説明

二光子吸収材料、並びに光機能付与方法、光機能検出方法、光記録再生方法、光記録材料、及び三次元光記録媒体

【課題】二光子吸収により高感度に光機能を誘発し、かつ同一波長の検出光でその変化が検出可能な二光子吸収断面積の大きな有機材料である二光子吸収材料、並びに該二光子吸収材料を用いた光機能付与方法、光機能検出方法、光記録再生方法、光記録材料、及び三次元光記録媒体の提供。
【解決手段】二光子吸収の最大吸収波長近傍にある第一の線形吸収帯及びそれよりも長波長域にある第二の線形吸収帯を有し、二光子吸収により第二の線形吸収帯の光学特性が変化する二光子吸収材料である。該二光子吸収励起波長における第二の線形吸収帯の屈折率(n)が1.65以上であり、かつ衰消係数(k)が0.05以下である態様、共役結合が環状に連結した化学構造部位を有する態様、などが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二光子吸収材料、並びに該二光子吸収材料を用いた光機能付与方法、光機能検出方法、光記録再生方法、光記録材料、及び三次元光記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、二光子吸収材料として、多数の無機材料が見出されている。このような無機材料は、所望の二光子吸収特性や、素子製造のために必要な諸物性を最適化するための分子設計が困難であることから実用化が非常に困難であった。これに対し、有機化合物は分子設計により所望の二光子吸収の最適化が可能であるのみならず、その他の諸物性のコントロールも可能であるため、実用の可能性が高く、有望な二光子吸収材料として注目を集めている。
このような有機系二光子吸収材料としては、例えばローダミン、クマリン等の色素化合物;ジチエノチオフェン誘導体、オリゴフェニレンビニレン誘導体等の化合物が知られている。しかし、これらの有機化合物は、分子あたりの二光子吸収能を示す二光子吸収断面積が小さく、特にフェムト秒パルスレーザーを用いた場合の二光子吸収断面積が、200GM(×10−50cm・s・molecule−1・photon−1)未満のものが殆どであり、工業的な実用化には至っていない。
【0003】
また、二光子吸収現象を利用すると、極めて高い空間分解能を特徴とする種々の応用が可能となるが、現時点では、その光機能を誘起させるレーザー波長とそれを検出する波長が異なり、高コストなシステムでしか実用化できないという問題がある。
そこで、小型で安価なシステムにより、二光子吸収を利用した実用用途を実現するためには、二光子吸収により効率よく、光学機能(吸収スペクトル、屈折率、偏光状態の変化、蛍光特性)を誘発させ、同一波長の検出光で検出できる二光子吸収材料、及びその光機能の付与方法、及び検出方法の提供が望まれている。
【0004】
また、二光子吸収材料、三次元メモリ媒体用材料、及び光制限材料に関する先行技術として、数多くの提案がなされている。
例えば、特許文献1では、ジアリルエテンを二光子吸収により光異性化して記録及び再生する方法が提案されている。この提案では、記録は、二光子吸収の最大吸収波長よりも長波長域に新たな吸収帯が生じる。また、再生は、記録による衰消係数の増加又は屈折率の増加を検知する。通常は同一波長で記録再生はできないが、開環体の二光子吸収特性と閉環体の線形吸収特性を制御することで可能となる。
しかし、この提案の方法では、高感度で同一波長での記録再生を可能とする開環体の二光子吸収特性(吸収断面積、吸収波長)と閉環体の吸収波長の制御が材料設計上非常に難しい。また、フォトクロミック化合物は可逆材料であるため、環境光や検出光に光消色して、保存安定性、繰り返し耐久性が劣るという問題がある。
【0005】
また、特許文献2では、ジアリルエテンの二光子吸収開環体を閉環体に二光子吸収光異性化して記録する方法が提案されている。この提案では、記録は、二光子吸収の最大吸収波長よりも長波長域に新たな吸収帯が生じる。また、再生は、記録による衰消係数の増加又は屈折率の増加を検知して行う。通常は同一波長で記録再生はできないが、開環体の二光子吸収特性と閉環体の線形吸収特性を制御することで可能である。
しかし、この提案の方法では、高感度で同一波長での記録再生を可能とする開環体の二光子吸収特性(吸収断面積、吸収波長)と閉環体の吸収波長の制御が材料設計上非常に難しい。また、フォトクロミック化合物は可逆材料であるため、環境光や検出光に光消色して、保存安定性、繰り返し耐久性が劣るという問題がある。
【0006】
また、特許文献3では、開環反応の量子収率が小さな二光子吸収により記録し、同一波長で再生可能な追記型(WORM)メディアが提案されている。この提案では、ジアリルエテンの二光子吸収開環体を閉環体に二光子吸収光異性化して記録する。また、再生は、記録による衰消係数の増加又は屈折率の増加を検知して行う。同一波長で記録再生が可能である。
しかし、この提案では、高感度で同一波長での記録再生を可能とする開環体の二光子吸収特性(吸収断面積、吸収波長)と閉環体の吸収波長の制御が困難であり、更に閉環反応の量子収率の制御を両立するのは材料設計上非常に困難である。また、環境光や再生時の光消色をカートリッジのフィルターで防御しているため、カートリッジが必須となり、可搬性、コスト上の問題がある。
【0007】
また、特許文献4では、フォトクロミック化合物の長波長吸収体を短波長吸収体に二光子吸収光異性化して記録する方法が提案されている。この提案では、長波長吸収体は短波長吸収体に比較し二光子吸収顔面積が大きく高感度記録が可能であり、二光子吸収で長波長吸収体の吸収を減少させて記録する。また再生は、記録による衰消係数の低下又は屈折率の低下を検知して行う。記録波長と再生波長は異なる。
しかし、この提案では、閉環体(長波長吸収)を二光子吸収により開環体(短波長吸収)に光異性化して記録し、その光学特性の変化を利用するため同一波長での記録再生ができない。また、フォトクロミック化合物は可逆材料であるため、環境光や検出光に光消色して、保存安定性、繰り返し耐久性が劣るという問題がある。
【0008】
また、特許文献5では、分子ガラス材料を三光子吸収により蛍光性を付与して記録及び再生する方法が提案されている。この提案では、三光子吸収により蛍光性構造が生じることにより記録する。また再生は、蛍光の有無を検知して行う。同一波長で記録再生は可能である。
しかし、この提案では、三光子吸収のため、二光子吸収よりも更に吸収断面積が小さく超高密度光パワーを持つ光源でしか記録できず、当然高速記録に限界がある。
【0009】
また、特許文献6では、フォトクロミック化合物を二光子吸収により光異性化して記録及び再生する方法が提案されている。この提案では、二光子吸収の最大吸収波長と異なる新たな吸収帯が生じることで記録を行う。また再生は、近赤外光の吸収係数の増減を検知して行う。同一波長で記録再生はできない。
しかし、この提案では、同一波長での記録再生が不可能であり、また、フォトクロミック化合物は可逆材料であるため、環境光や検出光に光消色して、保存安定性、繰り返し耐久性が劣るという問題がある。
【0010】
また、特許文献7、特許文献8、及び特許文献9では、二光子吸収化合物と反応活性化合物との混合記録材料で二光子吸収を利用した反応活性化合物の何らかの反応による光学特性の変化で記録再生する方法が提案されている。これらの提案では、二光子吸収を利用した反応により光学特性変化を生じさせて記録する。また再生は、記録による衰消係数の増加又は低下、又は、屈折率の増加又は低下を検知して行い、通常は同一波長で記録再生はできないが、反応生成物の線形吸収特性を制御することで可能である。
しかし、これらの提案では、未記録部では環境光により記録同様な反応が起こり、記録部では残存未記録材料が再生光により同様な反応が起こるため保存安定性、繰り返し耐久性が劣る。また、光学特性を変化させる反応生成物は通常の平衡反応によるため高速記録に限界がある。
【0011】
また、特許文献10では、二光子吸収部位と反応活性種発生部位との連結化合物を二光子吸収により結合を切断し、発生した反応活性種の何らかの反応による光学特性の変化で記録再生する方法が提案されている。この提案では、二光子吸収を利用した反応により光学特性変化を生じさせて記録する。また再生は、記録による衰消係数の増加もしくは低下、又は、屈折率の増加もしくは低下を検知する。通常は同一波長で記録再生はできないが、反応生成物の線形吸収特性を制御することで可能である。
しかし、この提案では、未記録部では環境光により記録同様な反応が起こり、記録部では残存未記録材料が再生光により同様な反応が起こるため保存安定性、繰り返し耐久性が劣る。また、光学特性を変化させる反応生成物は通常の平衡反応によるため、高速記録に限界がある。
【0012】
その他、二光子吸収材料を用いた三次元光記録媒体としては、記録再生に蛍光性物質を用いて蛍光で読み取る方法(特許文献11及び特許文献12参照)、フォトクロミック化合物を用いて吸収又は蛍光で読み取る方法(特許文献13及び特許文献14参照)等が提案されている。
しかし、これらの提案は、いずれも具体的な二光子吸収材料の提示はなく、また抽象的に提示されている二光子吸収化合物の例も二光子吸収効率の極めて小さい二光子吸収化合物を用いており、更に、非破壊読み出し、記録の長期保存性、再生のS/N比等に問題があり、それを実現できる具体的な材料例、及び光機能の付与及び検出法を開示している例はない。
【0013】
したがって、先行技術文献においても、二光子吸収により光機能(吸収スペクトル、屈折率、偏光状態の変化、発光特性、光電特性等)を効率よく誘発させ、同一波長の光で検出できる二光子吸収材料、及びその光機能の付与方法、検出方法の具体的な開示は存在していないのが現状である。
【0014】
【特許文献1】特開2003−308634号公報
【特許文献2】特開2004−277416号公報
【特許文献3】特開2004−39009号公報
【特許文献4】特開2004−39009号公報
【特許文献5】特表2004−534849号公報
【特許文献6】特表2005−517769号公報
【特許文献7】特開2005−71570号公報
【特許文献8】特開2006−78876号公報
【特許文献9】特開2006−289613号公報
【特許文献10】特開2007−17885号公報
【特許文献11】特表2001−524245号公報
【特許文献12】特表2000−512061号公報
【特許文献13】特表2001−522119号公報
【特許文献14】特表2001−508221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、二光子吸収により高感度に光機能(吸収スペクトル、屈折率、偏光状態の変化、発光特性、光電特性等)を誘発し、かつ同一波長の検出光でその変化が検出可能な二光子吸収断面積の大きな有機材料である二光子吸収材料、並びに該二光子吸収材料を用いた光機能付与方法、光機能検出方法、光記録再生方法、光記録材料、及び三次元光記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、特定の光学特性を有する二光子吸収材料により上記課題が解決されることを知見した。即ち、本発明は、二光子吸収の最大吸収波長近傍にある第一の線形吸収帯と、該第一の線形吸収帯よりも長波長域にある第二の線形吸収帯とを有する二光子吸収材料を用いる。
前記二光子吸収材料は、二光子励起波長により二光子吸収し、その光エネルギーにより化学的な変化を生じ、その結果、長波長域にある第二の線形吸収帯の光学特性変化を誘起し、二光子励起波長での光学特性が変化する。
これにより、二光子吸収により高感度に光機能(吸収スペクトル、屈折率、偏光状態の変化、発光特性、光電特性等)が変化し、かつその変化を同一波長の検出光で検出可能な二光子吸収有機材料が得られることを知見した。
更に、前記特性を有する二光子吸収材料を三次元光メモリ材料として用い、二光子励起波長を記録及び再生波長とすることにより、同一波長による二光子吸収光記録、及び光再生が可能な三次元光メモリが実現できることを知見した。
【0017】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 二光子吸収の最大吸収波長近傍にある第一の線形吸収帯と、該第一の線形吸収帯よりも長波長域にある第二の線形吸収帯とを有し、二光子吸収により前記第二の線形吸収帯の光学特性が変化することを特徴とする二光子吸収材料である。
<2> 変化する光学特性が、衰消係数、屈折率、蛍光強度及び蛍光波長のいずれかである前記<1>に記載の二光子吸収材料である。
<3> 二光子吸収励起波長における第二の線形吸収帯の屈折率(n)が1.65以上であり、かつ衰消係数(k)が0.05以下である前記<1>から<2>のいずれかに記載の二光子吸収材料である。
<4> 二光子吸収断面積が200GM(×10−50cm・s・molecule−1・photon−1)以上である前記<1>から<3>のいずれかに記載の二光子吸収材料である。
<5> 共役結合が環状に連結した化学構造部位を有する前記<1>から<4>のいずれかに記載の二光子吸収材料である。
<6> アザアヌレン化合物である前記<1>から<5>のいずれかに記載の二光子吸収材料である。
<7> アヌレン化合物である前記<1>から<5>のいずれかに記載の二光子吸収材料である。
<8> アヌレノン化合物である前記<1>から<5>のいずれかに記載の二光子吸収材料である。
<9> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の二光子吸収材料に、二光子吸収励起波長により第二の線形吸収帯の光学特性を変化させて、光機能を付与することを特徴とする光機能付与方法である。
<10> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の二光子吸収材料に、二光子吸収励起波長により第二の線形吸収帯の光学特性を変化させて、同一波長で検出することを特徴とする光機能検出方法である。
<11> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の二光子吸収材料に、二光子吸収励起波長により第二の線形吸収帯の光学特性を変化させることにより情報を記録することを特徴とする光記録方法である。
<12> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の二光子吸収材料に、二光子吸収励起波長により第二の線形吸収帯の光学特性を変化させて、同一波長の再生光により情報を再生することを特徴とする光再生方法である。
<13> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の二光子吸収材料を含有することを特徴とする光記録材料である。
<14> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の二光子吸収材料を含む記録層中における入射光に対して深さ方向に記録再生可能な三次元光記録媒体である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、二光子吸収により高感度に光機能(吸収スペクトル、屈折率、偏光状態の変化、発光特性、光電特性等)を誘発し、かつ同一波長の検出光でその変化が検出可能な二光子吸収断面積の大きな有機材料である二光子吸収材料、並びに該二光子吸収材料を用いた光機能付与方法、光機能検出方法、光記録再生方法、光記録材料、及び三次元光記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(二光子吸収材料)
本発明の二光子吸収材料は、二光子吸収の最大吸収波長近傍にある第一の線形吸収帯と、該第一の線形吸収帯よりも長波長域にある第二の線形吸収帯とを有し、二光子吸収により前記第二の線形吸収帯の光学特性が変化する材料である。
【0020】
前記二光子吸収材料とは、非共鳴領域の波長において分子を励起することが可能な材料で、この時励起に用いた光子の2倍のエネルギー準位に、実励起状態が存在する材料を意味する。
前記二光子吸収現象とは、三次の非線形光学効果の一種で、分子が二つのフォトンを同時に吸収して、基底状態から励起状態へ遷移する現象であり、古くから知られていたがJean−Luc Bredas等が1998年に分子構造とメカニズムの関係を解明して以来(Science,281,1653(1998))、近年になって二光子吸収能を有する材料に関する研究が進んでいる。
しかし、このような二光子同時吸収の遷移効率は、一光子吸収に較べて極めて低く、極めて大きなパワー密度の光子を必要とするため、通常に使用されるレーザー光強度では殆ど無視され、ピーク光強度(最大発光波長における光強度)が高いモード同期レーザーのようなフェムト秒程度の極超短パルスレーザーを用いると、観察されることが確認されている。
二光子吸収の遷移効率は印加する光電場の二乗に比例する(二光子吸収の二乗特性)。このため、レーザーを照射した場合、レーザースポット中心部の電界強度の高い位置でのみ二光子の吸収が起こり、周辺部の電界強度の弱い部分では二光子の吸収は全く起こらない。三次元空間においては、レーザー光をレンズで集光した焦点の電界強度の大きな領域でのみ二光子吸収が起こり、焦点から外れた領域では電界強度が弱いために二光子吸収が全く起こらない。印加された光電場の強度に比例してすべての位置で励起が起こる一光子の線形吸収に比べて、二光子吸収は、この二乗特性に由来して空間内部のピンポイントのみでしか励起が起こらないため、空間分解能が著しく向上する。
【0021】
この特性を利用して、記録媒体の所定の位置に二光子吸収によりスペクトル変化、屈折率変化又は偏光変化を生じさせ、ビットデータを記録する三次元メモリの研究が進められている。二光子吸収は、光の強度の二乗に比例して生じるため、二光子吸収を利用したメモリは、一光子吸収を利用したメモリに比べて、スポットサイズを小さくすることができ、超解像記録が可能となる。その他この二乗特性に由来する高い空間分解能の特性から、光制限材料、光造形用光硬化樹脂の硬化材料、二光子蛍光顕微鏡用蛍光色素材料などの用途への開発も進められている。
更に、二光子吸収を誘起する場合には、化合物の線形吸収帯が存在する波長領域よりも長波長でかつ吸収の存在しない、近赤外領域の短パルスレーザーを用いることが可能である。化合物の線形吸収帯が存在しない、いわゆる透明領域の近赤外光を用いるため、励起光が吸収や散乱を受けずに試料内部まで到達でき、かつ二光子吸収の二乗特性のために試料内部のピンポイントを高い空間分解能で励起できるため、二光子吸収及び二光子発光は生体組織の二光子造影や二光子フォトダイナミックセラピー(PDT)などの光化学療法応用面でも期待されている。また、二光子吸収、二光子発光を用いると、入射した光子のエネルギーよりも高いエネルギーの光子を取り出せるため、波長変換デバイスという観点からアップコンバージョンレージングに関する研究も報告されている。
【0022】
ここで、本発明の二光子吸収材料が有する基本的な光学特性について図1に示す。
図1の結果から、本発明の二光子吸収材料は、二光子吸収の最大吸収波長近傍にある第一の線形吸収帯と、それよりも長波長域にある第二の線形吸収帯を有することが分かる。
このような光学特性を有する本発明の二光子吸収材料は、二光子励起波長により二光子吸収し、その光エネルギーにより化学的な変化を生じ、第二の線形吸収帯の光学特性変化を誘発する。その結果、第二の線形吸収帯の光学特性変化に対応した二光子励起波長での光機能のスイッチィングが可能となる。
前記光機能を誘起する反応モードとしては、ヒートモード及びフォトンモードいずれも可能であり、反応速度と変化のコントラスト比の大きさで、前者としてはサーモクロミズム反応、熱分解反応が好ましく、後者としてはフォトクロミズム反応が好ましい。
前記光機能としては、衰消係数、屈折率、偏光状態の変化、発光特性、光電特性等が挙げられ、二光子吸収により高感度に変化させることが可能で、かつその変化を同一波長の検出光で検出可能となる。
また、この特性を有する二光子吸収材料を三次元光記録材料として用い、二光子吸収により第二の線形吸収帯の光学特性を変化させることで光記録/再生するシステムは、同一波長による二光子吸収光記録/再生が可能な三次元光メモリを可能とする。三次元光メモリシステムとしては、装置の小型化や検出容易性の観点から、変化する光学特性としては衰消係数、屈折率、蛍光特性(蛍光強度又は蛍光波長)が好ましい。
【0023】
ここで、光機能として光学定数(衰消係数、屈折率)の例を示す。下記構造式(i)で表されるポルフィリン化合物の光学定数スペクトルを図3に示す。
【化1】

ただし、前記構造式(i)中、Meはメチル基、Etはエチル基を表す。
【0024】
図3の結果から、前記構造式(i)で表される化合物の二光子吸収を示す750nm以降の波長域では、線形吸収(図3中のkに対応する)はないが、長波長域の線形吸収による電子分極の影響により屈折率(図3中のnに対応する)は依然として大きな値を示すことが分かる。該化合物に750nm以降の波長域で二光子吸収させ、該化合物が分解した場合には、この波長域で大きな屈折率変化が生じることが容易に想定される。
【0025】
ここで、通常の有機化合物の屈折率は、ほぼ1.5前後にあるのに対して、本発明の二光子吸収材料は、二光子吸収励起波長における第二の線形吸収帯の屈折率(n)が1.65以上であることが好ましく、1.7以上がより好ましい。前記屈折率(n)が1.65未満であると、充分な屈折率の変化量が得られないことがある。また、第二の線形吸収帯が二光子励起波長に吸収能を有すると二光子励起の実効光量が損なわれるため、吸収は無いほうが好ましく、第二の線形吸収帯の衰消係数(k)は0.05以下が好ましく、0.03以下がより好ましい。前記衰消係数(k)が0.05を超えると、大きな二光子吸収断面積が得られないことがある。
ここで、前記屈折率(n)及び衰消係数(k)は、例えば分光エリプソメトリ法により測定することができる。
【0026】
また、前記二光子吸収材料の二光子吸収断面積は、200GM(×10−50cm・s・molecule−1・photon−1)以上が好ましく、500GM以上がより好ましい。前記二光子吸収断面積が200GM未満であると、充分な二光子吸収能が得られず、二光子吸収を誘起する励起光源として高価な高出力のレーザーが必要となってしまうことがある。
ここで、前記二光子吸収断面積は、例えば、図5に示す二光子吸収断面積の測定システムを用いて、以下のようにして測定することができる。
・測定光源:フェムト秒チタンサファイアレーザ(波長:720nm〜920nm、パルス幅:100fs、繰り返し:80MHz、光パワー:800mW)
・測定方法:Zスキャン法(光源波長:780nm〜900nm、キュベット内径:1mm、測定光パワー:約500mW、繰り返し周波数:80MHz、対物レンズ:f=75mm、集光径:〜40μm)
・集光されている光路部分に試料溶液を充填した石英セルを置き、その位置を光路に沿って移動させることによりZ−scan測定を実施した。
【0027】
透過率を測定し、その結果から、下記理論式(I)により非線形吸収係数を求めた。
T=[ln(1+I0L0β)]/I0L0β ・・・・ (I)
ただし、前記理論式(I)中、Tは透過率(%)、I0は励起光密度[GW/cm]、L0は試料セル長[cm]、βは非線形吸収係数[cm/GW]を表す。
【0028】
求めた非線形吸収係数から、下記式(II)により二光子吸収断面積σ2を求めた。
σ2=1000×hνβ/NACβ ・・・・ (II)
ただし、前記式(II)中、σ2の単位は1GM=1×10−50cm・s・photon−1であり、hはプランク定数[J・s]、νは入射レーザー光の振動数[s−1]、NAはアボガドロ数、Cは溶液濃度[mol/L]を示す。
【0029】
本発明の二光子吸収材料としては、特に制限はなく、上述した二光子吸収能と上記必要光吸収特性を有する材料であれば何れも使用できる。これらの中でも、共役結合が環状に連結した構造部位を有する二光子吸収材料は、その平面内に直交した2つの遷移モーメントの電子的な相互作用により近紫外域と可視域の両波長域に吸収能を有し、本発明の二光子吸収材料の基本的な光学特性を示すため好ましく、具体的には、アザアヌレン化合物(ポルフィリン誘導体、アザポルフィリン誘導体)、アヌレン化合物、アヌレノン化合物が特に好ましい。
【0030】
以下、本発明の二光子吸収材料として好適なアザアヌレン化合物(ポルフィリン誘導体、アザポルフィリン誘導体)、アヌレン化合物、アヌレノン化合物について、具体的に説明する。
【0031】
−ポルフィリン誘導体(1)−
【化2】

ただし、前記一般式(1)中、R〜Rは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリ−ル基、及び置換もしくは未置換のアシル基のいずれかを表す
〜Xは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、カルボキシル基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリ−ル基、置換もしくは未置換のアミノ基、及び置換もしくは未置換のアシル基のいずれかを表す。
Mは、2個の水素原子、酸素原子、ハロゲン原子を有していてもよい2価、3価、又は4価の金属原子、又は(OR)p、(OSiR)q、(OPOR10)r、(OCOR11)sを有していてもよい金属原子を表す。R〜R11は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素基、及び芳香族炭化水素基のいずれかを表す。
p、q、r、及びsは、それぞれ0〜2の整数を表す。
【0032】
−ポルフィリン誘導体(2)−
置換基を有してもよい4つのピロ−ル環が置換基を有していてもよい炭素原子を介して、又は直接結合した構造を有するポルフィリン誘導体において、該4つのピロ−ル環を結ぶ置換基を有してもよい炭素原子の合計数が4つであり、かつ少なくとも一個所はピロ−ル環が炭素原子を介さず直接結合したポルフィリン誘導体である。
【化3】

前記一般式(2)中、R〜R、及びX〜Xは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、カルボキシル基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリ−ル基、置換もしくは未置換のアミノ基、及び置換もしくは未置換のアシル基のいずれかを表す。
Mは、2個の水素原子、酸素原子、ハロゲン原子を有していてもよい2価、3価、もしくは4価の金属原子、(OR)p、(OSiR101112)q、(OPOR1314)r、及び(OCOR15)sを有していてもよい金属原子のいずれかを表す。R〜R15は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、置換もしくは未置換の脂肪族、及び芳香族炭化水素基のいずれかを表す。
p、q、r、及びsは、それぞれ0〜2の整数を表す。
【0033】
−アザポルフィリン誘導体−
置換基を有してもよい4つのピロ−ル環が置換基を有してもよい炭素原子又は窒素原子を介して結合した構造を有する上記一般式(1)で示されるアザポルフィリン誘導体において、該4つのピロ−ル環を結ぶ置換基を有してもよい原子のうちの少なくとも一個が炭素原子及び窒素原子であるアザポルフィリン誘導体である。
【化4】

ただし、前記一般式(3)中、R〜Rは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、窒素原子、及び炭素原子のいずれかを表し、これらのうちの少なくとも一つは窒素原子を表す。
〜Xは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、カルボキシル基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリ−ル基、置換もしくは未置換のアミノ基、及び置換もしくは未置換のアシル基のいずれかを表す。
Mは、2個の水素原子、酸素原子、又はハロゲン原子を有していてもよい2価、3価、もしくは4価の金属原子、(OR)p、(OSiR)q、(OPOR10)r、及び(OCOR11)sを有してもよい金属原子のいずれかを表す。R〜R11は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、置換もしくは未置換の脂肪族、及び芳香族炭化水素基のいずれかを表す。
p、q、r、及びsは、それぞれ0〜2の整数を表す。
【0034】
前記一般式(1)〜(3)のアザアヌレン化合物におけるMとしては、具体的には、Ib族,IIa族,IIb族、IIIa族、IVa族、IVb族、Vb族、VIb族、VIIb族、VIII族の金属、これらの金属の酸化物、これらの金属のハロゲン化物又はこれらの金属の水酸化物などがあり、更に、上記金属で置換基を有するものがある
前記金属としては、例えばCu、Zn、Mg、Al、Ge、Ti、Sn、Pb、Cr、Mo、Mn、Fe、Co、Ni、In、Pt、Pd等が挙げられ、酸化物としては、TiO、VO等が挙げられ、ハロゲン化物としては、AlCl、GeCl、SiCl、FeCl、SnCl、InCl等が挙げられ、水酸化物としてはAl(OH)、Si(OH)、Ge(OH)、Sn(OH)等が挙げられる。
更に、金属で置換基を有する場合に、金属としては、Al、Ti、Si、Ge、Sn等があり、該置換基としては、例えばアリールオキシル基、アルコキシル基、トリアルキルシロキシル基、トリアリールシロキシル基、トリアルコキシシロキシル基、トリアリールオキシシロキシル基、トリチルオキシル基、アシロキシル基などが挙げられる。
【0035】
−アヌレン誘導体−
【化5】

ただし、前記一般式(4)中、R〜R、及びR〜R12は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリール基、及び置換もしくは未置換のアミノ基のいずれかを示す。
【0036】
−アヌレノン誘導体−
【化6】

【化7】

【0037】
前記一般式(5)及び(6)中、R〜R16は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、及び置換もしくは未置換のアルキル基のいずれかを示す。
【0038】
前記一般式(1)〜(6)において、前記未置換のアルキル基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。置換アルキル基としては、ヒドロキシ置換アルキル基、カルボキシ置換アルキル基、アミノ置換アルキル基、ハロゲン原子置換アルキル基、フェニル置換アルキル基、アルコキシ置換アルキル基等が挙げられる。
前記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、イソアミル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2−エチルブチル基、n−ヘプチル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、n−オクチル基、2−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基等の一級アルキル基;イソプロピル基、sec−ブチル基、1−エチルプロピル基、1−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−メチルヘプチル基、1−エチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、1−メチルヘキシル基、1−エチルヘプチル基、1−プロピルブチル基、1−イソプロピル−2−メチルプロピル基、1−エチル−2−メチルブチル基、1−プロピル−2−メチルプロピル基、1−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、1−プロピルペンチル基、1−イソプロピルぺンチル基、1−イソプロピル−2−メチルブチル基、1−イソプロピル−3−メチルブチル基、1−メチルオクチル基、1−エチルヘプチル基、1−プロピルヘキシル基、1−イソブチル−3−メチルブチル基等の二級アルキル基;tert−ブチル基、tert−ヘキシル基、tert−アミル基、tert−オクチル基等の三級アルキル基;シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、4−エチルシクロヘキシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基、4−(2−エチルヘキシル)シクロヘキシル基、ボルニル基、イソボルニル基、アダマンタン基等のシクロアルキル基、などが挙げられる。
【0039】
前記一般式(1)で表される化合物としては、具体的には、以下の化合物が好適に挙げられるが、これらに限られるわけではない。
【化8】

【化9】

【化10】

前記式中、Etはエチル基を表す。
【0040】
前記一般式(2)で表される化合物としては、具体的には、以下の化合物が好適に挙げられるが、これらに限られるわけではない。
【化11】

【化12】

【化13】

【0041】
前記一般式(3)で表される化合物としては、具体的には、以下の化合物が好適に挙げられるが、これらに限られるわけではない。
【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【0042】
前記一般式(4)で表される化合物としては、具体的には、以下の化合物が好適に挙げられるが、これらに限られるわけではない。
【化19】

【化20】

【化21】

前記式中、tBuはターシャリーブチル基を表す。
【0043】
前記一般式(5)で表される化合物としては、具体的には、以下の化合物が好適に挙げられるが、これらに限られるわけではない。
【化22】

【化23】

【化24】

前記式中、Etはエチル基を表す。
【化25】

【0044】
前記一般式(6)で表される化合物としては、具体的には、以下の化合物が好適に挙げられるが、これらに限られるわけではない。
【化26】

前記式中、Etはエチル基を表す。
【化27】

【0045】
その他、異性体によりそれぞれ異なる波長域に吸収能を示すサーモ材料及びフォトクロミック材料で、短波長吸収異性体が二光子吸収能を有し、その二光子吸収エネルギーにより、長波長吸収異性体が短波長吸収異性体に異性化する材料も使用できる。
【0046】
前記フォトクロミック材料として、サリチリデンアニリン類サーモクロミズム材料の吸収スペクトル変化を図4に示す。該フォトクロミック材料の両異性体混合系は、本発明の必要光吸収特性を満足し、この特性を有し、二光子吸収を示すものは同様に使用することができる。
【0047】
本発明の二光子吸収材料は、スピンコーター、ロールコーター、バーコーターなどを用いることによって基板上に直接塗布するか、あるいはフィルムとしてキャストし、次いで、通常の方法により基板にラミネートすることもでき、これにより、二光子吸収光記録材料とすることができる。
【0048】
本発明の二光子吸収材料は、そのもの単独もしくは各種の樹脂との混合の薄膜、あるいはバルクで種々のデバイスへの応用が可能である。例えば、光ディスクでは上記薄膜が基板と接しており、該基板材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ガラスなどが挙げられる。
また、積層する場合であれば、中間層(仕切層)に該薄膜表面が接している。前記中間層の具体例としては、例えばポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート又はセロファンフィルムなどのプラスチック製のフィルム又は種々の光硬化樹脂等が挙げられる。
【0049】
(光機能付与方法)
本発明の光機能付与方法は、本発明の前記二光子吸収材料に、二光子吸収励起波長により第二の線形吸収帯の光学特性を変化させて光機能を付与する。
変化する光学特性としては、衰消係数、屈折率、蛍光強度又は蛍光波長のいずれかであることが好ましい。
前記光機能としては、吸収スペクトル、屈折率、偏光状態の変化、発光特性、光電特性等が挙げられる。
【0050】
(光機能検出方法)
本発明の光機能検出方法は、本発明の前記二光子吸収材料に、二光子吸収励起波長により第二の線形吸収帯の光学特性を変化させ、同一波長で検出する。
変化する光学特性としては、衰消係数、屈折率、蛍光強度又は蛍光波長のいずれかであることが好ましい。
前記光機能としては、吸収スペクトル、屈折率、偏光状態の変化、発光特性、光電特性等が挙げられる。
【0051】
(光記録方法)
本発明の光記録方法は、本発明の前記二光子吸収材料に、二光子吸収励起波長により第二の線形吸収帯の光学特性を変化させることで情報を記録する。
変化する光学特性としては、衰消係数、屈折率、蛍光強度又は蛍光波長のいずれかであることが好ましい。
【0052】
(光再生方法)
本発明の光再生方法は、本発明の前記二光子吸収材料に、二光子吸収励起波長により第二の線形吸収帯の光学特性を変化させ、同一波長の再生光により情報を再生する。
変化する光学特性としては、衰消係数、屈折率、蛍光強度又は蛍光波長のいずれかであることが好ましい。
【0053】
(光記録材料)
本発明の光記録材料は、本発明の二光子吸収材料を含有し、本発明の二光子吸収材料は単独か、各種樹脂に混合されているか、光硬化性樹脂に混合されて用いられる。
従って、本発明の二光子吸収材料の使用要件としては、該材料が各種樹脂、又はガラスに混合されているか、二光子吸収材料層界面が各種樹脂、又はガラスに接していることである。言い換えれば、本発明の二光子吸収材料はミクロレベル、又はマクロレベルで各種樹脂、又はガラスに接している構成となっている。
【0054】
具体的には、基板上に、少なくとも本発明の前記二光子吸収材料と、必要に応じて樹脂と、溶媒を含む組成物を塗布して、記録層を形成することができる。
【0055】
前記基板とは、任意の天然支持体、又は合成支持体、好適には柔軟性フィルム、剛性フィルム、シート、又は板の形態で存在することができるものを意味する。
前記基板の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、樹脂下塗り型ポリエチレンテレフタレート、火炎又は静電気放電処理されたポリエチレンテレフタレート、セルロースアセテート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ガラスなどが挙げられる。また、前記基板には、予めトラッキング用の案内溝やアドレス情報が付与されたものであってもよい。
【0056】
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばポリメチルアクリレート、ポリカーボレート、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂、セルロース、脂肪族炭化水素樹脂、天然ゴム、ステレンブタジエン樹脂、クロロプレンゴム、ワックス、アルキッド樹脂、ロジンなどが挙げられる。
使用した溶媒は乾燥時に蒸発除去することができる。この蒸発除去には加熱や減圧を用いてもよい。
【0057】
また、二光子吸収光記録材料の上に、酸素遮断や層間クロストーク防止のための保護層(中間層)を形成してもよい。
前記保護層(中間層)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート又はセロファンフィルムなどのプラスチック製のフィルム又は板を静電的な密着、押し出し機を使った積層等により貼合わせるか、前記ポリマーの溶液を塗布してもよい。また、ガラス板を貼合わせてもよい。また、保護層と記録層の間及び/又は、基材と記録層の間に、気密性を高めるために粘着剤又は液状物質を存在させてもよい。更に、記録層間の保護層(中間層)にも予め、トラッキング用の案内溝やアドレス情報が付与されたものであってもよい。
【0058】
<二光子吸収材料を用いた三次元多層光メモリへの応用>
最近、インターネット等のネットワークやハイビジョンTVが急速に普及している。また、HDTV(High Definition Television)の放映も間近にひかえて、民生用途においても50GB以上、好ましくは100GB以上の画像情報を安価簡便に記録するための大容量記録媒体の要求が高まっている。更にコンピューターバックアップ用途、放送バックアップ用途等、業務用途においては、1TB程度又はそれ以上の大容量の情報を高速かつ安価に記録できる光記録媒体が求められている。そのような中、DVD±Rのような従来の二次元光記録媒体は物理原理上、たとえ記録再生波長を短波長化したとしてもせいぜい25GB程度で、将来の要求に対応できる程の充分大きな記録容量が期待できるとは言えない状況である。
【0059】
そのような状況の中、究極の高密度、高容量記録媒体として、三次元光記録媒体が俄然、注目されてきている。三次元光記録媒体は、三次元(膜厚)方向に何十、何百層もの記録を重ねることで、従来の二次元光記録媒体の何十倍、何百倍もの超高密度、超高容量記録を達成しようとするものである。三次元光記録媒体を提供するためには、三次元(膜厚)方向の任意の場所にアクセスして書き込みできなければならないが、その手段として、二光子吸収材料を用いる方法とホログラフィ(干渉)を用いる方法とある。二子吸収材料を用いる三次元光記録媒体では、上記で説明した物理原理に基づいて何十、何百倍にもわたっていわゆるビット記録が可能であって、より高密度記録が可能であり、まさに究極の高密度、高容量光記録媒体であると言える。
二光子吸収材料を用いた三次元光記録媒体としては、記録再生に蛍光性物質を用いて蛍光で読み取る方法(特表2001−524245号公報及び特表2000−512061号公報参照)、フォトクロミック化合物を用いて吸収又は蛍光で読み取る方法(特表2001−522119号公報及び特表2001−508221号公報参照)などが提案されている。
しかし、これらの提案には、いずれも具体的な二光子吸収材料の提示はなく、また抽象的に提示されている二光子吸収化合物の例も二光子吸収効率の極めて小さい二光子吸収化合物を用いている。
更に、これらの先行技術文献で用いているフォトクロミック化合物は可逆材料であるため、非破壊読み出し、記録の長期保存性、再生のS/N比等に問題があり、光記録媒体として実用性のある方式であるとは言えない。特に非破壊読出し、記録の長期保存性等の点では、不可逆材料を用いて反射率(屈折率又は吸収率)又は発光強度の変化で再生するのが好ましいが、このような機能を有する二光子吸収材料を具体的に開示している例はなかった。
【0060】
また、特開平6−28672号公報及び特開平6−118306号公報には、屈折率変調により三次元的に記録する記録装置、及び再生装置、読み出し方法等が開示されているが、二光子吸収三次元光記録材料を用いた方法についての記載はない。
【0061】
以上に述べたように、非共鳴二光子吸収により得た励起エネルギーを用いて反応を起こし、その結果レーザー焦点(記録)部と非焦点(非記録)部で光を照射した際の発光強度を書き換えできない方式で変調することができれば、三次元空間の任意の場所に極めて高い空間分解能で発光強度変調を起こすことができ、究極の高密度記録媒体と考えられる三次元光記録媒体への応用が可能となる。更に、非破壊読み出しが可能で、かつ不可逆材料であるため良好な保存性も期待でき実用的である。
しかし、現時点で利用可能な二光子吸収化合物では、二光子吸収能が低いため、光源としては非常に高出力のレーザーが必要で、かつ記録時間も長くかかる。特に三次元光記録媒体に使用するためには、速い転送レート達成のために、高感度にて発光能の違いによる記録を二光子吸収により行うことができる材料の構築が必須である。そのためには、高効率に二光子を吸収し励起状態を生成することができる二光子吸収化合物と、二光子吸収化合物励起状態を用いて何らかの方法にて二光子吸収光記録材料の発光能の違いを効率的に形成できる記録成分を含む材料が有力であるが、そのような材料は今までほとんど開示されておらず、そのような材料の構築が望まれている。
また、小型で安価な二光子吸収三次元光記録システムを実現するためには、二光子吸収により光機能(吸収スペクトル、屈折率、偏光状態の変化、蛍光特性)を効率よく誘発させて記録し、同一波長の再生光で再生できる二光子吸収材料が有力であるが、それを実現できる具体的な材料例、及び光記録再生技術は開示されていない。
【0062】
ここで、三次元多層光メモリの好ましい実施形態(具体例)を示すが、本発明はこれらの実施形態により何ら限定されず、三次元記録(平面及び膜厚方向に記録)が可能な構造であれば、他にどのような構造であっても構わない。三次元多層光メモリの記録/再生のシステム概略図を図2左図(a)に、記録媒体の概略断面図を図2右図(b)に示す。
図2右図(b)の光記録媒体においては、平らな支持体(基板1)に本発明の二光子吸収化合物を用いた記録層と、クロストーク防止用の中間層(保護層)が交互に50層ずつ積層され、各層はスピンコート法により成膜されている。
前記記録層の厚さは0.01μm〜0.5μmが好ましく、前記中間層の厚さは0.1μm〜5μmが好ましい。この構造であれば、現在普及しているCD/DVDと同じディスクサイズで、テラバイト級の超高密度光記録が実現できる。更にデータの再生方法(透過/或いは反射型)により、基板1と同様の基板2(保護層)、或いは高反射率材料からなる反射層が構成される。
【0063】
記録時は単一ビームが使用され、この場合フェムト秒オーダーの超短パルス光を利用することができる。また再生時は、データ記録に使用するビームとは異なる波長、或いは低出力の同波長の光を用いることもできる。記録及び再生は、ビット単位/ページ単位のいずれにおいても実行可能であり、面光源や二次元検出器等を利用する並行記録/再生は、転送レートの高速化に有効である。
なお、本発明に従い同様に形成される三次元多層光メモリの形態としては、カード状、プレート状、テープ状、ドラム状等が挙げられる。
【0064】
なお、三次元多層光記録媒体の任意の層に焦点を合わせ、記録及び再生を実施することで、本発明の三次元光記録媒体として機能する。また、層間を保護層(中間層)で区切っていなくても、二光子吸収色素特性から深さ方向の三次元記録が可能である。
【0065】
本発明によれば、二光子吸収により高感度に光機能を誘発し、かつ同一波長の検出光でその変化が検出可能な二光子吸収材料、及びその光機能の付与及び検出方法が実現でき、小型で安価なレーザーを使った実用用途(三次元メモリ材料など)が実現可能となる。
また、本発明の前記二光子吸収材料を三次元光メモリ材料として用い、二光子波長を記録及び再生波長とすることにより、同一波長による二光子吸収光記録、再生が可能な三次元光メモリが実現可能となる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
下記構造式(A)で表されるジアザポルフィリン誘導体のテトラヒドロフラン溶液を調製し、以下に示す二光子吸収断面積の評価方法により、その二光子吸収断面積を測定した。結果を表1に示す。
【化28】

ただし、Prはプロピル基を表す。
【0068】
<二光子吸収断面積の測定方法>
二光子吸収断面積の測定システムの概略図を図5に示す。
・測定光源:フェムト秒チタンサファイアレーザ(波長:720nm〜920nm、パルス幅:100fs、繰り返し:80MHz、光パワー:800mW)
・測定方法:Zスキャン法(光源波長:780nm〜900nm、キュベット内径:1mm、測定光パワー:約500mW、繰り返し周波数:80MHz、対物レンズ:f=75mm、集光径:〜40μm)
・集光されている光路部分に試料溶液を充填した石英セルを置き、その位置を光路に沿って移動させることによりZ−scan測定を実施した。
【0069】
透過率を測定し、その結果から、下記理論式(I)により非線形吸収係数を求めた。
T=[ln(1+I0L0β)]/I0L0β ・・・・ (I)
ただし、前記理論式(I)中、Tは透過率(%)、I0は励起光密度[GW/cm]、L0は試料セル長[cm]、βは非線形吸収係数[cm/GW]を表す。
【0070】
求めた非線形吸収係数から、下記式(II)により二光子吸収断面積σ2を求めた。
σ2=1000×hνβ/NACβ ・・・・ (II)
ただし、前記式(II)中、σ2の単位は1GM=1×10−50cm・s・photon−1であり、hはプランク定数[J・s]、νは入射レーザー光の振動数[s−1]、NAはアボガドロ数、Cは溶液濃度[mol/L]を示す。
【0071】
次に、上記構造式(A)で表される化合物と、ポリスチレン(重量平均分子量=2,000)とを質量比1/1で混合したテトラヒドロフラン溶液を調製し、石英基板上にスピンコートして、厚み約1μmの薄膜を作製した。得られた薄膜について、以下のようにして、吸収スペクトル、蛍光強度及びその光学定数(屈折率(n)及び衰消係数(k))を測定した。結果を表2及び図6に示す。
更に、この薄膜を光劣化(キセノンランプ50,000lux、50時間放置)及び熱劣化(120℃、150時間放置)させた後、同様に吸収スペクトル、蛍光強度及び光学定数(屈折率(n)及び衰消係数(k))を測定した。結果を図6及び表2に示す。
【0072】
<吸収スペクトルの測定>
吸収スペクトルは分光光度計で測定した。
<蛍光強度の測定>
蛍光強度は蛍光光度計で測定した。
<光学定数(屈折率(n)及び衰消係数(k))の測定>
屈折率(n)及び衰消係数(k)は、分光エリプソメトリ法で測定した。
【0073】
表1の、最も大きな二光子吸収を示す二光子励起波長とその二光子吸収断面積の測定結果と、図6の吸収スペクトルから、上記構造式(A)で表される化合物が本発明の光学特性を有する二光子材料であることが分かった。
また、図6及び表2の結果から、吸収スペクトル変化及び蛍光強度変化(相対値)と光学定数変化は、二光子吸収材料の初期値と、二光子吸収により得られたエネルギーで分解し生成されると想定される物質との光学特性変化を示し、その変化が二光子励起波長(同一波長)で検出可能なことを示す。
【0074】
(実施例2)
下記構造式(B)で表されるテトラアザポルフィリン誘導体について実施例1と同様の評価を行った。二光子吸収断面積の測定結果を表1に、吸収スペクトル変化を図7に、蛍光強度変化(相対値)と光学定数変化の結果を表2に示す。
【化29】

【0075】
(実施例3)
下記構造式(C)で表されるポルフィリン誘導体について実施例1と同様の評価を行った。二光子吸収断面積の測定結果を表1に、吸収スペクトル変化を図7に、蛍光強度変化(相対値)変化と光学定数変化を表2に示す。
【化30】

ただし、式中、Prはプロピル基を表す。
【0076】
(実施例4)
構造式(D)で表されるアヌレノン誘導体について実施例1と同様の評価を行った。二光子吸収断面積の測定結果を表1に、蛍光強度変化(相対値)と光学定数変化を表2に示す。
【化31】

【0077】
(比較例1)
従来の材料として、下記構造式(E)で表されるジアリルエテン誘導体について実施例1と同様の評価を行った。二光子吸収断面積の測定結果を表1に示す。
【化32】

【0078】
(比較例2)
大きな二光子吸収断面積を有する材料として、下記構造式(F)で表されるスチリル誘導体について実施例1と同様の評価を行った。二光子吸収断面積の測定結果を表1に、蛍光強度変化(相対値)と光学定数変化を表2に示す。
【化33】

【0079】
【表1】

表1の結果から、実施例1〜4は、従来材料(比較例1)よりも一桁以上高感度な二光子吸収材料であることが分かった。
【0080】
【表2】

*n:屈折率、k:衰消係数、分解率:%、蛍光強度:相対値、×:二光子励起波長で蛍光検出できない
なお、光学特性変化量は、当然分解率に依存し、分解率は加速劣化条件(レーザ照射条件に対応)に依存する。
【0081】
表2の結果から、実施例1〜4は、大きな二光子吸収断面積を有する比較例2(△n〜0、短波長域で発光し二光子励起波長では蛍光検出できない)よりも大きな光学特性変化を示すことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の二光子吸収材料は、二光子吸収により高感度に光機能を誘発し、かつ同一波長の検出光でその変化(衰消係数変化、屈折率変化、蛍光強度)が検出可能であり、二光子励起波長を記録及び再生波長とすることにより、同一波長による光記録、再生が可能となり、例えば三次元光メモリ材料、三次元光メモリシステム、発光素子、光電変換素子などの用途に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1は、本発明の二光子吸収材料の吸収特性を示す図である。
【図2】図2は、三次元メモリシステムの概略図である。
【図3】図3は、ポルフィリン化合物の光学定数スペクトルを示す図である。
【図4】図4は、サリチリデンアニリン類サーモクロミズム材料の吸収スペクトルを示す図である。
【図5】図5は、二光子吸収断面積の測定システムを示す概略図である。
【図6】図6は、実施例1のジアザポルフィリン化合物の吸収スペクトルを示す図である。
【図7】図7は、実施例2のテトラアザポルフィリン化合物の吸収スペクトルを示す図である。
【図8】図8は、実施例3のポルフィリン化合物の吸収スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0084】
1 基板
2 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二光子吸収の最大吸収波長近傍にある第一の線形吸収帯と、該第一の線形吸収帯よりも長波長域にある第二の線形吸収帯とを有し、二光子吸収により前記第二の線形吸収帯の光学特性が変化することを特徴とする二光子吸収材料。
【請求項2】
変化する光学特性が、衰消係数、屈折率、蛍光強度及び蛍光波長のいずれかである請求項1に記載の二光子吸収材料。
【請求項3】
二光子吸収励起波長における第二の線形吸収帯の屈折率(n)が1.65以上であり、かつ衰消係数(k)が0.05以下である請求項1から2のいずれかに記載の二光子吸収材料。
【請求項4】
二光子吸収断面積が200GM(×10−50cm・s・molecule−1・photon−1)以上である請求項1から3のいずれかに記載の二光子吸収材料。
【請求項5】
共役結合が環状に連結した化学構造部位を有する請求項1から4のいずれかに記載の二光子吸収材料。
【請求項6】
アザアヌレン化合物である請求項1から5のいずれかに記載の二光子吸収材料。
【請求項7】
アヌレン化合物である請求項1から5のいずれかに記載の二光子吸収材料。
【請求項8】
アヌレノン化合物である請求項1から5のいずれかに記載の二光子吸収材料。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の二光子吸収材料に、二光子吸収励起波長により第二の線形吸収帯の光学特性を変化させて、光機能を付与することを特徴とする光機能付与方法。
【請求項10】
請求項1から8のいずれかに記載の二光子吸収材料に、二光子吸収励起波長により第二の線形吸収帯の光学特性を変化させて、同一波長で検出することを特徴とする光機能検出方法。
【請求項11】
請求項1から8のいずれかに記載の二光子吸収材料に、二光子吸収励起波長により第二の線形吸収帯の光学特性を変化させることにより情報を記録することを特徴とする光記録方法。
【請求項12】
請求項1から8のいずれかに記載の二光子吸収材料に、二光子吸収励起波長により第二の線形吸収帯の光学特性を変化させて、同一波長の再生光により情報を再生することを特徴とする光再生方法。
【請求項13】
請求項1から8のいずれかに記載の二光子吸収材料を含有することを特徴とする光記録材料。
【請求項14】
請求項1から8のいずれかに記載の二光子吸収材料を含む記録層中における入射光に対して深さ方向に記録再生可能な三次元光記録媒体。

【図1】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−233413(P2008−233413A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−71481(P2007−71481)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】