説明

事故復旧訓練装置

【課題】事故復旧訓練に際して行なわれた関係各所への連絡が相手の立場に立った連絡となっているかどうかを、後の反省時に容易に分からせ得るようにする。
【解決手段】ディスプレイ102を含む模擬操作盤101と模擬電話103とを用意し、事故情報を含む模擬的なイベント情報を経時的にディスプレイ102に表示し、模擬電話の使用時にその際の現在時刻である連絡時刻と相手先とをイベント情報と共に経時的にディスプレイ102に表示する。模擬電話103に入力された音声を連絡時刻及び相手先のレコードと対応付けて録音し、また、その音声を音声認識してNGワードの有無を判定する。そして、特定のレコードが指定された場合、対応付けられている音声を再生し、NGワードが含まれていれば警告する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種のプラント等で事故復旧訓練のために使用される事故復旧訓練装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所等のプラントでは、事故が発生した場合、速やかにその復旧をする必要がある。しかも、このような復旧に際しては、関係各所へのタイムリーな連絡が不可欠である。このため、事故の復旧に当たる運転員には、それ相応の技量が求められる。こうした技量は、机上での学習のみによって簡単に身に付けることが困難であるので、予め実地の訓練をしておくことが肝要である。そこで、発電所等のプラントでは、事故復旧訓練装置を用意して、運転員に事故の発生から復旧までを疑似体験させ、事故後の速やかな復旧作業を完遂させるのに必要な技量を身に付けさせるようにしている。
【0003】
事故復旧訓練装置の一例として、必ずしも従来技術として公開使用をしているわけではないが、ディスプレイを含む現実の操作盤を模した模擬操作盤を用意しておき、事故情報を含む模擬的なイベント情報を実践さながら経時的にディスプレイ表示するようにした装置が使用される。事故復旧訓練装置は、ディスプレイに表示したイベント情報に応じてなされた操作履歴を表示したり、記録に残したりすることができる。記録に残された操作履歴は、作業員またはその管理者が後に参照することで、後々の反省材料や評価材料として生かされる。
【0004】
これに加えて、特許文献1には、訓練時に運転員が喋った音声を動画と共に取り込んでおき、その音声を音声認識してテキストデータに変換し保存する技術が開示されている。そして、この特許文献1には、音声認識後のテキストデータを、時刻と同期表示させることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−102116公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記事故復旧訓練装置を用いた訓練に際して問題となるのは、事故復旧に際して行なうべき関係各所への連絡である。つまり、事故復旧訓練に際しては、インストラクターが付いて訓練をする場合と自主訓練をする場合とがある。インストラクターが付く場合には、作業員がタイムリーに関係各所に連絡したかどうかをインストラクターがその時点で判断することができ、これを記録に残すことができる。これに対して、自主訓練の場合、関係各所に連絡したという記録が残らないため、後々の検証が不可能である。
【0007】
ここで、事故復旧に際して行なうべき関係各所への連絡について留意すべき項目としては、
(1)連絡の有無
(2)連絡がタイムリーであったかどうか
(3)連絡内容の適正さ
(4)相手の立場に立った連絡をしているかどうか
ということが挙げられる。そこで、事故復旧訓練後に、これらの(1)〜(4)の項目を全て確認できれば、事故復旧訓練をより実りあるものとすることができるであろう。
【0008】
この点、特許文献1に記載されている技術によれば、訓練時に運転員が喋った音声に基づくテキストデータを時刻と同期表示するので、関係各所に連絡した記録をその時刻と共に残すことができる。したがって、この技術を採用することで、事故復旧訓練後における上記(1)〜(4)の項目の確認が可能となる。
【0009】
しかしながら、訓練時に運転員が喋った音声に基づくテキストデータを時刻と同期表示したとしても、あるいはその際の音声付き動画を再生したとしても、上記(4)の「相手の立場に立った連絡をしているかどうか」の判断は難しい。とりわけ、発電所等のプラントの作業員は専門技術性が高く、専門用語を使用する傾向が強いため、そのような専門性を要求されない関係各所の人々にとっては、連絡内容を難解に感じたり、場合によってはまったく理解できなかったりする。このため、特許文献1に記載されているような技術を採用したとしても、事故復旧に際して行なわれた関係各所への連絡が、果たして本当に相手の立場に立った連絡となっているのかどうか、判然としないことであろう。
【0010】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、事故復旧に際して行なわれた関係各所への連絡が相手の立場に立った連絡となっているかどうかを、後の反省時に容易に分からせ得るようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、事故復旧訓練装置において、ディスプレイを含む模擬操作盤と、模擬的な電話動作を行なう模擬電話と、事故情報を含む模擬的なイベント情報を経時的に前記ディスプレイに表示する表示手段と、前記模擬電話が模擬的なオフフックと所定の相手先への接続とを行なった場合、その際の現在時刻である連絡時刻と前記相手先とを前記イベント情報と共に経時的に前記ディスプレイに表示する復旧表示手段と、前記模擬的な相手先への接続を行なった前記模擬電話に入力された音声を当該連絡時刻及び相手先のレコードと対応付けて録音する録音手段と、前記模擬操作盤での操作によって所望の前記連絡時刻及び相手先のレコードを指定可能とする指定手段と、前記指定された連絡時刻及び相手先のレコードに対応付けられて録音されている音声を再生する再生手段と、前記録音されている音声を音声認識する音声認識手段と、前記音声認識の結果に予め登録されているNGワードが含まれているかを判定するNG認識手段と、前記音声認識の結果にNGワードが含まれている場合には、前記音声の再生に際して前記ディスプレイに警告を表示する警告手段と、を設けることで上記課題を解決する。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の事故復旧訓練装置において、前記録音手段は、音声をデジタルデータとして録音する。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の事故復旧訓練装置において、前記音声認識手段は、前記再生手段による音声の再生に際して音声認識を実行する。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の事故復旧訓練装置において、前記音声認識手段は、前記録音手段による音声の録音に際して音声認識を実行し、前記NG認識手段は、当該音声認識と共にNGワードの有無を判定してその結果を保存する。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項4記載の事故復旧訓練装置において、前記音声認識の結果にNGワードが含まれている場合には、前記音声の録音に際して前記ディスプレイに警告を表示する第二の警告手段を備える。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、指定された連絡時刻及び相手先のレコードに対応付けられて録音されている音声の音声認識の結果にNGワードが含まれている場合には、その音声の再生に際してディスプレイに警告を表示するようにしたので、事故復旧訓練に際して行なわれた関係各所への連絡が相手の立場に立った連絡となっているかどうかを、後の反省時に容易に分からせることができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、音声をデジタルデータとして録音するので、その後の音声認識処理等での取り扱いやすさを向上させることができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、再生手段による音声の再生に際して音声認識を実行するので、事故復旧訓練に際してのハードウェアに与える負担を少なくすることができ、円滑に訓練内容の保存を行なうことできる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、録音手段による音声の録音に際して音声認識を実行し、当該音声認識と共にNGワードの有無を判定してその結果を保存するので、事故復旧訓練に際して必要なデータを全て採取することができ、訓練内容のレビューに際してのハードウェアに与える負担を少なくすることができ、例えば、そのような訓練内容のレビューを低性能なクライアントパソコンで行なう途を開くことができる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、録音手段による音声の録音に際してなされた音声認識の結果にNGワードが含まれている場合には、音声の録音に際してディスプレイに警告を表示するので、訓練の段階からNGワードの使用を作業員に意識させることができ、より効果的な訓練を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第一の実施の形態として、装置のハードウェア構成を示すブロック図。
【図2】電話番号ファイルのファイル構造を示す模式図。
【図3】NGワードファイルのファイル構造を示す模式図。
【図4】制御部が実行する事故復旧訓練時の処理の流れを示すフローチャート。
【図5】訓練画面に表示される模擬イベント情報を例示する模式図。
【図6】制御部が実行するレコード指定後の処理の流れを示すフローチャート。
【図7】NGワード判定時に警告ポップアップがポップアップ表示されている様子を示すレビュー画面の模式図。
【図8】警告ポップアップに警告履歴を表示した様子を示すレビュー画面の模式図。
【図9】第二の実施の形態として、制御部が実行する事故復旧訓練時の処理の流れを示すフローチャート。
【図10】訓練画面に表示されるイベント情報を例示する模式図。
【図11】制御部が実行するレコード指定後の処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
第一の実施の形態を図1〜図8に基づいて説明する。
【0023】
本実施の形態は、一例として発電所に設置され、その中央司令室に設置される操作盤を模した模擬操作盤101(図1参照)を有する事故復旧訓練装置11への適用例である。このような事故復旧訓練装置11は、模擬操作盤101に予め用意されているディスプレイ102(図1参照)に、事故情報を含む模擬的なイベント情報を実践さながら経時的に表示する。そして、イベント情報に応じて作業員が行なった操作履歴をディスプレイ102に表示したり、記録に残したりする。事故復旧訓練装置11は、記録に残された操作履歴をディスプレイ102に再現表示することができる。作業員またはその管理者は、そのような再現表示を後に閲覧し、反省材料や評価材料として生かすことができる。
【0024】
本実施の形態の事故復旧訓練装置11は、また、事故復旧に際して不可欠である関係各所への連絡についても実習できるよう、模擬電話103(図1参照)を用意しておき、この模擬電話103で作業員が話した音声を録音できるようにしている。そして、模擬電話103が使用された際の連絡時刻および相手先をディスプレイ102に表示し、しかも記録に残せるようにしている。これに加えて、事故復旧訓練装置11が秀逸な点は、模擬電話103に入力された音声を音声認識し、NGワードが含まれていなかったかどうかを判定し、判定結果をディスプレイ102に表示できるようにしている点である。NGワードとしては、「不適切な単語、用語」、「分かりにくい、または伝わりにくい単語、用語」等である。こうすることで、録音された音声を再生しての反省時に、模擬電話103を使った関係各所への連絡に際して、NGワードを喋らなかったかどうかが一目瞭然となり、事故復旧に際して行なわれた関係各所への連絡が相手の立場に立った連絡となっているかの把握が容易になる。
【0025】
以下、このような本実施の形態の事故復旧訓練装置11について、詳細に説明する。
【0026】
図1は、事故復旧訓練装置11のハードウェア構成を示すブロック図である。事故復旧訓練装置11は、上記ディスプレイ102を含む模擬操作盤101および模擬電話103は、制御部104に接続されてこの制御部104に制御される。制御部104には、音声取込回路105、音声認識回路106、音声合成出力回路107、およびストレージ108も接続されている。
【0027】
制御部104は、予め決められたプロセスを実行するプロセッサ(図示せず)を内蔵している。このプロセッサは、集積回路を含むハードウェアによって構成されていても、マイクロコンピュータにプログラムがインストールされて構成されていても、いずれでもよい。重要なことは、制御部104は、事故復旧訓練装置11における上記処理を実行するために必要な各種のプロセスを実行するように構成されている、ということである。
【0028】
音声取込回路105は、模擬電話103からの音声信号を取り込む回路である。一例として、模擬電話103は音声信号をアナログ信号として出力し、音声取込回路105はそのアナログ信号をデジタル信号に変換する。そして、音声取込回路105は、デジタル信号に変換した音声信号をファイル形式等のような取り扱い易い形式の音声データに変換して出力する。制御部104は、音声取込回路105が出力した音声データをストレージ108に格納する。音声取込回路105は、模擬電話103とは別体で設けられていても、模擬電話103に内蔵されていても、いずれでもよい。
【0029】
模擬電話103は、音声取込回路105を介在する経路とは別経路で制御部104に接続されている。この接続線は、模擬電話103での操作情報を制御部104に送信するための線である。模擬電話103は、オンフックしたときにオンフック信号、オフフックしたときにオフフック信号、および電話をダイヤルしたときにダイヤル信号を発生し、それらの各信号を制御部104に通知する。
【0030】
音声認識回路106は、音声取込回路105が取り込んだ音声信号を音声認識する回路である。一例として、音声認識回路106は、音声認識用のデジタル回路を集積化した音声認識チップを内蔵している。このような音声認識チップとして、現在では様々なチップが実用化されているので、適宜選択して採用することが容易である。音声認識回路106は、音声の認識結果をデジタルデータのデータ列として出力する。
【0031】
音声合成出力回路107は、デジタルデータである音声データを音声再生可能なアナログ信号に変換し、これを増幅してスピーカ109から音声出力させる回路である。一例として、音声合成出力回路107は、音声合成用のデジタル回路を集積化した音声合成チップを内蔵している。このような音声合成チップも、音声認識チップと同様に、現在では様々なチップが実用化されているので、適宜選択して採用することが容易である。
【0032】
ストレージ108は、例えばHDDやSSD等、各種のものを用いることができる。
【0033】
図2は、電話番号ファイル151のファイル構造を示す模式図である。ストレージ108は、電話番号ファイル151を格納している。電話番号ファイル151は、電話番号に相手先の情報を対応付けて記憶している。制御部104は、模擬電話103から受信した電話番号の信号に基づいて模擬電話103がかけた電話番号を認識することができ、電話番号ファイル151を検索することで、認識した電話番号から相手先の情報を取得することが出きる。
【0034】
図3は、NGワードファイル152のファイル構造を示す模式図である。ストレージ108は、NGワードファイル152を格納している。NGワードファイル152は、NGワードに対応付けてメッセージを記憶している。NGワードは、音声認識回路106が出力するデータ列と照合可能なデータ列の形態で記憶されている。メッセージは、ディスプレイ102に表示可能な形態、例えばテキストデータの形態で記憶されている。制御部104は、音声認識回路106が出力する音声認識結果であるデータ列とNGワードファイル152に記憶されているNGワードのデータ列とを照合し、両データ列の近似の程度をもって一致不一致を判定する。
【0035】
ここで、NGワードファイル152に記憶されているNGワードは、「不適切な単語、用語」、「分かりにくい、または伝わりにくい単語、用語」等である。「不適切な単語、用語」としては、例えば、ある単語または用語について言い間違えが生じ易いような単語または用語等がある。「分かりにくい、または伝わりにくい単語、用語」としては、例えば、専門的に過ぎる単語または用語、現場用語等がある。専門的に過ぎる単語または用語をNGワードとしている理由は、発電所等のプラントの作業員は専門技術性が高く、専門用語を使用する傾向が強いところ、専門性を要求されない関係各所の人々にとっては、それを難解に感じたり、場合によってはまったく理解できなかったりするからである。
【0036】
図4は、制御部104が実行する事故復旧訓練時の処理の流れを示すフローチャートである。このフローチャートは、制御部104のプロセッサが実行する処理のうち、事故情報を含む模擬的なイベント情報をディスプレイ102に実践さながら経時的に表示する処理と、この際に実行する模擬電話103からの音声取り込み処理とについてのみ記述している。その他の、例えば模擬操作盤101での操作によって入力されたデータの取り込み処理等については、図4に示すフローチャートでの処理と別の処理によって実行されるが、ここではその説明を省略する。
【0037】
図5は、訓練画面TIに表示される模擬イベント情報SIIを例示する模式図である。図5に示す訓練画面TIを参照しながら、図4に示すフローチャートの処理内容について説明していく。
【0038】
制御部104は、まず、ディスプレイ102に表示している訓練画面TI(図5参照)に、模擬的なイベント情報である模擬イベント情報SIIを表示する(ステップS101)。ここに、表示手段の機能が実行される。模擬イベント情報SIIは、図5に示すように、日付、時刻、電気所名、設備名、機器名、動作、および事象の各項目からなる。そして、模擬イベント情報SIIとして重要な点は、事故復旧訓練のための情報であるため、事故情報が故意に含まれているということである。
【0039】
制御部104は、訓練画面TIの表示中、模擬電話103から通知されるオフフック信号の有無の判定に待機している(ステップS102)。制御部104は、オフフック信号の通知を判定すると(ステップS102のY)、ダイヤル信号の通知を待ち(ステップS103)、ダイヤル信号の通知があれば(ステップS103のY)、電話番号ファイル151を検索し、受信したダイヤル信号から特定される電話番号から相手方の情報を取得する(ステップS104)。そして、制御部104は、自らの計時機能によって現在時刻を取得し、取得した現在時刻を連絡時刻CTとし、ステップS104で取得した相手方の情報を相手先CDとし、これらの連絡時刻CTおよび相手先CDをディスプレイ102に表示する(ステップS105)。ここに、復旧表示手段の機能が実行される。
【0040】
ここで、図5に例示する訓練画面TIから明らかなように、模擬イベント情報SIIは、時間の流れに沿って経時的に表示され、作業員が模擬電話103をかけたときの連絡時刻CTおよび相手先CDも経時的に表示される。例えば、図5に例示する訓練画面TIでは、6月12日の13:32:24から模擬イベント情報SIIが始まり、13:32:24の短絡発生という模擬イベントに応じて、運転員は、13:40:20に中給に、13:41:00に発変電課に、そして、13:41:00には××営業所に模擬電話103をかけていることが示されている。図5に示すように、これらの模擬イベントおよび運転員の行為は、全て時間の流れに沿って経時的に並べられている。なお、図5中、模擬イベント情報SIIの欄に示されている13:41:20の「切(手動)」、13:41:24および13:43:25の「入(手動)」という模擬イベントは、模擬操作盤101での運転員による操作に応じてディスプレイ102に表示されている模擬イベントである。
【0041】
次いで、制御部104は、ステップS103で判定したダイヤル信号に引き続き発生する音声の取り込み処理を実行する(ステップS106)。この処理は、音声取込回路105をアクティブにすることによってなされ、模擬電話103からオンフック信号を受信するまで実行される(ステップS107)。
【0042】
そして、制御部104は、模擬電話103からオフフック信号を受信すると(ステップS107のY)、ステップS108で訓練終了を判定するまでステップS101の処理にリターンする。制御部104は、訓練終了を判定すると(ステップS108のY)、それまで実行していた模擬イベント情報SIIに連絡時刻CTおよび相手先CDのデータ、その際に模擬電話103から出力されて音声取込回路105が取り込んだ音声データ、これに加えて模擬操作盤101での運転員による入力データを対応付け、これらのデータをストレージ108に保存する(ステップS109)。こうすることで、制御部104は、模擬的な相手先への接続を行なった模擬電話103に入力された音声をその連絡時刻CT及び相手先CDのレコードと対応付けて録音することになり、ここに、録音手段の機能が実行される。制御部104は、ステップS109の処理の後、処理を終了する。
【0043】
こうして、事故復旧訓練は終了する。そこで、訓練を受けた運転員は、単独でまたはその者の管理者等と一緒に、訓練の反省を行なう。以下、このような反省時の処理内容について説明する。
【0044】
図6は、制御部104が実行するレコード指定後の処理の流れを示すフローチャートである。訓練の反省をする際、制御部104は、ストレージ108から図4のフローチャート中のステップS109の処理によって保存したデータを呼び出し、ディスプレイ102に表示する。これにより、訓練の反省をする運転員等は、図5に例示した訓練画面TIと同等の表示を行なうレビュー画面RI(図7、図8参照)を閲覧することができる。もっとも、このレビュー画面RIは、連絡時刻CTおよび相手先CDを選択指定できる点で訓練画面TIと相違する。この場合の選択指定は、一例として、模擬操作盤101に設けられているポインティングデバイス(図示せず)によって行なわれる。制御部104は、そのような連絡時刻CTおよび相手先CDの選択がなされた場合、これらに対応付けられているレコードの指定を認識する。ここに、指定手段の機能が実行される。
【0045】
制御部104は、連絡時刻CTおよび相手先CDに記録されている所望のレコードの選択を判定すると(ステップS201のY)、選択されたレコードに対応付けられている音声データのファイルを開く(ステップS202)。そして、制御部104は、内蔵するプロセッサによるプロセスによって構築される音声再生用のプレーヤを起動させ、ファイルを開いた音声データの再生を開始する(ステップS203)。この際、制御部104は、音声合成出力回路107をアクティブにし、音声データに基づく合成音声を生成し、スピーカ109を駆動してその再生を実現する。ここに、再生手段の機能が実行される。
【0046】
こうして、訓練の反省をしている運転者およびその者の管理者等は、ディスプレイ102に表示されるレビュー画面RI上で、模擬イベント情報SIIとこれに対応する連絡時刻CTおよび相手先CDとを、時間の流れに沿った経時的な表記によって確認することができる。これにより、模擬イベント情報SIIが故意に含んでいる事故情報に応じて、運転者がどのタイミングでどこに連絡をしたのかが一目瞭然となり、効果的な反省を行なうことができる。したがって、事故復旧に際して行なうべき関係各所への連絡について留意すべき項目中、前述した、
(1)連絡の有無
(2)連絡がタイムリーであったかどうか
ということについて、適切な反省および評価が可能となる。
【0047】
しかも、本実施の形態の事故復旧訓練装置11によれば、ディスプレイ102に表示されるレビュー画面RI上で、連絡時刻CTおよび相手先CDに記録されている所望のレコードの選択指定が可能であり、この選択指定に応じて、訓練に際してその時に喋った作業員の言葉をそのまま再生してスピーカ109により空間に放出することが可能である。これにより、事故復旧に際して行なうべき関係各所への連絡について留意すべき項目中、前述した、
(3)連絡内容の適正さ
についても、適切な反省および評価が可能となる。
【0048】
本実施の形態において重要なことは、訓練時に発生した出来事、つまり、模擬イベント情報SIIに含まれている事故情報に対する模擬操作盤101を用いた対処操作および模擬電話103を用いた関係各所への連絡が、テキスト表示されるだけでもなく音声再生されるだけでもない、ということである。つまり、思い出すべきは、訓練時の様子である。訓練時、作業員はディスプレイ102に表示される模擬イベント情報SIIを視覚で認識しており、模擬的な事故の発生を認識すると、模擬操作盤101によって必要な操作を処置している。本実施の形態では、このような出来事の再現を、ディスプレイ102への表示によって実現している。これに対して、訓練時、作業員は、模擬的な事故の発生を認識すると、関係各所への連絡を模擬電話103によって音声で行なっている。本実施の形態では、このような出来事の再現を、音声再生によって実現している。このようなことから、訓練の反省または評価を行なうに際して、作業員またはその者の管理者等は、現実に行なわれた訓練に極めて近い状態で訓練の追体験をすることができる。したがって、本実施の形態においては、上記(1)〜(3)についての適切な反省および評価の機会を、極めて効果的に提供することができる。
【0049】
ここで、事故復旧に際して行なうべき関係各所への連絡について留意すべき項目として、
(4)相手の立場に立った連絡をしているかどうか
という点を前述した。本実施の形態の事故復旧訓練装置11は、この項目を極めて容易に確認可能としている。このことを説明するのが、未だ説明を終えていない図6に示すフローチャート中のステップS204〜ステップS208の処理内容である。これらの処理内容は、大筋、訓練時にストレージ108に格納した音声データにNGワードが含まれていないかどうかを判定し、NGワードが含まれていれば、これをディスプレイ102に警告表示する、というものである。以下、図6のフローチャートに沿って説明する。
制御部104は、ステップS201での判定される所望レコードの選択指定の後、ストレージ108に保存されている対応する音声データの音声合成出力回路107を用いた音声再生処理とは別に、音声認識回路106を用いたその音声データの音声認識を実行する(ステップS204)。ここに、音声認識手段の機能が実行される。
【0050】
そして、制御部104は、ステップS204で認識した音声に、ストレージ108に格納されているNGワードファイル152(図3参照)で定義されているNGワードが含まれていないかどうかを判定する(ステップS205)。ここに、NG認識手段の機能が実行される。
【0051】
ステップS205での判定の結果、NGワードが含まれていなければ(ステップS205のN)、制御部104は、再生終了を判定するまで(ステップS208のY)、ステップS204での音声認識からステップS208での再生終了判定までの処理を継続する。これに対して、NGワードが含まれていると判定した場合(ステップS205のY)、制御部104は、NGワードファイル152中でそのNGワードに対応付けて定義されているメッセージを検索する(ステップS206)。そして、ディスプレイ102に表示しているレビュー画面RI上に、検索したメッセージを含む警告ポップアップWPUをポップアップ表示してから(ステップS207)、再生終了の判定処理を実行する(ステップS208)。ここに、警告手段の機能が実行される。
【0052】
図7は、NGワード判定時に警告ポップアップWPUがポップアップ表示されている様子を示すレビュー画面RIの模式図である。警告ポップアップWPUには、「×××は伝わりにくい単語です。」という警告メッセージが示されている。ここで、NGワードファイル152に記憶されているNGワードは、前述したように、「不適切な単語、用語」、「分かりにくい、または伝わりにくい単語、用語」等である。したがって、ストレージ108に格納されている訓練時の音声データにそのようなNGワードが含まれている場合、換言すると、運転員が訓練時にそのようなNGワードを発声した場合、警告ポップアップWPUがポップアップ表示されることになる。これにより、運転員が訓練時に、NGワードとして例示した、ある単語または用語について言い間違えが生じ易いような単語または用語、専門的に過ぎる単語または用語、現場用語等を発声した場合には、これを一目瞭然とすることができる。その結果、本実施の形態によれば、事故復旧訓練に際して行なわれた関係各所への連絡が相手の立場に立った連絡となっているかどうかを、後の反省時に容易に分からせることができる。
【0053】
図8は、警告ポップアップWPUに警告履歴を表示した様子を示す訓練画面の模式図である。図7に示すように、警告ポップアップWPUにはOKボタンAと履歴ボタンBとが含まれている。模擬操作盤101によってOKボタンAを選択指定すると、作業者またはその者の管理者が警告内容を理解したものと解釈して警告ポップアップWPUをレビュー画面RIから不表示とする。この際、制御部104は、バックグランドで警告表示の履歴をストレージ108に保存している。そこで、制御部104は、模擬操作盤101によって履歴ボタンBが選択指定された場合には、図8に示すように、ストレージ108に保存している警告表示の履歴を警告履歴WHとして警告ポップアップWPUに表示する。この警告履歴WHは、訓練時に作業員がNGワードを発声した時刻および相手先と、そのようなNGワードについてのメッセージとを含んでいる。このような警告履歴WHは、作業員またはその者の管理者に、先に行なった訓練の反省材料または評価材料を効果的に提供する。そして、図8に例示する警告履歴WHを含む警告ポップアップWPUは、その画面中に含まれている戻りボタンCの選択指定によって、図7に例示する初期の警告ポップアップWPUに復帰する。
【0054】
第二の実施の形態を図9〜図11に基づいて説明するである。
【0055】
図9は、第二の実施の形態として、制御部104が実行する事故復旧訓練時の処理の流れを示すフローチャートである。本実施の形態の事故復旧訓練時の処理は、ステップS106−1〜ステップS106−4の処理のみ、図4に示す第一の実施の形態の処理と相違する。つまり、第一の実施の形態では、事故復旧訓練時、模擬電話103からの音声を取り込んで音声データの形式でストレージ108に保存する(図4のステップS106、ステップS109)。この際、第一の実施の形態では、音声認識回路106を用いた音声認識を実行しない。これに対して、本実施の形態では、制御部104は、音声取り込み後(ステップS106−1)、音声認識回路106を用い、取り込んでデータ化した音声データを音声認識する(ステップS106−2)。そして、その認識した音声に、NGワードファイル152(図3参照)が定義するNGワードが含まれていないかどうかを判定する(ステップS106−3)。その後、制御部104は、NGワードが含まれていなければオンフックの有無判定に進み(ステップS106−3のN、ステップS107)、NGワードが含まれている場合には(ステップS106−3のY)、ディスプレイ102に表示している訓練画面TIにNGワードありを表示し(ステップS106−4)、その後にオンフックの有無判定に進む(ステップS107)。この際、制御部104は、バックグランドで、NGワード有無の判定結果をストレージ108に保存する。
【0056】
図10は、訓練画面TIに表示されるイベント情報を例示する模式図である。本実施の形態の訓練画面TIは、基本的には第一の実施の形態の訓練画面TIと同等な表示内容を有している。相違するのは、図9に示すフローチャート中のステップS106−4によって表示されるNGワードありの表示である。本実施の形態の訓練画面TIは、そのために、NGワードWIという表示欄を設け、ここにNGワードの発声数を表示する。制御部104は、図9に示すフローチャート中のステップS106−3でのNGワード判定処理のバックグランドで、NGワードの発声数をカウントし、訓練画面TIにおけるNGワードWIの欄にそのカウント数を更新表示していく。ここに、第二の警告手段の機能が実行される。
【0057】
図11は、制御部104が実行するレコード指定後の処理の流れを示すフローチャートである。本実施の形態におけるレコード指定後の処理は、基本的には第一の実施の形態での同処理と共通している。相違するのは、図6に示す第一の実施の形態での音声認識処理(ステップS204)を実行しない、という点である。本実施の形態においては、訓練時に既に音声認識処理を実行済みで(図9のステップS106−2)、その結果をストレージ108に保存済みなので(図9のステップS106−3)、NGワード有無の判定(図11のステップS205)に際しては、ストレージ108に保存されているNGワード有無の結果をそのまま利用できるからである。
【0058】
以上説明したように、本実施の形態では、事故復旧訓練に際して、模擬電話103での相手先への発話にNGワードが含まれているかどうかの警告を発話数という形態で行なうことができる。これにより、作業員は、訓練の段階からNGワードの使用を意識することができ、より効果的な訓練を行なうことができる。
【符号の説明】
【0059】
102 ディスプレイ
101 模擬操作盤
103 模擬電話
ステップS101 表示手段
ステップS104、ステップS105 復旧表示手段
ステップS106、ステップS109 録音手段
ステップS201 指定手段
ステップS202、ステップS203 再生手段
ステップS204、ステップS106−2 音声認識手段
ステップS205、ステップS106−3 NG認識手段
ステップS206、ステップS207 警告手段
ステップS106−4第二の警告手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイを含む模擬操作盤と、
模擬的な電話動作を行なう模擬電話と、
事故情報を含む模擬的なイベント情報を経時的に前記ディスプレイに表示する表示手段と、
前記模擬電話が模擬的なオフフックと所定の相手先への接続とを行なった場合、その際の現在時刻である連絡時刻と前記相手先とを前記イベント情報と共に経時的に前記ディスプレイに表示する復旧表示手段と、
前記模擬的な相手先への接続を行なった前記模擬電話に入力された音声を当該連絡時刻及び相手先のレコードと対応付けて録音する録音手段と、
前記模擬操作盤での操作によって所望の前記連絡時刻及び相手先のレコードを指定可能とする指定手段と、
前記指定された連絡時刻及び相手先のレコードに対応付けられて録音されている音声を再生する再生手段と、
前記録音されている音声を音声認識する音声認識手段と、
前記音声認識の結果に予め登録されているNGワードが含まれているかを判定するNG認識手段と、
前記音声認識の結果にNGワードが含まれている場合には、前記音声の再生に際して前記ディスプレイに警告を表示する警告手段と、
を具備する事故復旧訓練装置。
【請求項2】
前記録音手段は、音声をデジタルデータとして録音する、請求項1に記載の事故復旧訓練装置。
【請求項3】
前記音声認識手段は、前記再生手段による音声の再生に際して音声認識を実行する、請求項1または2に記載の事故復旧訓練装置。
【請求項4】
前記音声認識手段は、前記録音手段による音声の録音に際して音声認識を実行し、前記NG認識手段は、当該音声認識と共にNGワードの有無を判定してその結果を保存する、
請求項2に記載の事故復旧訓練装置。
【請求項5】
前記音声認識の結果にNGワードが含まれている場合には、前記音声の録音に際して前記ディスプレイに警告を表示する第二の警告手段を備える、請求項4記載の事故復旧訓練装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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