説明

乾燥食品の製造方法

【課題】 原料本来の味、風味、有効成分などを損なうことなく有した乾燥食品を、低コストで生産性よく製造できる乾燥食品の製造方法を提供すること。
【解決手段】 流動性食品原料を50mmHg以下の減圧乾燥室内に供給して乾燥させる食品原料の乾燥方法において、前記流動性食品原料を50〜100,000cpsの粘度になるように調製し、凍結させることなく、前記減圧乾燥室の圧力における前記流動性食品原料の沸点以下の温度下で、前記減圧乾燥室内に前記流動性食品原料を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば調味液、果汁、糖液、発酵食品等の流動性食品原料を減圧環境下で乾燥する食品乾燥物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品工業の分野において、食品やエキス等の保存性や使い易さ等を高めるため、乾燥粉末処理がなされている。このような乾燥処理として、例えば、熱風乾燥法、減圧乾燥法、逆浸透膜や限外濾過膜を用いて濃縮する方法等が知られている。なかでも、乾燥中の品温を低く抑えることができ、原料となる食品の味、風味、色の劣化が少なく、常圧下では乾燥が困難な高濃度、高粘度のものや、熱軟化性の原料を乾燥することもできるなどのメリットがあることから、減圧乾燥法が広く用いられている。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、麹甘酒に糖類、食塩、アルコール、呈味成分を加えて、水分が30〜70W/W%、粘度が500〜10,000cpsの混合物に調整した後、この混合物を減圧下で乾燥することで、風味及び溶解性に優れ、しかも米麹の形状を残した乾燥甘酒を製造できることが開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2では、真空下で液体原料を塊状に凍結させて得た塊状凍結物を、解砕機または整粒機を用いて均一な粒径の細粒状凍結物とし、その後、この細粒状凍結物を減圧乾燥することが開示されている。
【特許文献1】特許第2632681号公報
【特許文献2】特開2003-207268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、減圧環境下に流動性食品原料を供給すると、瞬時に沸騰して、装置内で食品原料が飛散したり、また、膨れ上がって膨化する傾向があった。このため、表面積が大きく乾燥効率が高くなるような形状で乾燥することが困難となり、乾燥効率や回収効率が充分得られないという問題点があった。
【0006】
一方、上記特許文献2のように、被乾燥物を一旦凍結させ、その後、減圧して水分を昇華させて乾燥する方法、すなわち、凍結乾燥処理であれば、装置内で食品原料が飛散したりすることはないが、一般的にエネルギー消費量や装置コストが高く、コスト的な問題があった。また、一旦原料となる食品を凍結させていることから、味、風味が劣化したり、また、タンパク質等が変性して栄養価値が損なわれがちであるという問題があった。
【0007】
したがって本発明の目的は、食品原料本来の味、風味、有効成分などを損なうことなく、低コストで生産性よく製造できる乾燥食品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するにあたって、本発明の乾燥食品の製造方法は、流動性食品原料を50mmHg以下の減圧乾燥室内に供給して乾燥させる食品原料の乾燥方法において、前記流動性食品原料を50〜100,000cpsの粘度になるように調製し、凍結させることなく、前記減圧乾燥室の圧力における前記流動性食品原料の沸点以下の温度下で、前記減圧乾燥室内に供給することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、減圧乾燥室内に、食品原料の沸点以下の温度で供給するようにしたので、供給直後に食品原料が急沸して膨化したり、周囲へ飛び散ったりすることがなく、表面積が大きく乾燥効率の高い形状で、減圧乾燥室に食品原料を供給でき、食品原料の乾燥効率及び回収効率を向上させることができる。また、食品原料を凍結させないので、エネルギー消費量や装置コストを低減でき、凍結変性等による味や風味の劣化がなく、風味が良好で栄養価値の高い乾燥食品を得ることができる。
【0010】
本発明においては、前記減圧乾燥室内に搬送手段が設けられ、この搬送手段の移動先に乾燥された食品原料を回収する回収手段が設けられており、前記搬送手段上に前記流動性食品原料を供給し、前記回収手段によって前記食品原料の乾燥物を回収することが好ましい。また、前記搬送手段が搬送ベルトからなり、前記回収手段が前記食品原料の乾燥物を粉砕して取出す手段からなることが好ましい。これによれば、食品原料を減圧乾燥室の搬送手段上に供給して、連続的に乾燥させて取出すことができるので、乾燥食品を効率的に製造できる。
【0011】
また、前記流動性食品原料を前記減圧乾燥室内に、前記減圧乾燥室の圧力における沸点以下の温度下で供給した後、前記温度を上昇させて乾燥を行うことが好ましい。そして、前記流動性食品原料を前記減圧乾燥室内に、前記減圧乾燥室の圧力における沸点以下の温度下で供給した後、前記温度を最終的に前記沸点以上まで上昇させて乾燥を行うことがより好ましい。こうすることで、食品原料から効率よく水分を除去でき、乾燥処理に要する時間を短縮化できる。
【0012】
また、前記流動性食品原料の供給を、口径5mm以下の円形ノズル、又は幅3mm以下のスリット状ノズルから吐出させることにより行うことが好ましい。これによれば、表面積を大きくした形状で供給することができるので、乾燥効率を高めて、短時間で、乾燥ムラなく、食品原料を乾燥することができる。
【0013】
また、前記流動性食品原料として、調味料原料、果汁原料、農産物を原料とするエキス原料、水産物を原料とするエキス原料、畜産物を原料とするエキス原料、タンパク原料、タンパク分解物原料、発酵食品原料から選ばれた1種以上を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、減圧乾燥室内に、食品原料の沸点以下の温度で供給するようにしたので、供給直後に食品原料が急沸して膨化したり、周囲へ飛び散ったりしたりすることがなく、供給時の吐出形状を維持したまま、表面積の大きい状態で、減圧乾燥室に食品原料を供給でき、その結果、乾燥食品の回収効率、乾燥効率を向上させることができる。また、食品原料を凍結させることなく乾燥するので、原料食品本来の味、風味、有効成分等を損なう虞れが無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の乾燥食品の製造方法は、流動性食品原料を凍結させることなく、減圧乾燥室の圧力における沸点以下の温度下で減圧乾燥室に供給し、乾燥することを特徴としている。
【0016】
本発明の乾燥食品の製造方法に用いることのできる流動性食品原料の種類としては、特に限定されるものではないが、例えば調味料原料、果汁原料、農産物を原料とするエキス原料、水産物を原料とするエキス原料、畜産物を原料とするエキス原料、タンパク原料、タンパク分解物原料、発酵食品原料及びこれらの混合物等が挙げられ、加熱乾燥による風味・外観等の劣化が起こりやすいという理由から、果汁原料、野菜汁原料、農産物を原料とするエキス原料、水産物を原料とするエキス原料、畜産物を原料とするエキス原料が好ましい。
【0017】
流動性食品原料には、例えばデキストリン、澱粉、食物繊維、その他糖類及びこれらの分解物、塩類、乳タンパク、植物性タンパク、その他タンパク及びこれらの分解物等の賦形剤や、例えば寒天、ゼラチン、キサンタンガム、アラビアガム、ジェランガム、カラギーナン、ローカストビーンガム、グアガム、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、その他の増粘多糖類等の増粘剤を添加することもできる。そして、流動性食品原料に、上記のような賦形剤や増粘剤、あるいは水を適宜添加することにより、50〜100,000cps、好ましくは1,000〜10,000cpsに調整する。流動性食品原料の粘度が50cps未満であると、減圧乾燥室に流動性原料を供給した際、吐出液が吐出形状を維持することが出来ずに減圧乾燥室に拡散しがちで、乾燥効率の低下、乾燥ムラ、収率低下の原因となり、100,000cpsを超えるとノズルからの吐出が困難となる。
【0018】
また、上記流動性食品原料は、凍結しない範囲で、減圧乾燥室の圧力における沸点以下の温度に調整することが好ましい。流動性食品原料の温度が前述のように調整されていれば、減圧乾燥室に供給した際において急沸して周囲へ飛散したり、膨化したりする虞れがないので、減圧乾燥室内に安定して供給できる。一方、流動性食品原料を一旦凍結してしまうと、凍結により原料となる食品の味や風味が劣化したり、タンパク質が変性したりする虞れがあり、更には、後の乾燥工程におけるエネルギー消費量が高くなり、ランニングコストがかかってしまう。
【0019】
本発明の乾燥食品の製造方法に用いることのできる減圧乾燥装置としては、食品の減圧乾燥に用いる従来公知の減圧乾燥装置を用いることができ、減圧乾燥室の内部に搬送手段が設けられ、この搬送手段の移動先に乾燥された食品原料を回収する回収手段を有した連続処理が可能な連続式減圧乾燥装置が、ランニングコストが安く、作業性が良いという理由から好ましい。
【0020】
そして、このような連続式減圧乾燥装置の具体例としては、例えば、図1に示すような搬送手段が搬送ベルトからなり回収手段が前記食品原料の乾燥物を粉砕して取出す手段からなるベルト式減圧乾燥装置、搬送手段がドラムであり回収手段が該ドラムから前記食品原料の乾燥物を剥離して取出す手段からなるドラム式減圧乾燥装置等が挙げられ、ベルト式減圧乾燥装置が特に好ましい。
【0021】
また、流動性食品原料の減圧乾燥時における減圧乾燥室内の圧力は、50mmHg以下とされ、30mmHg以下であることが好ましく、10mmHg以下がより好ましい。
【0022】
使用する流動性食品原料の固形分濃度等にもよるが、減圧乾燥室内の圧力が50mmHg以下の場合、通常、沸点は60℃以下となり、30mmHg以下の場合、沸点は40℃以下となり、10mmHg以下の場合、沸点は約20℃以下となり、5mmHg以下の場合、沸点は約10℃以下となる。本発明では、流動性食品原料を減圧乾燥室内の上記沸点以下の温度に調整された領域に供給する。この場合、流動性食品原料自体も、上記沸点以下の温度でしかも凍結しない温度に調整されていることが好ましい。
【0023】
減圧乾燥室内の温度調整は、減圧乾燥室内の雰囲気温度を調整することもできるが、減圧乾燥室内にベルトやドラム等の搬送手段が設けられている場合には、この搬送手段の表面温度が上記沸点以下の温度となるように調整すればよい。
【0024】
こうして流動性食品原料を、減圧乾燥室内の上記沸点以下の温度に調整された領域に供給することにより、流動性食品原料の急沸を防止でき、その結果、流動性食品原料の周囲への飛散や膨化を抑制できるので、例えば狭ピッチで配列した複数の平行な線状のように、表面積が大きく乾燥効率の高い形状となるように供給することができ、流動性食品原料の乾燥効率及び回収効率を向上できる。
【0025】
また、本発明においては、流動性食品原料を減圧乾燥室内に、減圧乾燥室の圧力における沸点以下の温度下で供給した後、温度を上昇させて乾燥を行うことが好ましく、温度を徐々に向上させて、最終的に前記沸点以上まで上昇させて乾燥を行うことがより好ましい。流動性食品原料は、減圧乾燥室の圧力における沸点以下の温度下で供給されることにより、周囲への飛散や膨化を抑制されつつ乾燥が進行し、その後に、沸点以上まで上昇させても、もはや飛散や著しい膨化を起こすことなく、後処理がしやすい形状で乾燥を終了させることができる。そして、流動性食品原料を減圧乾燥室内に供給した後に、上記のように温度を上昇させることにより、乾燥工程に要する時間を短縮化でき、乾燥食品の生産性を向上できる。なお、90℃以上まで加熱してしまうと、原料となる食品の味、風味、有効成分などを損なう虞れがあるので、上限は80℃とすることが好ましい。
【0026】
次に、本発明の乾燥食品の製造方法について、減圧乾燥装置として図1に示すようなベルト式減圧乾燥装置を用いた場合を例にとって説明する。
【0027】
このベルト式減圧乾燥装置1は、流動性食品原料を貯留する貯留タンク3と減圧乾燥室2とが配管4を介して接続している。配管4の先端には分散ノズル5が配置されている。この分散ノズル5は、減圧乾燥室2内のベルト6の始端部に位置してその幅方向に伸びており、所定間隔で配列された複数のノズルを有している。そして、複数のノズルから流動性食品原料を平行な複数の線状にして供給できるような構成となっている。また、ベルト6の終端部の前方に位置する減圧乾燥室2の天井部には、切断刃12を備えた切断装置13が配置されており、ベルト6から搬送された乾燥物を切断して、底辺部に配置されたホッパー9を介して粉砕機10に供給できるような構成となっている。
【0028】
分散ノズル5に設けられる各ノズルとしては、例えば円形ノズル、スリット状ノズル、多角形ノズル、曲線スリットノズル等が挙げられ、メンテナンス性に優れ、安定した吐出形状が得られるという理由から円形ノズル、スリット状ノズルが好ましい。
【0029】
円形ノズルとしては、口径5mm以下のものが好ましく、0.5〜2mmがより好ましい。また、スリット状ノズルのスリット幅としては3mm以下が好ましく、0.5〜2mmがより好ましい。口径が5mm以下の円形ノズルであれば、流動性食品原料を細い線状にして吐出でき、スリット幅が3mm以下のスリット状ノズルであれば、流動性食品原料を薄いシート状にして吐出できるので、体積当りの表面積を大きくして乾燥効率を高めることができる。
【0030】
ベルト6には、温度制御機8に連結した熱交換プレート7が複数枚配置されており、ノズル5直下のベルト6の領域6aは、熱交換プレート7aにより、減圧乾燥室2内の圧力における食品原料の沸点以下の温度に調整されている。
【0031】
中間の領域6b上のベルト6は、領域6aよりも高温となるように熱交換プレート7bで温度調整されていることが好ましく、熱交換プレート7bを複数の温度領域、もしくは複数枚に区分けして、徐々にベルト6上の流動性食品原料11を徐々に昇温できるように構成されていることが好ましく、最終的に沸点以上に加温できるように構成されていることが最も好ましい。
【0032】
後方の領域6c上のベルト6は、食品原料11を冷却処理できるように熱交換プレート7cで温度調整されていることが好ましい。
【0033】
次に、このベルト式減圧乾燥装置を用いた乾燥食品の製造方法について説明する。
【0034】
前述したような粘度となるように調整された流動性食品原料は、貯留タンク3内に貯留された後、配管4を通って減圧乾燥室2内に導入され、分散ノズル5から複数本の平行な線状をなしてベルト6の領域6aに供給される。
【0035】
分散ノズル5直下の領域6aは、前述したように、熱交換プレート7aによって、減圧乾燥室2内での食品原料11の沸点以下に温度調整されているので、ベルト6へ供給しても、直ちに食品原料11が急沸し、周囲へ飛散したり、膨化したりすることがなく、複数本の平行な線状を保ったまま乾燥を進行させることができる。
【0036】
ベルト6への流動性食品原料の吐出供給方法は、特に限定はないが、例えば図2のように、ピッチ幅pが1〜100mmとなるように吐出供給することが好ましく、1〜60mmとなるように吐出供給することがより好ましい。
【0037】
ピッチ幅pが1mm未満であると、膨張した際、ベルト状に吐出した原料がくっつき合ってしまい、形状がくずれて後の切断粉砕処理がしにくくなったりする虞れがあり、100mmを超えると、流動性食品原料の吐出供給量が少なくなり、結果として乾燥効率が低下するので好ましくない。
【0038】
また、本発明における流動性食品原料の吐出形状としては、特に限定されず、図2のような直線の他、曲線、折れ線等、任意の形状が選択可能である。例えばノズルを可動式にすることにより曲線、折れ線形状に吐出することが可能となり、吐出直後に流動性食品原料が急沸して膨化したり、周囲へ飛び散ったりしたりすることがないので、任意の形状を維持することが出来る。
【0039】
そして、ベルト6の領域6aに供給された流動性食品原料は、熱交換プレート7bによって温度調整された領域6bに搬送される。
【0040】
領域6b上のベルト6は、領域6aよりも高温となるように熱交換プレート7bで温度調整されていることが好ましく、熱交換プレート7bを複数の温度領域、もしくは複数枚に区分けして、徐々にベルト6上の食品原料11を徐々に昇温できるように構成されていることが好ましく、最終的にベルト6上の流動性食品原料を沸点以上に加温できるように構成されていることが最も好ましい。
【0041】
このように領域6b上のベルト6の温度を調整することで、流動性食品原料を効率よく、短時間で乾燥処理することができる。
【0042】
領域6a,6bを経て乾燥処理の行われた食品原料11は、熱交換プレート7cによって温度調整された領域6cに搬送される。
【0043】
流動性食品原料として、油脂分の多いものなど用いた場合、領域6a,6bでの乾燥処理で軟化していることがあり、後の切断工程が困難な場合がある。よって、このような流動性食品原料を用いた場合においては、領域6cで、搬送されてきた食品原料11を冷却処理する。
【0044】
そして、領域6cに搬送された食品原料11は、切断刃12で所定の間隔で切断され、ホッパー9で回収した後、粉砕機10へ供給し、ここで粉砕処理が行い、所望のサイズに調整された乾燥食品とする。
【実施例】
【0045】
以下、実施例、比較例を用いて本発明の効果を示す。なお、減圧乾燥装置として、図1のベルト式減圧乾燥装置を用いた。
【0046】
(実施例1)
濃縮リンゴ果汁200gに、デキストリン200gを溶解させ、5℃に冷却した粘度2,300cpsの原液(流動性食品原料)を、直径2mmの円径ノズルにて、7mmHgに減圧された減圧乾燥室2の5℃に温度調整のされたベルト6上に吐出供給した。結果、この原液は周囲への飛散や、膨化が無く、きれいなラインでベルト6上に供給できた。その後、ベルト6をプレート7bで徐々に加熱し、さらにプレート7cで70℃まで加熱し、濃縮リンゴ果汁の乾燥を行った。乾燥した濃縮リンゴ果汁をホッパー9で回収し、粉砕機10で粉砕することにより、含水率2%の濃縮リンゴ果汁粉末を270g得た(回収率94.5%)。
【0047】
(比較例1)
濃縮リンゴ果汁200gに、デキストリン200gを溶解させ、5℃に冷却した粘度2,300cpsの原液(流動性食品原料)を、直径2mmの円径ノズルにて、7mmHgに減圧された減圧乾燥室2の60℃に温度調整のされたベルト6上に吐出供給した。結果、この原液は周囲への飛散が著しく、また、ノズルから吐出された線状の原液は、膨化により線同士がくっ付きあってシート状となり、吐出形状を維持したまま、ベルト6上に供給することができなかった。
その後、実施例1と同様にして乾燥処理を行ったところ、濃縮リンゴ果汁粉末の含水率は5%で、回収率は10%(28.6g)であった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、例えば、調味料原料、果汁原料等の乾燥に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の乾燥食品の製造方法に用いることのできるベルト式減圧乾燥装置の該略図である。
【図2】食品原料のベルト6への吐出供給の一例である。
【符号の説明】
【0050】
1:ベルト式減圧乾燥装置
2:減圧乾燥室
3:貯留タンク
4:配管
5:分散ノズル
6:ベルト
7、7a、7b,7c:熱交換プレート
8:温度制御機
9:ホッパー
10:粉砕機
11:食品原料
12:切断刃
13:切断装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性食品原料を50mmHg以下の減圧乾燥室内に供給して乾燥させる食品原料の乾燥方法において、前記流動性食品原料を50〜100,000cpsの粘度になるように調製し、凍結させることなく、前記減圧乾燥室の圧力における前記流動性食品原料の沸点以下の温度下で、前記減圧乾燥室内に供給することを特徴とする食品乾燥物の製造方法。
【請求項2】
前記減圧乾燥室内に搬送手段が設けられ、この搬送手段の移動先に乾燥された食品原料を回収する回収手段が設けられており、前記搬送手段上に前記流動性食品原料を供給し、前記回収手段によって前記食品原料の乾燥物を回収する請求項1記載の食品乾燥物の製造方法。
【請求項3】
前記搬送手段が搬送ベルトからなり、前記回収手段が前記食品原料の乾燥物を粉砕して取出す手段からなる請求項2記載の食品乾燥物の製造方法。
【請求項4】
前記流動性食品原料を前記減圧乾燥室内に、前記減圧乾燥室の圧力における沸点以下の温度下で供給した後、前記温度を上昇させて乾燥を行う請求項1〜3のいずれか1つに記載の食品乾燥物の製造方法。
【請求項5】
前記流動性食品原料を前記減圧乾燥室内に、前記減圧乾燥室の圧力における沸点以下の温度下で供給した後、前記温度を最終的に前記沸点以上まで上昇させて乾燥を行う請求項4記載の食品乾燥物の製造方法。
【請求項6】
前記流動性食品原料の供給を、口径5mm以下の円形ノズル、又は幅3mm以下のスリット状ノズルから吐出させることにより行う請求項1〜5のいずれか1つに記載の食品乾燥物の製造方法。
【請求項7】
前記流動性食品原料として、調味料原料、果汁原料、野菜汁原料、糖質液原料、農産物を原料とするエキス原料、水産物を原料とするエキス原料、畜産物を原料とするエキス原料、タンパク原料、タンパク分解物原料、発酵食品原料から選ばれた1種以上を用いる請求項1〜6のいずれか1つに記載の食品乾燥物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−68487(P2007−68487A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260930(P2005−260930)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(390033145)焼津水産化学工業株式会社 (80)
【Fターム(参考)】