説明

二液硬化型エポキシ樹脂接着剤組成物

【課題】発泡ポリスチレンのようなスキン層を有する発泡性熱可塑性樹脂に、有機溶剤を使用せずに、サンディング等による前処理も必要とせずに、良好な接着性を有する二液硬化型エポキシ樹脂接着剤組成物を提供することである。
【解決手段】エポキシ樹脂(a)を主成分とする主剤(A)とアミン系硬化剤(b)を主成分とする硬化剤(B)とからなる二液硬化型エポキシ樹脂接着剤組成物であって、主剤にエポキシ当量が250以下の、一般式(I)で表されるモノグリシジルエーテル化合物および/または一般式(II)で表されるモノグリシジルエステル化合物を含有することを特徴とする二液硬化型エポキシ樹脂接着剤組成物により、スキン層を有する発泡熱可塑性樹脂のスキン層表面に剛性を有するシート等を強固に接着し、耐久性を有する発泡樹脂加工製品を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱性を有する樹脂発泡体、特にスキン層を有する発泡熱可塑性樹脂、例えば、スキン層を有する発泡ポリスチレンに対して、優れた接着強度を有する二液硬化型エポキシ樹脂接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂よりなる樹脂発泡体は、その成形性、加工性、断熱性、軽量性等の特性を生かして様々な分野に利用されている。その中でも製造コスト面からポリスチレンが特に好ましく用いられている。しかし、ポリスチレン発泡体のような熱可塑性樹脂発泡体は耐衝撃性、耐熱性、耐候性等の耐久性が悪いため、表面に剛性の高い材料からなるシートを接着剤により積層させる必要がある。しかしながら、表面がスキン層である熱可塑性樹脂の発泡体、特にポリスチレン発泡体は、表面が平滑、きめ細いスキン層である上に、ポリスチレンでは、それ自体が反応性官能基、極性基を有していないため、かかるスキン層には充分な接着強度を得ることが困難であった。
このような問題点を解決する方法としては、(1)接着剤に有機溶剤を添加してスキン層を溶解させる方法、また、(2)発泡ポリスチレンのスキン層をサンディング等によりあらす方法等がある。
しかし、(1)の方法では、接着層に残った溶剤成分により、接着強度が低下し、揮発する溶剤による環境問題もある。また、(2)の方法では、サンディング工程が煩雑であり、量産が難しく、サンディングにより粉塵が飛散する等の問題点がある。
【0003】
特許文献として下記があり、この文献には、シート状に押出して発泡させ、得られたポリオレフィン発泡シートの一方のスキン層を除去して、多数の凹部からなる多孔層を形成し、この層に被着体を接着剤により固定する方法が開示されている。この方法では、接着剤は特に限定されず、発泡シートの凹部にしみ込んだ接着剤により被着体を強固に固着している。しかし、スキン層に被着体を直接接着することは記載していない。
【特許文献1】特開2001−205760号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、有機溶剤を使用せずに、サンディング等による前処理工程が不要で、スキン層を有する熱可塑性樹脂発泡体、例えば、スキン層を有する発泡ポリスチレン、特にこれらのスキン層そのものに対して、良好な接着性と接着強度を有する二液硬化型エポキシ樹脂接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、エポキシ樹脂を主成分とする主剤とアミン系硬化剤を主成分とする硬化剤、およびモノグリシジルエーテル化合物またはモノグリシジルエステル化合物の少なくとも一種を使用することにより、サンディング等による前処理工程が不要で、溶剤を使用せずに、発泡ポリスチレンのような、スキン層を有する熱可塑性樹脂発泡体に対して良好な接着性と接着強度を有する二液硬化型エポキシ樹脂接着剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、エポキシ樹脂(a)を主成分とする主剤(A)とアミン系硬化剤(b)を主成分とする硬化剤(B)とからなる二液硬化型エポキシ樹脂接着剤組成物であって、主剤(A)に下記一般式(I)で表されるモノグリシジルエーテル化合物および/または一般式(II)で表されるモノグリシジルエステル化合物
【0006】
【化3】

(式中、Rはアルキル基、アルケニル基またはアリール基を表す。)
【0007】
【化4】

(式中、Rはアルキル基、アルケニル基またはアリール基を表す。)
【0008】
を含有することを特徴とする二液硬化型エポキシ樹脂接着剤組成物であり、好ましくは、一般式(I)で表されるモノグリシジルエーテル化合物および/または一般式(II)で表されるモノグリシジルエステル化合物をエポキシ樹脂(a)100重量部に対し、20重量部〜70重量部含有する。さらに好ましくは、上記モノグリシジルエーテル化合物および/またはモノグリシジルエステル化合物のエポキシ当量が、250以下である二液硬化型エポキシ樹脂接着剤組成物であり、スキン層を有する発泡熱可塑性樹脂、特にスキン層を有する発泡ポリスチレンに対して優れた接着強度を有する二液硬化型エポキシ樹脂接着剤組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の二液硬化型エポキシ樹脂接着剤組成物は、断熱性を有し、スキン層を有する発泡熱可塑性樹脂、特に発泡ポリスチレンに対して優れた接着強度を示し、樹脂発泡体のスキン層表面を、溶剤の塗布やサンディング等によりあらすことなく、スキン層を有する発泡樹脂表面に本発明の接着剤組成物を直接適用し、剛性を有するシート等の被接着体を積層、接着させ、耐衝撃性、耐熱性、耐候性等の耐久性を優れた発泡樹脂加工品を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の二液硬化型エポキシ接着剤組成物は、エポキシ樹脂(a)を主成分とする主剤(A)、アミン系硬化剤(b)を主成分とする硬化剤(B)を含有し、さらに、一般式(I)で表されるモノグリシジルエーテル化合物および/または一般式(II)で表されるモノグリシジルエステル化合物を含有することを特徴とする。
また、本発明においてスキン層を有する発泡熱可塑性樹脂とは、熱可塑性樹脂発泡体の表面にスキン層を有する発泡樹脂であり、本発明の接着剤組成物は、このスキン層自体に優れた接着効果を奏する組成物である。
【0011】
本発明において、一般式(I)で表されるモノグリシジルエーテル化合物および一般式(II)で表されるモノグリシジルエステル化合物は、エピクロルヒドリン、およびアルコール類、フェノール類または有機カルボン酸等から常法により容易に得られるものである。
一般式(I)で表されるモノグリシジルエーテル化合物としては、例えば、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、トリルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル等があげられる。
また、一般式(II)で表されるモノグリシジルエステル化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸、2−エチルヘキシル酸等の一価カルボン酸のグリシジルエステル化合物等があげられる。
【0012】
本発明に用いられるエポキシ樹脂(a)は特に限定されず、公知のエポキシ樹脂を用いることができる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノール化合物とジシクロペンタジエンの共重合体を原料とするエポキシ樹脂、ジグリシジルレゾルシノール、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、トリスグリシジルアミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール、テトラグリシジルキシレンジアミン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビニルシクロヘキセンジエポキシドなどの脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。また、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等のグリセリン誘導体(二量体、三量体)からなるグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ樹脂を用いることもできる。中でも、ビスフェノールA型およびビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂は、1種単独でも2種以上を併用することもできる。
【0013】
本発明の接着剤組成物における主剤(A)において、エポキシ樹脂(a)100重量部に対して、一般式(I)および/または一般式(II)のモノグリシジル化合物の使用量が20〜70重量部の範囲であり、好ましくは、30〜60重量部の範囲である。20重量部未満では接着強度が不十分であり、70重量部を超えると耐湿熱接着性が低下する。
一般式(I)および/または一般式(II)のモノグリシジル化合物のエポキシ当量は、250以下であり、好ましくは、200以下である。250を超えると接着強度が不十分である。モノグリシジル化合物は、1種単独でも2種以上を併用することもできる。
【0014】
硬化剤(B)は、アミン系硬化剤(b)を主成分とする硬化剤である。アミン系硬化剤(b)の具体例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,3,6−トリスアミノメチルヘキサン等のポリアミン;トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン等のポリメチレンジアミン;メンセンジアミン(MDA)、イソフォロンジアミン(IPDA)、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、N−アミノエチルピペラジン(N−AEP)、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、ノルボルナンジアミン(NBDA)等の環状脂肪族ポリアミン;メタキシリレンジアミン(MXDA)等の芳香環を含む脂肪族ポリアミン;メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジアミノジエチルジフェニルメタン等の芳香族ポリアミン等、およびこれらの誘導体が挙げられる。
【0015】
また、アミンアダクト(ポリアミンエポキシ樹脂アダクト)、ポリアミン−エチレンオキシドアダクト、ポリアミン−プロピレンオキシドアダクト、シアノエチル化ポリアミン、脂肪族ポリアミンとケトンとの反応物であるケチミン;直鎖状ジアミン、テトラメチルグアニジン、トリエタノールアミン、ピペリジン、ピリジン、ベンジルジメチルアミン、ピコリン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルヘキシルアミン、ジメチルアミノフェノール、ジメチルアミノp−クレゾール、N,N’−ジメチルピペラジン、ピペリジン、1,4−ジアザジシクロ〔2.2.2〕オクタン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1.8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−1等の第二アミン類または第三アミン類など、あるいはダイマー酸とジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミンとを反応させてなる液体ポリアミドアミン等が挙げられる。
【0016】
上記アミン系硬化剤(b)は、主剤(A)に含まれる上記エポキシ樹脂(a)およびモノグリシジル化合物のエポキシ基1当量に対し、活性水素当量が好ましくは0.8〜1.5当量となる範囲で使用される。該活性水素当量が0.8当量未満では未硬化のエポキシ樹脂が残存するおそれがあり、1.5当量を超えると活性水素が残存するため、硬化物の耐水性が低下するおそれがある。
【0017】
さらに、本発明の組成物は、必要に応じて、硬化促進剤を配合することもできる。硬化促進剤としては、亜リン酸エステル類、三級アミン類等が挙げられ、硬化促進剤は、1種単独でも2種以上を併用することもできる。中でも、取り扱いが容易な点で、三級アミン類を用いるのが好ましい。
亜リン酸エステル類としては、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2、4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールホスファイトポリマー等のトリエステル体が挙げられる。また、これらのトリエステル体を部分的に加水分解したジ−、あるいはモノエステル体も用いることができる。
三級アミンとしては、ジメチルアミノメチルフェノール、ベンジルメチルアミン、トリエチルアミン、トリスジメチルアミノメチルフェノール、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−1、1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン等が挙げられる。
【0018】
さらに、本発明の組成物には、必要に応じて、各種の添加剤を配合することができる。例えば、充填剤、可塑剤、揺変剤、顔料、老化防止剤、酸化防止剤、難燃剤、接着性付与剤等が挙げられる。
充填剤としては、各種の形状のものを使用することができ、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;けいそう土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;カーボンブラックなどの有機または無機充填剤が挙げられ、またこれらの脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステル処理物等が挙げられる。
【0019】
可塑剤としては、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート;アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられる。
酸化防止剤としては、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。
老化防止剤としては、ヒンダードフェノール系等の化合物が挙げられる。
顔料としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料、アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等の有機顔料等が挙げられる。
【0020】
揺変剤としては、コロイダルシリカ、有機ベントナイト、水素添加ヒマシ油等が挙げられる。
接着性付与剤としては、公知のシランカップリング剤、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。難燃剤としては、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテル等が挙げられる。
本発明の組成物の製造方法は特に限定されないが、エポキシ樹脂(a)、モノグリシジルエーテル化合物および/またはモノグリシジルエステル化合物、必要に応じて、その他の添加剤を、窒素気流下にディゾルバー等の撹拌装置を用いて充分混練し、均一に分散させて主剤(A)を調製し、使用時にアミン系硬化剤(b)を主成分とする硬化剤(B)を混合すればよい。
【0021】
本発明の2液硬化型接着剤組成物は、熱可塑性樹脂の発泡体の接着剤として適用できる。熱可塑性樹脂とは、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS等の汎用の樹脂が挙げられる。好ましく用いられるのは、これらの樹脂の発泡体の成形過程において生じる、発泡体表面の平滑で、緻密な皮膜層であるスキン層を有する発泡熱可塑性樹脂、さらに好ましくは樹脂自体が反応性基や極性基を有しない発泡ポリスチレン樹脂に適用できる。これらの発泡ポリスチレン樹脂のスキン層表面に例えば、剛直性を有する各種シート等を接着する接着剤組成物として用いられる。
【0022】
スキン層を有する発泡熱可塑性樹脂とシート等の被接着物との接着に用いる際の本発明の2液硬化型接着剤組成物は、上記の主剤(A)及び硬化剤(B)を含有する接着剤組成物を、スキン層を有する発泡熱可塑性樹脂および/または被接着物に所望の量を塗布し、常法により接着処理すればよく、特にその方法は限定されない。
本発明の接着剤組成物による接着処理は、従来、スキン層を有する発泡体樹脂の接着の方法として適用されているスキン層の有機溶剤による処理やサンディング等の工程を必要とせず、スキン層を有する発泡熱可塑性樹脂と剛性を有するようなシート等を強固に接着することができる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例および比較例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の部は重量部を表す。
なお、実施例および比較例において、初期接着性および耐湿熱接着性は次を表す。
初期接着性 :得られた接着剤組成物を、直ちに発泡ポリスチレン(PS)の両面に0.03g/cmの割合で塗布した。図1に示すように、接着剤組成物を塗布したPSの両面にコロナ放電処理したポリプロピレンシート(PP)を貼り付けて接着試験片を作成した。接着試験片に30g/cmの荷重をかけ、23℃/24hr養生した後、接着試験片を30×100mmの大きさに切り出し、接着層に30mm切り込みを入れ90゜に折り曲げて垂直方向へ引っ張って剥離接着強度を測定した。
耐湿熱接着性:上記で作成した試験片を80℃、85%RHで1000時間処理し、剥離接着強度を測定した。
【0024】
実施例及び比較例で用いた主剤(A−1〜A−11)および硬化剤(B)の調製は、次の通りである。
製造例1
エポキシ樹脂jER828(ジャパンエポキシレジン(株)製:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190)100部、炭酸カルシウム140部およびブチルグリシジルエーテル40部をディゾルバーに装入し、窒素気流下に室温で均一に分散させて主剤(A−1)を調製した。
製造例2
製造例1でブチルグリシジルエーテルをアリルグリシジルエーテルに置き換えた以外は製造例1と同様な方法で主剤(A−2)を調製した。
製造例3
製造例1でブチルグリシジルエーテルを2−エチルヘキシルグリシジルエーテルに置き換えた以外は製造例1と同様な方法で主剤(A−3)を調製した。
製造例4
製造例1でブチルグリシジルエーテルをメタクリル酸グリシジルエステルに置き換えた以外は製造例1と同様な方法で主剤(A−4)を調製した。
製造例5
製造例1でブチルグリシジルエーテル40部を30部に置き換えた以外は製造例1と同様な方法で主剤(A−5)を調製した。
製造例6
製造例1でブチルグリシジルエーテル40部を60部に置き換えた以外は製造例1と同様な方法で主剤(A−6)を調製した。
製造例7
製造例1でブチルグリシジルエーテルをED−502((株)ADEKA製:炭素数が12〜13の高級アルコールのグリシジルエーテル、エポキシ当量320)に置き換えた以外は製造例1と同様な方法で主剤(A−7)を調製した。
製造例8
製造例1でブチルグリシジルエーテル40部をメチルエチルケトン40部に置き換えた以外は製造例1同様な方法で主剤(A−8)を調製した。
製造例9
製造例1でブチルグリシジルエーテル40部をリモネン40部に置き換えた以外は製造例1同様な方法で主剤(A−9)を調製した。
製造例10
製造例1でブチルグリシジルエーテル40部を10部に置き換えた以外は製造例1同様な方法で主剤(A−10)を調製した。
製造例11
製造例1でブチルグリシジルエーテル40部を80部に置き換えた以外は製造例1同様な方法で主剤(A−11)を調製した。
製造例12
アンカマイド507(PTIジャパン社製:ポリアミドアミン、活性水素当量65)35部とK−54(B.T.R.ジャパン社製:ジメチルアミノメチルフェノール)5部を均一に混合して硬化剤B(活性水素当量74.3)を調製した。
【0025】
実施例1
製造例1で得た主剤(A−1)280部に、製造例12で得た硬化剤Bを63部混合して接着剤組成物とした。得られた接着剤組成物を図1に示す様に接着試験片を作成し、23℃で24時間放置後、初期接着性および耐湿熱接着性を調べた。結果を表1に示す。
実施例2
実施例1で主剤(A−1)を(A−2)、硬化剤B63部を66部に置き換えた以外は実施例1と同様な方法で初期接着性および耐久接着性を調べた。結果を表1に示す。
実施例3
実施例1で主剤(A−1)を(A−3)、硬化剤B63部を56部に置き換えた以外は実施例1と同様な方法で初期接着性および耐久接着性を調べた。結果を表1に示す。
実施例4
実施例1で主剤(A−1)を(A−4)、硬化剤B63部を61部に置き換えた以外は実施例1と同様な方法で初期接着性および耐久接着性を調べた。結果を表1に示す。
実施例5
実施例1で主剤(A−1)280部を(A−5)270部、硬化剤B63部を57部に置き換えた以外は実施例1と同様な方法で初期接着性および耐久接着性を調べた。結果を表1に示す。
実施例6
実施例1で主剤(A−1)280部を(A−6)300部、硬化剤B63部を74部に置き換えた以外は実施例1と同様な方法で初期接着性および耐久接着性を調べた。結果を表1に示す。
【0026】
比較例1
実施例1で主剤(A−1)を(A−7)、硬化剤B63部を49部に置き換えた以外は実施例1と同様な方法で初期接着性および耐久接着性を調べた。結果を表2に示す。
比較例2
実施例1で主剤(A−1)を(A−8)、硬化剤B63部を40部に置き換えた以外は実施例1と同様な方法で初期接着性および耐久接着性を調べた。結果を表2に示す。
比較例3
実施例1で主剤(A−1)を(A−9)、硬化剤B63部を40部に置き換えた以外は実施例1と同様な方法で初期接着性および耐久接着性を調べた。結果を表2に示す。
比較例4
実施例1で主剤(A−1)280部を(A−10)250部、硬化剤B63部を46部に置き換えた以外は実施例1と同様な方法で初期接着性および耐久接着性を調べた。結果を表2に示す。
比較例5
実施例1で主剤(A−1)280部を(A−11)320部、硬化剤B63部を86部に置き換えた以外は実施例1と同様な方法で初期接着性および耐久接着性を調べた。結果を表2に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の二液硬化型エポキシ樹脂接着剤組成物は、スキン層を有する発泡熱可塑性樹脂、特にスキン層を有し、樹脂自体が反応性の官能基、極性基を有していないスキン層を有する発泡ポリスチレン、に対して良好な初期接着性および耐湿熱接着性を示すので、スキン層の表面処理をせずに接着が可能である。また、有機溶剤を含有しないため環境問題に対しても有効である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例および比較例で初期接着性および耐湿熱接着性を測定するための接着試験片と剥離試験の方法を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1 接着試験片
2 ポリプロピレンシート
3 発泡ポリスチレン
4 接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(a)を主成分とする主剤(A)とアミン系硬化剤(b)を主成分とする硬化剤(B)とからなる二液硬化型エポキシ樹脂接着剤組成物であって、主剤(A)に下記一般式(I)で表されるモノグリシジルエーテル化合物および/または一般式(II)で表されるモノグリシジルエステル化合物を含有することを特徴とする二液硬化型エポキシ樹脂接着剤組成物。
【化1】

(式中、Rはアルキル基、アルケニル基またはアリール基を表す。)
【化2】

(式中、Rはアルキル基、アルケニル基またはアリール基を表す。)
【請求項2】
エポキシ樹脂(a)100重量部に対し、一般式(I)で表されるモノグリシジルエーテル化合物および/または一般式(II)で表されるモノグリシジルエステル化合物が20重量部〜70重量部である請求項1に記載の二液硬化型エポキシ樹脂接着剤組成物。
【請求項3】
一般式(I)で表されるモノグリシジルエーテル化合物および/または一般式(II)で表されるモノグリシジルエステル化合物のエポキシ当量が250以下である請求項1に記載の二液硬化型エポキシ樹脂接着剤組成物。
【請求項4】
スキン層を有する発泡熱可塑性樹脂用接着剤である請求項1〜3に記載の二液硬化型エポキシ樹脂接着剤組成物。
【請求項5】
スキン層を有する発泡熱可塑性樹脂が、スキン層を有する発泡ポリスチレンである請求項4記載の二液硬化型エポキシ樹脂接着剤組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2008−94988(P2008−94988A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−279487(P2006−279487)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(594081744)日本合成化工株式会社 (4)
【Fターム(参考)】