説明

二軸配向ポリエステルフィルムおよびその製造方法

【課題】 塗布を行う際に塗布はじきや塗布ムラが少ない二軸配向ポリエステルフィルムを提供すること。
【解決手段】 少なくとも一方の表面にポリジメチルシロキサンを有する二軸配向ポリエステルフィルムであって、質量分析計により測定される、ポリエステル基本骨格に由来するフラグメントのピーク強度(K)に対する、ポリジメチルシロキサンに由来するフラグメントのピーク強度(P)の比(P/K)が0.05〜0.25である二軸配向ポリエステルフィルムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルフィルム表面に各種塗液を塗布する際に、塗布はじきや塗布ムラが少なく、磁気記録材料、離型フィルム、電子材料、製版フィルム、昇華型リボン、包装材料などに好適に用いることができ、特に高容量磁気記録材料ベースフィルムとして好適なポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、データストレージやデジタルビデオテープ用などの磁気記録媒体においては、高容量化が進んでいる。1巻のテープで100GB以上の高容量を有するテープが開発されており、テープ厚みの薄膜化や記録密度の増大が検討されている。
【0003】
テープの薄膜化を実現するためには、ベースフィルムだけでなく磁性層の薄層化も必要となる。しかしながら、磁性層を薄層化した磁気記録媒体においては、十分な電磁変換特性が得られないことが多く、その原因は長く解明されていなかった。検討の結果、フィルム表面に存在する微量なポリジメチルシロキサンが、ベースフィルムと磁性層の接着性に影響を与え、塗布はじきや塗布ムラを引き起こし、ひいては電磁変換特性を悪化させていることが分かった。
【0004】
一方、離型フィルムにおいては、ポリエステルフィルムに離型性、滑り性や耐熱性を付与するため、ポリエステルフィルム表面にポリジメチルシロキサンを含む層を設けることが提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。それらの技術ではポリジメチルシロキサンをフィルム表面へ塗布により付与することが示されているが、この時ポリエステルフィルム表面へ付与されるポリジメチルシロキサンは極めて多量であり、塗布型の高容量磁気記録媒体用ベースフィルムとして用いた場合には、塗布はじきが発生しやすいという問題があった。
【0005】
さらに、フィルム表面への微量のシロキサンの付与方法について検討の結果、フィルム製造工程で予熱ロール、延伸ロール、搬送ロールなどの一部にシリコーンロールを用い、シリコーンロールが微量に含有しているポリジメチルシロキサンをフィルム表面に転写させることが好都合であることを見出した。これまで、縦延伸工程などにシリコーンロールを用いることはあったが、シリコーンロールに微量に含まれているポリジメチルシリコーンの品質効果については知られておらず、本発明により、ベースフィルムと磁性層の接着性に悪影響を与えない、塗布はじきや塗布ムラを引き起こさない、転写量の非常に微量なポリジメチルシロキサンの、上限量および下限量を見出し、さらにその制御方法について具体的に示すことが可能となった。
【0006】
フィルム製造工程、特に縦延伸工程では多数の工程ロールを用いることが一般的であり、シリコーンロールを用いることもある。本発明の課題とする微量ポリジメチルシロキサンのフィルム表面への転写について検討した結果、シリコーンロール中には微量のシロキサン化合物が含まれており、フィルムとの接触時にフィルムに転写すること、さらに、転写量を本願の課題とする微量の転写量に制御するためには、シリコーンロール上のポリジメチルシロキサン量を調整することが必要であり、他のフィルムと接触させ排除・調整する方法、有機溶剤で洗浄して調整する方法などが有効であることを見出した。さらに、シリコーンロールからの転写量を制御するためには、少数のシリコーンロール、少なくとも3本以下のシリコーンロールをフィルム製造工程で使用し、使用するシリコーンロールに含まれる、ブリードアウトして表面に付着しているポリジメチルシロキサンを調整し、併せて、フィルムとの接触時間を制御することが好ましいことがわかった。
【0007】
従来はシリコーンロールを使用していてもこのような製造条件は採用していなかった。一般的にシリコーンロールは、フィルムと粘着させないことを目的として採用されており、例えば長時間、高温でフィルムと密着させる製造方法を採用する必要がある場合に用いられてきたからである。しかし、従来のように製膜工程に多数のシリコーンロールを用い、長時間・高温で密着させる方法では、新品のシリコーンロール使用直後はそれぞれのシリコーンロールからポリジメチルシロキサンが多量に付加されるため、本発明のように微量なシロキサン量の範囲に制御することは困難であった。またポリジメチルシロキサンの量が減衰するまで長時間連続して製造を行った場合には、シリコーンロール表面が摩耗し、ポリエステルフィルム表面に微細な粘着やキズを発生させることがあり、特に高容量磁気記録媒体用途として用いた場合には採用が困難であった。
【特許文献1】特開平5−131537号公報(第2頁)
【特許文献2】特開2001−179802号公報(第2頁)
【特許文献3】国際公開第03/099556号パンフレット(第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、塗布を行う際に塗液が円形に近い形ではじかれる塗布はじきや、塗液が均一に塗られず、まだら模様になる塗布ムラが少ない二軸配向ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明は、少なくとも一方の表面にポリジメチルシロキサンを有する二軸配向ポリエステルフィルムであって、質量分析計により測定される、ポリエステル基本骨格に由来するフラグメントのピーク強度(K)に対する、ポリジメチルシロキサンに由来するフラグメントのピーク強度(P)の比(P/K)が0.05〜0.25である二軸配向ポリエステルフィルムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、ポリエステルフィルム表面に各種塗液を塗布する際に塗布はじきや塗布ムラが少ない二軸配向ポリエステルフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、少なくとも一方の表面にポリジメチルシロキサンを有しており、質量分析計により測定される、ポリエステル基本骨格に由来するフラグメントのピーク強度(K)に対する、ポリジメチルシロキサンに由来するフラグメントのピーク強度(P)の比(P/K)が0.05〜0.25である。
【0012】
ポリジメチルシロキサンのピーク強度の比(P/K)が0.25よりも大きくなると、例えば非常に薄い磁性層を塗布した際に、塗液が円形に近い形ではじかれる塗布はじきが発生することがある。また、ピーク強度の比(P/K)が0.05よりも小さくなると、逆に塗液が均一に塗られず、まだら模様になる塗布ムラが発生しやすくなる。ポリジメチルシロキサンのピーク強度の比(P/K)は、好ましくは0.07〜0.23、更に好ましくは0.10〜0.22である。
【0013】
なお、フィルムの表面にポリジメチルシロキサンを付与する方法として、従来のように塗布により行うと、ポリジメチルシロキサンが多量に付着し過ぎる傾向があるため、塗布はじきの原因となりやすい。また、付着量を低減させるため、塗液中のポリジメチルシロキサン濃度を薄くすると、乾燥ムラなどによりフィルム表面にポリジメチルシロキサンの濃度ムラが発生しやすく、やはり採用は困難である。一方、本発明では、微量なポリジメチルシロキサンをフィルム表面に付与するために、製膜工程で用いる延伸ロールや搬送ロールなどの工程ロールとしてポリジメチルシロキサンを含有するロールを用い、これら工程ロールに含まれるポリジメチルシロキサンを製膜工程中においてフィルムに転写することより、微量のポリジメチルシロキサンをフィルム表面に付与できるという方法が例示でき、極めて有効である。
【0014】
本発明における二軸配向ポリエステルフィルムとは、分子配向により高強度フィルムとなるポリエステルであれば特に限定しないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートを含んでいることが好ましい。エチレンテレフタレート以外のポリエステル共重合体成分としては、例えばジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、p−キシリレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン成分、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能ジカルボン酸成分、p−オキシエトキシ安息香酸などが使用できる。
【0015】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、単層でも2層以上の積層構造であってもよい。2層構造の場合には、磁気記録媒体として使用した時に磁性層を塗布する層(A)と、反対面の層(B)の表面突起(表面形態)を以下に示すように別々に制御できるため、好ましい。
【0016】
二軸配向ポリエステルフィルムの層(A)の、3次元粗さ計を用いて測定した表面粗さSRaは、0.01〜15nmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜10nmである。SRaを0.01nmより小さくすると、ヘッドとテープの滑りが悪化する場合がある。15nmを超えると表面が粗くなり過ぎ、高容量磁気記録媒体用として十分な電磁気変換特性が得られない場合がある。一方、反対面の層(B)の表面粗さSRaは好ましくは1〜30nm、より好ましくは、3〜25nmである。SRaが1nmよりも小さいとフィルムの巻き取り中にしわなどが入り、巻き姿が不良となる場合がある。一方、30nmよりも大きくなると、表面が粗くなり過ぎるためフィルムロールとして巻き取った際、磁性層を塗布する層(A)に転写するなどの悪影響を及ぼしやすくなる場合がある。
【0017】
次に、上記表面粗さを満足するためには層内に不活性粒子を含有せしめることが好ましい。本発明において層(A)に含まれる粒子は1種類であっても2種類以上であってもよい。2種類以上の粒子を用いる場合は、層(A)に含有せしめる最も大きい不活性粒子Iは、その平均粒径dIについて、好ましくは0.30〜0.80μmであり、より好ましくは0.40〜0.70μmである。含有量は好ましくは0.001〜0.30重量%、より好ましくは0.01〜0.10重量%である。他の不活性粒子II(その平均粒径dIIは不活性粒子Iの平均粒径dIよりも小さい)の平均粒径IIは、好ましくは0.04〜0.30μm、より好ましくは0.05〜0.25μmである。また、含有量は好ましくは0.001〜0.30重量%であり、より好ましくは0.01〜0.25重量%である。なお、磁気記録用媒体においては、平均粒径が0.80μmよりも大きな粒子を用いると電磁変換特性が悪化する場合がある。
【0018】
2層構造のポリエステルフィルムにおいて、層(B)の厚みtBは好ましくは0.1〜2.0μmであり、より好ましくは0.2〜1.5μmである。この厚みが、0.1μmよりも小さくなると、粒子が脱落しやすくなり、2.0μmよりも大きくなると含有粒子の突起形成効果が減少する場合がある。
【0019】
2層構造のポリエステルフィルムにおいて、層(B)に含まれる粒子は、層(A)と同様に、1種類であっても2種類以上であってもよい。ポリエステル層(B)に含有せしめる最も大きい不活性粒子IIIの平均粒径dIIIは、好ましくは0.1μm〜1.0μmであり、より好ましくは0.4μm〜0.9μmである。また、含有量は好ましくは0.002重量%〜0.10重量%、より好ましくは0.005〜0.05重量%である。さらに、不活性粒子IV(平均粒径は不活性粒子IIIよりも小さい)の平均粒径dIVは、好ましくは0.05μm〜0.5μm、より好ましくは0.2μm〜0.4μmであり、また、含有量は好ましくは0.1重量%〜1.0重量%、より好ましくは0.2〜0.8重量%である。
【0020】
2層構造のポリエステルフィルムにおいて、層(A)および層(B)に含まれる不活性粒子は、球状シリカ、ケイ酸アルミニウム、二酸化チタン、炭酸カルシウムなどの無機粒子、またその他有機系高分子粒子としては、架橋ポリスチレン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋スチレン−アクリル樹脂粒子、架橋ポリエステル粒子、ポリイミド粒子、メラミン樹脂粒子等が好ましい。これらの1種もしくは2種以上を選択して用いる。
【0021】
2層構造のポリエステルフィルムにおいて、層(A)および層(B)に含まれる不活性粒子は、粒子形状・粒子分布は均一なものが好ましく、体積形状係数は好ましくはf=0.3〜π/6であり、より好ましくはf=0.4〜π/6である。体積形状係数fは、次式で表される。
【0022】
f=V/Dm
ここでVは、粒子体積(μm)、Dmは粒子の投影面における最大径(μm)である。
【0023】
なお、体積形状係数fは粒子が球の時、最大のπ/6(=0.52)をとる。必要に応じて粗大粒子や介在物を除去するため、濾過などを行うことが好ましい。中でも、球状シリカは単分散性に優れ、突起形成を容易に制御でき、本発明の効果がより良好となるため好ましい。また必要に応じて、地肌補強の観点から一次粒径が0.005〜0.10μm、好ましくは0.01〜0.05μmのα型アルミナ、γ型アルミナ、δ型アルミナ、θ型アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタン粒子などから選ばれる不活性粒子を表面突起形成に影響を及ぼさない範囲で含有してもよい。
【0024】
また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、磁気テープに必要な強度を得る観点からフィルム長手方向及び幅方向共にヤング率は4,000MPa以上、好ましくは4,500MPa以上であることが好ましい。
【0025】
また本発明におけるポリエステルフィルムの長手及び幅方向の熱収縮率は、−0.2〜2.0%であることが好ましい。熱収縮率が2.0%よりも大きいと高温保管、あるいは熱処理時のフィルム収縮が大きく、磁気テープ特性が悪化する場合がある。熱収縮率は、熱固定温度や弛緩処理等の方法により適宜調整することができる。
【0026】
また本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルムの幅方向の温度膨張係数が、−10×10−6〜20×10−6/℃であることが好ましく、より好ましくは−5×10−6〜15×10−6/℃である。更にフィルム幅方向の湿度膨張係数は、0〜20×10−6/%RHであることが好ましく、より好ましくは5×10−6〜15×10−6/%RHである。温度膨張係数及び湿度膨張係数がこの範囲を超えるとデータ書き込み時とデータ読み取り時の温度差や湿度差が大きい場合、テープに書き込まれた磁気情報を固定ヘッドが正しく読みとることができない場合がある。温湿度環境の変化があってもデータを正しく読みとるためには各膨張係数を上記範囲におさめることが好ましい。
【0027】
本発明に用いられるポリエステルフィルムの全厚みは、高容量化に伴う薄膜化に有利であるところから、3〜10μmが好ましく、より好ましくは4〜8μmである。10μmよりも厚いとカセットに入るテープ長が短くなり、十分な記録容量が得られない場合がある。また、3μmよりも薄いとテープとしたときに十分な強度が得られない場合がある。
【0028】
次に本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの好ましい製造方法について説明する。
【0029】
ポリエステルに不活性粒子を含有させる方法としては、例えばジオール成分であるエチレングリコールに不活性粒子Iを所定割合にてスラリーの形で分散させ、このエチレングリコールスラリーをポリエステル重合完結前の任意段階で添加する。ここで、粒子を添加する際には、例えば、粒子を合成時に得られる水ゾルやアルコールゾルを一旦乾燥させることなく添加すると粒子の分散性が良好であり、滑り性、電磁変換特性を共に良好とすることができる。また粒子の水スラリーを直接所定のポリエステルペレットと混合し、ベント方式の2軸混練押出機に供給しポリエステルに練り込む方法も本発明の効果に有効である。
【0030】
このようにして準備した、粒子含有ペレットおよび粒子などを実質的に含有しないペレットを所定の割合で混合し、乾燥したのち、公知の溶融積層用押出機に供給し、ポリマーをフィルターにより濾過する。
【0031】
また、高容量磁気記録媒体用途においては、ごく小さな異物も磁気記録欠陥であるDO(ドロップアウト)の原因となるため、フィルターには例えば1.5μm以上の異物を95%以上捕集する高精度のものを用いることが有効である。続いてスリット状のスリットダイからシート状に押し出し、キャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸フィルムを作る。すなわち、1から3台の押出機、1から3層のマニホールドまたは合流ブロック(例えば矩形合流部を有する合流ブロック)を用いて必要に応じて積層し、口金からシートを押し出し、キャスティングロールで冷却して未延伸フィルムを作る。この場合、背圧の安定化および厚み変動の抑制の観点からポリマー流路にスタティックミキサー、ギヤポンプを設置する方法が有効である。
【0032】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの延伸方法は、逐次二軸延伸であっても同時二軸延伸であってもよい。逐次延伸においては、最初の長手方向の延伸温度は、例えば90〜160℃であり、好ましくは95〜150℃、更に好ましくは100〜130℃である。延伸温度が90℃よりも低いとフィルムが破断しやすく、延伸温度が160℃よりも高いとフィルム表面が熱ダメージを受ける場合がある。また、延伸ムラ、及びキズを防止する観点からは延伸は2段階以上に分けて行うことが好ましく、トータル倍率は例えば2.5〜8.0、好ましくは2.6〜4.0倍、更に好ましくは2.8〜3.8倍である。延伸倍率が2.5倍よりも小さいと磁気記録媒体用として必要な強度が得られにくい場合がある。一方、倍率が8.0倍よりも大きくなると、フィルムにキズが発生しやすいため磁気記録媒体用として使用が難しいばかりでなく、再縦延伸時にフィルムが破断する場合がある。
【0033】
ポリエステルフィルム表面に本発明の範囲のポリジメチルシロキサンを付与するためには、工程ロール、特に縦延伸工程で用いるフィルムロール群の中にシリコーンロールを使用することが好ましい。新品のシリコーンロール表面には、シリコーン樹脂中からブリードアウトしたポリジメチルシロキサンが多量に付着している。ポリジメチルシロキサン量を本発明の範囲に制御するためには、シリコーンロール上のポリジメチルシロキサン量を適宜調整した後に、本発明のフィルム製造に用いるとよい。この調整方法としては、例えば、他のポリエステルフィルムとシリコーンロールを10〜70万回接触させて(シリコーンロールを用いて製造を行って)ポリジメチルシロキサンを他のポリエステルフィルムに転写させた後、本発明のフィルム製造に使用することや、シリコーンロール表面をn−ヘキサンやn−ヘプタンなどの溶媒で洗浄して使用することなどの方法を用いることができる。
【0034】
さらにポリジメチルシロキサンの転写量を本発明の範囲とするためには、延伸前(予熱または搬送)工程におけるポリエステルフィルムの層(A)側とシリコーンロールの接触時間は1秒以下、好ましくは0.8秒以下、更に好ましくは0.5秒以下であり、層(A)と接触するシリコーンロール本数は3本以下、好ましくは1本である。延伸工程におけるポリエステルフィルムの層(A)側とシリコーンロールの接触時間は0.1秒以下、好ましくは0.08秒以下、更に好ましくは0.03秒以下とすることが好ましい。各接触時間を超えると転写量が多くなり、塗布はじきを起こしやすい。ここで接触時間とは、ポリエステルフィルムと延伸ロールの接触距離をロール入りのフィルム速度で除した時間であり、ニップ間で複数回延伸する場合はそれぞれにおける接触距離を4mmとして計算している。過剰なポリジメチルシロキサンの転写を防止するため、他にはテフロン(登録商標)ロールやセラミックスロール、金属ロールなどを用いることが好ましい。
【0035】
また工程ロールとして、延伸ロール(シリコーンロールなど)を用いる場合、その表面粗さRaは、例えば0.005〜1.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.6μmである。Raが1.0μmよりも大きいと延伸時にロール表面の凹凸がフィルム表面に転写することがあり、高容量磁気記録媒体用ベースフィルムとして使用できないことがある。また、Raが、0.005μmよりも小さいと、延伸ロールとフィルム地肌が粘着し、フィルム表面が熱ダメージを受けやすくなる場合があり、やはり高容量磁気記録媒体用ベースフィルムとして用いることが困難となる傾向がある。
【0036】
逐次延伸法を用いる場合、その後、例えば80〜160℃、好ましくは85〜130℃、更に好ましくは90〜120℃で幅方向に好ましくは2.5〜6.0倍、好ましくは3.0〜5.5倍、更に好ましくは3.5〜5.0倍延伸する。かかる温度、倍率範囲を外れると延伸ムラあるいはフィルム破断などの問題を引き起こすことがある。さらに、必要に応じて、好ましくは100〜160℃さらに好ましくは105〜145℃で、好ましくは1.0〜1.8倍、さらに好ましくは1.05〜1.6倍で再縦延伸することが好ましい。特に延伸温度が100℃よりも低いとフィルムが破断しやすく製造が難しい場合がある。一方、延伸温度が160℃よりも高いと磁気記録媒体として十分な強度が得られない場合がある。また、延伸倍率が1.0倍よりも小さいと熱収縮により強度が落ちる場合があり、1.8倍よりも大きいとフィルムが破断しやすく製造が難しい場合がある。その後、例えば、好ましくは1.0〜1.5倍、更に好ましくは1.0〜1.3倍再横延伸した後、好ましくは200〜235℃、好ましくは205〜220℃で、好ましくは、0.5〜20秒、より好ましくは1〜15秒熱固定を行うとよい。特に熱固定温度が200℃よりも低くなるとフィルムの結晶化が進まないためにポリエステルの構造が安定しないことが多く、長期間の保存を必要とする高容量磁気記録媒体用としては使用し難い。一方、235℃よりも大きくすると、ポリエステル非晶鎖部分の緩和が進み、ヤング率が小さくなる場合がある。
【0037】
一方、同時二軸延伸において本発明のフィルムを得るためには、未延伸フィルムの搬送ロールにシリコーンロールを用いることが有効である。逐次二軸延伸の場合と同様、ポリエステルフィルムとシリコーンロールを10〜70万回接触させてポリジメチルシロキサンを他のポリエステルフィルムに転写させた後、使用することや、シリコーンロール表面をn−ヘキサンやn−ヘプタンなどの溶媒で洗浄することが好ましい。
【0038】
その後、長手および幅方向に、例えば80〜160℃、好ましくは85〜130℃、更に好ましくは90〜110℃で同時に延伸する。延伸温度が80℃よりも低くなるとフィルムが破断しやすく、延伸温度が160℃よりも高くなると磁気記録媒体として用いた時に十分な強度が得られにくい場合がある。また、延伸ムラを防止する観点から、長手方向・横方向の合計延伸倍率は、例えば8〜30倍、好ましくは9〜25倍、更に好ましくは10〜20倍である。延伸倍率が8倍よりも小さいと本発明の対象とする高容量磁気記録媒体用として必要な強度が得られにくい。一方、倍率が30倍よりも大きくなると、フィルムが破れ、製造が難しい場合がある。高容量磁気記録媒体に必要な強度を得るためには、必要に応じて、好ましくは温度140〜200℃、より好ましくは160〜195℃で、好ましくは、1.0〜1.8、より好ましくは1.0〜1.6倍で再度長手及び/又は幅方向に延伸を行うことが好ましい。延伸倍率が1.0倍よりも小さいと強度が落ちる場合があり、1.8倍よりも大きいと熱収縮率が大きくなる場合がある。その後、例えば200〜235℃好ましくは205〜220℃で、例えば0.5〜20秒、好ましくは1〜15秒熱固定を行う。熱固定温度が200℃よりも低いとフィルムの結晶化が進まないため構造が安定しにくい。一方、235℃よりも大きくすると、ポリエステル非晶鎖部分の緩和が進み、ヤング率が小さくなり厚み方向のクリープが悪くなる場合がある。その後、長手及び/又は幅方向に0.5〜7.0%の弛緩処理を施すとよい。
本発明のフィルムは、例えば、磁気記録材料、離型フィルム、電子材料、製版フィルム、昇華型リボン、包装材料などに好適に用いることができ、特に高容量磁気記録材料ベースフィルムとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例で本発明を詳細に説明する。
【0040】
本発明の特性値の測定方法、並びに効果の評価方法は次の通りである。
【0041】
A.粒子の平均粒径
フィルムからポリマーをプラズマ低温灰化処理法で除去し、粒子を露出させた。処理条件は、ポリマーは灰化されるが粒子は極力ダメージを受けない条件とするため、プラズマ出力50W、プラズマ処理時間は2分とした。ただし、粒子の観察が難しい場合は処理時間を20分まで延ばしても良い。その粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、粒子画像をイメージアナライザで処理した。SEMの倍率は粒径が0.2μm以上の場合5,000倍、0.2μmよりも小さい場合20,000倍とした。観察箇所をかえて粒子数5,000個以上で粒径とその体積分率から、次式で体積平均径dを得た。粒径の異なる2種類以上の粒子を含有している場合には、それぞれの粒子について同様の測定を行い、粒径を求めた。
【0042】
【数1】

【0043】
ここで、diは粒径、Nviはその体積分率である。粒子がプラズマ低温灰化処理法で大幅にダメージを受ける場合には、フィルム断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で、粒径が0.2μm以上の場合5,000倍、0.2μmよりも小さい場合20,000倍で観察した。TEMの切片厚さは約100nmとし、場所をかえて500視野以上測定し、上記式から体積平均径dを求めた。
【0044】
B.粒子の体積形状係数
走査型電子顕微鏡で、粒子の写真を粒径が0.2μm以上の場合10,000倍、0.2μmよりも小さい場合20,000倍で10視野撮影した。さらに画像解析処理装置を用いて、投影面最大径および粒子の平均体積を算出し、下記式により体積形状係数を得た。
【0045】
f = V / Dm
ここで、Vは粒子の平均体積(μm)、Dmは投影面の最大径(μm)である。
【0046】
C.フィルム全厚み
フィルムの長手方向に約100mm、幅方向全幅にわたり試験片を10枚とり、これを重ね合わせて幅方向10箇所を外測マイクロメーターを用い、JIS K7130−1999に準じて測定し、その値をフィルム枚数10で除した値をフィルム厚みとした。
【0047】
D.フィルム積層厚み
表面からエッチングしながらXPS(X線光電子光法)でその粒子濃度のデプスプロファイルを測定した。片面に積層したフィルムにおける表層では、表面という空気−樹脂の界面のために粒子濃度は低く、表面から遠ざかるにつれて粒子濃度は高くなる。本発明の片面に積層したフィルムの場合は、深さ[I]で一旦極大値となった粒子濃度がまた減少し始める。この濃度分布曲線をもとに極大値の粒子濃度の1/2になる深さ[II](ここで、II>I)を積層厚さとした。さらに、無機粒子などが含有されている場合には、二次イオン質量分析装置(SIMS)を用いて、フィルム中の粒子のうち最も高濃度の粒子の起因する元素とポリエステルの炭素元素の濃度比(M+/C+)を粒子濃度とし、層(A)の表面からの深さ(厚さ)方向の分析を行った。そして上記同様の手法から積層厚さを得た。
【0048】
E.ポリジメチルシロキサンピーク強度
試料表面のポリジメチルシロキサンピーク強度を飛行時間型2次イオン質量分析(TOF−SIMS)を用いて測定した。ベースフィルムの骨格を表すフラグメントのピーク(ポリエチレンテレフタレート;104、ポリエチレン−2,6−ナフタレート;154116)のピーク強度(K)とポリジメチルシロキサンの存在を示すフラグメント 147SiO(CHのピーク強度(P)の比(P/K)をランダムに10点測定し、平均値をポリジメチルシロキサンピーク強度として評価した。
【0049】
装置 ;Physical Electronics社製 TFS-2000
一次イオン ;69Ga+
測定面積(ラスターサイズ) ;180μm角
測定時間 ;3分間
測定真空度 ;4×10−7Pa
ポリジメチルシロキサンピーク強度(P/K)
=ポリジメチルシロキサン 147SiO(CHのピーク強度(counts)
/ポリエステルフィルムの骨格を表すピーク強度(counts)
F.フィルムのヤング率
JIS K7127−1999の方法に従い、インストロンタイプの引張試験機を用いて23℃、湿度65%RHにてヤング率を測定した。フィルムの縦方向(MD)および幅方向(TD)に切り出した幅10mm、長さ100mmの試料フィルムを引っ張り測定した。
【0050】
G.温度膨張係数
測定装置:真空理工(株)製TMA TM−3000、加熱制御部TA−1500
試料サイズ:幅4mm×試長間15mm
荷重:0.5g
試料前処理:23℃→50℃→23℃
測定温度:23℃→50℃
前処理後、再度23℃から50℃まで昇温し、その時の30℃から40℃でのフィルムの変化量ΔL[μm]を測定し、次式から温度膨張係数[−/℃]を算出した。
【0051】
温度膨張係数[−/℃]=10×{(ΔL/(15×10))/(40−30)}
H.湿度膨張係数
下記条件にてポリエステルフィルムの湿度膨張係数測定を行い、3回の測定結果の平均値を本発明における湿度膨張係数とした。
【0052】
測定装置:大倉インダストリー製テープ伸び試験機
試料サイズ:幅10mm×試長間200mm
荷重:10g
測定回数:3回
測定温度:30℃
測定湿度:40%RHで6時間保持し寸法を測定し、昇湿速度1[%RH/分]で80%RHまで昇湿し、80%RHで6時間保持したあと寸法変化量ΔL[mm]を測定した。次式から湿度膨張係数[−/%RH]を算出した。
【0053】
湿度膨張係数[−/%RH]=(ΔL/200)/(80−40)
I.熱収縮率
フィルムを長手及び幅方向に幅10mm、長さ250mmに切り出し、約200mmの間隔で2本の標線を入れ、その間隔を23℃で測定する(これをXmmとする)。この試料の先端に0.15gの荷重をかけた状態で100℃雰囲気中30分間放置した後の標線間の間隔を再度23℃で測定し(これをYmmとする)、100×((X−Y)/X)をもって熱収縮率とした。
【0054】
J.延伸ロールの表面粗さ
Mitutoyo(株)製の表面粗さ計サーフテスト301を使用して、カットオフ0.25mmにてロール幅方向3点において中心面平均粗さを測定し、その平均値を採用した。
【0055】
K.三次元表面粗さ SRa
小坂研究所の三次元微細形状測定器(型式ET−350K)および三次元表面粗さ解析システム(型式TDA−22)を用いて三次元表面粗さSRa(中心面平均粗さ)を測定した。条件は下記の通りであり、20回の測定の平均値をもって値とした。
【0056】
・触針径 :2μm
・触針の荷重 :0.04mN
・縦倍率 :5万倍
・カットオフ :0.25mm
・送りピッチ :5μm
・測定長 :0.5mm
・測定面積 :0.2mm
・測定速度 :0.1mm/秒
L.フィルム表面状態の評価(ホルムアミド液滴の接触角)
一般に磁気記録媒体用の塗布液として有機溶剤が用いられることが多い。そのためフィルムの表面状態を層(A)におけるホルムアミド液滴の接触角により評価した。フィルム表面にホルムアミド液滴を滴下し、ホルムアミドとフィルム表面のなす静的接触角を接触角計CA−D型(協和界面科学(株)製)で測定した。各サンプル10回ずつ測定し、平均値をもって接触角とした。接触角が52度よりも大きい場合塗布はじきになりやすく、45度よりも小さい場合には塗布ムラになりやすいため、評価は下記の通りとした。
【0057】
45度 ≦ ホルムアミドの接触角 ≦ 52度 ; ○
上記範囲外の接触角 ; ×
(実施例1)
平均粒径0.55μm、体積形状係数f=0.51の球状シリカ粒子を含有するポリエチレンテレフタレート、平均粒径0.20μm、体積形状係数f=0.51の球状シリカ粒子を含有するポリエチレンテレフタレートと実質上粒子を含有しないポリエチレンテレフタレートのペレットを作り、0.55μmの粒子含有量が0.02重量%、0.20μmの粒子含有量が0.2重量%となるよう3種のペレットを混合することにより熱可塑性樹脂を調製した。この熱可塑性樹脂をそれぞれ160℃で8時間減圧乾燥した後、押出機に供給し、275℃で溶融押出して高精度濾過した。その後、285℃に保ったスリットダイを介し冷却ロール上に静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティングドラムに巻き付け冷却固化し、未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムを、最初に延伸温度105℃で2段階に分けて長手方向に3.5倍延伸した。このとき延伸前(予熱)工程でのポリエステルフィルム層(A)側とシリコーンロールの接触時間は0.4秒、層(A)側に接触するシリコーンロールの本数は1本とした。また、延伸工程におけるポリエステルフィルムの層(A)側とシリコーンロールとの接触時間は0.01秒とした。他はテフロン(登録商標)ロール及び金属ロールを用いた。シリコーンロールは、他のポリエステルフィルムと50万回(50万回転)接触させたものを用いた。シリコーン樹脂は東レダウコーニング(株)DY32−7045Uを用い、シリコーンロールの表面粗さRaは0.40μmとした。その後、この一軸延伸フィルムをテンタにより温度115℃で幅方向に4.0倍延伸した後、115℃で1.1倍再縦延伸した後、定長下205℃で3秒間熱処理した。その後幅方向に6%の弛緩処理を施し、全厚み6.0μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0058】
(実施例2)
他のポリエステルフィルムと20万回(20万回転)接触させたシリコーンロールを用いる以外は実施例1と同様にして二軸配向ポリエステフィルムを得た。
【0059】
(実施例3)
層(A)に添加する粒子の粒子種、平均粒径、添加量を変更し、熱可塑性樹脂Aを調製した。層(B)として平均粒径0.3μm、体積形状係数f=0.52のジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子を含有するポリエチレンテレフタレートと、平均粒径0.8μm、体積形状係数f=0.52のジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子を含有するポリエチレンテレフタレート、および実質上粒子を含有しないポリエチレンテレフタレートのペレットを、0.3μmの粒子含有量が0.60重量%、0.8μmの粒子含有量が0.05重量%となるよう混合して熱可塑性樹脂Bを調製した。これらの熱可塑性樹脂をそれぞれ160℃で8時間減圧乾燥した後、別々の押出機に供給し、275℃で溶融押出して高精度濾過した後、矩形の2層用合流ブロックで合流積層し、2層積層とした。更に長手及び幅方向の延伸倍率を変更し、他のフィルムと70万回(70万回転)接触させたシリコーンロールを使用する以外は、実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。全厚み6.0μm、層(B)の厚み0.5μmの二軸配向ポリエステルフィルムとした。
【0060】
(比較例1)
新品のシリコーンロールを用い、他のポリエステルフィルムと7万回(7万回転)接触させた時点で製品を採取した以外は、実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0061】
(比較例2)
層(A)、層(B)に添加する粒子の粒子種、平均粒径、添加量を変更して得られた未延伸フィルムをリニアモーター式の同時二軸延伸機により95℃で長手及び幅方向にそれぞれ3.5倍、トータルで12.3倍延伸しその後、再度190℃で長手方向に1.5倍延伸し、定長下、210℃で3秒間熱処理した。工程にシリコーンロールは用いなかった。その後幅方向に2%の弛緩処理を施し、全厚み4.5μm、層(B)の厚み1.0μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0062】
(比較例3)
縦延伸において、他のポリエステルフィルムに100万回(100万回転)接触させたシリコーンロールを用い、縦延伸の後、層(A)側に相当する片面に下記組成・濃度の水溶液を乾燥後の塗布厚みが5nmになるよう塗布し、反対面に下記組成・濃度の水溶液を乾燥後の塗布厚みが20nmになるよう塗布した。
【0063】
層(A)外側:メチルセルロース 0.100重量%
水溶性ポリエステル 0.300重量%
アミノエチルシランカップリング剤0.010重量%
ポリジメチルシロキサン(両末端アミノ基変性体) 0.002重量%
層(B)外側:メチルセルロース0.30重量%
水溶性ポリエステル 0.40重量%
アミノエチルシランカップリング剤0.03重量%
ポリジメチルシロキサン(両末端アミノ基変性体) 0.05重量%
その後、この一軸延伸フィルムをテンタにより温度100℃で幅方向に3.6倍延伸した後、再縦延伸を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。この時、層(B)側のポリエステル基本骨格に由来するフラグメントのピーク強度(K)に対する、ポリジメチルシロキサンに由来するフラグメントのピーク強度(P)の比(P/K)は、6.02であった。
【0064】
以上、得られたフィルムの評価結果は、表1、表2の通りであった。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の表面にポリジメチルシロキサンを有する二軸配向ポリエステルフィルムであって、質量分析計により測定される、ポリエステル基本骨格に由来するフラグメントのピーク強度(K)に対する、ポリジメチルシロキサンに由来するフラグメントのピーク強度(P)の比(P/K)が0.05〜0.25である二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項2】
厚みが3〜10μmである、請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項3】
塗布型磁気記録媒体用ベースフィルムとして用いられる、請求項1または2に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項4】
ポリジメチルシロキサンを含む工程ロールを用いて、この工程ロールに含まれるポリジメチルシロキサンをフィルム表面に転写する、請求項1〜3のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。

【公開番号】特開2007−253436(P2007−253436A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−80166(P2006−80166)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】