説明

二輪車用前照灯

【課題】灯室内にリフレクタユニット20およびエクステンションリフレクタ16が配置された二輪車用前照灯10において、リフレクタユニット20のシェード26に、本体支持部26Bの折れやリフレクタ24への固定部のガタが生じるのを効果的に抑制するとともに、熱によるエクステンションリフレクタ16の変形や変色の発生を効果的に抑制する。
【解決手段】シェード26を、光軸Axの真上の位置においてこれと平行に延びる断面略V字状の板状部材として構成する。その際、シェード本体部26Aを、本体支持部26Bよりも広幅で構成し、光源22aの発光中心Oから、光軸Axを含む鉛直面に対して左右各々15°の角度範囲内の方向に出射する光を遮蔽する構成とする。これにより、シェード26の剛性を十分に確保した上で、光源22aから斜め上前方へ向かう直射光を遮蔽する一方、シェード本体部26Aが光源22aからの輻射熱を受ける面積を小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ランプボディと透光カバーとで形成される灯室内に、リフレクタユニットおよびエクステンションリフレクタが配置された二輪車用前照灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多くの車両用前照灯は、ランプボディと透光カバーとで形成される灯室内に、リフレクタユニットが収容された構成となっている。
【0003】
このリフレクタユニットの構成としては、例えば「特許文献1」に記載された車両用前照灯のように、車両前後方向に延びる光軸の近傍に配置された光源と、この光源からの光を前方へ向けて反射させるリフレクタと、光源から前方へ向かう直射光を遮蔽するシェードとを備えたものが知られている。
【0004】
この「特許文献1」に記載されたシェードは、光源から前方へ向かう直射光を遮蔽するためのシェード本体部と、このシェード本体部から後方へ向けて延びるとともに後端部において上記リフレクタの後頂開口部近傍部位に固定された本体支持部とを備えた構成となっている。
【0005】
一方、「特許文献2」には、リフレクタユニットが前面レンズに固定された構成を有する車両用前照灯において、光源から斜め上前方へ向かう直射光を遮蔽するシェードを備えた構成が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2001−57103号公報
【特許文献1】特開平2−148603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記「特許文献1」に記載された車両用前照灯のように、光源から前方へ向かう直射光を遮蔽するシェードを備えた構成とすれば、対向車ドライバ等にグレアを与えないようにすることが可能となるが、これを二輪車用前照灯に適用しようとする場合には、次のような問題がある。
【0008】
すなわち、この「特許文献1」に記載された車両用前照灯のシェードは、キャップ状に形成されたシェード本体部が本体支持部を介してリフレクタに片持ち支持された構成となっているので、その自重による慣性モーメントは、かなり大きなものとなる。このため、二輪車走行中に激しい上下振動が生じる二輪車用前照灯の場合には、そのシェードに作用する衝撃荷重により、本体支持部に折れが生じたり、リフレクタへの固定部にガタが生じてしまう、という問題がある。
【0009】
これに対し、上記「特許文献2」に記載されているように、光源から前方へ向かう直射光を全般的に遮蔽するのではなく、その一部を遮蔽するように構成されたシェードを用いるようにすれば、その自重による慣性モーメントを小さくして、本体支持部の折れやリフレクタへの固定部のガタが生じてしまうのを抑制することが可能となる。
【0010】
しかしながら、この「特許文献2」に記載されたシェードは、上記「特許文献1」に記載されたシェードのシェード本体部のように、光軸に関して全周にわたって形成されてはいないものの、光軸の上方において、平面部およびその両側の斜面部により、光源を取り囲むように形成されているので、次のような問題がある。
【0011】
すなわち、多くの車両用前照灯においては、上記「特許文献1」にも記載されているように、ランプボディと透光カバーとで形成される灯室内に、リフレクタユニットが配置されるとともに、そのリフレクタの前端開口部と透光カバーとの間にエクステンションリフレクタが配置された構成となっている。
【0012】
このような構成を二輪車用前照灯に適用した場合、透光カバーは、その上端部が後方側へ大きく回り込むように形成されることが多いため、これに伴って、エクステンションリフレクタも、その上端部が前後方向に関してシェード本体部の略真上に位置することが多くなる。
【0013】
その際、シェード本体部が、光軸の上方において、光源を取り囲むように形成されていると、光源からの輻射熱によりシェード本体部が加熱されやすくなる。そして、この加熱されて高温になったシェード本体部から上昇する熱により、エクステンションリフレクタが変形したり変色してしまうおそれがある、という問題がある。
【0014】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ランプボディと透光カバーとで形成される灯室内に、リフレクタユニットおよびエクステンションリフレクタが配置された二輪車用前照灯において、リフレクタユニットのシェードに、その本体支持部の折れやリフレクタへの固定部のガタが生じてしまうのを効果的に抑制することができるとともに、熱によるエクステンションリフレクタの変形や変色の発生を効果的に抑制することができる二輪車用前照灯を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明は、シェードの構成に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0016】
すなわち、本願発明に係る二輪車用前照灯は、
ランプボディと透光カバーとで形成される灯室内に、車両前後方向に延びる光軸の近傍に配置された光源と、この光源からの光を前方へ向けて反射させるリフレクタと、上記光源から斜め上前方へ向かう直射光を遮蔽するシェードとを備えたリフレクタユニットが配置されるとともに、上記リフレクタの前端開口部と上記透光カバーとの間にエクステンションリフレクタが配置されてなる二輪車用前照灯において、
上記シェードが、上記光軸の真上の位置において該光軸と平行に延びる断面略V字状の板状部材として構成されており、
このシェードが、上記光源から斜め上前方へ向かう直射光を遮蔽するためのシェード本体部と、このシェード本体部から後方へ向けて延びるとともに後端部において上記リフレクタの後頂開口部近傍部位に固定された本体支持部とを備えてなり、
上記シェード本体部が、上記本体支持部よりも広幅で形成されており、
このシェード本体部が、上記光源の発光中心から、上記光軸を含む鉛直面に対して左右各々10〜20°の角度範囲内の方向に出射する光を遮蔽するように構成されている、ことを特徴とするものである。
【0017】
上記「光源」の種類は特に限定されるものではなく、例えば、放電バルブの放電発光部やハロゲンバルブのフィラメント等が採用可能である。
【0018】
上記「シェード」は、光軸の真上の位置において該光軸と平行に延びる断面略V字状の板状部材として構成されていれば、その具体的な断面形状は特に限定されるものではなく、また、そのシェード本体部において、光源から斜め上前方へ向かう直射光を遮蔽し得るように構成されていれば、その前後長の具体的な値についても特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0019】
上記構成に示すように、本願発明に係る二輪車用前照灯は、ランプボディと透光カバーとで形成される灯室内に、車両前後方向に延びる光軸の近傍に配置された光源と、この光源からの光を前方へ向けて反射させるリフレクタと、光源から斜め上前方へ向かう直射光を遮蔽するシェードとを備えたリフレクタユニットが配置されるとともに、リフレクタの前端開口部と透光カバーとの間にエクステンションリフレクタが配置された構成となっているが、上記シェードは、光軸の真上の位置において該光軸と平行に延びる断面略V字状の板状部材として構成されており、そして、このシェードは、光源から斜め上前方へ向かう直射光を遮蔽するためのシェード本体部と、このシェード本体部から後方へ向けて延びるとともに後端部においてリフレクタの後頂開口部近傍部位に固定された本体支持部とを備えた構成となっており、その際、シェード本体部は本体支持部よりも広幅で形成されており、そして、このシェード本体部は、光源の発光中心から、光軸を含む鉛直面に対して左右各々10〜20°の角度範囲内の方向に出射する光を遮蔽するように構成されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0020】
すなわち、本願発明に係る二輪車用前照灯のリフレクタユニットにおけるシェードは、そのシェード本体部が、その本体支持部よりも広幅で形成されており、光源の発光中心から光軸を含む鉛直面に対して、最小でも左右各々10°の角度範囲内の方向に出射する光を遮蔽するように構成されているので、光源から斜め上前方へ向かう直射光を遮蔽して、対向車ドライバにグレアを与えてしまうのを未然に防止することができる。
【0021】
その際、このシェードは、リフレクタに片持ち支持された構成となっており、かつ、そのシェード本体部が本体支持部よりも広幅で形成されているが、その遮光角度範囲は、最大でも光源の発光中心から光軸を含む鉛直面に対して左右各々20°であることから、シェード本体部を十分に軽量化することができ、このため、従来のシェードよりも、その自重による慣性モーメントを小さくすることができる。しかも、このシェードは、断面略V字状の板状部材として構成されているので、その剛性を十分に確保することができる。このため、二輪車の走行中に生じる激しい上下振動により、シェードに衝撃荷重が作用したような場合であっても、その本体支持部に折れが生じたり、リフレクタへの固定部にガタが生じてしまうのを、効果的に抑制することができる。
【0022】
また、このシェードは、光軸の真上の位置において該光軸と平行に延びているので、従来のシェードよりも、光源からの輻射熱を受ける面積を小さくすることができ、このため、そのシェード本体部から上昇する熱により、エクステンションリフレクタが変形したり変色してしまうのを効果的に抑制することができる。しかも、このシェードは、断面略V字状の板状部材として構成されているので、光源から上昇する熱をシェードで左右に振り分けるようにして対流させることができる。このため、このシェードのシェード本体部から上昇する熱が、エクステンションリフレクタの上端部に集中的に当たってしまうのを防止することができ、この点においても、熱によりエクステンションリフレクタが変形したり変色してしまうのを効果的に抑制することができる。
【0023】
このように本願発明によれば、ランプボディと透光カバーとで形成される灯室内に、リフレクタユニットおよびエクステンションリフレクタが配置された二輪車用前照灯において、リフレクタユニットのシェードに、その本体支持部の折れやリフレクタへの固定部のガタが生じてしまうのを効果的に抑制することができるとともに、熱によるエクステンションリフレクタの変形や変色の発生を効果的に抑制することができる。
【0024】
上記構成において、シェード本体部は、光源の発光中心から、光軸を含む鉛直面に対して左右各々10〜20°の角度範囲内の方向に出射する光を遮蔽するように構成されているが、対向車ドライバにグレアを与えてしまうのを未然に防止可能な範囲で、光源から斜め上前方へ向かう直射光を遮蔽する一方、シェードの自重による慣性モーメントをできるだけ小さくするとともに、熱によりエクステンションリフレクタが変形したり変色してしまうのをできるだけ効果的に抑制する、という観点からは、左右各々13〜17°の角度範囲内の方向に出射する光を遮蔽するように構成することが、より好ましい。
【0025】
上記構成において、シェード本体部の前端縁部および各側端縁部を、下方側へ屈曲するように形成すれば、シェード本体部の剛性をより高めることができ、かつ、光源から上昇する熱を左右に振り分けるようにして対流させる効果を、より高めることができる。
【0026】
上記構成において、光源を、先端部にブラックトップが形成されたガラス管を有するハロゲンバルブにおけるフィラメントとして構成するとともに、シェード本体部の下面における、少なくともブラックトップの後端縁の真上の位置よりも後方側に位置する領域に、黒色塗装を施すようにすれば、シェード本体部に到達した光源からの光が、その下面で反射して、リフレクタの反射面や周壁面に不用意に入射し、その反射光が上向きの迷光となって前方へ照射されてしまうのを効果的に抑制することができる。
【0027】
上記構成において、シェードの本体支持部の後端部に、リフレクタの後頂開口部に沿って、光軸に関して周方向に延びる周方向湾曲部を形成するとともに、この周方向湾曲部における光軸の真上から周方向にずれた位置において、本体支持部のリフレクタへの固定を行うようにすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0028】
すなわち、ハロゲンバルブ等においては、そのバルブ軸を中心とする回転方向の位置決めが、バルブ軸の真上の位置に設けられることが多いが、その際、シェードの本体支持部のリフレクタへの固定を、その周方向湾曲部における光軸の真上から周方向にずれた位置において行うことにより、シェードが光軸の真上の位置において該光軸と平行に延びているにもかかわらず、これをリフレクタに固定することが容易に可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0030】
図1は、本願発明の一実施形態に係る二輪車用前照灯10を示す正面図である。また、図2は、図1のII−II線断面図であり、図3は、図2のIII−III線断面詳細図である。
【0031】
これらの図に示すように、本実施形態に係る二輪車用前照灯10は、ランプボディ12とその前端開口部に取り付けられた素通し状の透光カバー14とで形成される灯室内に、リフレクタユニット20が、図示しないエイミング機構を介して傾動可能に収容された構成となっている。そして、上記灯室内には、リフレクタユニット20を囲むエクステンションリフレクタ16が、透光カバー14の内面に沿って設けられている。
【0032】
透光カバー14は、その上端部が後方側へ大きく回り込むように形成されている。
【0033】
リフレクタユニット20は、車両前後方向に延びる光軸Axの近傍に配置された光源22aと、この光源22aからの光を前方へ向けて反射させるリフレクタ24と、光源22aから斜め上前方へ向かう直射光を遮蔽するシェード26とを備えた構成となっている。
【0034】
エクステンションリフレクタ16は、このリフレクタユニット20におけるリフレクタ24の前端開口部24bと透光カバー14との間に配置されている。その際、このエクステンションリフレクタ16は、リフレクタ24の前端開口部24bに沿って、その全周にわたって環状に形成されている。具体的には、リフレクタ24の前端開口部24bは、灯具正面視において円形状に形成されており、これに伴い、エクステンションリフレクタ16も、灯具正面視において円環状に形成されている。
【0035】
光源22aは、H4タイプのハロゲンバルブ22におけるロービーム用フィラメントとして構成されている。
【0036】
このハロゲンバルブ22は、光源22aを収容する円筒状のガラス管22Aと、このガラス管22Aの後端部を支持する支持リング22Bとを備えており、そのガラス管22Aの前端部にはブラックトップ22Aaが塗布されている。
【0037】
このハロゲンバルブ22においては、ガラス管22A内における光源22aの近傍に、その略下半部を覆うインナシェード22cが配置されており、また、光源22aの後方には、もう1つの光源としてハイビーム用フィラメント22bが配置されている。その際、光源22aは、ハロゲンバルブ22のバルブ軸Ax1上において該バルブ軸Ax1に沿って延びる線分光源として構成されている。
【0038】
このハロゲンバルブ22は、リフレクタ24の後頂開口部24cにその後方側から挿入された状態で、その支持リング22Bの上部突起片22Baおよび左右1対の下部突起片22Bbがリフレクタ24と係合することにより、前後方向の位置決めおよびバルブ軸Ax1を中心とする周方向の位置決めが行われるようになっている。
【0039】
このハロゲンバルブ22は、リフレクタ24に固定された状態で、そのバルブ軸Ax1が光軸Axに対してやや上向き(具体的には1.5°程度上向き)になるように配置され、このとき光源22aは、その発光中心Oが光軸Axよりも僅かに上方に位置するようになっている。その際、インナシェード22cは、その左右両端縁が互いに同じ高さになるように配置されている。これを実現するため、支持リング22Bは、その上部突起片22Baが、光軸Axの真上から右方向(灯具正面視では左方向)に7.5°傾斜するように配置された状態で、リフレクタ24に位置決めされるようになっている。
【0040】
リフレクタ24は、その反射面24aが、ハイビーム用フィラメント22bの前端近傍位置を焦点とするとともに光軸Axを中心軸とする回転放物面を基準面として形成された複数の反射素子24sからなり、これら各反射素子24sにより、光源22a(またはハイビーム用フィラメント22b)からの光を前方へ向けて拡散偏向反射させるようになっている。
【0041】
なお、リフレクタユニット20には、そのハロゲンバルブ22にゴムカバー18の内周端部が装着されており、このゴムカバー18の外周端部はランプボディ12に装着されている。
【0042】
図4は、シェード26を単品で示す図であって、同図(a)が正面図、同図(b)が左側面図、同図(c)が平面図である。
【0043】
同図にも示すように、シェード26は、光軸Axの真上の位置において該光軸Axと平行に延びる断面略V字状の板状部材として構成されている。
【0044】
このシェード26は、光源22aから斜め上前方へ向かう直射光を遮蔽するためのシェード本体部26Aと、このシェード本体部26Aから後方へ向けて延びるとともに後端部においてリフレクタの後頂開口部24c近傍部位に固定された本体支持部26Bとを備えた構成となっている。その際、シェード本体部26Aと本体支持部26Bとの境界は、光源22aの発光中心Oの略真上に位置している。
【0045】
シェード本体部26Aは、本体支持部26Bよりも広幅で形成されている。その際、本体支持部26Bは、その後端部を除いて左右一定幅で形成されているが、シェード本体部26Aは、平面視において、その後端部が本体支持部26Bへ向けて徐々に幅が狭くなるように形成されている。そして、このシェード本体部26Aは、光源22aの前端縁とブラックトップ22Aaの後端縁との略中点の位置から前方側に位置する部分が左右一定幅で形成されている。
【0046】
このシェード本体部26Aにおける左右一定幅で形成された部分は、その前端縁部26Aaおよび各側端縁部26Abが、下方側へ屈曲するように形成されている。その際、前端縁部26Aaは、水平方向に対して40〜50°程度斜め下方へ向けて屈曲しており、一方、各側端縁部26Abは、略真下へ向けて屈曲している。そして、シェード本体部26Aは、その左右一定幅で形成された部分において、光源22aの発光中心Oから、光軸Axを含む鉛直面に対して左右各々角度θ(θ=10〜20°)の角度範囲内(具体的には例えばθ=15°の角度範囲内)の方向に出射する光を遮蔽するように構成されている。
【0047】
このシェード本体部26Aの下面には、ブラックトップ22Aaの後端縁の真上の位置よりも後方側に位置する領域に、黒色塗装30が施されている。その際、この黒色塗装30は、上記領域だけでなく、本体支持部26Bの下面における前端部に位置する領域まで跨るようにして施されている。
【0048】
本体支持部26Bの後端部には、リフレクタ24の後頂開口部24cに沿って光軸Axに関して周方向に延びる周方向湾曲部26Baが形成されている。その際、この周方向湾曲部26Baは、光軸Axの真上から左方向(すなわち、ハロゲンバルブ22における支持リング22Bの上部突起片22Baの傾斜方向とは逆方向)に延びている。そして、この周方向湾曲部26Baの周方向先端部の後端縁には、光軸Axに関して周方向湾曲部26Baよりもやや大きい径の位置において後方へ向けて延びる段上がり部26Bbが形成されており、さらに、この段上がり部26Bbの後端縁には、光軸Axに関して外周側へ直角に折れ曲がった固定用平面部26Bcが形成されている。
【0049】
この固定用平面部26Bcには、ネジ挿通孔26Bc1およびその周方向両側に1対の位置決め孔26Bc2が形成されている。その際、ネジ挿通孔26Bc1は、光軸Axの真上から左方向に20〜30°程度(具体的には例えば25°)傾斜した位置に形成されている。
【0050】
そして、この固定用平面部26Bcをリフレクタ24の後頂開口部24cの近傍部位に後方側から位置決めして当接させた状態で、ネジ締めすることにより、本体支持部26Bのリフレクタ24への固定が、周方向湾曲部26Baにおける光軸Axの真上から周方向にずれた位置において行われるようになっている。
【0051】
このとき、本体支持部26Bにおける段上がり部26Bbおよび固定用平面部26Bcは、ハロゲンバルブ22における支持リング22Bの上部突起片22Baから周方向に離れた位置にあるので、両者の干渉が未然に回避されることとなる。
【0052】
なお、リフレクタ24の後頂開口部24cには、本体支持部26Bの周方向湾曲部26Baを、その周方向先端部の後端縁の位置において挿通させるための切欠き部24c1が形成されている。
【0053】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0054】
本実施形態に係る二輪車用前照灯10のリフレクタユニット20におけるシェード26は、そのシェード本体部26Aが、その本体支持部26Bよりも広幅で形成されており、光源22aの発光中心Oから光軸Axを含む鉛直面に対して左右各々15°の角度範囲内の方向に出射する光を遮蔽するように構成されているので、光源22aから斜め上前方へ向かう直射光を遮蔽して、対向車ドライバにグレアを与えてしまうのを未然に防止することができる。
【0055】
その際、このシェード26は、リフレクタ24に片持ち支持された構成となっており、かつ、そのシェード本体部26Aが本体支持部26Bよりも広幅で形成されているが、その遮光角度範囲は左右各々15°に設定されていることから、シェード本体部26Aを十分に軽量化することができ、このため、従来のシェードよりも、その自重による慣性モーメントを小さくすることができる。しかも、このシェード26は、断面略V字状の板状部材として構成されているので、その剛性を十分に確保することができる。このため、二輪車の走行中に生じる激しい上下振動により、シェード26に衝撃荷重が作用したような場合であっても、その本体支持部26Bに折れが生じたり、リフレクタ24への固定部にガタが生じてしまうのを、効果的に抑制することができる。
【0056】
また、このシェード26は、光軸Axの真上の位置において該光軸Axと平行に延びているので、従来のシェードよりも、光源22aからの輻射熱を受ける面積を小さくすることができ、このため、そのシェード本体部26Aから上昇する熱により、エクステンションリフレクタ16が変形したり変色してしまうのを効果的に抑制することができる。しかも、このシェード26は、断面略V字状の板状部材として構成されているので、光源22aから上昇する熱をシェード26で左右に振り分けるようにして対流させることができる。このため、このシェード26のシェード本体部26Aから上昇する熱が、エクステンションリフレクタ16の上端部に集中的に当たってしまうのを防止することができ、この点においても、熱によりエクステンションリフレクタ16が変形したり変色してしまうのを効果的に抑制することができる。
【0057】
このように本実施形態によれば、ランプボディ12と透光カバー14とで形成される灯室内に、リフレクタユニット20およびエクステンションリフレクタ16が配置された二輪車用前照灯10において、リフレクタユニット20のシェード26に、その本体支持部26Bの折れやリフレクタ24への固定部のガタが生じてしまうのを効果的に抑制することができるとともに、熱によるエクステンションリフレクタ16の変形や変色の発生を効果的に抑制することができる。
【0058】
しかも、本実施形態に係る二輪車用前照灯10のシェード26は、そのシェード本体部26Aの前端縁部26Aaおよび各側端縁部26Abが、下方側へ屈曲するように形成されているので、シェード本体部26Aの剛性をより高めることができ、かつ、光源22aから上昇する熱を左右に振り分けるようにして対流させる効果を、より高めることができる。
【0059】
また、本実施形態に係る二輪車用前照灯10は、その光源22aが、先端部にブラックトップ22Aaが形成されたガラス管を有するハロゲンバルブにおけるフィラメントとして構成されるとともに、シェード本体部26Aの下面における、少なくともブラックトップ22Aaの後端縁の真上の位置よりも後方側に位置する領域に、黒色塗装30が施されているので、シェード本体部26Aに到達した光源22aからの光が、その下面で反射して、リフレクタ24の反射面や周壁面に不用意に入射し、その反射光が上向きの迷光となって前方へ照射されてしまうのを効果的に抑制することができる。
【0060】
さらに、本実施形態に係る二輪車用前照灯10は、そのシェード26の本体支持部26Bの後端部に、リフレクタ24の後頂開口部24cに沿って、光軸Axに関して周方向に延びる周方向湾曲部26Baが形成されるとともに、この周方向湾曲部26Baにおける光軸Axの真上から周方向にずれた位置において、本体支持部26Bのリフレクタ24への固定が行われているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0061】
すなわち、本実施形態に係る二輪車用前照灯10は、H4タイプのハロゲンバルブ22を備えているが、このハロゲンバルブ22は、そのバルブ軸Ax1の真上の位置に、バルブ軸Ax1を中心とする回転方向の位置決めを行うための上部突起片22Baが設けられている。その際、シェード26の本体支持部26Bのリフレクタ24への固定を、その後端部に形成された周方向湾曲部26Baにおける光軸Axの真上から周方向にずれた位置において行うことにより、シェード26が、光軸Axの真上の位置において該光軸Axと平行に延びているにもかかわらず、これをリフレクタ24に固定することが容易に可能となる。
【0062】
上記実施形態においては、灯具正面視において、リフレクタ24の前端開口部24bが円形状に形成されており、これに伴い、エクステンションリフレクタ16も、円環状に形成されているものとして説明したが、リフレクタ24の前端開口部24bおよびエクステンションリフレクタ16が、上記実施形態とは異なる形状に設定されている場合においても、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0063】
なお、上記実施形態において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本願発明の一実施形態に係る二輪車用前照灯を示す正面図
【図2】図1のII-II 線断面図
【図3】図2のIII−III線断面詳細図
【図4】上記二輪車用前照灯のシェードを単品で示す図であって、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は平面図
【符号の説明】
【0065】
10 二輪車用前照灯
12 ランプボディ
14 透光カバー
16 エクステンションリフレクタ
18 ゴムカバー
20 リフレクタユニット
22 ハロゲンバルブ
22A ガラス管
22Aa ブラックトップ
22B 支持リング
22Ba 上部突起片
22Bb 下部突起片
22a 光源(ロービーム用フィラメント)
22b ハイビーム用フィラメント
22c インナシェード
24 リフレクタ
24a 反射面
24b 前端開口部
24c 後頂開口部
24c1 切欠き部
24s 反射素子
26 シェード
26A シェード本体部
26Aa 前端縁部
26Ab 側端縁部
26B 本体支持部
26Ba 周方向湾曲部
26Bb 段上がり部
26Bc 固定用平面部
26Bc1 ネジ挿通孔
26Bc2 位置決め孔
30 黒色塗装
Ax 光軸
Ax1 バルブ軸
O 発光中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプボディと透光カバーとで形成される灯室内に、車両前後方向に延びる光軸の近傍に配置された光源と、この光源からの光を前方へ向けて反射させるリフレクタと、上記光源から斜め上前方へ向かう直射光を遮蔽するシェードとを備えたリフレクタユニットが配置されるとともに、上記リフレクタの前端開口部と上記透光カバーとの間にエクステンションリフレクタが配置されてなる二輪車用前照灯において、
上記シェードが、上記光軸の真上の位置において該光軸と平行に延びる断面略V字状の板状部材として構成されており、
このシェードが、上記光源から斜め上前方へ向かう直射光を遮蔽するためのシェード本体部と、このシェード本体部から後方へ向けて延びるとともに後端部において上記リフレクタの後頂開口部近傍部位に固定された本体支持部とを備えてなり、
上記シェード本体部が、上記本体支持部よりも広幅で形成されており、
このシェード本体部が、上記光源の発光中心から、上記光軸を含む鉛直面に対して左右各々10〜20°の角度範囲内の方向に出射する光を遮蔽するように構成されている、ことを特徴とする二輪車用前照灯。
【請求項2】
上記シェード本体部の前端縁部および各側端縁部が、下方側へ屈曲するように形成されている、ことを特徴とする請求項1記載の二輪車用前照灯。
【請求項3】
上記光源が、先端部にブラックトップが形成されたガラス管を有するハロゲンバルブにおけるフィラメントとして構成されており、
上記シェード本体部の下面における、少なくとも上記ブラックトップの後端縁の真上の位置よりも後方側に位置する領域に、黒色塗装が施されている、ことを特徴とする請求項1または2記載の二輪車用前照灯。
【請求項4】
上記本体支持部の後端部に、上記リフレクタの後頂開口部に沿って上記光軸に関して周方向に延びる周方向湾曲部が形成されており、
この周方向湾曲部における光軸の真上から周方向にずれた位置において、上記本体支持部の上記リフレクタへの固定が行われている、ことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の二輪車用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−255783(P2009−255783A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108359(P2008−108359)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】