説明

二次電池

【課題】外装フィルム30の内部にガスが発生する前に、積層素子10への通電状態を未然に遮断する。
【解決手段】二次電池1は、負極シート11と正極シート12とがセパレータ13を挟んで交互に積層された積層素子10と、積層素子10を密封している外装フィルム30と、積層素子10の負極シート11又は正極シート12に導通され、外装フィルム30の外部へ延出された一対の電極端子15とを備えている。そして、積層素子10の積層方向の厚みが、最大容量まで充電されたときの厚みよりも大きくなったときに、一対の電極端子15の少なくとも一方と積層素子10との通電状態を遮断する遮断機構40を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関し、特に、過充電が生じたときの安全対策に係るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ノート型パソコンや携帯電話等のモバイル機器の開発が急速に進められている。これらのモバイル機器には、電源としてリチウムイオン電池等の二次電池が適用されることが多い。二次電池は、機器の駆動時間や携帯性の向上を図るために、軽量、小型、大容量等の特性が求められている。
【0003】
二次電池であるリチウムイオン電池は、外装材の内部に封止された積層素子を有している。積層素子は、交互に積層される複数の正極シート及び負極シートを備え、各正極シートと負極シートとの間には、セパレータ及び電解質がそれぞれ介在されている。セパレータ及び電解質には、両者の機能を一つに兼ね備えている固体又はゲル状電解質と、セパレータに液体電解質を含浸させたものとがある。
【0004】
正極シートは、例えばLiCoO2等の正極活物質が塗布され、負極シートは、例えばグラファイト(C)等の負極活物質が塗布されている。こうして、積層素子では、正極シートと負極シートとの間でリチウムイオン(Li+)が移動することにより、充電又は放電を行うようになっている。
【0005】
また、外装材には、アルミラミネート等の外装フィルムや金属缶を適用することが知られているが、特に、外装フィルムは、軽量である点、薄型化が容易である点、及び形状の自由度が高い点などで有利である。
【0006】
ところで、リチウムイオン電池が誤って過剰に充電されると、正極シートと負極シートとの間に大電流が流れることにより、電解質が分解したり気化してガスが発生する。その結果、外装フィルムが膨張して破裂したり、発火に至るという問題が生じる。
【0007】
これに対し、発火を防止する目的で、外装フィルムの内部に難燃性ゲルを充填することが知られている。しかし、難燃性ゲルは、過充電時における発火を抑制できるものの、外装フィルム内におけるガスの発生を抑制するものではないため、外装フィルムの破裂を防止することはできない。
【0008】
そこで、従来より、外装フィルムに安全弁(ラプチャー)を形成し、外装フィルムの内部でガス圧力が大きくなったときに安全弁を作動させて、外装フィルム内のガスを外部へ放出することが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0009】
特許文献1には、フィルム外装材の熱融着による封止部の少なくとも一箇所に安全弁として機能する低温融着部を設けることが記載されている。また、特許文献2には、袋状の外装フィルムにより封止された二次電池に対し、集電リードが取り付けられている熱溶着封口部の幅を、集電リードの取り付けられていない熱溶着封口部(安全弁として用いられる)の幅よりも大きくすることが開示されている。
【0010】
しかし、これらの安全弁では、外装フィルムの内部圧力がかなり高くならなければ安全弁が作動せず、また電解質が漏出して発火する虞れがあり、安全性が十分ではなかった。また、充電電流が流れ続けるため、ガスの発生を止めることはできない。
【0011】
これに対し、外装フィルムの膨張により通電を遮断する遮断機構を設けることが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0012】
すなわち、遮断状態の断面図である図10に示すように、積層素子101は、外装フィルム121の内部に密封され、負極シート102と正極シート103とがセパレータ104を挟んで交互に積層して構成されている。
【0013】
積層素子101の積層最外面に設けられた導電部材125には、粘着テープ114を介して負極端子112が接続されている。負極端子112の一端には、外装フィルム121の内面に固定された接続部111が形成されている。一方、負極端子112の他端は、外装フィルム121の外部へ延出されている。
【0014】
そして、外装フィルム121が膨張していない通常時には、接続部111は、外装フィルム121により押し付けられて導電部材125に接触し、通電している。一方、過充電によりガスが発生したときには、外装フィルムがガスによって膨張することにより、接続部111が導電部材125から離れる。その結果、積層素子101への通電状態が遮断されるため、ガスの発生を停止させることが可能となる。
【特許文献1】特開2000−100399号公報
【特許文献2】特開2000−277065号公報
【特許文献3】特開2003−208885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、上記特許文献3の二次電池は、安全弁を用いる特許文献1,2のものに比べて、外装フィルム内のガス圧力が比較的低い段階で通電状態を遮断することができるものの、ガスの発生自体を防止することはできない。言い換えれば、ガスが発生する前に未然に通電状態を遮断することはできないという問題がある。
【0016】
さらに、外装フィルム121内の温度が低下すると、電解質のガスが液化して外装フィルム121が収縮するため、上記負極端子112の接続部111が導電部材125に再接触してしまう。その結果、再び通電状態となって過充電が行われ、ガスが再発生する虞れもあった。
【0017】
本発明は、斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、外装フィルムの内部にガスが発生する前に、積層素子への通電状態を未然に遮断することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するために、この発明では、積層素子の積層方向の厚みが所定の厚みよりも大きくなったときに、通電状態を遮断する遮断機構を備えるようにした。
【0019】
具体的に、本発明に係る二次電池は、負極シートと正極シートとがセパレータを挟んで交互に積層された積層素子と、上記積層素子を密封している外装フィルムと、上記積層素子の負極シート又は正極シートに導通され、上記外装フィルムの外部へ延出された一対の電極端子とを備えた二次電池であって、上記積層素子の積層方向の厚みが、最大容量まで充電されたときの厚みよりも大きくなったときに、上記一対の電極端子の少なくとも一方と上記積層素子との通電状態を遮断する遮断機構を備えている。
【0020】
上記積層素子には、積層方向に延びる貫通孔が形成され、上記遮断機構は、上記貫通孔の内部に配置されて導電性を有するピンと、上記積層素子の一方の積層最外面に固着して設けられ、上記ピンの一端に接触している第1導電部材と、上記積層素子の他方の積層最外面に固着して設けられ、上記ピンの他端に接触している第2導電部材とを備え、上記第1導電部材は、上記負極シート又は上記正極シートに導通している集電電極に接続され、上記第2導電部材は、上記第1導電部材が接続されている上記集電電極と同じ極性を有する上記電極端子に接続されていることが好ましい。
【0021】
また、上記積層素子には、積層方向に延びる貫通孔が形成され、上記遮断機構は、上記貫通孔の内部に配置されて導電性を有するピンと、上記積層素子の一方の積層最外面に固着して設けられ、上記ピンの一端に溶接されている第1導電部材と、上記積層素子の他方の積層最外面に固着して設けられ、上記ピンの他端に溶接されている第2導電部材とを備え、上記第1導電部材は、上記負極シート又は上記正極シートに導通している集電電極に接続され、上記第2導電部材は、上記第1導電部材が接続されている上記集電電極と同じ極性を有する上記電極端子に接続されていてもよい。
【0022】
−作用−
次に、本発明の作用について説明する。
【0023】
過充電が生じていない正常時には、遮断機構が作動せず、一対の電極端子と積層素子との通電状態が維持されている。その結果、外部電源から上記電極端子を介して積層素子の負極シートに電荷が供給されるため、二次電池は正常に充電される。
【0024】
ところで、充電時には、正極シートから正イオンが放出される。その結果、正極シートの結晶格子に伸びが生じるため、正極シートは膨張する。また、負極シートには正極シートから放出された正イオンが取り込まれるため、負極シートも膨張する。すなわち、積層素子は、充電に伴って膨張するようになっている。
【0025】
過充電が生じた異常時には、積層素子の積層方向の厚みが、二次電池の最大容量(例えば4.25Vの電圧)まで充電されたときの厚みよりも大きくなる。このとき、遮断機構が作動して、上記一対の電極端子の少なくとも一方と、上記積層素子との通電状態を遮断させる。その結果、積層素子の負極シートへの電荷の供給が阻止されて、外装フィルム内におけるガスの発生が未然に防止される。
【0026】
また、上記遮断機構は、積層素子に形成された貫通孔の内部に設けられたピンと、ピンの両端に接触又は溶接された第1導電部材及び第2導電部材とにより構成することができる。例えば、各負極シートには集電電極が導通しており、集電電極は、積層素子の一方の積層最外面に固着された第1導電部材に接続される。第2導電部材は、ピンを介して第1導電部材に導通しており、負極の電極端子が接続されている。すなわち、正常時には、負極の電極端子から供給される電荷は、第2導電部材、ピン、第1導電部材、及び集電電極を介して、積層素子の各負極シートへ供給され、このことにより充電が行われる。
【0027】
一方、異常時には、積層素子の積層方向の厚みが増大して、第1導電部材及び第2導電部材の少なくとも一方が、ピンの端部から外れて離脱する。その結果、第1導電部材及び第2導電部材の少なくとも一方とピンの端部との間で充電される電荷の経路が分断されるため、電極端子から負極シートへの電荷の供給が阻止され、ガスの発生が未然に防止される。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、過充電により積層素子の積層方向の厚みが最大容量まで充電されたときの厚みよりも大きくなった異常時には、一対の電極端子の少なくとも一方と、積層素子との通電状態を遮断機構により遮断するようにしたので、外装フィルム内におけるガスの発生を未然に防止し、過充電時の安全性を飛躍的に高めることができる。
【0029】
さらに、積層素子の貫通孔に設けたピンと、ピンの両端に接触又は溶接された第1導電部材及び第2導電部材とによって遮断機構を構成することにより、異常時において、第1導電部材及び第2導電部材の少なくとも一方をピンの端部から離脱させることができる。その結果、充電経路を分断することができるため、ガスの発生を未然に防止することが可能となる。
【0030】
また、ガスが発生しないので、従来の安全弁を用いる二次電池のように、温度低下に伴うガスの液化によって通電遮断部分が再接触するという問題は生じないため、十分に安全性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0032】
《発明の実施形態1》
図1〜図7は、本発明に係る二次電池の実施形態1を示している。本実施形態の二次電池は、いわゆるシート状電池であって、例えば、リチウムイオン(Li+)が電極間で移動することにより充電及び放電を行うリチウムイオン電池である。
【0033】
断面図である図1に示すように、二次電池1は、積層素子10と、積層素子10を内部に密封している外装フィルム30と、積層素子10に導通された一対の電極端子15,16とを備えている。
【0034】
上記積層素子10は、図1及び斜視図である図3に示すように、複数の負極シート11と複数の正極シート12とがセパレータ13を挟んで交互に積層された構造を有している。
【0035】
負極シート11及び正極シート12は、図4に示すように、シート状の電極本体11a,12aと、電極タブ11b,12bとにより構成されている。
【0036】
負極シート11の電極本体11aの略中央には、円状の第1開口部31が形成されている。一方、正極シート12の電極本体12aの略中央には、円状の第2開口部32が形成されている。第1開口部31の中心は、負極シート11及び正極シート12が積層された状態で、第2開口部32の中心に一致するようになっている。さらに、セパレータ13にも円状の第3開口部33が形成されている。第3開口部33の中心は、上記第1開口部31及び第2開口部32の中心に一致している。
【0037】
図1に示すように、上記各開口部31,32,33のうち、セパレータ13の第3開口部33の内径が最も小さい。負極シート11の第1開口部31の内径は、上記第3開口部33よりも大きい。そして、正極シート12の第2開口部32の内径は、上記第1開口部31よりも大きく、最も大きくなっている。これらの第1〜第3開口部31,32,33により、積層素子10の積層方向に延びる貫通孔19が形成されている。
【0038】
負極シート11は、厚さが5〜100μm、特に8〜50μmである銅、ニッケル、銀、及びSUS等の導電体の箔により形成されている。負極シート11の電極本体11aは、表面に負極活物質が塗工される一方、電極タブ11bは負極活物質が塗工されずに露出している。
【0039】
負極活物質は、炭素質材料であって、グラファイトである各種の天然黒鉛や人造黒鉛、例えば、繊維状黒鉛、鱗状黒鉛、球状黒鉛などの黒鉛類が好ましい。このような黒鉛類にポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、エチレン−プロピレン−ジエン系ポリマー等の結着剤を混合し、上記導電体箔の両面に塗工する。負極活物質の厚みは、20〜500μmが好ましく、50〜250μmがさらに好ましい。また、製品電池となったときの負極活物質層の密度は、1.2〜1.8g/cm3程度の高密度にすると、電池特性が優れるので好ましい。
【0040】
正極シート12は、厚さが10〜100μm、特に15〜50μmであるアルミニウム、アルミニウム合金、及びチタン等の導電体の箔や、厚さが25〜300μm、特に30〜150μmであるエキスパンドメタルやメッシュメタル等により形成されている。上記負極シート11と同様に、正極シート12の電極本体12aは、表面に正極活物質が塗工される一方、電極タブ12bは正極活物質が塗工されずに露出している。
【0041】
正極活物質には、LiCoO2が適用されている。その他に、正極活物質としては、負極との電位差が少なくとも1Vであるもの、例えば、V25、MnO2、LiMn24、LiNi0.5Co0.52、LiNiO2、Li−Co−P系複合酸化物(LiCo0.50.52、LiCo0.40.62、LiCo0.60.42、LiCo0.3Ni0.30.42、LiCo0.2Ni0.20.62等)、TiS2、MoS2、MoO3等を適用することもできる。
【0042】
特に、電池の起電力や充放電電圧を高めることができるため、Li−Co系複合酸化物が好ましい。正極活物質は、粒子径が1〜50μmであると、電池特性が向上するので好ましい。このような正極活物質は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、エチレン−プロピレン−ジエン系ポリマーなどの結着剤を混合して塗工する。正極活物質の厚みは、20〜500μmが好ましく、50〜250μmがさらに好ましい。また、製品電池となったときの正極活物質層の密度は、2.5〜3.5g/cm3程度の高密度にすると、電池特性が優れるので好ましい。
【0043】
負極活物質及び正極活物質の塗工方法は、特に限定されないが、ロールコーティング法やダイコーティング法等が好ましい。
【0044】
上記各電極タブ11b,12bは、図3及び図5に示すように、積層素子10の一方の側面から突出している。そして、負極の各電極タブ11bは、上下に揃って配置され負極の集電電極21にまとめて接続されている。また、正極の各電極タブ12bについても、上下に揃って配置され正極の集電電極22にまとめて接続されている。つまり、各負極シート11は、負極の集電電極21に導通する一方、各正極シート12は、正極の集電電極22に導通している。
【0045】
上記セパレータ13は、複数のシート形状のものを負極シート11と正極シート12との間に個別に介装してもよく、その他に、図5に示すように、1枚の帯状のものをつづら折り状にして、各負極シート11及び正極シート12の間に介装させるようにしてもよい。
【0046】
また、セパレータ13は、正極と負極の短絡を防いで、イオン電導性を有しているものであればどのようなものでも構わないが、取り扱い易さや、電気特性や電解液に対する安定性等の観点から、多孔性を有するなポリマフィルムであることが好ましい。ポリマフィルムを構成するポリマとしては、例えば、ポリスチレン、ポリブタジエン及びそれらの共重合体、ポリエチレンオキサイド誘導体、ポリプロピレンオキサイド誘導体、上記誘導体を含むポリマ、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンカーボネート、ポリビニリデンフルオライド、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体等を適用することができる。このようなポリマを適当な溶剤に溶解させて、成膜、乾燥させてフィルムとする。尚、フィルム成膜用の溶液に可塑剤等の添加剤を加えてもよい。このようにして、多孔性を有するセパレータ13を作製する。セパレータ13の厚みは5〜100μmが好ましく、特に20〜60μmとすると電池特性が良好となるため、さらに好ましい。
【0047】
尚、電池として完成したときには、セパレータ13には非水系の電解液が含浸されている。上記電解液には、塩類を有機溶媒に溶解させた電解液を適用することができる。上記塩類としては、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiAlCl4、Li(CF3SO22Nなどが例示され、これらの一種あるいは二種以上の混合物を適用できる。有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどが例示され、これらの一種あるいは二種以上の混合物を適用することができる。
【0048】
また、セパレータ13として、負極シート11と正極シート12とを実質的に隔離する公知の固体電解質層を用いてもよい。
【0049】
上記外装フィルム30は、平面図である図2に示すように、ブリスター包装容器に形成されている。外装フィルム30は、図示を省略するが、厚さ30〜50μmのアルミ箔層と、アルミ箔層の一面に積層された樹脂よりなる外部保護層と、アルミ箔の他面に積層された樹脂よりなる耐電解液層と、耐電解液層の上に積層された熱可塑性樹脂よりなる接着層とにより構成され、四層構造を有している。外部保護層の樹脂としては、ナイロン樹脂やポリエステル樹脂等を挙げることができ、接着層の樹脂としては、変性ポリオレフィン樹脂等の熱融着により封止することのできる樹脂を挙げることができる。
【0050】
外装フィルム30の厚みは、全体として、80〜200μmであることが好ましい。外装フィルム30は、矩形のフィルムに、積層素子10の外形よりやや大きい矩形のブリスター(窪み)が成形されている。そして、積層素子10をブリスターの内部に収容すると共に電解液を導入した状態で、外装フィルム30を二つ折りにして熱融着等により接着し、積層素子10を密封する。
【0051】
上記一対の電極端子15,16は、図3に示すように、一端が正極シート12又は負極シート11に導通され、図1及び図2に示すように、外装フィルム30の外部へ延出されている。
【0052】
すなわち、電極端子15,16は、負極端子15と正極端子16とにより構成されている。負極端子15の一端は、図3に示すように、後述の第2導電部材25に導通されている。一方、正極端子16の一端は、正極の集電電極22に接続されている。
【0053】
そして、本発明の特徴として、二次電池1は、上記積層素子10の積層方向の厚みが、最大容量まで充電されたときの厚みよりも大きくなったときに、上記一対の電極端子15,16の少なくとも一方と積層素子10との通電状態を遮断する遮断機構40を備えている。
【0054】
遮断機構40は、ピン41と、第1導電部材24と、第2導電部材25とを有している。
【0055】
上記ピン41は、積層素子10の貫通孔19の内部に配置され、導電性を有する例えば銅等の材料により形成されている。ピン41は、積層素子10の膨張力では変形しない程度の剛性を有している。本実施形態では、ピン41は、積層素子10の積層方向の厚みと同じ長さを有している。また、ピン41の外径は、上記セパレータ13の第3開口部33の内径よりも僅かに小さくなっている。
【0056】
上記第1導電部材24は、図1に示すように、積層素子10の一方の積層最外面である下面に固着して設けられ、ピン41の一端である下端に接触している。一方、第2導電部材25は、積層素子10の他方の積層最外面である上面に固着して設けられ、ピン41の他端である上端に接触している。つまり、第1導電部材24と第2導電部材25とは、ピン41を介して導通している。
【0057】
第1導電部材24及び第2導電部材25は、それぞれ例えば銅箔等により構成されている。また、図1に示すように、上記負極シート11と同様に、第1導電部材24には電極タブ26が形成される一方、第2導電部材25には電極タブ27が形成されている。各電極タブ26,27は、上記負極の集電電極21に上下に重なるように配置されている。
【0058】
上記第1導電部材24の電極タブ26は、負極の集電電極21に接続されている。一方、第2導電部材25の電極タブ27は、負極の集電電極21と同じ極性を有する電極端子である上記負極端子15に接続されている。
【0059】
−充電時の反応−
次に、正極活物質にLiCoO2が適用された二次電池1の充電時の正極及び負極の反応ついて説明する。
【0060】
充電時に、正極では、次の式(1)の化学反応が行われる。
【0061】
LiCoO2 → Li1-xCoO2+xLi++xe- ・・・(1)
また、負極では、次の式(2)の化学反応が行われる。
【0062】
y+xLi++xe- → CyLix ・・・(2)
その結果、負極シート11及び正極シート12の全体としては、次の式(3)の化学反応が行われることとなる。
【0063】
LiCoO2+Cy → Li1-xCoO2+CyLix ・・・(3)
以上の反応により、充電が行われる。このとき、CCCV充電方式で最大容量まで充電されたときの積層素子10の内部電圧は、例えば4.25Vになっている。
【0064】
充電時には、正極活物質からリチウムイオン(Li+)が放出されるため、正極活物質の結晶格子に伸びが生じて、正極シート12は膨張する。また、負極活物質には正極活物質から放出されたリチウムイオン(Li+)が取り込まれるため、負極シート11も膨張する。すなわち、積層素子10は、充電に伴って積層方向に膨張する。
【0065】
−異常時における遮断機構の作動−
次に、過充電が生じた異常時における遮断機構40の作動について説明する。
【0066】
積層素子10の厚みは、異常時においても過剰な充電に伴って大きくなる。これに対し、ピン41は、最大容量まで充電されたときの積層素子10の厚みと同じ長さに規定されているため、充電量が最大容量を超えたときには、積層素子10の厚みがピン41の長さよりも大きくなる。その結果、それまで接触して互いに導通していたピン41と、第1導電部材24及び第2導電部材25の少なくとも一方とが離れる。図6は、ピン41が第2導電部材25のみから離脱した状態を示し、図7は、ピン41が第1導電部材24及び第2導電部材25の双方から離脱した状態を示している。
【0067】
このことにより、外部電源から積層素子10への充電経路が分断されるため、通電状態が遮断され、充電は停止する。
【0068】
−実施形態1の効果−
したがって、この実施形態1によると、遮断機構40を設けるようにしたので、過充電により積層素子10の積層方向の厚みが最大容量まで充電されたときの厚みよりも大きくなった異常時には、遮断機構40のピン41を第1導電部材24及び第2導電部材25の少なくとも一方から離脱させ、負極端子15と積層素子10との通電状態を遮断することができる。
【0069】
その結果、電解液がガス化する前に通電状態を遮断できるため、外装フィルム30内におけるガスの発生を未然に防止し、過充電時の安全性を飛躍的に高めることができる。
【0070】
また、ガスが発生しないので、従来の安全弁を用いる二次電池のように、温度低下に伴うガスの液化によって通電遮断部分が再接触するという問題は生じないため、十分に安全性を確保することができる。
【0071】
《実施形態2》
図8は、本発明に係る二次電池の実施形態2を示している。尚、図1〜図7と同じ部分については同じ符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0072】
本実施形態の遮断機構40は、上記実施形態1におけるピン41に代えて、ピン41と第3導電部材46とを備えている。第3導電部材46は、例えば、ピン41とほぼ同じ径を有する円柱状に形成されている。そして、第3導電部材46及びピン41の長さの和は、上記実施形態1におけるピン41の長さと同じであって、二次電池1が最大容量まで充電されたときの積層素子10の厚みと同じ長さに規定されている。
【0073】
第3導電部材46は、正常時において、第2導電部材25の下面と、ピン41の上面との双方に接触している。そして、過充電が生じた異常時には、積層素子10の厚みが最大容量まで充電されたときの厚みよりも大きくなることにより、第3導電部材46と第2導電部材25又はピン41との間、又はピン41と第1導電部材24との間に隙間が生じる。その結果、外部電源から積層素子10への充電経路が分断され、通電状態が遮断される。
【0074】
したがって、この実施形態2によっても、上記実施形態1と同様に、外装フィルム30内でのガスの発生を未然に防止することができる。
【0075】
尚、第3導電部材46は、例えば、第2導電部材25の下面に固着して設けるようにしてもよい。このことにより、過充電が生じた異常時には、第3導電部材46の下面がピン41の上面から離脱させて通電状態を遮断することが可能となる。
【0076】
≪実施形態3≫
図9は、本発明係る二次電池の実施形態3を示している。この実施形態は、上記実施形態2と同様に、第3導電部材46をピン41の上端側に設けることに加え、第4導電部材47をピン41の下端側に設けたものである。
【0077】
すなわち、第4導電部材47は、第3導電部材46と同様に、例えば、ピン41とほぼ同じ径を有する円柱状に形成されている。そして、第4導電部材47、第3導電部材46及びピン41の長さの和は、上記実施形態1におけるピン41の長さと同じであって、二次電池1が最大容量まで充電されたときの積層素子10の厚みと同じ長さに規定されている。
【0078】
第3導電部材46は、正常時において、第2導電部材25の下面と、ピン41の上面との双方に接触している。一方、第4導電部材47は、正常時において、ピン41の下面と、第1導電部材24の上面との双方に接触している。
【0079】
そして、過充電が生じた異常時には、積層素子10の厚みが最大容量まで充電されたときの厚みよりも大きくなることにより、第3導電部材46と第2導電部材25又はピン41との間、又は第4導電部材47とピン41又は第1導電部材24との間に隙間が生じる。その結果、外部電源から積層素子10への充電経路が分断され、通電状態が遮断される。したがって、この実施形態3によっても、上記各実施形態と同様に、外装フィルム30内でのガスの発生を未然に防止することができる。
【0080】
尚、第4導電部材47は、例えば、第1導電部材24の上面に固着して設けるようにしてもよい。このことにより、過充電が生じた異常時には、第4導電部材47の上面がピン41の下面から離脱させて通電状態を遮断することが可能となる。
【0081】
《その他の実施形態》
上記各実施形態では、正常時において、ピン41を第1導電部材24と第2導電部材25との間で狭持して固定するようにしたが、本発明はこれに限らず、例えばスポット溶接等により固定するようにしてもよい。
【0082】
すなわち、上記実施形態1において、ピン41の上端と第2導電部材25の下面とを溶接すると共に、ピン41の下端と第1導電部材24の上面とを溶接して、ピン41を固定することが可能である。また、上記実施形態2において、ピン41の上端と第3導電部材46の下面とを溶接してもよい。さらに、上記実施形態3において、ピン41の上端と第3導電部材46の下面とを溶接すると共に、ピン41の下端と第4導電部材47の上面とを溶接して固定してもよい。
【0083】
このように溶接固定する場合には、ピン41の長さを、最大容量まで充電されたときの積層素子10の厚みよりも僅かに短くすることが可能である。このことにより、異常時におけるピン41と各導電部材との離脱のし易さを調節することができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上説明したように、本発明は、外装フィルムに密封された積層素子を有する二次電池について有用であり、特に、外装フィルムの内部にガスが発生する前に、積層素子への通電状態を未然に遮断させる場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】実施形態1の二次電池を模式的に示す断面図である。
【図2】二次電池の外観を示す平面図である。
【図3】実施形態1の積層素子を示す斜視図である。
【図4】負極シート(正極シート)の外観を示す斜視図である。
【図5】セパレータをつづら折り状に設けた状態を示す斜視図である。
【図6】ピンが第2導電部材から離脱した遮断機構の遮断状態を示す断面図である。
【図7】ピンが第1及び第2導電部材から離脱した遮断機構の遮断状態を示す断面図である。
【図8】実施形態2の二次電池の要部を示す断面図である。
【図9】実施形態3の二次電池の要部を示す断面図である。
【図10】従来の二次電池を示す断面図である。
【符号の説明】
【0086】
1 二次電池
10 積層素子
11 負極シート
12 正極シート
13 セパレータ
15 負極端子(電極端子)
16 正極端子(電極端子)
19 貫通孔
21 集電電極
22 集電電極
24 第1導電部材
25 第2導電部材
30 外装フィルム
40 遮断機構
41 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極シートと正極シートとがセパレータを挟んで交互に積層された積層素子と、
上記積層素子を密封している外装フィルムと、
上記積層素子の負極シート又は正極シートに導通され、上記外装フィルムの外部へ延出された一対の電極端子とを備えた二次電池であって、
上記積層素子の積層方向の厚みが、最大容量まで充電されたときの厚みよりも大きくなったときに、上記一対の電極端子の少なくとも一方と上記積層素子との通電状態を遮断する遮断機構を備えている
ことを特徴とする二次電池。
【請求項2】
請求項1において、
上記積層素子には、積層方向に延びる貫通孔が形成され、
上記遮断機構は、上記貫通孔の内部に配置されて導電性を有するピンと、上記積層素子の一方の積層最外面に固着して設けられ、上記ピンの一端に接触している第1導電部材と、上記積層素子の他方の積層最外面に固着して設けられ、上記ピンの他端に接触している第2導電部材とを備え、
上記第1導電部材は、上記負極シート又は上記正極シートに導通している集電電極に接続され、
上記第2導電部材は、上記第1導電部材が接続されている上記集電電極と同じ極性を有する上記電極端子に接続されている
ことを特徴とする二次電池。
【請求項3】
請求項1において、
上記積層素子には、積層方向に延びる貫通孔が形成され、
上記遮断機構は、上記貫通孔の内部に配置されて導電性を有するピンと、上記積層素子の一方の積層最外面に固着して設けられ、上記ピンの一端に溶接されている第1導電部材と、上記積層素子の他方の積層最外面に固着して設けられ、上記ピンの他端に溶接されている第2導電部材とを備え、
上記第1導電部材は、上記負極シート又は上記正極シートに導通している集電電極に接続され、
上記第2導電部材は、上記第1導電部材が接続されている上記集電電極と同じ極性を有する上記電極端子に接続されている
ことを特徴とする二次電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−73260(P2006−73260A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−252894(P2004−252894)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】