説明

二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物の製造方法

【課題】珪酸アルカリ水溶液を原料として使用する場合において、触媒活性の高い二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物を製造する方法を提供する。
【解決手段】珪酸アルカリ水溶液、水溶性高分子、および酸を含んでなるゾル液を相分離が過渡の状態でゲル化させた後、得られた湿潤シリカゲルに、アルミニウム塩を溶解させた溶液を接触させ、次いで、該溶液を接触させたゲル体を焼成することを特徴とする二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物の新規な製造方法に関する。詳しくは、原料に珪酸アルカリ水溶液(例えば、水ガラス等)を使用する安価な二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物の製造方法であって、かつ、珪酸アルカリ水溶液を原料とした場合でも、高い触媒活性を有する二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明において、二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物とは、マイクロメートル領域の平均細孔径のマクロ細孔と、ナノメートル領域の平均細孔径のナノ細孔を有するシリカ―アルミナ複合酸化物のことを指す。また、該二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物において、該マクロ細孔は、連通しているものである。
【0003】
従来知られている二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物の製造方法は、非特許文献1、非特許文献2において示されるように、原料としてテトラエトキシシランの如きケイ素アルコキシドを用いて、以下の方法により行われる。
1)ケイ素アルコキシド、鉱酸、及び水溶性高分子を混合させ、さらに、アルミニウム塩を加え、混合液を得る。
2)該混合液を温度、pH等を調整しながら、ゾルゲル反応によってゲル化させ、アルミニウムイオンを含んだ塊状の湿潤ゲルを得る。この操作によって、湿潤ゲル中にマクロ細孔が形成される。
3)次いで、必要に応じて、上記湿潤ゲルを、所定濃度のアルカリ溶液中に浸漬させ、放置する。この操作によって、湿潤ゲルが有するナノ細孔を、所望の平均細孔径に制御することが可能となる。また、この操作によって、アルミニウムイオンを湿潤ゲル中により分散させることが可能となる。
4)アルカリ溶液に浸漬させた湿潤ゲルを加熱処理により脱水、乾燥する。
5)乾燥後、焼成を行い、二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物を得る。
【0004】
上記方法により得られる二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物は、マクロ細孔、ナノ細孔を有する機能的な触媒となり、高い触媒活性を示す非常に有益なものである。
【0005】
しかしながら、上記原料として使用されるケイ素アルコキシドは、非常に高価格であるため、上記方法は、生産コストがかかる問題があり、改善の余地があった。さらに、工業的な生産を考慮した場合、ケイ素アルコキシドを原料とすると、製造工程において、大量のアルコールが発生するため、これを除去する設備が必要となる。
【0006】
したがって、触媒などの工業用途においては、安価な二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物が望まれており、原料となる珪素源として、安価な珪酸アルカリ水溶液を使用することが望まれている。
【0007】
二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物の製造方法において、原料となる珪素源を珪酸アルカリ水溶液とし、水溶性高分子、酸を含むゾル液に、アルミニウム塩を加えた混合液を使用したところ、高い触媒活性を有するシリカ−アルミナの複合酸化物が得られなかった。この理由は、以下の通りであると推定している。
【0008】
珪酸アルカリ水溶液、水溶性高分子、および酸を含むゾル液に、アルミニウム塩を加えた混合液をゲル化させ、湿潤ゲルとした場合、該湿潤ゲル中には必ずアルカリ金属(例えば、ナトリウム)が含まれることになる。このアルカリ金属は、乾燥・焼成時にマクロ細孔、ナノ細孔を崩壊させたり、触媒活性を低下させる原因となるため、除去する必要がある。アルカリ金属の除去は、上記の通り、乾燥等の前に行う必要があるため、湿潤ゲルを水洗することが最も好ましい。
【0009】
しかしながら、該湿潤ゲルを水洗すると、湿潤ゲル中のアルミニウム塩も同時に洗い流されるものと考えられ、その結果、高い触媒活性を有する二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物を得ることができないものと推定される。
【0010】
【非特許文献1】Journal of Catalysis 200,197-202,2001
【非特許文献2】Chem. Chem. Phys. 4, 4830-4837, 2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、原料に珪酸アルカリ水溶液(例えば、水ガラス等)を使用する安価な二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物の製造方法であって、かつ、珪酸アルカリ水溶液を原料とした場合でも、高い触媒活性を有する二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記課題を解決するため、即ち、安価な珪酸アルカリ水溶液を原料としても、高い触媒活性を有する二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物を製造するため、鋭意研究を重ねてきた。その結果、原料に珪酸アルカリ水溶液を用いてゾルゲル反応を行い、得られた湿潤シリカゲルに、アルミニウム塩を溶解させた溶液を接触させ、更に、該溶液を接触させたゲル体を焼成することにより、シリカ骨格中にアルミニウムが組み込まれ、ブレンステッド酸点が発現し、高い触媒活性を有する二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は、珪酸アルカリ水溶液、水溶性高分子、および酸を含んでなるゾル液を、相分離が過渡の状態でゲル化させた後、得られた湿潤シリカゲルに、アルミニウム塩を溶解させた溶液を接触させ、次いで、該溶液を接触させたゲル体を焼成することを特徴とする二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、安価な珪酸アルカリ水溶液を原料として、高い触媒活性を有する二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物を製造することができる。更に、アルコールのような副生物が生成することがないため、工業的にも有利となる。
【0015】
また、本発明により得られる二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物は、ケイ素アルコキシドを原料とした二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物と同等の活性を発揮することができる。そのため、本発明により得られる二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物は、固体酸触媒として、異性化、アルキル化、重合反応などに好適に利用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明は、珪酸アルカリ水溶液を原料として含むゾル液を、相分離が過渡の状態でゲル化させた後、得られた湿潤シリカゲルに、アルミニウム塩を溶解させた溶液を接触させ、次いで、該溶液を接触させたゲル体を焼成することにより、二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物を製造するものである。
【0018】
尚、下記に詳述するが、本発明において、上記湿潤シリカゲルは、シリカを骨格とするものであり、水を含むものを指す。また、上記ゲル体は、該湿潤シリカゲルに、アルミニウム塩を溶解させた溶液を接触させたものを指す。更に、二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物は、連通するマクロ細孔と、ナノ細孔を有し、下記の実施例に記載した方法で確認できるブレンステッド酸点を有する(高い触媒活性を有する)ものを指す。
【0019】
本発明において、上記湿潤シリカゲルは、例えば、特開2005−162504(二元細孔シリカ粒子)、特開2005−281012(二元細孔シリカの製造方法)等の方法に準じて製造することができる。具体的には、該湿潤シリカゲルは、珪素源として珪酸アルカリ水溶液、水溶性高分子、および酸を含むゾル液をゲル化させて得ることができる。
【0020】
まず、これら成分、ゾル液の調整方法、およびゲル化方法について説明する。
【0021】
<珪素源について>
本発明で用いる珪素源としては、上記の通り、安価で入手可能な珪酸アルカリ水溶液を使用する。本発明は、この珪酸アルカリ水溶液を原料とするものを対象とする。
【0022】
本発明において、珪酸アルカリ水溶液の種類や濃度は、特に限定されないが、JIS規格の珪酸アルカリ水溶液である珪酸ナトリウムJIS3号またはそれと同等のものを使用することが、製造上、取り扱いやすいため好ましい。具体的には、SiO/NaOモル比が2.0〜4.0、珪酸濃度がSiO換算で20〜40g/100cmであるものが好適である。
【0023】
<水溶性高分子について>
本発明において、上記水溶性高分子は、珪素源を含有する溶液中において均一に溶解できるものが好適である。具体的には、高分子金属塩であるポリスチレンスルホン酸のナトリウム塩またはカリウム塩、高分子酸であって解離してポリアニオンとなるポリアクリル酸、高分子塩基であってポリカチオンを生ずるポリアクリルアミンまたはポリエチレンイミン、中性高分子であって主鎖にエーテル結合を持つポリエチレンオキシド、側鎖にヒドロキシル基を有するポリビニルアルコール、もしくはカルボニル基を有するポリビニルピロリドン、更には、界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウムも使用可能である。これらのうち、ポリアクリル酸およびポリビニルアルコール、ドデシル硫酸ナトリウムが、取扱いが容易であり好ましい。ポリアクリル酸は分子量15,000〜300,000、好ましくは20,000〜150,000のものが好適である。
【0024】
<酸について>
本発明において、上記酸は、加水分解反応の触媒として働きゲル化を促進するために添加されるものである。これら酸を具体的に例示すれば、硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸または有機酸が挙げられる。中でも、硫酸、硝酸等の鉱酸を使用することが好ましい。
【0025】
<ゾル液の調製方法について>
本発明においては、先ず、上記珪酸アルカリ水溶液、水溶性高分子、および酸を含むゾル液を調整する。該ゾル液は、酸アルカリ水溶液、水溶性高分子、および酸を混合することにより得ることができる。尚、このゾル液の分散媒は水である。
【0026】
本発明において、ゾル液を調整する方法は、攪拌槽を用いたバッチ方法、或いは連続方法のいずれの方法も採用することができる。具体的なゾル液を調製する方法としては、酸、水溶性高分子を混合した後に、珪酸アルカリ水溶液を添加してゾル液を調整する方法、又は、酸に珪酸アルカリ水溶液を添加して混合した後に、水溶性高分子を添加してゾル液を調整する方法が挙げられる。このゾル液を調整する際、珪酸アルカリ水溶液、水溶性高分子、および酸を混合するための機器は、特に制限はなく、公知の攪拌機や混合機が使用できる。具体的には、バッチ方式の場合においては、プロペラ羽根、タービン羽根、パドル翼等を有する一般攪拌機、二軸遊星型攪拌機、ニーダー型攪拌機、ヘンシェル型攪拌機、円錐スクリュー型攪拌機、単軸リボン型攪拌機、連続方法の場合においては、スタティックミキサーに代表されるようなインライン型攪拌機などが挙げられる。
【0027】
本発明の上記ゾル液において、各成分の組成(濃度)は、連通するマクロ細孔を有する二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物を製造する上で非常に重要となる。ゾル液の各成分の濃度が、ゾル液を相分離が過渡の状態でゲル化させられるかどうか、つまり、マクロ細孔を形成できるかどうかの一要因となる。
【0028】
本発明において、ゾル液中の珪酸アルカリ、水溶性高分子、および酸の各濃度は、実際に使用する珪酸アルカリ水溶液、水溶性高分子、および酸の種類、その他の製造条件によって異なる為、予め実験により好ましい濃度範囲を確認しておくことが望ましい。具体的な例を示せば、珪酸アルカリ水溶液に3号珪酸ナトリウム水溶液、酸に硫酸、水溶性高分子にポリアクリル酸を用いた場合、好ましいゾル液の組成は、ゾル液中のSiO含有率が5〜15質量%、またポリアクリル酸の濃度が2〜5質量%、更に硫酸の濃度が5〜9質量%であることが好ましい。
【0029】
また、上記ゾル液を調整する際の温度、各原料を混合する際の温度は0〜80℃、好ましくは20〜70℃の範囲に調整することが好ましい。
【0030】
本発明においては、均質なゾル液をゲル化させ湿潤シリカゲルとするが、そうするためには、上記ゾル液のpHは、酸性領域としなければならない。該ゾル液のpHが酸性領域にない場合は、シリカ粒子の析出が生じ、均質なゾル液を調製することが困難となる。従って、一旦均質なゾル液を調製した後、ゾル液中の相分離が過渡の状態でゲル化させ、マクロ細孔及びシリカ骨格が三次元網目状に相互に絡み合った構造を有する(連通するマクロ細孔を有する)ものとするためには、ゾル液を酸性にすることが重要となる。具体的には、ゾル液のpHが4以下であることが好ましく、更にpHが2以下であることが好ましい。尚、このゾル液のpHを調整するには、上記酸と同じものを使用することができる。
【0031】
次に、上記ゾル液をゲル化させ、湿潤シリカゲルを製造する方法について説明する。
【0032】
<ゲル化方法(湿潤シリカゲルの製造方法)について>
本発明においては、上記方法により得られるゾル液を、相分離が過渡の状態でゲル化させて湿潤シリカゲルとする。この湿潤シリカゲルは、ゾル液中の相分離、即ち、重合が進行しているシリカ分を含む相と、水溶性高分子を含む溶媒相との相分離が過渡の状態において、該ゾル液をゲル化させ、相分離が完全に起こる前の状態でその構造を固定させて得られるものである。そのため、該湿潤シリカゲルは、シリカを骨格とするゲルであり、本発明においては、脱水、乾燥処理を施していない、水を含むものである。本発明の湿潤シリカゲルは、ゾル液の組成等に影響されるが、水を50〜90質量%含んでいる。この湿潤シリカゲルに含まれる水分量は、該湿潤シリカゲルを少なくとも、600℃以上の温度で2時間処理したものと該湿潤シリカゲルとの重量比から求めることができる。尚、十分なブレンステッド酸点が存在し、高い触媒活性を有する二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物とするためには、上記範囲の水を含む湿潤シリカゲルを処理することが重要となる。
【0033】
本発明において、上記湿潤シリカゲルを得るには、例えば、上記ゾル液を密閉容器などに入れ、温度が0〜80℃、好ましくは20〜70℃の範囲で、10分〜1週間、好ましくは1時間〜48時間滞留させればよい。また、上記ゾル液に対して、比重、粘度、液温等を最適化した非水溶液中に該ゾル液を滴下し、該ゾル液をゲル化させる油中成形造粒法により、湿潤シリカゲルを得ることもできる。油中成形造粒法を採用することにより、ビーズ状の湿潤シリカゲルを得ることができる。
【0034】
本発明においては、上記方法により得られた湿潤シリカゲルに、下記に詳述するアルミニウム塩を溶解させた溶液を接触させる。本発明では、該湿潤シリカゲルに、直接、アルミニウム塩を溶解させた溶液を接触させることもできるが、一旦、上記湿潤シリカゲルを水洗し、水洗した湿潤シリカゲルに、アルミニウム塩を溶解させた溶液を接触させることもできる。上記湿潤シリカゲルを水洗することにより、二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物を製造する際に排出される廃液量を低減でき、更に、より安定した製造を行うことができる。しかも、湿潤ゲルを水洗することにより、得られる二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物の触媒活性を高くすることもできる。
【0035】
次に、この湿潤シリカゲルの水洗方法について説明する。
【0036】
<湿潤シリカゲルの水洗方法について>
本発明においては、上記湿潤シリカゲルを水洗することが好ましい。上記の通り、珪酸アルカリ水溶液を使用した場合には、得られる湿潤シリカゲルには、アルカリ金属が含まれる。この湿潤シリカゲルに、アルミニウム塩を溶解させた溶液を直接接触させると、不純物であるアルカリ金属(例えば、ナトリム)を多く含んだゲル体となる場合がある。それを防ぐためには、アルミニウム塩を溶解させた溶液を多量に使用しなければならず、廃液量が増大する傾向にある。そのため、湿潤シリカゲルを水洗し、水洗した湿潤シリカゲルに、アルミニウム塩を溶解させた溶液を接触させることにより、廃液量を低減することができる。
【0037】
また、水洗することにより、アルカリ金属を低減できるため、焼成時にマクロ細孔の崩壊、或いはナノ細孔の崩壊が生じるおそれがなく、安定して二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物を製造することができる。更に、得られる二元細孔シリカ―アルミナ複合酸化物は、アルカリ金属が低減されたものとなるため、高い触媒活性を発揮することができる。
【0038】
本発明において、上記湿潤シリカゲルを水洗するに際し、使用する水(洗浄水)は、湿潤シリカゲルに含まれるアルカリ金属、水溶性高分子を溶解できるものであれば、少量の水溶性有機溶媒、例えば、アルコール等が含まれるものであってもよい。ただし、廃液量をより低減するためには、イオン交換水など、極力、イオン(例えば、ナトリウムイオン)等を含まない、純度の高い水を使用することが好ましい。
【0039】
本発明において、湿潤シリカゲルを水洗する方法は、水中に湿潤シリカゲルを浸漬させる方法、湿潤シリカゲルに洗浄水を通液させる方法等を挙げることができる。浸漬させる方法を例示すれば、湿潤シリカゲルを水に漬け、厚さが1cm程度ある二元細孔シリカ湿潤ゲルでは室温で12時間以上放置する方法を挙げることができる。当然、浸漬させる方法において、湿潤シリカゲルの厚さが1cm未満であれば短時間で洗浄することができる。
【0040】
また、洗浄水を通液させる方法を例示すれば、水溶液に分散させた湿潤シリカゲルを、ベルトフィルター、加圧濾過機、トレイフィルター、フィルタープレス、リーフフィルターに例示されるような濾過装置、或いは充填カラム等の通液によって湿潤シリカゲルが系外に流出しないような洗浄装置内に導入した後、減圧下、或いは加圧下において脱液操作を行う方法を挙げることができる。
【0041】
本発明において、湿潤シリカゲルの洗浄度合は、浸漬、または通液させた際に排出される洗浄水の電気伝導度を測定することにより、確認できる。つまり、該洗浄水の電気伝導度が、所望の値となることにより、湿潤シリカゲルの洗浄が完了したと判断できる。このように洗浄水の電気伝導度を測定することにより、最適な洗浄水の量を把握できるため、廃液量を低減することができる。
【0042】
本発明において、得られる二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物が、安定して製造でき、優れた触媒活性を発揮するためには、イオン交換水を洗浄水とした場合、洗浄水の電気伝導度が1mS/cm以下となるまで洗浄することが好ましい。このように水洗することにより、焼成後の二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物に含まれるナトリウム濃度が1000ppm以下とすることが可能となる。
【0043】
尚、本発明において、上記水洗した湿潤シリカゲルは、当然、水を50〜90質量%含んでいる。
【0044】
次に、本発明においては、上記湿潤シリカゲルおよび/または上記水洗した湿潤シリカゲルに、アルミニウム塩を溶解させた溶液を接触させ、ゲル体を得る。このゲル体を得る方法を説明する。
【0045】
<湿潤シリカゲルにアルミニウム塩の溶液を接触させる方法>
本発明においては、上記湿潤シリカゲルおよび/または上記水洗した湿潤シリカゲルに、アルミニウム塩を溶解させた溶液を接触させ、ゲル体を得る。この水を50〜90質量%含む上記湿潤シリカゲルに、アルミニウム塩を溶解させた溶液を接触させることが重要である。理由は明らかではないが、前記範囲の水を含むことが、何らかアルミニウム塩を接触させる際に影響するものと考えられ、このような湿潤シリカゲルを使用することにより、高い触媒活性を有する二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物を得ることができる。水の量が50質量%未満である乾燥、焼成シリカゲルに、アルミニウム塩を溶解させた溶液を接触させても、十分なブレンステッド酸点を発現することができず、高い触媒活性を有する二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物を得ることができない。
【0046】
本発明において、上記アルミニウム塩は、例えば、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、およびこれらの水和物を挙げることができ、更に、これら2種類以上の混合物であってもよい。中でも、アルミニウム塩は、溶解度が高く、高濃度の溶液を作製しやすいため、硝酸アルミニウム、および硝酸アルミニウム水和物を使用することが好ましい。
【0047】
本発明において、上記アルミニウム塩を溶解させた溶液とは、アルミニウム塩を均一に溶解させた溶液である(以下、アルミニウム塩溶液とする場合もある。)。具体的には、上記アルミニウム塩を水に溶解させた溶液を例示することができる。操作性を考慮すると、アルミニウム塩を水に溶解させた溶液を使用する場合には、アルミニウム塩の濃度が5〜50質量%の範囲であるものを使用することが好ましい。尚、この溶液には、アルミニウム塩が溶解する範囲で、水以外の他の溶媒、例えば、アルコール等を少量含ませることもできる。
【0048】
本発明において、湿潤シリカゲルにアルミニウム塩溶液を接触させるとは、湿潤シリカゲルにアルミニウム塩溶液を含浸させたり、湿潤シリカゲル中の溶媒をアルミニウム塩溶液で置換することを含むものである。湿潤シリカゲルにアルミニウム塩溶液を接触させる方法を具体的に示せば、湿潤シリカゲルをアルミニウム塩溶液中に浸漬させる方法、湿潤シリカゲルにアルミニウム塩溶液を噴霧する方法、湿潤シリカゲルにアルミニウム塩溶液を通液させる方法等を挙げることができる。
【0049】
また、湿潤シリカゲルにアルミニウム塩溶液を接触させる際の条件は、対象となる湿潤シリカゲルの不純物量、形状、アルミニウム塩溶液の濃度、量、含有させるアルミニウムの量等に応じて適宜決定してやればよい。湿潤シリカゲルをアルミニウム塩溶液中に浸漬させる場合には、上記濃度範囲のアルミニウム塩溶液と湿潤シリカゲルを密閉容器などに入れ、温度0〜80℃、好ましくは30〜50℃で10分〜1週間、さらに好ましくは1〜3日間、放置してやればよい。尚、水洗した湿潤シリカゲルを使用した場合は、水洗していない湿潤シリカゲルよりも、接触時間を短くでき、接触させる温度を低くすることができる。
【0050】
本発明の方法により得られる二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物のアルミニウムの含有量は、湿潤シリカゲルにアルミニウム塩溶液を接触させる条件により決定される。そのため、得られる二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物が優れた触媒活性を示すためには、該複合酸化物に含まれるアルミニウム含有量が0.5〜20質量%となるような条件で、湿潤シリカゲルにアルミニウム塩溶液を接触させることが好ましい。かかる条件は、上記の通り、湿潤シリカゲルの形状、不純物量、アルミニウム塩溶液の濃度、量等に影響されるため、予め実験により最適な条件を確認しておくことが好ましい。
【0051】
上記に示した条件により、湿潤シリカゲルにアルミニウム塩溶液を接触させ、ゲル体を得る。次に、本発明においては、上記ゲル体を焼成する。このゲル体を焼成することにより、二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物とすることができる。
【0052】
本発明において、上記ゲル体は、条件によってはそのまま焼成することができる。しかし、ゲル体の形状、組成、焼成条件によっては、ナノ細孔、マクロ細孔を破壊するおそれがあるため、焼成温度よりも低い温度でゲル体を乾燥させることが好ましい。該ゲル体は、製造条件にもよるが、通常、50〜90質量%の水を含んでおり、急激に高い温度で処理すると、細孔に含まれる水分が蒸発する際、ナノ細孔、マクロ細孔を破砕するおそれがある。そのため、安定して二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物を製造するためには、焼成前に、比較的低温、具体的には、200℃以下の温度で一旦、ゲル体を乾燥させることが好ましい。次に、ゲル体の乾燥について説明する。
【0053】
<ゲル体の乾燥について>
本発明において、ゲル体を乾燥させる方法は、特に制限されるものではなく、バッチ方法、連続方法のいずれの方法も採用することができる。乾燥は、ゲル体の大きさ、水分量、温度等に応じて、適宜決定することができるが、通常30〜200℃、好ましくは50〜100℃の温度範囲で3日、好ましくは1日以内の条件で実施することが好ましい。
【0054】
また、乾燥に使用する装置は、公知の装置を使用することができ、具体的には、送風乾燥機、真空乾燥機、気流乾燥装置、噴霧乾燥装置、回転乾燥装置、攪拌乾燥装置、流動層乾燥装置、バンド通気乾燥装置、通気回転乾燥装置、円筒乾燥装置、遠赤外線乾燥装置、凍結乾燥装置等が挙げられる。尚、これらの乾燥装置において、チョッパー等の解砕機、乾燥装置本体を振動させるための振動装置などを付与することが好ましい。これらを付与することによって、乾燥する二元細孔シリカ―アルミナ湿潤ゲルの表面積向上、或いは二元細孔シリカ―アルミナ湿潤ゲルの流動化が促進されるため、乾燥効率を向上させることが可能となる。
【0055】
本発明においては、上記乾燥条件、乾燥装置等を用いて、焼成前のゲル体中の水分量を好ましくは25質量%以下、更に好ましくは15質量%以下とする。乾燥してゲル体に含まれる水分量を前記範囲にすることにより、焼成時にマクロ細孔、ナノ細孔が破壊される可能性が低くなり、安定して二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物を製造することができる。乾燥時のゲル体に含まれる水分量の下限は、少ない方がよいが、工業的な製造を考慮すると、5質量%以上である。尚、乾燥後に含まれるゲル体の水分量は、下記に詳述する焼成後に得られる二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物と乾燥後のゲル体の重量比により求めることができる。
【0056】
次に、焼成について説明する。
【0057】
<ゲル体の焼成について>
本発明においては、上記湿潤シリカゲルにアルミニウム塩溶液を接触させたゲル体(一旦、乾燥させたゲル体も含む)を焼成することが重要である。該ゲル体を焼成することにより、二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物を得ることができる。本発明において、この焼成とは、アルミニウム塩を含むゲル体を、十分なブレンステッド酸点が存在し、高い触媒活性を有する二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物とするための操作である。該ゲル体を焼成することにより、高い触媒活性を有する二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物が得られる理由は、明らかではないが、ゲル体に含まれるアルミニウム塩が分解し、シリカ骨格中に取り込まれるためであると考えられる。そのため、かかる焼成の際の温度は、使用したアルミニウム塩が分解する温度以上であり、好ましくは、200℃を超える温度である。
【0058】
本発明において、焼成温度は、上記の通り、アルミニウム塩が分解する温度以上である。焼成温度の上限は、特に制限されるものではないが、1000℃以下の温度であることが好ましい。焼成温度が1000℃を超える場合、ナノ細孔が減少して比表面積が低下し、触媒として活性が低下する傾向にある。二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物をより安定して製造し、ナノ細孔の消失を防ぐためには、焼成は、500〜800℃で行うことが好ましい。また、上記温度範囲内(アルミニウム塩が分解する温度以上1000℃以下)であれば、焼成は、一定温度で行うこともできるし、温度を変化させて実施することもできる。尚、触媒用途に使用する際、その使用時の温度範囲が、アルミニウム塩が分解する温度以上1000℃以下の範囲であれば、この触媒としての使用も焼成と見なすことができる。
【0059】
また、焼成温度に到達させる際の昇温速度は、ゲル体を乾燥しているかどうかにも関係するが、10〜7000℃/時間、好ましくは100〜5000℃/時間で実施することが好ましい。更に、焼成時間は、温度、ゲル体の大きさ等に応じて、適宜決定してやればよいが、アルミニウム塩が分解する温度以上1000℃以下の温度範囲において、該温度範囲に到達してから1〜24時間の間で実施することができる。
【0060】
本発明において、ゲル体を焼成する方法は、バッチ方法、連続方法のいずれも使用可能である。また、焼成を実施する際の雰囲気は、大気下、窒素、希ガスなどの不活性ガス雰囲気下いずれの場合においても実施可能である。
【0061】
本発明において、上記焼成を行う装置は、公知の装置を使用することができ、例示すると、箱型炉、ロータリーキルン炉、プッシャー型トンネル炉、ローラハース型トンネル炉、ベルト式連続炉、回転レトルト炉、ころがり焼成炉、エレベーター炉、真空炉などが挙げられる。
【0062】
本発明においては、上記ゲル体を焼成することにより、マクロ細孔とナノ細孔を有る二元細孔構造であって、十分なブレンステッド酸点が存在し、高い触媒活性を有する二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物とすることができる。このブレンステッド酸点は、下記の実施例で示す通り、触媒活性を測定することにより確認でき、例えば、クメンの分解反応により確認できる。尚、本発明において、二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物とは、このブレンステッド酸点が発現し、高い触媒活性を有するものを指す。また、この二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物の触媒活性は、下記の実施例で示すクメンの分解反応(反応温度500℃)において、クメンの転化率が50%以上であることが好ましい。
【0063】
<その他の処理、および物性について>
本発明において、ゲル体を焼成して得られた二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物は、必要に応じて、粉砕、分級することにより、所望の粒子径、粒子径分布とすることができる。
【0064】
本発明において、二元細孔シリカ―アルミナ複合酸化物を粉砕するには、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。例えば、ボールミル、アトリッションミル、ジェットミル、ロールミル、カッターミル、らいかい機、乳鉢等を用いて粉砕できる。この操作によって、二元細孔シリカ―アルミナ複合酸化物粒子の平均粒子径は、5μm〜10mmに制御することができる。
【0065】
また、本発明においては、その他、必要に応じて、ナノ細孔を制御するために、上記水洗した湿潤シリカゲルをアルカリ溶液で処理することもできるし、乾燥、焼成後のものを水熱処理することもできる。
【0066】
上記の通り、本発明においては、湿潤シリカゲルに、アルミニウム塩溶液接触させ、次いで、焼成することにより、シリカ骨格中にアルミニウムを組み込むことが可能になるものと考えられ、高い触媒活性を有する二元細孔シリカ−アルミニウム複合酸化物を得ることができる。そして、得られた二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物は、十分なブレンステッド酸点が発現し、異性化、アルキル化、重合反応などの反応において、その酸点を最大限に有効に利用することが可能となる。
【0067】
本発明において、得られる二元細孔シリカ−アルミニウム複合酸化物は、用途に応じて、適宜物性を調整することができるが、比表面積300〜600m/g、マクロ細孔0.5〜10μm、ナノ細孔2〜10nm、アルミニウム含有量0.5〜20質量%、平均粒径50〜1000μmとすることが好ましい。このように調整することで、高い触媒と活性を示すことができ、その使用範囲を広げることができる。
【実施例】
【0068】
以下に、実施例を示して、本発明を更に具体的に示すが、本発明はこれら実施例によって何ら制限されるものではない。
【0069】
(洗浄水の電気伝導度の測定)
湿潤シリカゲルを水洗するに際し、通液による洗浄によって発生した洗浄水を、電気伝導度計(メトラトレド製、MPC−227)により電気伝導度を測定した。
【0070】
(ナノ細孔の細孔径、及び比表面積の測定)
液体窒素温度における窒素の吸着量を絶対平衡吸着圧力0.35MPa以下で、BET法により比表面積計算を行った。高速比表面積/細孔分布測定装置(マイクロメリティックス社製 ASAP2010)を用い、予め120℃で24時間乾燥し、秤量後200℃で2時間減圧処理した後の測定試料について、吸着等温線から比表面積と細孔径分布を算出した。また、以下の式によって、得られる平均細孔径をナノ細孔の細孔径とした。
平均細孔径=(4・V・1000)/A
A(m/g):BETによって算出された比表面積
V(cm/g):窒素吸着によって算出された細孔容積
【0071】
(マクロ細孔の細孔径の測定)
予め120℃、12時間乾燥させた測定用試料を、水銀圧入法(カンタクローム社製、POREMASTER−60)によりマクロ細孔の細孔径を測定した。測定で得られた細孔径分布において、マイクロメートル領域に現れる最大ピークの孔径をマクロ細孔の細孔径とした。
【0072】
(アルミニウム、ナトリウム濃度の測定)
塊状の二元細孔シリカアルミナ複合酸化物を粉砕した後、120℃で、1日間、乾燥させた。加圧成形を用いて、ペレット状とし、蛍光X線分析装置(株式会社リガク製、ZSX PrimusII)によりアルミニウム、ナトリウム量を測定した。
【0073】
(触媒活性評価方法)
触媒活性評価法として、パルス法によるクメンのクラッキング反応を用いた。クメンのクラッキング反応は、ブレンステッド酸点が活性点となり、クメンがプロピレンとベンゼンに分解される反応である。
【0074】
反応の測定条件を以下に示す。検出は、ガスクロマトグラフィー(ガスクロ工業製、KOR−1)で行った。
測定試料重量 :0.01g
キャリアガス :H
前処理 :500℃、2hr
測定温度範囲 :500℃
注入量/回 :1μl
クロマトグラムの結果から、クメン転化率(x)を算出した。その算出方法を、以下に示した。ベンゼンとクメンのピークを予め設定したピーク検出感度(SLOPE)で検出し、積分によって面積を計算し、それぞれをAb、Acとする。物質は、熱伝導度に差があるため、検出感度が異なるので、クロマトグラム上に現れる面積Ab、Acにそれぞれ補正係数をかけてモル基準の相対比にした。ベンゼン、クメンの補正係数fb、fcは、n−ヘプタンの相対補正係数を1.00とすると、それぞれ1.32、0.96である。モル数基準のベンゼン/クメン比をaとすると、下記式1で現すことができる。
【0075】
【数1】

【0076】
よって、クメン転化率(x)が、下記式2より算出される。
【0077】
【数2】

【0078】
実施例1
3号珪酸ナトリウム水溶液770.0g、平均分子量25,000のポリアクリル酸99.0g、95質量%硫酸227.3g、イオン交換水1903.7gを用いて、プロペラ型攪拌機を用いて50℃で攪拌し均一なゾル液を作製した。ゾル液のpHは、1.5であった。その後、密閉容器内にゾル液を投入し、50℃において静置しゲル化させた。得られた湿潤シリカゲルの成形体に含まれているナトリウムを除去するため、室温で水洗を行った。水洗には、イオン交換水を使用して、水洗によって発生した洗浄水の電気伝導度が1mS/cm以下になるまで水洗を行った。水洗した湿潤ゲルは、80質量%の水を含んでいた。この水洗した湿潤シリカゲル100gを、イオン交換水160gに硝酸アルミニウム2水和物27.97gを溶解させた水溶液中に浸漬させることにより、湿潤シリカゲルにアルミニウム塩溶液を接触させ、ゲル体を得た(接触させる際の温度は50℃、時間は1日とした。)。このゲル体を50℃に設定した送風乾燥機で1日間乾燥して、15質量%の水分量となるまで乾燥させた。乾燥後、100℃/時間で600℃まで昇温し、600℃で2時間保持する条件でゲル体を焼成した。得られた二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物に含まれるナトリウム濃度が1000ppm以下であった。
【0079】
この二元細孔シリカ―アルミナ複合酸化物の物性を評価した。図1に試料の断面SEM写真を、図2に試料の水銀圧入法による細孔分布測定結果を示す。図1に示すように、二元細孔シリカ―アルミナ複合酸化物は、マクロ細孔の平均直径が1μmの連続した貫通孔として存在する多孔体であった。また、図2に示すように、マクロ細孔が存在し、そのマクロ細孔の平均直径は1μmであることを確認した。さらに、窒素吸着法にて、ナノ細孔の平均直径と比表面積を測定したところ、図3に示すように、ナノ細孔の平均直径は2nmであり、比表面積469m/gであった。
【0080】
得られた二元細孔シリカ―アルミナ複合酸化物のアルミニウム含有量を測定した。測定した結果は、表1に示したように5.5質量%であった。尚、ナトリウム濃度は1000ppm以下であった。
【0081】
また、得られた二元細孔シリカ―アルミナ複合酸化物を触媒として使用し、上記の評価方法法にて測定した。測定した結果、表1に示したように、転化率は、64%であった。
【0082】
実施例2
実施例1と同様の方法で、湿潤シリカゲルを作製した。水洗後、湿潤シリカゲル100gを、イオン交換水160gに硝酸アルミニウム2水和物41.95gを溶解させた水溶液に浸漬させた以外は実施例1と同様に実施した。得られた二元細孔シリカ―アルミナ複合酸化物は、マクロ細孔の平均直径が1μmの連続した貫通孔として存在する多孔体であり、ナノ細孔の平均直径は2nm、比表面積629m/gであった。また、アルミニウム含有量は9.8質量%であり、ナトリウム濃度は1000ppm以下であった。
【0083】
この二元細孔シリカ―アルミナをクメンのクラッキング反応の触媒として使用し、上記の評価方法法にて測定した。測定した結果、表1に示したように、転化率は、65%であった。
【0084】
比較例1(ゾル液にアルミニウム塩を混合)
3号珪酸ナトリウム水溶液770.0g、平均分子量25,000のポリアクリル酸99.0g、95質量%硫酸227.3g、イオン交換水1903.7gを用いて、プロペラ型攪拌機を用いて50℃で攪拌し、さらに、硝酸アルミニウム2水和物27.97gを溶解させ、均一な混合液を作製した。混合液のpHは、1.5であった。その後、密閉容器内に混合液を投入し、50℃において静置しゲル化させた。得られた湿潤ゲルのナトリウムを除去するため、水洗を行った。水洗には、イオン交換水を使用して、洗浄によって発生した洗浄水の電気伝導度が1mS/cm以下になるまで行った。水洗後、50℃に設定した送風乾燥機で、1日間、湿潤ゲルを乾燥させた。乾燥後、100℃/時間で600℃まで昇温し、600℃、2時間の条件で焼成した。焼成物のアルミニウムの含有量を測定したところ、0.1wt%以下であり、さらには、クメンのクラッキング反応に対して、触媒としての活性を示さなかった。
【0085】
比較例2(焼成した二元細孔シリカに、アルミニウム塩を滴下)
3号珪酸ナトリウム水溶液770.0g、平均分子量25,000のポリアクリル酸99.0g、95質量%硫酸227.3g、イオン交換水1903.7gを用いて、プロペラ型攪拌機を用いて50℃で攪拌し均一なゾル液を作製した。ゾル液のpHは、1.5であった。その後、密閉容器内にゾル液を投入し、50℃において静置しゲル化させた。得られた湿潤シリカゲルの成形体に含まれているナトリウムを除去するため、水洗を行った。水洗には、イオン交換水を使用して、洗浄によって発生した洗浄水の電気伝導度が1mS/cm以下になるまで行った。水洗後、50℃に設定した送風乾燥機で、1日間、湿潤ゲルを乾燥させた。乾燥後、600℃、2時間の条件で焼成した(焼成後の二元細孔シリカに含まれる水分量は0質量%である。)。得られた二元細孔シリカ100gを、イオン交換水160gに硝酸アルミニウム2水和物27.97gを溶解させた水溶液に浸漬し、二元細孔シリカとアルミニウム塩水溶液とを接触させた。接触時の温度は50℃とし、時間は1日とした。接触後、50℃に設定した送風乾燥機で、1日間、湿潤ゲルを乾燥させた。乾燥後、100℃/時間で600℃まで昇温し、600℃、2時間の条件で焼成した。得られた二元細孔シリカ―アルミナ複合酸化物の物性を評価した。マクロ細孔の平均直径が1μmの連続した貫通孔として存在する多孔体であり、ナノ細孔の平均直径は2nm、比表面積600m/gであった。また、アルミニウムの含有量を測定したところ、10質量%であった。尚、ナトリウム濃度は1000ppm以下であった。
【0086】
この二元細孔シリカ―アルミナ複合酸化物をクメンのクラッキング反応の触媒として使用し、上記の評価方法法にて測定した。測定した結果、表1に示したように、転化率は、5%であった。
【0087】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は、実施例1の二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物の電子顕微鏡写真を示す。
【図2】図2は、水銀圧入法により測定した実施例1の二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物の細孔径分布曲線を示す。
【図3】図3は、窒素吸着法により測定した実施例1の二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物の細孔径分布曲線を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪酸アルカリ水溶液、水溶性高分子、および酸を含んでなるゾル液を、相分離が過渡の状態でゲル化させた後、得られた湿潤シリカゲルに、アルミニウム塩を溶解させた溶液を接触させ、次いで、該溶液を接触させたゲル体を焼成することを特徴とする二元細孔シリカ−アルミナ複合酸化物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−31015(P2008−31015A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−208102(P2006−208102)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【Fターム(参考)】