説明

二ギ酸ナトリウムの製造及び使用

本発明は、ギ酸含有量が多い固体二ギ酸ナトリウムの製造方法及び使用方法、動物飼料中における、酸性化剤、保存料、エンシレージ補助剤、肥料、成長刺激剤及び生産力刺激剤の形態でのその使用、並びに、二ギ酸ナトリウムを含んでいる本発明の動物飼料用添加物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギ酸含有量が多い固体形態の二ギ酸ナトリウムの製造方法、並びに、動物飼料中における、酸性化剤、保存料、サイレージ補助物質、肥料、成長促進剤及び生産性促進剤としてのその使用に関し、さらに、本発明の二ギ酸ナトリウムを含んでいる動物飼料用添加物にも関する。
【背景技術】
【0002】
ギ酸ホルメート(Ameisensaure Formiate)は、抗菌活性を有しており、例えば、植物材料及び動物材料(例えば、芝生、農産物又は食用肉など)を保存及び酸性化するために使用されるか、又は、バイオ廃棄物を処理するために使用されるか、又は、動物栄養のための添加物として使用される。
【0003】
動物栄養の分野では、ナトリウム化合物として、一般に、二ギ酸ナトリウムとギ酸水素三ナトリウムの混合物が使用されるか、又は、ギ酸水素三ナトリウムが単独で使用される。例えば、WO 96/35337及びWO 04/57977を参照されたい。WO 96/35337においては、さらに、二ギ酸ナトリウムの使用についても報告されているが、この化合物の製造についての具体的な教示は全く成されていない。
【0004】
ギ酸水素塩の使用に関しては、一般に、活性成分のうちの1つとしてギ酸アニオンの含有量はできるだけ高いことが望ましい。経済的な側面からは、このギ酸アニオンの含有量の増大がギ酸フラクションの含有量をできるだけ高くすることに付随して起こるのであれば、上記酸化活性も同時に提供されるので、特に有利である。これらの側面においては、ギ酸ナトリウムホルメート(ameisensaurem Natriumformiat)を使用することが特に適しているが、それは、この場合、四ギ酸水素三ナトリウム(trinatriumhydrogentetraformiat)と比較して、また、ギ酸カリウムホルメート(ameisensaurem Kaliumformiat)と比較しても、いずれの場合も、ギ酸イオン及びギ酸の理論上の含有量が高いからである。二ギ酸アンモニウムの場合、これら両方の値はいくぶんかさらに適しているが、しかしながら、これは、極めて不安定な化合物である。
【0005】
固体形態にあるギ酸ホルメート及びその製造については、それ自体、例えば、文献(Gmelins Handbuch der anorganischen Chemie [Gmelin's handbook of inorganic chemistry], 8th edition, number 21, pages 816 to 819, Verlag Chemie GmbH, Berlin 1928)及び文献(Gmelins Handbuch der anorganischen Chemie [Gmelin's handbook of inorganic chemistry], 8th edition, number 22, pages 919 to 921, Verlag Chemie GmbH, Berlin 1937)により長い間知られている。これらの引例によれば、ギ酸ホルメートである二ギ酸カリウム及び二ギ酸ナトリウムは、原理上、ギ酸カリウム又はギ酸ナトリウムをギ酸に溶解させた後、冷却することにより得ることができると考えられている。二ギ酸ナトリウムの他に、さらに安定な結晶形態ギ酸水素三ナトリウムが存在する。しかしながら、特に二ギ酸ナトリウムが辛うじて結晶質乾燥形態でのみ利用可能であるという事実及び、さらに、二ギ酸ナトリウムが比較的不安定であるという事実は、留意される。「Gmelin's handbook」において述べられていることから得ることができる結論は、そこに記載されている生成物は、純粋な二ギ酸ナトリウムではなかったということのみである。
【0006】
EP 0824511 B1には、ギ酸の複塩を含んでいる生成物の製造方法が記載されている。この方法においては、特定のアルカリ金属又はアンモニウムのギ酸塩、水酸化物、(重)炭酸塩又はアンモニアを、40℃〜100℃で、少なくとも50%の含有量を有しているギ酸と混合させる。その混合物を、次に、冷却し、濾過することにより、該複塩が得られる。ギ酸カリウムホルメートの製造が例として提供されており、また、ギ酸ナトリウムホルメートと四ギ酸水素三ナトリウムの混合物の製造も例として提供されているが、それに反して、固体の純粋な二ギ酸ナトリウムの製造については、教示されていない。かくして、ギ酸ナトリウムはギ酸カリウムと比較して溶解限度が低いことに起因して、示されている濃度のギ酸ナトリウムの(水性)溶液を製造することは不可能であることから、該方法で使用されるギ酸カリウムとギ酸ナトリウムの(水性)溶液についての方法に関して明示されている温度限界及び濃度限界では、二ギ酸カリウムの製造のみが可能である。従って、二ギ酸カリウムは得られるが、二ギ酸ナトリウムはもっぱら四ギ酸水素三ナトリウムとの混合物として存在している。
【0007】
ドイツ特許 DE 424017(1926年1月14日)は、ギ酸ナトリウムを水性ギ酸中に導入することによる種々の酸含有量を有するギ酸ナトリウムホルメートの製造について教示している。結果として生じる結晶は、該溶液を室温まで冷却することにより得られる。当該ギ酸の含水量に応じて、ギ酸水素三ナトリウム及びギ酸水素三ナトリウムと二ギ酸ナトリウムの混合物に加えて、二ギ酸ナトリウムも得ることができると述べられている。使用するギ酸の含有量が50%を超えている場合(例えば、実施例2における80%)、二ギ酸ナトリウムは、DE 424017の方法で得られると述べられている。しかしながら、本発明者らによる実験により、DE 424017に明示されている条件下では二ギ酸ナトリウムを純粋な結晶形態で得ることは不可能であるということが分かった。それどころか、この方法では、ギ酸水素三ナトリウムとの混合物が得られ、そのギ酸含有量は、純粋な二ギ酸ナトリウムについて期待された理論値である40.36重量%(総乾燥重量基準)よりも著しく少ない。
【0008】
従って、今日まで、ギ酸含有量が少なくとも35重量%である純粋で安定な乾燥形態にある固体二ギ酸ナトリウムを製造することは不可能であった。
【0009】
固体形態にあるギ酸ナトリウムホルメートの充分な安定性は、取扱い及び貯蔵寿命に関して特に重要であるのみではなく、製造に関しても特に重要である。特に、ギ酸は腐食活性を有しているので、ギ酸ナトリウムホルメート中に存在しているギ酸の放出は、その放出がどの程度であっても望ましくない。
【0010】
動物栄養の分野では、二ギ酸ナトリウムは、微量元素のナトリウムをNaCl(これは、二ギ酸ナトリウムが無ければ通常添加される)の形態で別途添加する必要がなく、それ自体、既にナトリウム源に相当しているという利点をもたらす。二ギ酸ナトリウム中の高いギ酸含有量(例えば、四ギ酸水素三ナトリウムと比較して高いギ酸含有量)に起因して、ナトリウムイオンの含有量は限られている。カチオン、例えばカリウムイオンの含有量が少ない又は限られているということは望ましいが、それは、特に、単胃動物の場合、とりわけ、家禽の場合、カリウムイオンが液体摂取の増大(飲む量の増大)を引き起こすことができ、従って、動物の排泄物の希釈、即ち、利尿活性を発揮し得るからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、固体形態で高純度の二ギ酸ナトリウム、即ち、特にギ酸含有量が高い二ギ酸ナトリウムを製造する方法を提供することであった。本発明の方法は、特に、比較的安定で乾燥した形態の二ギ酸ナトリウムを製造することを可能とし、従って、その工業的生産への道を開くものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は、驚くべきことに、ギ酸ナトリウムと1.5倍よりも多いモル過剰の濃ギ酸又は水性ギ酸との混合物から、ギ酸の水に対するモル比を1.1:1以上に維持しながら、標的化合物を晶出させることによって達成された。
【0013】
従って、本発明は、第1に、二ギ酸ナトリウムの総重量に基づいて少なくとも35重量%のギ酸含有量を有する固体形態の二ギ酸ナトリウムを製造する方法に関し、ここで、該方法は、ギ酸ナトリウムとギ酸含有量が少なくとも74重量%である水性ギ酸又は濃ギ酸から、高温下で、HCOOHのNa[HCOO]に対するモル比が1.5:1より大きく且つギ酸の水に対するモル比が1.1:1以上である均質な混合物を製造すること、その混合物を冷却すること、及び、生じた固相を母液から分離させることを含む。
【0014】
本発明の方法によって、ギ酸含有量が少なくとも35重量%、しばしば、少なくとも36重量%、特に、少なくとも37重量%、とりわけ、少なくとも38重量%、極めて特に、少なくとも39重量%、さらに特に、少なくとも40重量%(ここで、これらは、いずれの場合も、二ギ酸ナトリウムの総重量に基づいている)である固体乾燥形態の二ギ酸ナトリウムの製造が初めて可能となる。従って、このタイプの二ギ酸ナトリウムは、本発明のさらに別の主題である。
【0015】
本発明の目的において、「均質な混合物」は、ギ酸の透明な水溶液(ここで、該溶液中に存在しているギ酸ナトリウムは、全て、溶解した形態にある)を意味するために使用される。適切な場合には、以下で詳細に記述されているように、本発明により製造されたこの均質な混合物に、結晶種を入れる目的で二ギ酸ナトリウム結晶を含有させる。この点で、本明細書で使用されている用語「均質な混合物」には、ギ酸及び溶解しているギ酸ナトリウムを含んでいる水溶液のみではなく、適切な場合には添加される二ギ酸ナトリウム結晶を含んでいるものも包含される。
【0016】
本発明で使用される出発物質であるギ酸ナトリウム及びギ酸は、市販されてお入り、前処理に付すことなくそのまま使用することができる。
【0017】
室温で固体として存在しているギ酸ナトリウム、例えば、工業用グレードのギ酸ナトリウムなどを使用することができる。ポリオール類の製造において産生される廃棄物としてのギ酸ナトリウムも、本発明で使用するのに適している。一般に、使用するギ酸ナトリウム源の総重量に基づいてNa[HCOO]の含有量が少なくとも97重量%であるギ酸ナトリウムを使用する。好ましくは、カリウムイオンの含有量が0.1重量%未満、特に、0.05重量%未満(ここで、これらは、いずれの場合も、使用するギ酸ナトリウム源の総重量に基づいている)のギ酸ナトリウムを使用する。
【0018】
ギ酸と反応させるためのギ酸ナトリウムは、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム若しくは炭酸水素ナトリウムを濃厚水溶液状態のギ酸と反応させることにより、又は、一酸化炭素を液体水酸化ナトリウムと反応させることにより、又は、ギ酸メチルを水酸化ナトリウムと反応させることにより、in situで生成させることも同様に可能である。この変形態様の場合、続いて、例えば、固体NaOH又はその濃厚水溶液を、適切な場合には冷却及び/又は撹拌しながら、濃ギ酸に溶解させるような手順を行うこともできる。出発物質の比率は、有利には、得られた混合物中の成分(ギ酸、ギ酸ナトリウム及び水)が必要とされる上記モル比内に既に入っているように直接選択することができる。そうでない場合は、一般に、余分なギ酸を中和すること、及び/又は、当業者には既知の通常の方法(例えば、蒸発、抽出及び蒸留など)によって当該混合物中の含水量を低減させることが必要である。さらに、この変形態様では、続いて、一般的なプロセス手順について述べたことを実施することができる。
【0019】
本発明では、ギ酸含有量が少なくとも74重量%であるギ酸水溶液を使用するか、又は、濃ギ酸を使用する。「濃ギ酸」は、ギ酸含有量が94重量%以上であるギ酸溶液、即ち、残余の水含有量が6重量%未満であるギ酸溶液(ここで、これらは、いずれの場合も、ギ酸溶液の総重量に基づいている)を意味するために当業者によって使用される。水性ギ酸としては、ギ酸水溶液の総重量に基づいてギ酸含有量が94重量%未満であるギ酸水溶液。使用するギ酸水溶液は、好ましくは、少なくとも75重量%の濃度を有しており、好ましくは、少なくとも80重量%、特に好ましくは、少なくとも90重量%の濃度を有している。極めて特に好ましくは、ギ酸含有量が少なくとも94重量%である濃ギ酸を使用する。ギ酸又は溶液の濃度は、好ましくは、99重量%を超えず、特に好ましくは、80〜99重量%の範囲内、とりわけ、94〜98重量%の範囲内である。
【0020】
好ましくは、1モルのNa[HCOO]当たり、少なくとも1.6モル、特に、少なくとも1.8モル、とりわけ、少なくとも2.0モルのHCOOHの量の濃ギ酸又は水性ギ酸を使用する。好ましくは、使用するHCOOH:Na[HCOO]のモル比は、1.6:1〜3:1の範囲、特に、1.8:1〜2.5:1の範囲内にある。
【0021】
さらにまた、好ましくは、それぞれの出発物質を、当該均質な混合物中のHCOOH:H2Oのモル比が、少なくとも1.5:1、特に好ましくは、少なくとも1.8:1となるような量で使用する。極めて特に好ましくは、それは、1.5:1〜10:1の範囲内であり、特に、1.8:1〜6.1:1の範囲内である。
【0022】
上記出発物質を使用する順序は、副次的に重要である。有利には、上記出発物質の維持すべきモル比の均質液体混合物が得られるような方法で、上記混合物を生成させる。本発明によれば、当該均質な混合物は、高温下で生成させる。これは、少なくとも30℃の温度、特に、少なくとも40℃の温度、とりわけ、少なくとも50℃の温度を意味するために使用される。当該均質な混合物は、当業者には既知の通常の方法を用いて生成させることが可能であり、例えば、高い温度を用いて、混合し、撹拌し、及び/若しくは、溶解させることによって生成させることが可能であり、又は、これらの方法を組合せて使用することによって生成させることが可能である。
【0023】
本発明の方法を実施するためには、一般に、続いて、ギ酸の水溶液又は濃厚溶液(好ましくは、濃厚溶液)を最初に加えるような手順を実施する。このギ酸溶液に、固体形態又は水溶液若しくは水性懸濁液の形態にあるギ酸ナトリウムを添加する。この添加は、幾つかの部分に分けて実施することが可能であり、例えば、2、3、4又はそれ以上の別個の部分に分けて、それらを、所定の時間間隔で、又は、連続して、即ち、一定の速度で、低減する速度で、若しくは、増大する速度で、該混合物に添加する。添加中は、一般に、温度が上昇するので、適切な場合には、付加的な加熱は必ずしも必要ではない。通常、該混合物の温度は、該混合物内において、30℃〜80℃の範囲の温度、特に、40℃〜70℃の範囲の温度が維持されるような方法で、例えば、添加速度を調整することにより、及び/又は、該混合物を冷却若しくは加熱することにより、及び/又は、添加する溶液若しくは懸濁液を冷却若しくは加熱することにより調節する。該混合物の温度は、65℃を超えないことが好ましい。本発明にとって、水溶液から結晶化させることは必須である。以下に記載されているように、該溶液は、結晶化が開始する前、直ぐに、種結晶と混合させることが可能であり、又は、種結晶と混合された状態にすることが可能である。
【0024】
ギ酸ナトリウムの添加中は、有利には、当該溶液又は懸濁液を撹拌する(例えば、かき混ぜる)。その撹拌は、当該添加が完了するまで、少なくとも均質な混合物が得られるまで、一般に、結晶化が完結するまで、継続させる。
【0025】
本発明によれば、上記出発物質は、全ての反応器、ケトル、フラスコ、容器及び他の装置内で混合することが可能であり、特に、均質な液体混合物を生成させるために通常使用されている熱交換内表面を有する撹拌槽内で混合することができる。そのようなものは、当業者には知られている。腐食効果、例えば、鋼鉄製の反応器又はケトルの場合における腐食効果を回避するために、ギ酸と接触する表面及び壁面を、耐酸保護層(例えば、Teflon(登録商標))で被覆するか又は特に耐酸性の高合金鋼で裏打ちすれば有利である。
【0026】
次に、該混合物を、好ましくは引き続き撹拌しながら、結晶化させる。これは、例えば部分的に蒸発させるか又は冷却することにより、好ましくは、冷却することにより、達成することができる。液相の蒸発を(好ましくは、減圧下で)制御することにより該結晶化を引き起こすか又は開始させるか又は促進する場合、一般に、結晶化の開始時点及び結晶化中に当該均質混合物中の成分のモル比が上記で特定した範囲内に確実にあるようにする。しかしながら、適切であれば、この場合、HCOOHのH2Oに対する比率は、結晶化中に、出発溶液中におけるモル比よりも高いモル比にシフトし得る。当該結晶化を冷却により生じさせる場合、これは、好ましくは、ゆっくりと行い、有利には、1〜複数時間の期間、例えば、最大で24時間までの期間、又は、最大で12時間までの期間、特に、1〜15時間の期間、とりわけ、2〜10時間の期間、さらに特に、3〜10時間の期間、極めて特に、4〜8時間の期間をかけて行う。この場合、二ギ酸ナトリウムが晶出する。約1〜約30K/時間の範囲、特に、約2〜約20K/時間の範囲、例えば、約5〜15K/時間の範囲内の冷却速度で冷却すれば有利であるということが分かっている。目的化合物の実質的な結晶化を達成するためには、当該反応混合物を、上記期間、30℃未満の温度、例えば、約25、20、15又は10℃又はそれ未満の温度、特に、20℃未満の温度、例えば、約18℃以下又は16℃以下の温度に冷却することが有利である。一般に、この場合、該温度は、0℃未満、特に、5℃未満、とりわけ、10℃未満、極めて特に、15℃未満までは低下させない。
【0027】
結晶形成の開始後は、加熱することにより、例えば、最高で65℃までの温度、特に、25℃〜50℃の範囲の温度に加熱することにより、結晶種又は最初に形成された小さな結晶を溶解させ、次いで、冷却を再開するか又は適切な場合には冷却を遅延させることにより、結晶化プロセスを再開させることが有利であるということが分かっている。この再開された冷却の間、冷却速度は、通常、約0.5〜約20K/時間の範囲内、例えば、約1〜15K/時間の範囲内、特に、約2〜15K/時間の範囲内、とりわけ、約5〜10K/時間の範囲内であり、好ましくは、最大で、25K/時間である。当該結晶化温度は、上記範囲内にある。
【0028】
さらに、結晶化作用を促進するために、即ち、いわゆる「結晶種を入れる」ことを目的として、当該混合物に二ギ酸ナトリウムの既存の結晶(例えば、本発明の方法によって予め生成させた結晶)を添加することは有利であり得る。そのような結晶は、乾燥形態で添加することができ、又は、液相(例えば、水相又はギ酸相)に懸濁させた湿潤形態で添加することができ、又は、それらの形態を組み合わせて添加することができる。この場合、該添加は、一般に、結晶を形性させる温度よりも高いが、均質な溶液が存在する温度よりも低い温度で行う。従って、当該反応混合物の温度は、一般に、結晶の添加中は65℃を超えないようにし、好ましくは、25〜50℃の範囲内とする。次いで、約0.5〜約20K/時間、例えば、約1〜15K/時間、特に、約2〜15K/時間、とりわけ、約5〜10K/時間の範囲内の冷却速度で、上記で記載したように結晶化作用を進行させることができる。結晶化温度は、上記範囲内である。
【0029】
結晶化に続いて、得られた固体生成物を母液から分離させる。そのような分離に関して通常の当業者には既知の方法、例えば、濾過又は遠心分離などによって、好ましくは、遠心分離によって、特に、プッシャータイプ遠心分離機又はピーラー遠心分離機を用いて、該固相を母液から分離させることができる。このような分離の最中に、該母液は、多くの場合、分離させる前記固相の含水量が2〜0.2重量%の範囲、特に、1.5〜0.4重量%の範囲、とりわけ、1〜0.5重量%の範囲(ここで、これらは、いずれの場合も、分離させる該固相の総重量に基づいている)となる程度まで除去される。さらに、該母液は、多くの場合、分離させる前記固相のギ酸含有量が40.5〜43.5重量%の範囲、特に、41〜43重量%の範囲、とりわけ、41〜42.5重量%の範囲、極めて特に、41〜42.2重量%の範囲(ここで、これらは、いずれの場合も、分離させる該固相の総重量に基づいている)となる程度まで除去される。
【0030】
通常、このようにして得られた湿性生成物を、次に、乾燥方法によって、例えば、減圧下及び/又は適度な加熱によって、乾燥させる。これについて使用可能な乾燥機及び乾燥方法は、当業者には自体公知であり、また、例えば、「K.Kroll, Trockner und Trocknungsverfahren [Dryers and drying methods], 2nd edition, Springer Verlag, Berlin 1978」に記載されている。しかしながら、この場合、当該生成物中に存在しているギ酸の比較的高い揮発性を考慮に入れなければならず、また、当該生成物の限られた温度安定性についても考慮に入れなければならない。従って、以下において詳細に記載されているように、一般に、乾燥条件を比較的狭いパラメータ範囲内で制御することが必要である。
【0031】
代替として、又は、補足的に、上記湿性生成物又は乾性物質は、当業者には既知の乾燥剤と混合させることができる。これは、得られた生成物の特に流動性を改善するための通常の処置である。これに適した物質は、例えば、以下のものである:乾燥剤、例えば、ケイ酸、例えば、Degussa製の「Sipernat」、無機アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、例えば、Mg、Ca、Zn、Na、Kの硫酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩又はリン酸塩;さらに、無機バッファー、例えば、アルカリ金属のリン酸水素塩、特に、リン酸水素ナトリウム及びリン酸水素カリウム、例えば、K2HPO4、KH2PO4及びNa2HPO4など。
【0032】
乾燥中、該生成物は、有利には、乾燥機内で撹拌する。これは、特に、機械的要素、例えば、混合羽によって行うか、又は、ガス流、例えば、通常の流動床によって行う。特に適切な乾燥装置又は乾燥機は、例えば、接触乾燥機、流動層乾燥機及びジェットドライヤーなどであり、適切な場合は、噴霧乾燥機を使用することができる。特に適しているものは、羽式乾燥機であり、また、減圧下で乾燥させる場合には、特に、真空羽式乾燥機であり、又は、混合羽を備えた対流乾燥機(例えば、Forberg製)である。
【0033】
好ましくは、母液から分離させる固相は、60℃以下、特に、55℃以下、とりわけ、50℃以下の生成物温度で乾燥させる。
【0034】
好ましくは、母液から分離させる固相は、105Pa以下の圧力で乾燥させる。減圧下で乾燥させる場合、これは、好ましくは、104Pa以下であり、特に好ましくは、6・103Pa以下であり、例えば、1・103Pa〜6・103Paの範囲である。特に有利な結果は、4・103Pa未満の圧力、例えば、1・103Pa〜3.5・103Paの範囲の圧力で真空乾燥させることにより達成される。
【0035】
好ましい実施形態では、乾燥は、100℃以下、特に好ましくは、80℃以下、極めて特に好ましくは、65℃以下の壁温度での接触乾燥を用いて行う。この場合、蒸気は、ストリッピングガス流、例えば、空気又は窒素などによって除去することができる。そのようなストリッピングガス流を用いる場合、通常、1時間当たりそれぞれの乾燥機の容積と同様の大きさにほぼ相当するような量のガスを乾燥機に流すことができる。特に好ましくは、接触乾燥は、2・103Pa〜約大気圧の範囲の圧力、例えば、2・103Pa〜1・104Paの範囲の圧力で実施する。
【0036】
好ましいさらなる実施形態では、乾燥は、20〜120℃の範囲、さらに好ましくは、50〜100℃の範囲、特に好ましくは、60〜90℃の範囲のキャリヤーガス注入口温度での対流乾燥によって行う。適切なキャリヤーガスは、例えば、空気又は窒素などである。そのキャリヤーガス流は、既知方法で、直線的又は環状に乾燥機に通すことが可能である。適切な場合には、該乾燥操作に先立ち、キャリヤーガスを前処理(予備乾燥)に付す。明らかに、そのような操作を上記乾燥操作の下流に連結することも可能であり、その結果、そのようなやり方で、例えば、凝縮又は吸着などによって乾燥させたガスは、生成物を乾燥させるためのキャリヤーガスとして再利用することができる。通常、1時間当たりそれぞれの乾燥機の容積の100倍〜10000倍にほぼ相当するような量のガスを乾燥機に流すことができる。
【0037】
乾燥後に生成物中に残存している水分の含有量(残留水分含有量)は、Karl Fischerによる酸化滴定 (例えば、「Wiland, Wasserbestimmung durch Karl-Fischer-Titration [Water determination by Karl-Fischer titration], Darmstadt, GIT, 1985」に記載されている)で測定して、総重量に基づいて、一般に、0.5重量%以下であり、通常、約0.5〜0.01重量%の範囲、好ましくは、0.3重量%以下、さらに好ましくは、0.2重量%以下、特に好ましくは、0.15重量%以下、極めて特に好ましくは、0.1重量%以下である。
【0038】
本発明の方法は、連続式、バッチ式又は半バッチ式で実施することができる。この場合、該二ギ酸ナトリウムは、上述のように固体乾燥形態で得られるが、その際、母液は、有利には、出発物質を製造するために又は出発物質流中のモル濃度比を調節するために完全に又は部分的に再利用することができる。当該結晶を分離した後、例えば水酸化ナトリウム溶液を用いて、母液を中和することができる。結果として本質的にギ酸ナトリウムが生じるが、これは、適切な場合には、蒸発させることができ、又は、再度結晶化させることができる。
【0039】
本発明の方法によって、固体乾燥形態にある二ギ酸ナトリウムが高純度で得られる。従って、該固体乾燥形態二ギ酸ナトリウムは、一般に、少なくとも35重量%、多くの場合、少なくとも36重量%、特に、少なくとも37重量%、とりわけ、少なくとも38重量%、極めて特に、少なくとも39重量%、さらに極めて特に、少なくとも40重量%(ここで、これらは、いずれの場合も、該二ギ酸ナトリウムの総重量に基づいている)という高いギ酸含有量を有している。一般に、本発明の二ギ酸ナトリウム中のギ酸含有量は、41重量%以下、特に、40.5重量%以下(ここで、これらは、いずれの場合も、総重量に基づいている)である。とりわけ、該含有量は、38〜41重量%の範囲内、さらに特に、39〜41重量%の範囲内、極めて特に、39〜40.5重量%の範囲内、又は、40〜41重量%の範囲内(ここで、これらは、いずれの場合も、得られる二ギ酸ナトリウムの総重量に基づいている)である。
【0040】
ここにおいて、及び、以下において、「二ギ酸ナトリウムの総重量」という表現は、「総乾燥重量」という表現と同じ意味で用いられる。「総乾燥重量」は、生成物をその分解温度未満の温度で乾燥させることによって、例えば、50ミリバールの圧力下35℃の温度で1時間にわたって乾燥させることによって得られた二ギ酸ナトリウムの重量を意味するために使用される。乾燥生成物中のギ酸含有量は、通常の方法で、例えば、該ギ酸を塩基を用いて滴定することにより測定することができる。明らかに、該乾燥生成物中には、高含有量のギ酸アニオンも存在している。
【0041】
本発明の方法で製造された二ギ酸ナトリウムは、典型的には、結晶形態で得られる。それは、本質的に、又は、完全に、式 Na[HCOO]・HCOOHに対応していると考えられるが、、しかしながら、これは、本発明を限定することを意味すると解釈されるべきではない。約65℃で、DSC(示差走査熱量測定法)によって相転移点が観察され得る。本発明により得られた二ギ酸ナトリウムの結晶質の変性は、例えばX線広角散乱法によって確認することができる。望ましくない変性、例えば、四ギ酸水素三ナトリウムなども、同様に、同じ方法で定性的に検出することができる。X線回折反射は、本出願においては、使用するX線の波長から独立している格子間隔d[Å](ここで、該間隔は、測定した回折角からブラッグの式を用いて計算し得る)の形態で示す。
【0042】
一般に、本発明の二ギ酸ナトリウムのX線粉末回折図は、特定の結晶構造の全ての回折反射特性を示す。しかしながら、生じた結晶の結晶度の程度及び微細構造に応じて、X線粉末回折図において回折反射の強度が低下することがあり得るが、それは、強度の劣った個々の回折反射をX線粉末回折図においてもはや検出することができない程度であり得る。従って、強度の劣った個々の回折反射は存在していないものとしてもよく、又は、X線粉末回折図において強度比を変更してもよい。示されている個々の回折反射の全てがX線粉末回折図において存在していれば、それは、結晶度が特に高い化合物が含まれているということを示している。本発明の二ギ酸ナトリウムが、個々に示されている特徴的な回折反射に加えて、さらに別の回折反射も示し得るということは、当業者には自明である。さらに、本発明の二ギ酸ナトリウムと他の結晶質化合物の混合物は、一般に、付加的な回折反射も示す。
【0043】
本発明の二ギ酸ナトリウムのX線粉末回折図は、通常、d=8.99;7.40;6.69;5.12;4.37;3.83;3.40;3.10;2.98;2.94;2.90[Å](±0.04[Å])から選択される少なくとも6、特に、少なくとも8、とりわけ、少なくとも10の格子間隔における回折反射によって特徴付けられる。さらなる回折反射も、しばしば、以下の格子間隔:d=8.01;4.89;3.97;3.50;3.35;3.25;3.02;2.83;2.69;2.44;2.22及び/又は2.16[Å](±0.04[Å])において観察される。非常に近接している格子間隔はX線粉末回折図において互いに重なり合うことがあり得るということは、当業者には自明である。X線粉末回折図において得られた典型的な相対強度を、表1に記載する。
【表1】

【0044】
本発明に従って製造された二ギ酸ナトリウムは、一般に、成分であるギ酸ナトリウムとギ酸のモル比が、通常、0.9:1〜1.1:1の範囲内にあり、特に、0.95:1〜1.05:1の範囲内にあり、とりわけ、約1:1であるような純度で得られる。得られた固体生成物中の二ギ酸ナトリウムの画分は、通常、少なくとも97重量%、特に、少なくとも98重量%、とりわけ、少なくとも99重量%(ここで、これらは、いずれの場合も、固体生成物の総重量に基づいている)である。さらなる成分として、該生成物は、残留水分又は結晶化残留水分に起因して、一般に、最大で1.5重量%までのギ酸、最大で1.5重量%までのギ酸ナトリウム及び/又は最大で0.5重量%までの水(ここで、これらは、いずれの場合も、生成物の総重量に基づいている)を含有し得る。
【0045】
本発明に従って製造された二ギ酸ナトリウムは、吸湿性が比較的低いことによって、特に、四ギ酸水素三ナトリウムと比較して吸湿性が低いことによって区別される。さらに、本発明に従って得られた二ギ酸ナトリウムは、問題のない取扱い及び(さらなる)加工処理を保証するのに充分に安定である。さらに、本発明の二ギ酸ナトリウムのカリウムイオン含有量は、一般に、1000ppm以下、特に、500ppm以下(ここで、これらは、いずれの場合も、総重量に基づいている)である。製造条件によって、本発明の二ギ酸ナトリウムのクロリド含有量は、一般に、1500ppm未満、特に、1000ppm未満(ここで、これらは、いずれの場合も、総重量に基づいている)である。
【0046】
純粋で安定な結晶形態にある固体乾燥二ギ酸ナトリウムを製造するための本発明の方法によって、製造条件を工業規模に適用することがが初めて可能となる。
【0047】
望まれる用途に応じて、本発明によって製造された二ギ酸ナトリウムは、さらに加工することが可能である。特に、限定された粒径の粉末を製造することが可能であり、製造された粒子をコーティング材でコーティングすることが可能であり、及び/又は、他の添加剤との混合物を製造することが可能である。コーティング材の例としては、油、例えば、ダイズ油、脂肪及び脂肪酸、例えば、パルミチン酸及びステアリン酸、又は、ポリマーコーティング、例えば、ポリアルキレン製ポリマーコーティング、並びに、それらの誘導体を挙げることができる。通常の添加剤は、特に、固化防止助剤(anticaking aid)及び乾燥剤、例えば、上記で挙げたもの、例えば、ケイ酸などである。考慮される通常のコーティング法及び添加剤は、それぞれの分野の当業者には十分に知られている。例えば、DE 10231891 A1を参照されたい。
【0048】
得られた固体生成物は、乾燥ステップの前及び/又は乾燥ステップの後で、例えば乳鉢、カッター、パンチプレス及びローラーミルなどを用いて、微粉砕することが可能であり、例えば混合機などを用いて、凝集させることが可能であり、並びに/又は、例えばプレス及びコンパクターなどを用いて、圧縮成型することが可能である。そのような粉砕に用いられる装置は、当業者には知られている。
【0049】
好ましい実施形態では、本発明の二ギ酸ナトリウムは、結晶質粉末として、又は、顆粒として、又は、圧縮成型物として、固体形態で存在している。用途本位の要件に応じて、上記粉末、顆粒又は圧縮成型物は、1μm〜10000μmの範囲、特に、10μm〜5000μmの範囲、とりわけ、100μm〜2500μmの範囲の平均粒径を有する。
【0050】
固体形態にある本発明の二ギ酸ナトリウム及びそれを含んでいる調製物は、特に、飼料添加物の形態での動物飼料への添加剤として、及び、とりわけ、動物飼料のためのプレミックスへの添加剤として、動物用の飼料(動物飼料)において使用するのに適している。プレミックスは、一般に、ミネラル類、ビタミン類、アミノ酸類及び微量元素を含み、適切な場合には、さらに、酵素類も含んでいる混合物である。本発明の二ギ酸ナトリウムを含んでいる動物飼料及び飼料添加物は、単胃動物、例えば、豚、特に、子豚、繁殖用雌豚及び肥育豚、並びに、家禽、特に、ブロイラー、産卵鶏、七面鳥、アヒル、ガチョウ、ウズラ、キジ及びダチョウなどに特に適している。
【0051】
飼料又は飼料添加物の中に存在している残りの物質又は添加剤に応じて、該飼料又は飼料添加物中の本発明によって調製された二ギ酸ナトリウムの含有量は、大きく変動し得る。飼料添加物の場合、該含有量は、さらにまた、製剤の種類にも依存し、例えば、乾燥剤などの酸の添加、可能なコーティング及び残留水分量などに依存する。通常、飼料添加物中の本発明の二ギ酸ナトリウムの含有量は、飼料添加物の総重量に基づいて、例えば、0.1〜99.5重量%の範囲内、特に、0.5〜75重量%の範囲内、とりわけ、1〜50重量%の範囲内にある。本発明の二ギ酸ナトリウムは、プレミックス中での使用にも適しており、この場合、通常の量で、使用(例えば、混合)することができる。
【0052】
特に、家禽用の動物飼料及び飼料添加物中で使用する場合、少量のカリウムイオンを含有しているのが有利である。それは、この場合、カリウムが利尿作用を引き起こすからである。本発明の二ギ酸ナトリウムを上記目的に使用することにより、カリウムイオンのフラクションが必ずしも増大されることなく、酸性のナトリウム源及びギ酸アニオン源が提供される。本発明のさらに別の主題は、従って、固体形態にある本発明の二ギ酸ナトリウムを含み、本質的にカリウムイオンを含んでいない固体の飼料添加物である。この場合、本質的にカリウムイオンを含んでいないということは、カリウムイオンの含有量が、1000ppm以下、特に、500ppm以下(ここで、これらは、いずれの場合も、飼料添加物の重量に基づいている)であることを意味する。
【0053】
動物飼料は、各動物種にとって必要とされるものに相当する栄養素が最適にカバーされるように構成される。一般に、植物飼料成分、例えば、コーンミール、小麦全粒粉若しくは大麦全粒粉、全粒大豆粉、大豆抽油かす粉、アマニ抽油かす粉、菜種抽油かす粉、グリーンミール又はエンドウ全粒粉などは、粗タンパク質源として選択される。飼料の適切なエネルギー含量を保証するために、大豆油又は別の動物性脂肪若しくは植物性脂肪を添加する。上記植物タンパク質源は、何種類かの必須アミノ酸しか充分な量で含んでいないので、飼料には、しばしば、アミノ酸を補強する。それらは、主として、リシン及びメチオニンである。家畜へのミネラル及びビタミンの供給を保証するために、さらに、ミネラル類及びビタミン類を添加する。添加するミネラル及びビタミンの種類及び量は、動物の種類に依存し、また、当業者には知られている(例えば、以下を参照されたい:Jeroch et al., Emahrung landwirtschaftlicher Nutztiere [Nutrition of agricultural farm animals], Ulmer. UTB)。必要とされる栄養素及びエネルギーをカバーするために、全ての栄養素を互いの比率が要件を満たすように含んでいる完全な飼料を用いることができる。それは、動物の唯一の飼料とすることができる。あるいは、穀類からなる粒餌に補足飼料を添加してもよい。そのような補足飼料には、上記飼料を補足するための、タンパク質が豊富な配合飼料、ミネラルが豊富な配合飼料及びビタミンが豊富な配合飼料が含まれる。
【0054】
本発明の二ギ酸ナトリウムは、酸性化剤と称されるものとして特に適している。「酸性化剤」は、pHを低下させる物質を意味するために使用される。当該語句には、基剤(例えば、動物飼料)のpHを低下させる物質のみではなく、動物の胃腸管内のpHを低下させる物質も包含される。
【0055】
本発明の二ギ酸ナトリウムは、特に、生産性促進効果及び/又は成長促進効果を有する組成物として適している。好ましい実施形態では、当該固体二ギ酸ナトリウムを、単胃動物用の、特に、豚類及び/又は家禽用の、そのような生産性促進用組成物及び/又は成長促進用組成物として使用する。
【0056】
本発明の二ギ酸ナトリウムは、さらに、保存料として、特に、緑色飼料及び/又は動物飼料のための保存料として適している。
【0057】
本発明の二ギ酸ナトリウムは、さらに、医薬製剤用の補助剤として、例えば、崩壊剤として適している。
【0058】
本発明の二ギ酸ナトリウムは、有利には、サイレージの製造において使用することができる。それは、乳酸発酵を促進する、又は、二次発酵を防止し、有害な酵母菌の発生を阻害する。この場合、それは、酸性化剤としての使用に関して上記で記載した方法で、pHを調節するようにも作用する。従って、本発明は、さらに、サイレージ添加剤(サイレージ補助物質)としての本発明の二ギ酸ナトリウムの使用にも関する。
【0059】
本発明は、さらに、肥料としての本発明の二ギ酸ナトリウムの使用にも関する。
【0060】
図面の説明
図1は、本発明に従って得られた二ギ酸ナトリウム結晶の光学顕微鏡写真を示している。寸歩の比率を容易に認識することが可能であり、さらに、本質的に概ね六方晶系の基礎形状も容易に認識することが可能である。
【0061】
図2は、比較のために、結晶化した四ギ酸ナトリウムの光学顕微鏡写真を示している。二ギ酸ナトリウム結晶との著しい相違を見ることができる。特に、該四ギ酸ナトリウムは、二ギ酸ナトリウム中には対応するものがない顕著な針状の結晶成長によって区別される。直径に対する長さの比が比較的大きいという理由により、該四ギ酸ナトリウム針状物は、数百μmから2000μmを超える二ギ酸ナトリウム結晶の大きさを、縦方向においてのみ達成しているのに対して、50μmよりも著しく小さな直径を有する該針状物は、二ギ酸ナトリウム結晶の大きさには、殆ど達しない。
【実施例】
【0062】
以下の実施例は、本発明を例証するものであるが、決して限定するものであると理解されるべきではない。
【0063】
実施例
比較実施例(DE 424017の実施例2と同様である)
476gの80重量%濃度ギ酸水溶液を最初に入れた。撹拌しながら524gの固体ギ酸ナトリウムを添加した。完全に溶解させるために、その混合物を120℃の温度まで加熱した。次いで、その溶液をゆっくりと冷却した。約112℃から結晶化が始まった。約0.7K/分の速度で約25℃までさらに冷却した。その懸濁液を、次いで、適度に撹拌しながら24時間放置した。その後、形成された結晶を母液から分離した。湿性生成物の収量は、約370gであった。そのギ酸含有量は、湿性生成物の総重量に基づいて、約21.8重量%であった。
【0064】
実施例1及び実施例2
実施例1及び実施例2は、加熱装置及び冷却装置が装備されており、さらに、排出口も付いている1リットル容の撹拌容器内で実施した。
【0065】
実施例1
650gの94重量%濃度ギ酸水溶液を最初に入れ、撹拌しながら55℃まで加熱した。実験の期間全体を通して撹拌を継続した。そのギ酸溶液に、350gの固体ギ酸ナトリウム(純度>97%)を溶解させて、透明な溶液を得た。次いで、その溶液をゆっくりと冷却した。約4時間後、約12℃の温度に達した。その時点で、突然の析出が観察された。その懸濁液を、僅かな濁りだけがまだ観察されているようになるまで、約35℃に加熱した。次いで、その懸濁液を約6時間かけて20℃まで冷却し、当該撹拌容器から排出させた。真空濾過器を用いて、結晶から母液を分離させた。湿性二ギ酸ナトリウムの収量は、約125gであった。真空乾燥キャビネット内で35℃の温度で乾燥させた後、該生成物中の残留水分含有量は、総乾燥重量の約122gに基づいて、約0.1重量%であると測定された。該乾燥生成物中のギ酸含有量は、総乾燥重量に基づいて、40.3重量%であった。
【0066】
実施例2
650gの80重量%濃度ギ酸水溶液を最初に入れ、撹拌しながら55℃まで加熱した。撹拌を継続しながら、そのギ酸溶液に、430gの固体ギ酸ナトリウム(純度>97%)を溶解させて、透明な溶液を得た。次いで、その溶液をゆっくりと冷却した。約5時間後、約24℃の温度に達した。その時点で、突然の析出が観察された。その懸濁液を、僅かな濁りだけがまだ観察されているようになるまで、撹拌しながら約35℃に加熱した。次いで、その懸濁液を撹拌しながら約6時間かけて15℃まで冷却し、当該撹拌容器から排出させた。真空濾過器を用いて、結晶から母液を分離させた。湿性二ギ酸ナトリウムの収量は、約280gであった。真空乾燥キャビネット内で35℃の温度で乾燥させた後、該生成物中の残留水分含有量は、総乾燥重量の270gに基づいて、約0.15重量%であると測定された。該乾燥生成物中のギ酸含有量は、総乾燥重量に基づいて、40.1重量%であった。
【0067】
実施例3〜実施例16(真空乾燥を含む)
実施例3
5リットルの有効容積を有する真空パドル乾燥機(d=134mm, l=413mm, 加熱面積=0.156m2)の中で、実施例1又は実施例2と同様の方法で得られた2kgの湿性結晶からなる生成物を乾燥させた。乾燥開始前の残留水分は、0.6重量%の水であり、ギ酸含有量は、約41重量%であった。該乾燥機内において、壁温度を50℃に設定した。絶対圧力は30ミリバール(3000Pa)とし、ストリッピングガス流は5L(S.T.P.)/時間の窒素とし、回転速度は10rpmとした。1時間よりも短い期間の間に、残留水分含有量は、0.1重量%未満に達した。ギ酸含有量は、約40.2重量%であった。得られた乾燥結晶は、非常に自由流動性であった。
【0068】
実施例4〜実施例16
実施例4〜実施例16は、実施例3と同様の方法で実施した。それぞれ、10rpmの回転速度を使用し、実施例14及び実施例16では、20rpmの回転速度を使用した。窒素ストリッピングガス流の量は、実施例15が10L/時間であった以外は、いずれの場合も、5L/時間であった。例外として設定したさらなるパラメータ値は、それぞれの場合について、下記表2に示してある。表2では、乾燥において達成された結果についても要約してある。
【表2】

【0069】
実施例17〜実施例21(対流乾燥を含む)
実施例17
カップパドルを装備し、ガスが通気する有効容積6リットルの固体混合機(d=210mm, l=180mm)の中で、実施例1又は実施例2と同様の方法で得られた2kgの湿性結晶からなる生成物を乾燥させた。乾燥開始前の残留水分は、0.6重量%の水であり、ギ酸含有量は、約41重量%であった。該乾燥機内において、ガス注入口の温度50℃で空気又は窒素の5m3(S.T.P.)/時間のガス流及び80rpmの混合機回転速度を設定した。30分間よりも短い期間の間に、残留水分含有量は、0.1重量%未満に達した。ギ酸含有量は、約40重量%であった。
【0070】
実施例18〜実施例21
実施例18〜実施例21は、実施例17と同様の方法で実施した。いずれの場合も、80rpmの回転速度を使用した。窒素(実施例18)又は空気(実施例19〜実施例21)のガス流の速度は、いずれの場合も、5m3(S.T.P.)/時間であり、また、乾燥は、いずれの場合も、大気圧下で実施した。例外として設定したさらなるパラメータ値は、それぞれの場合について、下記表3に示してある。表3では、乾燥において達成された結果についても要約してある。
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に従って得られた二ギ酸ナトリウム結晶の光学顕微鏡写真を示す図である。
【図2】結晶化した四ギ酸ナトリウムの光学顕微鏡写真を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二ギ酸ナトリウムの総重量に基づいて少なくとも35重量%のギ酸含有量を有する固体形態の二ギ酸ナトリウム。
【請求項2】
二ギ酸ナトリウムの総重量に基づいて38〜41重量%の範囲のギ酸含有量を有する、請求項1に記載の二ギ酸ナトリウム。
【請求項3】
二ギ酸ナトリウムの総重量に基づいた含水量が0.5重量%以下である、請求項1又は2に記載の二ギ酸ナトリウム。
【請求項4】
X線粉末回折図において、以下の格子間隔d:8.99;7.40;6.69;5.12;4.37;3.83;3.40;3.10;2.98;2.94;2.90[Å](±0.04[Å])のうちの少なくとも6で回折反射を示す、請求項1〜3のいずれか1項に記載の二ギ酸ナトリウム。
【請求項5】
示差走査熱量測定法を用いて測定して65℃の温度に相転移点を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の二ギ酸ナトリウム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の二ギ酸ナトリウムを製造する方法であって、ギ酸ナトリウムとギ酸含有量が少なくとも74重量%である水性ギ酸又は濃ギ酸から、高温下で、HCOOHのNa[HCOO]に対するモル比が1.5:1より大きく且つギ酸の水に対するモル比が1.1:1以上である均質な混合物を製造すること、その混合物を結晶化させること、及び、生じた固相を母液から分離させることを含む前記方法。
【請求項7】
冷却することにより混合物を結晶化させる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
分離させる固相の含水量が、分離させる該固相の総重量に基づいて2〜0.2重量%の範囲となる程度まで母液を除去する、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
分離させる固相のギ酸含有量が、分離させる該固相の総重量に基づいて40.5〜43.5重量%の範囲となる程度まで母液を除去する、請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
母液から分離させる固相を生成物温度60℃以下で乾燥させる、請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
乾燥を、壁面温度100℃以下の接触乾燥によって行う、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
乾燥の間、蒸気をストリッピングガス流によって除去する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
乾燥を、キャリヤーガス注入口温度100℃以下の対流乾燥によって行う、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
乾燥を、105Pa以下の圧力下で行う、請求項10〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
乾燥の間、機械的に、及び/又は、適切な場合には、キャリヤーガス流を用いて、固相を撹拌する、請求項10〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
乾燥を、得られた固体二ギ酸ナトリウムの含水量が二ギ酸ナトリウムの総重量に基づいて0.15重量%以下となるまでの期間にわたって実施する、請求項10〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
乾燥を、120分間以下の期間実施する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜5のいずれか1項で定義されている二ギ酸ナトリウムの、動物飼料のための、特に、単胃動物用飼料のための、特に、豚及び/又は家禽用の動物飼料のための、飼料用添加物としての使用。
【請求項19】
請求項1〜5のいずれか1項で定義されている二ギ酸ナトリウムの、酸性化剤としての使用。
【請求項20】
請求項1〜5のいずれか1項で定義されている化合物を含んでいる固体飼料用添加物であって、本質的にカリウムイオンを含んでいない前記添加物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−535881(P2008−535881A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505816(P2008−505816)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【国際出願番号】PCT/EP2006/003398
【国際公開番号】WO2006/108652
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】