説明

二軸延伸ポリエステルフィルムロール

【課題】
コンデンサ製造工程において熱負け、マージン精度等の工程問題を解決し、生産性よく加工することを可能とするポリエステルフィルムロールを提供する。
【解決手段】
フィルムをコアに巻いてなるポリエステルフィルムロールであり、原反巻芯から全長に対して、5%から25%長間の内層硬度h1が90以上、30%から80%長間の内層硬度h2が95以下で、85%から95%長の内層硬度h3が下記(1)式を満たし、さらに空気含有量が5%以上25%以下であることを特徴とする二軸延伸ポリエステルフィルムロール。
0≦(h1−h3)≦5

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルフィルムロールに関するものであり、さらに詳しくは、極めて薄いフィルムを用いて、特に蒸着コンデンサを作製する場合に、蒸着工程でのフィルムの巻ズレや熱負け、スリット工程でのフィルム切れ、マージン精度などのトラブルを防止することができ、さらに、生産性と加工性の優れたポリエステルフィルムロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、有機高分子フィルムを誘電体として用いたコンデンサは広く用いられている。特許文献1などに例示されるように、特に、ポリエステルフィルムと金属箔を交互に巻回する、あるいは、フィルムに金属を蒸着して電極とし、これを巻回または積層することによりコンデンサを得る技術が知られている。
【0003】
近年、電子機器等の発達、小型化に伴い、特許文献2に例示されるように、電解コンデンサに匹敵するような大容量のフィルムコンデンサを安価に得る要求が大きくなっている。フィルムコンデンサの大容量化は、すなわち、誘電体であるフィルムの薄膜化および大面積化であり、従来から、より薄いフィルムをより高い生産性で製造し、より高い加工性でコンデンサを加工する技術が必須となってきている。しかし、ベースフィルムの薄膜化、長尺化に伴い、コンデンサ製造工程で特に真空蒸着下において、巻出し時の表層巻きズレや、走行するフィルムが配置されたローラー間で蛇行したり、熱負けによりフィルムが切れたり等の種々の問題を引き起こし、最終製品の歩留まりを著しく阻害している。蒸着フィルムではマージン(非蒸着部分)といわれる蒸着されない部分で仕切られた蒸着レーンが幾条にも形成されており、特に近年、このマージン部分の幅が狭くなってきており、この部分の精度が蒸着品の品質レベルを決定するに至っている。加工上の大きな問題としては、熱負け、マージン(非蒸着部分)振れが挙げられる。これは、熱負けは蒸着時走行フィルムがクーリングキャンより浮き、熱を過剰に受けるためと考えられ、マージン振れは巻出時に原反の走行の不安定になるためと考えられる。ともに原反巻出し時に加工装置内で張力バランスが崩れるための現象と考えられ、ひどくなると蒸着加工が出来なくなる。これらのマージンは、テープや、オイルによって部分的に蒸着を遮って形成するものである。特にフィルムの両面に蒸着する際、蒸発した金属などがフィルムに付着する場所で被蒸着フィルム及びマージン形成材料が変動していなければ出来上がりのマージン精度(フィルム表裏の寸法)は変動しないはずであるが、上述のごとき高精度のマージンを形成するためには、高精度の送り出しが要求され、巻出しのフィルムの微小な変動が問題となる。このマージン精度を達成することは、次の工程でスリットし、その後巻回または、積層してコンデンサを製造した時に設計通りの容量を持ち、かつ正常な電極を形成させるために、設計通りの精度の蒸着幅とマージン幅をもったリールを巻き上げるために大変重要である。これらの問題を解決するため、特許文献3,4,5にはフィルムを巻き上げるときの巻き硬度を規定することが開示されている。しかしこれらの方法でも、近年の高精度の送り出しが要求されるコンデンサ製造工程において熱負けによるフィルム切れ、マージン精度等の工程問題を十分に解決するには至っていなかった。
【特許文献1】特開昭63−194318号公報
【特許文献2】特開平02−88972号公報
【特許文献3】特開平11−59986号公報
【特許文献4】特開平02−88972号公報
【特許文献5】特開昭61−136746号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような問題に着目し、コンデンサ製造工程において熱負けによるフィルム切れ、マージン精度等の工程問題を解決し、生産性よく加工することが可能なポリエステルフィルムロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記した本発明の課題は、フィルムをコアに巻いてなるポリエステルフィルムロールであり、原反巻芯から全長に対して、5%から25%長間の内層硬度h1が90以上、30%から80%長間の内層硬度h2が95以下で、85%から95%長の内層硬度h3が下記(1)式を満たし、さらに空気含有量が5%以上25%以下であることを特徴とする二軸延伸ポリエステルフィルムロールによって達成できる。
【0006】
0≦(h1−h3)≦5 ・・・(1)
【発明の効果】
【0007】
本発明により、コンデンサ製造工程において熱負けによるフィルム切れ、マージン精度等の工程問題を解決し、生産性よく加工することが可能なポリエステルフィルムロールを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、フィルムをコアに巻いてなるポリエステルフィルムロールであり、原反巻芯から全長に対して、5%から25%長間の内層硬度h1が90以上、30%から80%長間の内層硬度h2が95以下で、85%から95%長の内層硬度h3が下記(1)式を満たし、さらに空気含有量が5%以上25%以下であることを特徴とする二軸延伸ポリエステルフィルムロールである。
【0009】
0≦(h1−h3)≦5 ・・・(1)
h1,h2およびh1−h3が上記範囲内であると、蒸着加工時の熱負け状態、スリット加工時のマージン状態とも良好であるために好ましい。h1が90未満,h2が95を越え、あるいはh1とh3の関係が(1)式を外れると、巻出−巻取間の張力バランスを崩し、走行フィルムの搬送が不安定となり、熱負け、マージン振れの欠点となり易く、また、蒸着後のスリット工程においてもフィルム切れが発生し易くなり好ましくない。とくに(1)式の範囲を外れると原反表層〜巻芯全長に掛けて良好な蒸着加工時が出来ず、特に表層側で強い熱負けとなり好ましくない。
好ましくは、h1は92〜100、h2は80〜94、さらに、(h1−h3)の値は0〜3である。
【0010】
また、巻きズレ防止、マージン精度の観点から、空気含有率は5%以上25%以下であり、好ましくは、8%以上20%以下である。空気含有率が5%より小さいとフィルムロール表層硬度が高くなり、硬く巻かれることで巻出し時にフィルム層間でブロッキングが起きフィルム切れの原因となるために好ましくない。また、25%を超える場合は、フィルム層間の空気量が多くなり巻出搬送が不安定となり熱負け、マージン振れが発生し易くなるために好ましくない。
【0011】
本発明のポリエステルフィルムロールは、幅方向におけるロール直径の最大値と最小値の差R(μm)が、重量法によるフィルム厚みt1(μm)とフィルム長さL(m)に対して、式(2)を満足することが好ましい。
【0012】
R≦(0.0025×t1+0.0035)×L ・・・(2)
幅方向におけるロール直径の最大値と最小値の差Rの値が小さいほど、真空蒸着後の蒸着膜の付いたフィルムを巻き上げたフィルムロールの巻き外観が良好である。R>(0.0025×t1+0.0035)×Lであると、真空蒸着時、フィルムロール表層での巻きズレや、マージン精度の悪化がおこり、さらに、蒸着後の蒸着膜の付いたフィルムをロール状に巻き上げた時にロールにきつい長手方向へのシワが多数入るので、そのシワ部分が欠点となりやすいために好ましくない。また、蒸着後のスリット工程においてもフィルム切れが発生し易くなりやすいために好ましくない。
さらに、ロールの両端の直径の差H(μm)が、厚みt1(μm)とフィルム長さL(m)に対して、式(3)を満足することが好ましい。
【0013】
H≦(0.0020×t1+0.0030)×L ・・・(3)
ロールの両端の直径の差H(μm)が小さいほどロールを真空蒸着機内にセットし、真空排気した場合にフィルムロール表面のフィルム層が幅方向にずれにくいために好ましい。H>(0.0020×t1+0.0030)×Lであると、真空排気する際にフィルムロール表面が幅方向に巻きズレが起こり易くなるために好ましくない。
【0014】
本発明における重量法によるフィルム厚みt1は、素子サイズと製膜安定性の点から、0.5〜3.0μmが好ましく、より好ましくは、0.8〜3.0μm、特に好ましくは1.0〜3.0μmである。フィルム厚みが3.0μmを超えると素子サイズが大きくなり、また0.5μm未満の厚さの場合は、製膜安定性と加工性が悪化し、好ましくない。
【0015】
フィルムの表面粗さSRa(nm)は、10〜100が好ましく、より好ましくは、15〜50である。フィルム表面粗さSra(nm)が10〜100を満たさない場合は、加工性の悪化、素子加工時のしわ等欠点による耐電圧の低下となることがあり、好ましくない。
【0016】
さらに、フィルムの表面粗さ(最大高さ)SRmax(nm)は400〜1800が好ましく、800〜1400であると蒸着加工性、耐電圧性がさらに良好になることからより好ましい。
【0017】
本発明において、重量法によるフィルム厚みt1(μm)とマイクロメータ法によるフィルム厚みt2(μm)が、下記式(4)を満足することが好ましい。
【0018】
0.1≦(t2−t1)≦0.6 ・・・(4)
上記式(4)を満足することで、フィルム層間のエアー量が少なくなり、また加工性が良好となるために好ましい。またより好ましくは下記式(5)を満たす場合であり、この範囲であるとより小型なコンデンサが得られるために好ましい。
【0019】
0.1≦(t2−t1)≦0.4 ・・・(5)
本発明において、コンデンサの生産性の観点から、フィルム幅は加工工程の設備仕様などによるものの、200mm〜1500mmが好ましく、300mm〜1000mmである場合が実用性の点でさらに好ましい。
【0020】
また、蒸着加工の効率を向上させ、生産性を上げて、コストを下げるために、フィルム長さは10000m〜40000mが好ましく、より好ましくは12000m〜40000mである。一方、フィルム長さが40000mを越えると連続巻き取りが困難になり実用的でない。
【0021】
本発明のポリエステルフィルムをロール状に巻き取る際の巻取コアの材質としては繊維強化プラスチック、鉄などを用いることができるが、中でも繊維強化プラスチックを用いると、経時による巻き締まりにより発生する原反形状の変化やしわの発生を軽減できる点で好ましい。
【0022】
また、前記巻取コアを回転させたときの振れは、0.20mm以下であることが好ましくは、さらに好ましくは0.15mm以下である。巻取コアの円筒度も、0.20mm以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.15mm以下である。振れ、円筒度がかかる範囲を満たさない場合、フィルムを巻き取る際にしわなどが発生しやすくなるために好ましくない。
【0023】
また、巻取コアの軸方向曲げ強度は、180MPa以上であることが好ましく、更に好ましくは200MPa以上である。かかる範囲に満たない巻取コアを使用するとフィルムを巻き取る際にかかる張力と接圧により巻取コアが変形してしまうことがある。また、コア材の軸方向弾性率は9.8GPaであることが好ましく、さらに好ましくは13.7GPa以上である。かかる範囲に満たないコアを使用すると前期同様に巻取コアが変形してしまうことがあり好ましくない。巻取コアの強度をかかる範囲とするための方法は特に限定されないが、例えば繊維強化プラスチックの基材中のガラス繊維系の量などを適宜調整することが有効であり、また基材の厚みを調整することによっても所望の強度が得られる。
【0024】
また、前記巻取コアの表面粗さRaは0.5μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.3μm以下である。かかる範囲に満たない材質の巻取コアを使用すると、コア表面の凹凸がフィルム表面に転写され、本発明の効果が十分に発揮されないため好ましくない。巻取コアの表面粗さをかかる範囲とするための方法は、特に限定されないが、例えば巻取コア表面に樹脂層を設け、表面を精度良く研削することにより所望の表面粗さが得られる。
【0025】
また、前記巻取コアの表面硬度は65°以上であることが好ましく、好ましくは80°以上である。かかる範囲に満たない巻取コアを使用するとフィルムの巻取時にかかる張力と接圧により巻取コアの表面が変形し、フィルムの表面性や原反形状を悪化させることがある。巻取コアの表面硬度をかかる範囲に調整するための方法としては、特に限定されないが、例えばコア表面にエポキシ樹脂などの硬い樹脂を用い、その厚みなどを適宜選ぶことにより調整できる。
【0026】
さらに巻取コアの直径は50〜500mmが好ましく、より好ましくは100〜350mmであリ、とくに好ましくは150〜250mmである。
【0027】
本発明におけるポリエステルフィルムに用いられるポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールを主たる構成成分とするポリエステルである。ここで、芳香族ジカルボン酸として、例えば、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸等を用いることができる。中でもテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸を用いることが好ましい。これらの酸成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよく、さらには、ヒドロキシ安息香酸等のオキシ酸等を一部共重合してもよい。また、ジオール成分として例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール等を用いることができる。中でも、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールが好ましく用いられる。これらのジオール成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0028】
本発明におけるポリエステルフィルムに用いられるポリエステルとしては、耐電圧性と延伸性の点から、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートである。
【0029】
本発明のポリエステルフィルムの製造法を、以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0030】
本発明においてポリエステルは、次の方法で製造することができる。例えば、酸成分をジオール成分と直接エステル化反応させた後、この反応の生成物を減圧下で加熱して余剰のジオール成分を除去しつつ重縮合させることによって製造する方法や、酸成分としてジアルキルエステルを用い、これとジオール成分とでエステル交換反応させた後、上記と同様に重縮合させることによって製造する方法等がある。この際、必要に応じて、反応触媒としてアルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガン、コバルト、亜鉛、アンチモン、ゲルマニウム、チタン化合物を用いることもできる。
【0031】
本発明におけるポリエステルには、必要に応じて、着色防止剤(リン化合物)、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料、脂肪酸エステル、ワックス等の有機滑剤、あるいはポリシロキサン等の消泡剤等を配合することができる。
【0032】
ポリエステルフィルムは二軸方向に延伸されたフィルムであリ、フィルムを二軸延伸する場合の方法は、逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法のいずれの方法であってもよい。逐次二軸延伸法の場合、例えば、熱可塑性樹脂をTダイ押し出し法によってキャストドラム上に押し出すことによって未延伸フィルムとし、次いで、縦方向、横方向の順に延伸するのが一般的であるが、横方向、縦方向の順に延伸してもよい。同時二軸延伸法の場合、例えば、インフレーション同時二軸延伸法、ステンター同時二軸延伸法等いずれの延伸方式を採用しても良いが、製膜安定性、厚み均一性の点からステンター同時二軸延伸法が好ましい。延伸温度は、延伸に用いるポリエステルのガラス転移温度(Tg)と昇温結晶化温度(Tcc)との間であることが好ましい。 延伸倍率は、特に限定されるものではなく、用いるフィルムポリマの種類によって適宜決定されるが、好ましくは縦、横それぞれ2〜8倍、より好ましくは3〜8倍が適当である。また、二軸延伸後、縦または横、あるいは縦横に再延伸してもかまわない。
【0033】
さらにその後、二軸延伸後のフィルムを熱処理してもよい。熱処理温度は、フィルムの温度にして180℃〜240℃の範囲で、2〜30秒間行うのが耐電圧向上の点で好ましい。熱処理に引き続き、弛緩処理1〜10%の範囲で行なっても良い。熱処理して得られたフィルムを一旦室温程度まで冷却した後、さらに40〜90℃の比較的低温で、5秒から1週間程度エージングすることもできる。エージングを行なうことで、耐電圧性をさらに良好とすることができる。エージングは、金属蒸着後に行なっても良い。
【0034】
さらに、易滑性を付与するために、ポリエステルフィルムの表面粗さを形成する手段として、例えば、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、湿式あるいは乾式シリカなどの無機粒子や、アクリル酸系ポリマー類、シリコーンや架橋ポリスチレン等を構成成分とする有機粒子等を配合することもできる。また、ポリエステル重合反応時に添加する触媒等が失活して形成される、いわゆる内部粒子による方法も用いることができる。
【0035】
重合段階でこれらの粒子を添加する場合、分散が良好でないとフィルム表面の粗大突起の原因となり、絶縁抵抗、耐電圧性に悪影響を及ぼすことがある。例えば、これらの不活性粒子をエチレングリコールのスラリーとした後、ジェットアジタによる分散やメディヤ分散を行い、さらに濾過により粗大粒子を除去した後、重合反応過程に添加することが効果的である。
【0036】
また、フィルム上にプライマー層を設ける場合には、プライマー層に粒子を添加し目的の表面を形成することもできる。
【0037】
円筒状コアに巻き上げたポリエステルフィルムロールにおいて、原反巻芯から全長に対して、5%から25%長間の内層硬度h1が90以上、30%から80%長間の内層硬度h2が95以下であり、さらに、h1と85%から95%長の内層硬度h3の差が、0≦(h1−h3)≦5を満たすようにするためには、ロールに巻き上げ時のスリット条件などが極めて重要であり、以下の方法が極めて有効である。
【0038】
本発明のポリエステルフィルムを得るためのロールスリット条件としては、巻芯から全長に対して30%未満の巻取時の張力を0.5kg/m〜8.0kg/m、さらに、巻取時の面圧を5kg/m〜60kg/mとし、原反巻芯から全長に対して30%長以上の時点から巻取時の張力および面圧を直線的に上昇させ、最終的に10〜100%の範囲で上昇させることが好ましい。
【0039】
ここで面圧は、巻き上げ時のフィルム表面へ与える圧力であり、巻き上げ時にコンタクトロールを介して面圧を調整することが可能である。
【0040】
原反巻芯から全長に対して、5%から25%長間の内層硬度h1が90以上、30%から80%長間の内層硬度h2が95以下であり、さらに、h1と85%から95%長の内層硬度h3の差が、0≦(h1−h3)≦5を満たすポリエステルフィルムロールを得る方法は、この手法に限られる訳ではないが、巻芯から表層に至る巻き取り時の張力、面圧をコントロールすることにより、h1とh3の差が小さくなり、原反巻出フィルムの搬送が終始安定し、熱負け、マージン精度が向上する。
【0041】
またスリット速度は140m/分〜280m/分の範囲であることが好ましく、フィルムロール中の空気含有率を5%以上25%以下とすることが好ましい。
【0042】
本発明のロール直径の最大値と最小値の差R(μm)とロールの左端の直径と右端の直径の差H(μm)を規定の範囲(下記式(2)、(3))を満足させるためには、溶融押出しポリマーをシート状に冷却ドラムにキャストする口金での厚み斑調整の高精細化、口金での厚み斑調整へのフィードバック方法、ロールに巻き上げる条件などが極めて重要である。
【0043】
R≦(0.0025×t1+0.0035)×L ・・・(2)
H≦(0.0020×t1+0.0030)×L ・・・(3)
すなわち、円筒状巻取コアに巻き上げたフィルムロールの幅方向においてロール直径の最大値と最小値の差R(μm)が、フィルム長さL(m)に対して、R≦(0.0025×t1+0.0035)×Lを満足し、ロールの両端の直径の差H≦(0.0020×t1+0.0030)×Lを満足させるためには、以下の方法が有効である。
【0044】
溶融後のポリエステルを口金より押出、シート状にキャストする際の厚みむら調整を口金のスリット間隙を形成する一対のリップの一方に、スリットの横方向に沿って配列された複数のスリット間隙調整用ボルトを設け、該調整用ボルトを正転あるいは逆転させることにより行うことで所望の厚さに制御することができる。なお、この様な制御方法は、例えば特開平7−108586号公報等に提案されているように公知の制御方法である。この制御手段によるフィルム厚さのプロフィールを制御する方法は、口金から吐出された広幅のポリマーを二軸延伸して二軸延伸フィルムとした後、二軸延伸フィルムの厚さを測定し、これを目標とする厚さプロフィールに近づけるように制御することができる。予め目標として設定された厚さ管理範囲(上下限値)を外れた場合は、前述の制御方法でフィルム厚さの制御を行う。本発明の範囲のR、Hを得るため(つまり(2)、(3)を満たすため)、この厚さ管理範囲は、通常、上下限±0.05μmが好ましく、さらに好ましくは±0.01μmであることで更にフィルム幅方向の厚さが均一になり、フィルムの幅方向の厚み斑をフィルムの平均厚みに対して35%以下、好ましくは25%以下とすることが可能となる。
【0045】
本発明のフィルムは二軸延伸、熱処理を行った後、インラインでフィルム厚みを測定し、測定結果を口金ボルトにフィードバックさせているが、厚さ計としては光干渉式を用いることが好ましい。さらに幅方向のフィルム厚みむらを均一にするよう行いつつ、10000m以上に巻き上げたフィルムを所定の幅、長さに切った後、円筒状コアーに巻き上げそのフィルムロールを4〜12時間程度、温度10〜35℃の環境下で保管しフィルムロールよりフィルム層間の空気を抜けさせた後、フィルムロールの直径を幅方向に測定しグラフに幅方向をX軸に、直径をY軸にプロットし、プロットされた曲線より読んだR、Hの情報を口金での厚み斑調整にフィードバックし、前記厚み調整用ボルトの特定の位置を正転あるいは逆転させることにより幅方向におけるロール直径の最大値と最小値の差R(μm)がフィルム長さL(m)に対してR≦(0.0025×t1+0.0035)×Lとなる関係と、ロールの両端の直径の差H(μm)がH≦(0.0020×t1+0.0030)×Lとなる関係を満足させることができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。
(1)内層硬度
フィルムロールの幅方向のロール端部から2mm内側の点より幅方向に50mm間隔でJIS K7312−1996に準じ1kgの加重を付したショア硬度計(高分子計器(株)製、アスカーゴム高度計D型)を用いて測定しその平均値を内層硬度(h)とした。
【0047】
まず、巻き上げたフィルムロールを常温(25〜30℃)で3時間以上保管したのち、表層から順次、切開・はぎ取り、巻芯からフィルム全長に対し、95%長の点、90%長の点および85%長の点の内層硬度(h)の平均値をh3とした。同様に、70%長の点、50%長の点、および30%長の点の内層硬度(h)の平均値をh2とした。
【0048】
さらに、フィルム全長に対し、25%長の点、15%長の点および5%長の点の内層硬度(h)の平均値をh1とした。
また、それぞれの点における測定は、切開・はぎ取り後、30分以内で測定した。
(2)ロールの直径の幅方向における最大値と最小値の差R(μm)、および、ロールの左端の直径と右端の直径の差H(μm)
巻き上げたフィルムロールをハマノ精機(株)製バルク形状測定装置を用い、ロール端部より2mm内側の全幅にわたり測定し、直径の最大値と最小値の差をR(μm)、フィルムロールの両端の直径の差をH(μm)とした。
(3)空気含有率(%)
下記式で求めた。
α=(100π×((d1)−(d2))/(4×t1×L))−100
α :空気含有率(%)
t1:重量法フィルム厚み(μm)
L :ロールに巻かれているフィルムの総長さ(m)
d1:上記(2)項で測定されたロール直径の全幅方向の平均値(mm)
d2:コア直径(mm)
(4)フィルムの表面粗さ(中心面平均粗さSRa,最大高さSRmax)
小坂研究所製の3次元表面粗さ計ETB−350Kを用い、触針式で以下の条件で測定した。
【0049】
触針先端径 :2μmR
触針加重 :0.04mN
測定長 :0.5mm
送りピッチ :5μm
測定本数 :40本
カットオフ値:0.25mm
上記の条件で、粗さ曲面f(x,y)が得られたとき、SRaは下記の式で求められる。
【0050】
【数1】

【0051】
lx:測定長=1mm、ly:送りピッチ
上記測定範囲の最大の山と最深の谷を平均面と平行な2面で挟み、その間隔を最大高さSRmaxとする。
(5)フィルム厚み測定
A.重量法厚み
測定試料の重量を測定し、ポリエチレンテレフタレートの密度を1.400(g/cm)として、下記式で求めた。
t1(μm)=
フィルム重量(g)/(フィルム幅(m)×フィルム長さ(m)×密度(1.400)
B.マイクロメータ法厚み
マイクロメータを用いて、フィルムの幅と長さ方向にそれぞれ10点を測定しその平均値を用いた。
(6)真空蒸着時のマージン精度、コンデンサ製造時の素子巻き評価
抵抗加熱型金属蒸着装置を用い、真空室の圧力を10−2Pa以下として、ポリエステルフィルムの片面に、表面抵抗が2Ω/□となるようにアルミニウムを真空蒸着して巻き取った。その際、長手方向に走るマージン部を有するストライプ状(蒸着部の幅8.0mm、マージン部の幅1.0mmの繰り返し)に蒸着した。
【0052】
なお、フィルムロールは、製造後、蒸着工程にかけるまでの間、外部からの水分が侵入しないように防湿包装を施した。上記により得られた蒸着フィルムを左または右に幅0.5mmのマージン部を有する4.5mm幅のテープ状にスリットした。この際、蒸着されていない部分であるマージン幅を長手方向に20cmおきに5m測定し、マージン幅の最大、最小値から、下記のような基準でマージン精度を評価した。
【0053】
(マージン幅範囲) (マージン精度)
0.5±0.15 超高精度 ◎
0.5±0.25 高精度 ○
0.5±0.50 精度不良 ×
得られた左マージンおよび右マージンの蒸着ポリエステルフィルム各1枚ずつを併せて巻回し、巻回体を得た。このとき、幅方向に蒸着部分が0.5mmずつはみ出すように2枚のフィルムをずらして巻回した。素子巻回には皆藤製作所製KAW−4NHBを用いた。この巻回体から芯材を抜いて、そのまま150℃、10kg/cmの温度、圧力で5分間プレスした。この両端面にメタリコンを溶射して外部電極とし、メタリコンにリード線を溶接して巻回型コンデンサ素子を得た。
【0054】
上記のコンデンサの製造の際、巻き始めから巻き終わりまでを目視で観察し、しわやずれが発生したものを不合格とし、不合格となったものの数の製造数全体に対する割合を百分率で示し加工性の指標とした(以下、素子巻収率と称する)。素子巻収率は高いほど好ましい。95%以上を良好◎、85%以上95%未満を良好○、85%未満を不良×とした。
(7)粒子の平均粒子径
粒子の平均粒子径は粒径分析装置(HORIBA製LA−700)で測定した。
(8)巻取コアの振れ
コア両端内側をチャックにて固定し、回転させたときの振れを幅方向に3等分した各領域の中央部において、ダイヤルゲージにて測定した。
(9)巻取コアの円筒度
コア両端内側をチャックにて固定し、ダイヤルゲージをコア幅方向に移動させ、最大値と最小値の差を円筒度とした。円筒度は前述のロールの直径の幅方向の測定に準じ、バルク形状測定装置を用い測定した値から計算してもよい。
(10)巻取コアの軸方向弾性率、および曲げ強度
コアの中央に荷重を負荷し、荷重−たわみ比より軸方向弾性率を、破壊荷重より曲げ強度を求めた。
(11)巻取コアの表面粗度
JIS B0601−2001に準じ、東京精密(株)の表面粗さ計サーフコム111Aを使用して、カットオフ0.25mmにて中心線平均粗さを幅方向に3等分した各領域の中央部において、表面粗度を測定し、その平均値を採用した。
(12)巻取コアの表面硬度
JIS K7215−1986の検査方法に従い、TYPE Dの表面硬度計にて幅方向3点測定を行い、平均値を採用した。
(実施例1)
ポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレートを用いた。重合段階に平均粒径1.5μmの凝集シリカ粒子をポリマーあたり0.5重量%になるように、公知の方法で添加しチップを製造した。
【0055】
このチップを165℃で真空乾燥し、押出機に供給し、285℃で溶融させた後、スリット間隙を形成する一対のリップを持ち一方のリップにスリット幅方向に沿って配列された複数のスリット間隙調整用ボルトが設けられた口金を通して吐出させシート化し、表面温度25℃の冷却ドラムにてキャストした。
【0056】
このフィルムをステンター法同時二軸延伸により、108℃に加熱し長手方向に3.5倍延伸、108℃で幅方向に3.8倍に延伸し、引き続き235℃で2.5%弛緩処理をし、重量法厚みで1.41μm、マイクロ法厚みで1.55μmの二軸延伸フィルム原反を得た。
【0057】
この原反フィルムを振れが0.02mm、円筒度が0.05mm、軸方向弾性率が14.5GPa、曲げ強度が210MPa、表面粗さが0.5μm、表面硬度が85、外径167mm、内径152.5mmの繊維強化プラスチック(FWP)コアA(天龍工業(株)製FWP10)にサーフェースセンターワインド方式のスリッターを用い、スリット速度170m/分、初期巻取張力4.5kg/m、巻芯10000mより張力を直線的に上げ、巻上り時において20%アップした。さらに巻き取り時の初期面圧を30kg/mとし、10000mより面圧を直線的に上げ、巻上り時において30%アップし、幅500mm、長さ18000mのフィルムロールを得た。得られたポリエステルフィルムロールを25℃で5時間保管後、内層硬度h1、h2、h3を測定した結果、得られたフィルムロールのh1=94.0、h2=93.5、h3=93.0であり、また、フィルム表面粗さは、SRa=27.5nm、SRmax=1042nmであった。空気含有率は、8.5%であった。
さらに、幅方向のロール直径の最大値と最小値の差を示すRは40μmであり、ロールの両端の直径の差を示すHは20μmであった。
【0058】
上記条件と全く同じ条件で製造したフィルムロールから得られた二軸延伸フィルムの片面に表面抵抗が2Ω/□となるようにアルミニウムを真空蒸着した後、蒸着フィルムを左または右に幅0.5mmのマージン部を有する4.5mm幅のテープ状になるようスリットし、70本のテープ状スリット品を採取した(以後、リールサンプルと称す)。その後、巻回してコンデンサを得た。一つのリールサンプルのマージン幅の最大値は、0.64mm、最小値は0.35mmであり、素子巻収率が98.0%であった。
(実施例2〜4、比較実施例1〜4)
含有粒子の種類・量、フィルム厚み、スリット条件などを変え、実施例1と同様にポリエステルフィルムロールを得、得られたポリエステルフィルムロールを25℃で5時間保管後、内層硬度h1、h2、h3、フィルム表面粗さ、空気含有率を評価した。
【0059】
さらに、評価フィルムロールの製造条件と全く同じ条件で得たフィルムロールについてアルミニウムを実施例1と同様に真空蒸着した後、実施例1と同様な方法でコンデンサを得、マージン幅および素子巻収率を評価した。これらの結果を表1に示した。
【0060】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、コンデンサ製造工程において熱負け、マージン精度等の工程問題を解決し、生産性よく加工することを可能とするポリエステルフィルムロールを提供することができる。本発明のポリエステルフィルムロールは、特に生産性、加工性に優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムをコアに巻いてなるポリエステルフィルムロールであり、原反巻芯から全長に対して、5%から25%長間の内層硬度h1が90以上、30%から80%長間の内層硬度h2が95以下で、85%から95%長の内層硬度h3が下記(1)式を満たし、さらに空気含有量が5%以上25%以下であることを特徴とする二軸延伸ポリエステルフィルムロール。
0≦(h1−h3)≦5 ・・・(1)
【請求項2】
幅方向におけるロール直径の最大値と最小値の差R(μm)が、重量法によるフィルム厚みt1(μm)とフィルム長さL(m)に対して式(2)を満たし、かつ、ロールの両端の直径の差H(μm)が式(3)を満たす、請求項1に記載の二軸延伸ポリエステルフィルムロール。
R≦(0.0025×t1+0.0035)×L ・・・(2)
H≦(0.0020×t1+0.0030)×L ・・・(3)
【請求項3】
重量法によるフィルム厚みt1が0.5〜3.0μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項4】
フィルムの表面粗さ(中心面平均粗さ)SRa(nm)が、10〜100である請求項1〜3のいずれかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルムロール。
【請求項5】
フィルムの表面粗さ(最大高さ)SRmax(nm)が400〜1800である請求項1〜5のいずれかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルムロール。
【請求項6】
重量法によるフィルム厚みt1(μm)とマイクロメータ法によるフィルム厚みt2(μm)が、式(4)を満足する請求項1〜5のいずれかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルムロール。
0.1≦(t2−t1)≦0.6 ・・・(4)
【請求項7】
蒸着コンデンサに用いられることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルムロール。

【公開番号】特開2008−138103(P2008−138103A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−326581(P2006−326581)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】