説明

二次電池用正極

【課題】二次電池において、電池の体積を増加させることなく、耐久性、特に高温耐久性をより向上させうる手段を提供する。
【解決手段】集電体11上に正極活物質層13を形成してなる二次電池用正極であって、前記正極活物質層は、鉄化合物を含む正極活物質、結着剤、および下記化学式(1)で表される繰り返し単位を含むフッ素系ポリマーを含む、二次電池用正極:


前記化学式(1)中、Rは水素原子、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用正極に関する。特に本発明は、電池の高温耐久性を向上させるための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気汚染や地球温暖化に対処するため、二酸化炭素量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池の開発が盛んに行われている。
【0003】
モータ駆動用二次電池としては、全ての電池の中で最も高い理論エネルギーを有するリチウムイオン二次電池が注目を集めており、現在急速に開発が進められている。リチウムイオン二次電池は、一般に、活物質等がバインダとともに集電体に塗布されてなる活物質層を有する正極および負極が、電解質層を介して接続され、電池ケースに収納される構成を有している。
【0004】
上述したような自動車等のモータ駆動用電源として用いられる非水電解質二次電池には、携帯電話やノートパソコン等に使用される民生用非水電解質二次電池と比較して極めて高い出力特性を有することが求められており、かような要求に応えるべく鋭意研究開発が進められているのが現状である。
【0005】
ここで、電極の活物質層に含まれる正極活物質として用いられるニッケル含有金属酸化物などのリチウム含有複合酸化物は、特に高温下で保存する場合に、金属カチオンの溶出が激しく起こることが知られている。この金属カチオンが負極へ析出し、電池性能の低下が起こるため、種々の改良が研究されている。特許文献1では、ポリテトラフルオロエチレンに代表されるハロゲン原子を含むが水素原子を含まない単量体の重合体を含む層および無機酸化物を含む層よりなる群から選択される少なくとも1つを含む材料をセパレータとして用いる。このようなセパレータを用いることにより、正極活物質表面の電子密度が高い部分(NiOの酸素原子)と、セパレータ中の電子密度が高い部分(ハロゲン原子および/または無機酸化物中の酸素原子)とが対向する。このNiOの酸素原子と、ハロゲン原子および/または無機酸化物中の酸素原子とに囲まれた領域に、電子密度の低い金属カチオンをトラップすることができるというものである。
【特許文献1】特開2007−335405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術を採用したとしても、セパレータは負極と物理的に接触する構成になっているため、金属イオンがセパレータ内を漂うことになる。そして、金属イオンが負極表面に近づくと、やがて負極上に析出して電池の劣化を引き起こすという問題が依然としてある。また、セパレータを構成する材料が電子吸引性の高いハロゲン原子を含むため、ハロゲン原子の強い電子吸引性により、セパレータを構成する材料のポリマー骨格を形成する炭素原子部分は、負極電位が大きく低下し還元され易くなる。このような炭素原子部分の還元を防止するために、特許文献1では、セパレータと負極との間に耐還元性の膜を設けている。しかし、この耐還元性の膜の設置により電池の体積が増加し、電池の体積効率の低下を招くという問題も存在する。
【0007】
そこで本発明は、二次電池において、電池の体積を増加させることなく、耐久性、特に高温耐久性をより向上させうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題に鑑み、鋭意研究を積み重ねた。その結果、正極活物質層内にフッ素系ポリマーを添加することにより、正極活物質として用いられる鉄化合物から溶出した鉄イオンを捕捉することができることを見出した。これにより、電池の体積を増加させることなく電池の負極上の鉄イオンの析出を抑制し、電池の高温耐久性を向上させうることを本発明者らは見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の二次電池用正極は、集電体上に正極活物質層を形成してなり、前記正極活物質層は、リチウム含有鉄化合物を含む正極活物質、結着剤、および下記化学式(1)で表される繰り返し単位を含むフッ素系ポリマーを含む。
【0010】
【化1】

【0011】
前記化学式(1)中、Rは水素原子、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、正極においてフッ素系ポリマーを添加したことにより、正極活物質から溶出する鉄イオンを捕捉することができ、二次電池の高温耐久性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
(二次電池用正極)
本発明は、集電体上に正極活物質層を形成してなる二次電池用正極であって、前記正極活物質層は、リチウム含有鉄化合物を含む正極活物質、結着剤、および前記化学式(1)で表される繰り返し単位を含むフッ素系ポリマーを含む、二次電池用正極である。
【0015】
まず、本発明の二次電池用正極の構造について、図面を参照して説明する。なお、本発明においては、説明の都合上、図面が誇張されており、本発明の技術的範囲は、図面に掲示する形態に限定されない。また、図面以外の実施形態も採用されうる。
【0016】
図1は、本発明の二次電池用正極の一実施形態を示す断面図である。以下、図1に示す電極1がリチウムイオン二次電池用正極である場合を例に挙げて説明する。図1に示す形態のリチウムイオン二次電池用電極1は、正極集電体11と、当該集電体11の表面に形成された正極活物質層13とを有する。
【0017】
本発明の二次電池用正極は、構成材料として集電体、リチウム含有鉄化合物、結着剤、および前記化学式(1)で表される繰り返し単位を含むフッ素系ポリマーを含む。かような形態によれば、二次電池の高温耐久性を向上させうる二次電池用正極を得ることができる。
【0018】
以下、これらの構成材料について詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は下記の形態のみに制限されない。
【0019】
[集電体]
集電体11は、活物質層と外部とを電気的に接合するための部材であって、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス(SUS)箔など、導電性の材料から構成される。正極に用いられる場合には、集電体11は、好ましくはアルミニウムから構成される。集電体11の一般的な厚さは、1〜30μmである。ただし、この範囲を外れる厚さの集電体を用いても、勿論よい。
【0020】
集電体11の大きさは、リチウムイオン二次電池の使用用途に応じて決定される。大型の電池に用いられる大型の電極を作製するのであれば、面積の大きな集電体が用いられる。小型の電極を作製するのであれば、面積の小さな集電体が用いられる。
【0021】
[正極活物質層]
<鉄化合物>
正極活物質層13は活物質である鉄化合物を含む。鉄化合物は、リチウムイオンの吸蔵・放出によって電池反応の主体として機能する物質である。鉄化合物の具体的な種類は特に制限されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。具体的な例としては、例えば、LiFeO、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO)、LiFe(PO、LiFeMn1−x、Fe、β−FeOOHなどが挙げられる。場合によっては、2種以上の化合物が併用されてもよい。これらの中でも、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO)が特に好ましい。
【0022】
正極活物質層に含まれるリチウム含有鉄化合物の平均粒子径は特に制限されないが、好ましくは0.01〜100μmであり、より好ましくは1〜50μmであり、特に好ましくは1〜20μmである。ただし、この範囲を外れる形態が採用されても、勿論よい。なお、本明細書中において、「平均粒子径」の値としては、レーザー回折散乱法を用いて得られたD50値(メディアン径)を採用するものとする。
【0023】
<結着剤>
また、前記正極活物質層には、結着剤が含まれる。前記結着剤は、活物質と導電助剤とを結着させる役割を果たす添加剤である。結着剤は、活物質と導電助剤とを結着できるものであれば特に制限されない。
【0024】
前記結着剤の具体的な種類は特に制限されず、従来公知の知見が適宜参照される。さらに具体的な例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリイミド、セルロース、カルボキシメチルセルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルプロピナール、ポリビニルブチラール、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のヒドロキシル基含有化合物、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂などが挙げられる。これらは、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
【0025】
これら結着剤の中でも、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリアクリルアミド、スチレン・ブタジエンゴムが好ましく、ポリフッ化ビニリデンが特に好ましい。
【0026】
本発明の二次電池用正極中の前記フッ素系ポリマーの含有量が、前記フッ素系ポリマーおよび前記結着剤の総質量に対して20〜80質量%であることが好ましく、40〜80質量%であることがより好ましい。前記フッ素系ポリマーの含有量が前記フッ素系ポリマーおよび前記結着剤の総質量に対して20質量%未満であると、鉄イオンを捕捉する量が少なく、負極の劣化を抑制し難くなる。前記フッ素系ポリマーの含有量が前記フッ素系ポリマーおよび前記結着剤の総質量に対して80質量%を超えると、鉄イオンを捕捉する量は増えるので、負極の劣化をより抑制しやすくなる。しかしながら、結着剤の量が減るため正極合剤の結着力が低下し、正極の劣化を引き起こす傾向にある。
【0027】
<フッ素系ポリマー>
本発明の二次電池用正極において、正極活物質層13は前記化学式(1)で表される繰り返し単位を含むフッ素系ポリマーを含む。前記フッ素系ポリマーは、前記化学式(1)で表される繰り返し単位を含むことから、分子内に電子吸引性基であるフッ素原子を多く有している。これにより、高温条件下において、正極活物質である鉄化合物から溶出する鉄イオンを前記フッ素系ポリマーが正極活物質層内で捕捉することができる。正極活物質層内にフッ素系ポリマーを存在させて鉄イオンを捕捉させておけば、正極と負極との間にはセパレータが存在するために、鉄イオンが負極表面に到達する可能性がほとんどなくなる。よって、鉄イオンが負極上に析出することを防止することができ、二次電池の高温耐久性が向上しうる。
【0028】
さらに具体的には、前記フッ素系ポリマーは、下記化学式(1)で表される繰り返し単位を含む。
【0029】
【化2】

【0030】
前記化学式(1)中、Rは水素原子、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基である。
【0031】
前記化学式(1)で表される繰り返し単位を含むものであれば、前記フッ素系ポリマーは、単重合体であっても共重合体であってもよい。この際、共重合体である場合の前記化学式(1)で表される繰り返し単位の含有量は、前記フッ素系ポリマー中の全繰り返し単位の数を100mol%として、好ましくは20〜100mol%であり、より好ましくは40〜100mol%である。
【0032】
前記フッ素系ポリマーのさらに具体的な例としては、例えば、ポリトリフルオロエチレン(PTrFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリヘキサフルオロプロピレン(PHFP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体などが挙げられる。これらは単独でも、または2種以上組み合わせても用いることができる。
【0033】
これらフッ素系ポリマーの中でも、ポリトリフルオロエチレン(PTrFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリヘキサフルオロプロピレン(PHFP)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体がより好ましく、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が特に好ましい。ポリテトラフルオロエチレンは、その繰り返し単位中に、電子吸引性のフッ素原子を4つ含んでいる。このため、ポリテトラフルオロエチレンは、より多くの鉄イオンを捕捉することができ、鉄イオンの捕捉効果を顕著に高めることができる。
【0034】
さらに、本発明の効果をより顕著に発現させるという観点から、本発明の二次電池用正極は、前記結着剤がポリフッ化ビニリデンであり、かつ前記フッ素系ポリマーがポリテトラフルオロエチレンであることが最も好ましい。
【0035】
前記フッ素系ポリマーの重量平均分子量は、100,000〜2,000,000であることが好ましく、200,000〜1,500,000であることがより好ましい。なお、本発明において、前記重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質としてGPC(Gel Permeation Chromatography)法によって測定した値を採用するものとする。
【0036】
正極活物質層13は、必要に応じてその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、例えば、導電助剤、電解質などが挙げられる。導電助剤は、活物質層における導電性を向上させる目的で配合される添加物である。導電助剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維、活性炭、グラファイトなどの炭素材料、チタン酸カリウム、炭化チタン、二酸化チタン、炭化ケイ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、二酸化錫、および酸化インジウムなどが挙げられる。導電助剤の平均粒子径は特に制限されない。電解質が活物質層に含まれることにより、活物質層におけるリチウムイオンの伝導性が向上する。活物質層に含まれうる電解質の具体的な種類は特に制限されない。一例としては、後述する電解質層を構成する電解質と同様の電解質が挙げられるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0037】
上述した各成分の正極活物質層13における含有量について特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。活物質層の厚さについても特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。
【0038】
(正極の製造方法)
本発明の二次電池用正極の製造方法は特に制限されず、二次電池用正極の製造分野において従来公知の知見を適宜参照することにより製造されうる。以下、本発明の二次電池用正極がリチウムイオン二次電池用正極である場合を例に挙げて、その製造方法を簡単に説明する。なお、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。
【0039】
まず、集電体を準備する。集電体の具体的な形態については上述した通りであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0040】
続いて、正極活物質層を形成するための正極活物質スラリーを調製する。具体的には、活物質層に含まれうる成分を所定量準備し、適量のスラリー粘度調整溶媒に添加し、撹拌することにより、正極活物質スラリーが調製される。正極活物質スラリーには、リチウム含有鉄化合物、フッ素系ポリマー、並びに、必要に応じて他の結着剤、導電助剤、電解質などの添加剤が含まれうる。これら各成分の具体的な形態については上述した通りであるため、ここでは詳細な説明を省略する。スラリー粘度調整溶媒の具体的な種類について特に制限はないが、具体的には、水、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミドなどの極性溶媒が挙げられる。これらの溶媒の添加量を制御することによって、スラリーの粘度を調整することが可能である。調製されるスラリーの粘度に特に制限はないが、通常は1000〜50000mPa・s程度であり、好ましくは2000〜25000mPa・sである。
【0041】
正極活物質スラリーを調製した後、当該スラリーを上記で準備した集電体の表面に塗布し、乾燥後プレスする。これにより、リチウムイオン二次電池用正極が完成する。正極スラリーを塗布する際のスラリーの塗布量や塗布手段、その後の乾燥条件やプレス条件についても特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。スラリーの塗布量については、活物質層の厚さが上述した好ましい範囲内の値となるように調節すればよい。また、スラリーの乾燥温度は、通常60〜150℃程度であり、好ましくは80〜120℃である。さらに、乾燥時間は、電極の厚さにもよるが通常は5〜30分程度であり、好ましくは5〜10分である。また、プレス条件は所望の活物質層の厚さによって変動しうるため、目標厚さを考慮して従来公知の知見を参照しつつプレス圧力やプレス時間を設定すればよい。
【0042】
また、上記電解質が熱や光によって架橋しうるものである場合には、別途加熱工程や光照射工程を設け、電解質を架橋してもよい。乾燥工程における加熱によって電解質を架橋しても勿論よい。なお、電解質が架橋可能なものである場合には、従来公知の熱重合開始剤や光重合開始剤を予め正極活物質スラリー中に添加しておくことが好ましい。
【0043】
(電池)
本発明の二次電池用正極は、二次電池を構成するために用いられる。すなわち、本発明の他の形態によれば、正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に介在する電解質層とを有する電池が提供される。この際、前記正極は、上述した本発明の二次電池用正極である。
【0044】
本発明の電池の種類は特に制限されない。本明細書ではリチウムイオン二次電池である場合を例に挙げて説明しているが、これに限らず、ニッケル水素二次電池、ナトリウムイオン二次電池、カリウムイオン二次電池、ニッケルカドミウム二次電池などであってもよい。また、電池の構造・形態で区別した場合には、積層型(扁平型)電池、捲回型(円筒型)電池など特に制限されず、従来公知のいずれの構造にも適用されうる。
【0045】
同様に、リチウムイオン二次電池の電解質の形態で区別した場合にも、特に制限はない。例えば、電解液をセパレータに含浸させた液体電解質型電池、ポリマー電池とも称される高分子ゲル電解質型電池および高分子固体電解質(全固体電解質)型電池のいずれにも適用されうる。高分子ゲル電解質および高分子固体電解質に関しては、これらを単独で使用することもできるし、これら高分子ゲル電解質や高分子固体電解質をセパレータに含浸させて使用することもできる。
【0046】
以下に、リチウムイオン二次電池の一般的な形態である積層型電池について簡単に説明する。
【0047】
図2は、本発明の電池の代表的な一実施形態である、積層型リチウムイオン二次電池の全体構造を模式的に表した断面概略図である。図2に示すように、本実施形態の積層型電池10は、発電要素21が、電池外装材であるラミネートフィルム29の内部に封止された構造を有する。
【0048】
発電要素21は、正極集電体11の両面に正極活物質層13が形成されてなる正極と、電解質層17と、負極集電体12の両面に負極活物質層15が形成されてなる負極とからなる単電池層19が複数積層された構成を有する。この際、一の正極の片面の正極活物質層13と前記一の正極に隣接する一の負極の片面の負極活物質層15とが、電解質層17を介して向き合うように、正極、電解質層17、負極がこの順に積層されている。なお、単電池層19の積層数に特に制限はなく、例えば、好ましくは5〜40層であり、より好ましくは10〜30層である。
【0049】
上述した構成とすることにより、隣接する正極集電体11、正極活物質層13、電解質層17、負極活物質層15および負極集電体12は、一つの単電池層19を構成する。したがって、本実施形態の積層型電池10は、単電池層19が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。なお、発電要素21の両最外層に位置する最外層正極集電体には、いずれも片面のみに正極活物質層13が形成されている。
【0050】
また、上記の各電極(正極および負極)と導通される正極タブ25および負極タブ27が、正極端子リードおよび負極端子リードを介して各電極の正極集電体および負極集電体に超音波溶接や抵抗溶接などにより取り付けられている。これにより正極タブ25および負極タブ27は、上記ラミネートフィルム29の周辺部の熱融着にて接合された部位より外部に露出される構造を有している。
【0051】
本発明の非水電解質二次電池においては、上述した本発明の二次電池用正極以外は、従来公知の電池の構成要素が用いられる。以下、リチウムイオン二次電池を構成する部材について説明するが、本発明の技術的範囲は下記の形態のみに制限されない。
【0052】
[負極の構成]
本発明の非水電解質二次電池に用いられる負極の構成は、従来公知の構成を採用することができる。
【0053】
負極側の集電体は導電性の材料から構成される。前記材料は特に限定されないが、例えば、アルミニウム箔、ニッケル箔、ステンレス鋼(SUS)箔または銅箔などが具体例として挙げられる。集電体の厚さは1〜30μmであることが好ましい。ただし、この範囲を外れる厚さの集電体を用いてもよい。
【0054】
用いられる負極活物質は、特に限定されないが、例えば、黒鉛、難黒鉛化性炭素または非晶質炭素などの炭素材料、金属材料、ならびにリチウムアルミニウム合金、リチウムスズ合金およびリチウムケイ素合金などのリチウム合金、LiTi12などが具体例として挙げられる。これらの中でも、容量および出力特性に優れた電池を構成できる観点から、好ましくは炭素材料である。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。
【0055】
前記負極活物質の平均粒子径および前記負極活物質の含有量は特に限定されず、リチウムイオン二次電池などの二次電池についての公知の知見が適宜参照されうる。
【0056】
また、必要であれば、導電剤、結着剤、支持塩(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマーなどが含まれうる。また、イオン伝導性ポリマーが含まれる場合には、前記ポリマーを重合させるための重合開始剤が含まれてもよい。
【0057】
導電助剤の例としては、例えば、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイトなどのカーボン粉末、または気相成長炭素繊維(VGCF;登録商標)などの種々の炭素繊維などが挙げられる。前記導電助剤の含有量は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池などの二次電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。
【0058】
結着剤の例としては、以下に制限されることはないが、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ酢酸ビニル、ポリイミドまたはユリア樹脂などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂もしくはポリウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂、またはブチルゴムもしくはスチレン系ゴムなどのゴム系材料が挙げられる。
【0059】
支持塩(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマー、および重合開始剤の具体的な例については、前記の正極の場合と同様であり、ここでは説明を省略する。これらの成分の配合比は、特に限定されず、リチウムイオン二次電池などの二次電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。
【0060】
負極における電極層の厚さについても、従来公知の知見が適宜参照されうる。
【0061】
[電解質層]
電解質層を構成する電解質に特に制限はなく、液体電解質、ならびに高分子ゲル電解質および高分子固体電解質などのポリマー電解質を適宜用いることができる。
【0062】
液体電解質は、可塑剤である有機溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解した形態を有する。可塑剤として用いられる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート(PC)などのカーボネート類が挙げられる。また、支持塩(リチウム塩)としては、LiN(SO、LiN(SOCF、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiSOCFなどの電極の活物質層に添加されうる化合物を同様に用いることができる。
【0063】
一方、ポリマー電解質は、電解液を含むゲル電解質と、電解液を含まない高分子固体電解質に分類される。
【0064】
ゲル電解質は、リチウムイオン伝導性を有するマトリックスポリマーに、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。リチウムイオン伝導性を有するマトリックスポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、およびこれらの共重合体などが挙げられる。かようなマトリックスポリマーには、リチウム塩などの電解質塩がよく溶解しうる。
【0065】
なお、電解質層が液体電解質やゲル電解質から構成される場合には、電解質層にセパレータを用いてもよい。セパレータの具体的な形態としては、例えば、ハロゲン原子を含まない、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンからなる微多孔膜が挙げられる。
【0066】
高分子固体電解質は、上記のマトリックスポリマーに支持塩(リチウム塩)が溶解してなる構成を有し、可塑剤である有機溶媒を含まない。したがって、電解質層が高分子固体電解質から構成される場合には電池からの液漏れの心配がなく、電池の信頼性が向上しうる。
【0067】
高分子ゲル電解質や高分子固体電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発揮しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合などの重合処理を施せばよい。
【0068】
なお、上記電解質が本発明の電極の活物質層中に含まれてもよいことは上述した通りである。
【0069】
[タブ(正極タブおよび負極タブ)]
電池外部に電流を取り出す目的で、各集電体に電気的に接続されたタブ(正極タブ25および負極タブ27)が電池外装材であるラミネートフィルム29の外部に取り出される。
【0070】
タブ(正極タブ25および負極タブ27)を構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン電池用のタブとして従来公知の高導電性材料が用いられうる。タブの構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金などの金属材料が好ましく、より好ましくは軽量、耐食性、高導電性の観点からアルミニウム、銅などが好ましい。なお、正極タブ25と負極タブ27とでは、同一の材質が用いられてもよいし、異なる材質が用いられてもよい。また、各集電体を延長することにより正極タブおよび負極タブとしてもよいし、別途準備した正極タブおよび負極タブを各集電体に接続してもよい。
【0071】
[正極および負極端子リード]
正極端子リードおよび負極端子リードに関しても、必要に応じて使用する。例えば、各集電体から出力電極端子となる正極タブおよび負極タブを直接取り出す場合には、正極端子リードおよび負極端子リードは用いなくてもよい。
【0072】
正極端子リードおよび負極端子リードの材料は、従来公知のリチウムイオン電池で用いられる端子リードを用いることができる。なお、ラミネートフィルム29から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器など)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆するのが好ましい。
【0073】
[電池外装材]
電池外装材としては、従来公知の金属缶ケースを用いることができほか、発電要素(発電要素)を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、ポリプロピレン、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルムなどを用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。本発明では、高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用などの大型機器用電池に好適に利用することができるラミネートフィルムが望ましい。
【0074】
(双極型電池)
また、本発明の電池がリチウムイオン二次電池である場合に、当該電池は双極型電池であってもよい。
【0075】
図3に本発明の一実施形態である双極型電池の全体構造を模式的に表した断面概略図を示すが、本発明の技術的範囲はかような形態のみに制限されない。
【0076】
図3に示す本実施形態の双極型電池10’は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、電池外装材であるラミネートフィルム29の内部に封止された構造を有する。
【0077】
図3に示すように、本実施形態の双極型電池10’の発電要素21は、正極活物質層13と、負極活物質層15とが集電体14のそれぞれの面に形成された双極型電極を複数個有する。各双極型電極は、電解質層17を介して積層されて発電要素21を形成する。この際、一の双極型電極の正極活物質層13と前記一の双極型電極に隣接する他の双極型電極の負極活物質層15とが電解質層17を介して向き合うように、各双極型電極および電解質層17が積層されている。
【0078】
そして、隣接する集電体14、正極活物質層13、電解質層17、負極活物質層15および他の集電体14は、一つの単電池層19を構成する。したがって、双極型電池10’は、単電池層19が積層されてなる構成を有するともいえる。また、単電池層19の外周には、隣接する集電体14間を絶縁するための絶縁層31が設けられている。なお、発電要素21の最外層に位置する集電体(最外層集電体)には、片面のみに、正極活物質層13(正極側最外層集電体)または負極活物質層15(負極側最外層集電体)のいずれか一方が形成されている。
【0079】
さらに、図3に示す双極型電池10’では、正極側最外層集電体が延長されて正極タブ(端子)25とされ、ラミネートフィルム29から導出している。一方、負極側最外層集電体が延長されて負極タブ(端子)27とされ、同様にラミネートフィルム29から導出している。
【0080】
[絶縁層]
双極型電池10’においては、通常、各単電池層19の周囲に絶縁層31が設けられる。この絶縁層31は、電池内で隣り合う集電体14どうしが接触したり、発電要素21における単電池層19の端部の僅かな不揃いなどに起因する短絡が起こったりするのを防止する目的で設けられる。かような絶縁層31の設置により、長期間の信頼性および安全性が確保され、高品質の双極型電池10’が提供されうる。
【0081】
絶縁層31を構成する材料としては、絶縁性、固体電解質の脱落に対するシール性や外部からの水分の透湿に対するシール性(密封性)、電池動作温度下での耐熱性などを有するものであればよい。例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゴムなどが用いられうる。なかでも、耐蝕性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性などの観点から、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂が、絶縁層31の構成材料として好ましく用いられる。
【0082】
かような双極型電池とすることによって、積層型電池と比べて高出力が得られうる。
【0083】
(組電池)
本発明の電池は、複数電気的に接続されて組電池とされてもよい。
【0084】
図4は、本発明の一実施形態である組電池を示す斜視図である。
【0085】
図4に示すように、組電池40は、上記のリチウムイオン二次電池が複数個接続されることにより構成される。各リチウムイオン二次電池の正極タブおよび負極タブがバスバーを用いて接続されることにより、各リチウムイオン二次電池が接続されている。組電池40の一の側面には、組電池40全体の電極として、電極ターミナル(42、43)が設けられている。
【0086】
組電池を構成する複数個のリチウムイオン二次電池を接続する際の接続方法は特に制限されず、従来公知の手法が適宜採用されうる。例えば、超音波溶接、スポット溶接などの溶接を用いる手法や、リベット、カシメなどを用いて固定する手法が採用されうる。かような接続方法によれば、組電池の長期信頼性が向上しうる。
【0087】
本発明の組電池によれば、上記のリチウムイオン二次電池を用いて組電池化することで寿命特性に優れる組電池が提供されうる。すなわち、特に高温条件下におけるサイクル特性に優れる組電池が提供されうる。
【0088】
なお、組電池を構成する電池の接続は、複数個全て並列に接続してもよく、また、複数個全て直列に接続してもよく、さらに、直列接続と並列接続とを組み合わせてもよい。
【0089】
(車両)
本発明の電池は、例えば上述した組電池の形態で、車両に搭載されうる。車両に搭載された電池は、例えば、車両のモータを駆動する電源として用いられうる。
【0090】
電池または組電池をモータ用電源として用いる車両としては、例えば、ガソリンを用いない完全電気自動車、シリーズハイブリッド自動車やパラレルハイブリッド自動車などのハイブリッド自動車、および燃料電池自動車などの、車輪をモータによって駆動する自動車が挙げられる。
【0091】
参考までに、図5に、組電池40を搭載する自動車50の概略図を示す。自動車50に搭載される組電池40は、上記で説明したような特性を有する。このため、自動車50に組電池40を搭載することで、自動車50の長期信頼性が向上しうる。
【実施例】
【0092】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0093】
(実施例1)
1.正極の作製
正極活物質としてオリビン型リン酸鉄リチウムに対して2質量%の炭素を含有するオリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO)(平均粒子径:D50=1.9μm)(正極活物質層の総質量に対して87.75質量%)、導電助剤としてアセチレンブラック(正極活物質層の総質量に対して4.25質量%)、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)(正極活物質層の総質量に対して1.6質量%)、およびフッ素系ポリマーとしてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(正極活物質層の総質量に対して6.4質量%)(質量比 PVdF:PTFE=20:80)からなる固形分に対し、スラリー粘度調整溶媒としてのNMPを適量添加して、粘度が20000mPa・sである正極活物質スラリーを調製した。
【0094】
正極集電体としてのアルミニウム箔(厚さ:20μm、大きさ:6.8cm×6.8cm)の片面に、上記で調製した正極活物質スラリーを目付け量10mg/cmで塗布し、40℃にて15分間乾燥させて、積層体を得た。次いで、得られた積層体を、プレス機を用いてプレスし、集電体にタブを接続して正極を作製した。
【0095】
2.負極の作製
負極活物質としてメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)(負極活物質層の総量に対して90質量%)、および結着剤としてPVdF(負極活物質層の総量に対して10質量%)を混合し、次いでスラリー粘度調製溶媒であるNMPに分散して、粘度が5000mPa・sである負極活物質スラリーを調製した。
【0096】
負極集電体としての銅箔(厚さ:10μm、大きさ:7cm×7cm)の片面に、上記で調製した負極活物質スラリーを目付け量4.9mg/cmで塗布し、60℃にて15分間乾燥させて、積層体を得た。次いで、得られた積層体を、プレス機を用いてプレスし、集電体にタブを接続して負極を作製した。
【0097】
3.評価用セルの作製
上記の通り作製した正極および負極を、セパレータとしてポリエチレン(PE)製微多孔膜(厚さ:25μm、大きさ:7.8cm×7.8cm)を介して対向させるように積層して評価用セルを作製した。なお、各電極にはニッケル製タブリードおよびアルミニウム製タブリードを超音波溶接にて接続させた。次いで、前記の評価用電池要素を1対のラミネート外装の内部に設置し、電解液を1ml注入後真空封止して評価用セルを作製した。なお、電解液は、1M LiPFを、エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=1:1(体積比)の溶媒に溶解させたものを使用した。
【0098】
(実施例2)
正極側の結着剤であるPVdFの量を3.2質量%とし、フッ素系ポリマーであるPTFEの量を4.8質量%としたこと以外は(質量比 PVdF:PTFE=40:60)、実施例1と同様にして評価用セルを作製した。
【0099】
(実施例3)
正極側の結着剤であるPVdFの量を4.8質量%とし、フッ素系ポリマーであるPTFEの量を3.2質量%としたこと以外は(質量比 PVdF:PTFE=60:40)、実施例1と同様にして評価用セルを作製した。
【0100】
(実施例4)
正極側の結着剤であるPVdFの量を6.4質量%とし、フッ素系ポリマーであるPTFEの量を1.6質量%としたこと以外は(質量比 PVdF:PTFE=80:20)、実施例1と同様にして評価用セルを作製した。
【0101】
(比較例1)
正極側の結着剤であるPVdFの量を8.0質量%とし、フッ素系ポリマーであるPTFEを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして評価用セルを作製した。
【0102】
(比較例2)
フッ素系ポリマーであるPTFEの量を8.0質量%とし、正極側の結着剤であるPVdFを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして評価用セルを作製した。
【0103】
(比較例3)
セパレータとしてポリエチレン製微多孔膜の代わりに、ポリテトラフルオロエチレン製微多孔膜(厚さ:50μm、大きさ:7.8cm×7.8cm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして評価用セルを作製した。
【0104】
(充放電サイクル試験)
上記で作製した実施例1〜4および比較例1〜3の評価用セルに対して、高温条件下(60℃)にて300サイクルの充放電サイクル試験を行った。サイクル条件は、55mAで4.0Vまでの定電流定電圧充電(8時間実施)→55mAで2.0Vまでの定電流放電を1サイクルとした。25℃で1サイクル時の放電容量に対して、60℃で300サイクル後の25℃の放電容量の百分率を算出し、容量維持率(%)とした。充放電サイクル試験の結果を下記表1および図6に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
表1および図6に示す結果から、実施例1〜4の電池(単セル)では、比較例1〜2の電池(単セル)と比べて容量維持率が高い値に維持されたことがわかった。また、セパレータとしてPTFE製微多孔膜を用いた比較例3と比べても、本発明の二次電池用正極を含む電池は、容量維持率が高い値に維持されたことがわかった。
【0107】
このように、本発明の二次電池用正極は、二次電池の高温耐久性の向上に有効に寄与しうる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の二次電池用正極の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の二次電池の代表的な一例である、積層型リチウムイオン二次電池の全体構造を模式的に表した断面概略図である。
【図3】本発明の一例である双極型リチウムイオン二次電池の全体構造を模式的に表した断面概略図である。
【図4】本発明の一例である組電池を示す斜視図である。
【図5】本発明の組電池を搭載する自動車の概略図である。
【図6】実施例1〜4および比較例1〜3の充放電サイクル試験の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0109】
10 積層型電池、
10’ 双極型電池、
11 正極集電体、
12 負極集電体、
13 正極活物質層、
14 集電体、
15 負極活物質層、
17 電解質層、
19 単電池層、
21 発電要素、
25 正極タブ、
27 負極タブ、
29 ラミネートフィルム、
31 絶縁層、
40 組電池、
42、43 電極ターミナル、
50 自動車。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体上に正極活物質層を形成してなる二次電池用正極であって、
前記正極活物質層は、鉄化合物を含む正極活物質、結着剤、および下記化学式(1)で表される繰り返し単位を含むフッ素系ポリマーを含む、二次電池用正極:
【化1】

前記化学式(1)中、Rは水素原子、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基である。
【請求項2】
前記フッ素系ポリマーの含有量が、前記結着剤および前記フッ素系ポリマーの総質量に対して20〜80質量%である、請求項1に記載の二次電池用正極。
【請求項3】
前記結着剤がポリフッ化ビニリデンであり、前記フッ素系ポリマーがポリテトラフルオロエチレンである、請求項1または2に記載の二次電池用正極。
【請求項4】
前記鉄化合物がオリビン型リン酸鉄リチウムである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の二次電池用正極。
【請求項5】
正極、電解質層、および負極がこの順に積層されてなる少なくとも1つの単電池層を含む非水電解質二次電池であって、
前記正極が、請求項1〜4のいずれか1項に記載の二次電池用正極である、非水電解質二次電池。
【請求項6】
双極型である、請求項5に記載の非水電解質二次電池。
【請求項7】
請求項5または6に記載の非水電解質二次電池を用いた組電池。
【請求項8】
請求項5もしくは6に記載の非水電解質二次電池、または請求項7に記載の組電池を駆動用電源として搭載した車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−62033(P2010−62033A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227381(P2008−227381)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】