説明

二成分系常温硬化型液状ウレタン組成物およびそれを含む接着材料

【課題】被着体の少なくとも一方が水中に存在する場合にも適用することができるウレタン系の接着材料に用いられる二成分系常温硬化型液状ウレタン組成物の提供。
【解決手段】ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてなる液状のウレタンプレポリマーを含有する主剤(A1)と、水酸基あたりの数平均分子量が1,400以下のポリエーテルポリオールの含量が60〜100質量%であるポリエーテルポリオールを含むポリオールを含有する硬化剤(B1)とを有し、前記主剤(A1)および前記硬化剤(B1)の少なくとも一方のポリオールが、前記主剤(A1)および前記硬化剤(B1)のポリオールの合計質量に対して、40〜90質量%のポリブタジエンポリオールを含む、先打ち用の二成分系常温硬化型液状ウレタン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二成分系常温硬化型液状ウレタン組成物およびそれを含む接着材料に関し、特に、水中での接着を可能とする接着材料およびそれに用いられる二成分系常温硬化型液状ウレタン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、接着剤として種々のタイプのものが開発されている。例えば、熱可塑性樹脂系接着剤、熱硬化性樹脂系接着剤、ゴム系接着剤、水溶性樹脂系接着剤、ホットメルト接着剤、エマルジョン系接着剤が挙げられる。これらの接着剤は、用途、要求される特性等に応じて適宜選択され使用される。例えば、被着体の接着面が湿潤している場合には、エポキシ樹脂系接着剤組成物が接着強度等に優れる点で最も広く使用されている。
【0003】
近年の技術革新、接着剤用途の拡張等により、被着体の接着面が湿潤している場合だけでなく、被着体の少なくとも一方が水中に存在する場合にも接着剤が用いられるようになってきている。例えば、水中のコンクリート建材等の補修;タコツボの補修;漁場、水槽等に設けられる漁礁の設置または補修が挙げられる。
【0004】
これらの用途に上述したエポキシ樹脂系接着剤組成物を用いることも可能ではあるが、エポキシ樹脂系接着剤組成物は、一般に、接着性、耐熱性、耐水性等に優れるものの、硬化物が硬くて脆く、柔軟性に乏しいという欠点を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記欠点を克服する接着剤組成物として、強力な接着性と、上記したエポキシ樹脂系接着剤組成物では実現し得ない優れた柔軟性、混合時に発熱しないこと等とを兼ね備えたウレタン系接着剤組成物が期待されているが、ウレタン系接着剤組成物は、水との反応性が高いポリイソシアネートや親水性を持つポリオール等をその構成成分とするため、被着体の少なくとも一方が水中に存在する場合にも適用できるウレタン系接着剤組成物は知られていない。
【0006】
即ち、本発明は、被着体の少なくとも一方が水中に存在する場合にも適用することができるウレタン系の接着材料およびそれに用いられる二成分系常温硬化型液状ウレタン組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、被着体の少なくとも一方が水中に存在する場合にも接着させることができる、接着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、水中でも接着可能な接着材料について鋭意検討した結果、特定の二成分系常温硬化型液状ウレタン組成物と、別の特定の二成分系常温硬化型液状ウレタン組成物とを組み合わせて用いると、水中でも被着体を接着させられることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(3)を提供する。
【0009】
(1)ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてなる液状のウレタンプレポリマーを含有する主剤(A1)と、水酸基あたりの数平均分子量が1,400以下のポリエーテルポリオールの含量が60〜100質量%であるポリエーテルポリオールを含むポリオールを含有する硬化剤(B1)とを有し、
前記主剤(A1)および前記硬化剤(B1)の少なくとも一方のポリオールが、前記主剤(A1)および前記硬化剤(B1)のポリオールの合計質量に対して、40〜90質量%のポリブタジエンポリオールを含む、先打ち用の二成分系常温硬化型液状ウレタン組成物。
【0010】
(2)上記(1)に記載の先打ち用の二成分系常温硬化型液状ウレタン組成物と;
水酸基あたりの数平均分子量が1,900〜4,000のポリエーテルポリオールと、ジフェニルメタンジイソシアネートを30〜80質量%含むポリイソシアネートとを反応させてなる液状のウレタンプレポリマーを含有する主剤(A2)と、活性水素原子を2個以上持つ化合物を含有する硬化剤(B2)とを有する後打ち用の二成分系常温硬化型液状ウレタン組成物と
を有する接着材料。
【0011】
(3)二つの被着体を接着させる、接着方法であって、
上記(1)に記載の先打ち用の二成分系常温硬化型液状ウレタン組成物が塗布され常温で硬化した一方の被着体を、水中に投入する工程と、
硬化した前記先打ち用の二成分系常温硬化型液状ウレタン組成物の上に、上記(2)に記載の後打ち用の二成分系常温硬化型液状ウレタン組成物を塗布する工程と、
塗布された前記後打ち用の二成分系常温硬化型液状ウレタン組成物に、他方の被着体を接触させ、硬化させて接着させる工程と
を具備する、接着方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の二成分系常温硬化型液状ウレタン組成物を用いた接着材料は、被着体の少なくとも一方が水中に存在する場合にも適用することができ、かつ、接着性に優れる。
また、本発明の接着方法によれば、被着体の少なくとも一方が水中に存在する場合にも、接着させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
初めに、本発明の接着材料について説明する。
本発明の接着材料は、本発明の先打ち用の二成分系常温硬化型液状ウレタン組成物と、別の後打ち用の二成分系常温硬化型液状ウレタン組成物とを有する。これらを組み合わせて用いることにより、被着体の少なくとも一方が水中に存在する場合にも適用することができ、かつ、接着性にも優れる。
【0014】
以下、本発明の接着材料に用いられる二つの二成分系常温硬化型液状ウレタン組成物について説明する。
本発明の接着材料に用いられる本発明の先打ち用の二成分系常温硬化型液状ウレタン組成物(以下、単に「先打ち用組成物(I)」という。)は、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてなる液状のウレタンプレポリマーを含有する主剤(A1)と、水酸基あたりの数平均分子量が1,400以下のポリエーテルポリオールの含量が60〜100質量%であるポリエーテルポリオールを含むポリオールを含有する硬化剤(B1)とを有する。
【0015】
主剤(A1)は、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてなる液状のウレタンプレポリマーを含有する。
前記ウレタンプレポリマーを構成するポリオールは、水酸基を2個以上持つ化合物であれば特に限定されず、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、その他のポリオール、これらの混合ポリオールが挙げられる。その他のポリオールとしては、アミン変性ポリエーテルポリオール;ポリマーポリオール;ポリカーボネートポリオール;ポリブタジエンポリオール;水素添加されたポリブタジエンポリオール;アクリルポリオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等の低分子ポリオールが挙げられる。
【0016】
中でも、水中でも適用することができ、かつ、接着性に優れる点で、ポリエーテルポリオールであるのが好ましい。ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、4,4′−ジヒドロキシフェニルプロパン、4,4′−ジヒドロキシフェニルメタン、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等の多価アルコールの1種または2種以上に、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等の1種または2種以上を付加して得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。具体的には、ポリプロピレンエーテルジオール、ポリエチレンエーテルジオール、ポリプロピレンエーテルトリオール、テトラヒドロフランの開環重合によって得られるポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0017】
主剤(A1)に含まれるポリエーテルポリオールは、その水酸基数、数平均分子量等を特に限定されない。
【0018】
ポリエーテルポリオールは、定法にしたがって製造することができる。
また、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、ポリプロピレンエーテルトリオール(例えば、G7000、旭硝子(株)製、Mn7,000;G5000、旭硝子(株)製、Mn5,000;G3000、旭硝子(株)製、Mn3,000)、ポリプロピレンエーテルジオール(例えば、D4000、旭硝子(株)製、Mn4,000;D2,000、旭硝子(株)製,Mn2,000)が挙げられる。
【0019】
これらのポリエーテルポリオールは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
主剤(A1)のポリオールには、上記ポリエーテルポリオールのほかに、後述するポリブタジエンポリオールが特定量含まれているのが接着性に優れる点で好ましい。詳しくは後述する。
【0021】
主剤(A1)に含まれるウレタンプレポリマーを構成するポリイソシアネートは、イソシアネート基を2個以上有する化合物であれば特に限定されず、ウレタンプレポリマーに通常用いられるポリイソシアネートが挙げられる。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI)、p−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート(TODI)等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の脂肪族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6XDI(水添XDI)、H12MDI(水添MDI)等の脂環式ポリイソシアネート;上記各ポリイソシアネートのカルボジイミド変性ポリイソシアネートまたはこれらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネートが挙げられる。
中でも、反応性、安全性、ハンドリング性等の点で、MDIが好ましい。
【0022】
これらのポリイソシアネートは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
主剤(A1)に含まれるウレタンプレポリマーは、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られる。ウレタンプレポリマーの製造としては、通常のウレタンプレポリマーの製造方法を用いることができる。例えば、上記ポリオールとポリイソシアネートとを、50〜100℃で加熱かくはんすることにより得ることができる。必要に応じて、有機スズ化合物、有機ビスマス、アミン等のウレタン化触媒を用いてもよい。このとき、ポリオールの水酸基に対するポリイソシアネートのイソシアネート基のモル比(NCO/OH比)は、1.4〜3.0とするのが好ましく、1.7〜2.5とするのがより好ましい。上記範囲であると、ウレタンプレポリマーの粘度が増加することなく硬化物の物性が良好となる。
【0024】
ウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有率は、特に限定されないが、例えば、1〜20質量%であるのが好ましく、2〜14質量%であるのがより好ましい。
【0025】
ウレタンプレポリマーは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
主剤(A1)は、上記ウレタンプレポリマーのほかに、後述する各種添加剤等を含有することができる。各種添加剤の含有量は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0027】
硬化剤(B1)は、水酸基あたりの数平均分子量が1,400以下のポリエーテルポリオールの含量が60〜100質量%であるポリエーテルポリオールを含むポリオールを含有する。
本発明において、ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography:GPC)により測定した重量平均分子量(標準ポリスチレン換算)である。測定にはテトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いるのが好ましい。
また、水酸基あたりの数平均分子量は、数平均分子量を1分子中に存在する水酸基数で除して得られる値である。
【0028】
硬化剤(B1)に含有されるポリエーテルポリオールは、主剤(A1)に用いることができるポリエーテルポリオールと基本的に同様であるが、水酸基あたりの数平均分子量が1,400以下のポリエーテルポリオールを、60〜100質量%の割合で含有する。これにより、水中で打ち継ぎ可能な硬化物が得られ、後述する後打ち用の二成分系常温硬化型液状ウレタン組成物(以下、単に「後打ち用組成物(II)」という。)との接着性が優れたものになる。
【0029】
全ポリエーテルポリオール中に60〜100質量%の割合で含まれるポリエーテルポリオールは、水酸基1個あたりの数平均分子量が1,400以下である。上記範囲であると、後打ち用組成物(II)との打ち継ぎ接着性能が優れたものになる。打ち継ぎ接着性能により優れる点で、水酸基1個あたりの数平均分子量は、100〜1,300であるのが好ましく、200〜1,200であるのがより好ましい。
【0030】
上記数平均分子量を持つポリエーテルポリオールとしては、主剤(A1)に用いることができるポリエーテルポリオールとして上述した中でも、例えば、ポリプロピレンエーテルトリオール(例えば、G3000、旭硝子(株)製、Mn3,000、水酸基あたりの数平均分子量1,000)、ポリプロピレンエーテルジオール(例えば、D2,000、旭硝子(株)製,Mn2,000、水酸基あたりの数平均分子量1,000;D700、旭硝子(株)製、Mn700、水酸基あたりの数平均分子量350)が挙げられる。
【0031】
上記数平均分子量を持つポリエーテルポリオールは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
上記数平均分子量を持つポリエーテルポリオール以外のポリエーテルポリオールは、特に限定されず、主剤(A1)に用いることができるポリエーテルポリオールとして上述したものが挙げられ、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
上記数平均分子量を持つポリエーテルポリオールは、全ポリエーテルポリオールの合計質量に対して60〜100質量%の割合で含まれる。上記範囲であると、被着体の少なくとも一方が水中に存在する場合でも適用することができ、かつ、接着性にも優れる。接着性により優れる点で、63〜100質量%であるのが好ましく、66〜100質量%であるのがより好ましい。
【0034】
硬化剤(B1)に含まれるポリオールには、上記数平均分子量を持つポリエーテルポリオールを特定量含むポリエーテルポリオールのほかに、ポリエーテルポリオール以外のポリオール、例えば、アミン変性ポリエーテルポリオールを含むことができる。その含量は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。また、ポリオールには、後述するポリブタジエンポリオールが特定量含まれているのが接着性に優れる点で好ましい。詳しくは後述する。
【0035】
硬化剤(B1)は、上記ポリオールのほかに、後述する各種添加剤等を含有することができる。各種添加剤の含有量は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0036】
硬化剤(B1)は、例えば、上記ポリオール、必要により各種添加剤等を、ロール、ニーダー、押出し機、万能かくはん機等により混合して製造することができる。
【0037】
先打ち用組成物(I)の主剤(A1)および硬化剤(B1)においては、前記主剤(A1)および前記硬化剤(B1)の少なくとも一方のポリオールが、前記主剤(A1)および前記硬化剤(B1)のポリオールの合計質量に対して、40〜90質量%のポリブタジエンポリオールを含む。これにより、被着体が水中に存在する場合でも、先打ち用組成物(I)と後述する後打ち用組成物(II)との接着性に優れる。接着性により優れる点で、50〜80質量%であるのが好ましく、55〜70質量%であるのがより好ましい。
【0038】
前記ポリブタジエンポリオールは、主剤(A1)および硬化剤(B1)の一方に含まれれば上記効果を奏するが、これの硬化物の疎水性が高くなり先打ち用組成物(I)と後述する後打ち用組成物(II)との接着性に優れるため、先打ち用組成物(I)に含まれるのが好ましく、両方に含まれるのがより好ましい。両方に含まれる場合の割合は、特に限定されず、主剤(A1)および硬化剤(B1)の全体として上記特定の割合となればよい。
【0039】
先打ち用組成物(I)は、上記した主剤(A1)と硬化剤(B1)とを有すれば、本発明の目的を損わない範囲で、第3成分として他の添加剤等を必要に応じて有していてもよい。
他の添加剤等としては、例えば、主剤(A1)のウレタンプレポリマー以外のポリマー、補強剤(充填剤)、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、溶剤、界面活性剤(レベリング剤を含む。)、分散剤、脱水剤、防錆剤、接着付与剤、帯電防止剤、フィラー等が挙げられる。
【0040】
先打ち用組成物(I)は、通常は、主剤(A1)と硬化剤(B1)とがそれぞれ別に(混合されずに)保存され、使用時に、主剤(A1)、硬化剤(B1)および必要により上記各種添加剤等を、ロール、ニーダー、押出し機、万能かくはん機等により混合して製造し、使用することができる。
【0041】
本発明の接着材料に用いられる後打ち用組成物(II)は、水酸基あたりの数平均分子量が1,900〜4,000のポリエーテルポリオールと、ジフェニルメタンジイソシアネートを30〜80質量%含むポリイソシアネートとを反応させてなる液状のウレタンプレポリマーを含有する主剤(A2)と、活性水素原子を2個以上持つ化合物を含有する硬化剤(B2)とを有する。
【0042】
主剤(A2)は、水酸基あたりの数平均分子量が1,900〜4,000のポリエーテルポリオールと、ジフェニルメタンジイソシアネートを30〜80質量%含むポリイソシアネートとを反応させてなる液状のウレタンプレポリマーを含有する。
【0043】
前記ウレタンプレポリマーを構成するポリエーテルポリオールは、上記した先打ち用組成物(I)の主剤(A1)に用いられるポリエーテルポリオールと基本的に同様であるが、水酸基1個あたりの数平均分子量が1,900〜4,000である。前記数平均分子量が1,900〜4,000であると、先打ち用組成物(I)との打ち継ぎ接着性能に優れる。打ち継ぎ接着性能により優れる点で、水酸基1個あたりの数平均分子量は、1,900〜3,500であるのが好ましく、1,900〜3,000であるのがより好ましい。
【0044】
上記数平均分子量を持つポリエーテルポリオールとしては、主剤(A1)に用いることができるポリエーテルポリオールとして上述した中でも、例えば、ポリプロピレンエーテルトリオール(G7000、Mn7,000、水酸基あたりの数平均分子量2,333、旭硝子(株)製)、ポリプロピレンエーテルジオール(D4000、旭硝子(株)製、Mn4,000、水酸基あたりの数平均分子量2,000)が挙げられる。
【0045】
上記数平均分子量を持つポリエーテルポリオールは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
主剤(A2)には、上記ポリエーテルポリオールのほかに、主剤(A1)で説明したポリエステルポリオール、その他のポリオール等が含まれていてもよく、ポリブタジエンポリオールが含まれるのが接着性に優れる点で好ましい。
これらのポリオールは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。その含量は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0047】
主剤(A2)に含有されるウレタンプレポリマーを構成するポリイソシアネートは、上述した先打ち用組成物(I)に用いられる主剤(A1)に含まれるウレタンプレポリマーを構成するポリイソシアネートと基本的に同様であるが、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を30〜80質量%含む。MDIを特定量含有することにより、後打ち用組成物(II)の反応性が高くなり水中での接着が可能となる。
【0048】
上記MDIとしては、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI)およびこれらの混合物のいずれも用いることができる。MDI以外のポリイソシアネートとしては、特に限定されず、例えば、上記先打ち用組成物(I)の主剤(A1)で説明したポリイソシアネートが挙げられる。
【0049】
ポリイソシアネートにおけるMDIの含有率は、30〜80質量%である。これにより、被着体が水中に存在する場合でも接着性に優れる。接着性により優れる点で、30〜70質量%であるのが好ましく、30〜60質量%であるのがより好ましい。
【0050】
主剤(A2)に含まれるウレタンプレポリマーは、上記ポリエーテルポリオールと上記ポリイソシアネートとを上記先打ち用組成物(I)の主剤(A1)のウレタンプレポリマーと同様に反応させて得ることができる。
【0051】
ウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有率は、特に限定されないが、例えば、1〜10質量%であるのが好ましく、1.5〜5質量%であるのがより好ましい。
【0052】
ウレタンプレポリマーは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
主剤(A2)は、上記ウレタンプレポリマーのほかに、先打ち用組成物(I)で説明した各種添加剤等を含有することができる。各種添加剤の含有量は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0054】
硬化剤(B2)は、活性水素原子を2個以上持つ化合物を含有する。前記活性水素原子を2個以上持つ化合物としては、特に限定されず、例えば、ポリオール、ポリアミン等が挙げられる。中でも、先打ち用組成物(I)で説明したポリオールが主剤(A2)との相溶性性に優れる点で好ましく、ポリブタジエンポリオール、ポリエーテルポリオールがよりに好ましい。これらの活性水素原子を2個以上持つ化合物は、官能基数、数平均分子量等を特に限定されない。
【0055】
活性水素原子を2個以上持つ化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
硬化剤(B2)は、活性水素原子を2個以上持つ化合物のほかに、先打ち用組成物(I)で説明した各種添加剤等を含有することができる。各種添加剤の含有量は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0057】
硬化剤(B2)は、例えば、活性水素原子を2個以上持つ化合物、必要により各種添加剤等を、ロール、ニーダー、押出し機、万能かくはん機等により混合して製造することができる。
【0058】
後打ち用組成物(II)は、上記した主剤(A1)と硬化剤(B1)とを有すれば、本発明の目的を損わない範囲で、第3成分として先打ち用組成物(I)で説明した他の添加剤等を必要に応じて有していてもよい。
【0059】
後打ち用組成物(II)は、通常は、主剤(A2)と硬化剤(B2)とがそれぞれ別に(混合されずに)保存され、使用時に、主剤(A2)、硬化剤(B2)および必要により上記各種添加剤等を、ロール、ニーダー、押出し機、万能かくはん機等により混合して製造し、使用することができる。
【0060】
後打ち用組成物(II)は、水中に存在する上記先打ち用組成物(I)の硬化物の上に塗布され、他方の被着体を接した状態で水中で硬化する。そのため、後打ち用組成物(II)の比重は、1.0を超えるのが好ましい。
【0061】
本発明の接着材料は、後述する本発明の接着方法に好適に用いられる。
【0062】
つぎに、本発明の接着方法について説明する。
本発明の接着方法は、二つの被着体を接着させる接着方法であって、上記先打ち用組成物(I)が塗布され常温で硬化した一方の被着体を、水中に投入する工程と、硬化した前記先打ち用組成物(I)の上に、上記後打ち用組成物(II)を塗布する工程と、塗布された前記後打ち用組成物(II)に、他方の被着体を接触させ、硬化させて接着させる工程とを具備する、接着方法である。
【0063】
本発明の接着方法においては、第1に、上記先打ち用組成物(I)が塗布され常温で硬化した一方の被着体を、水中に投入する工程を行う。
本工程に用いられる先打ち用組成物(I)は、一方の被着体に塗布され、常温で硬化したものである。硬化の条件は、特に限定されないが、例えば、常温(20〜25℃程度)、50%RH以上の環境下が挙げられる。先打ち用組成物(I)を塗布する方法は、通常行われる方法を選択することができる。
【0064】
本発明の接着方法においては、第2に、硬化した前記先打ち用組成物(I)の上に、上記後打ち用組成物(II)を塗布する工程を行う。後打ち用組成物(II)を塗布する方法は、通常行われる方法を選択することができる。
【0065】
本発明の接着方法においては、第3に、塗布された前記後打ち用組成物(II)に、他方の被着体を接触させ、硬化させて接着させる工程を行う。
本工程においては、後打ち用組成物(II)の硬化により、硬化した先打ち用組成物(I)と後打ち用組成物(II)とが接着した状態となり、この両者の接着を介して、二つの被着体が接着する。
【0066】
本発明の接着方法においては、被着体の表面処理、水中に存在する硬化した先打ち用組成物(I)の接着表面の処理等を行うことができる。この場合、接着方法で通常行われる処理等を選択することができる。
【0067】
本発明の接着材料および本発明の接着方法は、水中で接着させる用途であれば、特に限定されず、好適に用いられる。例えば、水中のコンクリート建材等の補修;タコツボの補修;漁場、水槽等に設けられる漁礁の設置または補修に好適に用いられる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されない。
【0069】
<実施例1〜4および比較例1〜21>
1.先打ち用組成物(I)の調製
まず、先打ち用組成物(I−1)〜(I−5)に用いられる各主剤(A1)を第1表および以下に示す配合でそれぞれ調製した。
即ち、ポリブタジエンポリオール(R−45HT、出光石油化学(株)製、Mn2,800、水酸基価46.6mgKOH/g)800質量部と、ポリプロピレンエーテルジオール(D4000、旭硝子(株)製、Mn4,000、水酸基価26.8mgKOH/g)315質量部と、ポリプロピレンエーテルトリオール(G3000、旭硝子(株)製、Mn3,000、水酸基価55.4mgKOH/g)225質量部と、TDI(2,4−TDIおよび2,6−TDIの混合物(2,4−TDI/2,6−TDI=80/20(質量比)、TD180、三菱化学ダウ(株)製)134.9質量部と、MDI(ISONATE143LJ、ダウ・ポリウレタン日本(株)製、NCO量28.9%)578質量部と、フタル酸ジイソノニル(サンソサイザーDINP、新日本理化(株)製)295質量部とを、80℃で10時間加熱混合し、各主剤(A1)をそれぞれ得た。
得られた主剤は液状であり、それに含まれるウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有率は8.03質量%であった。
【0070】
つぎに、先打ち用組成物(I−1)〜(I−5)に用いられる各硬化剤(B1)を、第1表に示す配合でそれぞれ調製した。
即ち、ポリブタジエンポリオール(R−45HT)50質量部と、ポリブタジエンポリオール(R−15HT、出光石油化学(株)製、Mn210、水酸基価102.1mgKOH/g)100質量部と、アミン変性ポリエーテルポリオール(PA400、第一工業製薬(株)製、水酸基価420mgKOH/g)80質量部と、炭酸カルシウム(NS#100、日東粉化工業(株)製)900質量部と、ポリプロピレンエーテルトリオール(G5000、旭硝子(株)製、Mn5,000、水酸基価33mgKOH/g)の第1表に示す質量部と、ポリプロピレンエーテルトリオール(G3000、旭硝子(株)製、Mn3,000、水酸基価56mgKOH/g)の第1表に示す質量部と、スズ触媒(ジブチルスズジラウレート、DBTDL、東京化成工業(株)製)0.5質量部とを、室温で1時間混合させ、各硬化剤(B1)をそれぞれ得た。
得られた硬化剤はいずれも液状であった。
【0071】
各硬化剤において、ポリエーテルポリオール(ポリプロピレンエーテルトリオールG5000およびG3000)の合計質量に対するポリプロピレンエーテルトリオール(G3000、水酸基あたりの数平均分子量が1,000)の質量比を算出し第1表の「硬化剤(B1)」の欄に「G3000含量」として示した。
【0072】
上記で得られた主剤(A1)と硬化剤(B1)を第1表に示す質量比((A1)/(B1))で、室温で5分間混合させ、先打ち用組成物(I−1)〜(I−5)をそれぞれ得た。
得られた組成物はいずれも液状であった。
【0073】
得られた先打ち用組成物(I−1)〜(I−5)において、主剤(A1)および硬化剤(B1)に含まれるポリオール(R−45HT、R−15HT、G5000、G3000、D2000およびPA400)の合計質量に対するポリブタジエンポリオール(R−45HT、R−15HT)の質量比を、主剤(A1)と硬化剤(B1)の質量比((A1)/(B1))を考慮して算出し、第1表中に「質量比」として記載した。
【0074】
【表1】

【0075】
2.後打ち用組成物(II)の調製
まず、後打ち用組成物(II−1)〜(II−5)に用いられる各主剤(A2)を第2表に示す配合でそれぞれ調製した。
即ち、ポリブタジエンポリオール(R−15HT)と、ポリプロピレンエーテルトリオール(G7000、旭硝子(株)製、Mn7,000、水酸基価23.6mgKOH/g)と、ポリプロピレンエーテルトリオール(G5000)と、ポリプロピレンエーテルジオール(D4000、旭硝子(株)製、Mn4,000、水酸基価28.1mgKOH/g)と、TDI(2,4−TDIおよび2,6−TDIの混合物(2,4−TDI/2,6−TDI=80/20(質量比)、TD180、三菱化学ダウ(株)製)と、MDI(ISONATE143LJ)と、フタル酸ジイソノニル(サンソサイザーDINP)とを、80℃で10時間加熱混合させ、各主剤(A2)をそれぞれ得た。
【0076】
得られた主剤(A2)において、イソシアネートの合計質量に対するMDIの含量を算出し、第2表の「主剤(A2)」の欄に「MDI含量」として示した。
得られた主剤は液状であり、それに含まれるウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有率を第2表の「主剤(A2)」の欄に「NCO%」として示した。
【0077】
つぎに、後打ち用組成物(II−1)〜(II−5)に用いられる各硬化剤(B2)を、第2表および以下に示す配合でそれぞれ調製した。
即ち、ポリブタジエンポリオール(R−45HT)37.5質量部と、ポリブタジエンポリオール(R−15HT)17.5質量部と、ポリプロピレンエーテルトリオール(G5000、旭硝子(株)製、Mn5,000、水酸基価33mgKOH/g)670質量部と、炭酸カルシウム(NS#100)1050質量部と、スズ触媒(DBTDL)1質量部とを、室温で1時間混合させ、各硬化剤(B2)をそれぞれ得た。
得られた硬化剤はいずれも液状であった。
【0078】
上記で得られた主剤(A2)と硬化剤(B2)とを第2表に示す質量比((A2)/(B2))で、室温で5分間混合させ、先打ち用組成物(II−1)〜(II−5)をそれぞれ得た。
得られた組成物はいずれも液状であった。
【0079】
【表2】

【0080】
3.水中での打ち継ぎ接着性試験
上記で得られた各先打ち用組成物(I)をポリカップに底から1/4程度まで入れ、23℃、50%RHの条件下で、168時間養生し、硬化させた。硬化後の先打ち用組成物(I)の表面の一部に、離型テープを貼付した後、水をポリカップに底から1/2程度まで入れた。
ついで、上記で得られた各後打ち用組成物(II)を、先打ち用組成物(I)とほぼ同量となるようにポリカップに入れた。後打ち用組成物(II)は、水中で沈み、先打ち用組成物(I)と接触した状態となった。この状態で、23℃、50%RHの条件下で、168時間養生し、後打ち用組成物(II)硬化させた。
その後、ポリカップを解体し、硬化した先打ち用組成物(I)および後打ち用組成物(II)を取り出した。取り出した硬化した先打ち用組成物(I)および後打ち用組成物(II)の間にある離型テープの箇所にカッターナイフで切れ目を入れ、両者を手ではく離させた。
このときの破壊状態を目視により確認した。
【0081】
結果を第3表に示す。第3表中、いずれかの組成物が凝集破壊した場合を「CF」とし、界面ではく離した場合を「AF」とし、先打ち用組成物と後打ち用組成物とが接着していなかった場合を「−」で示した。
【0082】
【表3】

【0083】
第3表から明らかなように、本発明の接着材料により、水中においても被着体同士を強固な接着力で接着することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてなる液状のウレタンプレポリマーを含有する主剤(A1)と、水酸基あたりの数平均分子量が1,400以下のポリエーテルポリオールの含量が60〜100質量%であるポリエーテルポリオールを含むポリオールを含有する硬化剤(B1)とを有し、
前記主剤(A1)および前記硬化剤(B1)の少なくとも一方のポリオールが、前記主剤(A1)および前記硬化剤(B1)のポリオールの合計質量に対して、40〜90質量%のポリブタジエンポリオールを含む、先打ち用の二成分系常温硬化型液状ウレタン組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の先打ち用の二成分系常温硬化型液状ウレタン組成物と;
水酸基あたりの数平均分子量が1,900〜4,000のポリエーテルポリオールと、ジフェニルメタンジイソシアネートを30〜80質量%含むポリイソシアネートとを反応させてなる液状のウレタンプレポリマーを含有する主剤(A2)と、活性水素原子を2個以上持つ化合物を含有する硬化剤(B2)とを有する後打ち用の二成分系常温硬化型液状ウレタン組成物と
を有する接着材料。
【請求項3】
二つの被着体を接着させる接着方法であって、
請求項1に記載の先打ち用の二成分系常温硬化型液状ウレタン組成物が塗布され常温で硬化した一方の被着体を、水中に投入する工程と、
硬化した前記先打ち用の二成分系常温硬化型液状ウレタン組成物の上に、請求項2に記載の後打ち用の二成分系常温硬化型液状ウレタン組成物を塗布する工程と、
塗布された前記後打ち用の二成分系常温硬化型液状ウレタン組成物に、他方の被着体を接触させ、硬化させて接着させる工程と
を具備する、接着方法。

【公開番号】特開2006−199882(P2006−199882A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−15147(P2005−15147)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】