二次電池および組電池
【課題】二次電池が局所的に電池の性能が低下する異常温度にまで上昇した場合でもこれを検出できる構成の二次電池、組電池を提供する。
【解決手段】二次電池1は、電極端子2・3を除く電池本体4の外表面全面に亘って、不可逆的に変色する温度検知層5が設けられている。温度検知層5は、サーモペイント、サーモシール等からなる示温材からなり、電池の性能が低下する異常温度に到達すると、変色する。
【解決手段】二次電池1は、電極端子2・3を除く電池本体4の外表面全面に亘って、不可逆的に変色する温度検知層5が設けられている。温度検知層5は、サーモペイント、サーモシール等からなる示温材からなり、電池の性能が低下する異常温度に到達すると、変色する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用中の熱履歴を容易に判別することのできる二次電池、複数の二次電池を組み合わせた組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池は、放電状態の電池を充電することにより繰り返し使用のできる電池であり、ノート型パソコンをはじめとするモバイル機器、ビデオカメラ等の電源として広く用いられている。また、近年では、電気自動車やハイブリッドカー等に搭載される大型の二次電池も登場している。このような二次電池は、機器に必要な電圧、パワーを取り出すために、複数個が直列または並列に組み合わせて組電池として使用される場合が多い。
【0003】
ところで、二次電池は、電池固有の所定電圧の範囲内で充放電を行うものであるが、充放電を繰り返すうちに、電池自身のトラブルといった内的要因や、充放電制御回路のトラブル等の外的要因により、電池の温度が、性能低下を引き起こす温度(異常温度)にまで上昇することがある。一旦、異常温度にまで上昇した二次電池は、その後、電池温度がたとえ問題のない温度にまで低下しても電池の性能が元の状態にまで回復することは難しい。そのため、性能に低下した異常な電池は、正常な二次電池との交換が必要となる。
【0004】
このような異常温度にまで上昇し電池の判別を可能とする技術として、電池が異常な温度に到達したことを電池自身に熱履歴として残す技術がある。例えば、特許文献1には、乾電池や蓄電池(二次電池)における電池外部から目視可能な位置に、加熱により不可逆的に変色する3ミリ四方のサーモラベル(検知子)を設ける構成が開示されている。また、引用文献2には、複数の単セルが直列に接続されてなる充電式電池の一部に、一定温度以上で変色する不可逆なサーモテープを配置する構成が開示されている。
【0005】
上記技術によれば、電池が異常な温度に到達すると、サーモラベルやサーモテープが変色し、正常な温度にまで戻った後も変色が保持されるので、変色の有無を確認することで、異常な電池であるかどうかを判別することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−66865号公報(1988年03月25日公開)
【特許文献2】実開昭60−112074号公報(1985年07月29日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような従来技術では、電池の一部分のみが異常温度にまで上昇するといった局所的な温度上昇が発生した電池については、異常な電池であるとは判別できないといった問題がある。
【0008】
つまり、上述のような従来技術では、電池の外表面のある面の一部にのみサーモラベルやサーモテープ(以下、まとめてサーモラベル)を配置する構成であるため、電池全体が、サーモラベルが変色する異常温度にまで上昇した場合は、異常な電池であることを判別できる。しかしながら、電池の一部分のみが異常温度にまで上昇した場合は、上昇部分がサーモラベルの配置位置である場合を除いて、サーモラベルは変色しないため、異常を検知できない。
【0009】
上述したように、近年は、電気自動車やハイブリッドカー等に大型の二次電池が搭載されており、二次電池の大型化が進んでいる。このような大型の二次電池においては、電池全体ではなく、その一部分のみが局所的に温度上昇することが十分に起こり得る。
【0010】
そして、たとえ局所的な温度上昇であっても、そのような異常がある二次電池は性能低下が促進するだけでなく、そのまま使い続けた場合には、電池全体が異常温度にまで上昇して、二次電池の充放電回路に深刻なトラブルを招来させる危険がある。また、組電池の場合は、異常電池が発端となり、組電池全体の性能低下が促進するだけでなく、熱暴走が発生して、組電池を構成する他の正常な二次電池にまで被害を広げる危険もある。そのため、たとえ局所的な温度上昇であっても、異常な電池であると判別して、深刻なトラブルの招来を回避することが必要である。
【0011】
また、大型の二次電池だけでなく、ノート型パソコンをはじめとするモバイル機器等に搭載されている小型の二次電池も同様であり、局所的な温度上昇による異常であっても、異常な電池であると判別して、深刻なトラブルの招来を回避する必要がある。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、電池全体ではなく部分的に性能低下が促進される異常温度に上昇した場合でもこれを検出できる構成の二次電池および組電池を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明に係る二次電池は、電極端子を除いた電池本体の少なくとも1面に、面全体に亘って、加熱により不可逆的に変色する温度検知層が設けられていることを特徴としている。
【0014】
上記構成によれば、電極端子を除いた電池本体の少なくとも1面に、面全体に亘って設けられた、加熱により不可逆的に変色する温度検知層により、電池全体が異常な温度にまで上昇した異常だけでなく、電池の一部分のみが局所的に異常な温度にまで上昇した異常でも、これを検出することができる。
【0015】
この場合、より好ましくは、温度検知層が、電池本体の周面に、面全体に亘って設けられている構成であり、さらに好ましくは、温度検知層が、電池本体の全ての面に、面全体に亘って設けられている構成である。このような構成とすることで、電池本体の如何なる部分が異常な温度に上昇したとしても、確実にこれを検出できる。
【0016】
但し、二次電池の電池ケースは熱伝導性に優れた金属で構成されることが多く、その場合、熱は電池外表面において伝わりやすい。したがって、電池本体の1面にのみ温度検知層が設けられている構成であっても、温度検知層が、その面の一部分ではなく面全体に亘って設けられていることで、温度検知層が設けられた面とは異なる面で発生した温度異常についても、温度上昇部分が近ければ検出することは可能である。
【0017】
また、電池内部、或いは電池外部において、異常な温度上昇を起こしやすい箇所が予めわかっている場合には、少なくともその箇所が入る面に温度検知層を設けておくことで、温度検知層が全面に設けられていなくても、局所的な温度上昇を検出することができる。
【0018】
ここで、温度検知層が面全体に亘って設けられているとは、温度検知層が面全域を隙間なく完全に覆っている形態だけでなく、温度検知層がストライプや、網目、ドット等のパターンにて、隙間を有しながらも面全体を覆っている形態や、温度検知層に部分的に切り掻かれている部位はあるものの、温度検知層が面全体を覆っている形態を含むことを意味している。
【0019】
しかも、特別な検査装置を用いたり、二次電池を注意深く観察したりする必要もなく、温度検知層を簡単に目視するだけで検出することができる。
【0020】
加えて、温度検知層の変色箇所より、トラブルの発生した位置を特定することができるので、トラブルの原因を解明する手助けとなる。つまり、電池内部のトラブルであれば、電池内部のどの部分に異常が発生したのかを推測することができる。電池外部のトラブルであれば、二次電池の外部にある充放電回路等のどの部分に異常が発生したのかを推測することもできる。電池外部のトラブルの発生を、現象が小さいうちに発見して対処できることで、より深刻なトラブルの発生を未然に防止することができる。
【0021】
また、本発明に係る二次電池においては、さらに、電池本体に、電池外表面を構成する物質よりも熱伝導率の高い物質からなる導熱線が、上記温度検知層と接触するように設けられ、上記導熱線は、局所的に発生した温度上昇部分の熱を、温度上昇部分以外の他の領域へと伝達する構成とすることもできる。
【0022】
金属等の熱伝導性に優れた電池ケースであれば、温度検知層が設けられた面以外で発生した異常な熱を温度検知層が設けられた面に伝達することは可能であると考えられる。しかしながら、電池ケースの熱伝導率が低い場合や、金属製の電池ケースであっても電池サイズが大型化して温度検知層が設けられている面が温度上昇部分から遠い場合、温度検知層にまでその熱が伝わらない場合も想定される。
【0023】
また、二次電池を固定するための固定治具に取り付けられた状態の二次電池においては、固定治具にて隠れている部分に温度上昇が発生した場合、目視可能な位置に設けられた温度検知層にこの熱が伝わることで、これを検出できる。しかしながら、この熱が伝わらなかった場合は、固定治具より二次電池を取り外さないかぎり、この異常を検出することができない。二次電池が組電池を構成して、隣り合う電池同士で外表面を隠し合う場合も同様である。
【0024】
これに対し、上記構成によれば、導熱線が設けられているので、固定治具や隣の電池によって隠されている部分に温度上昇が生じたとしても、その熱が導熱線を伝って効率よく温度検知層に伝えられる。これにより、目視可能な位置に温度検知層が設けられてさえいれば、二次電池を取り外すことなく、簡単に目視できない部分の異常を検出することができる。
【0025】
また、この場合、上記導熱線は、線幅に対して厚みが薄いリボン状であることが好ましい。
【0026】
導熱線を、線幅に対して厚みが薄いリボン状とすることで、組電池を構成する場合に、電池同士が接触してあるいは近接して配されることを妨げることなく、導熱線からの熱による温度検知層の変色を視認し易くできる。
【0027】
このような二次電池としては、リチウムイオン電池との組み合わせが好適である。
【0028】
リチウムイオン電池は、内部に充填された電解液が熱せられることで副反応が起こりやすく、熱による電池の性能低下等の影響が他の二次電池に比べて大きい。そのため、リチウムイオン電池と組み合わせることで、その安全性を効果的に高めることができる。
【0029】
また、二次電池を固定する固定治具は、透明部材よりなる構成が好ましく、固定治具を透明な構成とすることで、温度検知層による異常検知を、より効果的に利用することができる。
【0030】
本発明は、また、上記本発明の二次電池が、複数個、並列、あるいは直列、あるいはその両方で接続されてなる組電池もその権利範囲としている。
【0031】
特に、この場合、複数個の二次電池を固定する固定治具は、透明部材よりなる構成が好ましく、固定治具を透明な構成とすることで、温度検知層による異常検知を、より効果的に利用することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の二次電池は、電極端子を除いた電池本体の少なくとも1面に、面全体に亘って、加熱により不可逆的に変色する温度検知層が設けられているので、電池全体が異常な温度にまで上昇した異常だけでなく、電池の一部分のみが局所的に異常な温度にまで上昇した異常でも、これを検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る、温度検知層が設けられた角型の二次電池の概観を示す斜視図である。
【図2】比較のために示す従来の角型の二次電池の概観を示す斜視図である。
【図3】(a)〜(f)共に、本実施形態の上記角型の二次電池の変形例を示す斜視図である。
【図4】本実施形態の上記角型の二次電池の電池内部のトラブル、あるいは電池外部のトラブルによって、電池本体の外表面の温度が上昇し、温度検知層が不可逆的に変色した状態を示す説明図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る、円筒型の二次電池の概観を示す斜視図である。
【図6】本実施形態の上記円筒型の二次電池の電池内部のトラブル、あるいは電池外部のトラブルによって、電池本体の外表面の温度が上昇し、温度検知層が不可逆的に変色した状態を示す説明図である。
【図7】(a)は、本発明の第2の実施形態に係る、温度検知層に加えて導熱線が設けられた角型の二次電池の概観を示す斜視図であり、(b)は、導熱線のみを抜き出して示す説明図である。
【図8】第2の実施形態の角型の二次電池において、電池内部のトラブル、あるいは電池外部のトラブルによって、固定治具に隠れた部分において電池本体の外表面の温度が上昇し、その熱が導熱線に伝わって、温度検知層が導熱線に沿って不可逆的に変色した状態を示す説明図である。
【図9】第2の実施形態の角型の二次電池の変形例を示す斜視図である。
【図10】(a)は、本発明の第2の実施形態に係る、温度検知層に加えて導熱線が設けられた円筒型の二次電池の概観を示す斜視図であり、(b)は、導熱線のみを抜き出して示す説明図である。
【図11】第2の実施形態の円筒型の二次電池において、電池内部のトラブル、あるいは電池外部のトラブルによって、固定治具に隠れた部分において電池本体の外表面の温度が上昇し、その熱が導熱線に伝わって、温度検知層が導熱線に沿って不可逆的に変色した状態を示す説明図である。
【図12】第2の実施形態の円筒型の二次電池の変形例を示す斜視図である。
【図13】第1の実施形態の角型の二次電池を用いた組電池の電池の配置例を示す説明図である。
【図14】図13に示すように電池配置を有する組電池における電極端子間の接続構成を示す説明図である。
【図15】第2の実施形態の角型の二次電池を用いた組電池における電極端子間の接続構成を示す説明図である。
【図16】第1の実施形態の円筒型の二次電池を用いた組電池の電池の配置例を示す説明図である。
【図17】図16に示すように電池配置を有する組電池における電極端子間の接続構成を示す説明図である。
【図18】第2の実施形態の円筒型の二次電池を用いた組電池における電極端子間の接続構成を示す説明図である。
【図19】図15に示す組電池において固定治具を透明化した変形例の組電池を構成を示す説明図である。
【図20】図18に示す組電池において固定治具を透明化した変形例の組電池を構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
〔第1の実施形態〕
本発明の実施の一形態について、図1〜図7を用いて説明する。図1は、本発明の実施の一形態である二次電池1の概観を示す斜視図である。一方、図2は、比較のための従来の二次電池100の概観を示す斜視図である。
【0035】
図1、図2に示すように、二次電池1・100は、何れも、電池本体4が角型を成す角型電池であり、プラス電極端子2とマイナス電極端子3とは、電池本体4の同一面に並んで形成されている。電池本体4は、縦(奥行)44×横170×高さ115(単位ミリ)の直方体であり、縦44×横170の面に、電極端子2・3が形成されている。なお、サイズは、これに限られるものではない。
【0036】
また、二次電池1・100は何れも、リチウムイオン電池であるが、電池構成としては、ニッケル水素電池等の他の構成であってもよい。但し、熱による電池の性能低下等の影響は、内部に充填された電解液が熱せられることで副反応が起こりやすいリチウムイオン電池においてより問題であるので、電池構成としては、リチウムイオン電池との組み合わせが好ましい。
【0037】
本実施形態の二次電池1と従来の二次電池100との違いは、図1に示すように、二次電池1においては、電極端子2・3を除く電池本体4の外表面の全面に、加熱により不可逆的に変色する温度検知層5(図中ハッチングにて示す)が設けられている点である。
【0038】
温度検知層5は、例えば、不可逆なサーモペイントや不可逆なサーモシール等の示温材より構成された、二次電池1の電池本体4の外表面に密着された示温層である。温度検知層5は、二次電池1の内部のトラブル、あるいは充放電回路等の二次電池1の外部のトラブルによって、電池本体4の外表面の温度が上昇して所定温度に到達すると、不可逆的に変色する。
【0039】
不可逆なサーモペイントの具体例としては、例えば、アセイ工業株式会社が製造しているWAX示温インクシリーズを挙げることができる。該シリーズには、40℃:WL-40、45℃:WL-45、50℃:WL-50、55℃:WL-55、60℃:WL-60、65℃:WL-65、70℃:WL-70、75℃:WL-75、80℃:WL-80、85℃:WL-85、90℃:WL-90、95℃:WL-95、100℃:WL-100、105℃:WL-105、110℃:WL-110、115℃:WL-115、120℃:WL-120があり、60℃〜120℃まで、5℃刻みで不可逆に変色する温度が設定されている。
【0040】
本実施形態の二次電池1においては、示温材として、60℃で不可逆に変色する、WAX示温インクWL-60(アセイ工業株式会社製)が用いられている。WAX示温インクWL-60を、電極端子2・3を除く電池本体4の外表面全面に塗布し、その後、乾燥させることで、温度検知層5を得た。
【0041】
60℃を異常温度とし、60℃で変色する示温材を用いているのは、図2に示す従来の、リチウムイオン電池よりなる二次電池100においては、電池の一部分でも60℃以上に温度が上昇すると、電池の性能が低下してしまい、その後、電池の温度が通常に戻っても、電池の性能が回復しないことを実験的に確認しているからである。
【0042】
なお、二次電池の電池構成や、使用される部材等によって、電池の性能が低下する温度は異なっているので、温度検知層5の不可逆に変色する温度としては、局所的な温度上昇でも、二次電池の性能を低下させる温度とし、その温度で変色する示温材を選択すればよい。
【0043】
そして、このような温度検知層5は、図1に示すように、電極端子2・3を除く電池本体4の外表面全体に設けられていることが最も好ましい。このような構成とすることで、電池本体4の如何なる部分が異常な温度に上昇したとしても、確実にこれを検出できる。
【0044】
但し、図1の構成は、ベストモードであり、温度検知層5としては、電極端子2・3を除く電池本体4の少なくとも1面に、面全体に亘って設けられている構成であればよい。
【0045】
電池本体4における電池ケースは熱伝導性に優れた金属で構成されることが多く、電池外表面において熱は伝わりやすい。そのため、電池本体4の1面にのみ温度検知層5が設けられている構成であっても、面の一部ではなく、面全体に亘って設けられていることで、温度検知層5が設けられた面とは異なる面で発生した温度異常でも、部分的に近ければ、検出することができる。
【0046】
また、電池内部、或いは電池外部において、異常な温度上昇が起こりやすい箇所がわかっている場合には、少なくともその箇所が入る面に温度検知層5を設けておくことで、全面に設けなくとも、局所的な温度上昇を検出することができる。
【0047】
ここで、温度検知層5が面全体に亘って設けられているとは、温度検知層5が面全域を隙間なく完全に覆っている形態だけでなく、温度検知層5がストライプや、網目、ドット等のパターンにて、隙間を有しながらも面全体を覆っている形態や、温度検知層5に部分的に切り掻かれている部位はあるものの、温度検知層5が面全体を覆っている形態を含むことを意味している。
【0048】
図3(a)〜図3(f)に、温度検知層5のバリエーションを示す。図3(a)は、電極端子2・3が形成されている面を除いて温度検知層5が設けられた構成である。図3(b)は、電池本体4の全面に形成されている温度検知層5の一部がリボン状に切り掻かれている(参照符号6)構成である。また、図3(c)は、電池本体4の側面の全周に亘って、温度検知層5が、ストライプパターンで形成されている構成である。図3(d)は、電極端子2・3が形成されている面にのみ、温度検知層5が設けられた構成である。図3(e)は、電池本体4の最も広い側面にのみ、温度検知層5が、網目パターンで形成された構成である。図3(f)は、電池本体4の側面の全周に亘って、温度検知層5が、ドットパターンで形成された構成である。
【0049】
図4に、本実施形態の二次電池1が、二次電池1の内部のトラブル、あるいは二次電池1の外部のトラブルによって、電池本体4の外表面の温度が上昇し、温度検知層5が不可逆的に変色した状態を示す。参照符号7にて示す部分が、温度検知層5の変色温度である60℃に到達した部分であり、温度検知層5における他の領域とは明らかに色が異なっている。
【0050】
このように、本実施形態の二次電池1は、電池全体が異常な温度にまで上昇した異常だけでなく、電池の一部分のみが局所的に異常な温度にまで上昇した異常でも、検出することができる。しかも、特別な検査装置を用いたり、注意深く観察したりすることもなく、二次電池1の全体を簡単に目視するだけで検出することができる。
【0051】
特に、電極端子2・3を除く電池本体4の外表面全体に、面全体に亘って設けられていることで、電池本体4の如何なる部分が異常な温度に上昇したとしても、確実にこれを検出できる。
【0052】
加えて、二次電池1における温度検知層5の変色箇所より、トラブルの発生した位置を特定することができるので、トラブルの原因を解明する手助けとなる。つまり、電池内部のトラブルであれば、二次電池1内部のどの部分に異常が発生したのかを推測することができる。電池外部のトラブルであれば、二次電池1の外部にある充放電回路等のどの部分に異常が発生したのかを推測することもできる。電池外部のトラブルの発生を、現象が小さいうちに発見して対処できることで、より深刻なトラブルの発生を未然に防止することができる。
【0053】
図5に、上記温度検知層5を円筒型電池の二次電池に適用した二次電池10を示す。図5は、二次電池10の概観を示す斜視図である。二次電池10は、電池本体11が円筒型を成す円筒型電池のリチウムイオン電池であり、これにおいて、第1の実施形態の二次電池1と同様に、電極端子2・3を除く電池本体11の外表面全面に、温度検知層5が設けられた構成である。
【0054】
円筒型電池の場合、温度検知層5は、少なくとも、何れかの電極端子形成面、或いは周面の一投影面において、全面に亘って設けられている。
【0055】
ここで、二次電池10は、18650型の円筒型リチウムイオン電池サイズであるが、サイズはこれに限られるものではない。また、電池構成として、ニッケル水素電池等の他の構成であってもよいが、上述したように、リチウムイオン電池との組み合わせが効果的である。
【0056】
図6に、本実施形態の二次電池10が、二次電池10の内部のトラブルあるいは二次電池10の外部のトラブルで、電池本体11の外表面の温度が上昇し、温度検知層5が不可逆的に変色した状態を示す。参照符号8にて示す部分が、温度検知層5の変色温度である60℃に到達した部分である。
〔第2の実施形態〕
本発明の実施の他の形態について、図7〜12を用いて説明する。なお、説明の便宜上、第1の実施形態で用いた部材と同じ機能を有する部材には同じ符号を付して説明を省略する。
【0057】
金属等からなる熱伝導性に優れた電池ケースであれば、温度検知層5が設けられた面以外で発生した異常な熱を温度検知層5が設けられた面に伝達することは可能である。しかしながら、電池ケースの熱伝導率が低い場合や、金属からなる電池ケースであっても電池サイズが大型化して温度検知層5が設けられている面が温度上昇部分から遠い場合、温度検知層5にまでその熱が伝わらない場合も想定される。
【0058】
また、二次電池1を固定するための固定治具に取り付けられた状態の二次電池1においては、固定治具にて隠れている部分に温度上昇が発生した場合、目視可能な位置に設けられた温度検知層5にこの熱が伝わることで、これを検出できる。しかしながら、この熱が伝わらなかった場合は、固定治具より二次電池1を取り外さないかぎり、この異常を検出することができない。二次電池1が組電池を構成して、隣り合う電池同士で外表面を隠し合う場合も同様である。
【0059】
本実施形態では、温度上昇部分の熱を離れた温度検知層5へと効果的に伝えるための工夫について説明する。
【0060】
図7(a)は、本実施形態の二次電池12の概観を示す斜視図である。本実施形態の二次電池12は、第1の実施形態の二次電池1と同様の構成を有し、これにおいてさらに、目視不可能な位置に発生した温度上昇を目視可能な位置にて検出できるようにするための導熱線15が設けられた構成である。なお、図7(a)においては、温度検知層5のハッチングを省略している。
【0061】
図7(b)は、図7(a)における導熱線15のみを抜き出した図である。図7(b)に示すように、本実施形態の二次電池12においては、導熱線15は、第1〜第3の線15a〜15cの3本からなる。
【0062】
第1の線15aは、二次電池12の電極端子2・3間を通って電池本体4の正面を縦に2分するように、電池本体4を縦方向(正面より見て)に一周している。ここで、電池本体4の正面とは、電池本体4の最も広い面(上記サイズ例では、横170×高さ115の面)とする。
【0063】
第2の線15bは、電池本体4の正面を横方向に2分するように、電池本体4を横方向(正面より見て)に一周している。第2の線15bと第1の線15aとは、電池本体4の正面と裏面とにおいて十字に交わっている。
【0064】
第3の線15cは、電池本体4の側面(上記サイズ例では、縦(奥行)44×高さ115の面)を縦に2分するように、電池本体4を周方向(正面より見て)に、電極端子2・3が形成されている面を除いて3/4周している。第3の線15cと第2の線15bとは、電池本体4の両側面において十字に交わっている。
【0065】
このような導熱線15は、温度検知層5に接触(好ましくは密着)していれば、温度検知層5の上層、下層の何れに設けられていてもよい。
【0066】
導熱線15は、目視不可能な位置に発生した局所的な温度上昇部分の熱を温度上昇部分以外の他の領域へと伝えるものであり、目視不可能な位置に発生した局所的な温度上昇による異常を、目視可能な位置にて検出できるようにするものである。したがって、導熱線15の材質としては、電池本体4の外表面を構成している材質よりも熱伝導率の高い材質である必要がある。
【0067】
通常、二次電池における電池ケースとしては、例えばSUS304のような金属が用いられる。したがって、導熱線15には、これらSUS304よりも熱伝導率の高い、例えば、銅、銀、金、アルミニウムなどを用いることができる。
【0068】
本実施形態の二次電池12においては、導熱線15として、幅2mm、厚さ100μmの銅線を用い、温度検知層5の上に配置した。導熱線15を、線幅に対して厚みが薄いリボン状とすることで、組電池を構成する場合に、電池同士が接触してあるいは近接して配されることを妨げることなく、導熱線15からの熱による温度検知層5の変色を視認し易くできる。
【0069】
導熱線15の幅は、導熱線15からの熱によって温度検知層5が変色する部分が視認できる幅であればよい。また、導熱線15の厚さは、強度が保持される範囲であれば薄くすることが望ましい。
【0070】
図8に、本実施形態の二次電池12が、二次電池12の内部のトラブルあるいは二次電池12の外部のトラブルで、電池本体4の外表面の温度が上昇し、温度検知層5が不可逆的に変色した状態を示す。参照符号9にて示す部分が、温度検知層5の変色温度である60℃に到達した部分である。また、参照符号16で示すハッチング部分が、参照符号9にて示す部分の熱が導熱線15に伝わり、その熱(60℃以上)によって、導熱線15に沿って変色している部分である。なお、図8においても、温度検知層5のハッチングを省略している。
【0071】
たとえ電池本体4の外表面全面に温度検知層5が設けられていたとしても、電池ケースの熱伝導率が低い場合や、金属からなる電池ケースであっても電池サイズが大きく、固定治具30にて隠れている部分に温度上昇が発生した場合、目視可能な位置に設けられた温度検知層5にこの熱が伝わらず、これを検出できない恐れがある。
【0072】
しかしながら、図8に示すように、導熱線15が設けられた本実施形態の二次電池12では、固定治具30等にて隠されている、参照符号9にて示す部分に温度上昇が生じたとしても、その熱が導熱線15を伝って、参照符号16にて示すように、目視可能な位置の温度検知層5を変色させるので、二次電池1を固定治具30から取り外すことなく、簡単に異常を検出できる。
【0073】
導熱線15のレイアウトとしては、図9に示す導熱線15-1ように、図7(a)のレイアウトよりも狭いピッチで、網目を描くように配置してもよい。これにより、温度上昇が発生した部分に導熱線15が配置されておらず、隠れた部分の異常を、目視可能な位置まで引き出すことができないといった不具合を回避できる。
【0074】
すなわち、導熱線15における線の本数や配置位置等のレイアウトは、二次電池12にて想定される局所的な温度上昇が生じる領域サイズ、固定治具に固定された状態で目視可能な位置等に基づいて、目視できない部分で発生した温度上昇を、目視可能な位置に導出できるように設計すればよい。
【0075】
また、導熱線15は、銅線等の金属線を電池本体4に巻きつけて構成しても、印刷にて形成してもよい。特に、温度検知層5がサーモシールから構成される場合、サーモシールに印刷等の方法を用いて導熱線15を予め形成しておくことで、サーモシールを貼り付ける工程にて同時に、導熱線15を設けることが可能となる。しかも、印刷にて形成された導熱線15は、温度検知層5に密着されるので、導熱線15に伝わる熱による温度検知層5の反応が鋭敏に行われる。
【0076】
図10(a)に、第1の実施形態で示した円筒型の二次電池10に導熱線15−2を設けた本実施形態の二次電池21の構成を示す。なお、図10(a)においては、温度検知層5のハッチングを省略している。
【0077】
図10(b)は、図10(a)における導熱線15−2のみを抜き出した図である。図10(b)に示すように、本実施形態の二次電池21の導熱線15−2は、第1〜第3の線15−2a〜15−2cの3本からなる。
【0078】
第1の線15−2aと第2の線15−2bは、二次電池21の円筒型の電池本体11の
外表面(電極端子を除く)に、円筒の中心を挟んで対向するよう配置されている。第1の線15−2aおよび第2の線15−2bは、プラスの電極端子2が設けられている面からマイナスの電極端子3が設けられている面へといたる、円筒型の電池本体11が軸方向に有する長さと同等の長さを有している。
【0079】
第3の線15−2cは、円筒型の電池本体11を軸方向と直交する方向に2分するように、電池本体11をその周方向に一周している。第3の線15−2cと、第1の線15−2aおよび第2の線15−2bとは、電池本体11の外周面において十字に交わっている。
【0080】
図11に、本実施形態の二次電池21が、二次電池21の内部のトラブルあるいは二次電池21の外部のトラブルで、電池本体11の外表面の温度が上昇し、温度検知層5が不可逆的に変色した状態を示す。参照符号17にて示す部分が、温度検知層5の変色温度である60℃に到達した部分である。また、参照符号18で示すハッチング部分が、参照符号17にて示す部分の熱が導熱線15−2に伝わり、その熱(60℃以上)によって、導熱線15−2に沿って変色している部分である。なお、図11においても、温度検知層5のハッチングを省略している。
【0081】
このように、本実施形態の二次電池21においても、固定治具30等にて隠されている部分の異常が、目視可能な位置まで引き出されて温度検知層5の変色として伝えられるので、固定治具30より二次電池21を取り外すことなく、簡単に異常を検出できる。
【0082】
また、円筒型電池の例である本実施形態においても、導熱線の本数や配置位置等のレイアウトは、二次電池21にて想定される局所的な温度上昇が生じる領域サイズ、固定治具に固定された状態で目視可能な位置等に基づいて、目視できない部分で発生した温度上昇を、目視可能な位置に導出できるように設計すればよい。
【0083】
例えば、図12に示す、導熱線15-3ように、図10(a)よりも狭いピッチで複数、網目を描くように配置することで、温度上昇が発生した部分に導熱線15が配置されておらず、隠れた部分の異常を、目視可能な位置まで引き出すことができないといった不具合を回避できる。
〔第3の実施形態〕
本発明の実施の他の形態について、図13〜図20を用いて説明する。なお、説明の便宜上、第1の、第2の実施形態で用いた部材と同じ機能を有する部材には同じ符号を付して説明を省略する。
【0084】
本実施形態においては、第1、第2の実施形態で説明した、4種類の二次電池、つまり、二次電池(角型)1、二次電池(円筒型)10、二次電池(角型)12、及び二次電池(円筒型)21それぞれの組電池について説明する。
【0085】
図13に、第1の実施形態の角型の二次電池1を用いた組電池23の電池の配置例を示す。図13の例では、5直列2並列の例を示している。上述したように、組電池は、機器に必要な電圧、パワーを取り出すために、複数個の二次電池が直列または並列に組み合わせて構成されるものであるので、組み方はこれに限定されるものではない。
【0086】
ここで、5直列を構成する5個の二次電池1は、ABS樹脂や、例えばポリカーボネート製の、上部固定治具31bと下部固定治具31aとで、その上部と下部とが固定されてユニット化されて、直列ユニット24を構成している。
【0087】
図14に、図13に示すように、二次電池1が複数個配置された組電池23における電極端子間の接続構成を示す。図中、参照符号32にて示すものが端子接続線である。端子接続線32にて、直列ユニット24内の5つの二次電池1が直接接続され、かつ、2つの直列ユニット24が並列接続される。
【0088】
図15に、二次電池1に変えて、導熱線15が設けられた第2の実施形態の二次電池12を用いた組電池25を示す。導熱線15が設けられた二次電池12よりなる組電池25では、目視できない部分で発生した温度上昇も導熱線15に熱が伝わることで検出できるので、二次電池12を組み付けた状態のまま、各二次電池12の異常の有無を判別することができる。
【0089】
また、図16に、第1の実施形態の円筒型の二次電池10を用いた組電池40の電池配置例を示す。図16の例でも、5直列2並列の例を示している。円筒型の二次電池10の場合、直列ユニット41内において、5個の二次電池10は、プラスとマイナスとが交互になるように配置される。
【0090】
ここでも、5直列を構成する5個の二次電池10は、例えばABS樹脂や、ポリカーボネート製の、上部固定治具35bと下部固定治具35aとで、その上部と下部とが固定されてユニット化されて、直列ユニット41を構成している。
【0091】
図17に、図16に示すように二次電池10が配置された組電池40における電極端子間の接続構成を示す。図中、参照符号36にて示すものが端子接続線である。端子接続線36にて、直列ユニット41内の5つの二次電池1が直接接続され、かつ、2つの直列ユニット41が、並列接続される。
【0092】
図18に、二次電池10に変えて、導熱線15が設けられた第2の実施形態の二次電池21を用いた組電池42を示す。導熱線15が設けられた二次電池21よりなる組電池42では、導熱線15によって目視できない部分で発生した温度上昇も検出できるので、二次電池12を組み付けた状態のまま、各二次電池12の異常の有無を判別することができる。
【0093】
また、より好ましい構成としては、直列ユニット24、直列ユニット41における、上部固定治具31b・下部固定治具31a、上部固定治具35b・下部固定治具35aを、図19、図20に示すように、透明な上部固定治具51b・下部固定治具51a、上部固定治具52b・下部固定治具52aとすることである。
【0094】
これによれば、導熱線15が設けられていない角型の二次電池1、あるいは円筒型の二次電池10からなる組電池23・40においても、固定治具にて視認できない部分を大きく減らすことができる。このような固定治具を透明な構成とすることは、温度検知層5を有する二次電池1・10・12・21の組電池において効果的である。
【0095】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0096】
1 二次電池
2 プラス電極端子
3 マイナス電極端子
4 電池本体
5 温度検知層
10 二次電池
11 電池本体
12 二次電池
15 導熱線
21 二次電池
51a 下部固定治具(固定治具)
51b 上部固定治具(固定治具)
52a 下部固定治具(固定治具)
52b 上部固定治具(固定治具)
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用中の熱履歴を容易に判別することのできる二次電池、複数の二次電池を組み合わせた組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池は、放電状態の電池を充電することにより繰り返し使用のできる電池であり、ノート型パソコンをはじめとするモバイル機器、ビデオカメラ等の電源として広く用いられている。また、近年では、電気自動車やハイブリッドカー等に搭載される大型の二次電池も登場している。このような二次電池は、機器に必要な電圧、パワーを取り出すために、複数個が直列または並列に組み合わせて組電池として使用される場合が多い。
【0003】
ところで、二次電池は、電池固有の所定電圧の範囲内で充放電を行うものであるが、充放電を繰り返すうちに、電池自身のトラブルといった内的要因や、充放電制御回路のトラブル等の外的要因により、電池の温度が、性能低下を引き起こす温度(異常温度)にまで上昇することがある。一旦、異常温度にまで上昇した二次電池は、その後、電池温度がたとえ問題のない温度にまで低下しても電池の性能が元の状態にまで回復することは難しい。そのため、性能に低下した異常な電池は、正常な二次電池との交換が必要となる。
【0004】
このような異常温度にまで上昇し電池の判別を可能とする技術として、電池が異常な温度に到達したことを電池自身に熱履歴として残す技術がある。例えば、特許文献1には、乾電池や蓄電池(二次電池)における電池外部から目視可能な位置に、加熱により不可逆的に変色する3ミリ四方のサーモラベル(検知子)を設ける構成が開示されている。また、引用文献2には、複数の単セルが直列に接続されてなる充電式電池の一部に、一定温度以上で変色する不可逆なサーモテープを配置する構成が開示されている。
【0005】
上記技術によれば、電池が異常な温度に到達すると、サーモラベルやサーモテープが変色し、正常な温度にまで戻った後も変色が保持されるので、変色の有無を確認することで、異常な電池であるかどうかを判別することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−66865号公報(1988年03月25日公開)
【特許文献2】実開昭60−112074号公報(1985年07月29日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような従来技術では、電池の一部分のみが異常温度にまで上昇するといった局所的な温度上昇が発生した電池については、異常な電池であるとは判別できないといった問題がある。
【0008】
つまり、上述のような従来技術では、電池の外表面のある面の一部にのみサーモラベルやサーモテープ(以下、まとめてサーモラベル)を配置する構成であるため、電池全体が、サーモラベルが変色する異常温度にまで上昇した場合は、異常な電池であることを判別できる。しかしながら、電池の一部分のみが異常温度にまで上昇した場合は、上昇部分がサーモラベルの配置位置である場合を除いて、サーモラベルは変色しないため、異常を検知できない。
【0009】
上述したように、近年は、電気自動車やハイブリッドカー等に大型の二次電池が搭載されており、二次電池の大型化が進んでいる。このような大型の二次電池においては、電池全体ではなく、その一部分のみが局所的に温度上昇することが十分に起こり得る。
【0010】
そして、たとえ局所的な温度上昇であっても、そのような異常がある二次電池は性能低下が促進するだけでなく、そのまま使い続けた場合には、電池全体が異常温度にまで上昇して、二次電池の充放電回路に深刻なトラブルを招来させる危険がある。また、組電池の場合は、異常電池が発端となり、組電池全体の性能低下が促進するだけでなく、熱暴走が発生して、組電池を構成する他の正常な二次電池にまで被害を広げる危険もある。そのため、たとえ局所的な温度上昇であっても、異常な電池であると判別して、深刻なトラブルの招来を回避することが必要である。
【0011】
また、大型の二次電池だけでなく、ノート型パソコンをはじめとするモバイル機器等に搭載されている小型の二次電池も同様であり、局所的な温度上昇による異常であっても、異常な電池であると判別して、深刻なトラブルの招来を回避する必要がある。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、電池全体ではなく部分的に性能低下が促進される異常温度に上昇した場合でもこれを検出できる構成の二次電池および組電池を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明に係る二次電池は、電極端子を除いた電池本体の少なくとも1面に、面全体に亘って、加熱により不可逆的に変色する温度検知層が設けられていることを特徴としている。
【0014】
上記構成によれば、電極端子を除いた電池本体の少なくとも1面に、面全体に亘って設けられた、加熱により不可逆的に変色する温度検知層により、電池全体が異常な温度にまで上昇した異常だけでなく、電池の一部分のみが局所的に異常な温度にまで上昇した異常でも、これを検出することができる。
【0015】
この場合、より好ましくは、温度検知層が、電池本体の周面に、面全体に亘って設けられている構成であり、さらに好ましくは、温度検知層が、電池本体の全ての面に、面全体に亘って設けられている構成である。このような構成とすることで、電池本体の如何なる部分が異常な温度に上昇したとしても、確実にこれを検出できる。
【0016】
但し、二次電池の電池ケースは熱伝導性に優れた金属で構成されることが多く、その場合、熱は電池外表面において伝わりやすい。したがって、電池本体の1面にのみ温度検知層が設けられている構成であっても、温度検知層が、その面の一部分ではなく面全体に亘って設けられていることで、温度検知層が設けられた面とは異なる面で発生した温度異常についても、温度上昇部分が近ければ検出することは可能である。
【0017】
また、電池内部、或いは電池外部において、異常な温度上昇を起こしやすい箇所が予めわかっている場合には、少なくともその箇所が入る面に温度検知層を設けておくことで、温度検知層が全面に設けられていなくても、局所的な温度上昇を検出することができる。
【0018】
ここで、温度検知層が面全体に亘って設けられているとは、温度検知層が面全域を隙間なく完全に覆っている形態だけでなく、温度検知層がストライプや、網目、ドット等のパターンにて、隙間を有しながらも面全体を覆っている形態や、温度検知層に部分的に切り掻かれている部位はあるものの、温度検知層が面全体を覆っている形態を含むことを意味している。
【0019】
しかも、特別な検査装置を用いたり、二次電池を注意深く観察したりする必要もなく、温度検知層を簡単に目視するだけで検出することができる。
【0020】
加えて、温度検知層の変色箇所より、トラブルの発生した位置を特定することができるので、トラブルの原因を解明する手助けとなる。つまり、電池内部のトラブルであれば、電池内部のどの部分に異常が発生したのかを推測することができる。電池外部のトラブルであれば、二次電池の外部にある充放電回路等のどの部分に異常が発生したのかを推測することもできる。電池外部のトラブルの発生を、現象が小さいうちに発見して対処できることで、より深刻なトラブルの発生を未然に防止することができる。
【0021】
また、本発明に係る二次電池においては、さらに、電池本体に、電池外表面を構成する物質よりも熱伝導率の高い物質からなる導熱線が、上記温度検知層と接触するように設けられ、上記導熱線は、局所的に発生した温度上昇部分の熱を、温度上昇部分以外の他の領域へと伝達する構成とすることもできる。
【0022】
金属等の熱伝導性に優れた電池ケースであれば、温度検知層が設けられた面以外で発生した異常な熱を温度検知層が設けられた面に伝達することは可能であると考えられる。しかしながら、電池ケースの熱伝導率が低い場合や、金属製の電池ケースであっても電池サイズが大型化して温度検知層が設けられている面が温度上昇部分から遠い場合、温度検知層にまでその熱が伝わらない場合も想定される。
【0023】
また、二次電池を固定するための固定治具に取り付けられた状態の二次電池においては、固定治具にて隠れている部分に温度上昇が発生した場合、目視可能な位置に設けられた温度検知層にこの熱が伝わることで、これを検出できる。しかしながら、この熱が伝わらなかった場合は、固定治具より二次電池を取り外さないかぎり、この異常を検出することができない。二次電池が組電池を構成して、隣り合う電池同士で外表面を隠し合う場合も同様である。
【0024】
これに対し、上記構成によれば、導熱線が設けられているので、固定治具や隣の電池によって隠されている部分に温度上昇が生じたとしても、その熱が導熱線を伝って効率よく温度検知層に伝えられる。これにより、目視可能な位置に温度検知層が設けられてさえいれば、二次電池を取り外すことなく、簡単に目視できない部分の異常を検出することができる。
【0025】
また、この場合、上記導熱線は、線幅に対して厚みが薄いリボン状であることが好ましい。
【0026】
導熱線を、線幅に対して厚みが薄いリボン状とすることで、組電池を構成する場合に、電池同士が接触してあるいは近接して配されることを妨げることなく、導熱線からの熱による温度検知層の変色を視認し易くできる。
【0027】
このような二次電池としては、リチウムイオン電池との組み合わせが好適である。
【0028】
リチウムイオン電池は、内部に充填された電解液が熱せられることで副反応が起こりやすく、熱による電池の性能低下等の影響が他の二次電池に比べて大きい。そのため、リチウムイオン電池と組み合わせることで、その安全性を効果的に高めることができる。
【0029】
また、二次電池を固定する固定治具は、透明部材よりなる構成が好ましく、固定治具を透明な構成とすることで、温度検知層による異常検知を、より効果的に利用することができる。
【0030】
本発明は、また、上記本発明の二次電池が、複数個、並列、あるいは直列、あるいはその両方で接続されてなる組電池もその権利範囲としている。
【0031】
特に、この場合、複数個の二次電池を固定する固定治具は、透明部材よりなる構成が好ましく、固定治具を透明な構成とすることで、温度検知層による異常検知を、より効果的に利用することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の二次電池は、電極端子を除いた電池本体の少なくとも1面に、面全体に亘って、加熱により不可逆的に変色する温度検知層が設けられているので、電池全体が異常な温度にまで上昇した異常だけでなく、電池の一部分のみが局所的に異常な温度にまで上昇した異常でも、これを検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る、温度検知層が設けられた角型の二次電池の概観を示す斜視図である。
【図2】比較のために示す従来の角型の二次電池の概観を示す斜視図である。
【図3】(a)〜(f)共に、本実施形態の上記角型の二次電池の変形例を示す斜視図である。
【図4】本実施形態の上記角型の二次電池の電池内部のトラブル、あるいは電池外部のトラブルによって、電池本体の外表面の温度が上昇し、温度検知層が不可逆的に変色した状態を示す説明図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る、円筒型の二次電池の概観を示す斜視図である。
【図6】本実施形態の上記円筒型の二次電池の電池内部のトラブル、あるいは電池外部のトラブルによって、電池本体の外表面の温度が上昇し、温度検知層が不可逆的に変色した状態を示す説明図である。
【図7】(a)は、本発明の第2の実施形態に係る、温度検知層に加えて導熱線が設けられた角型の二次電池の概観を示す斜視図であり、(b)は、導熱線のみを抜き出して示す説明図である。
【図8】第2の実施形態の角型の二次電池において、電池内部のトラブル、あるいは電池外部のトラブルによって、固定治具に隠れた部分において電池本体の外表面の温度が上昇し、その熱が導熱線に伝わって、温度検知層が導熱線に沿って不可逆的に変色した状態を示す説明図である。
【図9】第2の実施形態の角型の二次電池の変形例を示す斜視図である。
【図10】(a)は、本発明の第2の実施形態に係る、温度検知層に加えて導熱線が設けられた円筒型の二次電池の概観を示す斜視図であり、(b)は、導熱線のみを抜き出して示す説明図である。
【図11】第2の実施形態の円筒型の二次電池において、電池内部のトラブル、あるいは電池外部のトラブルによって、固定治具に隠れた部分において電池本体の外表面の温度が上昇し、その熱が導熱線に伝わって、温度検知層が導熱線に沿って不可逆的に変色した状態を示す説明図である。
【図12】第2の実施形態の円筒型の二次電池の変形例を示す斜視図である。
【図13】第1の実施形態の角型の二次電池を用いた組電池の電池の配置例を示す説明図である。
【図14】図13に示すように電池配置を有する組電池における電極端子間の接続構成を示す説明図である。
【図15】第2の実施形態の角型の二次電池を用いた組電池における電極端子間の接続構成を示す説明図である。
【図16】第1の実施形態の円筒型の二次電池を用いた組電池の電池の配置例を示す説明図である。
【図17】図16に示すように電池配置を有する組電池における電極端子間の接続構成を示す説明図である。
【図18】第2の実施形態の円筒型の二次電池を用いた組電池における電極端子間の接続構成を示す説明図である。
【図19】図15に示す組電池において固定治具を透明化した変形例の組電池を構成を示す説明図である。
【図20】図18に示す組電池において固定治具を透明化した変形例の組電池を構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
〔第1の実施形態〕
本発明の実施の一形態について、図1〜図7を用いて説明する。図1は、本発明の実施の一形態である二次電池1の概観を示す斜視図である。一方、図2は、比較のための従来の二次電池100の概観を示す斜視図である。
【0035】
図1、図2に示すように、二次電池1・100は、何れも、電池本体4が角型を成す角型電池であり、プラス電極端子2とマイナス電極端子3とは、電池本体4の同一面に並んで形成されている。電池本体4は、縦(奥行)44×横170×高さ115(単位ミリ)の直方体であり、縦44×横170の面に、電極端子2・3が形成されている。なお、サイズは、これに限られるものではない。
【0036】
また、二次電池1・100は何れも、リチウムイオン電池であるが、電池構成としては、ニッケル水素電池等の他の構成であってもよい。但し、熱による電池の性能低下等の影響は、内部に充填された電解液が熱せられることで副反応が起こりやすいリチウムイオン電池においてより問題であるので、電池構成としては、リチウムイオン電池との組み合わせが好ましい。
【0037】
本実施形態の二次電池1と従来の二次電池100との違いは、図1に示すように、二次電池1においては、電極端子2・3を除く電池本体4の外表面の全面に、加熱により不可逆的に変色する温度検知層5(図中ハッチングにて示す)が設けられている点である。
【0038】
温度検知層5は、例えば、不可逆なサーモペイントや不可逆なサーモシール等の示温材より構成された、二次電池1の電池本体4の外表面に密着された示温層である。温度検知層5は、二次電池1の内部のトラブル、あるいは充放電回路等の二次電池1の外部のトラブルによって、電池本体4の外表面の温度が上昇して所定温度に到達すると、不可逆的に変色する。
【0039】
不可逆なサーモペイントの具体例としては、例えば、アセイ工業株式会社が製造しているWAX示温インクシリーズを挙げることができる。該シリーズには、40℃:WL-40、45℃:WL-45、50℃:WL-50、55℃:WL-55、60℃:WL-60、65℃:WL-65、70℃:WL-70、75℃:WL-75、80℃:WL-80、85℃:WL-85、90℃:WL-90、95℃:WL-95、100℃:WL-100、105℃:WL-105、110℃:WL-110、115℃:WL-115、120℃:WL-120があり、60℃〜120℃まで、5℃刻みで不可逆に変色する温度が設定されている。
【0040】
本実施形態の二次電池1においては、示温材として、60℃で不可逆に変色する、WAX示温インクWL-60(アセイ工業株式会社製)が用いられている。WAX示温インクWL-60を、電極端子2・3を除く電池本体4の外表面全面に塗布し、その後、乾燥させることで、温度検知層5を得た。
【0041】
60℃を異常温度とし、60℃で変色する示温材を用いているのは、図2に示す従来の、リチウムイオン電池よりなる二次電池100においては、電池の一部分でも60℃以上に温度が上昇すると、電池の性能が低下してしまい、その後、電池の温度が通常に戻っても、電池の性能が回復しないことを実験的に確認しているからである。
【0042】
なお、二次電池の電池構成や、使用される部材等によって、電池の性能が低下する温度は異なっているので、温度検知層5の不可逆に変色する温度としては、局所的な温度上昇でも、二次電池の性能を低下させる温度とし、その温度で変色する示温材を選択すればよい。
【0043】
そして、このような温度検知層5は、図1に示すように、電極端子2・3を除く電池本体4の外表面全体に設けられていることが最も好ましい。このような構成とすることで、電池本体4の如何なる部分が異常な温度に上昇したとしても、確実にこれを検出できる。
【0044】
但し、図1の構成は、ベストモードであり、温度検知層5としては、電極端子2・3を除く電池本体4の少なくとも1面に、面全体に亘って設けられている構成であればよい。
【0045】
電池本体4における電池ケースは熱伝導性に優れた金属で構成されることが多く、電池外表面において熱は伝わりやすい。そのため、電池本体4の1面にのみ温度検知層5が設けられている構成であっても、面の一部ではなく、面全体に亘って設けられていることで、温度検知層5が設けられた面とは異なる面で発生した温度異常でも、部分的に近ければ、検出することができる。
【0046】
また、電池内部、或いは電池外部において、異常な温度上昇が起こりやすい箇所がわかっている場合には、少なくともその箇所が入る面に温度検知層5を設けておくことで、全面に設けなくとも、局所的な温度上昇を検出することができる。
【0047】
ここで、温度検知層5が面全体に亘って設けられているとは、温度検知層5が面全域を隙間なく完全に覆っている形態だけでなく、温度検知層5がストライプや、網目、ドット等のパターンにて、隙間を有しながらも面全体を覆っている形態や、温度検知層5に部分的に切り掻かれている部位はあるものの、温度検知層5が面全体を覆っている形態を含むことを意味している。
【0048】
図3(a)〜図3(f)に、温度検知層5のバリエーションを示す。図3(a)は、電極端子2・3が形成されている面を除いて温度検知層5が設けられた構成である。図3(b)は、電池本体4の全面に形成されている温度検知層5の一部がリボン状に切り掻かれている(参照符号6)構成である。また、図3(c)は、電池本体4の側面の全周に亘って、温度検知層5が、ストライプパターンで形成されている構成である。図3(d)は、電極端子2・3が形成されている面にのみ、温度検知層5が設けられた構成である。図3(e)は、電池本体4の最も広い側面にのみ、温度検知層5が、網目パターンで形成された構成である。図3(f)は、電池本体4の側面の全周に亘って、温度検知層5が、ドットパターンで形成された構成である。
【0049】
図4に、本実施形態の二次電池1が、二次電池1の内部のトラブル、あるいは二次電池1の外部のトラブルによって、電池本体4の外表面の温度が上昇し、温度検知層5が不可逆的に変色した状態を示す。参照符号7にて示す部分が、温度検知層5の変色温度である60℃に到達した部分であり、温度検知層5における他の領域とは明らかに色が異なっている。
【0050】
このように、本実施形態の二次電池1は、電池全体が異常な温度にまで上昇した異常だけでなく、電池の一部分のみが局所的に異常な温度にまで上昇した異常でも、検出することができる。しかも、特別な検査装置を用いたり、注意深く観察したりすることもなく、二次電池1の全体を簡単に目視するだけで検出することができる。
【0051】
特に、電極端子2・3を除く電池本体4の外表面全体に、面全体に亘って設けられていることで、電池本体4の如何なる部分が異常な温度に上昇したとしても、確実にこれを検出できる。
【0052】
加えて、二次電池1における温度検知層5の変色箇所より、トラブルの発生した位置を特定することができるので、トラブルの原因を解明する手助けとなる。つまり、電池内部のトラブルであれば、二次電池1内部のどの部分に異常が発生したのかを推測することができる。電池外部のトラブルであれば、二次電池1の外部にある充放電回路等のどの部分に異常が発生したのかを推測することもできる。電池外部のトラブルの発生を、現象が小さいうちに発見して対処できることで、より深刻なトラブルの発生を未然に防止することができる。
【0053】
図5に、上記温度検知層5を円筒型電池の二次電池に適用した二次電池10を示す。図5は、二次電池10の概観を示す斜視図である。二次電池10は、電池本体11が円筒型を成す円筒型電池のリチウムイオン電池であり、これにおいて、第1の実施形態の二次電池1と同様に、電極端子2・3を除く電池本体11の外表面全面に、温度検知層5が設けられた構成である。
【0054】
円筒型電池の場合、温度検知層5は、少なくとも、何れかの電極端子形成面、或いは周面の一投影面において、全面に亘って設けられている。
【0055】
ここで、二次電池10は、18650型の円筒型リチウムイオン電池サイズであるが、サイズはこれに限られるものではない。また、電池構成として、ニッケル水素電池等の他の構成であってもよいが、上述したように、リチウムイオン電池との組み合わせが効果的である。
【0056】
図6に、本実施形態の二次電池10が、二次電池10の内部のトラブルあるいは二次電池10の外部のトラブルで、電池本体11の外表面の温度が上昇し、温度検知層5が不可逆的に変色した状態を示す。参照符号8にて示す部分が、温度検知層5の変色温度である60℃に到達した部分である。
〔第2の実施形態〕
本発明の実施の他の形態について、図7〜12を用いて説明する。なお、説明の便宜上、第1の実施形態で用いた部材と同じ機能を有する部材には同じ符号を付して説明を省略する。
【0057】
金属等からなる熱伝導性に優れた電池ケースであれば、温度検知層5が設けられた面以外で発生した異常な熱を温度検知層5が設けられた面に伝達することは可能である。しかしながら、電池ケースの熱伝導率が低い場合や、金属からなる電池ケースであっても電池サイズが大型化して温度検知層5が設けられている面が温度上昇部分から遠い場合、温度検知層5にまでその熱が伝わらない場合も想定される。
【0058】
また、二次電池1を固定するための固定治具に取り付けられた状態の二次電池1においては、固定治具にて隠れている部分に温度上昇が発生した場合、目視可能な位置に設けられた温度検知層5にこの熱が伝わることで、これを検出できる。しかしながら、この熱が伝わらなかった場合は、固定治具より二次電池1を取り外さないかぎり、この異常を検出することができない。二次電池1が組電池を構成して、隣り合う電池同士で外表面を隠し合う場合も同様である。
【0059】
本実施形態では、温度上昇部分の熱を離れた温度検知層5へと効果的に伝えるための工夫について説明する。
【0060】
図7(a)は、本実施形態の二次電池12の概観を示す斜視図である。本実施形態の二次電池12は、第1の実施形態の二次電池1と同様の構成を有し、これにおいてさらに、目視不可能な位置に発生した温度上昇を目視可能な位置にて検出できるようにするための導熱線15が設けられた構成である。なお、図7(a)においては、温度検知層5のハッチングを省略している。
【0061】
図7(b)は、図7(a)における導熱線15のみを抜き出した図である。図7(b)に示すように、本実施形態の二次電池12においては、導熱線15は、第1〜第3の線15a〜15cの3本からなる。
【0062】
第1の線15aは、二次電池12の電極端子2・3間を通って電池本体4の正面を縦に2分するように、電池本体4を縦方向(正面より見て)に一周している。ここで、電池本体4の正面とは、電池本体4の最も広い面(上記サイズ例では、横170×高さ115の面)とする。
【0063】
第2の線15bは、電池本体4の正面を横方向に2分するように、電池本体4を横方向(正面より見て)に一周している。第2の線15bと第1の線15aとは、電池本体4の正面と裏面とにおいて十字に交わっている。
【0064】
第3の線15cは、電池本体4の側面(上記サイズ例では、縦(奥行)44×高さ115の面)を縦に2分するように、電池本体4を周方向(正面より見て)に、電極端子2・3が形成されている面を除いて3/4周している。第3の線15cと第2の線15bとは、電池本体4の両側面において十字に交わっている。
【0065】
このような導熱線15は、温度検知層5に接触(好ましくは密着)していれば、温度検知層5の上層、下層の何れに設けられていてもよい。
【0066】
導熱線15は、目視不可能な位置に発生した局所的な温度上昇部分の熱を温度上昇部分以外の他の領域へと伝えるものであり、目視不可能な位置に発生した局所的な温度上昇による異常を、目視可能な位置にて検出できるようにするものである。したがって、導熱線15の材質としては、電池本体4の外表面を構成している材質よりも熱伝導率の高い材質である必要がある。
【0067】
通常、二次電池における電池ケースとしては、例えばSUS304のような金属が用いられる。したがって、導熱線15には、これらSUS304よりも熱伝導率の高い、例えば、銅、銀、金、アルミニウムなどを用いることができる。
【0068】
本実施形態の二次電池12においては、導熱線15として、幅2mm、厚さ100μmの銅線を用い、温度検知層5の上に配置した。導熱線15を、線幅に対して厚みが薄いリボン状とすることで、組電池を構成する場合に、電池同士が接触してあるいは近接して配されることを妨げることなく、導熱線15からの熱による温度検知層5の変色を視認し易くできる。
【0069】
導熱線15の幅は、導熱線15からの熱によって温度検知層5が変色する部分が視認できる幅であればよい。また、導熱線15の厚さは、強度が保持される範囲であれば薄くすることが望ましい。
【0070】
図8に、本実施形態の二次電池12が、二次電池12の内部のトラブルあるいは二次電池12の外部のトラブルで、電池本体4の外表面の温度が上昇し、温度検知層5が不可逆的に変色した状態を示す。参照符号9にて示す部分が、温度検知層5の変色温度である60℃に到達した部分である。また、参照符号16で示すハッチング部分が、参照符号9にて示す部分の熱が導熱線15に伝わり、その熱(60℃以上)によって、導熱線15に沿って変色している部分である。なお、図8においても、温度検知層5のハッチングを省略している。
【0071】
たとえ電池本体4の外表面全面に温度検知層5が設けられていたとしても、電池ケースの熱伝導率が低い場合や、金属からなる電池ケースであっても電池サイズが大きく、固定治具30にて隠れている部分に温度上昇が発生した場合、目視可能な位置に設けられた温度検知層5にこの熱が伝わらず、これを検出できない恐れがある。
【0072】
しかしながら、図8に示すように、導熱線15が設けられた本実施形態の二次電池12では、固定治具30等にて隠されている、参照符号9にて示す部分に温度上昇が生じたとしても、その熱が導熱線15を伝って、参照符号16にて示すように、目視可能な位置の温度検知層5を変色させるので、二次電池1を固定治具30から取り外すことなく、簡単に異常を検出できる。
【0073】
導熱線15のレイアウトとしては、図9に示す導熱線15-1ように、図7(a)のレイアウトよりも狭いピッチで、網目を描くように配置してもよい。これにより、温度上昇が発生した部分に導熱線15が配置されておらず、隠れた部分の異常を、目視可能な位置まで引き出すことができないといった不具合を回避できる。
【0074】
すなわち、導熱線15における線の本数や配置位置等のレイアウトは、二次電池12にて想定される局所的な温度上昇が生じる領域サイズ、固定治具に固定された状態で目視可能な位置等に基づいて、目視できない部分で発生した温度上昇を、目視可能な位置に導出できるように設計すればよい。
【0075】
また、導熱線15は、銅線等の金属線を電池本体4に巻きつけて構成しても、印刷にて形成してもよい。特に、温度検知層5がサーモシールから構成される場合、サーモシールに印刷等の方法を用いて導熱線15を予め形成しておくことで、サーモシールを貼り付ける工程にて同時に、導熱線15を設けることが可能となる。しかも、印刷にて形成された導熱線15は、温度検知層5に密着されるので、導熱線15に伝わる熱による温度検知層5の反応が鋭敏に行われる。
【0076】
図10(a)に、第1の実施形態で示した円筒型の二次電池10に導熱線15−2を設けた本実施形態の二次電池21の構成を示す。なお、図10(a)においては、温度検知層5のハッチングを省略している。
【0077】
図10(b)は、図10(a)における導熱線15−2のみを抜き出した図である。図10(b)に示すように、本実施形態の二次電池21の導熱線15−2は、第1〜第3の線15−2a〜15−2cの3本からなる。
【0078】
第1の線15−2aと第2の線15−2bは、二次電池21の円筒型の電池本体11の
外表面(電極端子を除く)に、円筒の中心を挟んで対向するよう配置されている。第1の線15−2aおよび第2の線15−2bは、プラスの電極端子2が設けられている面からマイナスの電極端子3が設けられている面へといたる、円筒型の電池本体11が軸方向に有する長さと同等の長さを有している。
【0079】
第3の線15−2cは、円筒型の電池本体11を軸方向と直交する方向に2分するように、電池本体11をその周方向に一周している。第3の線15−2cと、第1の線15−2aおよび第2の線15−2bとは、電池本体11の外周面において十字に交わっている。
【0080】
図11に、本実施形態の二次電池21が、二次電池21の内部のトラブルあるいは二次電池21の外部のトラブルで、電池本体11の外表面の温度が上昇し、温度検知層5が不可逆的に変色した状態を示す。参照符号17にて示す部分が、温度検知層5の変色温度である60℃に到達した部分である。また、参照符号18で示すハッチング部分が、参照符号17にて示す部分の熱が導熱線15−2に伝わり、その熱(60℃以上)によって、導熱線15−2に沿って変色している部分である。なお、図11においても、温度検知層5のハッチングを省略している。
【0081】
このように、本実施形態の二次電池21においても、固定治具30等にて隠されている部分の異常が、目視可能な位置まで引き出されて温度検知層5の変色として伝えられるので、固定治具30より二次電池21を取り外すことなく、簡単に異常を検出できる。
【0082】
また、円筒型電池の例である本実施形態においても、導熱線の本数や配置位置等のレイアウトは、二次電池21にて想定される局所的な温度上昇が生じる領域サイズ、固定治具に固定された状態で目視可能な位置等に基づいて、目視できない部分で発生した温度上昇を、目視可能な位置に導出できるように設計すればよい。
【0083】
例えば、図12に示す、導熱線15-3ように、図10(a)よりも狭いピッチで複数、網目を描くように配置することで、温度上昇が発生した部分に導熱線15が配置されておらず、隠れた部分の異常を、目視可能な位置まで引き出すことができないといった不具合を回避できる。
〔第3の実施形態〕
本発明の実施の他の形態について、図13〜図20を用いて説明する。なお、説明の便宜上、第1の、第2の実施形態で用いた部材と同じ機能を有する部材には同じ符号を付して説明を省略する。
【0084】
本実施形態においては、第1、第2の実施形態で説明した、4種類の二次電池、つまり、二次電池(角型)1、二次電池(円筒型)10、二次電池(角型)12、及び二次電池(円筒型)21それぞれの組電池について説明する。
【0085】
図13に、第1の実施形態の角型の二次電池1を用いた組電池23の電池の配置例を示す。図13の例では、5直列2並列の例を示している。上述したように、組電池は、機器に必要な電圧、パワーを取り出すために、複数個の二次電池が直列または並列に組み合わせて構成されるものであるので、組み方はこれに限定されるものではない。
【0086】
ここで、5直列を構成する5個の二次電池1は、ABS樹脂や、例えばポリカーボネート製の、上部固定治具31bと下部固定治具31aとで、その上部と下部とが固定されてユニット化されて、直列ユニット24を構成している。
【0087】
図14に、図13に示すように、二次電池1が複数個配置された組電池23における電極端子間の接続構成を示す。図中、参照符号32にて示すものが端子接続線である。端子接続線32にて、直列ユニット24内の5つの二次電池1が直接接続され、かつ、2つの直列ユニット24が並列接続される。
【0088】
図15に、二次電池1に変えて、導熱線15が設けられた第2の実施形態の二次電池12を用いた組電池25を示す。導熱線15が設けられた二次電池12よりなる組電池25では、目視できない部分で発生した温度上昇も導熱線15に熱が伝わることで検出できるので、二次電池12を組み付けた状態のまま、各二次電池12の異常の有無を判別することができる。
【0089】
また、図16に、第1の実施形態の円筒型の二次電池10を用いた組電池40の電池配置例を示す。図16の例でも、5直列2並列の例を示している。円筒型の二次電池10の場合、直列ユニット41内において、5個の二次電池10は、プラスとマイナスとが交互になるように配置される。
【0090】
ここでも、5直列を構成する5個の二次電池10は、例えばABS樹脂や、ポリカーボネート製の、上部固定治具35bと下部固定治具35aとで、その上部と下部とが固定されてユニット化されて、直列ユニット41を構成している。
【0091】
図17に、図16に示すように二次電池10が配置された組電池40における電極端子間の接続構成を示す。図中、参照符号36にて示すものが端子接続線である。端子接続線36にて、直列ユニット41内の5つの二次電池1が直接接続され、かつ、2つの直列ユニット41が、並列接続される。
【0092】
図18に、二次電池10に変えて、導熱線15が設けられた第2の実施形態の二次電池21を用いた組電池42を示す。導熱線15が設けられた二次電池21よりなる組電池42では、導熱線15によって目視できない部分で発生した温度上昇も検出できるので、二次電池12を組み付けた状態のまま、各二次電池12の異常の有無を判別することができる。
【0093】
また、より好ましい構成としては、直列ユニット24、直列ユニット41における、上部固定治具31b・下部固定治具31a、上部固定治具35b・下部固定治具35aを、図19、図20に示すように、透明な上部固定治具51b・下部固定治具51a、上部固定治具52b・下部固定治具52aとすることである。
【0094】
これによれば、導熱線15が設けられていない角型の二次電池1、あるいは円筒型の二次電池10からなる組電池23・40においても、固定治具にて視認できない部分を大きく減らすことができる。このような固定治具を透明な構成とすることは、温度検知層5を有する二次電池1・10・12・21の組電池において効果的である。
【0095】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0096】
1 二次電池
2 プラス電極端子
3 マイナス電極端子
4 電池本体
5 温度検知層
10 二次電池
11 電池本体
12 二次電池
15 導熱線
21 二次電池
51a 下部固定治具(固定治具)
51b 上部固定治具(固定治具)
52a 下部固定治具(固定治具)
52b 上部固定治具(固定治具)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極端子を除いた電池本体の少なくとも1面に、面全体に亘って、加熱により不可逆的に変色する温度検知層が設けられていることを特徴とする二次電池。
【請求項2】
上記温度検知層は、上記電池本体の周面に、面全体に亘って設けられていることを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
上記温度検知層は、上記電池本体の全ての面に、面全体に亘って設けられていることを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項4】
上記電池本体には、電池外表面を構成する物質よりも熱伝導率の高い物質からなる導熱線が、上記温度検知層と接触するように設けられており、
上記導熱線は、局所的に発生した温度上昇部分の熱を、温度上昇部分以外の他の領域へと伝達することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の二次電池。
【請求項5】
上記導熱線は、線幅に対して厚みが薄いリボン状であることを特徴とする請求項4に記載の二次電池。
【請求項6】
リチウムイオン電池であることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
二次電池を固定する固定治具を備え、該固定治具が透明部材よりなることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の二次電池。
【請求項8】
上記請求項1から6の何れか1項に記載の二次電池が複数個、並列、あるいは直列、あるいは並列及び直列の両方で接続されてなることを特徴とする組電池。
【請求項9】
複数個の二次電池を固定する固定治具を備え、該固定治具が透明部材よりなることを特徴とする請求項8に記載の組電池。
【請求項1】
電極端子を除いた電池本体の少なくとも1面に、面全体に亘って、加熱により不可逆的に変色する温度検知層が設けられていることを特徴とする二次電池。
【請求項2】
上記温度検知層は、上記電池本体の周面に、面全体に亘って設けられていることを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
上記温度検知層は、上記電池本体の全ての面に、面全体に亘って設けられていることを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項4】
上記電池本体には、電池外表面を構成する物質よりも熱伝導率の高い物質からなる導熱線が、上記温度検知層と接触するように設けられており、
上記導熱線は、局所的に発生した温度上昇部分の熱を、温度上昇部分以外の他の領域へと伝達することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の二次電池。
【請求項5】
上記導熱線は、線幅に対して厚みが薄いリボン状であることを特徴とする請求項4に記載の二次電池。
【請求項6】
リチウムイオン電池であることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
二次電池を固定する固定治具を備え、該固定治具が透明部材よりなることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の二次電池。
【請求項8】
上記請求項1から6の何れか1項に記載の二次電池が複数個、並列、あるいは直列、あるいは並列及び直列の両方で接続されてなることを特徴とする組電池。
【請求項9】
複数個の二次電池を固定する固定治具を備え、該固定治具が透明部材よりなることを特徴とする請求項8に記載の組電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−174458(P2012−174458A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34695(P2011−34695)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]