説明

二次電池の電解液量検出方法およびその装置

【課題】二次電池の電解液量検出方法およびその装置の提供
【解決手段】二次電池の電解液量検出方法は、電池ケース300に取り付けられたAE信号検出センサ11から電池ケース300内で生じたAE信号を検出し、当該AE信号に基づいて、二次電池1000の電解液量を検出する。二次電池の 電解液量検出装置10は、電池ケース300に取り付けられるAE信号検出センサ11と、AE信号検出センサ11が検出したAE信号に基づいて二次電池の電解液量を検出する電解液量検出部16とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース内に電解液を有する二次電池の電解液量検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケース内に電解液を有する二次電池の電解液量検出方法は、確立された技術がない。本発明者は、二次電池の電解液量検出方法として、二次電池のAE信号を検出して、当該AE信号に基づいて電解液量を検出できないかと考えている。ここで、「AE信号」は、アコースティックエミッション信号(acoustic emission signal)を意味している。二次電池についてAE信号を利用した技術は、例えば、特開平7−6795号公報に開示されている。同公報では、密閉型鉛酸電池に関し、電池内部から発生するAE信号を検出している。そして、検出されたAE信号の周波数によって、50から150kHzの周波数のAE信号をガス発生によるものとし、150kHz以上の周波数の信号を内部構成物の破壊によるものとしている。
【0003】
また、特開平7−85892号公報には、蓄電池の充電方法にAE信号を利用した方法が開示されている。同公報に開示された主たる発明は、蓄電池のAE信号を測定し、測定値を微分した結果、当該測定値が急上昇傾向を示したとき、電池への充電を定電流充電から定電圧充電へ切替えるというものである。
また、特開2006−147513号公報には、セル本体の凹部外側にOリングやシール材を配置し、蓋体で密閉可能な構造を有する電気化学特性測定用セルに関し、AE信号を測定することが開示されている。同公報では、充放電時に伴う体積膨張、応力発生、胞性破壊に起因するセル内で発生するAE信号が測定されている。
また、特開2005−291832号公報では、電池の劣化診断方法として、被測定電池の外側から超音波を該被測定電池内に印加し、該被測定電池の外側で超音波を検出して被測定電池の劣化を診断することが開示されている。
【特許文献1】特開平7−6795号公報
【特許文献2】特開平7−85892号公報
【特許文献3】特開2006−147513号公報
【特許文献4】特開2005−291832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献は、概ね電池あるいは電気化学特性測定用セルに関し、AE信号を検出して充電状態や劣化状態を検出することが開示されている。しかし、何れの方法においても、ケース内に電解液を有する二次電池の電解液量を検出する方法は記載されていない。そこで、本発明は二次電池の電解液量検出方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る二次電池の電解液量検出方法は、電池ケースに取り付けられたAE信号検出センサからAE信号を検出し、AE信号検出センサが検出したAE信号に基づいて電解液量を検出する。この二次電池の電解液量検出方法によれば、AE信号に基づいて電解液量を検出するので、精度良く電解液量を検出することができる。
【0006】
この際、電池ケースを振動させた際に生じるAE信号に基づいて二次電池の電解液量を検出してもよい。また、電池ケースを叩いた際に生じるAE信号に基づいて二次電池の電解液量を検出してもよい。また、電池ケースの高さ方向に沿って、電池ケースを叩く位置を変化させていきながらAE信号を検出してもよい。
【0007】
また、電池ケースが電解液が溜まる部位を有している場合には、当該電解液が溜まる部位にAE信号検出センサを取り付けてAE信号を検出してもよい。
また、電池ケースの高さ方向に沿って複数のAE信号検出センサを取り付けてAE信号を検出してもよい。
また、AE信号検出センサが検出したAE信号の周波数に基づいて、二次電池の電解液量が所定の量よりも少ないことを検出してもよい。
また、AE信号検出センサが検出したAE信号の大きさに基づいて、二次電池の電解液量が所定の量よりも少ないことを検出してもよい。
【0008】
また、本発明に係る二次電池の電解液量検出装置は、ケースに取り付けられるAE信号検出センサと、AE信号検出センサが検出したAE信号に基づいて二次電池の電解液量検出する電解液量検出部とを備えている。
【0009】
電解液量検出部は、二次電池の電解液量が所定の量よりも少ないことを検出する閾値が設定された閾値設定部を有し、閾値設定部に設定された閾値に基づいて、AE信号検出センサが検出したAE信号から、二次電池の電解液量が所定の量よりも少ないか否かを検出してもよい。
なお、閾値は、例えば、AE信号検出センサが検出したAE信号の大きさに対して設定してもよい。また、閾値は、例えば、AE信号検出センサが検出したAE信号の周波数に対して設定してもよい。
【0010】
また、電解液量検出部は、AE信号検出センサが検出したAE信号と二次電池の電解液量との相関関係を記憶した相関関係記憶部を有し、相関関係記憶部に記憶された相関関係に基づいて、AE信号検出センサが検出したAE信号から、二次電池の電解液量を検出してもよい。
なお、相関関係は、AE信号検出センサが検出したAE信号の大きさと、二次電池の電解液量との相関関係でもよい。また、相関関係は、AE信号検出センサが検出したAE信号の周波数と、二次電池の電解液量との相関関係でもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る二次電池の電解液量検出方法および当該方法を具現化した装置の一例を図面に基づいて説明する。
【0012】
この二次電池の電解液量検出方法は、リチウムイオン二次電池(lithium-ion secondary battery)やニッケル水素二次電池(nickel-hydride secondary battery)など、種々の二次電池(蓄電池)に適用できる。
これらの二次電池には電池ケース内に電解液が注入されている。電池ケースは封止材等で塞がれているが、電解液は経年的に封止材を透過するなどして減少していく。電解液が所要の量よりも少なくなると、二次電池の性能が劣化する。このため、二次電池には、予め余剰に電解液が注入されている。
【0013】
本発明者は、二次電池の液枯れ、すなわち、電解液が必要な量よりも少なくなる事象を検出することができれば、二次電池を適切な時期に交換できると考えた。また、さらには電解液量を検出することができれば、電解液の液枯れに起因する種々の不具合を予防でき、また二次電池の適切な交換時期の目安を提示することもできると考えられる。さらに、例えば、図6に示すように、車両1に実装された二次電池1000の劣化状況の診断をより精度よく行なえると考えられる。
さらに、本発明者は、電池ケースに取り付けたAE信号検出センサで検出されたAE信号が、電池ケース内の電解液量によって変化することを見出した。そこで、かかるAE信号に基づいて二次電池の電解液量を検出できるのではないかと考え、本発明を創案するに至った。
【0014】
この二次電池の電解液量検出方法は、図4に示すように、電池ケース300に取り付けられたAE信号検出センサ11から電池ケース300内で生じたAE信号を検出し、当該AE信号に基づいて、二次電池1000の電解液量を検出する。この方法によれば、二次電池の電解液量を的確に検出できる。これにより、例えば、二次電池1000の液枯れ(二次電池1000の電解液量が必要量よりも少なくなる事象)を検出できる。以下、リチウムイオン二次電池を例に本発明の一実施形態に係る電解液量検出方法を説明する。
【0015】
この実施形態では、リチウムイオン二次電池は、図1に示すように、金属製の電池ケース300に構成されている。電池ケース300には、捲回電極体100が収容されている。
捲回電極体100は、例えば、図2に示すように、正極シート101と、第1セパレータ102と、負極シート103と、第2セパレータ104とが、順に重ねられて巻き取られている。なお、正極シート101は正の電極シートであり、負極シート103は負の電極シートである。また、以下の説明において、適宜、正極シート101と、負極シート103を総称して「電極シート」という。
【0016】
正極シート101は、この実施形態では、アルミニウム箔からなる集電体シート131(正極集電体)の両面に正極活物質を含む電極材料132が塗工されている。当該電極材料132に含まれる正極活物質としては、例えば、マンガン酸リチウム(LiMn)、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)などが挙げられる。
負極シート103は、この実施形態では、銅箔からなる集電体シート141(負極集電体)の両面に負極活物質を含む電極材料142が塗工されている。当該電極材料142に含まれる負極活物質としては、例えば、グラファイト(Graphite)やアモルファスカーボン(Amorphous Carbon)などの炭素系材料、リチウム含有遷移金属酸化物や遷移金属窒化物等などが挙げられる。
セパレータ102、104は、イオン性物質が透過可能な膜であり、この実施形態では、ポリプロピレン製の微多孔膜が用いられている。
【0017】
この実施形態では、電極材料132、142は集電体シート131、141の幅方向片側に偏って塗工されており、集電体シート131、141の幅方向反対側の縁部には塗工されていない。正負の電極シート101、103のうち、集電体シート131、141に電極材料132、142が塗工された部位を塗工部101a、103aといい、集電体シート131、141に電極材料132、142が塗工されていない部位を未塗工部101b、103bという。
【0018】
図3は、正極シート101と、第1セパレータ102と、負極シート103と、第2セパレータ104とが順に重ねられた状態を示す幅方向の断面図である。正極シート101の塗工部101aと負極シート103の塗工部103aは、それぞれセパレータ102、104を挟んで対向している。図2および図3に示すように、捲回電極体100の捲回方向に直交する方向(巻き軸方向)の両側において、正極シート101と負極シート103の未塗工部101b、103bは、セパレータ102、104からそれぞれはみ出ている。当該正極シート101と負極シート103の未塗工部101b、103bは、捲回電極体100の正極と負極の集電体101b1、103b1(図2参照)をそれぞれ形成している。
【0019】
かかる捲回電極体100は、図1に示すように、電池ケース300に収容される。電池ケース300には、正極端子301と負極端子303が設けられている。正極端子301は捲回電極体100の正極集電体101b1(図2参照)に電気的に接続されている。負極端子303は捲回電極体100の負極集電体103b1(図2参照)に電気的に接続されている。かかる電池ケース300には電解液が注入される。電解液は、適当な電解質塩(例えばLiPF等のリチウム塩)を適当量含むジエチルカーボネート、エチレンカーボネート等の混合溶媒のような非水電解液で構成できる。
電池ケース300は封止材等で塞いでいるが、電解液は経年的に当該封止材を透過していき、徐々に少なくなっていく。このため、電池ケース300内には、予め必要量以上に余剰の電解液を入れている。電解液は、適当な量が、捲回電極体のセパレータや電極シートの塗工部に浸み込んでいるが、余剰の電解液は、電池ケース300内の隙間に溜まる。この実施形態では、特に、電池ケース300の底部近傍が、余剰の電解液が溜まる部位になる。
【0020】
この実施形態では、電解液量検出装置10は、図4または図5に示すように、AE信号検出センサ11と、電解液量検出部16とを備えている。図中、符号17はAE信号検出センサ11で検出したAE信号を増幅させるアンプである。
AE信号検出センサ11は、それぞれAE信号を検出するセンサである。図4に示す例では、AE信号検出センサ11は、電池ケース300内で電解液が溜まる部位(この実施形態では、電池ケース300の底部近傍)に取り付けられている。また、図5に示す例では、電池ケース300の高さ方向に沿って複数のAE信号検出センサ11が取り付けられている。AE信号検出センサ11は、電池ケース300から所望のAE信号が得られる適当な位置に取り付けるとよい。電池ケース300にAE信号検出センサ11を取り付ける位置は任意に選択できる。AE信号検出センサ11には、公知の種々のセンサのうち、電池ケース300に取り付けるのに適したものを採用するとよい。
【0021】
電解液量検出部16は、AE信号検出センサ11で検出したAE信号に基づいて、電解液量を検出する。この実施形態では、電解液量検出部16は、二次電池1000の液枯れ(二次電池1000の電解液量が必要量よりも少なくなる事象)などを検出できる。また、この実施形態では、電解液量検出部16は、二次電池1000の電解液量を検出できる。
当該電解液量検出部16は、例えば、不揮発性メモリーなどの記憶部と、CPUなどの演算処理部を備えた電子演算処理装置(コンピュータ)で構成されており、予め設定されたプログラムに沿って所定の処理を行う。
この場合、AE信号検出センサ11は人が認識できない周波数の音波も検出できる。また、電解液量検出部16は、機械的に周波数等を測定して当該周波数に基づいて定量的に判定するので、電解液量を精度良く検出できる。
この実施形態では、電解液量検出部16は、閾値設定部16aと、相関関係記憶部16bとを備えている。閾値設定部16aは、二次電池1000の電解液量が所定の量よりも少ないことを検出するための閾値が設定される。相関関係記憶部16bは、AE信号検出センサが検出したAE信号と二次電池の電解液量との相関関係を記憶する。
【0022】
例えば、電池ケース300を振動させた際に生じるAE信号を検出し、当該AE信号に基づいて二次電池1000の電解液量を検出するとよい。
具体的には、AE信号検出センサ11によって、電池ケース300を振動させた際に生じたAE信号を検出し、当該AE信号の周波数に基づいて、二次電池1000の電解液量が所定の量よりも少なくなるのを検出できる。この場合、例えば、電池ケース300内の電解液の量が異なる複数の二次電池1000のサンプルについて、電池ケース300を振動させた際に生じたAE信号を採取する実験を予め行なう。このとき電池ケース300内の電解液の量によって、電池ケース300を振動させた際に生じるAE信号が異なる。そこで、かかる実験に基づいて、電池ケース300内の電解液の量と、電池ケース300を振動させた際に生じるAE信号との相関関係を得るとよい。
【0023】
そして、当該相関関係によりAE信号に対して適当な閾値を設けて、二次電池1000の電解液量が所定の量よりも少なくなるのを検出してもよい。すなわち、この実施形態では、閾値設定部16aに上記の閾値を設定する。そして、電解液量検出部16は、閾値設定部16aに設定された閾値と比較判定し、AE信号検出センサ11が検出したAE信号から、二次電池1000の電解液量が所定の量よりも少なくなる事象を検出するとよい。
【0024】
また、この実施形態では、上記電池ケース300内の電解液の量と、電池ケース300を振動させた際に生じるAE信号との相関関係を、相関関係記憶部16bに記憶させてもよい。この場合、電解液量検出部16は、相関関係 記憶部16bに記憶された相関関係に基づいて、AE信号検出センサ11が検出したAE信号から、二次電池1000の電解液量を検出するとよい。
【0025】
例えば、実験等によって、電池ケース300を振動させた際に生じるAE信号が、余剰電解液が少ない場合に小さくなり、余剰電解液が多い場合に大きくなったとする。この場合、AE信号検出センサ11が検出したAE信号の大きさに基づいて、二次電池1000の電解液量が所定の量よりも少なくなるのを検出できる。
この場合には、予め実験に基づいて、電池ケース300内の電解液の量と、電池ケース300を振動させた際に生じるAE信号の大きさとの相関関係を得るとよい。そして、電解液量検出部16において、当該相関関係によりAE信号の大きさに対して適当な閾値を設ける。そして、AE信号検出センサ11で検出されたAE信号の大きさと当該閾値とに基づいて二次電池1000の電解液量が所定の量よりも少なくなるのを検出するとよい。また、他の形態として、電池ケース300内の電解液の量と、電池ケース300を振動させた際に生じるAE信号の大きさとの相関関係を、電解液量検出部16に記憶させてもよい。この場合、電解液量検出部16は、当該相関関係に基づいて、検出されたAE信号の大きさから二次電池1000の電解液の量を検出するように構成できる。
【0026】
また、AE信号の大きさに代えて、AE信号の周波数に着目してもよい。すなわち、予め実験に基づいて、電池ケース300内の電解液の量と、電池ケース300を振動させた際に生じるAE信号の周波数との相関関係が得られたとする。この場合には、電解液量検出部16において、当該相関関係によりAE信号の周波数に対して適当な閾値を設ける。そして、AE信号検出センサ11で検出されたAE信号の周波数と当該閾値とに基づいて二次電池1000の電解液量が所定の量よりも少なくなるのを検出するとよい。また、他の形態として、電池ケース300内の電解液の量と、電池ケース300を振動させた際に生じるAE信号の周波数との相関関係を、電解液量検出部16に記憶させてもよい。この場合、電解液量検出部16は、当該相関関係に基づいて、検出されたAE信号の周波数から二次電池1000の電解液の量を検出するように構成できる。
【0027】
また、他の方法として、電池ケース300を叩いた際に生じるAE信号に基づいて、二次電池1000の電解液量を検出してもよい。
すなわち、本発明者が実験により得た知見によれば、電池ケース300内の電解液の量によって、電池ケース300を叩いた際に生じるAE信号が異なる。かかるAE信号を基に、二次電池1000の電解液量を検出できる。
【0028】
実験に基づいて、電池ケース300内の電解液の量と、電池ケース300を叩いた際に生じるAE信号との相関関係を得るとよい。この際、電池ケース300を叩く場所は同じ場所を叩くとよい。また、例えば、検出されるAE信号の周波数またはAE信号の大きさに着目して、相関関係を得るとよい。そして、電解液量検出部16は、当該相関関係によりAE信号に対して、二次電池1000の電解液量が所定の量よりも少ないことを検出する適当な閾値を設けるとよい。電解液量検出部16は、当該閾値に基づいて、AE信号検出センサ11で検知されたAE信号から、二次電池1000の電解液量が所定の量よりも少ないことを検出できる。また、他の形態として、電池ケース300内の電解液量と、電池ケース300を叩いた際に生じるAE信号との相関関係を、相関関係記憶部16bに記憶させてもよい。この場合、電解液量検出部16は、検出されたAE信号と当該相関関係とに基づいて、二次電池1000の電解液の量が検出されるように構成できる。
【0029】
すなわち、AE信号の周波数またはAE信号の大きさに対して閾値を設定し、検出されたAE信号と当該閾値とに基づいて二次電池1000の電解液量が所定の量よりも少ないか否かを検出するとよい。また、電解液量検出部16は、電池ケース300内の電解液量と、検出されたAE信号の周波数または大きさとの相関関係に基づいて、検出されたAE信号の周波数または大きさから二次電池1000の電解液の量を検出するように構成できる。
【0030】
また、電池ケース300の高さ方向に沿って、電池ケース300を叩く位置を変化させていきながらAE信号を検出してもよい。すなわち、電池ケース300を叩く位置によって、電池ケース300内の電解液量によって、電池ケース300が発する音が異なる場合がある。例えば、電池ケース300に電解液が溜まっていない位置を叩いた場合に比べて、電池ケース300に電解液が溜まっている位置を叩いた場合には鈍い音が生じる。このため、電池ケース300を叩く位置を変化させていきながらAE信号が顕著に変化する位置を検出することによって、電池ケース300に電解液が溜まっている位置を検出できる。
【0031】
また、電池ケース300を叩く場所が同じでも、電池ケース300に取り付けたAE信号検出センサ11の位置によって、検出されるAE信号が異なる。例えば、余剰電解液が溜まっている深さに設置されたAE信号検出センサ11では、低い周波数のAE信号が検出される。
このため、図5に示すように、電池ケース300の高さ方向に沿って複数のAE信号検出センサ11を取り付けてAE信号を検出してもよい。この場合、電池ケース300を叩くと、それぞれのAE信号検出センサ11からAE信号が得られる。この際、電池ケース300に電解液が溜まっている位置に取り付けられたAE信号検出センサ11と、電池ケース300に電解液が溜まっていない位置に取り付けられたAE信号検出センサ11とでは、検出されるAE信号の大きさまたは周波数が顕著に異なる。かかる複数のAE信号検出センサ11で検出されたAE信号を解析することによって、電池ケース300に電解液が溜まっている位置を検出でき、これによって、二次電池1000の電解液量を検出できる。この場合、電池ケース300の高さ方向に沿って、電池ケース300を叩く位置を変化させる場合に比べて、電池ケース300を叩く回数が少なくてよいので、検査時間を短縮できる。
【0032】
また、例えば、電池ケース300を叩いた際に生じるAE信号の大きさが、余剰電解液の量に応じて変化するとする。この場合には、例えば、予め実験に基づいて、電池ケース300内の電解液の量と、電池ケース300を叩いた際に生じるAE信号の大きさとの相関関係を得るとよい。そして、電解液量検出部16において、当該相関関係によりAE信号の大きさに対して二次電池1000の電解液量が所定の量よりも少なくなるのを検出するのに適当な閾値を設けるとよい。そして、当該閾値に基づいて、AE信号検出センサ11で検出されたAE信号から、二次電池1000の電解液量が所定の量よりも少なくなるのを検出するとよい。また、電池ケース300内の電解液の量と、電池ケース300を振動させた際に生じるAE信号の大きさとの相関関係を、相関関係記憶部16bに記憶させてもよい。この場合、電解液量検出部16は、当該相関関係に基づいて、AE信号検出センサ11で検出されたAE信号の大きさから、二次電池1000の電解液の量を検出するように構成できる。
【0033】
また、AE信号の大きさに代えて、AE信号の周波数に着目してもよい。すなわち、電池ケース300を叩いた際に生じるAE信号の周波数が、余剰電解液の量に応じて変化するとする。この場合には、例えば、予め実験に基づいて、電池ケース300内の電解液の量と、電池ケース300を叩いた際に生じるAE信号の周波数との相関関係を得るとよい。そして、電解液量検出部16において、当該相関関係によりAE信号の周波数に対して二次電池1000の電解液量が所定の量よりも少なくなるのを検出するのに適当な閾値を設けるとよい。そして、当該閾値に基づいて、AE信号検出センサ11で検出されたAE信号から、二次電池1000の電解液量が所定の量よりも少なくなるのを検出するとよい。また、電池ケース300内の電解液の量と、電池ケース300を振動させた際に生じるAE信号の周波数との相関関係を、相関関係記憶部16bに記憶させてもよい。この場合、電解液量検出部16は、当該相関関係に基づいて、AE信号検出センサ11で検出されたAE信号の周波数から、二次電池1000の電解液の量を検出するように構成できる。
【0034】
以上、本発明の一実施形態に係る二次電池の電解液量検出方法およびその装置を説明したが、本発明に係る二次電池の電解液量検出方法は、上述した実施形態に限定されない。
【0035】
例えば、二次電池の構造は、上述した構造に限定されない。すなわち、二次電池の形態については、いわゆる円筒型など種々の形態の二次電池に適用でき、電池ケースの形状等には限定されない。また、本発明に係る二次電池の電解液量検出方法は、リチウムイオン二次電池以外にも、電池ケース内に電解液を有する種々の二次電池の電解液量を検査する方法に適用できる。
【0036】
また、本発明に係る二次電池の電解液量検出方法は、図6に示すように、二次電池1000が電源として搭載された車両1にも適用できる。この場合、二次電池1000のケースにAE信号検出センサが取り付けられているとよい。この場合、さらにAE信号に基づいて二次電池1000の電解液量を検出する電解液量検出装置を車両1に設けても良い。また、二次電池1000のケースに取り付けられたAE信号検出センサに、AE信号に基づいて二次電池の電解液量を検出する電解液量検出装置を接続する接続部を設けて、車両の検査時など、適宜に、二次電池の電解液量検出装置を接続できるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】二次電池の構造例を示す断面図。
【図2】捲回電極体の構造例を示す図。
【図3】捲回電極体の構造例を示す断面図。
【図4】本発明に係る二次電池の電解液量検出装置の構成例を示す図。
【図5】本発明に係る二次電池の電解液量検出装置の他の構成例を示す図。
【図6】二次電池を電源として搭載した車両を示す図。
【符号の説明】
【0038】
1 車両
10 電解液量検出装置
11 AE信号検出センサ
16 電解液量検出部
16a 閾値設定部
16b 相関関係記憶部
17 アンプ
100 捲回電極体
101 正極シート(電極シート)
101a 塗工部
101b 未塗工部
101b1 正極集電体
102 第1セパレータ
103 負極シート(電極シート)
103a 塗工部
103b 未塗工部
103b1 負極集電体
104 第2セパレータ
131 集電体シート
132 電極材料
141 集電体シート
142 電極材料
300 電池ケース(ケース)
301 正極端子
303 負極端子
1000 二次電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に電解液を有する二次電池の電解液量を検出する方法であって、
前記ケースに取り付けられたAE信号検出センサからAE信号を検出し、
前記AE信号検出センサが検出したAE信号に基づいて電解液量を検出する、二次電池の電解液量検出方法。
【請求項2】
前記電池ケースを振動させた際に生じるAE信号に基づいて二次電池の電解液量を検出する、請求項1に記載の二次電池の電解液量検出方法。
【請求項3】
前記電池ケースを叩いた際に生じるAE信号に基づいて二次電池の電解液量を検出する、請求項1に記載の二次電池の電解液量検出方法。
【請求項4】
前記電池ケースの高さ方向に沿って、電池ケースを叩く位置を変化させていきながらAE信号を検出する、請求項3に記載の二次電池の電解液量検出方法。
【請求項5】
前記電池ケースは電解液が溜まる部位を有し、当該電解液が溜まる部位に前記AE信号検出センサを取り付けて前記AE信号を検出する、請求項1から4の何れかに記載の二次電池の電解液量検出方法。
【請求項6】
前記電池ケースの高さ方向に沿って複数のAE信号検出センサを取り付けて前記AE信号を検出する、請求項1から4の何れかに記載の二次電池の電解液量検出方法。
【請求項7】
前記AE信号検出センサが検出したAE信号の周波数に基づいて、二次電池の電解液量が所定の量よりも少ないことを検出する、請求項1から6の何れかに記載の二次電池の電解液量検出方法。
【請求項8】
前記AE信号検出センサが検出したAE信号の大きさに基づいて、二次電池の電解液量が所定の量よりも少ないことを検出する、請求項1から6の何れかに記載の二次電池の電解液量検出方法。
【請求項9】
ケース内に電解液を有する二次電池の電解液量検出装置であって、
前記ケースに取り付けられるAE信号検出センサと、
前記AE信号検出センサが検出したAE信号に基づいて二次電池の電解液量を検出する電解液量検出部とを備えた、二次電池の電解液量検出装置。
【請求項10】
前記電解液量検出部は、二次電池の電解液量が所定の量よりも少ないことを検出する閾値が設定された閾値設定部を有し、
前記閾値設定部に設定された閾値に基づいて、前記AE信号検出センサが検出したAE信号から、二次電池の電解液量が所定の量よりも少ないか否かを検出する、請求項9に記載の二次電池の電解液量検出装置。
【請求項11】
前記閾値は、AE信号検出センサが検出したAE信号の大きさに対して設定されている、請求項10に記載の二次電池の電解液量検出装置。
【請求項12】
前記閾値は、AE信号検出センサが検出したAE信号の周波数に対して設定されている、請求項10に記載の二次電池の電解液量検出装置。
【請求項13】
前記電解液量検出部は、AE信号検出センサが検出したAE信号と二次電池の電解液量との相関関係を記憶した相関関係記憶部を有し、
前記相関関係記憶部に記憶された相関関係に基づいて、前記AE信号検出センサが検出したAE信号から、二次電池の電解液量を検出する、請求項9に記載の二次電池の電解液量検出装置。
【請求項14】
前記相関関係は、AE信号検出センサが検出したAE信号の大きさと、二次電池の電解液量との相関関係である、請求項13に記載の二次電池の電解液量検出装置。
【請求項15】
前記相関関係は、AE信号検出センサが検出したAE信号の周波数と、二次電池の電解液量との相関関係である、請求項13に記載の二次電池の電解液量検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−40319(P2010−40319A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201717(P2008−201717)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】