説明

乾草・サイレージ自動給餌方法

【課題】自動給餌機の1つの粗飼料用タンクによって、サイレージと乾草とを切替えて給餌することができ、粗飼料切替時に粗飼料用タンクを空にすることができる乾草・サイレージ自動給餌システムを提供する。
【解決手段】自動給餌機5の空の粗飼料用タンク21に1種類の粗飼料24を満載すると共に、その満載までの満載搭載時間Tを計測し、次に、満載した粗飼料タンク21により給餌した各牛への給餌量を加算して粗飼料用タンク21の満載積載量Mを算出し、一方、残りの各牛への必要給餌量Mを算出し、満載搭載時間Tと、満載積載量Mと、必要給餌量Mとから、必要搭載時間Tを算出し、必要搭載時間Tに基づき、粗飼料用タンク21に粗飼料24を必要給餌量M搭載し、残りの各牛へ給餌した時、給餌終了時に粗飼料用タンク21が空になるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動給餌機の1つの粗飼料用タンクによって、サイレージ又は乾草の粗飼料を給餌する乾草・サイレージ自動給餌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の技術は、下記のようになっている。
(1)牛には粗飼料(草)と濃厚飼料(穀類)を給餌するが、粗飼料には含有水分によって乾草(低水分)とサイレージ(高水分)がある。また乾草は一般的に長いまま利用するが、サイレージには数センチに細かく細断したものと、ほぼ草丈のまま長いサイレージの二種類がある。
(2)国内の酪農家で広く利用されているロールサイレージは、圃場で草を細断せずに、長いまま巻き取ってサイレージにしている。
(3)給餌を自動化する場合、粗飼料と濃厚飼料の両方の自動化が必要であるが、粗飼料については、長い乾草あるいはサイレージ(ロールサイレージ)と細断されたサイレージの両方を給餌したい。
【0003】
(4)長いサイレージは自動給餌機に搭載前に細断すれば、もともと短く細断されているサイレージと混載しても大きな問題にならないが、乾草は水分が異なるので細断しても、あらかじめ細断されたサイレージと混載するわけにはいかない。
(5)しかし、乾草やサイレージは搭載密度が小さいので配合飼料などと異なりタンクが大きくなるので、二つのタンクを持つわけにいかず、乾草の給餌をあきらめるか、乾草は手で給餌するしかなかった。
尚、自動給餌機の先行文献としては、例えば、特許文献1がある。
【特許文献1】特開平9−275840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願は自動給餌機の粗飼料用タンクはひとつのまま、乾草とサイレージの両方を給餌しようとするものである。
その場合、自動給餌機が給餌する飼料を乾草からサイレージに、または逆にサイレージから乾草に切り替えるとき、粗飼料用タンクに前のタイプの飼料が残っていると、その上に飼料を搭載することになり、給餌を開始してもしばらくは前のタイプの飼料が排出されることになる。
乾草とサイレージの両方を給餌するには、切替時に粗飼料用タンクを空にする必要がある。
【0005】
しかし、もともとこの種の自動給餌機は一種類の粗飼料の給餌しか想定していなかったので毎回粗飼料用タンクを空にする必要はなかった。
よって、各回の給餌終了時にタンクにはサイレージが残っている。
尚、特許文献1は、一つの粗飼料用タンクによって、乾草とサイレージの両方を切替えて給餌するものではない。
【0006】
以上の現状に鑑み、本発明は、自動給餌機の1つの粗飼料用タンクによって、乾草とサイレージとを切替えて給餌することができ、切替時に粗飼料用タンクを空にすることができる乾草・サイレージ自動給餌システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決すべく、本発明は以下の構成を提供する。
請求項1に係る発明は、自動給餌機の1つの粗飼料用タンクによって、サイレージ又は乾草の粗飼料を給餌する乾草・サイレージ自動給餌方法であって、粗飼料搭載手段の稼動によって、自動給餌機の空の粗飼料用タンクに1種類の粗飼料を満載すると共に、その満載までの満載搭載時間を計測し、次に、前記自動給餌機によって、1つの牛床の各牛へ予め決められた量の前記粗飼料を前記粗飼料用タンクが空になるまで給餌すると共に、給餌した各牛への給餌量を加算して前記粗飼料用タンクの満載積載量を算出し、一方、予め決められた各牛への給餌量から前記牛床の残りの各牛への必要給餌量を算出し、前記満載搭載時間と、前記満載積載量と、前記必要給餌量とから、前記粗飼料用タンクに前記必要給餌量を搭載するための前記粗飼料搭載手段の稼動による必要搭載時間を算出し、前記粗飼料搭載手段を前記必要搭載時間稼動して、前記粗飼料用タンクに前記粗飼料を必要給餌量搭載し、必要給餌量を搭載した前記自動給餌機によって前記牛床の残りの各牛へ給餌した時、給餌終了時に前記粗飼料用タンクが空になるようにしたことを特徴とする乾草・サイレージ自動給餌方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1記載の発明によれば、自動給餌機の1つの粗飼料用タンクによって、乾草とサイレージとを切替えて給餌することができ、コストダウンが図れると共に、乾草とサイレージとの切替時に粗飼料用タンクを空にすることができ、乾草とサイレージとの混載を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、実施例を示した図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
図1に於いて、1は、牛舎2内に設置される自動給餌システムの一例を示し、自動給餌システム1は、牛舎2内の1つの牛床3のスタンチョン群3aに沿って上方に配設されたH型鋼等からなるレール4と、レール4に案内されて走行する自動給餌機5と、きざみサイレージ(図示せず)を貯留するサイレージストッカー6と、濃厚飼料等の配合飼料(図示せず)を貯留する配合飼料貯留タンク7,7…と、ロールサイレージ又は乾燥ロール等のロールベーラー(図示せず)を細断するロール乾草細断機8と、ロール乾草を補給する補給装置9と、サイレージストッカー6から自動給餌機5にサイレージを搬送する粗飼料搭載手段であるサイレージ用エレベータ10と、ロール乾草細断機8から自動給餌機5にサイレージ(図示せず)を搬送する粗飼料搭載手段である乾草用エレベータ11とを備えている。
【0010】
前記サイレージ用エレベータ10の下端はサイレージストッカー6の排出口でサイレージを受けるように配置され、サイレージ用エレベータ10の上端はサイレージを上部から自動給餌5へ搭載できる位置に配置される。
前記乾草用エレベータ11の下端はロール乾草細断機8の排出口でサイレージを受けるように配置され、乾草用エレベータ11の上端は乾草を上部から自動給餌機5へ搭載できる位置に配置される。
【0011】
そして、自動給餌機5は、図2に示す如く、粗飼料タンク21、配合飼料タンク22、排出ユニット23、粗飼料24を掻き出すビーター部25等を備えている。特に、前記自動給餌機5は、1個の粗飼料タンク21を備えており、1個の粗飼料タンク21をサイレージと、乾草の両方の粗飼料用に切替えて用いるものである。前記サイレージ用エレベータ10及び乾草用エレベータ11によって運ばれる粗飼料は粗飼料タンク21に搭載される。
又、粗飼料搭載場所の天井付近には、粗飼料用タンク21内に向けて満タンを検出できるようにレベルセンサー26が配置されている。
レベルセンサー26は、反射型光電センサ又は反射型超音波センサ等から構成され、粗飼料タンク21の上方に設置されて、粗飼料タンク21に粗飼料24が満タンに搭載された時の粗飼料24の頂点部を斜め上方から検出できるように配置されている。
【0012】
そして、図3に示すように、前記サイレージストッカー6、サイレージ用エレベータ10、ロール乾草細断機8、乾草用エレベータ11、レベルセンサー26及び自動給餌機5と連動して制御する連動制御盤31がそれらに接続されて配置されている。
連動制御盤31は自動給餌機5と通信しながら、各機器の始動・停止を行う構成になっている。
【0013】
次に、本発明の乾草・サイレージ自動給餌方法について図4に従って説明する。
本発明の乾草・サイレージ自動給餌方法は、自動給餌機5の1つの粗飼料用タンク21を用いてサイレージ又は乾草の粗飼料24を給餌する乾草・サイレージ自動給餌方法である。
自動給餌機5の粗飼料タンク21に、1種類の粗飼料として、例えば、サイレージ24Aを搭載する場合に於いて、先ず、粗飼料搭載手段であるサイレージストッカー6及びサイレージ用エレベータ10の稼動によって、粗飼料タンク21が空の状態からレベルセンサー26が満載状態を検知するまで粗飼料タンク21にサイレージ24Aを搭載すると共に、同時にその満載搭載時間Tを計測する(ステップS1〜S4)。
図2(a)は、粗飼料タンク21にサイレージ24Aが満載された状態を示す。
【0014】
次に、前記自動給餌機5が1つの牛床3の各牛へサイレージ24Aの給餌を開始し(ステップS5)、前記粗飼料タンク21が空になるまで給餌する(ステップS6)。尚、各牛にはサイレージ24Aと共に配合飼料(図示せず)等も搭載される。
図5(a)は、各牛へサイレージ24Aが配合飼料等と共に給餌された状態を示す。
【0015】
各牛への給餌量は予め決められており、給餌された各牛への給餌量を加算した給餌量から粗飼料タンク21の満載の積載量を算出する(ステップS7)。
例えば、給餌された各牛への給餌量をm,m,…m、粗飼料タンク21の満載の満載積載量をMとすると、
=m+m+…+mとなる。
【0016】
次に、前記牛床3の給餌されていない残りの各牛への必要な給餌量を加算した必要給餌量を算出する(ステップS8)。
例えば、残りの各牛への給餌量をmn+1,mn+2,…m、必要給餌量をMとすると、
=mn+1+mn+2+…+mとなる。
【0017】
次に、前記満載搭載時間T、満載積載量M、必要給餌量Mから、必要給餌量Mを粗飼料タンク21に搭載するための粗飼料搭載手段による必要搭載時間を算出する(ステップS9)。
例えば、必要搭載時間をTとすると、
=T×(M/M)となる。
【0018】
そして、サイレージストッカー6及びサイレージ用エレベータ10を前記必要搭載時間T稼動して(ステップS10)、粗飼料タンク21に必要給餌量Mを搭載し、前記残りの各牛に給餌(ステップS11)し、給餌終了時に粗飼料タンク21が空になるようにする(ステップS12)。尚、各牛にはサイレージ24Aと共に配合飼料等も搭載される。
これによって、粗飼料タンク21が空になるので、次に、粗飼料タンク21に粗飼料として、乾草を搭載することができる。
図2(b)は、サイレージ24Aが粗飼料タンク21に必要給餌量M搭載された状態を示す。
図5(b)は、牛床3の残りの各牛へサイレージ24Aが配合飼料等と共に給餌された状態を示す。
尚、牛床3の残りの各牛への必要給餌量Mが粗飼料タンク21の満載積載量Mよりも多い場合は、複数回に分けて粗飼料タンク21に粗飼料を搭載すれば良い。
又、前述の各機器の稼動、停止、及び、計算等は、前記連動制御盤31の制御又は処理によって行なわれる。
【0019】
次に、粗飼料として、例えば、乾草を自動給餌する場合も、前述した自動給餌方法と同様の方法で行なうことができる。但し、前記粗飼料タンク21に乾草を搭載するための粗飼料搭載手段として、ロール乾草の補給装置9、ロール乾草裁断機8、乾草用エレベータ11が稼動する。
【0020】
本発明の乾草・サイレージ自動給餌方法によると、1つの牛床3の給餌終了と共に、粗飼料タンク21の中を空にすることができ、サイレージ24Aと、乾草とを混載させることなく切替えて給餌することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】自動給餌システムを概略的に示す平面図である。
【図2】(a)給餌装置の粗飼料タンクに粗飼料を満載した状態を概略的に示す正面図である。(b)給餌装置の粗飼料タンクに必要給餌量の粗飼料を搭載した状態を概略的に示す正面図である。
【図3】連動制御盤と各機器との接続状態を概略的に示す説明図である。
【図4】本発明による乾草・サイレージ自動給餌方法を説明するフローチャートである。
【図5】(a)本発明による粗飼料タンクに粗飼料を満載した自動給餌装置によって給餌された状態を示す説明図である。(b)本発明による粗飼料タンクに必要給餌量を搭載した自動給餌装置によって給餌された状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0022】
3 牛床
5 自動給餌機
21 粗飼料タンク
24 粗飼料
24A サイレージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動給餌機の1つの粗飼料用タンクによって、サイレージ又は乾草の粗飼料を給餌する乾草・サイレージ自動給餌方法であって、粗飼料搭載手段の稼動によって、自動給餌機の空の粗飼料用タンクに1種類の粗飼料を満載すると共に、その満載までの満載搭載時間を計測し、次に、前記自動給餌機によって、1つの牛床の各牛へ予め決められた量の前記粗飼料を前記粗飼料用タンクが空になるまで給餌すると共に、給餌した各牛への給餌量を加算して前記粗飼料用タンクの満載積載量を算出し、一方、予め決められた各牛への給餌量から前記牛床の残りの各牛への必要給餌量を算出し、前記満載搭載時間と、前記満載積載量と、前記必要給餌量とから、前記粗飼料用タンクに前記必要給餌量を搭載するための前記粗飼料搭載手段の稼動による必要搭載時間を算出し、前記粗飼料搭載手段を前記必要搭載時間稼動して、前記粗飼料用タンクに前記粗飼料を必要給餌量搭載し、必要給餌量を搭載した前記自動給餌機によって前記牛床の残りの各牛へ給餌した時、給餌終了時に前記粗飼料用タンクが空になるようにしたことを特徴とする乾草・サイレージ自動給餌方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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