説明

二置換フタラジンヘッジホッグ経路アンタゴニスト

本発明は、癌の治療において有用な新規1,4−二置換フタラジンヘッジホッグ経路アンタゴニストを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッジホッグ経路アンタゴニスト、より具体的には、新規1,4−二置換フタラジン、及びその治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッジホッグ(Hh)シグナル伝達経路は、細胞の分化及び増殖を導くことにより、胚のパターン形成及び成体組織の維持において重要な役割を果たしている。ソニックヘッジホッグ(Shh)、インディアンヘッジホッグ(Ihh)、及びデザートヘッジホッグ(Dhh)を含むヘッジホッグ(Hh)タンパク質ファミリーは、自己触媒的切断及びコレステロールのアミノ末端ペプチドへのカップリングを含む翻訳後修飾を受けて、シグナル伝達活性を有する断片を形成する分泌糖タンパク質である。Hhは、12回膜貫通型タンパク質Ptch(Ptch1及びPtch2)に結合して、Smoothened(Smo)のPtch介在性抑制を軽減する。Smoの活性化は、Gli転写因子(Gli1、Gli2、及びGli3)を安定化させ、且つ細胞増殖、細胞生存、血管形成、及び侵入に関与するGli依存性遺伝子を発現させる一連の細胞内事象を誘発する。
【0003】
Hhシグナル伝達は、近年、Shhシグナル伝達の異常な活性化が、種々の腫瘍、例えば、膵癌、髄芽腫、基底細胞癌、小細胞肺癌、及び前立腺癌の形成を導くという発見に基づいて、大きな注目を集めている。特許文献1は、ヘッジホッグアンタゴニストであると主張されている特定の1,4−二置換フタラジン化合物を開示している。同様に、特許文献2は、ヘッジホッグ経路関連病態の診断及び治療に関連する特定の1,4−二置換フタラジン化合物を開示している。特許文献3は、不適切なヘッジホッグシグナル伝達により推進される全ての腫瘍に対する治療の選択肢であると主張されている特定の1,4−二置換フタラジン化合物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005033288号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2008110611号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2009002469号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
強力なヘッジホッグ経路阻害剤、特に所望の毒物学的プロファイルを有するものが、依然として必要とされている。本発明は、この経路の強力なアンタゴニストである新規1,4−二置換フタラジンを提供する。本発明の特定の化合物は、可逆的な及び/又は作用機序に基づいた不可逆的なCYP3A4阻害能に関する望ましい薬物−薬物相互作用及び関連する安全性プロファイルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、式I:
【化1】

(式中、Rは、水素又はメチルであり;Rは、水素又はメチルであり;R、R、R、R又はRは、独立して、水素、フルオロ、クロロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、メチルスルホニル、又はトリフルオロメチルスルホニルであるが、但し、R、R、R、R及びRのうちの少なくとも3つは水素である)の化合物又はその薬学的に許容できる塩を提供する。
【0007】
また、本発明は薬学的に許容できる賦形剤、担体、又は希釈剤と共に、式Iの化合物又はその薬学的に許容できる塩を含む医薬組成物を提供する。
【0008】
また、本発明は、哺乳動物における脳癌、基底細胞癌、食道癌、胃癌(stomach cancer)、胃癌(gastric cancer)、膵癌、胆道癌、前立腺癌、乳癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、大腸癌、肝癌、腎癌、黒色腫、頭頸部癌、中皮腫、軟部組織肉腫、骨肉腫、白血病及び睾丸癌から成る群から選択される癌を治療する方法であって、前記哺乳動物に有効量の式Iの化合物又はその薬学的に許容できる塩を投与することを含む方法を提供する。
【0009】
更に、本発明は、治療において使用するための式Iの化合物又はその薬学的に許容できる塩を提供する。また、本発明は、癌の治療において使用するための式Iの化合物又はその薬学的に許容できる塩を提供する。具体的には、前記癌は、脳癌、基底細胞癌、食道癌、胃癌(stomach cancer)、胃癌(gastric cancer)、膵癌、胆道癌、前立腺癌、乳癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、大腸癌、肝癌、腎癌、黒色腫、頭頸部癌、中皮腫、軟部組織肉腫、骨肉腫、白血病及び睾丸癌から成る群から選択される。
【0010】
また、本発明は、治療における式Iの化合物又はその薬学的に許容できる塩の使用を提供する。更に、本発明は、癌を治療する医薬を製造するための、式Iの化合物又はその薬学的に許容できる塩の使用を提供する。具体的には、前記癌は、脳癌、基底細胞癌、食道癌、胃癌(stomach cancer)、胃癌(gastric cancer)、膵癌、胆道癌、前立腺癌、乳癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、大腸癌、肝癌、腎癌、黒色腫、頭頸部癌、中皮腫、軟部組織肉腫、骨肉腫、白血病及び睾丸癌から成る群から選択される。
【0011】
更に、本発明は、脳癌、基底細胞癌、食道癌、胃癌(stomach cancer)、胃癌(gastric cancer)、膵癌、胆道癌、前立腺癌、乳癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、大腸癌、肝癌、腎癌、黒色腫、頭頸部癌、中皮腫、軟部組織肉腫、骨肉腫、白血病及び睾丸癌から成る群から選択される癌を治療するための活性成分として、式Iの化合物又はその薬学的に許容できる塩を含む医薬組成物を提供する。
【0012】
具体的な式Iの化合物又はその薬学的に許容できる塩は、以下のものである:
(a)Rが、メチルである;
(b)Rが、メチルである;
(c)R、R、R、R又はRが、独立して、水素、フルオロ、クロロ、トリフルオロメチル、又はメチルスルホニルである;
(d)R、R、R、R又はRが、独立して、水素、フルオロ、又はトリフルオロメチルである;
(e)R、R、R、R及びRのうちの少なくとも2つが、独立して、フルオロ、クロロ、トリフルオロメチル、又はメチルスルホニルであるが、但し、R及びRが同時に水素であることはない;
(f)R、R、R、R及びRのうちの少なくとも2つが、独立して、フルオロ又はトリフルオロメチルであるが、但し、R及びRが同時に水素であることはない;
(g)R、R及びRが、水素である;
(h)R及びRが、独立して、フルオロ、クロロ、トリフルオロメチル、又はメチルスルホニルであり;且つR、R及びRが、水素である;
(i)R及びRが、独立して、フルオロ又はトリフルオロメチルであり;且つR、R及びRが、水素である;
(j)Rが、メチルであり;且つRが、メチルである;
(k)Rが、メチルであり;Rが、メチルであり;且つR、R、R、R又はRが、独立して、水素、フルオロ、クロロ、トリフルオロメチル、又はメチルスルホニルである;
(l)Rが、メチルであり;Rが、メチルであり;且つR、R、R、R又はRが、独立して、水素、フルオロ、又はトリフルオロメチルである;
(m)Rが、メチルであり;Rが、メチルであり;且つR、R、R、R及びRのうちの少なくとも2つが、独立して、フルオロ、クロロ、トリフルオロメチル、又はメチルスルホニルであるが、但し、R及びRが同時に水素であることはない;
(n)Rが、メチルであり;Rが、メチルであり;R、R、R、R及びRのうちの少なくとも2つが、独立して、フルオロ又はトリフルオロメチルであるが、但し、R及びRが同時に水素であることはない;
(o)Rが、メチルであり;Rが、メチルであり;且つR、R及びRが、水素である;
(p)Rが、メチルであり;Rが、メチルであり;R及びRが、独立して、フルオロ、クロロ、トリフルオロメチル、又はメチルスルホニルであり;且つR、R及びRが、水素である;並びに
(q)Rが、メチルであり;Rが、メチルであり;R及びRが、独立して、フルオロ又はトリフルオロメチルであり;且つR、R及びRが、水素である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記で使用されたとき、及び本発明の明細書全体にわたって、特に指示されない限り、以下の用語は、以下の意味を有すると理解されるものとする。
【0014】
「薬学的に許容できる担体、希釈剤、又は賦形剤」は、哺乳動物、例えばヒトに生理活性物質を送達するために当技術分野において一般的に許容されている媒体である。
【0015】
「薬学的に許容できる塩」は、本発明の化合物の比較的無毒な無機及び有機塩を指す。
【0016】
「治療上有効量」又は「有効量」は、研究者、獣医師、医師、又は他の臨床医によって求められている、組織、系、動物、哺乳動物若しくはヒトの生物学的若しくは医学的応答、又は前記組織、系、動物、哺乳動物若しくはヒトに対する望ましい治療効果を誘発する本発明の式Iの化合物若しくはその薬学的に許容できる塩、又は本発明の式Iの化合物若しくはその薬学的に許容できる塩を含有する医薬組成物の量を意味する。
【0017】
用語「治療」、「治療する」、「治療している」等は、障害の進行の減速又は逆行を含むことを意味する。また、これらの用語は、たとえ実際に障害や状態を排除しなくても、障害又は状態の進行それ自体を減速又は逆行させなくても、障害又は状態のうちの1つ以上の病徴を軽減、回復、減弱、排除、又は緩和することを含む。
【0018】
この開示全体にわたって使用される標準的な命名法の下では、指定の側鎖の末端部を先ず記載し、続いて結合点に向かって隣接する官能基を記載する。例えば、メチルスルホニル置換基はCH−SO−に相当する。
【0019】
本発明の化合物は、例えば、多くの無機及び有機酸と反応して、薬学的に許容できる酸付加塩を形成することができる。かかる薬学的に許容できる塩、及びそれを調製する慣用的な方法は、当該技術分野において周知である。例えば、P.Stahlら,HANDBOOK OF PHARMACEUTICAL SALTS:PROPERTIES,SELECTION AND USE,(VCHA/Wiley−VCH,2002);S.M.Bergeら,「Pharmaceutical Salts」,Journal of Pharmaceutical Sciences,Vol66,No.1,1977年,1月を参照。
【0020】
本発明の化合物は、好ましくは、薬学的に許容できる担体、希釈剤又は賦形剤を用いて医薬組成物として製剤化され、様々な経路によって投与される。好ましくは、かかる組成物は、経口又は静脈内投与用である。かかる医薬組成物及びそれを調製する方法は、当該技術分野において周知である。例えば、REMINGTON:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY(A.Gennaroら編,第19版,Mack PublishingCo.,1995)を参照。
【0021】
実際に投与される化合物は、治療される症状、選択される投与経路、投与される実際の化合物(1又は複数)、個々の患者の年齢、体重及び応答、並びに患者の病徴の重篤度を含む関連状況に基づいて、医師により決定される。1日当たりの投与量は、通常、約0.1〜約10mg/kg体重の範囲内に入る。ある場合には、前述の範囲の下限を下回る投与量レベルであっても十分な量を超えている場合もあり、他の場合には、更に多い投与量が用いられる場合もある。
【0022】
式Iの化合物、又はその塩は、当該技術分野において既知である様々な手順、並びに以下のスキーム、調製例、及び実施例に記載される手順により調製することができる。式Iの化合物又はその薬学的に許容できる塩を調製するために、記載される経路の各々についての特定の合成工程を様々な方法で組み合わせてもよい。
【0023】
置換基は、特に指示しない限り、既に定義した通りである。試薬及び出発物質は、概して、当業者が容易に入手可能なものである。他の試薬及び出発物質は、有機化学及び複素環化学の標準的な技術、既知の構造的に類似している化合物の合成に類似する技術、並びに任意の新規手順を含む以下の調製例及び実施例に記載される手順によって作製することができる。以下の調製例及び実施例の命名は、ChemDraw(登録商標)Ultra10.0におけるStruct=Name命名機能を使用して行う。
【0024】
本明細書で使用するとき、以下の用語は、指定される意味を有する:「EtO」は、ジエチルエーテルを指し;「DMF」は、ジメチルホルムアミドを指し;「DMSO」は、ジメチルスルホキシドを指し;「DMAC」は、N,N−ジメチルアセトアミドを指し;「NMP」はN−メチルピロリジンを指し;「MeOH」は、メタノールを指し;「boc」又は「t−boc」は、tert−ブトキシカルボニルを指し;「IC50」は、ある剤が可能である最大阻害反応の50%を生じさせる前記剤の濃度を指す。
【0025】
【化2】

【0026】
式Iの化合物は、スキームに図示されている反応に従って調製することができる。
【0027】
工程1では、芳香族求核置換(SNAr)においてジハロ置換フタラジン(1)(X=Cl又はBr)と4−アミノbocで保護されたピペリジン(2)とを反応させて式(3)のハロピペリジルフタラジンを得る。この反応は、有機又は無機塩基の存在下において、DMF、DMAC又はNMP等の二極性の非プロトン性溶媒中にて進行する。好ましくは、前記反応は50〜140℃の温度で、炭酸カリウムの存在下において、NMP中にて起こる。
【0028】
工程2では、式(3)のハロピペリジルフタラジンとピラゾールボロン酸エステル又は酸(4)とのスズキクロスカップリング反応が生じる。例えば、ハロピペリジルフタラジン(3)は、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等のパラジウム触媒、及び重炭酸ナトリウム等の無機塩基の存在下で、1−メチル−1H−ピラゾール−5−ボロン酸ピナコールエステルと組み合わせられる。前記反応はトルエン/エタノール/水の溶媒混合物中にて進行して、式(5)のピラゾリルフタラジンが得られる。
【0029】
工程3は、式(6)のアミノピペリジニルフタラジンを得るためにジエチルエーテル又はジオキサン中HCl等の酸性条件下で行われる単なるboc脱保護である。窒素及び酸素保護基を導入及び除去する方法は、当該技術分野において周知である(例えば、Greene及びWuts,ProtectiveGroups in Organic Synthesis,第3版,John Wiley and Sons,New York,(1999年)を参照)。
【0030】
工程4では、式(6)のアミノピペリジニルフタラジンをアシル化して、式Iのピペリジニルアミドを得る。1つの方法では、トリエチルアミン又はジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基の存在下で、ジクロロメタン等の不活性溶媒中にて、アミンを適切に置換された塩化ベンゾイルと反応させる。或いは、適切に置換された安息香酸を使用して、アミドを形成させる。アミンとの反応に続いて、ペンタフルオロフェニルジフェニルホスフィン酸塩を使用して、活性エステルを形成させる。前記反応は、トリエチルアミン又はジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基の存在下において、約−10〜100℃の温度で、DMF/DMSOの溶媒混合物中にて進行する。
【0031】
調製例1
tert−ブチル1−(4−クロロフタラジン−1−イル)ピペリジン−4−イル(メチル)カルバメート
【化3】

N−メチルピロリジン(200mL)中炭酸カリウム(21.23g、153.6mmol)、1,4−ジクロロフタラジン(26g、128mmol)及びメチル−ピペリジン−4−イルカルバミン酸tert−ブチルエステル(30.01g、134.4mmol)の混合物を80℃で一晩加熱する。前記反応混合物を水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出し、NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮する。ジエチルエーテルを添加し、生じた固体(出発物質の不純物に由来する4−クロロフタラジン−1−オール)を濾し取る。濾液を濃縮する。生じる残渣をフラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)によって精製して、白色の固体(17.66g、37%)として表題化合物を得る。ES/MS m/z(37Cl)377.0(M+1)。
【0032】
調製例2
tert−ブチル1−(4−クロロフタラジン−1−イル)ピペリジン−4−イルカルバメート
【化4】

ピペリジン−4−イル−カルバミン酸tert−ブチルエステルを使用して、調製例1に記載された手順に本質的に従って表題化合物を調製する。反応混合物を冷却し、水(500mL)に注ぐ。酢酸エチルで抽出し、水で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、減圧下で溶媒を除去して、黄色の固体(36g、97%)として表題化合物を得る。ES/MS m/z 363.0(M+1)。
【0033】
調製例3
tert−ブチルメチル(1−(4−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)フタラジン−1−イル)ピペリジン−4−イル)カルバメート
【化5】

トルエン(50mL)、エタノール(17mL)及び水(17mL)の混合物を含むフラスコに、炭酸ナトリウム(3.82g、36.09mmol)、tert−ブチル1−(4−クロロフタラジン−1−イル)ピペリジン−4−イル(メチル)カルバメート(6.8g、18.04mmol)及び1−メチル−1H−ピラゾール−5−ボロン酸ピナコールエステル(5.63g、27.1mmol)を入れる。窒素ガスで10分間混合物を脱気する。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.4g、0.35mmol)を添加し、混合物を74℃で一晩加熱する。混合物を周囲温度に冷却し、ジクロロメタンで希釈する。有機部分をブラインで洗浄し、NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮する。生じる残渣をフラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル:MeOH中2M NH=20:5:1)によって精製して、黄色の発泡体(5.33g、70%)として表題化合物を得る。ES/MS m/z 423.2(M+1)。
【0034】
tert−ブチルメチル(1−(4−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)フタラジン−1−イル)ピペリジン−4−イル)カルバメートを調製するための代替手順:調製例4〜6
【0035】
調製例4
1,4−ジブロモフタラジン
【化6】

圧力管に五臭化リン(24.5g、54.1mmol)及び2,3−ジヒドロ−フタラジン−1,4−ジオン(5.00g、30.8mmol)を充填する。前記管を密閉し、140℃で6〜7時間加熱する。一晩冷却する。圧力を作用させて前記管を慎重に開ける。固体を削り取り(Chisel out)、氷水へ注ぐ。氷水中で撹拌し、生じる固体を吸引濾過によって回収する。真空オーブンにおいて乾燥させて、最終生成物(8.31g、93%)を得る。ES/MS(79Br,81Br)m/z 288.8(M+)。Can.J.Chem.1965,43,2708を参照されたい。
【0036】
調製例5
tert−ブチル1−(4−ブロモフタラジン−1−イル)ピペリジン−4−イル(メチル)カルバメート
【化7】

1,4−ジブロモフタラジン(0.70g、2.38mmol)、N−メチルピロリドン(7.0mL)、炭酸カリウム(395mg、2.86mmol)及びメチル−ピペリジン−4−イル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(532mg、2.38mmol)を合わせる。80℃で一晩加熱する。冷却し、水に注ぐ。固体を回収し、周囲温度で一晩真空オーブンにおいて乾燥させて、最終生成物(0.96g、95%)を得る。ES/MS m/z(81Br)421.0(M+1)。
【0037】
調製例6
tert−ブチルメチル(1−(4−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)フタラジン−1−イル)ピペリジン−4−イル)カルバメート
【化8】

反応管にtert−ブチル1−(4−ブロモフタラジン−1−イル)ピペリジン−4−イル(メチル)カルバメート(500mg、1.2mmol)、1−メチル−1H−ピラゾール−5−ボロン酸ピナコールエステル(370mg、1.8mmol)、炭酸ナトリウム(252mg、2.4mmol)、トルエン(3.75mL)、エタノール(1.25mL)及び水(1.25mL)を充填する。10分間窒素で反応混合物を脱気する。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(137.1mg、118.7μmol)を添加する。更に10分間、反応混合物を窒素でバブリングする。反応バイアルに蓋をし、90℃で一晩加熱する。反応物を冷却し、シリカゲルパッドを通して濾過し、5%のMeOH:CHClで溶出する。この画分を減圧下で濃縮する。生じる残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(MeOH中の2%の2N NH:CHCl)を用いて精製して、最終生成物(345.6mg、69%)を得る。ES/MS m/z 423.2(M+1)。
【0038】
調製例7
tert−ブチル1−(4−(1H−ピラゾール−5−イル)フタラジン−1−イル)ピペリジン−4−イル(メチル)カルバメート
【化9】

tert−ブチル1−(4−クロロフタラジン−1−イル)ピペリジン−4−イル(メチル)カルバメート及び1H−ピラゾール−3−ボロン酸ピナコールエステルを使用して、調製例3に記載された手順に本質的に従って表題化合物を調製し、580mg(67%)を得る。ES/MS m/z 409.2(M+1)。
【0039】
調製例8
tert−ブチル1−(4−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)フタラジン−1−イル)ピペリジン−4−イルカルバメート
【化10】

tert−ブチル1−(4−クロロフタラジン−1−イル)ピペリジン−4−イルカルバメートを使用して、調製例3に記載された手順に本質的に従って表題化合物を調製し、5.92g(94%)を得る。ES/MS m/z 308.8(M)。
【0040】
調製例9
N−メチル−1−(4−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)フタラジン−1−イル)ピペリジン−4−アミン
【化11】

tert−ブチルメチル(1−(4−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)フタラジン−1−イル)ピペリジン−4−イル)カルバメート(7.77g、18.39mmol)をジクロロメタン(100mL)に溶解させる。過剰量のジエチルエーテル(20mL、80mmol)中1M塩化水素を溶液に添加し、2時間周囲温度で撹拌する。減圧下で濃縮する。生じる残渣をフラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン:MeOH中2M NH=10:1)によって精製して、黄色の発泡体(5.83g、98%)として表題化合物を得る。ES/MS m/z 323.2(M+1)。
【0041】
ジオキサン中4M HClを使用して適切にt−Boc保護されているアミンを脱保護することを除いて、調製例9に記載された手順に本質的に従って以下の表中の中間体を調製する。
【表1】

【実施例】
【0042】
実施例1
4−フルオロ−N−メチル−N−(1−(4−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)フタラジン−1−イル)ピペリジン−4−イル)−2−(トリフルオロメチル)ベンズアミド
【化12】

N−メチル−1−(4−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)フタラジン−1−イル)ピペリジン−4−アミン(2.8g、8.68mmol)及びトリエチルアミン(3.36mL、26.1mmol)のCHCl(30mL)溶液を4−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)ベンゾイル塩化物(2.14mL、10.42mmol)で処理する。周囲温度で3時間撹拌する。減圧下で反応混合物を濃縮する。生じる残渣をフラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル:MeOH中2MのNH=20:5:1)によって精製して、黄色の発泡体として遊離塩基(3.83g、86%)を得る。ES/MS m/z 513.0(M+1)。
【0043】
実施例1a
4−フルオロ−N−メチル−N−(1−(4−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)フタラジン−1−イル)ピペリジン−4−イル)−2−(トリフルオロメチル)ベンズアミド塩酸塩
4−フルオロ−N−メチル−N−(1−(4−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)フタラジン−1−イル)ピペリジン−4−イル)−2−(トリフルオロメチル)ベンズアミド(7.13g、13.91mmol)をジクロロメタン(100mL)に溶解させ、過剰量のジエチルエーテル(30mL、30mmol)中1N HClを添加する。減圧下で溶媒を除去して、表題化合物(7.05g、92%)を得る。ES/MS m/z 513.0(M+1)。NMRは、アミド回転異性体の2:1混合物であることを示した。多数の回転異性体;H NMR(400MHz,DMSO−d):δ 8.34(m,1H),8.26(m,2H),7.95(m,1H),7.75(m,1H),7.64(m,2H),7.55(m,1H),6.72(d,1H,J=2Hz),5.15(br,1H),4.71(m,1H),4.22(m,2H),3.84(s,3H),3.48(m,2H),2.65(s,3H),2.19(m,2H),1.89(m,2H)。少数の回転異性体;H NMR(400MHz,DMSO−d):δ 8.27(m,1H),8.24(m,2H),7.94(m,1H),7.73(m,1H),7.63(m,3H),6.70(d,1H,J=2Hz),5.15(br,1H),4.71(m,1H),4.07(m,2H),3.81(s,3H),3.16(m,2H),2.92(s,3H),1.90(m,2H),1.62(m 2H)。
【0044】
適切なピペリジニルフタラジン及び置換塩化ベンゾイルを用いて、実施例1及び1aに記載された手順に本質的に従って、以下の表中のアミドを調製する。
【表2−1】

【表2−2】

【表2−3】

【0045】
実施例14
4−クロロ−N−メチル−N−(1−(4−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)フタラジン−1−イル)ピペリジン−4−イル)−2−(メチルスルホニル)ベンズアミド塩酸塩
【化13】

N−メチル−1−(4−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)フタラジン−1−イル)ピペリジン−4−アミン(100mg、0.31mmol)、4−クロロ−2−(メチルスルホニル)安息香酸(87mg、0.37mmol)、及びジイソプロピルエチルアミン(0.26mL、1.5mmol)を60℃でDMF:DMSO=4:1(2mL)に溶解させる。0℃に冷却し、DMF:DMSO=1:1(1mL)中のペンタフルオロフェニルジフェニルホスフィン酸塩(250mg、0.65mmol)を溶液に添加する。混合物を60℃で一晩撹拌する。反応混合物を周囲温度に冷却し、CHClで希釈し、ブラインで洗浄し、NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮する。生じる残渣をフラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル:MeOH中2M NH=20:5:1)によって精製して、生成物を得る。単離された生成物に過剰量のジエチルエーテル(1mL、10mmol)中1N HClを添加し、溶媒を除去して、表題化合物(150mg、84%)を得る。ES/MS m/z 539.0(M+1)。
【0046】
適切なピペリジニルフタラジン及び置換安息香酸を用いて、実施例14に記載された手順に本質的に従って、以下の表中のアミドを調製する。
【表3−1】

【表3−2】

【0047】
ヘッジホッグは、以下の癌の生存因子として意味づけられてきた:基底細胞癌;上部消化管癌(食道、胃、膵臓及び胆管);前立腺癌;乳癌;小細胞肺癌;非小細胞肺癌;B細胞リンパ腫;多発性骨髄腫;胃癌;卵巣癌;結腸直腸癌;肝臓癌;黒色腫;頭頸部癌;中皮腫;軟部組織肉腫;骨肉腫;白血病;睾丸癌;腎臓癌;及び脳腫瘍。
【0048】
ヘッジホッグ経路の要素は、癌治療の潜在的創薬標的であると主張されてきた。髄芽腫腫瘍から確立されたDaoy細胞株(ATCC、HTB−186)は、Hhリガンドに反応する。これら細胞を体外から添加されたShh条件培地で処理すると、Hhシグナル伝達経路が活性化され、Gli1の発現が増加する。イキシア(Veratrum californicum)から単離されたアルカロイドであるシクロパミンは、弱いヘッジホッグアンタゴニストであり、Shh刺激に応答してGli1の発現を抑制することが示されている。最近の研究によれば、シクロパミンが培養髄芽腫細胞及び同種移植片の増殖を阻害することが示唆されている。このDaoy細胞モデル系を用いて、ヘッジホッグシグナル伝達経路の強力な阻害剤を同定することができる。本発明の化合物は、ヘッジホッグアンタゴニストであるため、前述の種類の腫瘍の治療に好適である。
【0049】
生物活性IC50の測定:Daoy細胞におけるGli1の阻害を測定するための機能アッセイ
以下のアッセイプロトコル及びその結果は、本発明の化合物及び方法の有用性並びに有効性を更に示す。機能アッセイは、本発明の化合物がShhシグナル伝達阻害能を示すことを支持する。以下のアッセイで用いられるリガンド、溶媒、及び試薬は全て、商業的供給元から容易に入手可能であるか、又は当業者により容易に調製され得る。
【0050】
生物活性は、Daoy神経細胞性癌細胞における機能アッセイを用いて測定され、bDNA(分岐デオキシリボ核酸)アッセイ系(Panomics,Inc.,Fremont,CA)を用いて、Gli1リボ核酸の量を測定する。Gliは、最初に神経膠芽腫細胞株で発見され、Shhシグナル伝達により活性化されるジンクフィンガータンパク質をコードする。最大反応は、24時間、条件培地(組換えShhを安定的に発現するヒト胚腎臓、HEK293細胞)でDaoy細胞におけるGli1転写を誘導し、次いで刺激されたGli1転写量を測定することにより得られる。最小反応は、24時間、条件培地(組換えShhを安定的に発現するヒト胚腎臓、HEK293細胞)で刺激されたDaoy細胞中にて、対照化合物で阻害されたGli1転写量である。
【0051】
bDNAアッセイ系は、標的リボ核酸(転写物)を増幅させるために、分岐鎖DNA技術を利用する。前記技術は、標的転写物と複合体としてハイブリダイズして、ハイブリダイゼーションシグナルを増幅させる、標的転写物の特異性を決定する3種の合成ハイブリッド短Gli1特異的cDNAプローブ[キャプチャエキステンダ(CE)、ラベルエキステンダ(LE)、及びブロッカ(BL)]を用いる。増幅工程中、化学発光基質を添加することにより、発光を用いる検出が可能になる。
【0052】
0.1nM 非必須アミノ酸及び1mM ピルビン酸ナトリウムを含む10%ウシ胎仔血清(FBS)を加えた最小必須培地(MEM)を含有するDaoy増殖培地中にて、組織培養用T225−フラスコ内で、コンフルエントになるまでDaoy細胞を増殖させる。トリプシンエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を用いてT−225フラスコから細胞を取り出し、遠心分離し、培地に再懸濁させ、次いで計数する。
【0053】
次いで、Daoy細胞を、50,000細胞/ウェルで、Costar96ウェル透明組織培養プレート内の増殖培地に播種し、37℃、5%二酸化炭素(CO)下で一晩インキュベートする。細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で1回洗浄し、次いで100μLのShh条件培地(Shh−CM)を添加して、Gli1発現量を刺激する。対照増殖培地(0.1% FBS/DMEM(ダルベッコ変法イーグル培地))を用いて最大刺激に達するまでShh−CMを希釈する。次いで、Shh−CMで処理したDaoy細胞を、約1μM〜0.1nMの範囲の様々な濃度のヘッジホッグ阻害剤で処理する。37℃、5%CO下で24時間、試験化合物をインキュベートする。
【0054】
Gli1転写物の測定は、製造業者(Panomics,Inc.)により記載されている通り、Quantigene2.0 Gli1アッセイを用いて実施する。プロテイナーゼKを含む希釈溶解混合物(DLM)緩衝液を調製する。化合物と共に24時間インキュベートした後、細胞をPBSで1回洗浄し、180μLのDLMを前記細胞に添加する。溶解緩衝液を含む細胞プレートをシールし、55℃で30〜45分間放置する。次いで、得られる細胞溶解物を5回すりつぶす。製造業者の指示に従ってプローブをDLMで希釈し、次いで20μLのワーキングプローブセットを、80μLのDaoy溶解物と共にbDNAアッセイプレートに添加することにより、Gli1プローブを含むワーキングプローブセットを作製する。プレートをシールし、55℃で一晩インキュベートする。次いで、製造業者の指示に従ってbDNAプレートを処理する。発光を検出するPerkin Elmer Envisionリーダーを用いてプレートを読み取ることにより、シグナルを定量する。発光シグナルは、サンプル中に存在する標的転写物の量に正比例する。
【0055】
機能アッセイから得られた発光シグナルデータを用いて、インビトロアッセイのIC50を算出する。データは、最大対照値(Shh−CMで処理したDaoy細胞)及び最小対照値(Shh−CM、及び抑制濃度の対照化合物である1μMのN−(3−(1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)−4−クロロフェニル)−3,5−ジメトキシベンズアミドで処理したDaoy細胞)に基づいて算出される。4つのパラメーターのロジスティック曲線適合を用いて、ActivityBaseソフトウェアプログラムバージョン5.3、式205(Assay Guidance Manual Version 5.0,2008,Eli Lilly and Company及びNIH Chemical Genomics Center)を用いてIC50値を求める。
【0056】
記載されたプロトコルに従うと、本明細書で例証される化合物は、40nM未満のIC50を示す。例えば、実施例1aの化合物は、上記アッセイにおいて約2.4nMのIC50を有し、標準誤差は0.5(n=7、幾何平均及び幾何学標準誤差として計算される)である。これらの結果は、本発明の化合物が強力なヘッジホッグアンタゴニストであり、したがって、抗癌剤として有用であるという証拠を提供する。
【0057】
CYP3A4阻害アッセイ
ヒト肝臓ミクロソーム調製物を試験阻害剤(最終濃度0.05mg/mLのタンパク質、100mM NaPO中10μM阻害剤、pH7.4緩衝液)に添加し、混合することによって、インキュベーションサンプルを調製する。37℃で約5分間、サンプルをプレインキュベートする。プレインキュベート期間後、酵素基質としてNADPH及びミダゾラムを含有する溶液(最終濃度1mM NADPH、5μMミダゾラム)を添加して反応を開始させる。NADPH溶液を添加した後、約37℃で3分間サンプルをインキュベートする。インキュベート期間後、50μLのメタノール(及びクロマトグラフィー用の内部標準)を添加することにより前記反応をクエンチし、前記サンプルを十分混合する。反応をクエンチした後、約5℃で15分間、約4000rpmにて混合物を遠心分離し、LC/MS分析によって分析する。
【0058】
短い従来のC18カラムにて勾配溶出法でHPLC/MSを使用してサンプルを分析する(ロード用移動相−1%の酢酸を含む95/5 Milli−Q(登録商標)HO/メタノール(v/v)、移動相B−1%の酢酸を含む80/20 Milli−Q(登録商標)HO/メタノール(v/v)、移動相C−1%の酢酸を含む5/95 Milli−Q(登録商標)HO/メタノール(v/v)、すすぎ用移動相−75/25 Milli−Q(登録商標)HO/アセトニトリル(v/v))。
【0059】
陽性条件下でターボイオンスプレーを用いて、質量342.1(1−OH−ミダゾラム)及び346.1(α−ヒドロキシミダゾラム−d4内部標準)で選択イオン検出(SIM)用の質量スペクトル分析機にサンプルを注入する。10μMの濃度の阻害剤の存在下における1−OHミダゾラムの形成阻害率(%)としてデータを報告する。
【0060】
記載されたプロトコルに従うと、実施例1aは13.5%のCYP3A4阻害を示す。低い可逆的CYP3A4阻害能を示す実施例1a等の化合物は、患者における投薬量を変化させたり、投薬を中止する必要性を生じさせたりし得る他の医薬との負の相互作用の可能性が低い。したがって、かかる化合物は望ましく、改善された安全性プロファイルを有する。
【0061】
インビトロにおけるCYP3Aの機序に基づく阻害
この相互作用の速度定数kinact及びKを得るために、CYP3Aの機序に基づく阻害剤として実施例1aの化合物を評価する。(Kinactは不活性酵素複合体形成の最高速度定数である。Kは最大不活性化濃度の半分の濃度である)。2段階のインビトロインキュベーション(阻害剤に酵素を不活化させる不活化反応、及びプローブとしてミダゾラムの1’−ヒドロキシル化を使用して、ミクロゾームタンパク質の残存活性を評価する活性アッセイ)において、前記化合物をヒト肝ミクロソーム(CYP3A4活性が高発現するヒト肝ミクロソームのプール)と共にインキュベートする。
【0062】
1mM NADPH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸、還元型)が存在しない又は存在する状態における、100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)、1mM EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を含有する不活性化反応物(最終体積100μL)と0.75μM〜24μMの濃度の試験化合物との反応物を、トリプリケートで37℃にて3分間プレインキュベートする。高CYP3A活性ミクロソームプール(CellzDirect、Austin TX、0.5mg/mL)を添加することにより、不活化反応を開始させる。複合の時点(0、2.5、5、10及び30分)で、不活化反応混合物の5μLのアリコートを採取し、1mM NADPH及びミダゾラム(100μM)を含有する予熱(37℃)CYP3A4活性アッセイインキュベーション系(95μL)で1/20に希釈する。この活性アッセイ混合物を、最終タンパク濃度0.025mg/mL及び1/20の阻害剤濃度で、更に1分間インキュベート(37℃)した後、50μLのMeOHを添加することにより反応を停止させる。サンプルを混合し、変性タンパク質を10分間4000rpmで遠心分離することにより除去する。
【0063】
Phenomenex Synergi 4μヒドロ−RPカラムにて勾配溶出法でLC/MS/MSによって、1’−OHミダゾラムの形成を分析する。(移動相A−5mM酢酸アンモニウムを含む95/5 Milli−Q(登録商標)HO/メタノール(v/v)、移動相B−5mM酢酸アンモニウムを含む5/95 Milli−Q(登録商標)HO/メタノール(v/v)、ニードル洗浄用溶媒A−90/10 アセトニトリル/Milli−Q(登録商標)HO(v/v)中0.4%のトリフルオロ酢酸、ニードル洗浄用溶媒B−50/50 Milli−Q(登録商標)HO/メタノール(v/v))。陽性条件下でターボイオンスプレーを用いて、質量342.0(1−OH−ミダゾラム)及び347.0(α−ヒドロキシミダゾラム−d3内部標準)で選択反応検出のためにSciex API 4000にサンプルを注入する。
【0064】
ミクロソームインキュベーション物における1’−OHミダゾラムの形成減少(CYP3A4活性)を、各試験化合物濃度についてプレインキュベーション時間の関数として、残存CYP3A4活性の対数パーセントとしてプロットする。データに以下の等式を適合させるためにWinNonlin Professionalを使用して、不活化の動力学的パラメーターを決定する:
等式1:阻害率(t)=100(t=0)×e(−λt)
(式中、λは、以下の通り定義される
等式2:λ=(kinact×I)/(K+I))。
【0065】
実施例1aの化合物の活性減少は、11%〜22%までの範囲であり、濃度依存性ではない。したがって、等式2からkinact及びKの値を決定することはできない。これらのデータに基づいて、実施例1aの化合物はCYP3A4の機序に基づく阻害剤ではない。機序に基づく不可逆的なCYP3A4阻害能の低い又は示さない実施例1a等の化合物は、患者における投薬量を変化させたり、投薬を中止する必要性を生じさせたりし得る他の医薬との負の相互作用の可能性が低い。したがって、かかる化合物は望ましく、改善された安全性プロファイルを有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

(式中、
は、水素又はメチルであり;
は、水素又はメチルであり;
、R、R、R又はRは、独立して、水素、フルオロ、クロロ、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、メチルスルホニル、又はトリフルオロメチルスルホニルであるが、但し、R、R、R、R及びRのうちの少なくとも3つは水素である)
の化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項2】
がメチルである、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項3】
がメチルである、請求項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項4】
、R、R、R及びRが、独立して、水素、フルオロ、クロロ、トリフルオロメチル、又はメチルスルホニルである請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項5】
、R、R、R及びRが、独立して、水素、フルオロ、又はトリフルオロメチルである請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項6】
、R及びRが水素である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項7】
4−フルオロ−N−メチル−N−(1−(4−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)フタラジン−1−イル)ピペリジン−4−イル)−2−(トリフルオロメチル)ベンズアミドである請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項8】
4−フルオロ−N−メチル−N−(1−(4−(1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)フタラジン−1−イル)ピペリジン−4−イル)−2−(トリフルオロメチル)ベンズアミド塩酸塩である請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
薬学的に許容できる担体、希釈剤、又は賦形剤と共に、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩を含む医薬組成物。
【請求項10】
哺乳動物における脳癌、基底細胞癌、食道癌、胃癌(stomach cancer)、胃癌(gastric cancer)、膵癌、胆道癌、前立腺癌、乳癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、大腸癌、肝癌、腎癌、黒色腫、頭頸部癌、中皮腫、軟部組織肉腫、骨肉腫、白血病及び睾丸癌から成る群から選択される癌を治療する方法であって、前記哺乳動物に有効量の請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項11】
治療において使用するための請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項12】
癌の治療において使用するための請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩。

【公表番号】特表2012−530705(P2012−530705A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516178(P2012−516178)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/038568
【国際公開番号】WO2010/147917
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】