜化させる。また、これと同時に用紙12に生じたコックリング、カール等の変形を矯正する。各ヒートローラ62、63は、定着ドラム61とほぼ同じ幅で形成されており、内蔵するヒータによって所定温度に加熱される。また、各ヒートローラ62、63は、図示しない加圧手段によって、定着ドラム61の周面に所定の押圧力で押圧当接される。用紙12は、このヒートローラ62、63を通過することにより、ヒートローラ62、63によって加熱加圧される。
【0081】
インラインセンサ64は、温度計、湿度計、CCDラインセンサ等を備え、定着ドラム61によって搬送される用紙12の温度、湿度等を検出するとともに、用紙12に印刷された画像を撮像する。このインラインセンサ64の検出結果に基づいて、装置の異常やヘッドの吐出不良等がチェックされる。
【0082】
以上のように構成された定着部60によれば、用紙12は定着ドラム61によって搬送され、その搬送過程で印刷面にヒートローラ62、63が押圧当接されて、加熱加圧される。これにより、インク中に分散された熱可塑性樹脂が溶着されて、インクが皮膜化される。また、これと同時に用紙12に生じた変形が矯正される。
【0083】
定着処理が施された用紙12は、この後、所定位置で定着ドラム61から回収部70へと受け渡される。
【0084】
<回収部>
回収部70は、一連の印刷処理が行われた用紙12をスタッカ71に積み重ねて回収する。この回収部70は、用紙12を回収するスタッカ71と、定着部60で定着処理された用紙12を定着ドラム61から受け取り、所定の搬送経路を搬送して、スタッカ71に排紙する排紙コンベア72とを備えて構成される。
【0085】
定着部60で定着処理された用紙12は、定着ドラム61から排紙コンベア72に受け渡され、その排紙コンベア72によってスタッカ71まで搬送されて、スタッカ71内に回収される。
【0086】
《制御系》
図2は、本実施の形態のインクジェット記録装置10の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【0087】
同図に示すように、インクジェット記録装置10は、システムコントローラ200、通信部201、画像メモリ202、搬送制御部203、給紙制御部204、処理液付与制御部205、画像記録制御部206、インク乾燥制御部207、定着制御部208、回収制御部209、操作部210、表示部211等を備えている。
【0088】
システムコントローラ200は、インクジェット記録装置10の各部を統括制御する制御手段として機能するとともに、各種演算処理を行う演算手段として機能する。このシステムコントローラ200は、CPU、ROM、RAM等を備えており、所定の制御プログラムに従って動作する。ROMには、このシステムコントローラ200が、実行する制御プログラムや制御に必要な各種データが格納されている。
【0089】
通信部201は、所要の通信インターフェースを備え、その通信インターフェースと接続されたホストコンピュータとの間でデータの送受信を行う。
【0090】
画像メモリ202は、画像データを含む各種データの一時記憶手段として機能し、システムコントローラ200を通じてデータの読み書きが行われる。通信部201を介してホストコンピュータから取り込まれた画像データは、この画像メモリ202に格納される。
【0091】
搬送制御部203は、処理液付与部30、画像記録部40、インク乾燥部50、定着部60の各部における用紙12の搬送手段である搬送ドラム31、41、51、61と、渡し胴80、90、100の駆動を制御する。
【0092】
すなわち、各搬送ドラム31、41、51、61を駆動するモータの駆動を制御するとともに、各搬送ドラム31、41、51、61に備えられた、グリッパGの開閉を制御する。
【0093】
同様に各渡し胴80、90、100を駆動するモータの駆動を制御するとともに、各渡し胴80、90、100に備えられた、グリッパGの開閉を制御する。
【0094】
また、各搬送ドラム31、41、51、61には、用紙12を周面に吸着保持する機構が備えられているので、その吸着保持機構の駆動を制御する(本実施の形態では、用紙12を真空吸着するので、負圧発生手段としての真空ポンプの駆動を制御する。)。
【0095】
また、各渡し胴80、90、100には、ドライヤ84、94、104が備えられているので、その駆動(加熱量と送風量)を制御する。
【0096】
この搬送ドラム31、41、51、61と、渡し胴80、90、100の駆動は、システムコントローラ200からの指令に応じて制御される。
【0097】
給紙制御部204は、システムコントローラ200からの指令に応じて給紙部20を構成する各部(給紙装置21、渡し胴23等)の駆動を制御する。
【0098】
処理液付与制御部205は、システムコントローラ200からの指令に応じて処理液付与部30を構成する各部(処理液付与装置32、剥離除去装置33等)の駆動を制御する。
【0099】
画像記録制御部206は、システムコントローラ200からの指令に応じて画像記録部40を構成する各部(用紙押さえローラ42、インクジェットヘッド44C、44M、44Y、44K等)の駆動を制御する。
【0100】
インク乾燥制御部207は、システムコントローラ200からの指令に応じてインク乾燥部50を構成する各部(送風装置52等)の駆動を制御する。
【0101】
定着制御部208は、システムコントローラ200からの指令に応じて定着部60を構成する各部(ヒートローラ62、63、インラインセンサ64等)の駆動を制御する。
【0102】
回収制御部209は、システムコントローラ200からの指令に応じて回収部70を構成する各部(排紙コンベア72等)の駆動を制御する。
【0103】
操作部210は、所要の操作手段(たとえば、操作ボタンやキーボード、タッチパネル等)を備えており、その操作手段から入力された操作情報をシステムコントローラ200に出力する。システムコントローラ200は、この操作部210から入力された操作情報に応じて各種処理を実行する。
【0104】
表示部211は、所要の表示装置(たとえば、LCDパネル等)を備えており、システムコントローラ200からの指令に応じて所要の情報を表示装置に表示させる。
【0105】
上記のように、用紙に記録する画像データは、ホストコンピュータから通信部201を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、画像メモリ202に格納される。システムコントローラ200は、この画像メモリ202に格納された画像データに所要の信号処理を施してドットデータを生成し、生成したドットデータに従って画像記録部40の各インクジェットヘッドの駆動を制御することにより、その画像データが表す画像を用紙に記録する。
【0106】
ドットデータは、一般に画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理は、sRGBなどで表現された画像データ(たとえば、RGB8ビットの画像データ)をインクジェット記録装置10で使用するインクの各色のインク量データに変換する処理である(本例では、C、M、Y、Kの各色のインク量データに変換する。)。ハーフトーン処理は、色変換処理により生成された各色のインク量データに対して誤差拡散等の処理で各色のドットデータに変換する処理である。
【0107】
システムコントローラ200は、画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って各色のドットデータを生成する。そして、生成した各色のドットデータに従って、対応するインクジェットヘッドの駆動を制御することにより、画像データが表す画像を用紙に記録する。
【0108】
《印刷動作》
次に、上記のインクジェット記録装置10による印刷動作について説明する。
【0109】
システムコントローラ200から給紙装置21に給紙指令が出力されると、給紙装置21から給紙トレイ22に用紙12が給紙される。給紙トレイ22に給紙された用紙12は、渡し胴23を介して処理液付与部30の処理液付与ドラム31に受け渡される。
【0110】
処理液付与ドラム31に受け渡された用紙12は、処理液付与ドラム31によって所定の搬送経路を搬送され、その搬送過程で処理液付与装置32を通過して、印刷面に処理液が付与される。
【0111】
処理液が付与された用紙12は、処理液付与ドラム31から渡し胴80に受け渡され、渡し胴80によって所定の搬送経路を搬送されて、画像記録部40の画像記録ドラム41に受け渡される。そして、その渡し胴80による搬送過程で渡し胴80の内部に設置されたドライヤ84から印刷面に熱気が吹き付けられ、印刷面に付与された処理液が乾燥される。
【0112】
渡し胴80から画像記録ドラム41に受け渡された用紙12は、まず、用紙押さえローラ42を通過することにより、用紙押さえローラ42にニップされて、画像記録ドラム41の外周面に密着される。その後、各インクジェットヘッド44C、44M、44Y、44Kを通過して、各インクジェットヘッド44C、44M、44Y、44KからCMYKの各色のインク滴が打滴され、印刷面にカラー画像が描画される。画像が描画された用紙12は、その後、画像記録ドラム41から渡し胴90に受け渡される。
【0113】
渡し胴90に受け渡された用紙12は、その渡し胴90によって所定の搬送経路を搬送されて、インク乾燥部50のインク乾燥ドラム51に受け渡される。そして、その搬送過程で渡し胴90の内部に設置されたドライヤ94から印刷面に熱気が吹き付けられて、印刷面に付与されたインクが乾燥される。
【0114】
インク乾燥ドラム51に受け渡された用紙12は、インク乾燥ドラム51によって所定の搬送経路を搬送され、その搬送過程で送風装置52から温風が印刷面に吹き付けられて、印刷面に残存する液体成分が乾燥される。
【0115】
乾燥処理された用紙12は、インク乾燥ドラム51から渡し胴100に受け渡され、所定の搬送経路を搬送されて、定着部60の定着ドラム61に受け渡される。そして、その渡し胴100による搬送過程で渡し胴100の内部に設置されたドライヤ104から印刷面に熱気が吹き付けられ、印刷面に付与されたインクが、さらに乾燥される。
【0116】
定着ドラム61に受け渡された用紙12は、定着ドラム61によって所定の搬送経路を搬送され、その搬送過程でヒートローラ62、63に加熱加圧されて、印刷面に画像記録された画像が定着される。その後、用紙12は、定着ドラム61から回収部70の排紙コンベア72に受け渡され、排紙コンベア72によってスタッカ71まで搬送されて、スタッカ71内に排紙される。
【0117】
以上のように、本実施の形態のインクジェット記録装置10では、用紙12をドラム搬送し、その搬送過程で用紙12に対し、処理液の付与、処理液の乾燥、インク滴の打滴、乾燥、定着の各処理を施して、用紙12に所定の画像を記録する。
【0118】
《インク乾燥部(乾燥装置)の具体的構成》
〈構成〉
図3は、インク乾燥部の構成を示す側面図である。
【0119】
上記のように、インク乾燥部50は、インク乾燥ドラム51と、送風装置52とを備え、インク乾燥ドラム51によって搬送される用紙12に送風装置52から温風を吹き当てて、用紙12を乾燥処理する。
【0120】
インク乾燥ドラム51は、用紙12の先端のみを把持して、用紙12を搬送する。しかし、このような搬送方式の場合、風を吹き当てると、用紙12の後端が浮上し、物に擦れるおそれがある。特に、乾燥効率を上げるために、送風装置52の吹出口53をインク乾燥ドラム51の外周に近接して配置すると、その吹出口53に浮上した用紙12が擦れるおそれがある。
【0121】
そこで、本例のインク乾燥部50には、浮上した用紙12が送風装置52の吹出口53に擦れるのを防止するため、用紙12の浮上を抑える接触ガード300が備えられている。
【0122】
以下、この接触ガード300の構成について説明する。
【0123】
図4は接触ガードの構成を示す側面断面図である。また、図5は、図4の5−5矢視図である。
【0124】
本例の接触ガード300は、用紙12が送風装置52の吹出口53に接触するのを防止するように設置される。特に、本例の接触ガード300では、送風装置52に一体的に組み付けられて設置される。
【0125】
接触ガード300は、主として、回転軸302と、複数のコロ304と、複数の羽根車306とで構成される。
【0126】
回転軸302は、インク乾燥ドラム51の幅とほぼ同じ長さで形成される。この回転軸302は、送風装置52に設置された一対の軸受308に軸支される。
【0127】
一対の軸受308は、送風装置52の吹出口53の両端部にブラケット310を介して取り付けられる。回転軸302は、この軸受308に軸支されることにより、送風装置52の長手方向に沿って配置される。送風装置52は、インク乾燥ドラム51の軸と平行にされるので、回転軸302もインク乾燥ドラム51の軸と平行に配置される。
【0128】
コロ304は、円盤状に形成され、回転軸302に所定の間隔をもって取り付けられる。本例では、図6に示すように、5つのコロ304が一定間隔で取り付けられている。このコロ304の設置数、設置間隔は、用紙12の幅に応じて適宜増減される。この際、少なくとも用紙12の中央部、及び、両端部を抑えるように配置することが好ましい。また、コロ304の外径については、コロ304を設置する位置や設定すべきギャップ(インク乾燥ドラム51との間に形成する隙間)等に基づいて決定される。
【0129】
コロ304は、回転軸302に固定して取り付けられる。したがって、回転軸302が回転すると、コロ304も回転する。
【0130】
羽根車306は、コロ304と同じ回転軸302に取り付けられ、各コロ304の間に配置される。この羽根車306は、円筒状の軸部312の外周部に多数のフィン314が放射状に取り付けられた構造を有し、その外径はコロ304の外径よりも小さく形成される。
【0131】
羽根車306は、軸部312を回転軸302に固定して取り付けられる。したがって、羽根車306が回転すると、回転軸302も回転する。
【0132】
接触ガード300は、以上のように構成される。
【0133】
ここで、上記のように、本例の接触ガード300は、用紙12が送風装置52の吹出口53に擦れるのを防止するように設置される。
【0134】
本例の送風装置52は、インク乾燥ドラム51の外周部に近接して設置され、かつ、用紙12に対して斜め上方から温風が吹き当てられるように設置される。
【0135】
このため、接触ガード300は、送風装置52の吹出口53が、インク乾燥ドラム51の外周に最も近接する位置に配置される。図3に示す例では、吹出口53の下縁部が最もインク乾燥ドラム51の外周に近接して配置されているので、吹出口53の下縁部に沿って配置される。
【0136】
また、接触ガード300は、吹出口53から吹き出される風(温風)を受けて羽根車306が回転するように設置される。したがって、必要に応じて、図4に示すように、吹出口53の一部が切り欠いて形成される。図4に示す例では、吹出口53の下縁部が、一部切り欠いて形成されている。
【0137】
さらに、接触ガード300は、羽根車306が、吹出口53から吹き出す風で回転する際、コロ304の外周が、用紙12の搬送速度とほぼ同じ速度で回転するように調整される。この調整は、たとえば、羽根車306のフィン314の形状や数によって行われる。すなわち、通常、送風装置52が吹き出す温風の風量は一定なので、これを受ける羽根車306のフィン314の形状や数によって、コロ304が回転する速度を調整する。
【0138】
〈作用〉
以上のように構成されたインク乾燥部50の作用は次のとおりである。
【0139】
前段の画像記録部40で表面(印刷面)にインクが付与され、画像が描画された用紙12は、渡し胴90を介してインク乾燥ドラム51に受け渡される。
【0140】
インク乾燥ドラム51は、用紙12の先端部を把持して回転することにより、用紙12を一定の速度(たとえば、600mm/s)で搬送する。
【0141】
用紙12は、このインク乾燥ドラム51によって搬送される過程で各送風装置52A、52B、52Cから吹き出される温風が、表面(印刷面)に吹き当てられて乾燥処理される。
【0142】
ここで、各送風装置52には接触ガード300が備えられている。接触ガード300は、各送風装置52から温風を吹き出すと、吹きだした温風の風力を受けて、コロ304が回転する。そして、このコロ304は、用紙12の搬送速度とほぼ同じ速度で回転する。
【0143】
一方、上記のように、用紙12の先端部のみ把持して搬送すると、用紙12の後端部が浮き上がる場合がある。この場合、用紙12は、接触ガード300のコロ304に接触する。
【0144】
しかしながら、上記のように、コロ304は用紙12とほぼ同じ速度で回転しているため、スリップを起こすことがない。したがって、インクが、いまだ乾いていない状態に接触した場合であっても、画像が擦れて傷つくことがない。
【0145】
このように、本実施の形態のインク乾燥部50では、浮上した用紙12が接触しそうな位置にコロ304が配置され、かつ、そのコロ304が、用紙12の搬送速度とほぼ同じ速度で回転駆動される。これにより、擦れによる画像の傷を効果的に防止することができる。
【0146】
また、本実施の形態のインク乾燥部50では、送風装置52から吹き出される温風を利用して、コロ304が回転駆動される。これにより、構造を簡素化することができるともに、電力消費も抑えることができる。シンプルな構造であるため、複数箇所に設置する場合であっても、簡単に設置することができる。
【0147】
なお、上記の実施の形態では、コロ304と羽根車306とを同じ回転軸302に取り付け、羽根車306の回転をコロ304に直接伝達する構成としているが、ギア等の回転伝達手段を介して、羽根車の回転をコロに伝達する構成とすることもできる。この場合、ギア比等を調整して、コロ304の回転速度を調整することもできる。
【0148】
また、上記実施の形態では、フィン314の形状や数によって、コロ304の回転速度を調整することとしているが、コロ304の回転速度を調整する方法は、これに限定されるものではない。この他、羽根車306の設置位置(フィン314に温風が当たる位置)や、設置数等を単独又は複合的に調整することによっても、コロ304の回転速度を調整することができる。
【0149】
なお、スリップを完全に防止するためには、コロ304と用紙12の搬送速度を一致させることが好ましいが、完全に一致させることは難しい。
【0150】
そこで、コロ304は、用紙12の搬送速度の−10〜0%の誤差の範囲内で回転するように調整することが好ましい。これにより、コロ304と用紙12の速度を完全に一致させなくても、スリップを効果的に防止できる。すなわち、コロ側が若干遅くても、用紙12が接触した場合には、その用紙12にサポートされてコロ304も同速度で回転するため、スリップの発生を防止できる。一方、コロ304が用紙よりも速い場合は、コロ304が用紙上をスリップするおそれがあるので、用紙12の搬送速度よりも若干遅い、−10〜0%の誤差の範囲内でコロ304が回転するように調整する。これにより、コロ304の回転の設定を簡単に行うことができる。
【0151】
また、コロ304の設置数や設置間隔は、用紙12の幅に応じて選択されるが、複数のサイズの用紙を処理するインクジェット記録装置の場合は、各サイズに対応可能な配置とすることが好ましい。たとえば、大、中、小の3サイズの用紙に対応したインクジェット記録装置の場合、図7に示すように、各サイズの幅方向の両端に対応した位置と、幅方向の中央に配置する。これにより、用紙12のサイズが切り替わった場合であっても、適切に接触を防止することができる。
【0152】
また、本例では、送風装置52の吹出口53への接触を防止する目的で接触ガード300を設置しているが、接触ガードを設置する位置は、これに限定されるものではない。浮上した用紙12が擦れそうな位置に配置することが好ましい。
【0153】
また、本例では、接触ガード300を送風装置52に直接取り付けているが、送風装置52への接触を防止する場合であっても、その取り付け位置は、送風装置52に限定されるものではない。目的とする物への接触を防止するのに適した位置に設置することが好ましい。
【0154】
《第2の実施の形態》
図8は、インク乾燥部の第2の実施の形態の要部の構成を示す側面断面図である。また、図9は、図8の9−9矢視図である。
【0155】
本実施の形態のインク乾燥部は、インク乾燥ドラム51の回転を利用して接触ガードのコロを回転させる点で上記第1の実施の形態のインク乾燥部と相違する。
【0156】
したがって、ここでは、接触ガードの構成、及び、その作用効果についてのみ説明する。
【0157】
図8、9に示すように、本実施の形態の接触ガード400は、主として、回転軸402と、複数のコロ404と、一対の駆動ローラ406と、一対の回転伝達機構408とで構成される。
【0158】
回転軸402は、インク乾燥ドラム51の幅とほぼ同じ長さで形成される。この回転軸402は、送風装置52に設置された一対の軸受410に軸支される。
【0159】
一対の軸受410は、送風装置52の吹出口53の両端部にブラケット412を介して取り付けられる。回転軸402は、この軸受410に軸支されることにより、送風装置52の長手方向に沿って配置される。送風装置52は、インク乾燥ドラム51の軸と平行にされるので、回転軸402もインク乾燥ドラム51の軸と平行に配置される。
【0160】
コロ404は、円盤状に形成され、回転軸402に所定の間隔をもって取り付けられる(図6参照)。このコロ404の設置数、設置間隔は、用紙12の幅に応じて適宜増減される。この際、少なくとも用紙12の中央部、及び、両端部を抑えることができるように配置することが好ましい。
【0161】
コロ404は、回転軸402に固定して取り付けられる。したがって、回転軸402が回転すると、コロ404も回転する。
【0162】
一対の駆動ローラ406は、インク乾燥ドラム51の幅方向の両端に配置される。この駆動ローラ406は、ゴムローラで構成され、その軸部がブラケット412に設けられた軸受414に軸支されて、回転自在に設けられる。後述するように、駆動ローラ406は、その外周部がインク乾燥ドラム51の外周部に当接するように設置される。
【0163】
回転伝達機構408は、駆動ローラ406の回転を回転軸402に伝達する。この回転伝達機構408は、主として、従動ローラ416と、中間ローラ418とで構成される。
【0164】
従動ローラ416は、回転軸402に固定して取り付けられる。したがって、従動ローラ416が回転すると、回転軸402も回転する。この従動ローラ416は、ゴムローラで構成される。
【0165】
中間ローラ418は、その軸部がブラケット412に設けられた軸受420に軸支されて、回転自在に設けられる。
【0166】
駆動ローラ406と、従動ローラ416と、中間ローラ418は、ともにインク乾燥ドラム51と並行に設けられ、それぞれ同一平面上に位置するように配置される。また、中間ローラ418は、その外周部が駆動ローラ406の外周部に押圧当接されるとともに、従動ローラ416の外周部に押圧当接される。この結果、駆動ローラ406が回転すると、その回転が中間ローラ418を介して従動ローラ416に伝達され、従動ローラ416が回転する。そして、この従動ローラ416が回転することにより、回転軸402が回転し、コロ404が回転する。
【0167】
上記のように、接触ガード400は、その設置に際して、駆動ローラ406が、インク乾燥ドラム51の外周部に当接するように設置される。これにより、インク乾燥ドラム51の回転に連動して、コロ404が回転する。すなわち、インク乾燥ドラム51が回転すると、そのインク乾燥ドラム51に当接された駆動ローラ406が同時に回転し、その回転が中間ローラ418を介して従動ローラ416に伝達される。これにより、回転軸402が回転し、その回転軸402に取り付けられたコロ404が回転する。この際、コロ404は、用紙12の搬送速度と同じ速度で回転する。
【0168】
このように、本実施の形態のインク乾燥部50によれば、インク乾燥ドラム51の回転を利用して、コロ404を用紙12の搬送速度と同じ速度で回転させることができる。これにより、簡単な構成で画像に傷をつけることなく用紙12を乾燥処理することができる。
【0169】
なお、本例では、駆動ローラ406の回転を従動ローラ416と中間ローラ418とからなる回転伝達機構408でコロ404に伝達する構成としているが、駆動ローラ406の回転をコロ404に伝達する構成は、これに限定されるものではない。この他、たとえば、ギア列からなる回転伝達機構を介して、駆動ローラ406の回転をコロ404に伝達するようにしてもよい。
【0170】
なお、駆動ローラ406の設置位置は、用紙12の搬送を阻害しない位置(たとえば、本例のように、インク乾燥ドラム51の両端部)とするが、インク乾燥ドラム51の外周面上に駆動ローラ406を直接当接させることができない場合は、インク乾燥ドラム51の動軸上にインク乾燥ドラム51の外径と同径の回転板を取り付け、その回転板の外周部に駆動ローラ406を当接させる構成とすることもできる。特に、インク乾燥ドラム51の外周部が真円ではなく、凸部や凹部が形成されている場合(たとえば、グリッパの設置部等)には、それらの部位を避けて、あるいは、上記のように回転板を取り付けて、駆動ローラ406を設置する。
【0171】
また、本例では、駆動ローラ406は、回転軸402の両端に配置しているが、片側のみに設置する構成とすることもできる。
【0172】
《第3の実施の形態》
図10は、インク乾燥部の第3の実施の形態の要部の構成を示す側面断面図である。また、図11は、図10の11−11矢視図である。
【0173】
本実施の形態のインク乾燥部は、インク乾燥ドラム51の回転を利用して接触ガードのコロを回転させる点で上記第2の実施の形態のインク乾燥部と共通するが、本実施の形態のインク乾燥部は、磁力を利用して、コロを回転させる点で上記第2の実施の形態のインク乾燥部と相違する。
【0174】
したがって、ここでは、接触ガードの構成、及び、その作用効果についてのみ説明する。
【0175】
図10、11に示すように、本実施の形態の接触ガード500は、主として、回転軸502と、複数のコロ504と、一対の磁石車506とで構成される。
【0176】
回転軸502は、インク乾燥ドラム51の幅とほぼ同じ長さで形成される。この回転軸502は、送風装置52に設置された一対の軸受508に軸支される。
【0177】
一対の軸受508は、送風装置52の吹出口53の両端部にブラケット512を介して取り付けられる。回転軸502は、この軸受508に軸支されることにより、送風装置52の長手方向に沿って配置される。送風装置52は、インク乾燥ドラム51の軸と平行にされるので、回転軸502もインク乾燥ドラム51の軸と平行に配置される。
【0178】
コロ504は、円盤状に形成され、回転軸502に所定の間隔をもって取り付けられる(図6参照)。このコロ504の設置数、設置間隔は、用紙12の幅に応じて適宜増減される。この際、少なくとも用紙12の中央部、及び、両端部を抑えることができるように配置することが好ましい。
【0179】
各コロ504は、回転軸502に固定して取り付けられる。したがって、回転軸502が回転すると、コロ504も回転する。
【0180】
磁石車506は、円盤状に形成され、コロ504と同じ外径で形成される。そして、その外周部には、周方向に沿って一定の間隔でN極の磁石506NとS極の磁石506Sとが交互に配置される。
【0181】
磁石車506は、回転軸502の両端に配置され、回転軸502に固定して取り付けられる。したがって、磁石車506が回転すると、回転軸502も回転する。
【0182】
送風装置52は、その設置に際して、磁石車506がインク乾燥ドラム51の外周部から所定高さに位置するように設置される。すなわち、磁石車506の外周部とインク乾燥ドラム51の外周部との間に所定のギャップが形成されるように配置される。
【0183】
インク乾燥ドラム51の外周部の両端には、一対の磁石車506の設置位置に対応して、磁石部510が形成される。この磁石部510は、所定幅のリング状に形成され、周方向に沿ってN極の磁石510NとS極の磁石510Sとが交互に配置される。このN極の磁石510NとS極の磁石510Sの配置間隔は、磁石車506に配置されたN極の磁石506NとS極の磁石506Sの配置間隔と同じ間隔に設定される。
【0184】
本実施の形態の接触ガード500は以上のように構成される。
【0185】
上記のように、送風装置52は、その設置に際して、磁石車506がインク乾燥ドラム51の外周部から所定高さに位置するように設置される(非接触で互いの磁力が作用する位置に配置される。)。
【0186】
この結果、インク乾燥ドラム51が回転すると、磁石部510に設けられた磁石と、磁石車506に設けられた磁石との作用によって、磁石車506が回転する。
【0187】
この際、磁石車506の外周部は、インク乾燥ドラム51の外周部と同じ周速度で回転する。すなわち、磁石車506とインク乾燥ドラム51は、同じ間隔でN極の磁石とS極の磁石が取り付けられているため、同じ周速度で回転する。
【0188】
これにより、浮上した用紙12がコロ504に接触しても、スリップが生じないので、乾燥前の印刷面がコロ504に触れても、画像が傷つくことがない。
【0189】
磁石の配置間隔の設定方法の一例を以下に示す。
【0190】
磁石の配置間隔をP、コロの磁石の配置角度をθm、インク乾燥ドラムの磁石の配置角度をθM、コロの径をd、インク乾燥ドラムの外径をD、インク乾燥ドラムに配置する磁石の数をnMとする。
【0191】
コロにnm個の磁石を配置する場合、磁石の配置間隔Pは、P=dπ/nmと設定される。この場合、コロに配置する磁石の配置角度θmは、θm=360/nmと設定される。
【0192】
また、インク乾燥ドラムに配置する磁石の数nMは、nM=Dπ/Pと設定され、インク乾燥ドラムに配置する磁石の配置角度θMは、θM=360/nMと設定される。
【0193】
例)インク乾燥ドラムの外径Dがφ450mm、コロの外径dが50mmの場合において、コロに8個の磁石を設置する場合を考える。
【0194】
この場合、コロに設置する磁石の配置間隔Pは、P=50・π/8=19.63mmと設定され、配置角度θmは、θm=360/8=45degと設定される。
【0195】
一方、インク乾燥ドラムに設置する磁石の配置数nMは、nM=450・π/19.63=72個と設定され、配置角度θMは、θM=360/72=5degと設定される。
【0196】
すなわち、コロには45deg間隔でN極とS極の磁石を交互に配置し(8個配置)し、インク乾燥ドラムには、5deg間隔でN極とS極の磁石を交互に配置する。この場合、磁石の配置間隔Pは、19.63mmとなる。
【0197】
このように磁石を設置することにより、コロの外周部の周速度をインク乾燥ドラムの外周部の周速度と同じにすることができる。そして、この結果、コロを用紙の搬送速度と同じ速度で回転させることができる。
【0198】
このように、本実施の形態のインク乾燥部50によれば、インク乾燥ドラム51の回転を利用して、コロ504を用紙12の搬送速度と同じ速度で回転させることができる。これにより、簡単な構成で画像に傷をつけることなく用紙12を乾燥処理することができる。
【0199】
なお、本例では、磁石車506の回転を回転軸502に直接伝達する構成としているが、ギア列等からなる回転伝達機構を介して、磁石車506の回転を回転軸502に伝達するようにしてもよい。
【0200】
また、本例では、磁石車506を回転軸402の両端に配置しているが、片側のみに設置する構成とすることもできる。この場合、磁石部510もインク乾燥ドラム51の片側にのみ形成する。
【0201】
<その他の実施の形態>
上記実施の形態では、送風装置52から送風される風の力、又は、インク乾燥ドラム51の回転の力を利用して、コロを回転させる構成としているが、送風装置52から送風される風の力と、インク乾燥ドラム51の回転の力を複合的に利用して、コロを回転させる構成とすることもできる。この場合も、コロは用紙の搬送速度とほぼ同じ速度になるように回転させる。これにより、印刷面が接触しても、画像を傷つけずに用紙を乾燥処理することができる。
【0202】
また、上記一連の実施の形態では、本発明を汎用の印刷用紙に水性インクを用いて印刷する記録装置に適用した場合を例に説明したが、本発明の適用は、これに限定されるものではない。汎用の印刷用紙以外のメディアにインクジェット方式で記録する装置にも同様に適用することができる。また、水性インク以外のインクを用いて記録する装置にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0203】
10…インクジェット記録装置、12…用紙、20…給紙部、21…給紙装置、22…給紙トレイ、23…渡し胴、30…処理液付与部、31…搬送ドラム(処理液付与ドラム)、32…処理液付与装置、32A…塗布ローラ、32B…供給ローラ、33…剥離除去装置3、33A…ブレード、40…画像記録部、41…搬送ドラム(画像記録ドラム)、42…用紙押さえローラ、43…用紙浮き検出センサ、44(44C、44M、44Y、44K)…インクジェットヘッド、50…インク乾燥部、51…搬送ドラム(インク乾燥ドラム)、52(52A、52B、52C)…送風装置、53(53A、53B、53C)…吹出口、60…定着部、61…搬送ドラム(定着ドラム)、62、63…ヒートローラ、64…インラインセンサ、70…回収部、71…スタッカ、72…排紙コンベア、80…渡し胴、81…渡し胴本体、83…ガイド板、84…ドライヤ、90…渡し胴、91…渡し胴本体、93…ガイド板、94…ドライヤ、100…渡し胴、101…渡し胴本体、103…ガイド板、104…ドライヤ、200…システムコントローラ、201…通信部、202…画像メモリ、203…搬送制御部、204…給紙制御部、205…処理液付与制御部、206…画像記録制御部、207…インク乾燥制御部、208…定着制御部、209…回収制御部、210…操作部、211…表示部、300(300A、300B、300C)…接触ガード、302…回転軸、304…コロ、306…羽根車、308…軸受、310…ブラケット、312…軸部、314…フィン、400…接触ガード、402…回転軸、404…コロ、406…駆動ローラ、408…回転伝達機構、410…軸受、412…ブラケット、414…軸受、416…従動ローラ、418…中間ローラ、420…軸受、500…接触ガード、502…回転軸、504…コロ、506…磁石車、506N…N極の磁石、506S…S極の磁石、508…軸受、510…磁石部、510N…N極の磁石、510S…S極の磁石、512…ブラケット、G…グリッパ
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥装置及びインクジェット記録装置に係り、特にドラム搬送される用紙に温風を吹き当てて乾燥処理する乾燥装置及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
汎用の印刷用紙に水性インクを用いてインクジェット方式で印刷するインクジェット印刷機では、コックリング等の発生を防止するため、印刷直後に乾燥処理が行われる。印刷後の乾燥処理は、たとえば、用紙の印刷面に温風を吹き当てることにより行われる。しかし、搬送中の用紙に温風を吹き当てると、気流の影響で用紙が浮き上がることがあり、この結果、印刷面がフレーム等に擦れて、画像が傷つくという問題がある。特に、用紙の先端のみを把持してドラム搬送する場合には、フリーな後端部が浮きやすいという問題がある。この場合、用紙をドラムに吸着保持して搬送することも考えられるが、用紙の吸着保持機構をドラムに組み込むと、装置構成が大型化かつ複雑化するという欠点がある。
【0003】
一方、特許文献1から3には、印刷面が触れそうな場所に回転自在なコロを配置して、印刷面の擦れを防止する技術が記載されている(特許文献1〜3など)。しかし、この場合、コロがスリップすると、画像が擦れてしまうという問題がある。そこで、特許文献4では、モータでコロを用紙と同じ速度で回転させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−106345号公報
【特許文献2】特開2004−122609号公報
【特許文献3】特開2010−69786号公報
【特許文献4】特開2007−152739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように、用紙を吸着保持して搬送する構成では、搬送機構が大型化かつ複雑化するという欠点がある。
【0006】
一方、特許文献4のように、印刷面が擦れる場所にコロを配置し、モータで回転させる構成では、コロのための駆動源が別途必要になるという欠点がある。また、複数個所にコロを設置する場合には、そのコロの設置場所ごとに駆動源が必要になるという欠点もある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、簡単な構成で擦れを防止して、用紙を乾燥処理することができる乾燥装置及びインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決するための手段は、以下のとおりである。
【0009】
[1]乾燥装置の第1の態様は、液体が付与された用紙を乾燥処理する乾燥装置において、回転するドラムの外周部に備えられた把持手段で前記用紙の先端を把持して、前記用紙を前記ドラムの外周に巻き掛けて搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって搬送される用紙に向けて温風を送風する送風手段と、前記ドラムの外周から所定高さの位置に回転自在に設けられ、前記送風手段による送風を受けて浮上する前記用紙を抑えるコロと、前記ドラムの回転、及び/又は、前記送風手段の送風によって前記コロを前記用紙の搬送速度とほぼ同じ速度で同方向に回転させるコロ回転駆動手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本態様の乾燥装置では、用紙の浮上を抑えるコロをドラムの回転、及び/又は、送風手段からの風力を利用して回転させる。この際、コロを用紙の搬送速度とほぼ同じ速度で同方向に回転させる。これにより、コロによって用紙が擦れるのを防止することができる。また、特別な駆動源を必要としないので、シンプルな構造とすることができるとともに、電力消費も抑えることができる。特に、複数箇所にコロを設置する場合には、簡単に設置することができるようになる。コロは、たとえば、用紙が浮上したときに、用紙の表面(液体の付与面)が擦れる場所に設置する。
【0011】
[2]乾燥装置の第2の態様は、上記第1の態様の乾燥装置において、前記送風手段は、前記ドラムの外周に近接して温風の吹出口が設けられ、前記コロは、前記送風手段による送風を受けて浮上する前記用紙が前記吹出口に接触しないように配置されることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、温風の吹出口がドラムの外周に近接して配置される。これにより、乾燥をより促進させることができる。一方、吹出口をドラムの外周に近接して配置すると、用紙が浮上しやすくなる。特に、用紙の先端部のみを把持して搬送する場合には、後端部が浮きやすくなる。そこで、コロを設置して、浮上しても、吹出口に当たらないようにする。これにより、効率よく乾燥処理を行いつつ、用紙の擦れも防止できる。
【0013】
[3]乾燥装置の第3の態様は、上記第1又は第2の態様の乾燥装置において、前記コロは、所定の幅をもって形成され、前記用紙の搬送方向と直交する方向の複数箇所に配置されることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、用紙の搬送方向と直交する方向の複数箇所にコロが配置される。これにより、用紙との接触を最小限に抑えつつ、効果的に用紙の浮きを防止することができる。コロの配置は、たとえば、用紙の幅方向の中央と両端近傍を抑えるように配置する。また、複数サイズの用紙に対応できるように、用紙の幅方向の中央から左右対称に所定の間隔で配置する。
【0015】
[4]乾燥装置の第4の態様は、上記第1から第3のいずれか1の態様の乾燥装置において、前記コロ回転駆動手段は、前記用紙の搬送速度の−10〜0%の誤差の範囲内で前記コロを回転させることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、用紙の搬送速度の−10〜0%の誤差の範囲内でコロが回転駆動される。これにより、コロを完全に用紙と同速度で回転させなくても、スリップを効果的に防止できる。すなわち、コロ側が若干遅くても、用紙が接触した場合には、その用紙にサポートされてコロも同速度で回転するため、スリップの発生を防止できる。一方、コロが用紙よりも速い場合は、コロが用紙上をスリップするおそれがある。そこで、用紙の搬送速度の−10〜0%の誤差の範囲内でコロが回転させる。これにより、設定を簡単に行うことができる。
【0017】
[5]乾燥装置の第5の態様は、上記第1から第4の態様の乾燥装置において、前記コロ回転駆動手段は、前記送風手段の送風によって回転する羽根車と、前記羽根車の回転を前記コロに伝達する回転伝達手段と、からなることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、コロ回転駆動手段が、送風手段の送風によって回転する羽根車と、羽根車の回転をコロに伝達する回転伝達手段とで構成される。これにより、特別な駆動源を用いずに、送風手段の風力を有効利用して、コロを回転させることができる。
【0019】
[6]乾燥装置の第6の態様は、上記第5の態様の乾燥装置において、前記回転伝達手段は、前記ドラムの軸と平行に設けられた回転軸であり、該回転軸に前記羽根車と前記コロとが取り付けられることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、コロと羽根車とが同軸上に配置される。これにより、構成をコンパクト化することができる。
【0021】
[7]乾燥装置の第7の態様は、上記第1から第6のいずれか1つの態様の乾燥装置において、前記コロ回転駆動手段は、前記ドラムの外周に当接して設置され、前記ドラムの回転によって回転するローラと、前記ローラの回転を前記コロに伝達する回転伝達手段と、からなることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、コロ回転駆動手段が、ドラムに接して回転するローラと、そのローラの回転をコロに伝達する回転伝達手段とで構成される。これにより、特別な駆動源を用いずに、ドラムの回転を有効利用して、コロを回転させることができる。
【0023】
[8]乾燥装置の第8の態様は、上記第1から第6のいずれか1つの態様の乾燥装置において、前記コロ回転駆動手段は、外周部が前記ドラムの外周部に近接して配置され、前記ドラムの軸と平行な軸の回りを回転する回転体と、前記回転体の回転を前記コロに伝達する回転伝達手段と、前記ドラムの外周部に一定の間隔をもって交互に配置されるとともに、前記回転体の外周部に一定の間隔をもって交互に配置されるS極とN極の磁石と、からなることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、コロ回転駆動手段が、ドラムの外周部に近接して配置された回転体と、その回転体の回転をコロに伝達する回転伝達手段と、ドラムの外周部に一定の間隔をもって交互に配置されるとともに、回転体の外周部に一定の間隔をもって交互に配置されるS極とN極の磁石とで構成される。これにより、特別な駆動源を用いずに、ドラムの回転を有効利用して、コロを回転させることができる。
【0025】
[9]乾燥装置の第9の態様は、上記第8の態様の乾燥装置において、前記回転伝達手段は、前記ドラムの軸と平行に設けられた回転軸であり、該回転軸に前記回転体と前記コロとが取り付けられることを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、回転体とコロとが同軸上に配置される。これにより、構成をコンパクト化することができる。
【0027】
[10]インクジェット記録装置の第1の態様は、上記第1から第9の態様の乾燥装置を備え、インクが付与された用紙を該乾燥装置で乾燥処理することを特徴とする。
【0028】
本態様によれば、インクが付与された用紙(描画後の用紙)が、上記第1から第9の態様の乾燥装置によって乾燥処理される。これにより、擦れを発生させることなく、用紙を乾燥処理することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、簡単な構成で擦れを防止して、用紙を乾燥処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】インクジェット記録装置の一実施態様を示す全体構成図
【図2】インクジェット記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図
【図3】インク乾燥部の構成を示す側面図
【図4】接触ガードの構成を示す側面断面図
【図5】図4の5−5矢視図
【図6】コロの配置例を示す平面図
【図7】コロの配置の他の例を示す平面図
【図8】インク乾燥部の第2の実施の形態の要部の構成を示す側面断面図
【図9】図8の9−9矢視図
【図10】インク乾燥部の第3の実施の形態の要部の要部の構成を示す側面断面図
【図11】図10の11−11矢視図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0032】
《全体構成》
図1は、本発明に係るインクジェット記録装置の一実施態様を示す全体構成図である。
【0033】
このインクジェット記録装置10は、枚葉の用紙12に水性インク(水を溶媒に含むインク)を用いてインクジェット方式で印刷する記録装置であり、主として、用紙12を給紙する給紙部20と、用紙12の印刷面(記録面)に所定の処理液を付与する処理液付与部30と、用紙12の印刷面にシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、クロ(K)の各色のインク滴をインクジェットヘッドで打滴して、カラー画像を描画する画像記録部40と、用紙12に打滴されたインク滴を乾燥させるインク乾燥部50と、用紙12に記録された画像を定着させる定着部60と、用紙12を回収する回収部70を備えて構成される。
【0034】
処理液付与部30、画像記録部40、インク乾燥部50、定着部60の各部には、それぞれ用紙12の搬送手段として、搬送ドラム31、41、51、61が備えられる。用紙12は、この搬送ドラム31、41、51、61によって、処理液付与部30、画像記録部40、インク乾燥部50、定着部60の各部を搬送される。
【0035】
各搬送ドラム31、41、51、61は、用紙幅に対応して形成され、図示しないモータに駆動されて回転する(図1において、反時計回りに回転)。各搬送ドラム31、41、51、61の周面には、グリッパ(把持手段)Gが備えられる。用紙12は、このグリッパGに先端部を把持されて搬送される。本例では、各搬送ドラム31、41、51、61の周面の2箇所に180度の間隔でグリッパGが設けられ、1回転で2枚の用紙を搬送できるように構成されている。
【0036】
処理液付与部30と画像記録部40の間、画像記録部40とインク乾燥部50の間、インク乾燥部50と定着部60の間には、それぞれ渡し胴80、90、100が配置される。用紙12は、この渡し胴80、90、100によって、各部の間を搬送される。
【0037】
各渡し胴80、90、100は、枠体で構成された渡し胴本体81、91、101と、その渡し胴本体81、91、101に備えられたグリッパGとを備えて構成される。渡し胴本体81、91、101は、用紙幅に対応して形成され、図示しないモータに駆動されて回転する(図1において、時計回りに回転)。用紙12は、グリッパGに先端部を把持されて搬送される。なお、上記搬送ドラムと同様にグリッパGは渡し胴本体の周面の2箇所に180度の間隔で設けられる。
【0038】
各渡し胴80、90、100の下部には、用紙12の搬送経路に沿って円弧状のガイド板83、93、103が配設される。渡し胴80、90、100によって搬送される用紙12は、このガイド板83、93、103に裏面(印刷面の反対側の面)をガイドされながら搬送される。
【0039】
また、各渡し胴80、90、100の内部には、渡し胴80によって搬送される用紙12に向けて温風を吹き出すドライヤ84、94、104が配置される(本例では、用紙12の搬送経路に沿って3台配置されている。)。各渡し胴80、90、100によって搬送される用紙12は、搬送される過程でドライヤ84、94、104から吹き出された温風が印刷面に吹き当てられる。
【0040】
給紙部20から給紙された用紙12は、処理液付与部30の搬送ドラム31→渡し胴80→画像記録部40の搬送ドラム41→渡し胴90→インク乾燥部50の搬送ドラム51→渡し胴100→定着部60の搬送ドラム61→回収部70へと順に受け渡される。そして、この一連の搬送過程で用紙12に所要の処理が施されて、印刷面に画像が記録される。
【0041】
なお、用紙12は、搬送ドラム31、41、51、61では、印刷面を外側にして搬送され、渡し胴80、90、100では、印刷面を内側にして搬送される。
【0042】
以下、本実施の形態のインクジェット記録装置10の各部の構成について詳説する。
【0043】
<給紙部>
給紙部20は、主として、給紙装置21と、給紙トレイ22と、渡し胴23とで構成され、枚葉の用紙12を処理液付与部30に1枚ずつ連続的に給紙する。
【0044】
給紙装置21は、図示しないマガジンにスタックされた用紙12を上側から順に1枚ずつ給紙トレイ22に給紙する。
【0045】
給紙トレイ22は、給紙装置21から給紙された用紙12を渡し胴23に向けて送り出す。
【0046】
渡し胴23は、給紙トレイ22から送り出された用紙12を受け取り、所定の搬送経路に沿って搬送して、処理液付与部30の搬送ドラム31に受け渡す。
【0047】
なお、本実施の形態のインクジェット記録装置10では、用紙12には、インクジェット専用紙ではない汎用の印刷用紙(たとえば、上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする用紙)が用いられる。
【0048】
<処理液付与部>
処理液付与部30は、用紙12の印刷面に所定の処理液を付与する。この処理液付与部30は、主として、用紙12を搬送する搬送ドラム(以下、「処理液付与ドラム」という。)31と、処理液付与ドラム31によって搬送される用紙12の印刷面に所定の処理液を付与する処理液付与装置32と、処理液付与ドラム31に付着した余剰処理液を剥離除去する剥離除去装置33で構成される。
【0049】
処理液付与ドラム31は、給紙部20の渡し胴23から用紙12を受け取り(グリッパGで用紙12の先端を把持して受け取る。)、回転して用紙12を搬送する。
【0050】
処理液付与装置32は、処理液付与ドラム31によって搬送される用紙12の印刷面にインク中の色材を凝集させる機能を有する処理液を付与する。本実施の形態のインクジェット記録装置10では、処理液をローラ塗布する塗布装置で構成され、周面に処理液が付与された塗布ローラ32Aを用紙12の表面に押圧当接させて、用紙12の印刷面に処理液を付与する。
【0051】
塗布ローラ32Aは、処理液付与ドラム31の幅に対応して形成され、処理液付与ドラム31と平行に設けられる。この塗布ローラ32Aの外周面には、供給ローラ32Bが当接される。供給ローラ32Bは、一部が図示しない処理液槽に貯留された処理液中に浸漬され、回転することにより、その外周面に処理液が付与される。供給ローラ32Bは、塗布ローラ32Aの回転に連動して回転し、これにより、その外周面に処理液が付与される。そして、この供給ローラ32Bの外周面に付与された処理液が、塗布ローラ32Aの外周面に転写されて、塗布ローラ32Aに処理液が供給される。
【0052】
処理液付与装置32は、図示しない進退移動機構によって所定の塗布位置と退避位置との間を移動自在に設けられる。処理液付与装置32が塗布位置に移動すると、塗布ローラ32Aが処理液付与ドラム31の外周面に押圧当接される。一方、処理液付与装置32が退避位置に移動すると、塗布ローラ32Aが処理液付与ドラム31から離間する。用紙12に処理液を塗布する場合は、用紙12の通過に合わせて、処理液付与装置32を塗布位置に移動させる。これにより、必要な領域にのみ処理液を付与できる。
【0053】
なお、処理液は、用紙12の印刷領域に対応して付与され、少なくとも印刷領域以上の領域に付与される。したがって、縁無し印刷する場合は、用紙幅以上の幅で付与される。
【0054】
ここで、処理液の付与幅は、供給ローラ32Bから塗布ローラ32Aに供給する処理液の供給幅を調整することにより行われる。このため、供給ローラ32Bには、塗布ローラ32Aとの当接部の上流側に供給幅を調整する機構(たとえば、供給幅に応じて両サイドの余剰分を掻き落とす機構)が設けられる。
【0055】
このような処理液を事前に付与してインクを打滴することにより、フェザリングやブリーディング等を抑止でき、高品位な印刷を行うことができる。
【0056】
剥離除去装置33は、処理液付与装置32で用紙12に処理液を付与する際に処理液付与ドラム31に付着した余剰処理液を処理液付与ドラム31から剥離除去する。すなわち、上記のように、縁無し印刷する場合は、用紙幅以上の付与幅で処理液を付与するため、処理液付与ドラム側にも処理液が付着してしまう。そこで、この処理液付与ドラム31の外周面上に存在する余剰処理液を剥離除去装置33で除去する。本例のインクジェット記録装置10では、処理液付与ドラム31の外周面にブレード33Aを当接させて、処理液付与ドラム31の外周面上に付着した余剰処理液を除去する。
【0057】
以上のように構成された処理液付与部30によれば、用紙12は処理液付与ドラム31によって所定の搬送経路を搬送される。そして、その搬送過程で処理液付与装置32から印刷面に処理液が付与される。印刷面に処理液が付与された用紙12は、その後、所定位置で処理液付与ドラム31から渡し胴80に受け渡される。そして、渡し胴80によって所定の搬送経路を搬送されて、画像記録部40の搬送ドラム41に受け渡される。
【0058】
ここで、上記のように、渡し胴80には、その内部にドライヤ84が設置されており、ガイド板83に向けて温風が吹き出されている。用紙12は、この渡し胴80によって処理液付与部30から画像記録部40に搬送される過程で印刷面に温風が吹き当てられ、乾燥処理される(付与された処理液中の溶媒成分が蒸発除去される。)。
【0059】
<画像記録部>
画像記録部40は、用紙12の印刷面にC、M、Y、Kの各色のインク滴を打滴して、用紙12の印刷面にカラー画像を描画する。この画像記録部40は、主として、用紙12を搬送する搬送ドラム(以下、「画像記録ドラム」という。)41と、画像記録ドラム41によって搬送される用紙12の印刷面を押圧して、用紙12の裏面を画像記録ドラム41の周面に密着させる用紙押さえローラ42と、用紙押さえローラ42を通過した用紙12の浮きを検出する用紙浮き検出センサ43と、用紙12にC、M、Y、Kの各色のインク滴を吐出するインクジェットヘッド44C、44M、44Y、44Kとを備えて構成される。
【0060】
画像記録ドラム41は、渡し胴80から用紙12を受け取り、回転して用紙12を搬送する。画像記録ドラム41には、図示しない吸着保持機構が備えられている。画像記録ドラム41に搬送される用紙12は、この吸着保持機構によって裏面が吸着保持された状態で搬送される。吸着保持機構は、たとえば、用紙12を真空吸着する機構や静電吸着する機構などが採用される。
【0061】
用紙押さえローラ42は、画像記録ドラム41の用紙受取位置(渡し胴80から用紙12を受け取る位置)の近傍に設置される。この用紙押さえローラ42は、所定の押圧力をもって画像記録ドラム41の周面に押圧当接させて設置される。渡し胴80から画像記録ドラム41に受け渡された用紙12は、この用紙押さえローラ42を通過することによりニップされ、裏面が画像記録ドラム41の外周面に密着される。
【0062】
用紙浮き検出センサ43は、用紙押さえローラ42を通過した用紙12の浮き(画像記録ドラム41の外周面からの一定以上の浮き)を検出する。この用紙浮き検出センサ43は、たとえば、レーザ投光器とレーザ受光器とを備えて構成される。レーザ投光器は、画像記録ドラム41の一端から他端に向けて画像記録ドラム41の軸と平行なレーザ光を画像記録ドラム41の外周面から所定高さの位置に投光する。レーザ受光器は、画像記録ドラム41を挟んでレーザ投光器と対向して配置され、レーザ投光器から投光されたレーザ光を受光する。用紙押さえローラ42を通過した用紙12に一定以上の浮きが生じていると、レーザ投光器から投光されたレーザ光が用紙12に遮られ、レーザ受光器で受光されなくなる。用紙浮き検出センサ43は、このレーザ受光器でのレーザ光の受光の有無を検出して、用紙12の浮きを検出する。
【0063】
4台のインクジェットヘッド44C、44M、44Y、44Kは、用紙浮き検出センサ43の後段に配されており、用紙12の搬送経路に沿って一定の間隔で配置されている。このインクジェットヘッド44C、44M、44Y、44Kは、用紙幅に対応したラインヘッドで構成されており、そのノズル面に形成されたノズル列から、画像記録ドラム41に向けて対応する色のインク滴を吐出する。
【0064】
以上のように構成された画像記録部40によれば、用紙12は画像記録ドラム41によって裏面を吸着保持されながら所定の搬送経路を搬送される。渡し胴80から画像記録ドラム41に受け渡された用紙12は、まず、用紙押さえローラ42でニップされて、画像記録ドラム41の外周面に密着される。次いで、用紙浮き検出センサ43によって、浮きの有無が検出され、その後、各インクジェットヘッド44C、44M、44Y、44KからC、M、Y、Kの各色のインク滴が印刷面に打滴されて、印刷面にカラー画像が描画される。
【0065】
ここで、本例のインクジェット記録装置10では、各色ともにインク中に熱可塑性樹脂が分散された水性インクが使用される。このような水性インクを用いた場合であっても、上記のように、用紙12には所定の処理液が付与されているので、フェザリングやブリーディング等を起こすことなく、高品位な印刷を行うことができる。
【0066】
画像が描画された用紙12は、渡し胴90に受け渡され、渡し胴90によって所定の搬送経路を搬送されて、インク乾燥部50の搬送ドラム51に受け渡される。なお、上記のように、渡し胴90には、その内部にドライヤ94が設置されており、ガイド板93に向けて温風が吹き出されている。インクの乾燥処理は、後段のインク乾燥部50で行われるが、用紙12は、この渡し胴90による搬送時にも乾燥処理が施される。
【0067】
<インク乾燥部>
インク乾燥部(乾燥装置)50は、画像記録後の用紙12に残存する液体成分を乾燥させる。このインク乾燥部50は、主として、用紙12を搬送する搬送ドラム(以下、「インク乾燥ドラム」という。)51と、インク乾燥ドラム51によって搬送される用紙12の表面(印刷面)に温風を吹き当てる3台の送風装置52A、52B、52Cと、用紙12の浮上を抑える接触ガード300A、300B、300Cとを備えて構成される。
【0068】
インク乾燥ドラム51は、渡し胴90から用紙12を受け取り、回転して用紙12を搬送する。上記のように、用紙12は、先端部をグリッパ(把持手段)Gに把持されて搬送される(本例のインク乾燥ドラム51では、先端部のみが把持され、後端の固定や吸着保持は行われずに搬送される。)。
【0069】
各送風装置52A、52B、52C(以下、特に区別する場合を除いて「送風装置52」と記載する。)は、インク乾燥ドラム51によって搬送される用紙12に向けて温風(たとえば、80℃)を吹き出す。
【0070】
この送風装置52は、用紙幅に対応して形成され、熱源(たとえば、赤外線ヒータ等)と、ファンが内蔵される。熱源で熱せられた空気は、ファンで送風され、温風として吹出口53(53A、53B、53C)から吹き出される。吹出口53は、用紙幅に対応したスリット状に形成され、用紙12の搬送方向と直交して配置される。
【0071】
各送風装置52は、吹出口53がインク乾燥ドラム51の外周に近接して配置され(インク乾燥ドラム51の外周から約40mm程度の高さの位置に配置される。)。この際、インク乾燥ドラム51によって搬送される用紙12を押さえ込むようにして、用紙12の搬送方向の下流側から上流側に向けて温風を吹き出すように配置される。すなわち、接線方向に対して斜め上方から温風を吹き当てるように配置される。
【0072】
接触ガード300A、300B、300C(以下、特に区別する場合を除いて「接触ガード300」と記載する。)は、送風を受けて浮上する用紙12を抑えて、用紙12の表面(印刷面)が擦れるのを防止する。特に、本例では、送風装置52の吹出口53がインク乾燥ドラム51の外周に近接して配置されていることから、この吹出口53に擦れるのを防止する。このため、各送風装置52に対応して接触ガード300が設置される。
【0073】
接触ガード300は、回転軸に所定の間隔をもって取り付けられた複数個のコロで構成され、インク乾燥ドラム51の外周から所定高さの位置に配置される。本例では、送風装置52の吹出口53に擦れるのを防止するため、吹出口53の下部に配置される。コロは、用紙12が接触したときにスリップするのを防止するため、用紙12とほぼ同じ速度で回転駆動される。この点については、後に詳述する。
【0074】
以上のように構成されたインク乾燥部50によれば、用紙12はインク乾燥ドラム51によって搬送される。そして、その搬送過程で印刷面に送風装置52から温風が吹き付けられて、印刷面に付与されたインクが乾燥される。
【0075】
送風装置52を通過した用紙12は、その後、所定位置でインク乾燥ドラム51から渡し胴100に受け渡される。そして、渡し胴100によって所定の搬送経路を搬送されて、定着部60の搬送ドラム61に受け渡される。
【0076】
なお、上記のように、渡し胴100には、その内部にドライヤ104が設置されており、ガイド板103に向けて温風が吹き出されている。したがって、用紙12は、この渡し胴100での搬送時にも乾燥処理が施される。
【0077】
インク乾燥部50については、後にさらに詳述する。
【0078】
<定着部>
定着部60は、用紙12を加熱加圧して、印刷面に画像記録された画像を定着させる。この定着部60は、用紙12を搬送する搬送ドラム(以下、「定着ドラム」という。)61と、定着ドラム61によって搬送される用紙12に加熱加圧処理を施すヒートローラ62、63と、印刷後の用紙12の温度、湿度等を検出するとともに、印刷された画像を撮像するインラインセンサ64とを備えて構成される。
【0079】
定着ドラム61は、渡し胴100から用紙12を受け取り、回転して用紙12を搬送する。
【0080】
ヒートローラ62、63は、用紙12の印刷面に付与されたインクを加熱加圧することにより、インク中に分散された熱可塑性樹脂を溶着して、インクを皮膜化させる。また、これと同時に用紙12に生じたコックリング、カール等の変形を矯正する。各ヒートローラ62、63は、定着ドラム61とほぼ同じ幅で形成されており、内蔵するヒータによって所定温度に加熱される。また、各ヒートローラ62、63は、図示しない加圧手段によって、定着ドラム61の周面に所定の押圧力で押圧当接される。用紙12は、このヒートローラ62、63を通過することにより、ヒートローラ62、63によって加熱加圧される。
【0081】
インラインセンサ64は、温度計、湿度計、CCDラインセンサ等を備え、定着ドラム61によって搬送される用紙12の温度、湿度等を検出するとともに、用紙12に印刷された画像を撮像する。このインラインセンサ64の検出結果に基づいて、装置の異常やヘッドの吐出不良等がチェックされる。
【0082】
以上のように構成された定着部60によれば、用紙12は定着ドラム61によって搬送され、その搬送過程で印刷面にヒートローラ62、63が押圧当接されて、加熱加圧される。これにより、インク中に分散された熱可塑性樹脂が溶着されて、インクが皮膜化される。また、これと同時に用紙12に生じた変形が矯正される。
【0083】
定着処理が施された用紙12は、この後、所定位置で定着ドラム61から回収部70へと受け渡される。
【0084】
<回収部>
回収部70は、一連の印刷処理が行われた用紙12をスタッカ71に積み重ねて回収する。この回収部70は、用紙12を回収するスタッカ71と、定着部60で定着処理された用紙12を定着ドラム61から受け取り、所定の搬送経路を搬送して、スタッカ71に排紙する排紙コンベア72とを備えて構成される。
【0085】
定着部60で定着処理された用紙12は、定着ドラム61から排紙コンベア72に受け渡され、その排紙コンベア72によってスタッカ71まで搬送されて、スタッカ71内に回収される。
【0086】
《制御系》
図2は、本実施の形態のインクジェット記録装置10の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【0087】
同図に示すように、インクジェット記録装置10は、システムコントローラ200、通信部201、画像メモリ202、搬送制御部203、給紙制御部204、処理液付与制御部205、画像記録制御部206、インク乾燥制御部207、定着制御部208、回収制御部209、操作部210、表示部211等を備えている。
【0088】
システムコントローラ200は、インクジェット記録装置10の各部を統括制御する制御手段として機能するとともに、各種演算処理を行う演算手段として機能する。このシステムコントローラ200は、CPU、ROM、RAM等を備えており、所定の制御プログラムに従って動作する。ROMには、このシステムコントローラ200が、実行する制御プログラムや制御に必要な各種データが格納されている。
【0089】
通信部201は、所要の通信インターフェースを備え、その通信インターフェースと接続されたホストコンピュータとの間でデータの送受信を行う。
【0090】
画像メモリ202は、画像データを含む各種データの一時記憶手段として機能し、システムコントローラ200を通じてデータの読み書きが行われる。通信部201を介してホストコンピュータから取り込まれた画像データは、この画像メモリ202に格納される。
【0091】
搬送制御部203は、処理液付与部30、画像記録部40、インク乾燥部50、定着部60の各部における用紙12の搬送手段である搬送ドラム31、41、51、61と、渡し胴80、90、100の駆動を制御する。
【0092】
すなわち、各搬送ドラム31、41、51、61を駆動するモータの駆動を制御するとともに、各搬送ドラム31、41、51、61に備えられた、グリッパGの開閉を制御する。
【0093】
同様に各渡し胴80、90、100を駆動するモータの駆動を制御するとともに、各渡し胴80、90、100に備えられた、グリッパGの開閉を制御する。
【0094】
また、各搬送ドラム31、41、51、61には、用紙12を周面に吸着保持する機構が備えられているので、その吸着保持機構の駆動を制御する(本実施の形態では、用紙12を真空吸着するので、負圧発生手段としての真空ポンプの駆動を制御する。)。
【0095】
また、各渡し胴80、90、100には、ドライヤ84、94、104が備えられているので、その駆動(加熱量と送風量)を制御する。
【0096】
この搬送ドラム31、41、51、61と、渡し胴80、90、100の駆動は、システムコントローラ200からの指令に応じて制御される。
【0097】
給紙制御部204は、システムコントローラ200からの指令に応じて給紙部20を構成する各部(給紙装置21、渡し胴23等)の駆動を制御する。
【0098】
処理液付与制御部205は、システムコントローラ200からの指令に応じて処理液付与部30を構成する各部(処理液付与装置32、剥離除去装置33等)の駆動を制御する。
【0099】
画像記録制御部206は、システムコントローラ200からの指令に応じて画像記録部40を構成する各部(用紙押さえローラ42、インクジェットヘッド44C、44M、44Y、44K等)の駆動を制御する。
【0100】
インク乾燥制御部207は、システムコントローラ200からの指令に応じてインク乾燥部50を構成する各部(送風装置52等)の駆動を制御する。
【0101】
定着制御部208は、システムコントローラ200からの指令に応じて定着部60を構成する各部(ヒートローラ62、63、インラインセンサ64等)の駆動を制御する。
【0102】
回収制御部209は、システムコントローラ200からの指令に応じて回収部70を構成する各部(排紙コンベア72等)の駆動を制御する。
【0103】
操作部210は、所要の操作手段(たとえば、操作ボタンやキーボード、タッチパネル等)を備えており、その操作手段から入力された操作情報をシステムコントローラ200に出力する。システムコントローラ200は、この操作部210から入力された操作情報に応じて各種処理を実行する。
【0104】
表示部211は、所要の表示装置(たとえば、LCDパネル等)を備えており、システムコントローラ200からの指令に応じて所要の情報を表示装置に表示させる。
【0105】
上記のように、用紙に記録する画像データは、ホストコンピュータから通信部201を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、画像メモリ202に格納される。システムコントローラ200は、この画像メモリ202に格納された画像データに所要の信号処理を施してドットデータを生成し、生成したドットデータに従って画像記録部40の各インクジェットヘッドの駆動を制御することにより、その画像データが表す画像を用紙に記録する。
【0106】
ドットデータは、一般に画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理は、sRGBなどで表現された画像データ(たとえば、RGB8ビットの画像データ)をインクジェット記録装置10で使用するインクの各色のインク量データに変換する処理である(本例では、C、M、Y、Kの各色のインク量データに変換する。)。ハーフトーン処理は、色変換処理により生成された各色のインク量データに対して誤差拡散等の処理で各色のドットデータに変換する処理である。
【0107】
システムコントローラ200は、画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って各色のドットデータを生成する。そして、生成した各色のドットデータに従って、対応するインクジェットヘッドの駆動を制御することにより、画像データが表す画像を用紙に記録する。
【0108】
《印刷動作》
次に、上記のインクジェット記録装置10による印刷動作について説明する。
【0109】
システムコントローラ200から給紙装置21に給紙指令が出力されると、給紙装置21から給紙トレイ22に用紙12が給紙される。給紙トレイ22に給紙された用紙12は、渡し胴23を介して処理液付与部30の処理液付与ドラム31に受け渡される。
【0110】
処理液付与ドラム31に受け渡された用紙12は、処理液付与ドラム31によって所定の搬送経路を搬送され、その搬送過程で処理液付与装置32を通過して、印刷面に処理液が付与される。
【0111】
処理液が付与された用紙12は、処理液付与ドラム31から渡し胴80に受け渡され、渡し胴80によって所定の搬送経路を搬送されて、画像記録部40の画像記録ドラム41に受け渡される。そして、その渡し胴80による搬送過程で渡し胴80の内部に設置されたドライヤ84から印刷面に熱気が吹き付けられ、印刷面に付与された処理液が乾燥される。
【0112】
渡し胴80から画像記録ドラム41に受け渡された用紙12は、まず、用紙押さえローラ42を通過することにより、用紙押さえローラ42にニップされて、画像記録ドラム41の外周面に密着される。その後、各インクジェットヘッド44C、44M、44Y、44Kを通過して、各インクジェットヘッド44C、44M、44Y、44KからCMYKの各色のインク滴が打滴され、印刷面にカラー画像が描画される。画像が描画された用紙12は、その後、画像記録ドラム41から渡し胴90に受け渡される。
【0113】
渡し胴90に受け渡された用紙12は、その渡し胴90によって所定の搬送経路を搬送されて、インク乾燥部50のインク乾燥ドラム51に受け渡される。そして、その搬送過程で渡し胴90の内部に設置されたドライヤ94から印刷面に熱気が吹き付けられて、印刷面に付与されたインクが乾燥される。
【0114】
インク乾燥ドラム51に受け渡された用紙12は、インク乾燥ドラム51によって所定の搬送経路を搬送され、その搬送過程で送風装置52から温風が印刷面に吹き付けられて、印刷面に残存する液体成分が乾燥される。
【0115】
乾燥処理された用紙12は、インク乾燥ドラム51から渡し胴100に受け渡され、所定の搬送経路を搬送されて、定着部60の定着ドラム61に受け渡される。そして、その渡し胴100による搬送過程で渡し胴100の内部に設置されたドライヤ104から印刷面に熱気が吹き付けられ、印刷面に付与されたインクが、さらに乾燥される。
【0116】
定着ドラム61に受け渡された用紙12は、定着ドラム61によって所定の搬送経路を搬送され、その搬送過程でヒートローラ62、63に加熱加圧されて、印刷面に画像記録された画像が定着される。その後、用紙12は、定着ドラム61から回収部70の排紙コンベア72に受け渡され、排紙コンベア72によってスタッカ71まで搬送されて、スタッカ71内に排紙される。
【0117】
以上のように、本実施の形態のインクジェット記録装置10では、用紙12をドラム搬送し、その搬送過程で用紙12に対し、処理液の付与、処理液の乾燥、インク滴の打滴、乾燥、定着の各処理を施して、用紙12に所定の画像を記録する。
【0118】
《インク乾燥部(乾燥装置)の具体的構成》
〈構成〉
図3は、インク乾燥部の構成を示す側面図である。
【0119】
上記のように、インク乾燥部50は、インク乾燥ドラム51と、送風装置52とを備え、インク乾燥ドラム51によって搬送される用紙12に送風装置52から温風を吹き当てて、用紙12を乾燥処理する。
【0120】
インク乾燥ドラム51は、用紙12の先端のみを把持して、用紙12を搬送する。しかし、このような搬送方式の場合、風を吹き当てると、用紙12の後端が浮上し、物に擦れるおそれがある。特に、乾燥効率を上げるために、送風装置52の吹出口53をインク乾燥ドラム51の外周に近接して配置すると、その吹出口53に浮上した用紙12が擦れるおそれがある。
【0121】
そこで、本例のインク乾燥部50には、浮上した用紙12が送風装置52の吹出口53に擦れるのを防止するため、用紙12の浮上を抑える接触ガード300が備えられている。
【0122】
以下、この接触ガード300の構成について説明する。
【0123】
図4は接触ガードの構成を示す側面断面図である。また、図5は、図4の5−5矢視図である。
【0124】
本例の接触ガード300は、用紙12が送風装置52の吹出口53に接触するのを防止するように設置される。特に、本例の接触ガード300では、送風装置52に一体的に組み付けられて設置される。
【0125】
接触ガード300は、主として、回転軸302と、複数のコロ304と、複数の羽根車306とで構成される。
【0126】
回転軸302は、インク乾燥ドラム51の幅とほぼ同じ長さで形成される。この回転軸302は、送風装置52に設置された一対の軸受308に軸支される。
【0127】
一対の軸受308は、送風装置52の吹出口53の両端部にブラケット310を介して取り付けられる。回転軸302は、この軸受308に軸支されることにより、送風装置52の長手方向に沿って配置される。送風装置52は、インク乾燥ドラム51の軸と平行にされるので、回転軸302もインク乾燥ドラム51の軸と平行に配置される。
【0128】
コロ304は、円盤状に形成され、回転軸302に所定の間隔をもって取り付けられる。本例では、図6に示すように、5つのコロ304が一定間隔で取り付けられている。このコロ304の設置数、設置間隔は、用紙12の幅に応じて適宜増減される。この際、少なくとも用紙12の中央部、及び、両端部を抑えるように配置することが好ましい。また、コロ304の外径については、コロ304を設置する位置や設定すべきギャップ(インク乾燥ドラム51との間に形成する隙間)等に基づいて決定される。
【0129】
コロ304は、回転軸302に固定して取り付けられる。したがって、回転軸302が回転すると、コロ304も回転する。
【0130】
羽根車306は、コロ304と同じ回転軸302に取り付けられ、各コロ304の間に配置される。この羽根車306は、円筒状の軸部312の外周部に多数のフィン314が放射状に取り付けられた構造を有し、その外径はコロ304の外径よりも小さく形成される。
【0131】
羽根車306は、軸部312を回転軸302に固定して取り付けられる。したがって、羽根車306が回転すると、回転軸302も回転する。
【0132】
接触ガード300は、以上のように構成される。
【0133】
ここで、上記のように、本例の接触ガード300は、用紙12が送風装置52の吹出口53に擦れるのを防止するように設置される。
【0134】
本例の送風装置52は、インク乾燥ドラム51の外周部に近接して設置され、かつ、用紙12に対して斜め上方から温風が吹き当てられるように設置される。
【0135】
このため、接触ガード300は、送風装置52の吹出口53が、インク乾燥ドラム51の外周に最も近接する位置に配置される。図3に示す例では、吹出口53の下縁部が最もインク乾燥ドラム51の外周に近接して配置されているので、吹出口53の下縁部に沿って配置される。
【0136】
また、接触ガード300は、吹出口53から吹き出される風(温風)を受けて羽根車306が回転するように設置される。したがって、必要に応じて、図4に示すように、吹出口53の一部が切り欠いて形成される。図4に示す例では、吹出口53の下縁部が、一部切り欠いて形成されている。
【0137】
さらに、接触ガード300は、羽根車306が、吹出口53から吹き出す風で回転する際、コロ304の外周が、用紙12の搬送速度とほぼ同じ速度で回転するように調整される。この調整は、たとえば、羽根車306のフィン314の形状や数によって行われる。すなわち、通常、送風装置52が吹き出す温風の風量は一定なので、これを受ける羽根車306のフィン314の形状や数によって、コロ304が回転する速度を調整する。
【0138】
〈作用〉
以上のように構成されたインク乾燥部50の作用は次のとおりである。
【0139】
前段の画像記録部40で表面(印刷面)にインクが付与され、画像が描画された用紙12は、渡し胴90を介してインク乾燥ドラム51に受け渡される。
【0140】
インク乾燥ドラム51は、用紙12の先端部を把持して回転することにより、用紙12を一定の速度(たとえば、600mm/s)で搬送する。
【0141】
用紙12は、このインク乾燥ドラム51によって搬送される過程で各送風装置52A、52B、52Cから吹き出される温風が、表面(印刷面)に吹き当てられて乾燥処理される。
【0142】
ここで、各送風装置52には接触ガード300が備えられている。接触ガード300は、各送風装置52から温風を吹き出すと、吹きだした温風の風力を受けて、コロ304が回転する。そして、このコロ304は、用紙12の搬送速度とほぼ同じ速度で回転する。
【0143】
一方、上記のように、用紙12の先端部のみ把持して搬送すると、用紙12の後端部が浮き上がる場合がある。この場合、用紙12は、接触ガード300のコロ304に接触する。
【0144】
しかしながら、上記のように、コロ304は用紙12とほぼ同じ速度で回転しているため、スリップを起こすことがない。したがって、インクが、いまだ乾いていない状態に接触した場合であっても、画像が擦れて傷つくことがない。
【0145】
このように、本実施の形態のインク乾燥部50では、浮上した用紙12が接触しそうな位置にコロ304が配置され、かつ、そのコロ304が、用紙12の搬送速度とほぼ同じ速度で回転駆動される。これにより、擦れによる画像の傷を効果的に防止することができる。
【0146】
また、本実施の形態のインク乾燥部50では、送風装置52から吹き出される温風を利用して、コロ304が回転駆動される。これにより、構造を簡素化することができるともに、電力消費も抑えることができる。シンプルな構造であるため、複数箇所に設置する場合であっても、簡単に設置することができる。
【0147】
なお、上記の実施の形態では、コロ304と羽根車306とを同じ回転軸302に取り付け、羽根車306の回転をコロ304に直接伝達する構成としているが、ギア等の回転伝達手段を介して、羽根車の回転をコロに伝達する構成とすることもできる。この場合、ギア比等を調整して、コロ304の回転速度を調整することもできる。
【0148】
また、上記実施の形態では、フィン314の形状や数によって、コロ304の回転速度を調整することとしているが、コロ304の回転速度を調整する方法は、これに限定されるものではない。この他、羽根車306の設置位置(フィン314に温風が当たる位置)や、設置数等を単独又は複合的に調整することによっても、コロ304の回転速度を調整することができる。
【0149】
なお、スリップを完全に防止するためには、コロ304と用紙12の搬送速度を一致させることが好ましいが、完全に一致させることは難しい。
【0150】
そこで、コロ304は、用紙12の搬送速度の−10〜0%の誤差の範囲内で回転するように調整することが好ましい。これにより、コロ304と用紙12の速度を完全に一致させなくても、スリップを効果的に防止できる。すなわち、コロ側が若干遅くても、用紙12が接触した場合には、その用紙12にサポートされてコロ304も同速度で回転するため、スリップの発生を防止できる。一方、コロ304が用紙よりも速い場合は、コロ304が用紙上をスリップするおそれがあるので、用紙12の搬送速度よりも若干遅い、−10〜0%の誤差の範囲内でコロ304が回転するように調整する。これにより、コロ304の回転の設定を簡単に行うことができる。
【0151】
また、コロ304の設置数や設置間隔は、用紙12の幅に応じて選択されるが、複数のサイズの用紙を処理するインクジェット記録装置の場合は、各サイズに対応可能な配置とすることが好ましい。たとえば、大、中、小の3サイズの用紙に対応したインクジェット記録装置の場合、図7に示すように、各サイズの幅方向の両端に対応した位置と、幅方向の中央に配置する。これにより、用紙12のサイズが切り替わった場合であっても、適切に接触を防止することができる。
【0152】
また、本例では、送風装置52の吹出口53への接触を防止する目的で接触ガード300を設置しているが、接触ガードを設置する位置は、これに限定されるものではない。浮上した用紙12が擦れそうな位置に配置することが好ましい。
【0153】
また、本例では、接触ガード300を送風装置52に直接取り付けているが、送風装置52への接触を防止する場合であっても、その取り付け位置は、送風装置52に限定されるものではない。目的とする物への接触を防止するのに適した位置に設置することが好ましい。
【0154】
《第2の実施の形態》
図8は、インク乾燥部の第2の実施の形態の要部の構成を示す側面断面図である。また、図9は、図8の9−9矢視図である。
【0155】
本実施の形態のインク乾燥部は、インク乾燥ドラム51の回転を利用して接触ガードのコロを回転させる点で上記第1の実施の形態のインク乾燥部と相違する。
【0156】
したがって、ここでは、接触ガードの構成、及び、その作用効果についてのみ説明する。
【0157】
図8、9に示すように、本実施の形態の接触ガード400は、主として、回転軸402と、複数のコロ404と、一対の駆動ローラ406と、一対の回転伝達機構408とで構成される。
【0158】
回転軸402は、インク乾燥ドラム51の幅とほぼ同じ長さで形成される。この回転軸402は、送風装置52に設置された一対の軸受410に軸支される。
【0159】
一対の軸受410は、送風装置52の吹出口53の両端部にブラケット412を介して取り付けられる。回転軸402は、この軸受410に軸支されることにより、送風装置52の長手方向に沿って配置される。送風装置52は、インク乾燥ドラム51の軸と平行にされるので、回転軸402もインク乾燥ドラム51の軸と平行に配置される。
【0160】
コロ404は、円盤状に形成され、回転軸402に所定の間隔をもって取り付けられる(図6参照)。このコロ404の設置数、設置間隔は、用紙12の幅に応じて適宜増減される。この際、少なくとも用紙12の中央部、及び、両端部を抑えることができるように配置することが好ましい。
【0161】
コロ404は、回転軸402に固定して取り付けられる。したがって、回転軸402が回転すると、コロ404も回転する。
【0162】
一対の駆動ローラ406は、インク乾燥ドラム51の幅方向の両端に配置される。この駆動ローラ406は、ゴムローラで構成され、その軸部がブラケット412に設けられた軸受414に軸支されて、回転自在に設けられる。後述するように、駆動ローラ406は、その外周部がインク乾燥ドラム51の外周部に当接するように設置される。
【0163】
回転伝達機構408は、駆動ローラ406の回転を回転軸402に伝達する。この回転伝達機構408は、主として、従動ローラ416と、中間ローラ418とで構成される。
【0164】
従動ローラ416は、回転軸402に固定して取り付けられる。したがって、従動ローラ416が回転すると、回転軸402も回転する。この従動ローラ416は、ゴムローラで構成される。
【0165】
中間ローラ418は、その軸部がブラケット412に設けられた軸受420に軸支されて、回転自在に設けられる。
【0166】
駆動ローラ406と、従動ローラ416と、中間ローラ418は、ともにインク乾燥ドラム51と並行に設けられ、それぞれ同一平面上に位置するように配置される。また、中間ローラ418は、その外周部が駆動ローラ406の外周部に押圧当接されるとともに、従動ローラ416の外周部に押圧当接される。この結果、駆動ローラ406が回転すると、その回転が中間ローラ418を介して従動ローラ416に伝達され、従動ローラ416が回転する。そして、この従動ローラ416が回転することにより、回転軸402が回転し、コロ404が回転する。
【0167】
上記のように、接触ガード400は、その設置に際して、駆動ローラ406が、インク乾燥ドラム51の外周部に当接するように設置される。これにより、インク乾燥ドラム51の回転に連動して、コロ404が回転する。すなわち、インク乾燥ドラム51が回転すると、そのインク乾燥ドラム51に当接された駆動ローラ406が同時に回転し、その回転が中間ローラ418を介して従動ローラ416に伝達される。これにより、回転軸402が回転し、その回転軸402に取り付けられたコロ404が回転する。この際、コロ404は、用紙12の搬送速度と同じ速度で回転する。
【0168】
このように、本実施の形態のインク乾燥部50によれば、インク乾燥ドラム51の回転を利用して、コロ404を用紙12の搬送速度と同じ速度で回転させることができる。これにより、簡単な構成で画像に傷をつけることなく用紙12を乾燥処理することができる。
【0169】
なお、本例では、駆動ローラ406の回転を従動ローラ416と中間ローラ418とからなる回転伝達機構408でコロ404に伝達する構成としているが、駆動ローラ406の回転をコロ404に伝達する構成は、これに限定されるものではない。この他、たとえば、ギア列からなる回転伝達機構を介して、駆動ローラ406の回転をコロ404に伝達するようにしてもよい。
【0170】
なお、駆動ローラ406の設置位置は、用紙12の搬送を阻害しない位置(たとえば、本例のように、インク乾燥ドラム51の両端部)とするが、インク乾燥ドラム51の外周面上に駆動ローラ406を直接当接させることができない場合は、インク乾燥ドラム51の動軸上にインク乾燥ドラム51の外径と同径の回転板を取り付け、その回転板の外周部に駆動ローラ406を当接させる構成とすることもできる。特に、インク乾燥ドラム51の外周部が真円ではなく、凸部や凹部が形成されている場合(たとえば、グリッパの設置部等)には、それらの部位を避けて、あるいは、上記のように回転板を取り付けて、駆動ローラ406を設置する。
【0171】
また、本例では、駆動ローラ406は、回転軸402の両端に配置しているが、片側のみに設置する構成とすることもできる。
【0172】
《第3の実施の形態》
図10は、インク乾燥部の第3の実施の形態の要部の構成を示す側面断面図である。また、図11は、図10の11−11矢視図である。
【0173】
本実施の形態のインク乾燥部は、インク乾燥ドラム51の回転を利用して接触ガードのコロを回転させる点で上記第2の実施の形態のインク乾燥部と共通するが、本実施の形態のインク乾燥部は、磁力を利用して、コロを回転させる点で上記第2の実施の形態のインク乾燥部と相違する。
【0174】
したがって、ここでは、接触ガードの構成、及び、その作用効果についてのみ説明する。
【0175】
図10、11に示すように、本実施の形態の接触ガード500は、主として、回転軸502と、複数のコロ504と、一対の磁石車506とで構成される。
【0176】
回転軸502は、インク乾燥ドラム51の幅とほぼ同じ長さで形成される。この回転軸502は、送風装置52に設置された一対の軸受508に軸支される。
【0177】
一対の軸受508は、送風装置52の吹出口53の両端部にブラケット512を介して取り付けられる。回転軸502は、この軸受508に軸支されることにより、送風装置52の長手方向に沿って配置される。送風装置52は、インク乾燥ドラム51の軸と平行にされるので、回転軸502もインク乾燥ドラム51の軸と平行に配置される。
【0178】
コロ504は、円盤状に形成され、回転軸502に所定の間隔をもって取り付けられる(図6参照)。このコロ504の設置数、設置間隔は、用紙12の幅に応じて適宜増減される。この際、少なくとも用紙12の中央部、及び、両端部を抑えることができるように配置することが好ましい。
【0179】
各コロ504は、回転軸502に固定して取り付けられる。したがって、回転軸502が回転すると、コロ504も回転する。
【0180】
磁石車506は、円盤状に形成され、コロ504と同じ外径で形成される。そして、その外周部には、周方向に沿って一定の間隔でN極の磁石506NとS極の磁石506Sとが交互に配置される。
【0181】
磁石車506は、回転軸502の両端に配置され、回転軸502に固定して取り付けられる。したがって、磁石車506が回転すると、回転軸502も回転する。
【0182】
送風装置52は、その設置に際して、磁石車506がインク乾燥ドラム51の外周部から所定高さに位置するように設置される。すなわち、磁石車506の外周部とインク乾燥ドラム51の外周部との間に所定のギャップが形成されるように配置される。
【0183】
インク乾燥ドラム51の外周部の両端には、一対の磁石車506の設置位置に対応して、磁石部510が形成される。この磁石部510は、所定幅のリング状に形成され、周方向に沿ってN極の磁石510NとS極の磁石510Sとが交互に配置される。このN極の磁石510NとS極の磁石510Sの配置間隔は、磁石車506に配置されたN極の磁石506NとS極の磁石506Sの配置間隔と同じ間隔に設定される。
【0184】
本実施の形態の接触ガード500は以上のように構成される。
【0185】
上記のように、送風装置52は、その設置に際して、磁石車506がインク乾燥ドラム51の外周部から所定高さに位置するように設置される(非接触で互いの磁力が作用する位置に配置される。)。
【0186】
この結果、インク乾燥ドラム51が回転すると、磁石部510に設けられた磁石と、磁石車506に設けられた磁石との作用によって、磁石車506が回転する。
【0187】
この際、磁石車506の外周部は、インク乾燥ドラム51の外周部と同じ周速度で回転する。すなわち、磁石車506とインク乾燥ドラム51は、同じ間隔でN極の磁石とS極の磁石が取り付けられているため、同じ周速度で回転する。
【0188】
これにより、浮上した用紙12がコロ504に接触しても、スリップが生じないので、乾燥前の印刷面がコロ504に触れても、画像が傷つくことがない。
【0189】
磁石の配置間隔の設定方法の一例を以下に示す。
【0190】
磁石の配置間隔をP、コロの磁石の配置角度をθm、インク乾燥ドラムの磁石の配置角度をθM、コロの径をd、インク乾燥ドラムの外径をD、インク乾燥ドラムに配置する磁石の数をnMとする。
【0191】
コロにnm個の磁石を配置する場合、磁石の配置間隔Pは、P=dπ/nmと設定される。この場合、コロに配置する磁石の配置角度θmは、θm=360/nmと設定される。
【0192】
また、インク乾燥ドラムに配置する磁石の数nMは、nM=Dπ/Pと設定され、インク乾燥ドラムに配置する磁石の配置角度θMは、θM=360/nMと設定される。
【0193】
例)インク乾燥ドラムの外径Dがφ450mm、コロの外径dが50mmの場合において、コロに8個の磁石を設置する場合を考える。
【0194】
この場合、コロに設置する磁石の配置間隔Pは、P=50・π/8=19.63mmと設定され、配置角度θmは、θm=360/8=45degと設定される。
【0195】
一方、インク乾燥ドラムに設置する磁石の配置数nMは、nM=450・π/19.63=72個と設定され、配置角度θMは、θM=360/72=5degと設定される。
【0196】
すなわち、コロには45deg間隔でN極とS極の磁石を交互に配置し(8個配置)し、インク乾燥ドラムには、5deg間隔でN極とS極の磁石を交互に配置する。この場合、磁石の配置間隔Pは、19.63mmとなる。
【0197】
このように磁石を設置することにより、コロの外周部の周速度をインク乾燥ドラムの外周部の周速度と同じにすることができる。そして、この結果、コロを用紙の搬送速度と同じ速度で回転させることができる。
【0198】
このように、本実施の形態のインク乾燥部50によれば、インク乾燥ドラム51の回転を利用して、コロ504を用紙12の搬送速度と同じ速度で回転させることができる。これにより、簡単な構成で画像に傷をつけることなく用紙12を乾燥処理することができる。
【0199】
なお、本例では、磁石車506の回転を回転軸502に直接伝達する構成としているが、ギア列等からなる回転伝達機構を介して、磁石車506の回転を回転軸502に伝達するようにしてもよい。
【0200】
また、本例では、磁石車506を回転軸402の両端に配置しているが、片側のみに設置する構成とすることもできる。この場合、磁石部510もインク乾燥ドラム51の片側にのみ形成する。
【0201】
<その他の実施の形態>
上記実施の形態では、送風装置52から送風される風の力、又は、インク乾燥ドラム51の回転の力を利用して、コロを回転させる構成としているが、送風装置52から送風される風の力と、インク乾燥ドラム51の回転の力を複合的に利用して、コロを回転させる構成とすることもできる。この場合も、コロは用紙の搬送速度とほぼ同じ速度になるように回転させる。これにより、印刷面が接触しても、画像を傷つけずに用紙を乾燥処理することができる。
【0202】
また、上記一連の実施の形態では、本発明を汎用の印刷用紙に水性インクを用いて印刷する記録装置に適用した場合を例に説明したが、本発明の適用は、これに限定されるものではない。汎用の印刷用紙以外のメディアにインクジェット方式で記録する装置にも同様に適用することができる。また、水性インク以外のインクを用いて記録する装置にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0203】
10…インクジェット記録装置、12…用紙、20…給紙部、21…給紙装置、22…給紙トレイ、23…渡し胴、30…処理液付与部、31…搬送ドラム(処理液付与ドラム)、32…処理液付与装置、32A…塗布ローラ、32B…供給ローラ、33…剥離除去装置3、33A…ブレード、40…画像記録部、41…搬送ドラム(画像記録ドラム)、42…用紙押さえローラ、43…用紙浮き検出センサ、44(44C、44M、44Y、44K)…インクジェットヘッド、50…インク乾燥部、51…搬送ドラム(インク乾燥ドラム)、52(52A、52B、52C)…送風装置、53(53A、53B、53C)…吹出口、60…定着部、61…搬送ドラム(定着ドラム)、62、63…ヒートローラ、64…インラインセンサ、70…回収部、71…スタッカ、72…排紙コンベア、80…渡し胴、81…渡し胴本体、83…ガイド板、84…ドライヤ、90…渡し胴、91…渡し胴本体、93…ガイド板、94…ドライヤ、100…渡し胴、101…渡し胴本体、103…ガイド板、104…ドライヤ、200…システムコントローラ、201…通信部、202…画像メモリ、203…搬送制御部、204…給紙制御部、205…処理液付与制御部、206…画像記録制御部、207…インク乾燥制御部、208…定着制御部、209…回収制御部、210…操作部、211…表示部、300(300A、300B、300C)…接触ガード、302…回転軸、304…コロ、306…羽根車、308…軸受、310…ブラケット、312…軸部、314…フィン、400…接触ガード、402…回転軸、404…コロ、406…駆動ローラ、408…回転伝達機構、410…軸受、412…ブラケット、414…軸受、416…従動ローラ、418…中間ローラ、420…軸受、500…接触ガード、502…回転軸、504…コロ、506…磁石車、506N…N極の磁石、506S…S極の磁石、508…軸受、510…磁石部、510N…N極の磁石、510S…S極の磁石、512…ブラケット、G…グリッパ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が付与された用紙を乾燥処理する乾燥装置において、
回転するドラムの外周部に備えられた把持手段で前記用紙の先端を把持して、前記用紙を前記ドラムの外周に巻き掛けて搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送される用紙に向けて温風を送風する送風手段と、
前記ドラムの外周から所定高さの位置に回転自在に設けられ、前記送風手段による送風を受けて浮上する前記用紙を抑えるコロと、
前記ドラムの回転、及び/又は、前記送風手段の送風によって前記コロを前記用紙の搬送速度とほぼ同じ速度で同方向に回転させるコロ回転駆動手段と、
を備えたことを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
前記送風手段は、前記ドラムの外周に近接して温風の吹出口が設けられ、前記コロは、前記送風手段による送風を受けて浮上する前記用紙が前記吹出口に接触しないように配置されることを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記コロは、所定の幅をもって形成され、前記用紙の搬送方向と直交する方向の複数箇所に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記コロ回転駆動手段は、前記用紙の搬送速度の−10〜0%の誤差の範囲内で前記コロを回転させることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の乾燥装置。
【請求項5】
前記コロ回転駆動手段は、
前記送風手段の送風によって回転する羽根車と、
前記羽根車の回転を前記コロに伝達する回転伝達手段と、
からなることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の乾燥装置。
【請求項6】
前記回転伝達手段は、前記ドラムの軸と平行に設けられた回転軸であり、該回転軸に前記羽根車と前記コロとが取り付けられることを特徴とする請求項5に記載の乾燥装置。
【請求項7】
前記コロ回転駆動手段は、
前記ドラムの外周に当接して設置され、前記ドラムの回転によって回転するローラと、
前記ローラの回転を前記コロに伝達する回転伝達手段と、
からなることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の乾燥装置。
【請求項8】
前記コロ回転駆動手段は、
外周部が前記ドラムの外周部に近接して配置され、前記ドラムの軸と平行な軸の回りを回転する回転体と、
前記回転体の回転を前記コロに伝達する回転伝達手段と、
前記ドラムの外周部に一定の間隔をもって交互に配置されるとともに、前記回転体の外周部に一定の間隔をもって交互に配置されるS極とN極の磁石と、
からなることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の乾燥装置。
【請求項9】
前記回転伝達手段は、前記ドラムの軸と平行に設けられた回転軸であり、該回転軸に前記回転体と前記コロとが取り付けられることを特徴とする請求項8に記載の乾燥装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の乾燥装置を備え、インクが付与された用紙を該乾燥装置で乾燥処理することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項1】
液体が付与された用紙を乾燥処理する乾燥装置において、
回転するドラムの外周部に備えられた把持手段で前記用紙の先端を把持して、前記用紙を前記ドラムの外周に巻き掛けて搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送される用紙に向けて温風を送風する送風手段と、
前記ドラムの外周から所定高さの位置に回転自在に設けられ、前記送風手段による送風を受けて浮上する前記用紙を抑えるコロと、
前記ドラムの回転、及び/又は、前記送風手段の送風によって前記コロを前記用紙の搬送速度とほぼ同じ速度で同方向に回転させるコロ回転駆動手段と、
を備えたことを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
前記送風手段は、前記ドラムの外周に近接して温風の吹出口が設けられ、前記コロは、前記送風手段による送風を受けて浮上する前記用紙が前記吹出口に接触しないように配置されることを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記コロは、所定の幅をもって形成され、前記用紙の搬送方向と直交する方向の複数箇所に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記コロ回転駆動手段は、前記用紙の搬送速度の−10〜0%の誤差の範囲内で前記コロを回転させることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の乾燥装置。
【請求項5】
前記コロ回転駆動手段は、
前記送風手段の送風によって回転する羽根車と、
前記羽根車の回転を前記コロに伝達する回転伝達手段と、
からなることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の乾燥装置。
【請求項6】
前記回転伝達手段は、前記ドラムの軸と平行に設けられた回転軸であり、該回転軸に前記羽根車と前記コロとが取り付けられることを特徴とする請求項5に記載の乾燥装置。
【請求項7】
前記コロ回転駆動手段は、
前記ドラムの外周に当接して設置され、前記ドラムの回転によって回転するローラと、
前記ローラの回転を前記コロに伝達する回転伝達手段と、
からなることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の乾燥装置。
【請求項8】
前記コロ回転駆動手段は、
外周部が前記ドラムの外周部に近接して配置され、前記ドラムの軸と平行な軸の回りを回転する回転体と、
前記回転体の回転を前記コロに伝達する回転伝達手段と、
前記ドラムの外周部に一定の間隔をもって交互に配置されるとともに、前記回転体の外周部に一定の間隔をもって交互に配置されるS極とN極の磁石と、
からなることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の乾燥装置。
【請求項9】
前記回転伝達手段は、前記ドラムの軸と平行に設けられた回転軸であり、該回転軸に前記回転体と前記コロとが取り付けられることを特徴とする請求項8に記載の乾燥装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の乾燥装置を備え、インクが付与された用紙を該乾燥装置で乾燥処理することを特徴とするインクジェット記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−157984(P2012−157984A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17105(P2011−17105)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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