説明

二次電池及び二次電池の製造方法

【課題】レーザ溶接によるマイクロクラックの欠陥発生を抑止し、二次電池の高品質及び高信頼性を実現する。
【解決手段】二次電池は、電解液を注液するための注液口を有し、その注液口から注液された電解液を電極体と共に収容する容器と、容器に固着され、注液口を塞ぐ封口蓋8とを備え、その封口蓋8は、封口蓋8及び容器の蓋体3bにわたる深さで環状に存在する溶接痕8eと、封口蓋8の厚さに相当する深さで封口蓋8における溶接痕8eの内周側でその溶接痕8eに重なって環状に存在する内周側溶融痕8fとを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、二次電池及び二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池に代表される二次電池では、車載用途を中心に各種用途が広がり、生産は拡大の一途をたどっている。二次電池を製造する際、金属ケース内に電池の構成部品を封入して製造する方法が採用される場合が多い。また、二次電池のスペース効率向上のため、従来の丸型ケースよりも、角型の電池ケースが採用されることが多くなってきている。丸型及び角型のどちらの電池ケースの場合においても、構造体を効率よく製造することができるレーザ溶接はリチウムイオン電池製造に多く用いられるようになってきている。
【0003】
リチウムイオン電池の製造工程において、レーザ溶接がよく用いられる工程は以下の三工程である。
1.アルミ缶本体とキャップ体とを接続するキャップシーム溶接
2.電解液を注液する注液口を塞ぐための封止溶接
3.複数のセルを電気的に並列または直列に接続するための部品溶接
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3585213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の工程のうち2の封止溶接工程は、接合対象物の表面から対向面までレーザ光を貫通させて対向物を溶融させることで一体化を行う工程となるため、凝固過程でマイクロクラックが発生してしまう。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、レーザ溶接によるマイクロクラックの欠陥発生を抑止し、高品質及び高信頼性を実現することができる二次電池及び二次電池の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る二次電池は、電解液を注液するための注液口を有し、注液口から注液された電解液を電極体と共に収容する容器と、容器に固着され、注液口を塞ぐ封口蓋とを備え、封口蓋は、封口蓋及び容器にわたる深さで環状に存在する溶接痕と、封口蓋の厚さに相当する深さで封口蓋における溶接痕の内周側で溶接痕に重なって環状に存在する内周側溶融痕とを有している。
【0008】
実施形態に係る二次電池の製造方法は、電解液が注液された容器の注液口を塞ぐように容器上に封口蓋を載置し、載置した封口蓋に対し、封口蓋及び容器にわたる深さで封口蓋に溶接痕を形成するようにレーザ光を環状に照射して容器に封口蓋を溶接し、溶接した封口蓋に対し、封口蓋の厚さに相当する深さで封口蓋における溶接痕の内周側に溶接痕に重ねて内周側溶融痕を形成するようにレーザ光を環状に照射する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の一形態に係る二次電池の概略構成を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示す二次電池が備える容器の封口蓋周辺を拡大して示す平面図である。
【図3】図2のA1−A1線断面図である。
【図4】図1に示す二次電池を製造する製造工程の流れを示すフローチャートである。
【図5】図4に示す製造工程中のレーザ溶接を説明するための説明図である。
【図6】図4に示す製造工程中のレーザ溶接による溶接痕を説明するための断面図である。
【図7】図4に示す製造工程中のレーザ照射による内周側溶融痕を説明するための断面図である。
【図8】図4に示す製造工程中の二回目あるいは三回目のレーザ出力とマイクロクラックの発生数との関係を説明するための説明図である。
【図9】連続波レーザ光照射による溶接痕とパルスレーザ光照射による溶接痕とを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の一形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る二次電池1は、電極体2と、その電極体2を電解液と共に収容する容器3と、一対の正極端子4及び負極端子5とを備えている。この二次電池1としては、例えば、リチウムイオン電池などの非水電解質二次電池が挙げられる。
【0012】
電極体2は発電要素である正極シート及び負極シートがセパレータを介してスパイラス状に巻かれて形成されており、容器3内に電解液と共に収納されている。
【0013】
容器3は扁平な直方体形状の外装容器であり、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金などの金属により形成されている。この容器3は、上端(図1中)が開口する一端開口の容器本体3aと、その容器本体3aの開口を塞ぐ矩形板状の蓋体3bとを有しており、その蓋体3bが容器本体3aに溶接されて液密に形成されている。
【0014】
正極端子4は蓋体3bの長手方向の一端部に設けられており、負極端子5がその他端部に設けられている。これらの正極端子4及び負極端子5は電極体2の正極及び負極にそれぞれ接続されており、蓋体3bの上面から突出している。また、どちらか一方の端子、例えば正極端子4は蓋体3bに電気的に接続されて容器3と同電位になっている。負極端子5は蓋体3bを貫通して延伸しており、その負極端子5と蓋体3bとの間には、合成樹脂やガラスなどの絶縁体からなるシール材、例えばガスケット(図示せず)が設けられている。このシール材は、負極端子5と容器3との間を気密にシールすると共に電気的に絶縁している。
【0015】
蓋体3bの中央部には、例えば矩形状の安全弁6が設けられている。この安全弁6は蓋体3bの一部を約半分程度の厚さに薄くして形成されており、その薄い部分の上面中央部には刻印が形成されている。安全弁6は、二次電池1の異常などにより容器3内にガスが発生して容器3の内圧が所定値以上に上昇した場合、開状態となって容器3内のガスを放出し、容器3の内圧を下げて二次電池1の破裂などの不具合を防止する。
【0016】
また、蓋体3bには、容器3内に電解液を注液するための注液口7が形成されている。この注液口7は貫通孔であり、例えば円形状に形成されている。電解液は注液口7から容器3内に注入される。
【0017】
さらに、蓋体3bには、注液口7を塞ぐ封口蓋8が設けられている。この封口蓋8は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金などの金属により形成されており、注液口7を塞ぐように蓋体3b上に固着されている。封口蓋8は例えば円形状に形成されており、その半径が注液口7の半径より大きくされ蓋体3bに溶接可能に形成されている。
【0018】
ここで、封口蓋8は、その上面にレーザ光が円環状に照射されることで蓋体3bに溶接される。このとき、最初に、金属が溶ける出力のレーザ光が封口蓋8の外縁上の四箇所に照射され(仮溶接)、その後、封口蓋8の表面上に円環状に一回照射され(本溶接)、さらに、円環状に二回照射される。
【0019】
このため、図2及び図3に示すように、封口蓋8は、仮溶接による四つの円形状の溶接痕8a、8b、8c、8dと、本溶接による一つの円環状の溶接痕8e(図3参照)と、その本溶接後のレーザ照射による円環状の第1の溶融痕8f及び第2の溶融痕8gとを有している。
【0020】
円形状の各溶接痕8a〜8dは、本溶接前のレーザ照射により封口蓋8が蓋体3bに仮溶接されることで生じる痕である。この仮溶接は、本溶接時に封口蓋8の表面上に円環状にレーザ光を照射することで封口蓋8が移動してしまうことを防止するため実行される。
【0021】
溶接痕8eは、本溶接のレーザ照射により封口蓋8が蓋体3bに溶接されることによって生じる痕である。この本溶接は、封口蓋8の表面上に金属が溶ける出力のレーザ光を円環状に照射することにより実行される。これにより、溶接痕8eは、封口蓋8及び容器3にわたる深さで円環状に存在しており、蓋体3bに対する封口蓋8の固着に寄与している。
【0022】
第1の溶融痕8f及び第2の溶融痕8gは、本溶接後のレーザ照射により溶接痕8eの内周側及び外周側の両側にその溶接痕8eに重なって存在し、互いに近接している痕である。レーザ照射は、封口蓋8の表面上に円環状に金属が溶ける出力(ただし、前述の溶接時より低い出力であって溶融痕が封口蓋8の厚さと同じ深さになる出力)のレーザ光を照射することにより実行される。
【0023】
これにより、第1の溶融痕8fは、封口蓋8の厚さと同じ深さで封口蓋8における溶接痕8eの内周側で溶接痕8eに重なって円環状に存在している。また、第2の溶融痕8gも、封口蓋8の厚さと同じ深さで封口蓋8における溶接痕8eの外周側で溶接痕8eに重なって円環状に存在している。なお、第1の溶融痕8fが内周側溶融痕として機能し、第2の溶融痕8gが外周側溶融痕として機能する。
【0024】
次に、前述の二次電池1の製造工程(製造方法)について説明する。
【0025】
図4に示すように、まず、電解液注入装置を用いて容器3内に注液口7から電解液を注入し(ステップS1)、その後、電解液が注液された容器3をレーザ照射装置に供給する(ステップS2)。
【0026】
次いで、電解液が注液された容器3の周囲雰囲気を減圧状態にする(ステップS3)。容器3の全体あるいは封口蓋8が位置する上部のみが密閉空間、すなわちレーザ照射装置のチャンバ内に閉じ込められている。チャンバ内の密閉空間の雰囲気は、例えば、N雰囲気で20kPaに減圧される。
【0027】
ステップS3の減圧後、ロボットなどの載置アームにより、容器3の蓋体3b上に、注液口7を塞ぐように封口蓋8を載置し(ステップS4)、その載置状態で、レーザ照射装置を用いて封口蓋8の外縁上の二箇所(図2中の上下の二箇所)にレーザ光を照射し、蓋体3bに封口蓋8を仮溶接する(ステップS5)。これにより、二つの円形状の溶接痕8a、8bが封口蓋8の外縁上に形成される。
【0028】
その後、載置アームを退避させ(ステップS6)、レーザ照射装置を用いて封口蓋8の外縁上の二箇所(図2中の左右の二箇所)にレーザ光を照射し、蓋体3bに封口蓋8を仮溶接する(ステップS7)。これにより、二つの円形状の溶接痕8c、8dが封口蓋8の外縁上に形成される。
【0029】
ここで、ステップS5において載置アームの退避前に二箇所の仮溶接を行っているが、その二箇所の仮溶接前に載置アームを退避させると、その載置アームの退避動作により蓋体3b上の封口蓋8が移動して所定位置からずれてしまうことがある。これを防止するため、前述のように載置アームの退避前に二箇所の仮溶接が実行される。なお、ステップS5及びステップS7の仮溶接は、本溶接時のレーザ照射により封口蓋8が移動することを防止するために実行される。
【0030】
ステップS7の仮溶接後、レーザ照射装置を用いて、蓋体3bに封口蓋8をレーザ溶接する本溶接を行い(ステップS8)、さらに、レーザ溶接部に生じるマイクロクラックを消滅させ(ステップS9)、最後に、出荷テストなどの所定の検査を行う(ステップS10)。
【0031】
ステップS8おいて、レーザ照射装置は、図5に示すように、レーザ照射部11を用いて、封口蓋8の表面上に金属が溶ける出力のレーザ光を円環状に走査して照射する。これにより、レーザ光が注液口7の外縁に沿う円環状に照射され、封口蓋8は蓋体3bに溶接される。
【0032】
ここで、レーザ光を走査する走査方式としては、ガルバノスキャナなどのスキャナを用いて走査する方法を用いることが高速にレーザ光を走査することができるため望ましい。ただし、走査速度によっては、容器3のワーク本体を回転させる方法や、光学系をロボットなどの移動機構を用いて移動させる方法を用いても良い。
【0033】
前述のステップS8のレーザ溶接により、図6に示すように、封口蓋8には、溶接痕8eが封口蓋8及び容器3にわたる深さで円環状に形成される。このとき、金属製の封口蓋8の下面と蓋体3bの上面との境界からマイクロクラックK1、K2が発生することがある。レーザ照射条件の最適化や封口蓋8の材質、蓋体3bの材質の最適化などを行っても、マイクロクラックK1、K2を無くすことは非常に難しい。そこで、ここでは、ステップS9のレーザ照射によりマイクロクラックK1、K2を消滅させる。
【0034】
ステップS9において、レーザ照射装置は、図5に示すように、レーザ照射部11を用いて、溶接痕8eの内周側にその溶接痕8eに重なるように金属が溶ける出力のレーザ光を円環状に走査して照射し、その後、溶接痕8eの外周側にその溶接痕8eに重なるように金属が溶ける出力のレーザ光を円環状に走査して照射する。この工程でのレーザ光の出力は、前述のステップS8のレーザ溶接時より低く、封口蓋8の厚さと同じ溶け込み深さが得られる値に設定される。
【0035】
前述の溶接痕8eの内周側へのレーザ照射により、図7に示すように、封口蓋8には、溶接痕8eの内周側に重なる第1の溶融痕8fが封口蓋8の厚さと同じ深さで円環状に形成される。この第1の溶融痕8fの形成過程、すなわちレーザ照射により封口蓋8の一部が溶融して凝固する過程で、マイクロクラックK1が消滅する。
【0036】
さらに、前述の溶接痕8eの外周側へのレーザ照射により、図3に示すように、溶接痕8eの外周側に重なる第2の溶融痕8gが封口蓋8の厚さと同じ深さで円環状に形成される。この第2の溶融痕8gの形成過程、すなわちレーザ照射により封口蓋8の一部が溶融して凝固する過程で、マイクロクラックK2が消滅する。
【0037】
なお、前述の溶接痕8eの内周側へのレーザ照射と前述の溶接痕8eの外周側へのレーザ照射との両方が行われているが、これに限るものではなく、少なくとも前述の溶接痕8eの内周側へのレーザ照射だけが行われれば良い。これは、車載品質の確保を考えた場合、注液口7側(内側)のマイクロクラックK1(図6参照)のみを消滅させれば寿命品質上、問題はないとされているためである。ただし、さらに高い品質が要求される特殊な用途の場合などには、両側のマイクロクラックK1、K2を消滅させることが必要になる。
【0038】
このように二次電池1の製造工程では、注液口7上に置いた封口蓋8の表面上にレーザ光を集光して円環状に照射し、容器3の蓋体3bに封口蓋8を溶接した後、最初に照射したレーザ光の軌跡より内側あるいは外側にシフトした位置に、最初に照射したレーザ出力よりも低い出力で二回目あるいは三回目のレーザ光を円環状に照射する。
【0039】
軌跡のシフト量は、例えば、最初のレーザ照射における溶接ビード幅の1%〜99%になるように制御される。また、二回目あるいは三回目のレーザ出力は、溶融痕8f、8gの溶け込み深さが封口蓋8の厚さと同じになる値に制御されるが、これに限るものではなく、封口蓋8の厚さに相当する深さ、例えば封口蓋8の厚さの±20%以内(深さをxとし、厚さをaとすると、0.8×a≦x≦1.2×aの関係式が成り立つ)の溶け込み深さが得られる値に制御されれば良い。
【0040】
ここで、前述の製造工程により製造した二次電池1と、クラック消滅工程を省いた製造工程により製造した二次電池とを比較すると、クラック消滅工程を省いた製造工程により製造した二次電池では、ほぼ100%の確率でマイクロクラックが発生していた。そのクラックの長さは0.02mm〜0.11mmであった。これに対し、前述のクラック消滅工程を含む製造工程により製造した二次電池1では、マイクロクラックの発生は0(ゼロ)となった。
【0041】
このような良好な製造条件を導出するためには、二回目あるいは三回目に照射するレーザ光の出力を調整することが重要である。例えば、レーザ出力をパラメータにした場合には、図8に示すように、二回目あるいは三回目に照射するレーザ出力はマイクロクラックの発生数に大きな影響を与える。すなわち、図8では、マイクロクラックの発生数はレーザ出力に応じて変化し、レーザ出力が1.5kWであるとき0(ゼロ)になっている。したがって、二回目あるいは三回目に照射するレーザ出力を最適化することによって、マイクロクラックの発生数を0(ゼロ)にすることができる。
【0042】
なお、前述の封口蓋9の溶接では、その封口蓋9を溶接する際に、容器3の全体又は封口蓋9が位置する上部のみを密閉空間に閉じ込め、その密閉空間内を減圧雰囲気にしているが、このとき、排気速度が高い場合や到達真空度が高い場合などには、注液口7から多量の電解液が漏洩するため、減圧雰囲気を10kPaから30kPaの範囲に制御することが重要であり、例えば20kPaの圧力を目標値として排気系を制御する。その後、前述のように、減圧雰囲気中で封口蓋9上にレーザ光を照射して溶接を行う。
【0043】
ここで、前述のレーザ光として連続波レーザ(CW(Continuous Wave)レーザ)光を用いた場合とパルスレーザ光を用いた場合とを図9を参照して説明する。図9では、上側が連続波レーザ光照射による溶接痕9aであり、下側がパルスレーザ光照射による溶接痕9bである。なお、連続波レーザ光は時間的に連続なレーザ光であり、前述のパルスレーザ光は時間的に非連続なレーザ光である。
【0044】
図9に示すように、連続波レーザ光照射による溶接痕9aは、連続する一本の直線になっているが、パルスレーザ光照射による溶接痕9bには、溶接欠陥K3が発生している。パルスレーザによる溶接では、パルスエネルギーが時間的に非連続のために溶融時間が短く、レーザエネルギーが弱いレーザパルスが一発でも照射されると、溶接痕(溶接ビード)9bはその影響を強く受けるため、溶接欠陥K3が発生しやすい。
【0045】
これに対して、連続波レーザによる溶接では、金属の溶融時間が比較的長く、金属の溶融池が連続的に移動するため、多少のパワー変動があっても、加工痕である溶接痕9aには、ほとんど影響が及ばない。また、溶接対象である金属の表面状態によってレーザ光の吸収率が変化した場合でも、上述と同じ理由で、溶接痕9aへの影響は小さい。このため、外乱要因が生じても、連続波レーザによる溶接を用いた場合には、溶接痕9aの乱れは小さく、極めて安定な溶接継ぎ手を得ることができる。
【0046】
また、パルスレーザは比較的ピークパワーを高く取れるため、溶接加工に広く用いられているが、パルスレーザによる溶接では、加工対象である金属の溶融時間が短く、溶融痕が非連続状態(いわゆるツギハギ状態)になる。このため、スプラッシュやブローホールなどの溶接欠陥が生じやすく、継ぎ手としての信頼性が著しく低い。したがって、高い溶接品質が要求される車載用途には、パルスレーザによる溶接継ぎ手は使えないことが多い。
【0047】
また、パルスレーザによるレーザ溶接のもう一つの問題点としては、生産性の低さがある。具体的には,溶接速度を最大でも数10mm/s程度にしか高められず、スループットが低く、生産性を向上させることが困難である。これに対して、ファイバレーザやディスクレーザなどの数kWクラスの連続出力で発振可能な固体レーザを用いて溶接に連続波レーザ光を使用することによって、溶接の信頼性及び生産性の向上を実現することができる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によれば、電解液が注液された容器3の注液口7を塞ぐように容器3上に封口蓋8を載置し、載置した封口蓋8に対し、封口蓋8及び容器3にわたる深さで封口蓋8に溶接痕8eを形成するようにレーザ光を環状に照射して容器3に封口蓋8を溶接し、溶接した封口蓋8に対し、封口蓋8の厚さに相当する深さで封口蓋8における溶接痕8eの内周側にその溶接痕8eに重ねて第1の溶融痕8fを形成するようにレーザ光を環状に照射する。これにより、環状の溶接痕8eの内周側、すなわち注液口7側のマイクロクラックK1(図6参照)を消滅させることが可能となる。したがって、レーザ溶接によるマイクロクラックK1の欠陥発生を抑止し、二次電池1の高品質及び高信頼性を実現することができる。また、高い歩留りで二次電池1を製造することが可能となる。
【0049】
さらに、溶接した封口蓋8に対し、封口蓋8の厚さに相当する深さで封口蓋8における溶接痕8eの外周側にその溶接痕8eに重ねて第2の溶融痕8gを形成するようにレーザ光を環状に照射することによって、環状の溶接痕8eの外周側、すなわち注液口7側と反対側のマイクロクラックK2(図6参照)を消滅させることが可能となる。これにより、レーザ溶接によるマイクロクラックK2の欠陥発生を確実に抑止し、二次電池1の高品質及び高信頼性を実現することができる。
【0050】
また、レーザ光を照射するとき、封口蓋8の厚さの±20%以内の深さの第1の溶融痕8fあるいは第2の溶融痕8gを形成するようにレーザ光を照射することによって、封口蓋8と蓋体3bとの境界から生じるマイクロクラックK1、K2を確実に消滅させることが可能となる。その結果、レーザ溶接によるマイクロクラックK1、K2の欠陥発生をより確実に抑止することができる。
【0051】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1…二次電池、2…電極体、3…容器、7…注液口、8…封口蓋、8e…溶接痕、8f…内周側溶融痕、8g…外周側溶融痕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液を注液するための注液口を有し、前記注液口から注液された前記電解液を電極体と共に収容する容器と、
前記容器に固着され、前記注液口を塞ぐ封口蓋と、
を備え、
前記封口蓋は、
前記封口蓋及び前記容器にわたる深さで環状に存在する溶接痕と、
前記封口蓋の厚さに相当する深さで前記封口蓋における前記溶接痕の内周側で前記溶接痕に重なって環状に存在する内周側溶融痕と、
を有していることを特徴とする二次電池。
【請求項2】
前記封口蓋は、前記封口蓋の厚さに相当する深さで前記封口蓋における前記溶接痕の外周側で前記溶接痕に重なって環状に存在する外周側溶融痕を有していることを特徴とする請求項1記載の二次電池。
【請求項3】
前記内周側溶融痕の深さは、前記封口蓋の厚さの±20%以内の深さであることを特徴とする請求項1記載の二次電池。
【請求項4】
前記外周側溶融痕の深さは、前記封口蓋の厚さの±20%以内の深さであることを特徴とする請求項2記載の二次電池。
【請求項5】
前記溶接痕は、連続する一本の線状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の二次電池。
【請求項6】
電解液が注液された容器の注液口を塞ぐように前記容器上に封口蓋を載置し、
載置した前記封口蓋に対し、前記封口蓋及び前記容器にわたる深さで前記封口蓋に溶接痕を形成するようにレーザ光を環状に照射して前記容器に前記封口蓋を溶接し、溶接した前記封口蓋に対し、前記封口蓋の厚さに相当する深さで前記封口蓋における前記溶接痕の内周側に前記溶接痕に重ねて内周側溶融痕を形成するようにレーザ光を環状に照射することを特徴とする二次電池の製造方法。
【請求項7】
溶接した前記封口蓋に対し、前記封口蓋の厚さに相当する深さで前記封口蓋における前記溶接痕の外周側に前記溶接痕に重ねて外周側溶融痕を形成するようにレーザ光を環状に照射することを特徴とする請求項6記載の二次電池の製造方法。
【請求項8】
前記レーザ光を照射するとき、前記封口蓋の厚さの±20%以内の深さの前記内周側溶融痕を形成するようにレーザ光を照射することを特徴とする請求項6記載の二次電池の製造方法。
【請求項9】
前記レーザ光を照射するとき、前記封口蓋の厚さの±20%以内の深さの前記外周側溶融痕を形成するようにレーザ光を照射することを特徴とする請求項7記載の二次電池の製造方法。
【請求項10】
前記レーザ光として連続波レーザ光を用いることを特徴とする請求項6記載の二次電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−169255(P2012−169255A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245193(P2011−245193)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】