説明

二次電池充放電装置及び電力貯蔵システム

【課題】性能にばらつきがある複数の二次電池を、より有効に活用することができる充放電装置及びこれを用いた電力貯蔵システムを提供する。
【解決手段】
複数の二次電池B1〜B8と、これらの二次電池を充電する電圧を出力する直流電源6と、複数のキャパシタC1〜C4を互いに直列に接続して構成され、外部の変換装置と接続される蓄電部2と、二次電池を充電し又は放電させるための接続装置3とを備えた二次電池充放電装置1において、接続装置3は、互いに並列に接続された状態の複数の二次電池B1〜B8を、直流電源6と接続することによって充電する。また、接続装置3は、複数の二次電池B1〜B8から選択した二次電池を複数のキャパシタC1〜C4から選択したキャパシタに接続することによって放電させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電して繰り返し使用可能な二次電池に充電する装置及び、充電された二次電池から放電させる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
充電して繰り返し使用可能な二次電池を用いて電力を貯蔵し、必要時に二次電池から系統へ電力を供給する電力貯蔵技術の開発が進んでいる(例えば、非特許文献1参照。)。このような電力貯蔵技術は、電力需要の変動を緩和して発電設備の利用率を高める用途の他、太陽光発電や風力発電のように発電量の変動が大きい発電設備を補完する用途にも適用可能である(例えば、非特許文献2参照。)。
【0003】
上記のような用途に用いられる二次電池は、多数の電池の集合体からなる。例えばリチウムイオン電池であれば、1個の電圧は3.6V程度であるので、多数の電池を直列に接続してストリングを構成し、さらにストリングを並列に接続した直並列接続とする。このような多数の電池を充電しておくことにより、必要な場合に、系統連系が可能な電圧・電力を供給することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】三菱重工技報Vol.41、No.5、「リチウムイオン電池電力貯蔵システムの開発」、2004年9月
【非特許文献2】電気設備学会誌、平成17年10月、「レドックスフロー電池の風力発電出力平滑化用途への適用」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図8は、上記のようにストリングを並列に接続した状態の一例を示す接続図である。図において、縦方向に複数個の電池(二次電池)が直列接続されて1つのストリングを成している。また、3組のストリングS1,S2,S3が互いに並列に接続されている。充電時には電池に電流が流れ込み、電力が蓄えられる。放電時には、電池から電流が流れ出て、電力が外部へ供給される。
【0006】
ストリングS1,S2,S3についてそれぞれ、起電力の総和をE1,E2,E3、内部抵抗の総和をR1,R2,R3、流れる電流をi1,i2,i3とし、各ストリング両端の電圧をV、全ストリングに流れる電流の合計をIとすると、以下の式が成り立つ。
V=E1−i1・R1=E2−i2・R2=E3−i3・R3
I=i1+i2+i3
【0007】
各電池は内部抵抗にばらつきがあり、特に劣化の度合いによって内部抵抗が大きく異なってくる。従って、R1,R2,R3が同じ値になることはないと言ってもよい。従って、通常、電流i1,i2,i3は互いに異なる値である。電池の充電深度は、充放電時の電流の時間積分値で変化するので、電流のばらつきがあると、充電深度にもばらつきが生じる。また、充電時に、いずれか1つの電池が満充電の状態になると、過充電を防止するために他の電池は満充電でなくても充電を停止させる必要がある。従って、全ての電池を満充電の状態にすることはできない。逆に、電池から放電させて外部に電力供給する場合には、充電深度が最も低い電池が放電限界に達すると、過放電を防止するために、その他の電池は残量があっても放電を停止させる必要がある。
【0008】
このように、電池としての性能にばらつきがある多数の電池を用いて充放電を行わせる場合、いずれかの電池がいわば全体の足を引っ張る形になって、全体としての充放電性能を十分に生かせないという問題点がある。残量のばらつきを強引に解消させるには、全ての電池を個々に満充電するか、又は逆に空にすることにより、一時的に残量を揃えることは可能である。しかし、これには特殊な作業が必要であり、その間、充放電装置としては利用できない状態となるので、結果的に利用率を低下させることになる。
【0009】
かかる従来の問題点に鑑み、本発明は、性能にばらつきがある複数の二次電池を、より有効に活用することができる充放電装置及びこれを用いた電力貯蔵システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の二次電池充放電装置は、複数の二次電池と、前記二次電池を充電する電圧を出力する直流電源と、キャパシタによって構成され、外部の変換装置と接続される蓄電部と、互いに並列に接続された状態の前記複数の二次電池を前記直流電源と接続することによって充電し、前記複数の二次電池から選択した二次電池を前記キャパシタに接続することによって放電させる接続装置とを備えたものである。
【0011】
上記のように構成された二次電池充放電装置では、外部の変換装置が直接的に電気エネルギーのやりとりを行うのは蓄電部であり、二次電池ではない。従って、複数の二次電池をどのように使うかの自由度が広がり、固定的な回路構成で複数の二次電池を使用する必要は無くなる。これにより、性能の異なる複数の二次電池であっても、自在に活用することが可能となる。例えば、二次電池を放電させるときは、残量の少ない二次電池に制約を受けることなく、残量の多い二次電池を優先的に利用することができるので、より有効に複数の二次電池を活用する二次電池充放電装置を提供することができる。
一方、二次電池の充電は直流電源によって行うので、迅速かつ安定した充電を行うことができる。また、全並列で充電することにより、各二次電池を均等に充電することができる。
【0012】
(2)また、本発明は、複数の二次電池と、前記二次電池を充電する電圧を出力する直流電源と、複数のキャパシタを互いに直列に接続して構成され、外部の変換装置と接続される蓄電部と、互いに並列に接続された状態の前記複数の二次電池を前記直流電源と接続することによって充電し、前記複数の二次電池から選択した二次電池を前記複数のキャパシタから選択したキャパシタに接続することによって放電させる接続装置とを備えたものである、とも言える。
【0013】
上記のように構成された二次電池充放電装置では、外部の変換装置が直接的に電気エネルギーのやりとりを行うのは蓄電部であり、二次電池ではない。従って、複数の二次電池をどのように使うかの自由度が広がり、固定的な回路構成で複数の二次電池を使用する必要は無くなる。これにより、性能の異なる複数の二次電池であっても、自在に活用することが可能となる。例えば、二次電池を放電させるときは、残量の少ない二次電池に制約を受けることなく、残量の多い二次電池を優先的に利用することができるので、より有効に複数の二次電池を活用する二次電池充放電装置を提供することができる。また、直列接続した複数のキャパシタを用いることで、蓄電部全体としては高い電圧定格であっても、個々のキャパシタの両端電圧は、二次電池で出力できる電圧にすることができる。
【0014】
一方、二次電池の充電は直流電源によって行うので、迅速かつ安定した充電を行うことができる。また、全並列で充電することにより、各二次電池を均等に充電することができる。しかも全並列での充電により、直流電源は各二次電池に充電できる程度の比較的低い電圧を出力できれば足り、蓄電部全体のような高電圧を出力する必要が無い。従って、このような直流電源を設けることは、容易である。
【0015】
(3)また、上記(1)又は(2)の二次電池充放電装置において、二次電池は、二次電池の一個体が1個のみからなるか又は、複数個直列に接続されたストリングであってもよい。
二次電池が特に複数個直列のストリングの場合には、ストリングごとの内部抵抗や充電深度のばらつきが生じやすいが、そのような場合でも、キャパシタ充電時には選択して接続することにより、問題なく使用することができる。
【0016】
(4)また、上記(1)又は(2)の二次電池充放電装置において、二次電池と蓄電部との間に電流を抑制する回路素子が介装されていることが好ましい。
この場合、キャパシタ充電開始時の電流が過度に大きくなるのを抑制することができる。
【0017】
(5)また、上記(1)又は(2)の二次電池充放電装置において、接続装置は、各二次電池の両端電圧を測定する回路を含むことが好ましい。
キャパシタ充電時には二次電池は選択されて使用されるので、逆に言えば、使用されていないときがある。そこで、キャパシタと接続されていない不使用時の当該二次電池の両端電圧に基づいて充電深度を求めることができる。
【0018】
(6)また、上記(5)の二次電池充放電装置において、接続装置は、キャパシタとの接続用に選択されていない不使用の各二次電池について、その両端電圧に基づいて充電深度を求め、いずれかの二次電池を放電させるときは、充電深度が相対的に高い二次電池を優先的にキャパシタに接続するようにしてもよい。
この場合、性能の劣る電池に制約されることなく、その時点で性能が優れている二次電池を適時に有効活用することができる。
【0019】
(7)また、上記(1)又は(2)の二次電池充放電装置において、二次電池とキャパシタとの接続は、半導体スイッチング素子を介して行われることが好ましい。
半導体スイッチング素子は、高速応答に適し、耐久性にも優れている。
【0020】
(8)また、上記(7)の二次電池充放電装置において、半導体スイッチング素子は、FETであってもよい。
FETは高速応答に適し、特に、SiC−FETは、高速応答及び耐電圧の点で最も優れている。
【0021】
(9)また、上記(7)又は(8)の二次電池充放電装置において、半導体スイッチング素子は、SiC、GaN、又は、ダイヤモンドを含む材料によって構成されたワイドバンドギャップ半導体であることが好ましい。
これらの素子は、シリコンと比較して圧倒的に絶縁耐力が優れている他、オン抵抗が小さいのでスイッチング損失が少ない。また、高速応答に適し、耐久性にも優れている。
【0022】
(10)また、上記(1)又は(2)の二次電池充放電装置と、当該二次電池充放電装置の出力と所望の電源系統とを仲介する変換装置とを備えた電力貯蔵システムを構成することができる。
前述の二次電池充放電装置を用いることにより、性能にばらつきがある二次電池を用いて電力貯蔵システムを構成することができる。従って、例えば、中古の二次電池を用いることにより、安価に、電力貯蔵システムを構成することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の二次電池充放電装置及び電力貯蔵システムによれば、性能にばらつきがある複数の二次電池を、より有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る電力貯蔵システムの要部を示す接続図である。
【図2】変換装置の構成が図1とは異なる場合の、電力貯蔵システムの要部を示す接続図である。
【図3】直流負荷系統と連系する場合の、電力貯蔵システムの要部を示す接続図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る二次電池充放電装置の詳細な回路構成の一例を示す回路図である。
【図5】電池情報の取得に関する処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】充電又は放電の動作に関する処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】二次電池充放電装置の詳細な回路構成の他の例を示す回路図である。
【図8】二次電池のストリングを並列に接続した状態の一例を示す接続図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
《電力貯蔵システムとしての概略》
図1は、本発明の一実施形態に係る電力貯蔵システムの要部を示す接続図である。図において、交流負荷系統に連系する電力貯蔵システムは、交流/直流を相互に変換する交直変換装置101と、二次電池充放電装置1とによって構成される。なお、図示しているのは二次電池充放電装置1の一部を成すキャパシタのみであり、詳細は後述する。
【0026】
複数のキャパシタC1〜Cnは、互いに直列に接続され、ストリングを構成している。複数のストリングS1,S2,・・・,Smは、互いに並列に接続されている。なお、これらn,mの数値は必要に応じて自在に構成することができ、複数であること自体も一例である。すなわち、ストリングは1個でもよいし、さらに基本的にはキャパシタ1個でもよい(これについては後述する。)。
【0027】
図2は、変換装置の構成が図1とは異なる場合の、電力貯蔵システムの要部を示す接続図である。この場合は、直流/直流変換装置102によって一旦電圧調整をした上で、交直変換装置101を介して交流負荷系統と連系する。変換効率を最適化するには、この構成が好ましい。
また、図3は、直流負荷系統と連系する場合の、電力貯蔵システムの要部を示す接続図である。この場合には、直流/直流変換装置102のみでよい。
上記のように、変換装置(101,102)は、二次電池充放電装置1の出力と所望の電源系統とを仲介する役目をする。
【0028】
《二次電池充放電装置》
図4は、二次電池充放電装置1の詳細な回路構成の一例を示す回路図である。図において、この装置1は、大別して、複数の二次電池B1〜B8と、キャパシタによる蓄電部2と、接続装置3と、直流電源6とによって構成されている。上記「複数」の一例として、例えば8個の二次電池B1〜B8があるものとする。個々の二次電池は、電池としての一個体が1個のみからなるものであってもよいし、複数個直列に接続されたストリングであってもよい。
【0029】
なお、二次電池としては、リチウムイオン電池、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、その他各種の充電可能な電池を用いることができる。但し、8個の二次電池B1〜B8は、基本的には同一種類の電池であることが好ましい。また、直流電源6は、商用交流からの整流によって、二次電池B1〜B8を充電するに適した電圧を出力する。
【0030】
一方、例えば4つの等容量のキャパシタC1〜C4は、互いに直列に接続されて1ストリングを成す蓄電部2となっている。これらのキャパシタC1〜C4は、例えば図1における1ストリングのキャパシタC1〜Cnに相当するものである。蓄電部2は、二次電池から提供される電気エネルギーを蓄えつつ外部の変換装置(101,102)に対して放出するという過程を連続的に行って、電気エネルギーの中継を行っている。
【0031】
ここで、変換装置(101,102)と直接的に電気エネルギーのやりとりをするのは蓄電部2であり、また、変換装置(101,102)から見て、電圧として現れているのは、蓄電部2の両端電圧のみである。二次電池B1〜B8は、放電により蓄電部2に電気エネルギーを送り込むことを実現できればよい。そのため、複数の二次電池B1〜B8をどのように使うかの自由度が広がり、固定的な回路構成で使用する必要は無くなる。
【0032】
二次電池B1〜B8の負極は全て、共通のマイナス側電路Ln2に接続されている。また、正極はそれぞれスイッチSB1〜SB8を介してプラス側電路Lp2に接続されている。プラス側電路Lp2は、スイッチSB0を介して直流電源6と接続されている。スイッチSB1〜SB8は、どの二次電池B1〜B8をプラス側電路Lp2につなぐかを選択するスイッチである。また、プラス側電路Lp2が抵抗Rを介して、蓄電部2の図示のどの部位につながるかを選択するのがスイッチSP1〜SP4である。すなわち、スイッチSP1〜SP4を介した行き先はそれぞれ、蓄電部2のプラス側にあるプラス側電路Lp1、キャパシタC1,C2の相互接続点、キャパシタC2,C3の相互接続点、キャパシタC3,C4の相互接続点である。
【0033】
なお、上記の抵抗Rは、ここを流れる電流の抑制、特に、充放電開始時の電流が過度に大きくなることの抑制を目的として設けられている。但し、抵抗以外に、リアクトルでもよく、要するに、二次電池B1〜B8と蓄電部2との間に流れる電流を抑制する回路素子が介装されていればよい。
【0034】
さらに、マイナス側電路Ln2が、蓄電部2の図示のどの部位につながるかを選択するのがスイッチSN1〜SN4である。すなわち、スイッチSN1〜SN4を介した行き先はそれぞれ、キャパシタC1,C2の相互接続点、キャパシタC2,C3の相互接続点、キャパシタC3,C4の相互接続点、蓄電部2のマイナス側にあるマイナス側電路Ln1である。
【0035】
上記スイッチSB0〜SB8、SP1〜SP4、SN1〜SN4は、高速応答に適し、耐久性にも優れている半導体スイッチング素子であり、例えば、FETが用いられる。FETは高速応答に適し、特に、SiC−FETは、高速応答及び耐電圧の点で最も優れている。また、材料としては、SiC、GaN、又は、ダイヤモンド等の材料によって構成されたワイドバンドギャップ半導体が好適である。
CPUを含む制御装置4は、上記スイッチSB0〜SB8、SP1〜SP4、SN1〜SN4を個別にオン・オフする。
【0036】
一方、二次電池B1〜B8の各正極はそれぞれ、フォトカプラPc1〜Pc8を介して信号電路Lsに接続されている。信号電路Ls及び、二次電池B1〜B8の各負極が接続されたマイナス側電路Ln2は、A/Dコンバータ5の入力端子に接続されている。すなわち、いずれか1つのフォトカプラをオンにすれば、対応する二次電池の両端電圧がA/Dコンバータ5に入力される。A/Dコンバータ5は入力されたアナログ電圧値をデジタル電圧値に変換して、制御装置4に提供する。制御装置4はフォトカプラPc1〜Pc8をオン・オフする。
【0037】
次に、上記の二次電池充放電装置1の動作について説明する。二次電池充放電装置の動作は、電池情報の取得に関する処理と、充電又は放電の動作に関する処理とがあり、これらの処理は平行して行われる。
フォトカプラPc1〜Pc8、A/Dコンバータ5及び制御装置4は、各二次電池B1〜B8の両端電圧を測定する回路を構成しており、この回路によって電池情報が取得される。なお、本実施形態の二次電池充放電装置1では、キャパシタ充電時に二次電池B1〜B8は、選択されて使用されるので、非選択の二次電池は使用されていない。使用されていない二次電池については、起電力の測定が可能である。
【0038】
図5は、電池情報の取得に関する処理の一例を示すフローチャートである。図において、まず、制御装置4は、8個のフォトカプラPc1〜Pc8のうち、いずれか1つをオン(他は全てオフ)にして(ステップS1)、対応する二次電池(以下、単に電池とも言う。)の両端電圧を測定する(ステップS2)。ここで、現在、使用されていない電池の両端電圧は内部抵抗による電圧降下が無いので、実質的に起電力を表している。一方、使用されている電池の両端電圧は、電流が内部抵抗に流れることによる電圧降下分だけ、起電力より低い値となる。
【0039】
そこで、制御装置4は、両端電圧を測定した電池が、現在使用中か否か、すなわち、選択された電池であるか否かを判定し(ステップS3)。使用中でなければ、測定値を起電力として扱う(ステップS4)。起電力がわかれば、ネルンストの式(Nernst Equation)を用いて充電深度を求めることができる(ステップS5)。一方、使用中であれば、測定値をそのまま両端電圧として扱い(ステップS6)、既に記憶している起電力との比較に基づいて内部抵抗を求める(ステップS7)。
【0040】
その後、制御装置4は、ステップS1に戻り、次のフォトカプラをオンにして、同様の処理を行う。ステップS1において制御装置4は、例えばフォトカプラPc1からPc8まで順番に選択し、Pc8の次は、またPc1から順番に選択する。このようにしてサイクリックに電池情報の取得を繰り返し、情報を更新していく。電池情報は、制御装置4から外部の上位システム(図示せず。)に送信され、上位システムが二次電池充放電装置1に対して充電又は放電を指示する際の判断材料となる。また、充電深度すなわち電池としての残量は、キャパシタ充電に際して、どの二次電池を選択するかの選択基準となる。なお、電池は、劣化するほど内部抵抗が大きくなるので、内部抵抗に基づいて交換時期を判断し、交換を促す警告を発する処理を行うこともできる。
【0041】
図6は、充電又は放電の動作に関する処理の一例を示すフローチャートである。まず、制御装置4は、電池の充電か放電かによって、動作を区別する(ステップS10)。充電/放電のどちらの動作を行うかは、上位システムからの指示による。
まず、二次電池を放電させる場合の動作について説明する。なお、放電に使用される電池は基本的に1つ(1ストリング)である。
【0042】
上記の電池情報に基づいて、制御装置4は、放電用として最も充電深度が高い二次電池(B1〜B8のいずれか1つ)を、次に選択すべき電池として特定する(ステップS11)。なお、現時点で選択されている電池については、電圧降下のために正確な充電深度を把握できないので、当該電池は除外して、その他の電池のうちで最も充電深度が高い電池(B1〜B8のうち使用中の1つを除いたものの中のいずれか1つ)を特定するようにしてもよい。
【0043】
次に、制御装置4は、現時点で選択されている電池に対応するスイッチ(SB1〜SB8のいずれか)をオフにして、当該電池を系統から解列する(ステップS12)。なお、この解列前に、スイッチSP1〜SP4及びSN1〜SN4は全てオフとなっている。続いて制御装置4は、次に選択すべき電池に対応するスイッチ(SB1〜SB8のいずれか)をオンにして、当該電池をプラス側電路Lp2に接続する(ステップS13)。そして、制御装置4は、スイッチSP1及びSN1をオンにして、選択された電池からキャパシタC1への放電回路を構成し、キャパシタC1を充電する(ステップS14)。電池を放電させる時間はキャパシタC1の容量や電池の性能にもよるが、ごく短時間であり、当該時間経過後は、スイッチSP1及びSN1をオフにする。
【0044】
続いて、制御装置4は、スイッチSP2及びSN2をオンにして、選択された電池からキャパシタC2への放電回路を構成し、キャパシタC2を充電する(ステップS15)。また、制御装置4は、電池の放電時間経過後は、スイッチSP2及びSN2をオフにする。
続いて、制御装置4は、スイッチSP3及びSN3をオンにして、選択された電池からキャパシタC3への放電回路を構成し、キャパシタC3を充電する(ステップS16)。また、制御装置4は、電池の放電時間経過後は、スイッチSP3及びSN3をオフにする。
続いて、制御装置4は、スイッチSP4及びSN4をオンにして、選択された電池からキャパシタC4への放電回路を構成し、キャパシタC4を充電する(ステップS17)。また、制御装置4は、電池の放電時間経過後は、スイッチSP4及びSN4をオフにする。
【0045】
ステップS17の後、制御装置4はステップS10に戻り、同様の処理を繰り返す。電池はその都度特定される(ステップS11)ので、現在選択されている電池を次期選択の対象外とする場合は、残りの電池の中で充電深度が最も高い電池が選択されることになる。このようにして、残量の多い電池が逐次選ばれる。なお、「残りの電池の中で充電深度が最も高い」というのは選択基準の一例であり、必ずしも最も高いものでなくてもよい。例えば充電深度が1,2番手の電池からランダムに選ぶ、というような選択も可能である。
【0046】
要するに、充電深度が相対的に高い電池を優先的に選択することで、性能の劣る電池に制約されることなく、その時点で性能が優れている電池を適時に有効活用することができる。
なお、同じ電池を連続的に選択して使用することも可能である。但し、使用中は最新の充電深度がわからないので、所定回数連続して使用した後、次の電池を選択するようにすればよい。具体的には、例えば、ステップS14〜S17の処理を所定回数繰り返してからステップS10に戻るフローチャートにすればよい。
【0047】
次に、二次電池を充電する場合の動作について説明する。
二次電池を充電するとき、制御装置4は、全てのスイッチSP1〜SP4,SN1〜SN4及びSB0〜SB8がオフである状態から、スイッチSB1〜SB8を全てオンにする。これにより、電池B1〜B8は全て並列に接続される(ステップS21)。そして、制御装置4は、スイッチSB0をオンにして、電池B1〜B8の並列体を直流電源6に接続する(ステップS22)。これにより、電池B1〜B8が、直流電源6により、充電される。並列充電により、充電深度は概ね均等化される。
【0048】
制御装置4は、各電池B1〜B8の充電深度に基づいて充電完了か否かを確認する(ステップS23)。なお、この確認を行うには、例えば充電中定期的に、一定時間だけスイッチSB1〜SB8を全てオフにして、電池情報の取得に関する処理(図5)により、充電深度を測定すればよい。各電池B1〜B8の充電が完了するまでは、制御装置4は、ステップS21,S22の処理を維持し、充電を続行する。そして、充電が完了すると、スイッチSB0〜SB8をオフにして各電池B1〜B8の並列接続及び直流電源6の接続を解除する(ステップS24)。また、制御装置4は、上位システムに対して充電完了を通知する。
【0049】
以上のように構成された二次電池充放電装置では、外部の変換装置(101,102)が直接的に電気エネルギーのやりとりを行うのは蓄電部2であり、二次電池ではないので、複数の二次電池をどのように使うかの自由度が広がり、固定的な回路構成で複数の二次電池を使用する必要は無くなる。これにより、性能の異なる複数の二次電池であっても、自在に活用することが可能となる。
【0050】
二次電池が特に複数個直列のストリングの場合には、ストリングごとの内部抵抗や充電深度のばらつきが生じやすいが、そのような場合でも、選択して接続することにより、問題なく使用することができる。
なお、電池の種類が異なれば電圧が異なることが多いが、そのような場合でも、選択して接続することにより、使用することは可能である。但し、その場合、充電時の全並列接続により電池間で大きな循環電流が流れる可能性があるので、1ストリングのセル数を調整することにより電池間の電位差が過大にならないよう配慮すべきである。
【0051】
また、電池からキャパシタへの充電時に、蓄電部2を構成する4つのキャパシタC1〜C4を1個ずつ順番に充電することにより、蓄電部2全体の両端電圧の1/4の電圧をもって充電することができる。また、この「4つのキャパシタ」というのは一例に過ぎず、必要に応じた数の直列キャパシタを構成すればよい。
このように、直列接続した複数のキャパシタを用いることで、蓄電部2全体としては高い電圧定格であっても、個々のキャパシタの両端電圧は、二次電池で出力できる電圧にすることができる。従って、二次電池B1〜B8としては、セルを複数個接続したモジュール単位程度でも使用可能であり、多数のモジュールを直列接続しなくてよい。
【0052】
一方、二次電池の充電は直流電源6によって行うので、迅速かつ安定した充電を行うことができる。また、全並列で充電することにより、各電池B1〜B8を均等に充電することができる。
全並列での充電により、直流電源6は各電池B1〜B8に充電できる程度の比較的低い電圧を出力できれば足り、蓄電部2全体のような高電圧を出力する必要が無い。従って、このような直流電源6を設けることは、容易である。
【0053】
なお、二次電池の放電すなわち、キャパシタの充電に関して、4つのキャパシタC1〜C4を1個ずつ順番に充電する、というのは一例に過ぎず、キャパシタの直列数や電圧によっては、2以上の複数個ずつ充電することも可能である。要するに、複数のキャパシタを個々に若しくは小グループに小分けして順番に、選択した二次電池と接続することにより、複数のキャパシタが充電されるようにすればよい。
【0054】
また、例えば4つのキャパシタC1〜C4を1ストリングとして、これが2ストリング並列に設けられている場合(すなわち合計8つのキャパシタがある場合)には、スイッチSP1〜SP4,SN1〜SN4を別途1セット設けて、8つのキャパシタを順番に二次電池で充電するように構成すればよい。さらに多くのキャパシタが設けられる場合であっても同様である。
【0055】
《その他》
なお、上記実施形態では、蓄電部2として複数のキャパシタが直列に接続されている構成を示したが、基本的には「複数」でなくてもよい。
図7は、二次電池充放電装置1の詳細な回路構成の他の例を示す回路図である。図4との違いは、蓄電部2が1個のキャパシタC1である点、及び、これに伴って図4のスイッチSP1〜SP4,SN1〜SN4が不要となった点である。この場合も、接続装置3は、キャパシタC1を、複数の二次電池B1〜B8から選択した二次電池と接続して充電し、また、二次電池B1〜B8は全並列で直流電源6により充電する、という基本構成・動作は同じである。但し、この場合、当該二次電池充放電装置1内では、蓄電部2の両端電圧として二次電池の電圧より高い電圧を得ることはできない。
【0056】
また、上記実施形態では、二次電池の選択は充電深度に基づいて行うものとし、これが好ましいが、ランダムに二次電池を選択して放電させることも可能ではある。
また、上記実施形態では、放電(キャパシタ充電)に使用される電池は基本的に1つ(1ストリング)であるとしたが、内部抵抗が近似している場合には複数ストリングで使用することも可能であり、そのような使用を排除するものではない。
【0057】
なお、図4及び図7では、スイッチSB1〜SB8がそれぞれ電池B1〜B8の正極側に設けられる例を示したが、負極側に設けることも可能である。例えば、電池B1〜B8の正極を、スイッチ無しで直接、プラス側電路Lp2に接続し、マイナス側電路Ln2と各電池B1〜B8の負極との間に、スイッチSB1〜SB8が設けられる回路にしてもよい。この場合も動作は同様である。
【0058】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の二次電池充放電装置を用いることにより、性能にばらつきがある二次電池を用いて電力貯蔵システムを構成することができる。
また、ハイブリッド車や電気自動車の普及によって近い将来に、二次電池の中古品が大量に市場に出回ることが予想される。本発明の二次電池充放電装置を用いることで、このような性能のばらついた中古品の二次電池を有効活用し、安価に、電力貯蔵システムを構成することができる。
【符号の説明】
【0060】
1:二次電池充放電装置
2:蓄電部
3:接続装置
4:制御装置
5:A/Dコンバータ
6:直流電源
101:交直変換装置
102:直流/直流変換装置
B1〜B8:二次電池
C1〜C4:キャパシタ
Pc1〜Pc8:フォトカプラ
R:抵抗(回路素子)
S1〜Sm:ストリング
SB0〜SB8,SP1〜SP4,SN1〜SN4:スイッチ(半導体スイッチング素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の二次電池と、
前記二次電池を充電する電圧を出力する直流電源と、
キャパシタによって構成され、外部の変換装置と接続される蓄電部と、
互いに並列に接続された状態の前記複数の二次電池を前記直流電源と接続することによって充電し、前記複数の二次電池から選択した二次電池を前記キャパシタに接続することによって放電させる接続装置と
を備えていることを特徴とする二次電池充放電装置。
【請求項2】
複数の二次電池と、
前記二次電池を充電する電圧を出力する直流電源と、
複数のキャパシタを互いに直列に接続して構成され、外部の変換装置と接続される蓄電部と、
互いに並列に接続された状態の前記複数の二次電池を前記直流電源と接続することによって充電し、前記複数の二次電池から選択した二次電池を前記複数のキャパシタから選択したキャパシタに接続することによって放電させる接続装置と
を備えていることを特徴とする二次電池充放電装置。
【請求項3】
前記二次電池は、二次電池の一個体が1個のみからなるか又は、複数個直列に接続されたストリングである請求項1又は2に記載の二次電池充放電装置。
【請求項4】
前記二次電池と前記蓄電部との間に電流を抑制する回路素子が介装されている請求項1又は2に記載の二次電池充放電装置。
【請求項5】
前記接続装置は、各二次電池の両端電圧を測定する回路を含む請求項1又は2に記載の二次電池充放電装置。
【請求項6】
前記接続装置は、前記キャパシタとの接続用に選択されていない不使用の各二次電池について、その両端電圧に基づいて充電深度を求め、いずれかの二次電池を放電させるときは、充電深度が相対的に高い二次電池を優先的に前記キャパシタに接続する請求項5記載の二次電池充放電装置。
【請求項7】
前記二次電池と前記キャパシタとの接続は、半導体スイッチング素子を介して行われる請求項1又は2に記載の二次電池充放電装置。
【請求項8】
前記半導体スイッチング素子は、FETである請求項7記載の二次電池充放電装置。
【請求項9】
前記半導体スイッチング素子は、SiC、GaN、又は、ダイヤモンドを含む材料によって構成されたワイドバンドギャップ半導体である請求項7又は8に記載の二次電池充放電装置。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の二次電池充放電装置と、当該二次電池充放電装置の出力と所望の電源系統とを仲介する変換装置とを備えた電力貯蔵システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−70480(P2012−70480A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210935(P2010−210935)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】