説明

事件・事故情報共有システム

【課題】
事件・事故に対する警察への通報手段としては、電話による方法/メールによる方法/実際に警察へ赴く以外に、その手段がなかった。
【解決手段】
事件・事故情報共有システムは、ウェブ上に構築された110番通報用のサイトを利用して市民からの通報を受け付ける。受け付けた通報の内容を電話やメールでの通報と比較し、通報内容の信憑性や重要性を判定する。その信憑性や重要性がある閾値以上の場合に、その通報内容を、「危険情報表示マップ」等によりウェブ上で公開する。更に、過去にあった事件・事故情報を公開し、その事件・事故に関する目撃情報を収集する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウェブシステムを用いて、一般の市民から事件・事故に関する通報や情報を収集し、事件・事故に関する情報を一般の市民に通知するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からある一般の市民が警察に対して事件・事故に関わる通報や事件・事故に対する情報(目撃情報等)を提供するシステムとしては「110番通報/メールによる通報」がある。各々のシステム概要は次の通りである。
・110番通報・・・・市民が電話により110番通報を行い、それを各都道府県本部内の指令装置で 受理、必要部署へ指令を行う。
・メールによる通報・・市民は通報内容を指定されたメールアドレスへ送信。各都道府県警本部内で受理後、必要部署へ指令を行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のシステムでは、一般の市民は、警察内で得られた事件・事故に関わる情報を知る手段がなく、一般の市民は、近郊で起きているかもしれない事件・事故に対して自ら防衛する手段がなかった。
【0004】
本発明が解決しようとする課題としては、大きく分けて以下、二つある。
1.「通報手段」に関わる課題
まず一つ目としては、従来の一般の市民から警察への「事件・事故に関する情報通知方法」として、その通報手段が限られることから次の二つの問題があった。
(1)110番通報の敷居の高さ
現状、何か事件等があった際に一般の市民が警察へ通報する手段としては、「110番通報/メールによる通報/直接、警察に赴く」以外に方法がない。しかし、このような方法だけの場合、どうしても市民は、警察への通報という行為に対して敷居の高さを感じる。つまり、110番通報には、実際に重大事件・事故が生じないと通報を掛けづらい風潮があった。また、こうしたことは、例えば将来、重大事件・事故に繋がる可能性があるが法的には取り締まれないような小さな事件・事故に対して、市民は通報することをためらってしまい、事件・事故の発生を未然に防ぐ手段をなくしてしまう。
(2)目撃情報提供の敷居の高さ
市民はある事件・事故に対して、目撃情報を提供しようとすると、実際に警察に赴く、あるいは、電話をかける等のアクションを起こす必要がある。この場合、それはある特定の市民からすると煩わしさを感じさせてしまう。そのことによって重要な目撃情報も警察に伝わらず、偏った情報のみで事件・事故の捜査が行われる可能性がある。
2.「通報情報の開示」に関わる課題
また二つ目として、警察が知り得た通報情報等を一般の市民が入手する上で次項、問題があった。
(1)事件・事故に関わる情報の把握
従来では、警察が知り得ている事件・事故に関わる情報に関して、機密保持の観点から、一般の市民が入手することは基本的に出来ない。このことは例えば一般の市民が生活する近郊において、仮に事件・事故に関わる危険な事例が多数報告されていても、その情報を予め一般の市民が入手する手段がなく、事件・事故への警戒を行うことなく、最悪の場合、その事件・事故に巻き込まれてしまう可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、上記の課題に対して、次の方法にて、その解決を図る。
1.「通報手段」に関して
まず、一つ目の警察への「通報手段」に関しては、一般の市民からの通報手段として「110番通報行う/メールによる通報を行う/直接、警察に赴く」の方法しかなかった。
【0006】
上記通報手段だけの場合、市民は、何か軽微な事件・事故や将来、重大な事件・事故に繋がる可能性がある情報等に関して、実際に警察に通知するという行為自体に敷居の高さを感じるため、通報をしない、あるいは、通報が遅れるといった事態が発生する。
【0007】
本発明では、これらの通報手段とは別に、ウェブシステムを使って、一般の市民が簡単に通報内容を登録できるシステムを提供する。これによって、その敷居の高さが軽減される。
2.「通報情報の開示」に関して
また、二つ目の事件・事故に関わる通報情報の開示に関して、基本的にはウェブシステムを使用し、市民参加型の「危険情報表示マップ」を作成し、市民に開示する。但し、事件・事故情報に関しては、プライバシーに関わる情報も多く含んでいるので、例えば、ウェブにて登録された事件・事故に関する情報を警察本部内で一旦、管理し、特に従来からある110番システムの電話やメールによる通報と比較を行い、その信憑性や重要性に関して総合的に判断し、内容を編集して、その上で一般の市民に通知をする。
【発明の効果】
【0008】
(1)市民
・何か軽微な事件・事故や将来、重大な事件・事故に繋がる可能性がある情報等に関して、従来のように敷居の高さを感じることなく、通報を行うことが出来る。また、事件・事故に対する情報(目撃情報等)に関しても同様に敷居の高さを感じずに、情報を発信できる。
・事件・事故に関わる情報が一般の市民に開示されるので、市民は、将来、事件・事故に繋がる可能性がある情報等に関して、予めその情報を入手でき、自己防衛に役立つ。
(2)警察
・不特定多数が利用でき、比較的、敷居が低いウェブを利用することによって事件・事故に対する通報情報や事件・事故に対する情報(目撃情報)を容易に収集できる。
・事件・事故に関わる情報を一般の市民に開示することで、市民に対して自発的な自衛を促し、市民の安全が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】通報情報共有システムの構成。
【図2】通報処理の概要。
【図3】通報処理フロー。
【図4】通報「目撃情報」処理の概要。
【図5】通報「目撃情報」処理フロー。
【図6】危険情報表示マップの表示例。
【図7】ウェブに書き込まれた通報情報の一例。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)通報情報共有システムの全体概要
図1は、ウェブシステム(0103)を中心に構成された本発明のシステム構成である。図1のそれぞれの「市民」は市民が有するPC又は携帯電話などの端末であり、有線又は無線でウェブシステム(0103)に接続されている。「警察」は、本発明における通報情報の共有の処理を行うサーバであり、警察本部内に設置されている。「警察署/パトカー」は、警察組織内の通信によって「警察」との情報のやり取りを行うPC又は携帯電話などの端末であり、警察署又はパトカーに設置されている。「消防」は、ウェブシステム(0103)を介して情報を入手するPCであり、消防署に設置されている。「市民」、「警察」及び「消防」はウェブシステム(0103)を介して相互に接続されており、「警察」と「警察署/パトカー」は有線又は無線の専用回線で接続されている。このように、図1における「市民」、「警察」、「警察署/パトカー」及び「消防」は、本発明を実施するためのPCや携帯などの端末、又はサーバであるが、以下では、それぞれのPCや携帯電話などの端末、又はサーバが実施する処理として説明するが、それぞれの実施の主体は、「市民」、「警察」、「警察署/パトカー」及び「消防」と略記する。
【0011】
このウェブシステム(0103)を介して市民(0101)からは、「(a)事件・事故への書込み」(0102)と「(b)事件・事故に対する目撃情報の書込み」(0102)が行われ、また、その書き込まれた情報が市民(0105)によって閲覧され、それによって警戒(0104)が促される。警察(0106)は、これら書き込まれた情報を常に監視(0111)し、監視によって得られた情報に基づいて、必要に応じて各部署(警察署/パトカー)(0112)に対策を指示(0107)するための情報を通知する。同様に、消防(0109)は、ウェブシステム(0103)に書き込まれた情報を常に監視(0110)し、監視によって得られた情報に基づいて、携帯端末を有する消防車両に対して出動(0108)の指示情報が通知される。
(2)通報情報共有システム(通報処理)
本発明における、ウェブ上への通報方法の処理概要を図2に示す。つまり、警察本部内(0202)に設置されたウェブシステム(0205)を介して、市民(0204)から事件・事故に関する情報の書き込み(0201)が行われる。ウェブ上(0205)を介して書き込まれた通報情報の内容は、そのウェブ上(0205)を介した書込みよりも以前に市民(0207)より電話やメールで連絡された通報(0203)を記憶した事案情報(0206)や、既にウェブ上(0205)へ他の市民(0204)から書込み(0201)がなされた情報を記憶した通報内容と比較され、その通報内容の信憑性や重要性を判断する処理(0208)が行われる。
【0012】
また逆に、市民(0207)から電話やメールで連絡された通報(0203)があった際には、その通報より以前に市民(0204)から書き込み(0201)された内容や既に他の市民(0207)から電話やメールで連絡された通報(0203)の内容との情報の比較が行われ、その通報内容の信憑性や重要性を判断する処理(0208)が行われる。実際の通報内容の信憑性や重要性を判断する処理(0208)例に関しては後述する。
【0013】
このようにウェブ上を介して書き込まれた通報内容(0205)と事案情報(0206)が処理され(0208)、その処理結果(0211)が市民に対して表示される。この処理結果(0211)の画面構成に関しては、図6に示す「危険度表示マップ」として表示される。危険度表示マップとは、地域ごとに起きている事件・事故情報を管理するための情報であり、その情報がマップ上に表示される。例えば、図6では位置(0601)にある事件情報や位置(0602)にある事故情報が、前述した通報内容の信憑性や重要性を判断する処理(0208)の結果として表示され、市民(0204)(0207)や警察(0212)に対して、マップ情報として提示(0209)(0210)される。このマップ情報に基づいて、警戒が促される。
【0014】
上記処理のフローを図3に示す。図3では、まず、市民による事件・事故に関する書き込み(0301)情報と市民による電話やメールでの通報としての事案情報(0302)との照合処理(0303)が行われる。それぞれの情報に含まれる住所や時刻などのキーワードを比較することで照合処理が行われる。その照合処理(0303)の結果に基づいて、その通報の信憑性や重要性が判定(0304)される。この信憑性や重要性の判定(0304)の結果、比較結果に応じて付与された値に基づいて、その信憑性や重要性が事前に予め設定した閾値以上である場合に危険度表示マップ(図6参照)への通報内容の反映が行われる(0306)。但し、この場合、通報内容をそのまま危険度表示マップへ反映したのでは、個人に関わる情報等、おおやけに出来ない情報もあるため、危険度表示マップへの反映の際には、予め定めた規則に基づいて、個人に関わる情報等のフィルタリング処理(0305)を行われる。具体的なフィルタリング処理(0305)としては、例えば、個人氏名の削除、個人のプライバシーに関わる情報(個人の嗜好等)の情報の削除が行われる。
(3)通報情報共有システム(「目撃情報」通報)
本発明において、事件・事故に対する目撃情報の通報方法の処理概要を図4に示す。図4では、警察本部内(0403)のサーバに格納された危険情報表示マップ(0405)を、市民(0401)が閲覧(0402)する。危険情報表示マップ(0405)は、図6にあるような各地域の事故(0602)や事件(0601)の情報が表記されたマップである。市民(0401)はこのマップ(0405)を閲覧し(0402)、もしその事件・事故に対する「目撃情報」などの情報がある場合には、その情報がマップ(0405)に書き込まれる(0404)。そして、書き込まれた情報は警察(0408)によって確認(0407)され、事件・事故の解決や防止に役立てられる。
【0015】
上記処理のフローを図5に示す。図5では、まず市民は「危険度表示マップ」を閲覧する(0501)。閲覧の結果、もしその事件・事故に対する「目撃情報」などの情報がある場合には、その情報が「危険度表示マップ」に書き込まれる(0502)。そして、その書き込まれた「目撃情報」等が警察で確認される(0503)。
(4)通報内容の信憑性・重要性判定
以下では、市民からのウェブを介した書き込み(通報)と電話やメールでの通報によって得られた情報に基づいて、それぞれの情報に含まれる住所や時刻などのキーワードを比較することで各々の通報内容を照合し、その信憑性や重要性を判定する方法を説明する。
【0016】
まず、図7にある「事案NO1(0706)」の通報が今、ウェブ上に書き込まれたとする。この場合、過去に既に通報があった「事案NO2〜NO8」と照合処理が行われる。その結果、例えば、「件名(0703)」「発生日時(0704)」「発生場所(0705)」等の要素が、図7にある「事案NO1(0706)」と同じ事案として「事案NO4(0707)」「事案NO8(0708)」が検索される。もちろん、「件名(0703)」「発生日時(0704)」「発生場所(0705)」等の情報は、同じ通報に関わる内容でも通報者から寄せられる情報によって若干異なる可能性も考えられる。この為、完全に一致、あるいは、時刻に関しては、誤差「±10分」等、の許容値を設けるものとする。場所に関しても、例えば、誤差「100m以内」等の許容値を設ける。これらの許容値に含まれる通報は同じ通報として検索される。
【0017】
上記のように同じ通報に関わると推定される通報が過去に存在したか否か、また、類似の通報が過去に存在する場合には、どの事案に該当するか、の照合処理が行われる。図7の例の場合では、「事案NO4(0702)」と「事案NO8(0703)」が各々、「事案NO1(0701)」と同じ事案として検索される。続いて、この検索の結果、挙がってきた通報に関して、信憑性や重要性の判定が行われる。この時、予め通報の各種別(0701)毎に予め付与しておいた重み(0702)を使用して、信憑性や重要性の程度が定量的に評価される。図7の場合、「電話・メール」は「重み:3」、「ウェブ」は「重み:1」に予め設定されている。つまり、「事案NO1(0701)」に該当する通報に関わる重みは、事案に該当する各通報の重みを合計した「1+3+3=7」となる。予め、信憑性や重要性に関わる閾値を、例えば「6」に設定した場合には、この通報に関しては、「信憑性」「重要性」ともに高いと判断され、危険情報表示マップへ表示される。
【符号の説明】
【0018】
0101:事件・事故に関する情報の書込みを行う市民(端末)
0102:事件・事故に関する目撃情報の書込み
0103:「危険情報表示マップ」が表示されるウェブシステム
0105:事件・事故情報が表示されたマップを閲覧する市民(端末)
0204:事件・事故情報をウェブ上に書き込む市民(端末)
0206:市民からの電話やメールでの通報情報
0207:事件・事故情報に関して、電話やメールで通報する市民(端末)
0208:ウェブへの通報情報と電話/メールでの通報情報を比較処理
0211:「危険情報表示マップ」の表示
0301:事件・事故に関する情報の書込み
0302:電話やメールでの通報情報
0401:事件・事故に対しての目撃情報を書き込む市民(端末)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブ上に各地域の事件や事故に対する危険情報を表示する危険情報表示マップを保持するサーバ、及び前記保持されたマップ上に対して書込み、及び閲覧できる複数の市民端末からなる事件・事故情報共有システムであって、前記サーバは、
前記市民端末から通報内容の書込みがあった場合には、前記通報内容と過去にあった通報内容とを比較し、前記通報に関する信憑性や重要性を評価する手段、
前記通報の信憑性や重要性が確認される場合には、前記通報にかかわる情報を危険情報表示マップに表示し、前記情報を前記市民端末で閲覧できるようにする手段、
事件・事故情報が掲載されている前記危険情報表示マップの閲覧に基づいて、前記市民端末が前記事件・事故に関わる情報を保持している場合には、前記情報を前記危険情報表示マップ上に書込み出来る手段を有することを特徴とする事件・事故情報共有システム。
【請求項2】
前記通報があった際に、前記通報内容を予め定めた情報項目毎に管理し、前記情報と過去にあった通報内容の少なくとも1つの項目同士を比較することによって、前記通報内容の信憑性や重要性を算出することを特徴とする請求項1記載の事件・事故情報共有システム。
【請求項3】
前記算出された信憑性や重要性の評価値を予め設定した閾値との比較により、前記閾値以上の場合にウェブ上の危険情報表示マップに前記情報を掲載することを特徴とする請求項2記載の事件・事故情報共有システム。
【請求項4】
前記通報内容の重要度・信憑性を評価し、ウェブ上の危険情報表示マップに、前記通報内容を掲載する際に、個人情報等をフィルタリングして、ウェブ上に開示することを特徴とする請求項1記載の事件・事故情報共有システム。
【請求項5】
ウェブ上に過去にあった事件・事故情報が表示されたマップに対して、前記市民からの前記事件・事故情報に関する書込みを受け付けることを特徴とする請求項1記載の事件・事故情報共有システム。
【請求項6】
複数の端末とをウェブシステムを介して接続された、事件・事故情報共有サーバであって、前記サーバは、
前記複数の端末のいずれかから事件・事故に関する通報の情報を受け付ける手段、
前記通報の内容と過去にあった通報の内容とを比較し、前記通報に関する信憑性や重要性を評価する手段、
前記通報の信憑性や重要性が確認される場合には、前記通報にかかわる情報を前記複数の端末の危険情報表示マップ上に表示する手段、とを有することを特徴とする事件・事故情報共有サーバ。
【請求項7】
ウェブシステムを介して接続された複数の端末と事件・事故情報を共有するためのサーバは、
前記複数の端末のいずれかから事件・事故に関する通報の情報を受け付け、
前記通報の内容と過去にあった通報の内容とを比較し、前記通報に関する信憑性や重要性を評価し、
前記通報の信憑性や重要性が確認される場合には、前記通報にかかわる情報を前記複数の端末の危険情報表示マップ上に表示することを特徴とする事件・事故情報共有方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−108638(P2012−108638A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255698(P2010−255698)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】