説明

二軸型蒸気タービン

【課題】風損による高圧タービンの温度上昇を抑えることができる二軸型蒸気タービンを提供することにある。
【解決手段】蒸気タービンは、高圧タービン1と、中圧タービン2と、低圧タービン3とから構成され、中圧起動方式である。クラッチ11は、高圧タービン1の軸と中圧タービン2の軸とを締結・解放する。中圧タービン2の軸と低圧タービン3の軸は、カップリング4により連結される。中圧起動中の負荷上昇時に、クラッチ11を解放して、中圧タービン2に蒸気を供給して中圧タービンを起動する。中圧タービン2の回転数が定格回転数到達後、クラッチ11を締結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービンに係り、特に、二軸型蒸気タービンにおける風損対策の好適な二軸型蒸気タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
一軸コンバインドサイクルにおいて、起動時の蒸気タービン風損を低減するために、風損によって低圧タービンが熱せられる回転数を予め予測し、その回転数時に低圧タービンに温度の低い低圧蒸気を流入させ、冷却する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、蒸気タービン以外の分野においても、発電機とその格納容器に凹凸を設けることにより、熱伝達効率を増加させ、冷却する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
上記特許文献1,2に記載のものは、いずれも風損による熱を低減するものではなく、冷却を実施することによって熱を減らすという構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−94846号公報
【特許文献2】特開2004−357498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
火力プラントでは、プラント起動時間の短縮、またはボイラ配管材質に安価なものを採用するために、中圧起動プラントが採用されている。
【0007】
中圧起動プラントでは、起動時には、過熱蒸気系統を通過した蒸気が、高圧タービンバイパス弁を通過後、ボイラの再熱蒸気系統を通過し、中圧タービン、低圧タービンへと流れる。また、この時は低圧タービンバイパス弁も開いており、低圧タービンをバイパスして復水器へ蒸気が流れる。蒸気が復水し、ヒータを経由して再びボイラへと蒸気が戻る。この蒸気の流れにより、ボイラの過熱、再熱系統の両方が暖気できることから、ボイラの空焚きを防ぎ、起動時間を短縮することができる。
【0008】
しかし、中圧起動方式は、負荷上昇のトランスファリージョン時、高圧タービンバイパス弁低圧タービンバイパス弁が閉まり、主蒸気止弁及び加減弁が開く。また、高圧タービン内の内圧を上げるため、逆止弁及びベンチレーション弁が閉じた状態となることから、一時的に高圧タービン内部に高温、かつ、高圧蒸気が停滞する。この時、高圧タービン内部に停滞した蒸気により、タービン内部が高温になり、風損が発生する。風損により、高圧タービンが暖められ、タービン部品が高温になる場合があることから、特別な設計・制御方法を考慮する必要がある。
【0009】
本発明の目的は、風損による高圧タービンの温度上昇を抑えることができる二軸型蒸気タービンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、風損は回転数の3乗に比例することから、回転数事体を風損発生部位で低くすることにより、風損による発生熱を抑える構造とする。そのために、具体的には、以下の構成としている。
【0011】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、高圧タービンと、中圧タービンと、低圧タービンとを有する中圧起動方式の蒸気タービンであって、前記高圧タービンの軸と前記中圧タービンの軸とを締結・解放可能なクラッチと、前記中圧タービンの軸と前記低圧タービンの軸とを連結するカップリングとを備えるようにしたものである。
かかる構成により、風損による高圧タービンの温度上昇を抑えることができるものとなる。
【0012】
(2)上記(1)において、好ましくは、中圧起動中の負荷上昇時に、前記クラッチを解放して、前記中圧タービンに蒸気を供給して前記中圧タービンを起動し、前記中圧タービンの回転数が定格回転数到達後、前記クラッチを締結するようにしたものである。
【0013】
(3)上記(1)において、好ましくは、中圧起動中の負荷上昇時に、前記クラッチを解放して、前記中圧タービンに蒸気を供給して前記中圧タービンを起動し、起動後、負荷を取る状態となったトランスファリージョン時、前記中圧タービンと低圧タービン軸の回転数と、前記高圧タービンの回転数が一致した後、前記クラッチを締結するようにしたものである。
【0014】
(4)上記(3)において、好ましくは、前記トランスファリージョン時は、前記中圧タービンと前記低圧タービンが定格回転数まで達した状態から、前記中圧と低圧タービンで定格以下の負荷を取るようにしたものである。
【0015】
(5)上記(3)において、好ましくは、前記トランスファリージョン時の前記高圧タービンは、前記中圧タービン及び前記低圧タービンより低い回転数で回転するようにしたものである。
【0016】
(6)上記(3)において、好ましくは、前記トランスファリージョンの終了時、前記高圧タービンの回転数を定格回転数まで上げ、前記高圧タービンと、前記中圧及び低圧タービンをクラッチで繋ぐようにしたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、風損による高圧タービンの温度上昇を抑えることができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態による二軸型蒸気タービンの構成を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施形態による二軸型蒸気タービンを用いたプラントの蒸気系統の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
最初に、図1を用いて、本発明の一実施形態による二軸型蒸気タービンの構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による二軸型蒸気タービンの構成を示す概略図である。
【0020】
高圧タービン1は、中圧タービン2や低圧タービン3とは、別軸の構成となっている。高圧タービン1と、中圧タービン2とは、クラッチ11により締結され、また、解放される。中圧タービン2と低圧タービン3とは、カップリング4により連結される。
【0021】
また、高圧タービン1の軸は、軸受5,6により回転可能に支持される。中圧タービン2の軸は、軸受7,8により回転可能に支持される。低圧タービン3の軸は、軸受9,10により回転可能に支持される。
【0022】
クラッチ11を締結することで、高圧タービン1と、中圧タービン2及び低圧タービン3の軸を最終的に一つの軸とすることができる。低圧タービン3の軸は発電機に連結されている。
【0023】
次に、図2を用いて、本発明の一実施形態による二軸型蒸気タービンを用いたプラントの蒸気系統について説明する。
図2は、本発明の一実施形態による二軸型蒸気タービンを用いたプラントの蒸気系統の概略図である。
【0024】
中圧起動方式を採用したプラントの蒸気の流れについて説明する。起動時には、蒸気は、再熱蒸気加減弁22を経由して中圧タービン2に流し、中圧タービン2の排気から出る蒸気が低圧タービン3に流れる。また、低圧バイパス弁23も蒸気が通過し復水器15に流れ、復水器15、ヒータ系統16を経由して水に戻り、ボイラ12へ再び給水される。ボイラ過熱系統18を通過した蒸気は、高圧タービンバイパス弁19を通過し、ボイラ再熱蒸気系統17を通過し、再熱蒸気加減弁22を経由して再び中圧タービン2に蒸気が流れる。
【0025】
中圧起動方式により、ボイラ12の両蒸気系統17,18を通過し、ボイラが温められることから、起動時間が短縮される。
【0026】
また、負荷上昇時のトランスファリージョンにおいては、高圧タービンバイパス弁19、低圧タービンバイパス弁23が閉まり、主蒸気止弁20、主蒸気加減弁21が開く。この時、ベンチレーション弁24、及び逆止弁25が、高圧タービン1の内圧を上げるために、一時的に閉止する。これにより、高圧タービン1の内部に蒸気が停滞し、風損が発生する。
【0027】
風損を抑制するために、図1に示したように、高圧タービン1と、中圧タービン2及び低圧タービン3とは別軸で構成されていることから、高圧タービン1と中圧タービン2及び低圧タービン3は別回転数で回すことが可能となる。高圧タービン1へは暖気のみに必要な蒸気が流れ、低回転数で温めることが可能となる。中圧タービン2と低圧タービン3の軸回転数が定格3000RPM,もしくは3600RPMまで到達した時に、負荷を取り始める。負荷を取り始めた後、高圧タービン1の回転数を上げていき、定格回転数まで達したとき、クラッチ11により、高圧タービン1と、中圧タービン2及び低圧タービン3の軸を繋ぐ構造とする。軸を繋ぎ、最終的に定格負荷まで上げる構造とする。
【0028】
制御装置100は、中圧タービン2の回転数情報Rmと、高圧タービン1の回転数情報Rhに基づいて、高圧タービンバイパス弁19,主蒸気止弁20,主蒸気加減弁21,再熱蒸気加減弁22,低圧バイパス弁23,ベンチレーション弁24,逆止弁25の開閉を制御する。また、制御装置100は、クラッチ11の締結・解放を制御する。
【0029】
クラッチ11は、一般的にガスタービン、蒸気タービンの一軸コンバインドサイクルなどで用いられるクラッチ構造を採用する。かかるクラッチの一例は、例えば、特開2005−54583号公報に示されている。
【0030】
以上説明したように、本実施形態では、中圧及び低圧タービンと、高圧タービンを別軸にすることにより、起動中の負荷上昇時において、高圧タービンと中圧、低圧タービン軸が別回転数で回転することにより、風損による高圧タービンの温度上昇を抑えることができる。
【符号の説明】
【0031】
1…高圧タービン
2…中圧タービン
3…低圧タービン
4…カップリング
5,6,7,8,9,10…軸受
11…クラッチ
12…ボイラ
15…復水器
16…ヒータ系統
17…ボイラ再熱蒸気系統
18…ボイラ過熱系統
19…高圧タービンバイパス弁
20…主蒸気止弁
21…主蒸気加減弁
22…再熱蒸気加減弁
23…低圧バイパス弁
24…ベンチレーション弁
25…逆止弁
100…制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧タービンと、中圧タービンと、低圧タービンとを有する中圧起動方式の蒸気タービンであって、
前記高圧タービンの軸と前記中圧タービンの軸とを締結・解放可能なクラッチと、
前記中圧タービンの軸と前記低圧タービンの軸とを連結するカップリングとを備えることを特徴とする二軸型蒸気タービン。
【請求項2】
請求項1記載の二軸型蒸気タービンにおいて、
中圧起動中の負荷上昇時に、前記クラッチを解放して、前記中圧タービンに蒸気を供給して前記中圧タービンを起動し、
前記中圧タービンの回転数が定格回転数到達後、前記クラッチを締結することを特徴とする二軸型蒸気タービン。
【請求項3】
請求項1記載の二軸型蒸気タービンにおいて、
中圧起動中の負荷上昇時に、前記クラッチを解放して、前記中圧タービンに蒸気を供給して前記中圧タービンを起動し、
起動後、負荷を取る状態となったトランスファリージョン時、前記中圧タービンと低圧タービン軸の回転数と、前記高圧タービンの回転数が一致した後、前記クラッチを締結することを特徴とする二軸型蒸気タービン。
【請求項4】
請求項3記載の二軸型蒸気タービンにおいて、
前記トランスファリージョン時は、前記中圧タービンと前記低圧タービンが定格回転数まで達した状態から、前記中圧と低圧タービンで定格以下の負荷を取ることを特徴とする二軸型蒸気タービン。
【請求項5】
請求項3記載の二軸型蒸気タービンにおいて、
前記トランスファリージョン時の前記高圧タービンは、前記中圧タービン及び前記低圧タービンより低い回転数で回転することを特徴とする二軸型蒸気タービン。
【請求項6】
請求項3記載の二軸型蒸気タービンにおいて、
前記トランスファリージョンの終了時、前記高圧タービンの回転数を定格回転数まで上げ、前記高圧タービンと、前記中圧及び低圧タービンをクラッチで繋ぐことを特徴とする二軸型蒸気タービン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate