説明

二次電池、電池パック、電動車両、電力貯蔵システム、電動工具および電子機器

【課題】優れた電池特性を得ることが可能な二次電池を提供する。
【解決手段】二次電池は、平坦面を有する外装部材の内部に正極および負極と共に非水電解液を備えており、その非水電解液は、メチレン環状炭酸エステルを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、正極および負極と共に非水電解液を備えた二次電池、ならびにその二次電池を用いた電池パック、電動車両、電力貯蔵システム、電動工具および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機または携帯情報端末機器(PDA)などの多様な電子機器が広く普及しており、その電子機器のさらなる小型化、軽量化および長寿命化が要望されている。これに伴い、電源として、電池、特に小型かつ軽量で高エネルギー密度を得ることが可能な二次電池の開発が進められている。この二次電池は、最近では、電子機器などに着脱可能に搭載される電池パック、電気自動車などの電動車両、家庭用電力サーバなどの電力貯蔵システム、または電動ドリルなどの電動工具に代表される多様な他の用途への適用も検討されている。
【0003】
二次電池としては、さまざまな充放電原理を利用して電池容量を得るものが提案されており、中でも、電極反応物質としてリチウムを用いたリチウム二次電池が有望視されている。鉛電池およびニッケルカドミウム電池などよりも高いエネルギー密度が得られるからである。このリチウム二次電池は、リチウムイオンの吸蔵放出を利用するリチウムイオン二次電池、およびリチウム金属の析出溶解を利用するリチウム金属二次電池である。
【0004】
二次電池は、正極および負極と共に電解液を備えており、その電解液は、非水溶媒および電解質塩を含んでいる。充放電反応の媒介として機能する電解液は、二次電池の性能に大きな影響を及ぼすことから、その電解液の組成に関しては、さまざまな検討がなされている。
【0005】
具体的には、電解液の還元分解反応を抑制するために、炭素間二重結合(メチレン基)を有する環状炭酸エステルを用いることが提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。このメチレン基を有する環状炭酸エステルとしては、4−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オンまたは4,4−ジメチル−5−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オンなどが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−058122号公報
【特許文献2】特表2010−533359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、二次電池が適用される電子機器などは益々高性能化および多機能化しているため、その二次電池の電池特性に関してさらなる改善が求められている。
【0008】
本技術はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、優れた電池特性を得ることが可能な二次電池、電池パック、電動車両、電力貯蔵システム、電動工具および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本技術の二次電池は、平坦面を有する外装部材の内部に正極および負極と共に非水電解液を備え、その非水電解液が下記の式(1)で表されるメチレン環状炭酸エステルを含むものである。また、本技術の電池パック、電動車両、電力貯蔵システム、電動工具および電子機器は、二次電池を備え、その二次電池が上記した本技術の二次電池と同様の構成を有するものである。
【0010】
【化1】

(R1およびR2は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R1およびR2は、互いに結合されていてもよい。)
【発明の効果】
【0011】
本技術の二次電池によれば、平坦面を有する外装部材の内部に非水電解液を備え、その非水電解液が式(1)に示したメチレン環状炭酸エステルを含んでいるので、優れた電池特性を得ることができる。また、本技術の二次電池を用いた電池パック、電動車両、電力貯蔵システム、電動工具または電子機器でも同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本技術の第1実施形態の二次電池(角型)の構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した二次電池のII−II線に沿った断面図である。
【図3】本技術の第1実施形態の他の二次電池(ラミネートフィルム型)の構成を表す分解斜視図である。
【図4】図3に示した巻回電極体のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】本技術の第2実施形態の二次電池(円筒型)の構成を表す断面図である。
【図6】図5に示した巻回電極体の一部を拡大して表す断面図である。
【図7】二次電池の適用例(電池パック)の構成を表すブロック図である。
【図8】二次電池の適用例(電動車両)の構成を表すブロック図である。
【図9】二次電池の適用例(電力貯蔵システム)の構成を表すブロック図である。
【図10】二次電池の適用例(電動工具)の構成を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本技術の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。

1.二次電池(第1実施形態)
(メチレン環状炭酸エステル+平坦面を有する外装部材)
1−1.リチウムイオン二次電池(角型)
1−2.リチウムイオン二次電池(ラミネートフィルム型)
1−3.リチウム金属二次電池(角型,ラミネートフィルム型)
2.二次電池(第2実施形態)
(メチレン環状炭酸エステル+ジ炭酸エステル化合物等)
2−1.リチウムイオン二次電池(円筒型)
2−2.リチウムイオン二次電池(角型,ラミネートフィルム型)
2−3.リチウム金属二次電池(円筒型,角型,ラミネートフィルム型)
3.二次電池(第3実施形態)
(メチレン環状炭酸エステル+ハロゲン化炭酸エステル)
3−1.リチウムイオン二次電池(円筒型)
3−2.リチウムイオン二次電池(角型,ラミネートフィルム型)
3−3.リチウム金属二次電池(円筒型,角型,ラミネートフィルム型)
4.二次電池(第4実施形態)
(メチレン環状炭酸エステルの構造限定)
4−1.リチウムイオン二次電池(円筒型)
4−2.リチウムイオン二次電池(角型,ラミネートフィルム型)
4−3.リチウム金属二次電池(円筒型,角型,ラミネートフィルム型)
5.二次電池(第5実施形態)
(メチレン環状炭酸エステル+不飽和環状炭酸エステル+混合比)
5−1.リチウムイオン二次電池(円筒型)
5−2.リチウムイオン二次電池(角型,ラミネートフィルム型)
5−3.リチウム金属二次電池(円筒型,角型,ラミネートフィルム型)
6.電解液の組成の適正化
7.二次電池の用途
7−1.電池パック
7−2.電動車両
7−3.電力貯蔵システム
7−4.電動工具
【0014】
<1.二次電池(第1実施形態)>
まず、本技術の第1実施形態の二次電池について説明する。
【0015】
<1−1.リチウムイオン二次電池(角型)>
図1および図2は二次電池の断面構成を表しており、図2では図1に示した二次電池のII−II線に沿った断面を示している。
【0016】
[二次電池の全体構成]
この二次電池は、電極反応物質であるリチウム(リチウムイオン)の吸蔵放出により電池容量が得られるリチウム二次電池(リチウムイオン二次電池)である。
【0017】
ここで説明する二次電池の電池構造は、いわゆる角型である。この二次電池は、主に、電池缶11の内部に電池素子20が収納されたものである。電池素子20は、セパレータ23を介して正極21と負極22とが積層されてから巻回されたものであり、電池缶11の形状に応じて扁平状になっている。セパレータ23には、液状の電解質である非水電解液(以下、単に「電解液」という。)が含浸されている。
【0018】
電池缶11は、少なくとも1つの平坦な外面(平坦面11M)を有する角型の外装部材である。この「平坦面」は、平常状態における外装部材の外面が平坦であるため、電池内のガス発生に起因して電池膨れが顕在化しやすい外観的性質を有しており、その電池膨れが顕在化しにくい湾曲面に対抗する概念である。この角型の外装部材は、図2に示したように、長手方向における断面が矩形型または略矩形型(一部に曲線を含む)の形状を有しており、矩形状だけでなくオーバル形状を有していてもよい。すなわち、角型の外装部材とは、矩形状または円弧を直線で結んだ略矩形状(長円形状)の開口部を有する有底矩形型または有底長円形状型の器状部材である。なお、図2では、電池缶11が矩形型の断面形状を有する場合を示している。
【0019】
この電池缶11は、例えば、鉄、アルミニウムまたはそれらの合金などの導電性材料により形成されており、電極端子として機能する場合もある。中でも、充放電時に固さ(変形しにくさ)を利用して電池缶11の膨れを抑えるために、アルミニウムよりも固い鉄などが好ましい。なお、電池缶11が鉄製である場合には、その表面にニッケルなどの金属材料が鍍金されていてもよい。
【0020】
また、電池缶11は、一端部が開放されると共に他端部が閉鎖された中空構造を有しており、その開放端部に取り付けられた絶縁板12および電池蓋13により密閉されている。絶縁板12は、電池素子20と電池蓋13との間に設けられていると共に、例えば、ポリプロピレンなどの絶縁性材料により形成されている。電池蓋13は、例えば、電池缶11と同様の材料により形成されており、その電池缶11と同様に電極端子として機能してもよい。
【0021】
電池蓋13の外側には、正極端子となる端子板14が設けられており、その端子板14は、絶縁ケース16を介して電池蓋13から電気的に絶縁されている。この絶縁ケース16は、例えば、ポリブチレンテレフタレートなどの絶縁性材料により形成されている。電池蓋13のほぼ中央に貫通孔が設けられており、その貫通孔には、端子板14と電気的に接続されると共にガスケット17を介して電池蓋13から電気的に絶縁されるように正極ピン15が挿入されている。このガスケット17は、例えば、絶縁性材料により形成されており、その表面にアスファルトが塗布されている。
【0022】
電池蓋13の周縁付近には、開裂弁18および注入孔19が設けられている。開裂弁18は、電池蓋13と電気的に接続されており、内部短絡、または外部からの加熱などに起因して電池の内圧が一定以上になると、電池蓋13から切り離されて内圧を開放するようになっている。注入孔19は、例えば、ステンレス鋼球などの封止部材19Aにより塞がれている。
【0023】
正極21の端部(例えば内終端部)には、アルミニウムなどの導電性材料により形成された正極リード24が取り付けられていると共に、負極22の端部(例えば外終端部)には、ニッケルなどの導電性材料により形成された負極リード25が取り付けられている。正極リード24は、正極ピン15の一端に溶接などされ、端子板14と電気的に接続されていると共に、負極リード25は、電池缶11に溶接などされ、その電池缶11と電気的に接続されている。
【0024】
[正極]
正極21は、例えば、正極集電体21Aの片面または両面に正極活物質層21Bが設けられたものである。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム、ニッケルまたはステンレスなどの導電性材料により形成されている。
【0025】
正極活物質層21Bは、正極活物質として、リチウムイオンを吸蔵放出可能である正極材料のいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、必要に応じて正極結着剤または正極導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。
【0026】
正極材料は、リチウム含有化合物であることが好ましい。高いエネルギー密度が得られるからである。このリチウム含有化合物は、例えば、リチウムと遷移金属元素とを構成元素として含む複合酸化物や、リチウムと遷移金属元素とを構成元素として含むリン酸化合物などである。中でも、遷移金属元素は、コバルト、ニッケル、マンガンまたは鉄などのいずれか1種類または2種類以上であることが好ましい。より高い電圧が得られるからである。その化学式は、例えば、Lix M1O2 またはLiy M2PO4 で表される。式中、M1およびM2は、1種類以上の遷移金属元素である。xおよびyの値は、充放電状態に応じて異なるが、通常、0.05≦x≦1.10、0.05≦y≦1.10である。
【0027】
リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物は、例えば、Lix CoO2 、Lix NiO2 、または下記の式(30)で表されるリチウムニッケル系複合酸化物などである。リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物は、例えば、LiFePO4 またはLiFe1-u Mnu PO4 (u<1)などである。高い電池容量が得られると共に、優れたサイクル特性も得られるからである。
【0028】
LiNi1-z z 2 …(30)
(MはCo、Mn、Fe、Al、V、Sn、Mg、Ti、Sr、Ca、Zr、Mo、Tc、Ru、Ta、W、Re、Yb、Cu、Zn、Ba、B、Cr、Si、Ga、P、SbおよびNbのうちの少なくとも1種であり、zは0.005<z<0.5である。)
【0029】
この他、正極材料は、例えば、酸化物、二硫化物、カルコゲン化物または導電性高分子などでもよい。酸化物は、例えば、酸化チタン、酸化バナジウムまたは二酸化マンガンなどである。二硫化物は、例えば、二硫化チタンまたは硫化モリブデンなどである。カルコゲン化物は、例えば、セレン化ニオブなどである。導電性高分子は、例えば、硫黄、ポリアニリンまたはポリチオフェンなどである。ただし、正極材料は、上記以外の他の材料でもよい。
【0030】
正極結着剤は、例えば、合成ゴムまたは高分子材料などのいずれか1種類または2種類以上である。合成ゴムは、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムまたはエチレンプロピレンジエンなどである。高分子材料は、例えば、ポリフッ化ビニリデンまたはポリイミドなどである。
【0031】
正極導電剤は、例えば、炭素材料などのいずれか1種類または2種類以上である。炭素材料は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックまたはケチェンブラックなどである。なお、正極導電剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料または導電性高分子などでもよい。
【0032】
[負極]
負極22は、例えば、負極集電体22Aの片面または両面に負極活物質層22Bが設けられたものである。
【0033】
負極集電体22Aは、例えば、銅、ニッケルまたはステンレスなどの導電性材料により形成されている。この負極集電体22Aの表面は、粗面化されていることが好ましい。いわゆるアンカー効果により、負極集電体22Aに対する負極活物質層22Bの密着性が向上するからである。この場合には、少なくとも負極活物質層22Bと対向する領域で負極集電体22Aの表面が粗面化されていればよい。粗面化の方法は、例えば、電解処理により微粒子を形成する方法などである。この電解処理とは、電解槽中で電解法により負極集電体22Aの表面に微粒子を形成して凹凸を設ける方法である。電解法により作製された銅箔は、一般に電解銅箔と呼ばれている。
【0034】
負極活物質層22Bは、負極活物質として、リチウムイオンを吸蔵放出可能である負極材料のいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、必要に応じて負極結着剤または負極導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。なお、負極結着剤および負極導電剤に関する詳細は、例えば、それぞれ正極結着剤および正極導電剤と同様である。この負極活物質層22Bでは、例えば、充放電時の意図しないリチウム金属の析出を防止するために、負極材料の充電可能な容量は正極21の放電容量よりも大きくなっている。
【0035】
負極材料は、例えば、炭素材料である。リチウムイオンの吸蔵放出時における結晶構造の変化が非常に少ないため、高いエネルギー密度および優れたサイクル特性が得られるからである。また、負極導電剤としても機能するからである。この炭素材料は、例えば、易黒鉛化性炭素、(002)面の面間隔が0.37nm以上の難黒鉛化性炭素、または(002)面の面間隔が0.34nm以下の黒鉛などである。より具体的には、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素繊維、有機高分子化合物焼成体、活性炭またはカーボンブラック類などである。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスまたは石油コークスなどが含まれる。有機高分子化合物焼成体は、フェノール樹脂またはフラン樹脂などの高分子化合物が適当な温度で焼成(炭素化)されたものである。この他、炭素材料は、約1000℃以下で熱処理された低結晶性炭素または非晶質炭素でもよい。なお、炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状または鱗片状のいずれでもよい。
【0036】
この他、負極材料は、例えば、金属酸化物または高分子化合物などでもよい。金属酸化物は、例えば、酸化鉄、酸化ルテニウムまたは酸化モリブデンなどである。高分子化合物は、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリンまたはポリピロールなどである。ただし、負極材料は、上記以外の他の材料でもよい。
【0037】
負極活物質層22Bは、例えば、塗布法、気相法、液相法、溶射法または焼成法(焼結法)、あるいはそれらの2種類以上の方法により形成されている。塗布法とは、例えば、粒子状の負極活物質を負極結着剤などと混合したのち、有機溶剤などの溶媒に分散させてから塗布する方法である。気相法は、例えば、物理堆積法または化学堆積法などである。具体的には、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、熱化学気相成長、化学気相成長(CVD)法またはプラズマ化学気相成長法などである。液相法は、例えば、電解鍍金法または無電解鍍金法などである。溶射法とは、溶融状態または半溶融状態の負極活物質を噴き付ける方法である。焼成法とは、例えば、塗布法により塗布したのち、負極結着剤などの融点よりも高い温度で熱処理する方法である。焼成法に関しては、公知の手法を用いることができる。例えば、雰囲気焼成法、反応焼成法またはホットプレス焼成法などである。
【0038】
[セパレータ]
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離して、両極の接触に起因する電流の短絡を防止しながらリチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ23は、例えば、合成樹脂またはセラミックからなる多孔質膜であり、2種類以上の多孔質膜が積層された積層膜でもよい。合成樹脂は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンまたはポリエチレンなどである。
【0039】
特に、セパレータ23は、例えば、上記した多孔質膜からなる基材層と、その基材層の片面または両面に設けられた高分子化合物層とを含んでいてもよい。正極21および負極22に対するセパレータ23の密着性が向上するため、巻回体である電池素子20の歪みが抑制されるからである。これにより、電解液の分解反応が抑制されると共に、基材層に含浸された電解液の漏液も抑制されるため、充放電を繰り返しても二次電池の抵抗が上昇しにくくなると共に電池膨れが抑制される。
【0040】
高分子化合物層は、例えば、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料を含んでいる。物理的強度に優れていると共に、電気化学的に安定だからである。ただし、高分子材料は、ポリフッ化ビニリデン以外の他の材料でもよい。この高分子化合物層は、例えば、高分子材料が溶解された溶液を準備したのち、その溶液を基材層の表面に塗布してから乾燥させることで形成される。なお、基材層を溶液中に浸漬させてから乾燥させてもよい。
【0041】
[電解液]
セパレータ23に含浸されている電解液は、下記の式(1)で表されるメチレン環状炭酸エステルを含んでいる。ただし、電解液は、非水溶媒および電解質塩などの他の材料を含んでいてもよい。
【0042】
【化2】

(R1およびR2は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R1およびR2は、互いに結合されていてもよい。)
【0043】
このメチレン環状炭酸エステルは、環構造(五員環)の外側に不飽和炭素結合(炭素間二重結合)であるメチレン基を有する炭酸エステル型の化合物である。電解液がメチレン環状炭酸エステルを含んでいるのは、主に初回の充電時に負極22の表面に強固な被膜が形成されるため、その負極22の反応性に起因する電解液の分解反応が抑制されるからである。これにより、初回の充放電時から高い電池容量が得られるため、初回充放電特性が向上する。また、初回の充放電時だけでなく、高温保存時でも電解液の分解反応に起因するガスの発生が抑制されるため、膨れ特性も向上する。特に、電池缶11が平坦面11Mを有することに起因して電池膨れが顕在化しやすい角型の二次電池では、その電池膨れが効果的に改善される。
【0044】
R1およびR2の種類は、上記したように水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であれば、特に限定されない。メチレン環状炭酸エステルが炭酸エステル型の環構造(五員環)と不飽和炭素結合(メチレン基)とを有していることで、R1およびR2の種類に依存せずに上記した利点が得られるからである。なお、R1およびR2は、同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。ただし、R1およびR2が互いに結合されることで、環構造が形成されていてもよい。
【0045】
ここで、「炭化水素基」とは、炭素および水素により構成される基の総称であり、直鎖状でもよいし、分岐状でもよい。また、「ハロゲン化炭化水素基」とは、上記した炭化水素基ハロゲン化され、すなわち炭化水素基のうちの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換されたものである。ハロゲン基は、例えば、フッ素基(−F)、塩素基(−Cl)、臭素基(−Br)またはヨウ素基(−I)などのいずれか1種類または2種類以上であり、中でも、フッ素基が好ましい。メチレン環状炭酸エステルに起因する被膜が形成されやすくなるからである。
【0046】
R1およびR2のうち、ハロゲン基の具体例は、例えば、「ハロゲン化炭化水素基」について説明した場合と同様である。1価の炭化水素基の具体例は、炭素数=1〜12のアルキル基、炭素数=2〜12のアルケニル基、炭素数=2〜12のアルキニル基、炭素数=6〜18のアリール基、または炭素数=3〜18のシクロアルキル基などである。また、1価のハロゲン化炭化水素基は、例えば、上記したアルキル基などのうちの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換されたものである。ただし、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基は、直鎖状でもよいし、1または2以上の側鎖を有する分岐状でもよい。メチレン環状炭酸エステルの溶解性および相溶性などを確保しつつ、上記した利点が得られるからである。ただし、R1およびR2は、上記以外の基でもよい。
【0047】
より具体的には、アルキル基は、例えば、メチル基(−CH3 )、エチル基(−C2 5 )またはプロピル基(−C3 7 )などである。アルケニル基は、例えば、ビニル基(−C2 3 )またはアリル基(−C3 5 )などである。アルキニル基は、例えば、エチニル基(−C2 1 )などである。アリール基は、例えば、フェニル基またはナフチル基などである。シクロアルキル基は、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基またはシクロオクチル基などである。アルキル基などがハロゲン化された基は、例えば、トリフルオロメチル基(−CF3 )またはペンタフルオロエチル基(−C2 5 )などである。上記した一連の基はあくまで一例であるため、他の基でもよい。
【0048】
「酸素含有炭化水素基」とは、炭素および水素と共に酸素により構成される基である。「ハロゲン化酸素含有炭化水素基」とは、上記した酸素含有炭化水素基のうちの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換されたものであり、そのハロゲン基の種類は、上記した通りである。
【0049】
1価の酸素含有炭化水素基は、例えば、炭素数=1〜12のアルコキシ基などである。また、1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基は、例えば、上記したアルコキシ基などのうちの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換されたものである。メチレン環状炭酸エステルの溶解性および相溶性などを確保しつつ、上記した利点が得られるからである。
【0050】
より具体的には、アルコキシ基は、例えば、メトキシ基(−OCH3 )またはエトキシ基(−OC2 5 )などである。アルコキシ基などがハロゲン化された基は、例えば、トリフルオロメトキシ基(−OCF3 )またはペンタフルオロエトキシ基(−OC2 5 )などである。
【0051】
なお、R1およびR2は、上記した一連の基の誘導体でもよい。この誘導体とは、一連の基に1または2以上の置換基が導入されたものであり、その置換基の種類は、任意でよい。このように誘導体でもよいことは、後述するR11以降についても同様である。
【0052】
メチレン環状炭酸エステルの具体例は、下記の式(1−1)〜式(1−31)で表される。なお、式(1)に示したR1とR2とは互いに結合されていてもよいため、式(1−31)に示したように、互いに結合されたR1およびR2はメチレン基(−CH2 −)でもよい。
【0053】
【化3】

【0054】
【化4】

【0055】
電解液中におけるメチレン環状炭酸エステルの含有量は、特に限定されないが、中でも、0.01重量%〜10重量%であることが好ましく、0.1重量%〜5重量%であることがより好ましい。より高い効果が得られるからである。
【0056】
非水溶媒は、有機溶媒などのいずれか1種類または2種類以上(上記したメチレン環状炭酸エステルを除く)を含んでいる。
【0057】
この有機溶媒は、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸メチルプロピル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、燐酸トリメチル、またはジメチルスルホキシドなどである。優れた電池容量、サイクル特性および保存特性などが得られるからである。
【0058】
中でも、環状炭酸エステルである炭酸エチレンおよび炭酸プロピレンと、鎖状炭酸エステルである炭酸ジメチル、炭酸ジエチルおよび炭酸エチルメチルとのうちの少なくとも1種類が好ましい。より優れた電池容量、サイクル特性および保存特性などが得られるからである。この場合には、炭酸エチレンまたは炭酸プロピレンなどの高粘度(高誘電率)溶媒(例えば比誘電率ε≧30)と、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルまたは炭酸ジエチルなどの低粘度溶媒(例えば粘度≦1mPa・s)との組み合わせがより好ましい。電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上するからである。
【0059】
特に、非水溶媒は、下記の式(2)および式(3)で表される不飽和環状炭酸エステルのいずれか1種類または2種類以上を含んでいることが好ましい。主に充放電時に負極22の表面に被膜が形成されるため、電解液の分解反応が抑制されるからである。この不飽和環状炭酸エステルとは、1または2以上の不飽和炭素結合(炭素間二重結合)を有する環状炭酸エステルである。R11およびR12は、同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。R13〜R16は、同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよいし、それらのうちの少なくとも一部が同じ種類の基でもよい。非水溶媒中における不飽和環状炭酸エステルの含有量は、特に限定されないが、例えば、0.01重量%〜10重量%である。なお、不飽和環状炭酸エステルの具体例は、以下で説明する化合物に限られず、他の化合物でもよい。
【0060】
【化5】

(R11およびR12は、水素基またはアルキル基である。)
【0061】
【化6】

(R13〜R16は、水素基、アルキル基、ビニル基またはアリル基であり、R13〜R16のうちの少なくとも1つは、ビニル基またはアリル基である。)
【0062】
式(2)に示した不飽和環状炭酸エステルは、炭酸ビニレン系化合物であり、例えば、炭酸ビニレン(1,3−ジオキソール−2−オン)、炭酸メチルビニレン(4−メチル−1,3−ジオキソール−2−オン)、炭酸エチルビニレン(4−エチル−1,3−ジオキソール−2−オン)、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソール−2−オン、4,5−ジエチル−1,3−ジオキソール−2−オン、4−フルオロ−1,3−ジオキソール−2−オン、または4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソール−2−オンなどである。中でも、炭酸ビニレンが好ましい。容易に入手できると共に、高い効果が得られるからである。
【0063】
式(3)に示した不飽和環状炭酸エステルは、炭酸ビニルエチレン系化合物であり、例えば、炭酸ビニルエチレン、4−メチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−n−プロピル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、5−メチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、または4,5−ジビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンなどである。中でも、炭酸ビニルエチレンが好ましい。容易に入手できると共に、高い効果が得られるからである。もちろん、R32〜R35としては、全てがビニル基でもよいし、全てがアリル基でもよいし、ビニル基とアリル基とが混在してもよい。
【0064】
なお、不飽和環状炭酸エステルは、式(2)および式(3)に示した化合物の他、ベンゼン環を有する炭酸カテコール(カテコールカーボネート)でもよい。
【0065】
また、非水溶媒は、下記の式(4)および式(5)で表されるハロゲン化炭酸エステルのいずれか1種類または2種類以上を含んでいることが好ましい。主に充放電時に負極22の表面に被膜が形成されるため、電解液の分解反応が抑制されるからである。式(4)に示したハロゲン化炭酸エステルは、1または2以上のハロゲンを構成元素として含む環状の炭酸エステル(ハロゲン化環状炭酸エステル)である。一方、式(5)に示したハロゲン化炭酸エステルは、1または2以上のハロゲンを構成元素として含む鎖状の炭酸エステル(ハロゲン化鎖状炭酸エステル)である。R17〜R20は、同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよいし、それらのうちの少なくとも一部が同じ種類の基でもよい。R21〜R26についても同様である。非水溶媒中におけるハロゲン化炭酸エステルの含有量は、特に限定されないが、例えば、0.01重量%〜50重量%である。ただし、ハロゲン化炭酸エステルの具体例は、以下で説明する化合物に限られず、他の化合物でもよい。
【0066】
【化7】

(R17〜R20は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R17〜R20のうちの少なくとも1つは、ハロゲン基または1価のハロゲン化炭化水素基である。)
【0067】
【化8】

(R21〜R26は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R21〜R26のうちの少なくとも1つは、ハロゲン基または1価のハロゲン化炭化水素基である。)
【0068】
ハロゲンの種類は、特に限定されないが、中でも、フッ素(F)、塩素(Cl)または臭素(Br)が好ましく、フッ素がより好ましい。他のハロゲンよりも高い効果が得られるからである。ただし、ハロゲンの数は、1つよりも2つが好ましく、さらに3つ以上でもよい。被膜を形成する能力が高くなり、より強固で安定な被膜が形成されやすくなるため、電解液の分解反応がより抑制されるからである。
【0069】
R17〜26の種類は、上記したように水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、または1価のハロゲン化炭化水素基であれば、特に限定されない。ただし、R17〜R20のうちの少なくとも1つがハロゲン基または1価のハロゲン化炭化水素基であることを条件とする。このことは、R21〜R26についても同様である。ハロゲン基の具体例は、上記したハロゲンの種類と同様である。1価の炭化水素基の具体例は、炭素数=1〜12のアルキル基などであり、1価のハロゲン化炭化水素基の具体例は、上記したアルキル基などのうちの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換されたものである。ただし、アルキル基は、直鎖状でもよいし、1または2以上の側鎖を有する分岐状でもよい。
【0070】
ハロゲン化環状炭酸エステルは、例えば、式(4−1)〜式(4−21)で表される化合物などであり、そのハロゲン化環状炭酸エステルには、幾何異性体も含まれる。中でも、式(4−1)に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンまたは式(4−3)に示した4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンが好ましく、後者がより好ましい。また、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンとしては、シス異性体よりもトランス異性体が好ましい。容易に入手できると共に、高い効果が得られるからである。一方、ハロゲン化鎖状炭酸エステルは、例えば、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)または炭酸ジフルオロメチルメチルなどである。
【0071】
【化9】

【0072】
電解質塩は、例えば、リチウム塩などの塩のいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、電解質塩は、例えば、リチウム塩以外の他の塩(例えばリチウム塩以外の軽金属塩)を含んでいてもよい。
【0073】
このリチウム塩は、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )、過塩素酸リチウム(LiClO4 )、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6 )、テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C6 5 4 )、メタンスルホン酸リチウム(LiCH3 SO3 )、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4 )、六フッ化ケイ酸二リチウム(Li2 SiF6 )、塩化リチウム(LiCl)、または臭化リチウム(LiBr)である。優れた電池容量、サイクル特性および保存特性などが得られるからである。ただし、リチウム塩の具体例は、上記した化合物に限られず、他の化合物でもよい。
【0074】
中でも、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウムおよび六フッ化ヒ酸リチウムのうちの少なくとも1種類が好ましく、六フッ化リン酸リチウムがより好ましい。内部抵抗が低下するため、より高い効果が得られるからである。
【0075】
特に、電解質塩は、下記の式(6)〜式(8)で表される化合物のいずれか1種類または2種類以上を含んでいることが好ましい。より高い特性が得られるからである。なお、R31およびR33は、同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。このことは、R41〜R43、R51およびR52についても同様である。ただし、式(6)〜式(8)に示した化合物の具体例は、以下で説明する化合物に限られず、他の化合物でもよい。
【0076】
【化10】

(X31は長周期型周期表における1族元素または2族元素、またはアルミニウムである。M31は遷移金属、または長周期型周期表における13族元素、14族元素または15族元素である。R31はハロゲン基である。Y31は−C(=O)−R32−C(=O)−、−C(=O)−CR332 −、または−C(=O)−C(=O)−である。ただし、R32はアルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アリーレン基またはハロゲン化アリーレン基である。R33はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基またはハロゲン化アリール基である。なお、a3は1〜4の整数であり、b3は0、2または4の整数であり、c3、d3、m3およびn3は1〜3の整数である。)
【0077】
【化11】

(X41は長周期型周期表における1族元素または2族元素である。M41は遷移金属、または長周期型周期表における13族元素、14族元素または15族元素である。Y41は−C(=O)−(CR412 b4−C(=O)−、−R432 C−(CR422 c4−C(=O)−、−R432 C−(CR422 c4−CR432 −、−R432 C−(CR422 c4−S(=O)2 −、−S(=O)2 −(CR422 d4−S(=O)2 −、または−C(=O)−(CR422 d4−S(=O)2 −である。ただし、R41およびR43は水素基、アルキル基、ハロゲン基またはハロゲン化アルキル基であり、それぞれのうちの少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。R42は水素基、アルキル基、ハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。なお、a4、e4およびn4は1または2の整数であり、b4およびd4は1〜4の整数であり、c4は0〜4の整数であり、f4およびm4は1〜3の整数である。)
【0078】
【化12】

(X51は長周期型周期表における1族元素または2族元素である。M51は遷移金属、または長周期型周期表における13族元素、14族元素または15族元素である。Rfはフッ素化アルキル基またはフッ素化アリール基であり、いずれの炭素数も1〜10である。Y51は−C(=O)−(CR512 d5−C(=O)−、−R522 C−(CR512 d5−C(=O)−、−R522 C−(CR512 d5−CR522 −、−R522 C−(CR512 d5−S(=O)2 −、−S(=O)2 −(CR512 e5−S(=O)2 −、または−C(=O)−(CR512 e5−S(=O)2 −である。ただし、R51は水素基、アルキル基、ハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。R52は水素基、アルキル基、ハロゲン基またはハロゲン化アルキル基であり、そのうちの少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。なお、a5、f5およびn5は1または2の整数であり、b5、c5およびe5は1〜4の整数であり、d5は0〜4の整数であり、g5およびm5は1〜3の整数である。)
【0079】
なお、1族元素とは、水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびフランシウムである。2族元素とは、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびラジウムである。13族元素とは、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムおよびタリウムである。14族元素とは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズおよび鉛である。15族元素とは、窒素、リン、ヒ素、アンチモンおよびビスマスである。
【0080】
式(6)に示した化合物は、例えば、式(6−1)〜式(6−6)で表される化合物などである。式(7)に示した化合物は、例えば、式(7−1)〜式(7−8)で表される化合物などである。式(8)に示した化合物は、例えば、式(8−1)で表される化合物などである。
【0081】
【化13】

【0082】
【化14】

【0083】
【化15】

【0084】
また、電解質塩は、下記の式(9)〜式(11)で表される化合物のいずれか1種類または2種類以上を含んでいることが好ましい。より高い特性が得られるからである。なお、mおよびnは、同じ値でもよいし、異なる値でもよい。このことは、p、qおよびrについても、同様である。ただし、式(9)〜式(11)に示した化合物の具体例は、以下で説明する化合物に限られず、他の化合物でもよい。
【0085】
LiN(Cm 2m+1SO2 )(Cn 2n+1 SO2 )…(9)
(mおよびnは、1以上の整数である。)
【0086】
【化16】

(R61は、炭素数=2〜4の直鎖状または分岐状のパーフルオロアルキレン基である。)
【0087】
LiC(Cp 2p+1SO2 )(Cq 2q+1SO2 )(Cr 2r+1SO2 )…(11)
(p、qおよびrは、1以上の整数である。)
【0088】
式(9)に示した化合物は、鎖状のイミド化合物であり、例えば、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 2 )、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(C2 5 SO2 2 )、(トリフルオロメタンスルホニル)(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )(C2 5 SO2 ))、(トリフルオロメタンスルホニル)(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )(C3 7 SO2 ))、または(トリフルオロメタンスルホニル)(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )(C4 9 SO2 ))などである。
【0089】
式(10)に示した化合物は、環状のイミド化合物であり、例えば、式(10−1)〜式(10−4)で表される化合物などである。
【0090】
【化17】

【0091】
式(11)に示した化合物は、鎖状のメチド化合物であり、例えば、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド(LiC(CF3 SO2 3 )などである。
【0092】
電解質塩の含有量は、特に限定されないが、中でも、非水溶媒に対して0.3mol/kg〜3.0mol/kgであることが好ましい。高いイオン伝導性が得られるからである。
【0093】
[二次電池の動作]
この二次電池では、例えば、充電時に正極21から放出されたリチウムイオンが電解液を介して負極22に吸蔵されると共に、放電時に負極22から放出されたリチウムイオンが電解液を介して正極21に吸蔵される。
【0094】
[二次電池の製造方法]
この二次電池は、例えば、以下の手順により製造される。
【0095】
最初に、正極21を作製する。正極活物質と、必要に応じて正極結着剤および正極導電剤などとを混合して、正極合剤とする。続いて、有機溶剤などに正極合剤を分散させてペースト状の正極合剤スラリーとする。続いて、正極集電体21Aの両面に正極合剤スラリーを塗布してから乾燥させて正極活物質層21Bを形成する。続いて、ロールプレス機などを用いて、必要に応じて加熱しながら正極活物質層21Bを圧縮成型する。この場合には、圧縮成型を複数回繰り返してもよい。
【0096】
また、上記した正極21と同様の手順により、負極22を作製する。負極活物質と、必要に応じて負極結着剤および負極導電剤などとを混合した負極合剤を有機溶剤などに分散させて、ペースト状の負極合剤スラリーとする。続いて、負極集電体22Aの両面に負極合剤スラリーを塗布してから乾燥させて負極活物質層22Bを形成したのち、必要に応じて負極活物質層22Bを圧縮成型する。
【0097】
また、非水溶媒に電解質塩を分散させたのち、メチレン環状炭酸エステルを加えて電解液を調製する。
【0098】
次に、電池素子20を作製する。溶接法などを用いて、正極集電体21Aに正極リード24を取り付けると共に、負極集電体22Aに負極リード25を取り付ける。続いて、セパレータ23を介して正極21と負極22とを積層させたのち、長手方向に巻回させて巻回体を形成する。続いて、扁平な形状となるように巻回体を成型する。
【0099】
最後に、二次電池を組み立てる。最初に、電池缶11の内部に電池素子20を収納したのち、その電池素子20の上に絶縁板12を載せる。続いて、溶接法などを用いて、正極リード24を正極ピン15に取り付けると共に、負極リード25を電池缶11に取り付ける。この場合には、レーザ溶接法などを用いて電池缶11の開放端部に電池蓋13を固定する。最後に、注入孔19から電池缶11の内部に電解液を注入してセパレータ23に含浸させたのち、その注入孔19を封止部材19Aで塞ぐ。
【0100】
[二次電池の作用および効果]
この角型の二次電池によれば、平坦面11Mを有する電池缶11の内部に電解液が収納されており、その電解液がメチレン環状炭酸エステルを含んでいる。この場合には、上記したように、負極22の反応性に起因する電解液の分解反応が抑制されるため、初回充放電特性が向上する。また、初回の充放電時だけでなく高温保存時でも電解液の分解反応に起因するガスの発生が抑制されるため、膨れ特性も向上する。よって、初回充放電特性および膨れ特性の双方が向上するため、優れた電池特性を得ることができる。
【0101】
特に、電解液中におけるメチレン環状炭酸エステルの含有量が0.01重量%〜10重量%、さらに0.1重量%〜5重量%であれば、より高い効果を得ることができる。
【0102】
<1−2.リチウムイオン二次電池(ラミネートフィルム型)>
図3および図4は他の二次電池の断面構成を表しており、図4では図3に示した巻回電極体30のIV−IV線に沿った断面を示している。以下では、既に説明した角型の二次電池の構成要素を随時引用する。
【0103】
[二次電池の全体構成]
この二次電池は、角型の二次電池と同様に、リチウムイオンの吸蔵放出により電池容量が得られるリチウムイオン二次電池である。
【0104】
ここで説明する電池構造は、いわゆるラミネートフィルム型である。この二次電池は、主に、電池素子である巻回電極体30が外装部材39の内部に収納されたものであり、その巻回電極体30は、電解液が含浸されたセパレータ35を介して正極33と負極34とが積層されてから巻回されたものである。正極33には正極リード31が取り付けられていると共に、負極34には負極リード32が取り付けられている。この巻回電極体30の最外周部は、保護テープ37により保護されている。
【0105】
正極リード31および負極リード32は、例えば、外装部材39の内部から外部に向かって同一方向に導出されている。正極リード31は、例えば、アルミニウムなどの導電性材料により形成されていると共に、負極リード32は、例えば、銅、ニッケルまたはステンレスなどの導電性材料により形成されている。これらの導電性材料は、例えば、薄板状または網目状である。
【0106】
外装部材39は、少なくとも1つの平坦な外面(平坦面39M)を有するフィルム状の外装部材であり、例えば、融着層、金属層および表面保護層がこの順に積層されたラミネートフィルムである。このラミネートフィルムでは、例えば、融着層が巻回電極体30と対向するように、2枚のフィルムの融着層における外周縁部同士が融着、または接着剤などにより貼り合わされている。融着層は、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどのフィルムである。金属層は、例えば、アルミニウム箔などである。表面保護層は、例えば、ナイロンまたはポリエチレンテレフタレートなどのフィルムである。
【0107】
中でも、外装部材39としては、ポリエチレンフィルム、アルミニウム箔およびナイロンフィルムがこの順に積層されたアルミラミネートフィルムが好ましい。ただし、外装部材39は、他の積層構造を有するラミネートフィルムでもよいし、ポリプロピレンなどの高分子フィルム、または金属フィルムでもよい。
【0108】
外装部材39と正極リード31および負極リード32との間には、外気の侵入を防止するために密着フィルム38が挿入されている。この密着フィルム38は、正極リード31および負極リード32に対して密着性を有する材料により形成されている。この密着性の材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンまたは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂である。
【0109】
正極33は、例えば、正極集電体33Aの両面に正極活物質層33Bが設けられたものであり、負極34は、例えば、負極集電体34Aの両面に負極活物質層34Bが設けられたものである。正極集電体33A、正極活物質層33B、負極集電体34Aおよび負極活物質層34Bの構成は、例えば、それぞれ正極集電体21A、正極活物質層21B、負極集電体22Aおよび負極活物質層22Bの構成と同様である。
【0110】
セパレータ35の構成は、例えば、セパレータ23の構成と同様であり、そのセパレータ35に含浸されている電解液の組成は、例えば、角型と同様である。
【0111】
[二次電池の動作]
この二次電池では、例えば、充電時に正極33から放出されたリチウムイオンが電解質層36を介して負極34に吸蔵されると共に、放電時に負極34から放出されたリチウムイオンが電解質層36を介して正極33に吸蔵される。
【0112】
[二次電池の製造方法]
この二次電池は、例えば、以下の手順により製造される。
【0113】
まず、正極21および負極22と同様の作製手順により、正極33および負極34を作製する。この場合には、正極集電体33Aの両面に正極活物質層33Bを形成して正極33を作製すると共に、負極集電体34Aの両面に負極活物質層34Bを形成して負極34を作製する。続いて、溶接法などを用いて、正極集電体33Aに正極リード31を取り付けると共に、負極集電体34Aに負極リード32を取り付ける。続いて、セパレータ35を介して正極33と負極34とを積層してから巻回させて巻回電極体30を作製したのち、その最外周部に保護テープ37を貼り付ける。続いて、2枚のフィルム状の外装部材39の間に巻回電極体30を挟み込んだのち、外装部材39の内部に電解液を注入してセパレータ35に含浸させる。続いて、熱融着法などを用いて外装部材39の外周縁部同士を接着させて巻回電極体30を封入する。この場合には、正極リード31および負極リード32と外装部材39との間に密着フィルム38を挿入する。
【0114】
[二次電池の作用および効果]
このラミネートフィルム型の二次電池によれば、平坦面39Mを有する外装部材39の内部に電解液が収納されており、その電解液がメチレン環状炭酸エステルを含んでいる。よって、角型の二次電池と同様の理由により、優れた電池特性を得ることができる。これ以外の作用および効果は、角型と同様である。
【0115】
<1−3.リチウム金属二次電池(角型,ラミネートフィルム型)>
ここで説明する二次電池は、負極の容量が電極反応物質であるリチウム(リチウム金属)の析出溶解により表されるリチウム二次電池(リチウム金属二次電池)である。この二次電池は、負極活物質層22Bがリチウム金属により形成されていることを除き、上記した角型のリチウムイオン二次電池と同様の構成を有していると共に同様の手順により製造される。
【0116】
この二次電池では、負極活物質としてリチウム金属を用いているため、高いエネルギー密度が得られるようになっている。負極活物質層22Bは、組み立て時から既に存在してもよいが、組み立て時には存在せず、充電時に析出したリチウム金属により形成されるようにしてもよい。また、負極活物質層22Bを集電体としても利用して、負極集電体22Aを省略してもよい。
【0117】
この二次電池では、例えば、充電時に正極21から放出されたリチウムイオンが電解液を介して負極集電体22Aの表面にリチウム金属となって析出する。また、例えば、放電時に負極活物質層22Bからリチウム金属がリチウムイオンとなって電解液中に溶出し、その電解液を介して正極21に吸蔵される。
【0118】
このリチウム金属二次電池によれば、電解液がメチレン環状炭酸エステルを含んでいるので、上記したリチウムイオン二次電池と同様の理由により、優れた電池特性を得ることができる。これ以外の作用および効果は、角型と同様である。なお、上記したリチウム金属二次電池は、角型に限らず、図3および図4に示したラミネートフィルム型でもよい。この場合でも同様の効果を得ることができる。
【0119】
ここで、ここまで二次電池のいくつかの具体例について説明してきたが、二次電池の電池構造および電池素子の素子構造は、その二次電池の外装部材が平坦面を有していれば、他の態様でもよい。具体的には、電池構造は、例えば、角型またはラミネートフィルム型に限られず、コイン型またはボタン型などでもよい。また、素子構造は、例えば、巻回構造に限られず、積層構造などでもよい。この場合でも同様の効果を得ることができる。
【0120】
<2.第2実施形態の二次電池/2−1.リチウムイオン二次電池(円筒型)>
次に、本技術の第2実施形態の二次電池について説明する。
【0121】
図5および図6は二次電池の断面構成を表しており、図6では図5に示した巻回電極体40の一部を拡大している。以下では、既に説明した第1実施形態の二次電池(角型)の構成要素を随時引用する。
【0122】
[二次電池の全体構成]
ここで説明する二次電池は、いわゆる円筒型のリチウムイオン二次電池である。この二次電池では、ほぼ中空円柱状の電池缶31の内部に、巻回電極体40と、一対の絶縁板32,33とが収納されている。巻回電極体40は、例えば、セパレータ43を介して正極41と負極42とが積層されてから巻回されたものである。
【0123】
電池缶31は、一端部が閉鎖されると共に他端部が開放された中空構造を有していると共に、例えば、電池缶11と同様の材料により形成されている。一対の絶縁板32,33は、巻回電極体40を上下から挟むと共にその巻回周面に対して垂直に延在するように配置されている。
【0124】
電池缶31の開放端部には、電池蓋34、安全弁機構35および熱感抵抗素子(PTC素子)36がガスケット37を介してかしめられている。これにより、電池缶31は密閉されている。電池蓋34は、例えば、電池缶31と同様の材料により形成されている。安全弁機構35および熱感抵抗素子36は、電池蓋34の内側に設けられており、その安全弁機構35は、熱感抵抗素子36を介して電池蓋34と電気的に接続されている。この安全弁機構35では、内部短絡、または外部からの加熱などに起因して内圧が一定以上になると、ディスク板35Aが反転して電池蓋34と巻回電極体40との間の電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子36は、大電流に起因する異常な発熱を防止するものである。この熱感抵抗素子36では、温度が上昇すると、それに応じて抵抗が増加するようになっている。ガスケット37は、例えば、絶縁材料により形成されており、その表面にアスファルトが塗布されていてもよい。
【0125】
巻回電極体40の中心には、センターピン44が挿入されていてもよい。正極41には、例えば、アルミニウムなどの導電性材料により形成された正極リード45が接続されていると共に、負極42には、例えば、ニッケルなどの導電性材料により形成された負極リード46が接続されている。正極リード45は、安全弁機構35に溶接などされ、電池蓋34と電気的に接続されていると共に、負極リード46は、電池缶31に溶接などされ、その電池缶31と電気的に接続されている。
【0126】
[正極、負極およびセパレータ]
正極41は、例えば、正極集電体41Aの両面に正極活物質層41Bが設けられたものであり、負極42は、例えば、負極集電体42Aの両面に負極活物質層42Bが設けられたものである。正極集電体41A、正極活物質層41B、負極集電体42Aおよび負極活物質層42Bの構成は、それぞれ正極集電体21A、正極活物質層21B、負極集電体22Aおよび負極活物質層22Bの構成と同様である。また、セパレータ43の構成は、セパレータ23の構成と同様である。
【0127】
[電解液]
セパレータ43には、液状の電解質である電解液が含浸されており、その電解液は、下記の式(11)で表されるメチレン環状炭酸エステルと、下記の式(12)〜式(16)で表される補助化合物のうちの少なくとも1種とを含んでいる。ただし、電解液は、非水溶媒および電解質塩などの他の材料を含んでいてもよい。
【0128】
【化18】

(R1およびR2は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R1およびR2は、互いに結合されていてもよい。)
【0129】
【化19】

(R71およびR73は、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭素水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R72は、2価の炭化水素基、2価のハロゲン化炭化水素基、2価の酸素含有炭化水素基、または2価のハロゲン化酸素含有炭化水素基である。)
【0130】
【化20】

(R74およびR76は、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭素水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R75は、2価の炭化水素基、2価のハロゲン化炭化水素基、2価の酸素含有炭化水素基、または2価のハロゲン化酸素含有炭化水素基である。nは、1以上の整数である。)
【0131】
【化21】

(R77およびR79は、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭素水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R78は、2価の炭化水素基、2価のハロゲン化炭化水素基、2価の酸素含有炭化水素基、または2価のハロゲン化酸素含有炭化水素基である。)
【0132】
Li2 PFO3 …(15)
LiPF2 2 …(16)
【0133】
電解液がメチレン環状炭酸エステルと補助化合物とを一緒に含んでいるのは、両者の相乗作用により電解液の化学的安定性が向上するからである。これにより、二次電池を繰り返して充放電させると共に高温環境中に二次電池を保存しても放電容量が低下しにくくなる。
【0134】
式(11)に示したメチレン環状炭酸エステルに関する詳細は、第1実施形態の式(1)に示したメチレン環状炭酸エステルと同様であるので、その説明を省略する。
【0135】
式(12)に示した補助化合物は、両末端に炭酸エステル基(−O−C(=O)−O−R71および−O−C(=O)−O−R73)を有するジ炭酸エステル化合物である。
【0136】
R71およびR73の種類は、上記したように1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であれば、特に限定されない。ジ炭酸エステル化合物が炭酸エステル基を有していることで、R71およびR73の種類に依存せずに上記した利点が得られるからである。なお、R71およびR73は、同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。
【0137】
1価の炭化水素基および1価のハロゲン化炭化水素基は、例えば、炭素数=1〜12のアルキル基、炭素数=2〜12のアルケニル基、炭素数=2〜12のアルキニル基、炭素数=6〜18のアリール基、炭素数=3〜18のシクロアルキル基、またはそれらの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基などである。また、1価の酸素含有炭化水素基または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基は、例えば、炭素数=1〜12のアルコキシ基、またはその少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基などである。ジ炭酸エステル化合物の溶解性および相溶性などを確保しつつ、上記した利点が得られるからである。なお、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアルコキシ基は、直鎖状でもよいし、1または2以上の側鎖を有する分岐状でもよい。R71およびR73に関する詳細は、例えば、第1実施形態のR1およびR2と同様であるので、その説明を省略する。
【0138】
R72の種類は、上記したように2価の炭化水素基、2価のハロゲン化炭化水素基、2価の酸素含有炭化水素基、または2価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であれば、特に限定されない。上記したR71およびR73と同様の理由により、R72の種類に依存せずに上記した利点が得られるからである。
【0139】
2価の炭化水素基は、例えば、炭素数=1〜12のアルキレン基、炭素数=2〜12のアルケニレン基、炭素数=2〜12のアルキニレン基、炭素数=6〜18のアリーレン基、炭素数=3〜18のシクロアルキレン基、アリーレン基とアルキレン基とを含む基などである。ただし、アリーレン基とアルキレン基とを含む基は、1つのアリーレン基と1つのアルキレン基とが連結された基でもよいし、2つのアルキレン基がアリーレン基を介して連結された基(アラルキレン基)でもよい。このアルキレン基の炭素数は、12以下であることが好ましい。また、2価のハロゲン化炭化水素基は、例えば、上記したアルキレン基などのうちの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換されたものである。ジ炭酸エステル化合物の溶解性および相溶性などを確保しつつ、上記した利点が得られるからである。
【0140】
2価の酸素含有炭化水素基は、例えば、エーテル結合とアルキレン基とを含む基などである。ただし、エーテル結合とアルキレン基とを含む基は、1つのエーテル結合と1つのアルキレン基とが連結された基でもよいし、2つのアルキレン基が1つのエーテル結合を介して連結された基(アラルキレン基)でもよい。このアルキレン基の炭素数は、12以下であることが好ましい。また、2価のハロゲン化酸素含有炭化水素基は、例えば、上記したエーテル結合とアルキレン基とを含むなどのうちの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換されたものである。ジ炭酸エステル化合物の溶解性および相溶性などを確保しつつ、上記した利点が得られるからである。
【0141】
R72の具体例は、下記の式(12−1)〜式(12−7)で表される直鎖状のアルキレン基、式(12−8)〜式(12−16)で表される分岐状のアルキレン基、式(12−17)〜式(12−19)で表されるアリーレン基、または式(12−20)〜式(12−22)で表されるアリーレン基とアルキレン基とを含む2価の基(ベンジリデン基)などである。
【0142】
【化22】

【0143】
【化23】

【0144】
【化24】

【0145】
なお、エーテル結合とアルキレン基とを含む2価の基としては、少なくとも2つのアルキレン基がエーテル結合を介して交互に連結されていると共に両末端が炭素原子である基が好ましい。このような基の炭素数は、4〜12であることが好ましい。優れた溶解性および相溶性が得られるからである。ただし、エーテル結合の数、ならびにエーテル結合およびアルキレン基の連結順などは、任意でよい。
【0146】
この場合におけるR72の具体例は、例えば、下記の式(12−23)〜式(12−35)で表される2価の基などである。また、式(12−23)〜式(12−35)に示した2価の基がフッ素化された場合には、例えば、式(12−36)〜式(12−44)で表される基などでもよい。中でも、式(12−28)〜式(12−30)に示した基が好ましい。
【0147】
【化25】

【0148】
【化26】

【0149】
ジ炭酸エステル化合物の分子量は、特に限定されないが、中でも、200〜800が好ましく、200〜600がより好ましく、200〜450がさらに好ましい。優れた溶解性および相溶性が得られるからである。
【0150】
ジ炭酸エステル化合物の具体例は、下記の式(12−45)〜式(12−56)で表される化合物などである。十分な溶解性および相溶性が得られると共に、電解液の化学的安定性が十分に向上するからである。ただし、式(12)に該当する他の化合物でもよい。
【0151】
【化27】

【0152】
式(13)に示した補助化合物は、両末端にカルボン酸基(−O−C(=O)−R74および−O−C(=O)−R76)を有するジカルボン酸化合物である。nの値は、1以上の整数であれば、特に限定されない。R74およびR76は、同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。なお、R74〜R76に関する詳細は、例えば、それぞれ上記したR71〜R73と同様であるので、その説明を省略する。
【0153】
ジカルボン酸化合物の分子量は、特に限定されないが、中でも、162〜1000が好ましく、162〜500がより好ましく、162〜300がさらに好ましい。優れた溶解性および相溶性が得られるからである。
【0154】
ジカルボン酸化合物の具体例は、下記の式(13−1)〜式(13−17)で表される化合物などである。十分な溶解性および相溶性が得られると共に、電解液の化学的安定性が十分に向上するからである。ただし、式(13)に該当する他の化合物でもよい。
【0155】
【化28】

【0156】
【化29】

【0157】
式(14)に示した補助化合物は、両末端にスルホン酸基(−O−S(=O)2 −R77および−O−S(=O)2 −R79)を有するジスルホン酸化合物である。R77およびR79は、同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。なお、R77〜R79に関する詳細は、例えば、それぞれR71〜R73と同様であるので、その説明を省略する。
【0158】
ジスルホン酸化合物の分子量は、特に限定されないが、中でも、200〜800が好ましく、200〜600がより好ましく、200〜450がさらに好ましい。優れた溶解性および相溶性が得られるからである。
【0159】
ジスルホン酸化合物の具体例は、下記の式(14−1)〜式(14−9)で表される化合物などである。十分な溶解性および相溶性が得られると共に、電解液の化学的安定性が十分に向上するからである。ただし、式(14)に該当する他の化合物でもよい。
【0160】
【化30】

【0161】
式(15)に示した補助化合物は、モノフルオロリン酸リチウムであると共に、式(16)に示した補助化合物は、ジフルオロリン酸リチウムである。
【0162】
電解液中におけるメチレン環状炭酸エステルの含有量は、特に限定されないが、中でも、0.01重量%〜10重量%であることが好ましく、0.5重量%〜5重量%であることがより好ましい。また、電解液中における補助化合物の含有量は、特に限定されないが、中でも、0.001重量%〜2重量%であることが好ましく、0.1重量%〜1重量%であることがより好ましい。より高い効果が得られるからである。
【0163】
なお、非水溶媒および電解質塩に関する詳細は、例えば、第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0164】
[二次電池の動作]
この二次電池では、例えば、充電時に正極41から放出されたリチウムイオンが電解液を介して負極42に吸蔵されると共に、放電時に負極42から放出されたリチウムイオンが電解液を介して正極41に吸蔵される。
【0165】
[二次電池の製造方法]
この二次電池は、例えば、以下の手順により製造される。
【0166】
最初に、第1実施形態と同様の手順により、正極41および負極42を作製する。この場合には、正極集電体41Aの両面に正極活物質層41Bを形成して正極41を作製すると共に、負極集電体42Aの両面に負極活物質層42Bを形成して負極42を作製する。
【0167】
また、非水溶媒に電解質塩を分散させたのち、メチレン環状炭酸エステルおよび補助化合物を加えて電解液を調製する。
【0168】
最後に、正極41および負極42を用いて二次電池を組み立てる。溶接法などを用いて、正極集電体41Aに正極リード45を取り付けると共に、負極集電体42Aに負極リード46を取り付ける。続いて、セパレータ43を介して正極41と負極42とを積層してから巻回させて巻回電極体40を作製したのち、その巻回中心にセンターピン44を挿入する。続いて、一対の絶縁板32,33で挟みながら、巻回電極体40を電池缶31の内部に収納する。この場合には、溶接法などを用いて、正極リード45の先端部を安全弁機構35に取り付けると共に、負極リード46の先端部を電池缶31に取り付ける。続いて、電池缶31の内部に電解液を注入してセパレータ43に含浸させる。続いて、ガスケット37を介して電池缶31の開口端部に電池蓋34、安全弁機構35および熱感抵抗素子36をかしめる。
【0169】
[二次電池の作用および効果]
この円筒型の二次電池によれば、電解液がメチレン環状炭酸エステルおよび補助化合物を含んでいる。この場合には、上記したように、両者の相乗作用により電解液の化学的安定性が向上するため、二次電池を繰り返して充放電させると共に高温環境中に二次電池を保存しても放電容量が低下しにくくなる。よって、優れた電池特性を得ることができる。
【0170】
特に、電解液中におけるメチレン環状炭酸エステルの含有量が0.01重量%〜10重量%、さらに0.5重量%〜5重量%であれば、より高い効果を得ることができる。また、電解液中における補助化合物の含有量が0.001重量%〜2重量%、さらに0.1重量%〜1重量%であれば、より高い効果を得ることができる。
【0171】
<2−2.リチウムイオン二次電池(角型,ラミネートフィルム型)>
なお、本実施形態の二次電池は、上記した円筒型に代えて、角型またはラミネートフィルム型などでもよい。この角型またはラミネートフィルム型の二次電池の構成は、電解液の組成が異なることを除き、第1実施形態と同様である。この場合でも、優れた電池特性を得ることができる。
【0172】
<2−3.リチウム金属二次電池(円筒型,角型,ラミネートフィルム型)>
また、本実施形態の二次電池は、上記したリチウムイオン二次電池に代えて、リチウム金属二次電池でもよい。この場合の電池構造は、円筒型、角型またはラミネートフィルム型のいずれでもよい。このリチウム金属二次電池の構成は、負極の構成が異なることを除き、第1実施形態と同様である。この場合でも、優れた電池特性を得ることができる。
【0173】
<3.第3実施形態の二次電池/3−1.リチウムイオン二次電池(円筒型)>
次に、本技術の第3実施形態の二次電池について説明する。
【0174】
本実施形態の二次電池は、例えば、電解液の組成が異なることを除き、第2実施形態と同様の構成を有している。すなわち、ここで説明する二次電池は、円筒型のリチウムイオン二次電池である。
【0175】
電解液は、下記の式(17)で表されるメチレン環状炭酸エステルと、下記の式(18)および式(19)で表されるハロゲン化炭酸エステルのうちの少なくとも一方とを含んでいる。ただし、電解液は、非水溶媒および電解質塩などの他の材料を含んでいてもよい。
【0176】
【化31】

(R1およびR2は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R1およびR2は、互いに結合されていてもよい。)
【0177】
【化32】

(R17〜R20は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R17〜R20のうちの少なくとも1つは、ハロゲン基または1価のハロゲン化炭化水素基である。)
【0178】
【化33】

(R21〜R26は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R21〜R26のうちの少なくとも1つは、ハロゲン基または1価のハロゲン化炭化水素基である。)
【0179】
電解液がメチレン環状炭酸エステルとハロゲン化炭酸エステルとを一緒に含んでいるのは、両者の相乗作用により電解液の化学的安定性が向上するからである。これにより、二次電池を繰り返して充放電させると共に高温環境中に二次電池を保存しても、放電容量が低下しにくくなる。
【0180】
式(17)に示したメチレン環状炭酸エステルに関する詳細は、第1実施形態のメチレン環状炭酸エステルと同様であるので、その説明を省略する。また、式(18)および式(19)に示したハロゲン化炭酸エステルに関する詳細は、それぞれ第1実施形態のハロゲン化炭酸エステル(ハロゲン化環状炭酸エステルおよびハロゲン化鎖状炭酸エステル)と同様であるので、その説明を省略する。
【0181】
電解液中におけるメチレン環状炭酸エステルの含有量は、特に限定されないが、中でも、0.01重量%〜10重量%であることが好ましく、0.1重量%〜5重量%であることがより好ましい。また、電解液中におけるハロゲン化炭酸エステルの含有量は、特に限定されないが、中でも、0.1重量%〜20重量%であることが好ましく、5重量%〜20重量%であることがより好ましい。より高い効果が得られるからである。
【0182】
なお、非水溶媒および電解質塩に関する詳細は、例えば、第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0183】
この二次電池の動作および製造方法に関する詳細は、例えば、電解液の組成が異なることを除き、第2実施形態(円筒型)と同様である。
【0184】
この円筒型の二次電池によれば、電解液がメチレン環状炭酸エステルおよびハロゲン化炭酸エステルを含んでいる。この場合には、上記したように、両者の相乗作用により電解液の化学的安定性が向上するため、二次電池を繰り返して充放電させると共に高温環境中に二次電池を保存しても放電容量が低下しにくくなる。よって、優れた電池特性を得ることができる。
【0185】
特に、電解液中におけるメチレン環状炭酸エステルの含有量が0.01重量%〜10重量%であると共に、電解液中におけるハロゲン化炭酸エステルの含有量が0.1重量%〜20重量%であれば、より高い効果を得ることができる。
【0186】
<3−2.リチウムイオン二次電池(角型,ラミネートフィルム型)>
なお、本実施形態の二次電池は、上記した円筒型に代えて、角型またはラミネートフィルム型などでもよい。この角型またはラミネートフィルム型の二次電池の構成は、電解液の組成が異なることを除き、第1実施形態と同様である。この場合でも、優れた電池特性を得ることができる。
【0187】
<3−3.リチウム金属二次電池(円筒型,角型,ラミネートフィルム型)>
また、本実施形態の二次電池は、上記したリチウムイオン二次電池に代えて、リチウム金属二次電池でもよい。この場合の電池構造は、円筒型、角型またはラミネートフィルム型のいずれでもよい。このリチウム金属二次電池の構成は、負極の構成が異なることを除き、第1実施形態と同様である。この場合でも、優れた電池特性を得ることができる。
【0188】
<4.第4実施形態の二次電池/4−1.リチウムイオン二次電池(円筒型)>
次に、本技術の第4実施形態の二次電池について説明する。
【0189】
本実施形態の二次電池は、例えば、電解液の組成が異なることを除き、第2実施形態と同様の構成を有している。すなわち、ここで説明する二次電池は、円筒型のリチウムイオン二次電池である。
【0190】
電解液は、下記の式(20)〜式(22)で表されるメチレン環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種を含んでいる。ただし、電解液は、非水溶媒および電解質塩などの他の材料を含んでいてもよい。
【0191】
【化34】

(R81は、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価のハロゲン化鎖状不飽和炭化水素基、ハロゲン基、または1価のハロゲン化鎖状飽和炭化水素基である。)
【0192】
【化35】

(R82およびR83は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R82およびR83のうちの少なくとも一方は、1価の環状炭化水素基または1価のハロゲン化環状炭化水素基である。)
【0193】
【化36】

(R84は、2価の炭化水素基または2価のハロゲン化炭化水素基である。)
【0194】
電解液がメチレン環状炭酸エステルを含んでいるのは、そのメチレン環状炭酸エステルを含んでいない場合と比較して、電解液の化学的安定性が向上するからである。これにより、二次電池を繰り返して充放電させると共に高温環境中に二次電池を保存しても、放電容量が低下しにくくなる。
【0195】
詳細には、式(20)に示したメチレン環状炭酸エステルにおいて、R81が水素基、またはメチル基などの鎖状飽和炭化水素基であると、電解液の化学的安定性が十分でないため、充放電時、または高温環境中の保存時に電解液が分解しやすくなる。これに対して、R81が上記した1価の鎖状不飽和炭化水素基などであると、電解液の化学的安定性が確保される。これにより、充放電時、または高温環境中の保存時でも電解液が分解しにくくなる。
【0196】
また、式(21)に示したメチレン環状炭酸エステルにおいて、R82およびR83がいずれもメチル基などの1価の鎖状炭化水素基であると、式(20)の場合と同様の理由により、充放電時、または高温環境中の保存時に電解液が分解しやすくなる。これに対して、R82およびR83のいずれか一方または双方が上記した1価の環状炭化水素基などであると、電解液の化学的安定性が確保されるため、充放電時、または高温環境中の保存時でも電解液が分解しにくくなる。
【0197】
さらに、式(22)に示した環状炭酸エステルでは、R84を一部とする環構造が形成されているため、その環構造が形成されていない場合と比較して、電解液の化学的安定性が向上する。これにより、充放電時、または高温環境中の保存時でも電解液が分解しにくくなる。
【0198】
式(20)〜式(22)に示したメチレン環状炭酸エステルに関する詳細は、以下で説明することを除き、第1実施形態のメチレン環状炭酸エステルと同様である。
【0199】
R81の種類は、上記したように1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価のハロゲン化鎖状不飽和炭化水素基、ハロゲン基、または1価のハロゲン化鎖状飽和炭化水素基であれば、特に限定されない。メチレン環状炭酸エステルが1価の鎖状不飽和炭化水素基などを含む環状の炭酸エステル型構造を有していることで、R81の種類に依存せずに上記した利点が得られるからである。
【0200】
「1価の鎖状不飽和炭化水素基」とは、炭素間二重結合または炭素間三重結合などの不飽和炭素結合を炭素鎖の末端または途中に含む鎖状の炭化水素基である。また、「1価のハロゲン化鎖状不飽和炭化水素基」とは、上記した1価の鎖状不飽和炭化水素基のうちの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換されたものである。ただし、不飽和炭素結合の数は、1つでもよいし、2つ以上でもよい。また、直鎖状でもよいし、1または2以上の側鎖を有する分岐状でもよい。この1価の鎖状不飽和炭化水素基は、例えば、炭素数=2〜12のアルケニル基、炭素数=2〜12のアルキニル基、炭素数=6〜18のアリール基、炭素数=6〜18のアリール基と炭素数=1〜12のアルキレン基とが結合された基、または炭素数=1〜12のアルキル基のうちの途中の水素基が炭素数=6〜18のアリール基により置換された基などである。この他、炭素数=1〜12のアルキル基と炭素数=1〜12のアルキレン基とが炭素数=6〜18のアリーレン基を介して結合された基でもよい。また、1価のハロゲン化鎖状不飽和炭化水素基は、例えば、上記したアルキル基などのうちの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換されたものである。なお、上記したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキレン基またはハロゲン基などに関する詳細は、第1実施形態と同様である。
【0201】
R82およびR83の種類は、上記したように水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であれば、特に限定されない。ただし、R82およびR83のうちの少なくとも一方が1価の環状炭化水素基または1価のハロゲン化環状炭化水素基であることを条件とする。メチレン環状炭酸エステルが少なくとも1つの1価の環状炭化水素基などを含む環状の炭酸エステル型構造を有していることで、R82およびR83の種類に依存せずに上記した利点が得られるからである。
【0202】
「1価の環状炭化水素基」とは、飽和環構造または不飽和環構造を含む炭化水素基であり、「1価のハロゲン化環状炭化水素基」とは、上記した1価の環状炭化水素基のうちの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換されたものである。また、「1価の炭化水素基」には、飽和炭化水素基および不飽和炭化水素基の双方が含まれ、「1価のハロゲン化炭化水素基」についても同様である。この1価の環状炭化水素基は、例えば、炭素数=6〜18のアリール基、炭素数=6〜18のアリール基と炭素数=1〜12のアルキレン基とが結合された基、炭素数=6〜18のシクロアルキル基、または炭素数=6〜18のシクロアルキル基と炭素数=1〜12のアルキレン基とが結合された基などである。この他、炭素数=1〜12のアルキル基と炭素数=1〜12のアルキレン基とが炭素数=6〜18のアリーレン基またはシクロアルキル基を介して結合された基でもよい。また、1価のハロゲン化環状炭化水素基は、例えば、上記したアリール基などのうちの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換されたものである。なお、上記したアリール基、シクロアルキル基またはハロゲン基などに関する詳細は、第1実施形態と同様である。
【0203】
式(22)に示したメチレン環状炭酸エステルにおいて、R84の種類は、上記したように2価の炭化水素基または2価のハロゲン化炭化水素基であれば、特に限定されない。メチレン環状炭酸エステルがメチレン基と共に、R84を一部として形成される環構造とを含む環状の炭酸エステル型構造を有していることで、R84の種類に依存せずに上記した利点が得られるからである。
【0204】
2価の炭化水素基は、例えば、炭素数=2〜12のアルキレン基などであり、具体的には、ブチレン基またはペンチル基などである。ただし、アルキレン基は、直鎖状でもよいし、1または2以上の側鎖を有する分岐状でもよい。また、2価のハロゲン化炭化水素基は、例えば、上記したアルキレン基などのうちの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換されたものである。メチレン環状炭酸エステルの溶解性および相溶性などを確保しつつ、上記した利点が得られるからである。なお、上記したアルキレン基またはハロゲン基などに関する詳細は、第1実施形態と同様である。
【0205】
なお、R81〜R84は、上記以外の他の種類の基でもよい。具体的には、R81〜R84は、例えば、上記した一連の基の誘導体でもよい。この誘導体とは、一連の基に1または2以上の置換基が導入されたものであり、その置換基の種類は、任意でよい。
【0206】
ここで、式(20)に示したメチレン環状炭酸エステルの具体例は、第1実施形態で式(1−1)〜式(1−26)に示した化合物のうち、式(1−4)、式(1−13)、式(1−18)、式(1−20)、式(1−22)、式(1−23)、または式(1−30)に示した化合物である。
【0207】
式(21)に示したメチレン環状炭酸エステルの具体例は、式(1−3)、式(1−5)、式(1−6)、式(1−10)〜式(1−12)、式(1−14)、式(1−16)、式(1−17)、または式(1−24)に示した化合物などである。
【0208】
式(22)に示したメチレン環状炭酸エステルの具体例は、式(1−28)、式(1−29)または式(1−31)に示した化合物などである。
【0209】
電解液中におけるメチレン環状炭酸エステルの含有量は、特に限定されないが、中でも、0.01重量%〜10重量%であることが好ましい。
【0210】
なお、非水溶媒および電解質塩に関する詳細は、例えば、第1実施形態と同様であり、特に、電解液は、第2実施形態で説明した補助化合物を含んでいることが好ましい。より高い効果が得られるからである。この補助化合物の種類および含有量などについては既に詳細に説明したので、ここでは説明を省略する。また、二次電池の動作および製造方法に関する詳細は、例えば、電解液の組成が異なることを除き、第2実施形態(円筒型)と同様である。
【0211】
この円筒型の二次電池によれば、電解液がメチレン環状炭酸エステルを含んでいるので、その電解液の化学的安定性が向上する。これにより、二次電池を繰り返して充放電させると共に高温環境中に二次電池を保存しても放電容量が低下しにくくなる。よって、優れた電池特性を得ることができる。
【0212】
特に、電解液中におけるメチレン環状炭酸エステルの含有量が0.01重量%〜10重量%であれば、より高い効果を得ることができる。また、電解液がメチレン環状炭酸エステルと一緒に補助化合物を含んでいれば、より高い効果を得ることができる。
【0213】
<4−2.リチウムイオン二次電池(角型,ラミネートフィルム型)>
なお、本実施形態の二次電池は、上記した円筒型に代えて、角型またはラミネートフィルム型などでもよい。この角型またはラミネートフィルム型の二次電池の構成は、電解液の組成が異なることを除き、第1実施形態と同様である。この場合でも、優れた電池特性を得ることができる。
【0214】
<4−3.リチウム金属二次電池(円筒型,角型,ラミネートフィルム型)>
また、本実施形態の二次電池は、上記したリチウムイオン二次電池に代えて、リチウム金属二次電池でもよい。この場合の電池構造は、円筒型、角型またはラミネートフィルム型のいずれでもよい。このリチウム金属二次電池の構成は、負極の構成が異なることを除き、第1実施形態と同様である。この場合でも、優れた電池特性を得ることができる。
【0215】
<5.第5実施形態の二次電池/5−1.リチウムイオン二次電池(円筒型)>
次に、本技術の第5実施形態の二次電池について説明する。
【0216】
本実施形態の二次電池は、例えば、電解液の組成が異なることを除き、第2実施形態と同様の構成を有している。すなわち、ここで説明する二次電池は、円筒型のリチウムイオン二次電池である。
【0217】
電解液は、下記の式(23)で表されるメチレン環状炭酸エステルと、下記の式(24)で表される不飽和環状炭酸エステルとを含んでいる。本実施形態の不飽和環状炭酸エステルとは、式(24)から明らかなように、炭酸ビニレン系化合物である。ただし、電解液は、非水溶媒および電解質塩などの他の材料を含んでいてもよい。
【0218】
【化37】

(R1およびR2は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R1およびR2は、互いに結合されていてもよい。)
【0219】
【化38】

(R11およびR12は、水素基またはアルキル基である。)
【0220】
式(23)に示したメチレン環状炭酸エステルに関する詳細は、第1実施形態のメチレン環状炭酸エステルと同様であるので、その説明を省略する。また、式(24)に示した不飽和環状炭酸エステルに関する詳細は、第1実施形態の不飽和環状炭酸エステル(炭酸ビニレン系化合物)と同様であるので、その説明を省略する。
【0221】
ただし、メチレン環状炭酸エステルおよび不飽和環状炭酸エステルのそれぞれの含有量およびそれらの混合比は、所定の条件を満たしている。具体的には、電解液中における不飽和環状炭酸エステルの含有量をA(重量%)、電解液中におけるメチレン環状炭酸エステルの含有量をB(重量%)とする。この場合には、A=0.01重量%〜5重量%、B=0.01重量%〜5重量%、比B/A=0.002〜500という3つの条件を同時に満たしている。不飽和環状炭酸エステルの種類は、式(24)に示した化学的構造を有していれば、特に限定されない。不飽和環状炭酸エステルの具体例は、炭酸ビニレン(1,3−ジオキソール−2−オン)および炭酸メチルビニレン(4−メチル−1,3−ジオキソール−2−オン)などのいずれか1種類または2種類以上である。
【0222】
電解液がメチレン環状炭酸エステルと不飽和環状炭酸エステルとを一緒に含んでいるのは、両者の相乗作用により電解液の化学的安定性が向上するからである。これにより、二次電池を繰り返して充放電させると共に高温環境中に二次電池を保存しても、放電容量が低下しにくくなる。また、メチレン環状炭酸エステルおよび不飽和環状炭酸エステルの含有量および混合比が所定の条件を満たしているのは、電解液の化学的安定性がより向上するからである。これにより、負荷条件(例えば高電流)で二次電池を繰り返して充放電させても、放電容量が低下しにくくなる。このような傾向は、特に、低温などの厳しい温度環境中で二次電池を充放電させた場合に顕著となる。
【0223】
なお、非水溶媒および電解質塩に関する詳細は、例えば、第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0224】
この二次電池の動作および製造方法に関する詳細は、例えば、電解液の組成が異なることを除き、第2実施形態(円筒型)と同様である。
【0225】
この円筒型の二次電池によれば、電解液がメチレン環状炭酸エステルと不飽和環状炭酸エステルとを一緒に含むと共に、それらの含有量A,Bおよび比B/Aが所定の条件を満たしている。この場合には、上記したように、電解液の化学的安定性が著しく向上するため、特に、高温環境中に二次電池を保存したり、負荷条件で二次電池を充放電させても、放電容量が低下しにくくなる。よって、優れた電池特性を得ることができる。
【0226】
<5−2.リチウムイオン二次電池(角型,ラミネートフィルム型)>
なお、本実施形態の二次電池は、上記した円筒型に代えて、角型またはラミネートフィルム型などでもよい。この角型またはラミネートフィルム型の二次電池の構成は、電解液の組成が異なることを除き、第1実施形態と同様である。この場合でも、優れた電池特性を得ることができる。
【0227】
<5−3.リチウム金属二次電池(円筒型,角型,ラミネートフィルム型)>
また、本実施形態の二次電池は、上記したリチウムイオン二次電池に代えて、リチウム金属二次電池でもよい。この場合の電池構造は、円筒型、角型またはラミネートフィルム型のいずれでもよい。このリチウム金属二次電池の構成は、負極の構成が異なることを除き、第1実施形態と同様である。この場合でも、優れた電池特性を得ることができる。
【0228】
ここで、本実施形態の電解液の組成に関する条件(含有量A,Bおよび比B/A)は、上記した第1〜第4の実施形態の二次電池に適用されてもよい。すなわち、第1〜第4の実施形態の二次電池においても、電解液が不飽和環状炭酸エステルを含む場合には、含有量A,Bおよび比B/Aが上記した条件を満たすようにすることで、同様の効果を得ることができる。
【0229】
<6.電解液の組成の適正化>
次に、上記した本技術の第1〜第5実施形態の二次電池に適用される電解液の組成の適正化について説明する。
【0230】
電解液の組成に関する詳細な条件は、以下で説明するように、その電解液の構成成分の種類および組み合わせなどに応じて、適宜適正化されることが好ましい。負荷条件(例えば高電流)で二次電池を繰り返して充放電させても、放電容量の低下が抑制されるからである。このような傾向は、特に、低温などの厳しい温度環境中で二次電池を充放電させた場合に顕著となる。
【0231】
第1に、電解液が式(4)および式(5)に示したハロゲン化炭酸エステルを含む場合には、ハロゲン化炭酸エステルおよびメチレン環状炭酸エステルのそれぞれの含有量と共にそれらの比が適正化されていることが好ましい。この「電解液がハロゲン化炭酸エステルを含む」とは、電解液がハロゲン化環状炭酸エステルおよびハロゲン化鎖状炭酸エステルの一方または双方を含むという意味である。具体的には、電解液中におけるハロゲン化炭酸エステルの含有量をC(重量%)、電解液中におけるメチレン環状炭酸エステルの含有量をD(重量%)とする。この場合には、C=0.01重量%〜30重量%、D=0.01重量%〜5重量%、比D/C=1/3000〜500という3つの条件を同時に満たしていることが好ましい。ハロゲン化炭酸エステルの種類は、式(4)および式(5)に示した化学的構造を有していれば、特に限定されない。ハロゲン化炭酸エステルの具体例は、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンなどのいずれか1種類または2種類以上である。
【0232】
第2に、電解液が炭酸エチレン(1,3−ジオキソラン−2−オン)と炭酸プロピレン(4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン)とを一緒に含む場合には、炭酸エチレンと炭酸プロピレンとの混合比と共にメチレン環状炭酸エステルの含有量が適正化されていることが好ましい。具体的には、混合比は重量比で炭酸エチレン:炭酸プロピレン=75:25〜25:75、電解液中におけるメチレン環状炭酸エステルの含有量は0.01重量%〜10重量%という2つの条件を同時に満たしていることが好ましい。
【0233】
<7.二次電池の用途>
次に、上記した二次電池の適用例について説明する。
【0234】
二次電池の用途は、それを駆動用の電源または電力蓄積用の電力貯蔵源などとして用いることが可能な機械、機器、器具、装置またはシステム(複数の機器などの集合体)などであれば、特に限定されない。二次電池が電源として用いられる場合、それは主電源(優先的に使用される電源)でもよいし、補助電源(主電源に代えて、または主電源から切り換えて使用される電源)でもよい。後者の場合における主電源の種類は、二次電池に限られない。
【0235】
二次電池の用途としては、例えば、以下の用途などが挙げられる。ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、携帯電話機、ノート型パソコン、コードレス電話機、ヘッドホンステレオ、携帯用ラジオ、携帯用テレビまたは携帯用情報端末などの携帯用電子機器である。ただし、電子機器の用途は携帯用に限られない。電気シェーバなどの携帯用生活器具である。バックアップ電源またはメモリーカードなどの記憶用装置である。電動ドリルまたは電動のこぎりなどの電動工具である。ノート型パソコンなどの電源として用いられる電池パックである。ペースメーカーまたは補聴器などの医療用電子機器である。電気自動車(ハイブリッド自動車を含む)などの電動車両である。非常時などに備えて電力を蓄積しておく家庭用バッテリシステムなどの電力貯蔵システムである。もちろん、上記以外の用途でもよい。
【0236】
中でも、二次電池は、電池パック、電動車両、電力貯蔵システム、電動工具または電子機器などに適用されることが有効である。優れた電池特性が要求されるため、本技術の二次電池を用いることにより、有効に特性向上を図ることができるからである。なお、電池パックは、二次電池を用いた電源であり、いわゆる組電池などである。電動車両は、二次電池を駆動用電源として作動(走行)する車両であり、上記したように、二次電池以外の駆動源も併せて備えた自動車(ハイブリッド自動車など)でもよい。電力貯蔵システムは、二次電池を電力貯蔵源として用いるシステムである。例えば、家庭用の電力貯蔵システムでは、電力貯蔵源である二次電池に電力が蓄積されており、その電力が必要に応じて消費されるため、家庭用の電気製品などが使用可能になる。電動工具は、二次電池を駆動用の電源として可動部(例えばドリルなど)が可動する工具である。電子機器は、二次電池を駆動用の電源として各種機能を発揮する機器である。
【0237】
ここで、二次電池のいくつかの適用例について具体的に説明する。なお、以下で説明する各適用例の構成はあくまで一例であるため、適宜変更可能である。
【0238】
<7−1.電池パック>
図7は、電池パックのブロック構成を表している。この電池パックは、例えば、図7に示したように、プラスチック材料などにより形成された筐体60の内部に、制御部61と、電源62と、スイッチ部63と、電流測定部64と、温度検出部65と、電圧検出部66と、スイッチ制御部67と、メモリ68と、温度検出素子69と、電流検出抵抗70と、正極端子71および負極端子72とを備えている。
【0239】
制御部61は、電池パック全体の動作(電源62の使用状態を含む)を制御するものであり、例えば、中央演算処理装置(CPU)などを含んでいる。電源62は、1または2以上の二次電池(図示せず)を含んでいる。この電源62は、例えば、2以上の二次電池を含む組電池であり、それらの接続形式は、直列でもよいし、並列でもよいし、双方の混合型でもよい。一例を挙げると、電源62は、2並列3直列となるように接続された6つの二次電池を含んでいる。
【0240】
スイッチ部63は、制御部61の指示に応じて電源62の使用状態(電源62と外部機器との接続の可否)を切り換えるものである。このスイッチ部63は、例えば、充電制御スイッチ、放電制御スイッチ、充電用ダイオードおよび放電用ダイオード(いずれも図示せず)などを含んでいる。充電制御スイッチおよび放電制御スイッチは、例えば、金属酸化物半導体を用いた電界効果トランジスタ(MOSFET)などの半導体スイッチである。
【0241】
電流測定部64は、電流検出抵抗70を用いて電流を測定して、その測定結果を制御部61に出力するものである。温度検出部65は、温度検出素子69を用いて温度を測定して、その測定結果を制御部61に出力するようになっている。この温度測定結果は、例えば、異常発熱時に制御部61が充放電制御を行う場合や、制御部61が残容量の算出時に補正処理を行うために用いられる。電圧検出部66は、電源62中における二次電池の電圧を測定して、その測定電圧アナログ/デジタル変換(A/D)変換して制御部61に供給するものである。
【0242】
スイッチ制御部67は、電流測定部64および電圧検出部66から入力される信号に応じて、スイッチ部63の動作を制御するものである。
【0243】
このスイッチ制御部67は、例えば、電池電圧が過充電検出電圧に到達した場合に、スイッチ部63(充電制御スイッチ)を切断して、電源62の電流経路に充電電流が流れないように制御するようになっている。これにより、電源62では、放電用ダイオードを介して放電のみが可能になる。なお、スイッチ制御部67は、例えば、充電時に大電流が流れた場合に、充電電流を遮断するようになっている。
【0244】
また、スイッチ制御部67は、例えば、電池電圧が過放電検出電圧に到達した場合に、スイッチ部63(放電制御スイッチ)を切断して、電源62の電流経路に放電電流が流れないように制御するようになっている。これにより、電源62では、充電用ダイオードを介して充電のみが可能になる。なお、スイッチ制御部67は、例えば、放電時に大電流が流れた場合に、放電電流を遮断するようになっている。
【0245】
なお、二次電池では、例えば、過充電検出電圧は4.20V±0.05Vであり、過放電検出電圧は2.4V±0.1Vである。
【0246】
メモリ68は、例えば、不揮発性メモリであるEEPROMなどである。このメモリ68には、例えば、制御部61により演算された数値や、製造工程段階で測定された二次電池の情報(例えば、初期状態の内部抵抗など)が記憶されている。なお、メモリ68に二次電池の満充電容量を記憶させておけば、制御部61が残容量などの情報を把握できる。
【0247】
温度検出素子69は、電源62の温度を測定して、その測定結果を制御部61に出力するものであり、例えば、サーミスタなどである。
【0248】
正極端子71および負極端子72は、電池パックを用いて稼働される外部機器(例えばノート型のパーソナルコンピュータなど)または電池パックを充電するために用いられる外部機器(例えば充電器など)に接続される端子である。電源62の充放電は、正極端子71および負極端子72を介して行われる。
【0249】
<7−2.電動車両>
図8は、電動車両の一例であるハイブリッド自動車のブロック構成を表している。この電動車両は、例えば、図8に示したように、金属製の筐体73の内部に、制御部74と、エンジン75と、電源76と、駆動用のモータ77と、差動装置78と、発電機79と、トランスミッション80およびクラッチ81と、インバータ82,83と、各種センサ84とを備えている。この他、電動車両は、例えば、差動装置78およびトランスミッション80に接続された前輪用駆動軸85および前輪86と、後輪用駆動軸87および後輪88とを備えている。
【0250】
この電動車両は、エンジン75またはモータ77のいずれか一方を駆動源として走行可能である。エンジン75は、主要な動力源であり、例えば、ガソリンエンジンなどである。エンジン75を動力源とする場合、そのエンジン75の駆動力(回転力)は、例えば、駆動部である差動装置78、トランスミッション80およびクラッチ81を介して前輪86または後輪88に伝達される。なお、エンジン75の回転力は発電機79にも伝達され、その回転力により発電機79が交流電力を発生させると共に、その交流電力はインバータ83を介して直流電力に変換され、電源76に蓄積される。一方、変換部であるモータ77を動力源とする場合、電源76から供給された電力(直流電力)がインバータ82を介して交流電力に変換され、その交流電力によりモータ77が駆動する。このモータ77により電力から変換された駆動力(回転力)は、例えば、駆動部である差動装置78、トランスミッション80およびクラッチ81を介して前輪86または後輪88に伝達される。
【0251】
なお、図示しない制動機構により電動車両が減速すると、その減速時の抵抗力がモータ77に回転力として伝達され、その回転力によりモータ77が交流電力を発生させるようにしてもよい。この交流電力はインバータ82を介して直流電力に変換され、その直流回生電力は電源76に蓄積されることが好ましい。
【0252】
制御部74は、電動車両全体の動作を制御するものであり、例えば、CPUなどを含んでいる。電源76は、1または2以上の二次電池(図示せず)を含んでいる。この電源76は、外部電源と接続され、その外部電源から電力供給を受けることで電力を蓄積可能になっていてもよい。各種センサ84は、例えば、エンジン75の回転数を制御したり、図示しないスロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御するために用いられる。この各種センサ84は、例えば、速度センサ、加速度センサ、エンジン回転数センサなどを含んでいる。
【0253】
なお、上記では電動車両としてハイブリッド自動車について説明したが、電動車両は、エンジン75を用いずに電源76およびモータ77だけを用いて作動する車両(電気自動車)でもよい。
【0254】
<7−3.電力貯蔵システム>
図9は、電力貯蔵システムのブロック構成を表している。この電力貯蔵システムは、例えば、図9に示したように、一般住宅または商業用ビルなどの家屋89の内部に、制御部90と、電源91と、スマートメータ92と、パワーハブ93とを備えている。
【0255】
ここでは、電源91は、例えば、家屋89の内部に設置された電気機器94に接続されていると共に、家屋89の外部に停車された電動車両96に接続可能になっている。また、電源91は、例えば、家屋89に設置された自家発電機95にパワーハブ93を介して接続されていると共に、スマートメータ92およびパワーハブ93を介して外部の集中型電力系統97に接続可能になっている。
【0256】
なお、電気機器94は、例えば、冷蔵庫、エアコン、テレビまたは給湯器などの1または2以上の家電製品を含んでいる。自家発電機95は、例えば、太陽光発電機または風力発電機などの1種類または2種類以上である。電動車両96は、例えば、電気自動車、電気バイクまたはハイブリッド自動車などの1種類または2種類以上である。集中型電力系統97は、例えば、火力発電所、原子力発電所、水力発電所または風力発電所などの1種類または2種類以上である。
【0257】
制御部90は、電力貯蔵システム全体の動作(電源91の使用状態を含む)を制御するものであり、例えば、CPUなどを含んでいる。電源91は、1または2以上の二次電池(図示せず)を含んでいる。スマートメータ92は、例えば、電力需要側の家屋89に設置されるネットワーク対応型の電力計であり、電力供給側と通信可能になっている。これに伴い、スマートメータ92は、例えば、必要に応じて外部と通信しながら、家屋89における需要・供給のバランスを制御し、効率的で安定したエネルギー供給を可能にするようになっている。
【0258】
この電力貯蔵システムでは、例えば、外部電源である集中型電力系統97からスマートメータ92およびパワーハブ93を介して電源91に電力が蓄積されると共に、独立電源である自家発電機95からパワーハブ93を介して電源91に電力が蓄積される。この電源91に蓄積された電力は、制御部90の指示に応じて、必要に応じて電気機器94または電動車両96に供給されるため、その電気機器94が稼働可能になると共に、電動車両96が充電可能になる。すなわち、電力貯蔵システムは、電源91を用いて、家屋89内における電力の蓄積および供給を可能にするシステムである。
【0259】
電源91に蓄積された電力は、任意に利用可能である。このため、例えば、電気使用量が安い深夜に集中型電力系統97から電源91に電力を蓄積しておき、その電源91に蓄積しておいた電力を電気使用量が高い日中に用いることができる。
【0260】
なお、上記した電力貯蔵システムは、1戸(1世帯)ごとに設置されていてもよいし、複数戸(複数世帯)ごとに設置されていてもよい。
【0261】
<7−4.電動工具>
図10は、電動工具のブロック構成を表している。この電動工具は、例えば、図10に示したように、電動ドリルであり、プラスチック材料などにより形成された工具本体98の内部に、制御部99と、電源100とを備えている。この工具本体98には、例えば、可動部であるドリル部101が稼働(回転)可能に取り付けられている。
【0262】
制御部99は、電動工具全体の動作(電源100の使用状態を含む)を制御するものであり、例えば、CPUなどを含んでいる。電源100は、1または2以上の二次電池(図示せず)を含んでいる。この制御部99は、図示しない動作スイッチの操作に応じて、必要に応じて電源100からドリル部101に電力を供給して可動させるようになっている。
【実施例】
【0263】
本発明の具体的な実施例について、詳細に説明する。
【0264】
(1)第1実施形態の実施例
まず、第1実施形態の二次電池の諸特性を調べた。
【0265】
(実験例1−1〜1−33)
以下の手順により、図1および図2に示した角型のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0266】
最初に、正極21を作製した。炭酸リチウム(Li2 CO3 )と炭酸コバルト(CoCO3 )とを0.5:1のモル比で混合したのち、空気中で900℃×5時間焼成してリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2 )を得た。続いて、正極活物質(LiCoO2 )91質量部と、正極導電剤(グラファイト)6質量部と、正極結着剤(ポリフッ化ビニリデン:PVDF)3質量部とを混合して正極合剤とした。続いて、有機溶剤(N−メチル−2−ピロリドン:NMP)に正極合剤を分散させてペースト状の正極合剤スラリーとした。続いて、コーティング装置を用いて帯状の正極集電体21A(20μm厚のアルミニウム箔)の両面に正極合剤スラリーを塗布してから乾燥させて正極活物質層21Bを形成した。続いて、ロールプレス機を用いて正極活物質層21Bを圧縮成型した。
【0267】
次に、負極22を作製した。負極活物質(人造黒鉛)90質量部と、負極結着剤(PVDF)10質量部とを混合して負極合剤とした。続いて、有機溶剤(NMP)に負極合剤を分散させてペースト状の負極合剤スラリーとした。続いて、コーティング装置を用いて帯状の負極集電体22A(15μm厚の電解銅箔)の両面に負極合剤スラリーを塗布してから乾燥させて負極活物質層22Bを形成した。続いて、ロールプレス機を用いて負極活物質層22Bを圧縮成型した。
【0268】
次に、非水溶媒に電解質塩を溶解させたのち、必要に応じて表1〜表3に示した組成となるように式(1)に示したメチレン環状炭酸エステルを加えて電解液を調製した。この場合には、非水溶媒として炭酸エチレン(EC)および炭酸エチルメチル(EMC)を用いると共に、その混合比(重量比)をEC:EMC=50:50とした。電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )を用いると共に、その含有量を溶媒に対して1mol/kgとした。非水溶媒として、ECおよびEMCの他、EMCに代えて炭酸プロピレン(PC)、炭酸ジエチル(DEC)または炭酸ジメチル(DMC)を用いた。また、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)も用いた。
【0269】
次に、正極21および負極22と共に電解液を用いて二次電池を組み立てた。続いて、セパレータ23(25μm厚の微孔性ポリプロピレンフィルム)を介して正極21と負極22とを積層してから巻回させて巻回体を作製したのち、その巻回体を扁平状に成型して電池素子20を作製した。続いて、鉄製の電池缶11の内部に電池素子20を収納したのち、その電池素子20の上に絶縁板12を載せた。続いて、正極集電体21Aにアルミニウム製の正極リード24を溶接すると共に、負極集電体22Aにニッケル製の負極リード25を溶接した。この場合には、レーザ溶接法を用いて電池缶11の開放端部に電池蓋13を固定した。最後に、注入孔19から電池缶11の内部に電解液を注入してセパレータ23に含浸させたのち、その注入孔19を封止部材19Aで塞いだ。これにより、角型の二次電池が完成した。この二次電池を作製する場合には、正極活物質層21Bの厚さを調節して、満充電時にリチウム金属が負極22に析出しないようにした。
【0270】
なお、電池構造を比較するために、角型に代えて、図5および図6に示した円筒型のリチウムイオン二次電池も作製した。
【0271】
この場合には、扁平状に成型しないことを除き、上記した電池素子20と同様の手順により巻回電極体40を形成したのち、正極集電体41Aに正極リード45を溶接すると共に、負極集電体42Aに負極リード46を溶接した。また、巻回電極体40の巻回中心にセンターピン44を挿入した。続いて、一対の絶縁板32,33で挟みながら、ニッケル鍍金された鉄製の電池缶31の内部に巻回電極体40を収納した。この場合には、正極リード45の先端部を安全弁機構35に溶接すると共に、負極リード46の先端部を電池缶31に溶接した。続いて、減圧方式により電池缶31の内部に電解液を注入してセパレータ43に含浸させた。最後に、ガスケット37を介して電池缶31の開口端部に電池蓋34、安全弁機構35および熱感抵抗素子36をかしめた。これにより、円筒型の二次電池が完成した。この二次電池についても、正極活物質層41Bの厚さを調節して、満充電時にリチウム金属が負極42に析出しないようにした。
【0272】
これらの二次電池の初回充放電特性および膨れ特性を調べたところ、表1〜表3に示した結果が得られた。
【0273】
初回充放電特性を調べる際には、最初に、電池状態を安定化させるために常温環境中(23℃)で1サイクル充放電させたのち、再び充電させて充電容量を測定した。続いて、同環境中で放電させて放電容量を測定した。この結果から、初回効率(%)=(放電容量/充電容量)×100を算出した。充電時には、0.2Cの電流で上限電圧4.2Vまで定電流定電圧充電し、さらに定電圧で電流が0.05Cに到達するまで充電した。放電時には、0.2Cの電流で終止電圧2.5Vに到達するまで定電流放電した。なお、「0.2C」および「0.05C」とは、それぞれ電池容量(理論容量)を5時間および20時間で放電しきる電流値である。
【0274】
初回膨れ特性を調べる場合には、常温環境中(23℃)で二次電池の厚さを測定した。続いて、電池状態を安定化させるために同環境中で1サイクル充放電させたのち、再び充電させた状態で二次電池の厚さを測定した。この結果から、初回膨れ(mm)=充放電後の厚さ−充放電前の厚さを算出した。充放電条件は、初回充放電特性を調べた場合と同様である。
【0275】
保存膨れ特性を調べる際には、電池状態を安定化させるために常温環境中(23℃)で1サイクル充放電させたのち、再び充電させた状態で二次電池の厚さを測定した。続いて、充電状態のままで恒温槽中(85℃)に12時間保存したのち、その充電状態のままで二次電池の厚さを測定した。この結果から、保存膨れ(mm)=保存後の厚さ−保存前の厚さを算出した。充放電条件は、初回充放電特性を調べた場合と同様である。
【0276】
【表1】

【0277】
【表2】

【0278】
【表3】

【0279】
角型の二次電池において電解液がメチレン環状炭酸エステルを含んでいると、高い初回効率が得られると共に、初回膨れおよび保存膨れが低く抑えられた。
【0280】
詳細には、円筒型の二次電池(実験例1−32,1−33)では、電解液がメチレン環状炭酸エステルを含んでいてもいなくても、初回効率、初回膨れおよび保存膨れに差異が生じなかった。これに対して、角型の二次電池(実験例1−1〜1−31)では、電解液がメチレン環状炭酸エステルを含んでいると、そのメチレン環状炭酸エステルを含んでいない場合と比較して、初回効率が増加すると共に、初回膨れおよび保存膨れが減少した。この場合には、特に、電解液中におけるメチレン環状炭酸エステルの含有量が0.01重量%〜10重量%、さらに0.1重量%〜5重量%であると、より良好な結果が得られた。
【0281】
(2)第2実施形態の実施例
次に、第2実施形態の二次電池の諸特性を調べた。
【0282】
(実験例2−1〜2−36)
電解液の組成を変更したことを除き、第1実施形態の実施例と同様の手順により角型のリチウムイオン二次電池を作製した。電解液を調製する場合には、非水溶媒(ECおよびDMC)に電解質塩(LiPF6 )を溶解させたのち、必要に応じて表4〜表6に示した組成となるように式(11)に示したメチレン環状炭酸エステルおよび補助化合物を加えた。この場合には、非水溶媒の組成を重量比でEC:DMC=50:50、電解質塩の含有量を非水溶媒に対して1mol/kgとした。
【0283】
これらの二次電池のサイクル特性および保存特性を調べたところ、表4〜表6に示した結果が得られた。
【0284】
サイクル特性を調べる場合には、電池状態を安定化させるために常温環境中(23℃)で二次電池を1サイクル充放電させたのち、高温環境中(60℃)で二次電池をさらに1サイクル充放電させて放電容量を測定した。続いて、同環境中でサイクル数の合計が100サイクルになるまで充放電を繰り返して放電容量を測定した。この結果から、サイクル維持率(%)=(100サイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量)×100を算出した。充放電条件は、第1実施形態の実施例と同様である。
【0285】
保存特性を調べる場合には、サイクル特性を調べた場合と同様の手順により電池状態を安定化した二次電池を用いて、常温環境中(23℃)で二次電池を1サイクル充放電させて放電容量を測定した。続いて、二次電池を再び充電させた状態で恒温槽中(80℃)に10日間保存したのち、常温環境中(23℃)で二次電池を放電させて放電容量を測定した。この結果から、保存維持率(%)=(保存後の放電容量/保存前の放電容量)×100を算出した。充放電条件は、第1実施形態の実施例と同様である。
【0286】
【表4】

【0287】
【表5】

【0288】
【表6】

【0289】
電解液がメチレン環状炭酸エステルおよび補助化合物を含んでいると、高いサイクル維持率および保存維持率が得られた。
【0290】
詳細には、メチレン環状炭酸エステルおよび補助化合物のいずれも用いていない場合(実験例2−29)を基準とする。メチレン環状炭酸エステルだけを用いた場合(実験例2−30,2−31)には、保存維持率は僅かに増加したが、サイクル維持率は減少した。また、補助化合物だけを用いた場合(実験例2−32〜2−36)には、サイクル維持率および保存維持率が僅かに増加するに留まった。これに対して、メチレン環状炭酸エステルおよび補助化合物を用いた場合(実験例2−1〜2−28)には、サイクル維持率および保存維持率がいずれも増加し、特に保存維持率が著しく増加した。この結果は、電解液がメチレン環状炭酸エステルと補助化合物とを一緒に含んでいると、高温環境中でも電解液の分解反応が特異的に抑制されることを表している。
【0291】
特に、メチレン環状炭酸エステルおよび補助化合物を用いた場合には、電解液中におけるメチレン環状炭酸エステルの含有量が0.01重量%〜10重量%、さらに0.5重量%〜5重量%であると、より良好な結果が得られた。同様に、電解液中における補助化合物の含有量が0.001重量%〜2重量%、さらに0.1重量%〜1重量%であると、より良好な結果が得られた。
【0292】
(実験例3−1〜3−18)
表7に示したように非水溶媒の組成を変更したことを除き、実験例2−3と同様の手順により二次電池を作製して諸特性を調べた。非水溶媒の組成は、重量比でEC:PC:DMC=10:20:70である。非水溶媒中の含有量は、炭酸ビニレン(VC)が2重量%、FEC、トランス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(t−DFEC)または炭酸ビス(フルオロメチル)(DFDMC)が5重量%である。
【0293】
【表7】

【0294】
非水溶媒の組成を変更しても、高いサイクル維持率および保存維持率が得られた。特に、電解液が不飽和環状炭酸エステル、ハロゲン化環状炭酸エステルまたはハロゲン化鎖状炭酸エステルを含んでいると、サイクル維持率および保存維持率がより増加した。
【0295】
(実験例4−1〜4−3)
表8に示したように電解質塩の組成を変更したことを除き、実験例2−3と同様の手順により二次電池を作製して諸特性を調べた。電解質塩としては、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )、式(7−8)に示した(4,4,4−トリフルオロブチル酸オキサラト)ホウ酸リチウム(LiTFOB)、またはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 2 :LiTFSI)を用いた。この場合には、LiPF6 の含有量を非水溶媒に対して0.9mol/kg、LiBF4 等の含有量を非水溶媒に対して0.1mol/kgとした。
【0296】
【表8】

【0297】
電解質塩の組成を変更しても、高いサイクル維持率および保存維持率が得られた。特に、電解液がLiBF4 などの他の電解質塩を含んでいると、サイクル維持率および保存維持率がより増加した。
【0298】
(3)第3実施形態の実施例
次に、第3実施形態の二次電池の諸特性を調べた。
【0299】
(実験例5−1〜5−36)
電解液の組成を変更したことを除き、第1実施形態の実施例と同様の手順により角型のリチウムイオン二次電池を作製した。電解液を調製する場合には、非水溶媒(ECおよびDMC)に電解質塩(LiPF6 )を溶解させたのち、必要に応じて表9〜表11に示した組成となるように式(17)に示したメチレン環状炭酸エステルおよびハロゲン化炭酸エステルなどを加えた。非水溶媒の組成は重量比でEC:DMC=50:50、電解質塩の含有量は非水溶媒に対して1mol/kg、電解液中のVCの含有量は1重量%とした。
【0300】
第2実施形態の実施例と同様の手順により二次電池のサイクル特性および保存特性を調べたところ、表9〜表11に示した結果が得られた。
【0301】
【表9】

【0302】
【表10】

【0303】
【表11】

【0304】
電解液がメチレン環状炭酸エステルおよびハロゲン化炭酸エステルを含んでいると、高いサイクル維持率および保存維持率が得られた。
【0305】
詳細には、メチレン環状炭酸エステルおよびハロゲン化炭酸エステルのいずれも用いていない場合(実験例5−31)を基準とする。メチレン環状炭酸エステルだけを用いた場合(実験例5−32)には、サイクル維持率は僅かに増加したが、保存維持率は減少した。また、ハロゲン化炭酸エステルだけを用いた場合(実験例5−33〜5−35)には、サイクル維持率および保存維持率がいずれも僅かに増加するに留まった。これに対して、メチレン環状炭酸エステルおよびハロゲン化炭酸エステルを用いた場合(実験例5−1〜5−30)には、サイクル維持率および保存維持率がいずれも著しく増加した。この増加量は、メチレン環状炭酸エステルまたはハロゲン化炭酸エステルのいずれか一方だけを用いた場合に得られた結果から予想される増加量を遙かに上回るものである。すなわち、この結果は、電解液がメチレン環状炭酸エステルとハロゲン化炭酸エステルとを一緒に含んでいると、両者の相乗作用により高温環境中でも電解液の分解反応が特異的に抑制されることを表している。
【0306】
特に、メチレン環状炭酸エステルおよびハロゲン化炭酸エステルを用いた場合には、電解液中におけるメチレン環状炭酸エステルの含有量が0.01重量%〜10重量%、さらに0.1重量%〜5重量%であると、より良好な結果が得られた。同様に、電解液中におけるハロゲン化炭酸エステルの含有量が0.1重量%〜20重量%、さらに5重量%〜20重量%であると、より良好な結果が得られた。また、電解液が不飽和環状炭酸エステルを含んでいると、サイクル維持率および保存維持率がより増加した。
【0307】
(4)第4実施形態の実施例
次に、第4実施形態の二次電池の諸特性を調べた。
【0308】
(実験例6−1〜6−21)
電解液の組成を変更したことを除き、第1実施形態の実施例と同様の手順により角型のリチウムイオン二次電池を作製した。電解液を調製する場合には、非水溶媒(ECおよびDMC)に電解質塩(LiPF6 )を溶解させたのち、必要に応じて表12に示した組成となるように式(20)〜式(22)に示したメチレン環状炭酸エステルおよび補助化合物を加えた。非水溶媒の組成は重量比でEC:DMC=50:50、電解質塩の含有量は非水溶媒に対して1mol/kgとした。
【0309】
第1実施形態の実施例と同様の手順により二次電池の初回充放電特性を調べると共に、第2実施形態の実施例と同様の手順により二次電池のサイクル特性および保存特性を調べたところ、表12に示した結果が得られた。
【0310】
【表12】

【0311】
電解液が特定の構造を有するメチレン環状炭酸エステルを含んでいると、高いサイクル維持率および保存維持率が得られた。
【0312】
詳細には、メチレン環状炭酸エステルを用いていない場合(実験例6−19)を基準とする。式(20)〜式(22)に示した条件を満たさない場合(実験例6−20,6−21)には、上記基準と比較して、サイクル維持率は僅かに増加したが、保存維持率は減少した。これに対して、式(20)〜式(22)に示した条件を満たす場合(実験例6−1〜6−18)には、上記基準と比較して、サイクル維持率および保存維持率がいずれも増加した。この結果は、電解液が特定の構造を有するメチレン環状炭酸エステルを含んでいると、高温環境中でも電解液の分解反応が特異的に抑制されることを表している。
【0313】
特に、メチレン環状炭酸エステルを用いた場合には、電解液中におけるメチレン環状炭酸エステルの含有量が0.01重量%〜10重量%であると、より良好な結果が得られた。また、電解液が補助化合物を含んでいると、サイクル維持率および保存維持率がより増加した。
【0314】
(5)第5実施形態の実施例
次に、第5実施形態の二次電池の諸特性を調べた。
【0315】
(実験例7−1〜7−25,8−1〜8−25)
表13および表14に示したように、電解液の組成を変更したことを除き、実験例1−1〜1−7と同様の手順により二次電池を作製して諸特性を調べた。この場合には、不飽和環状炭酸エステル(炭酸ビニレン系化合物)の含有量A(重量%)、メチレン環状炭酸エステルの含有量B(重量%)、比B/Aをそれぞれ変化させた。不飽和環状炭酸エステルとしては、炭酸メチルビニレン(MVC)およびVCを用いた。
【0316】
ここでは、サイクル特性および保存特性だけでなく、負荷特性も調べた。負荷特性を調べる場合には、サイクル特性を調べた場合と同様の手順により電池状態を安定化した二次電池を用いて、常温環境中(23℃)で二次電池を1サイクル充放電させて放電容量を測定した。続いて、低温環境中(−10℃)でサイクル数の合計が100サイクルになるまで充放電を繰り返して放電容量を測定した。この結果から、負荷維持率(%)=(100サイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量)×100を算出した。充電条件は、サイクル特性を調べた場合と同様である。放電時には、1Cの電流で終始電圧2.5Vに到達するまで定電流放電した。「1C」とは、電池容量(理論容量)を1時間で放電しきる電流値である。
【0317】
【表13】

【0318】
【表14】

【0319】
比B/Aを変更しても、電解液がメチレン環状炭酸エステルを含んでいると、高いサイクル維持率および保存維持率が得られた。特に、A=0.01重量%〜5重量%、B=0.01重量%〜5重量%、比B/A=0.002〜500という3つの条件を同時に満たしていると、高い負荷維持率も得られた。
【0320】
なお、第1〜第4実施形態の二次電池においても、電解液が不飽和環状炭酸エステルを含む場合には、第5実施形態と同様に含有量A,Bおよび比B/Aを適正化することで、表13および表14と同様の結果が得られるはずである。
【0321】
この他、上記した第1〜第5実施形態の二次電池を代表して、第1実施形態の二次電池について非水溶媒の組成の適正化を行ったところ、下記の結果が得られた。
【0322】
(実験例9−1〜9−30)
表15および表16に示したように、電解液の組成を変更したことを除き、実験例1−1〜1−7と同様の手順により二次電池を作製して諸特性を調べた。この場合には、ハロゲン化炭酸エステルの含有量C(重量%)、メチレン環状炭酸エステルの含有量D(重量%)、比D/Cをそれぞれ変化させた。ハロゲン化炭酸エステルとしては、FECを用いた。
【0323】
【表15】

【0324】
【表16】

【0325】
比D/Cを変更しても、電解液がメチレン環状炭酸エステルを含んでいると、高いサイクル維持率および保存維持率が得られた。特に、C=0.01重量%〜30重量%、D=0.01重量%〜5重量%、比D/C=1/3000〜500という3つの条件を同時に満たしていると、高い負荷維持率も得られた。
【0326】
(実験例10−1〜10−42)
表17および表18に示したように、環状炭酸エステルであるECとPCとの混合比を変更したことを除き、実験例1−1〜1−7と同様の手順により二次電池を作製して諸特性を調べた。なお、表中の「不可」は、二次電池の破損等に起因して放電容量および厚さを測定できなかったことを表している。
【0327】
【表17】

【0328】
【表18】

【0329】
ECとPCとの混合比を変更しても、電解液がメチレン環状炭酸エステルを含んでいると、高い初回効率が得られると共に、初回膨れおよび保存膨れが低く抑えられた。特に、混合比がEC:PC=75:25〜25:75、メチレン環状炭酸エステルの含有量が0.01重量%〜10重量%という2つの条件を同時に満たしていると、高い負荷維持率も得られた。
【0330】
なお、第2〜第5実施形態の二次電池においても、電解液がハロゲン化炭酸エステルを含む場合には、上記したように含有量C,Dおよび比D/Cを適正化することで、表15および表16と同様の結果が得られるはずである。また、第2〜第5実施形態の二次電池においても、電解液がECとPCとを一緒に含む場合には、上記したようにECとPCとの混合比およびメチレン環状炭酸エステルの含有量を適正化することで、表17および表18と同様の結果が得られるはずである。
【0331】
表1〜表18の結果から、以下のことが導き出された。本技術では、第1に、平坦な外面を有する外装部材を用いた二次電池において、電解液が式(1)に示したメチレン環状炭酸エステルを含んでいると、初回充放電特性および膨れ特性が向上するため、優れた電池特性が得られる。第2に、電解液が式(11)に示したメチレン環状炭酸エステルと共に補助化合物を含んでいると、サイクル特性および保存特性が向上するため、優れた電池特性が得られる。第3に、電解液が式(17)に示したメチレン環状炭酸エステルと共にハロゲン化炭酸エステルを含んでいると、サイクル特性および保存特性が向上するため、優れた電池特性が得られる。第4に、電解液が式(20)〜式(22)に示したメチレン環状炭酸エステルを含んでいると、初回充放電特性、サイクル特性および保存特性が向上するため、優れた電池特性が得られる。しかも、上記した一連の結果は、非水溶媒の組成または電解質塩の組成などに依存せずに得られる。
【0332】
以上、実施形態および実施例を挙げて本技術について説明したが、本技術は実施形態および実施例で説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、二次電池の種類としてリチウムイオン二次電池またはリチウム金属二次電池について説明したが、これに限られない。本技術の二次電池は、負極の容量がリチウムイオンの吸蔵放出による容量とリチウム金属の析出溶解に伴う容量とを含み、かつ、それらの容量の和により電池容量が表される二次電池についても同様に適用可能である。この場合には、リチウムイオンを吸蔵放出可能である負極材料が用いられると共に、その負極材料の充電可能な容量は正極の放電容量よりも小さくなるように設定される。
【0333】
また、実施形態および実施例では、電池構造が角型、円筒型またはラミネートフィルム型であると共に、電池素子が巻回構造を有する場合を例に挙げて説明したが、これに限られない。本技術の二次電池は、コイン型またはボタン型などの他の電池構造を有する場合や、電池素子が積層構造などの他の構造を有する場合についても、同様に適用可能である。
【0334】
また、実施形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる場合について説明したが、これに限られない。この電極反応物質は、例えば、ナトリウム(Na)またはカリウム(K)などの他の1族元素や、マグネシウムまたはカルシウムなどの2族元素や、アルミニウムなどの他の軽金属でもよい。本技術の効果は、電極反応物質の種類に依存せずに得られるはずであるため、その電極反応物質の種類を変更しても同様の効果を得ることができる。
【0335】
また、実施形態および実施例では、メチレン環状炭酸エステルの含有量について、実施例の結果から導き出された適正範囲を説明している。しかしながら、その説明は、含有量が上記した範囲外となる可能性を完全に否定するものではない。すなわち、上記した適正範囲は、あくまで本技術の効果を得る上で特に好ましい範囲であるため、本技術の効果が得られるのであれば、上記した範囲から含有量が多少外れてもよい。このことは、他の材料の含有量についても同様である。
【0336】
なお、本技術は以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
平坦面を有する外装部材の内部に正極および負極と共に非水電解液を備え、
前記非水電解液は、下記の式(1)で表されるメチレン環状炭酸エステルを含む、
二次電池。
【化39】

(R1およびR2は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R1およびR2は、互いに結合されていてもよい。)
(2)
前記ハロゲン基はフッ素基、塩素基、臭素基またはヨウ素基であり、
前記1価の炭化水素基または前記1価のハロゲン化炭化水素基は炭素数=1〜12のアルキル基、炭素数=2〜12のアルケニル基、炭素数=2〜12のアルキニル基、炭素数=6〜18のアリール基、炭素数=3〜18のシクロアルキル基、またはそれらの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基であり、
前記1価の酸素含有炭化水素基または前記1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基は炭素数=1〜12のアルコキシ基、またはその少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基である、
上記(1)に記載の二次電池。
(3)
前記非水電解液中における前記メチレン環状炭酸エステルの含有量は、0.01重量%〜10重量%である、
上記(1)または(2)に記載の二次電池。
(4)
前記外装部材は、電池缶またはラミネートフィルムである、
上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の二次電池。
(5)
リチウム二次電池である、
上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の二次電池。
(6)
前記非水電解液は、下記の式(2)で表される不飽和環状炭酸エステルを含み、
前記非水電解液中における前記不飽和環状炭酸エステルの含有量をA(重量%)、前記非水電解液中における前記メチレン環状炭酸エステルの含有量をB(重量%)としたとき、A=0.01重量%〜5重量%、B=0.01重量%〜5重量%、およびB/A=0.002〜500を満たす、
上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の二次電池。
【化40】

(R11およびR12は、水素基またはアルキル基である。)
(7)
前記不飽和環状炭酸エステルは、炭酸ビニレン(1,3−ジオキソール−2−オン)または炭酸メチルビニレン(4−メチル−1,3−ジオキソール−2−オン)である、
上記(6)に記載の二次電池。
(8)
前記非水電解液は、ハロゲン化炭酸エステルを含み、
前記ハロゲン化炭酸エステルは、下記の式(4)で表される環状ハロゲン化炭酸エステルおよび式(5)で表される鎖状ハロゲン化炭酸エステルのうちの少なくとも一方を含み、
前記非水電解液中における前記ハロゲン化炭酸エステルの含有量をC(重量%)、前記非水電解液中における前記メチレン環状炭酸エステルの含有量をD(重量%)としたとき、C=0.01重量%〜30重量%、D=0.01重量%〜5重量%、およびD/C=1/3000〜500を満たす、
上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の二次電池。
【化41】

(R17〜R20は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R17〜R20のうちの少なくとも1つは、ハロゲン基または1価のハロゲン化炭化水素基である。)
【化42】

(R21〜R26は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R21〜R26のうちの少なくとも1つは、ハロゲン基または1価のハロゲン化炭化水素基である。)
(9)
前記ハロゲン化炭酸エステルは、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンである、
上記(8)に記載の二次電池。
(10)
前記非水電解液は、炭酸エチレン(1,3−ジオキソラン−2−オン)および炭酸プロピレン(4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン)を含み、
前記炭酸エチレンと前記炭酸プロピレンとの混合比は、重量比で炭酸エチレン:炭酸プロピレン=75:25〜25:75であり、
前記非水電解液中における前記メチレン環状炭酸エステルの含有量は、0.01重量%〜10重量%である、
上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の二次電池。
【0337】
また、本技術は以下のような構成を取ることも可能である。
(11)
正極および負極と共に非水電解液を備え、
前記非水電解液は、下記の式(11)で表されるメチレン環状炭酸エステルと、式(12)〜式(16)で表される化合物のうちの少なくとも1種とを含む、
二次電池。
【化43】

(R1およびR2は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R1およびR2は、互いに結合されていてもよい。)
【化44】

(R71およびR73は、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R72は、2価の炭化水素基、2価のハロゲン化炭化水素基、2価の酸素含有炭化水素基、または2価のハロゲン化酸素含有炭化水素基である。)
【化45】

(R74およびR76は、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R75は、2価の炭化水素基、2価のハロゲン化炭化水素基、2価の酸素含有炭化水素基、または2価のハロゲン化酸素含有炭化水素基である。nは、1以上の整数である。)
【化46】

(R77およびR79は、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R78は、2価の炭化水素基、2価のハロゲン化炭化水素基、2価の酸素含有炭化水素基、または2価のハロゲン化酸素含有炭化水素基である。)
Li2 PFO3 …(15)
LiPF2 2 …(16)
(12)
前記R1およびR2のうち、
前記ハロゲン基は、フッ素基、塩素基、臭素基またはヨウ素基であり、
前記1価の炭化水素基または前記1価のハロゲン化炭化水素基は、炭素数=1〜12のアルキル基、炭素数=2〜12のアルケニル基、炭素数=2〜12のアルキニル基、炭素数=6〜18のアリール基、炭素数=3〜18のシクロアルキル基、またはそれらの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基であり、
前記1価の酸素含有炭化水素基または前記1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基は、炭素数=1〜12のアルコキシ基、またはその少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基であり、
前記R71〜79のうち、
前記1価の炭化水素基または前記1価のハロゲン化炭化水素基は、炭素数=1〜12のアルキル基、炭素数=2〜12のアルケニル基、炭素数=2〜12のアルキニル基、炭素数=6〜18のアリール基、炭素数=6〜18のシクロアルキル基、またはそれらの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基であり、
前記1価の酸素含有炭化水素基または前記1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基は、炭素数=1〜12のアルコキシ基、またはその少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基であり、
前記2価の炭化水素基または前記2価のハロゲン化水素基は、炭素数=1〜12のアルキレン基、炭素数=2〜12のアルケニレン基、炭素数=2〜12のアルキニレン基、炭素数=6〜18のアリーレン基、炭素数=3〜18のシクロアルキレン基、アリーレン基とアルキレン基とを含む基、またはそれらの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基であり、
前記2価の酸素含有炭化水素基または前記2価のハロゲン化酸素含有炭化水素基は、エーテル結合とアルキレン基とを含む基、またはその少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基である、
上記(11)に記載の二次電池。
(13)
前記非水電解液中における前記メチレン環状炭酸エステルの含有量は、0.01重量%〜10重量%であると共に、前記非水電解液中における前記化合物の含有量は、0.001重量%〜2重量%である、
上記(11)または(12)に記載の二次電池。
(14)
前記非水電解液は、下記の式(2)で表される不飽和環状炭酸エステルを含み、
前記非水電解液中における前記不飽和環状炭酸エステルの含有量をA(重量%)、前記非水電解液中における前記メチレン環状炭酸エステルの含有量をB(重量%)としたとき、A=0.01重量%〜5重量%、B=0.01重量%〜5重量%、およびB/A=0.002〜500を満たす、
上記(11)ないし(13)のいずれかに記載の二次電池。
【化47】

(R11およびR12は、水素基またはアルキル基である。)
(15)
前記不飽和環状炭酸エステルは、炭酸ビニレン(1,3−ジオキソール−2−オン)または炭酸メチルビニレン(4−メチル−1,3−ジオキソール−2−オン)である、
上記(14)に記載の二次電池。
(16)
前記非水電解液は、ハロゲン化炭酸エステルを含み、
前記ハロゲン化炭酸エステルは、下記の式(4)で表される環状ハロゲン化炭酸エステルおよび式(5)で表される鎖状ハロゲン化炭酸エステルのうちの少なくとも一方を含み、
前記非水電解液中における前記ハロゲン化炭酸エステルの含有量をC(重量%)、前記非水電解液中における前記メチレン環状炭酸エステルの含有量をD(重量%)としたとき、C=0.01重量%〜30重量%、D=0.01重量%〜5重量%、およびD/C=1/3000〜500を満たす、
上記(11)ないし(13)のいずれかに記載の二次電池。
【化48】

(R17〜R20は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R17〜R20のうちの少なくとも1つは、ハロゲン基または1価のハロゲン化炭化水素基である。)
【化49】

(R21〜R26は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R21〜R26のうちの少なくとも1つは、ハロゲン基または1価のハロゲン化炭化水素基である。)
(17)
前記ハロゲン化炭酸エステルは、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンである、
上記(16)に記載の二次電池。
(18)
前記非水電解液は、炭酸エチレン(1,3−ジオキソラン−2−オン)および炭酸プロピレン(4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン)を含み、
前記炭酸エチレンと前記炭酸プロピレンとの混合比は、重量比で炭酸エチレン:炭酸プロピレン=75:25〜25:75であり、
前記非水電解液中における前記メチレン環状炭酸エステルの含有量は、0.01重量%〜10重量%である、
上記(11)ないし(13)のいずれかに記載の二次電池。
【0338】
また、本技術は以下のような構成を取ることも可能である。
(19)
正極および負極と共に非水電解液を備え、
前記非水電解液は、下記の式(17)で表されるメチレン環状炭酸エステルと、式(18)および式(19)で表されるハロゲン化炭酸エステルのうちの少なくとも一方とを含む、
二次電池。
【化50】

(R1およびR2は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R1およびR2は、互いに結合されていてもよい。)
【化51】

(R17〜R20は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R17〜R20のうちの少なくとも1つは、ハロゲン基または1価のハロゲン化炭化水素基である。)
【化52】

(R21〜R26は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R21〜R26のうちの少なくとも1つは、ハロゲン基または1価のハロゲン化炭化水素基である。)
(20)
前記R1およびR2のうち、
前記ハロゲン基は、フッ素基、塩素基、臭素基またはヨウ素基であり、
前記1価の炭化水素基または前記1価のハロゲン化炭化水素基は、炭素数=1〜12のアルキル基、炭素数=2〜12のアルケニル基、炭素数=2〜12のアルキニル基、炭素数=6〜18のアリール基、炭素数=3〜18のシクロアルキル基、またはそれらの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基であり、
前記1価の酸素含有炭化水素基または前記1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基は、炭素数=1〜12のアルコキシ基、またはその少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基であり、
前記R17〜26のうち、
前記ハロゲン基は、フッ素基、塩素基、臭素基またはヨウ素基であり、
前記1価の炭化水素基または前記1価のハロゲン化炭化水素基は、炭素数=1〜12のアルキル基、またはその少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基である、
上記(19)に記載の二次電池。
(21)
前記非水電解液中における前記メチレン環状炭酸エステルの含有量は、0.01重量%〜10重量%であると共に、前記非水電解液中における前記ハロゲン化炭酸エステルの含有量は、0.1重量%〜20重量%である、
上記(19)または(20)に記載の二次電池。
(22)
前記非水電解液は、下記の式(2)で表される不飽和環状炭酸エステルを含み、
前記非水電解液中における前記不飽和環状炭酸エステルの含有量をA(重量%)、前記非水電解液中における前記メチレン環状炭酸エステルの含有量をB(重量%)としたとき、A=0.01重量%〜5重量%、B=0.01重量%〜5重量%、およびB/A=0.002〜500を満たす、
上記(19)ないし(21)のいずれかに記載の二次電池。
【化53】

(R11およびR12は、水素基またはアルキル基である。)
(23)
前記不飽和環状炭酸エステルは、炭酸ビニレン(1,3−ジオキソール−2−オン)または炭酸メチルビニレン(4−メチル−1,3−ジオキソール−2−オン)である、
上記(22)に記載の二次電池。
(24)
前記非水電解液中における前記ハロゲン化炭酸エステルの含有量をC(重量%)、前記非水電解液中における前記メチレン環状炭酸エステルの含有量をD(重量%)としたとき、C=0.01重量%〜30重量%、D=0.01重量%〜5重量%、およびD/C=1/3000〜500を満たす、
上記(19)ないし(21)のいずれかに記載の二次電池。
(25)
前記ハロゲン化炭酸エステルは、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンである、
上記(24)に記載の二次電池。
(26)
前記非水電解液は、炭酸エチレン(1,3−ジオキソラン−2−オン)および炭酸プロピレン(4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン)を含み、
前記炭酸エチレンと前記炭酸プロピレンとの混合比は、重量比で炭酸エチレン:炭酸プロピレン=75:25〜25:75であり、
前記非水電解液中における前記メチレン環状炭酸エステルの含有量は、0.01重量%〜10重量%である、
上記(19)ないし(21)のいずれかに記載の二次電池。
【0339】
また、本技術は以下のような構成を取ることも可能である。
(27)
正極および負極と共に非水電解液を備え、
前記非水電解液は、下記の式(20)〜式(22)で表されるメチレン環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種を含む、
二次電池。
【化54】

(R81は、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価のハロゲン化鎖状不飽和炭化水素基、ハロゲン基、または1価のハロゲン化鎖状飽和炭化水素基である。)
【化55】

(R82およびR83は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R82およびR83のうちの少なくとも一方は、1価の環状炭化水素基または1価のハロゲン化環状炭化水素基である。)
【化56】

(R84は、2価の炭化水素基または2価のハロゲン化炭化水素基である。)
(28)
前記R81のうち、
前記1価の鎖状不飽和炭化水素基または前記1価のハロゲン化鎖状不飽和炭化水素基は、炭素数=2〜12のアルケニル基、炭素数=2〜12のアルキニル基、炭素数=6〜18のアリール基、炭素数=6〜18のアリール基と炭素数=1〜12のアルキレン基とが結合された基、炭素数=1〜12のアルキル基のうちの途中の水素基が炭素数=6〜18のアリール基により置換された基、またはそれらの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基であり、
前記ハロゲン基は、フッ素基、塩素基、臭素基またはヨウ素基であり、
前記1価のハロゲン化鎖状飽和炭化水素基は、炭素数=1〜12のアルキル基、炭素数=2〜12のアルケニル基、または炭素数=2〜12のアルキニル基のうちの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基であり、
前記R82およびR83のうち、
前記ハロゲン基は、フッ素基、塩素基、臭素基またはヨウ素基であり、
前記1価の炭化水素基または前記1価のハロゲン化炭化水素基は、炭素数=1〜12のアルキル基、炭素数=2〜12のアルケニル基、炭素数=2〜12のアルキニル基、炭素数=6〜18のアリール基、炭素数=3〜18のシクロアルキル基、またはそれらの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基であり、
前記1価の酸素含有炭化水素基または前記1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基は、炭素数=1〜12のアルコキシ基、またはその少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基であり、
前記1価の環状炭化水素基または前記1価のハロゲン化環状炭化水素基は、炭素数=6〜18のアリール基、炭素数=6〜18のアリール基と炭素数=1〜12のアルキレン基とが結合された基、炭素数=6〜18のシクロアルキル基、炭素数=6〜18のシクロアルキル基と炭素数=1〜12のアルキレン基とが結合された基、またはそれらの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基であり、
前記R84のうち、
前記2価の炭化水素基または前記2価のハロゲン化水素基は、炭素数=1〜12のアルキレン基、またはその少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基である、
上記(27)に記載の二次電池。
(29)
前記非水電解液中における前記メチレン環状炭酸エステルの含有量は、0.01重量%〜10重量%である、
上記(27)または(28)に記載の二次電池。
(30)
前記非水電解液は、下記の式(2)で表される不飽和環状炭酸エステルを含み、
前記非水電解液中における前記不飽和環状炭酸エステルの含有量をA(重量%)、前記非水電解液中における前記メチレン環状炭酸エステルの含有量をB(重量%)としたとき、A=0.01重量%〜5重量%、B=0.01重量%〜5重量%、およびB/A=0.002〜500を満たす、
上記(27)ないし(29)のいずれかに記載の二次電池。
【化57】

(R11およびR12は、水素基またはアルキル基である。)
(31)
前記不飽和環状炭酸エステルは、炭酸ビニレン(1,3−ジオキソール−2−オン)または炭酸メチルビニレン(4−メチル−1,3−ジオキソール−2−オン)である、
上記(30)に記載の二次電池。
(32)
前記非水電解液は、ハロゲン化炭酸エステルを含み、
前記ハロゲン化炭酸エステルは、下記の式(4)で表される環状ハロゲン化炭酸エステルおよび式(5)で表される鎖状ハロゲン化炭酸エステルのうちの少なくとも一方を含み、
前記非水電解液中における前記ハロゲン化炭酸エステルの含有量をC(重量%)、前記非水電解液中における前記メチレン環状炭酸エステルの含有量をD(重量%)としたとき、C=0.01重量%〜30重量%、D=0.01重量%〜5重量%、およびD/C=1/3000〜500を満たす、
上記(27)ないし(29)のいずれかに記載の二次電池。
【化58】

(R17〜R20は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R17〜R20のうちの少なくとも1つは、ハロゲン基または1価のハロゲン化炭化水素基である。)
【化59】

(R21〜R26は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R21〜R26のうちの少なくとも1つは、ハロゲン基または1価のハロゲン化炭化水素基である。)
(33)
前記ハロゲン化炭酸エステルは、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンである、
上記(32)に記載の二次電池。
(34)
前記非水電解液は、炭酸エチレン(1,3−ジオキソラン−2−オン)および炭酸プロピレン(4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン)を含み、
前記炭酸エチレンと前記炭酸プロピレンとの混合比は、重量比で炭酸エチレン:炭酸プロピレン=75:25〜25:75であり、
前記非水電解液中における前記メチレン環状炭酸エステルの含有量は、0.01重量%〜10重量%である、
上記(27)ないし(29)のいずれかに記載の二次電池。
【0340】
また、本技術は以下のような構成を取ることも可能である。
(35)
正極および負極と共に非水電解液を備え、
前記非水電解液は、下記の式(23)で表されるメチレン環状炭酸エステルと、式(24)で表される不飽和環状炭酸エステルとを含み、
前記非水電解液中における前記不飽和環状炭酸エステルの含有量をA(重量%)、前記非水電解液中における前記メチレン環状炭酸エステルの含有量をB(重量%)としたとき、A=0.01重量%〜5重量%、B=0.01重量%〜5重量%、およびB/A=0.002〜500を満たす、
二次電池。
【化60】

(R1およびR2は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R1およびR2は、互いに結合されていてもよい。)
【化61】

(R11およびR12は、水素基またはアルキル基である。)
(36)
前記ハロゲン基は、フッ素基、塩素基、臭素基またはヨウ素基であり、
前記1価の炭化水素基または前記1価のハロゲン化炭化水素基は、炭素数=1〜12のアルキル基、炭素数=2〜12のアルケニル基、炭素数=2〜12のアルキニル基、炭素数=6〜18のアリール基、炭素数=3〜18のシクロアルキル基、またはそれらの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基であり、
前記1価の酸素含有炭化水素基または前記1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基は、炭素数=1〜12のアルコキシ基、またはその少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基である、
上記(35)に記載の二次電池。
(37)
前記不飽和環状炭酸エステルは、炭酸ビニレン(1,3−ジオキソール−2−オン)または炭酸メチルビニレン(4−メチル−1,3−ジオキソール−2−オン)である、
上記(35)または(36)に記載の二次電池。
(38)
前記非水電解液は、ハロゲン化炭酸エステルを含み、
前記ハロゲン化炭酸エステルは、下記の式(4)で表される環状ハロゲン化炭酸エステルおよび式(5)で表される鎖状ハロゲン化炭酸エステルのうちの少なくとも一方を含み、
前記非水電解液中における前記ハロゲン化炭酸エステルの含有量をC(重量%)、前記非水電解液中における前記メチレン環状炭酸エステルの含有量をD(重量%)としたとき、C=0.01重量%〜30重量%、D=0.01重量%〜5重量%、およびD/C=1/3000〜500を満たす、
上記(35)ないし(37)のいずれかに記載の二次電池。
【化62】

(R17〜R20は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R17〜R20のうちの少なくとも1つは、ハロゲン基または1価のハロゲン化炭化水素基である。)
【化63】

(R21〜R26は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R21〜R26のうちの少なくとも1つは、ハロゲン基または1価のハロゲン化炭化水素基である。)
(39)
前記ハロゲン化炭酸エステルは、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンである、
上記(38)に記載の二次電池。
(40)
前記非水電解液は、炭酸エチレン(1,3−ジオキソラン−2−オン)および炭酸プロピレン(4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン)を含み、
前記炭酸エチレンと前記炭酸プロピレンとの混合比は、重量比で炭酸エチレン:炭酸プロピレン=75:25〜25:75であり、
前記非水電解液中における前記メチレン環状炭酸エステルの含有量は、0.01重量%〜10重量%である、
上記(35)ないし(37)のいずれかに記載の二次電池。
【0341】
この他、本技術は以下のような構成を取ることも可能である。
(41)
下記の式(11)で表されるメチレン環状炭酸エステルと、式(12)〜式(16)で表される化合物のうちの少なくとも1種とを含む、
二次電池用非水電解液。
【化64】

(R1およびR2は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R1およびR2は、互いに結合されていてもよい。)
【化65】

(R71およびR73は、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R72は、2価の炭化水素基、2価のハロゲン化炭化水素基、2価の酸素含有炭化水素基、または2価のハロゲン化酸素含有炭化水素基である。)
【化66】

(R74およびR76は、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R75は、2価の炭化水素基、2価のハロゲン化炭化水素基、2価の酸素含有炭化水素基、または2価のハロゲン化酸素含有炭化水素基である。nは、1以上の整数である。)
【化67】

(R77およびR79は、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R78は、2価の炭化水素基、2価のハロゲン化炭化水素基、2価の酸素含有炭化水素基、または2価のハロゲン化酸素含有炭化水素基である。)
Li2 PFO3 …(15)
LiPF2 2 …(16)
(42)
下記の式(17)で表されるメチレン環状炭酸エステルと、式(18)および式(19)で表されるハロゲン化炭酸エステルのうちの少なくとも一方とを含む、
二次電池用非水電解液。
【化68】

(R1およびR2は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R1およびR2は、互いに結合されていてもよい。)
【化69】

(R17〜R20は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R17〜R20のうちの少なくとも1つは、ハロゲン基または1価のハロゲン化炭化水素基である。)
【化70】

(R21〜R26は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R21〜R26のうちの少なくとも1つは、ハロゲン基または1価のハロゲン化炭化水素基である。)
(43)
下記の式(20)〜式(22)で表されるメチレン環状炭酸エステルのうちの少なくとも1種を含む、
二次電池用非水電解液。
【化71】

(R81は、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価のハロゲン化鎖状不飽和炭化水素基、ハロゲン基、または1価のハロゲン化鎖状飽和炭化水素基である。)
【化72】

(R82およびR83は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R82およびR83のうちの少なくとも一方は1価の環状炭化水素基または1価の環状炭化水素基である。)
【化73】

(R84は、2価の炭化水素基または2価のハロゲン化炭化水素基である。)
(44)
下記の式(23)で表されるメチレン環状炭酸エステルと、式(24)で表される不飽和環状炭酸エステルとを含み、
前記非水電解液中における前記不飽和環状炭酸エステルの含有量をA(重量%)、前記非水電解液中における前記メチレン環状炭酸エステルの含有量をB(重量%)としたとき、A=0.01重量%〜5重量%、B=0.01重量%〜5重量%、およびB/A=0.002〜500を満たす、
二次電池用非水電解液。
【化74】

(R1およびR2は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R1およびR2は、互いに結合されていてもよい。)
【化75】

(R11およびR12は、水素基またはアルキル基である。)
【0342】
また、本技術は以下のような構成を取ることも可能である。
(45)
上記(1)ないし(40)のいずれかに記載の二次電池と、
その二次電池の使用状態を制御する制御部と、
その制御部の指示に応じて前記二次電池の使用状態を切り換えるスイッチ部と
を備えた、電池パック。
(46)
上記(1)ないし(40)のいずれかに記載の二次電池と、
その二次電池から供給された電力を駆動力に変換する変換部と、
その駆動力に応じて駆動する駆動部と、
前記二次電池の使用状態を制御する制御部と
を備えた、電動車両。
(47)
上記(1)ないし(40)のいずれかに記載の二次電池と、
その二次電池から電力を供給される1または2以上の電気機器と、
前記二次電池からの前記電気機器に対する電力供給を制御する制御部と
を備えた、電力貯蔵システム。
(48)
上記(1)ないし(40)のいずれかに記載の二次電池と、
その二次電池から電力を供給される可動部と
を備えた、電動工具。
(49)
上記(1)ないし(40)のいずれかに記載の二次電池を電力供給源として備えた、
電子機器。
【符号の説明】
【0343】
11,31…電池缶、20…電池素子、21,33,41…正極、21A,33A,41A…正極集電体、21B,33B,41B…正極活物質層、22、34,42…負極、22A,34A,42A…負極集電体、22B,34B,24B…負極活物質層、23,35,43…セパレータ、30,40…巻回電極体、39…外装部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦面を有する外装部材の内部に正極および負極と共に非水電解液を備え、
前記非水電解液は、下記の式(1)で表されるメチレン環状炭酸エステルを含む、
二次電池。
【化1】

(R1およびR2は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R1およびR2は、互いに結合されていてもよい。)
【請求項2】
前記ハロゲン基は、フッ素基、塩素基、臭素基またはヨウ素基であり、
前記1価の炭化水素基または前記1価のハロゲン化炭化水素基は、炭素数=1〜12のアルキル基、炭素数=2〜12のアルケニル基、炭素数=2〜12のアルキニル基、炭素数=6〜18のアリール基、炭素数=3〜18のシクロアルキル基、またはそれらの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基であり、
前記1価の酸素含有炭化水素基または前記1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基は、炭素数=1〜12のアルコキシ基、またはその少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基である、
請求項1記載の二次電池。
【請求項3】
前記非水電解液中における前記メチレン環状炭酸エステルの含有量は、0.01重量%〜10重量%である、
請求項1記載の二次電池。
【請求項4】
前記外装部材は、電池缶またはラミネートフィルムである、
請求項1記載の二次電池。
【請求項5】
リチウム二次電池である、
請求項1記載の二次電池。
【請求項6】
前記非水電解液は、下記の式(2)で表される不飽和環状炭酸エステルを含み、
前記非水電解液中における前記不飽和環状炭酸エステルの含有量をA(重量%)、前記非水電解液中における前記メチレン環状炭酸エステルの含有量をB(重量%)としたとき、A=0.01重量%〜5重量%、B=0.01重量%〜5重量%、およびB/A=0.002〜500を満たす、
請求項1記載の二次電池。
【化2】

(R11およびR12は、水素基またはアルキル基である。)
【請求項7】
前記不飽和環状炭酸エステルは、炭酸ビニレン(1,3−ジオキソール−2−オン)または炭酸メチルビニレン(4−メチル−1,3−ジオキソール−2−オン)である、
請求項6記載の二次電池。
【請求項8】
前記非水電解液は、ハロゲン化炭酸エステルを含み、
前記ハロゲン化炭酸エステルは、下記の式(4)で表される環状ハロゲン化炭酸エステルおよび式(5)で表される鎖状ハロゲン化炭酸エステルのうちの少なくとも一方を含み、
前記非水電解液中における前記ハロゲン化炭酸エステルの含有量をC(重量%)、前記非水電解液中における前記メチレン環状炭酸エステルの含有量をD(重量%)としたとき、C=0.01重量%〜30重量%、D=0.01重量%〜5重量%、およびD/C=1/3000〜500を満たす、
請求項1記載の二次電池。
【化3】

(R17〜R20は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R17〜R20のうちの少なくとも1つは、ハロゲン基または1価のハロゲン化炭化水素基である。)
【化4】

(R21〜R26は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基または1価のハロゲン化炭化水素基であり、R21〜R26のうちの少なくとも1つは、ハロゲン基または1価のハロゲン化炭化水素基である。)
【請求項9】
前記ハロゲン化炭酸エステルは、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンである、
請求項8記載の二次電池。
【請求項10】
前記非水電解液は、炭酸エチレン(1,3−ジオキソラン−2−オン)および炭酸プロピレン(4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン)を含み、
前記炭酸エチレンと前記炭酸プロピレンとの混合比は、重量比で炭酸エチレン:炭酸プロピレン=75:25〜25:75であり、
前記非水電解液中における前記メチレン環状炭酸エステルの含有量は、0.01重量%〜10重量%である、
請求項1記載の二次電池。
【請求項11】
二次電池と、
その二次電池の使用状態を制御する制御部と、
その制御部の指示に応じて前記二次電池の使用状態を切り換えるスイッチ部と
を備え、
前記二次電池は、平坦面を有する外装部材の内部に正極および負極と共に非水電解液を備え、その非水電解液は、下記の式(1)で表されるメチレン環状炭酸エステルを含む、
電池パック。
【化5】

(R1およびR2は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R1およびR2は、互いに結合されていてもよい。)
【請求項12】
二次電池と、
その二次電池から供給された電力を駆動力に変換する変換部と、
その駆動力に応じて駆動する駆動部と、
前記二次電池の使用状態を制御する制御部と
を備え、
前記二次電池は、平坦面を有する外装部材の内部に正極および負極と共に非水電解液を備え、その非水電解液は、下記の式(1)で表されるメチレン環状炭酸エステルを含む、
電動車両。
【化6】

(R1およびR2は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R1およびR2は、互いに結合されていてもよい。)
【請求項13】
二次電池と、
その二次電池から電力を供給される1または2以上の電気機器と、
前記二次電池からの前記電気機器に対する電力供給を制御する制御部と
を備え、
前記二次電池は、平坦面を有する外装部材の内部に正極および負極と共に非水電解液を備え、その非水電解液は、下記の式(1)で表されるメチレン環状炭酸エステルを含む、
電力貯蔵システム。
【化7】

(R1およびR2は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R1およびR2は、互いに結合されていてもよい。)
【請求項14】
二次電池と、
その二次電池から電力を供給される可動部と
を備え、
前記二次電池は、平坦面を有する外装部材の内部に正極および負極と共に非水電解液を備え、その非水電解液は、下記の式(1)で表されるメチレン環状炭酸エステルを含む、
電動工具。
【化8】

(R1およびR2は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R1およびR2は、互いに結合されていてもよい。)
【請求項15】
二次電池を電力供給源として備え、
前記二次電池は、平坦面を有する外装部材の内部に正極および負極と共に非水電解液を備え、その非水電解液は、下記の式(1)で表されるメチレン環状炭酸エステルを含む、
電子機器。
【化9】

(R1およびR2は、水素基、ハロゲン基、1価の炭化水素基、1価のハロゲン化炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、または1価のハロゲン化酸素含有炭化水素基であり、R1およびR2は、互いに結合されていてもよい。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−84575(P2013−84575A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−185326(P2012−185326)
【出願日】平成24年8月24日(2012.8.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】