二輪車用前照灯
【課題】フィラメントと該フィラメントを支持する導入線とを有する光源バルブを備えた一対の灯具ユニットが組み込まれた二輪車用の左右2灯式の前照灯において、フィラメントと導入線の位置関係に起因して発生する照射光の配光パターンにおける暗部領域を、左右灯具ユニットによる合成配光パターンによって明るさの平滑化することにより路面を均一な明るさで照射するようにすることにある。
【解決手段】前照灯を二輪車に搭載した状態において、前照灯1を構成する灯具ユニット4に取り付ける光源バルブ5を、導入線の折曲形成部13abがフィラメント6の上側の該フィラメント6の真上よりも他方の灯具ユニット4側に位置するように配置した。
【解決手段】前照灯を二輪車に搭載した状態において、前照灯1を構成する灯具ユニット4に取り付ける光源バルブ5を、導入線の折曲形成部13abがフィラメント6の上側の該フィラメント6の真上よりも他方の灯具ユニット4側に位置するように配置した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車用前照灯に関するものであり、詳しくは、発光源をフィラメントとするプロジェクタタイプの灯具ユニットを備えた左右2灯式の二輪車用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィラメント(シングルフィラメント)を内蔵した光源バルブに関しては、ガラスバルブ内に支持されるフィラメントのマウント構造体について、図9に示すように、ハロゲンガスを封入したガラスバルブ50の中心軸上にタングステン等からなるフィラメント51を配置し、該フィラメント51をフィラメント51に略平行に並設された導入線52a、52bによって支持する構成が開示されている。
【0003】
そして、上記構成の光源バルブ53を車両用前照灯に搭載するにあたり、図10(a)、(b)に示すように、フィラメント51を中心として該フィラメント51と導入線52aとが車両の天地方向に対し、同一線上に位置しない角度θをなして取り付けられたものである。
【0004】
これは、光源バルブを、導入線がフィラメントの真上に位置する状態で車両用前照灯に取り付けると、通電時のフィラメントの加熱により蒸発したタングステン原子の上昇が導入線により阻害されると共に導入線とガラスバルブの間にハロゲンガスの滞留が発生してハロゲンサイクルが正常に機能しなくなり、その結果、ガラスバルブ内面にハロゲンが付着して黒化現象が生じ、光出力が低下するためである(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2008−41545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記構成のマウント構造体を有する光源バルブは、フィラメントから出射された光のうち、導入線に向かう光は該導入線で遮られて光路が遮断され、その照射光に暗部を生じることになる。
【0006】
そのため、このような光源バルブを二輪車の左右2灯式の前照灯を構成する一対の灯具ユニットの光源として、図11、図12に示すような方向で灯具ユニットに配置すると、以下のような問題が生じる。
【0007】
図11は前照灯の上方から該前照灯を構成する一対の灯具ユニット62と該灯具ユニット62で照射された走行方向の前方の路面61を見た図であり、符号62は灯具ユニット、63は灯具ユニット62を構成する光源バルブ、64はリフレクタ、65は集光レンズを示している。図12は前照灯60の前方から光源バルブ63を見た図であり、符号66は光源バルブ63に内蔵されたフィラメント、67はフィラメント66を支持する導入線を示している。
【0008】
問題となる光源バルブ63の配置は図12に示すように、導入線67をフィラメント66の真上に位置させるものである。
【0009】
この状態でフィラメント66に通電して点灯させると、図11に示すように、両灯具ユニット62から出射された光が互いに重なり合って走行方向の前方を照射する。このとき、導入線67が灯具ユニット62の中心軸上に位置するフィラメント66の真上に位置するため、フィラメント66から出射した光が導入線67で遮られて生じた暗部68(影の部分)が灯具ユニット62の照射光の中央部に形成されて路面61上に投影される。
【0010】
そして、互いの照射光の暗部68が走行方向の前方で重畳されて暗部68が強調され、夜間走行のドライバーにとって前方の視認性が低下し、安全走行に支障をきたすことにもなりかねない。
【0011】
特に、二輪車の左右2灯式の前照灯の場合、灯具ユニットの取付要件で左右の光源バルブの発光部端部間の距離が200mm以下と規定されており、四輪車に比べて左右灯具ユニットの間隔が狭いために左右の光源ユニットからの照射光の互いの暗部が中央部で重畳されやすくなり、四輪車よりも走行環境(視認性)が悪化してより安全走行に支障をきたすことにもなる。
【0012】
そこで、本発明は上記問題に鑑みて創案なされたもので、その目的とするところは、ガラスバルブの中心軸上に配置されたフィラメントとフィラメントに略平行に並設されて該フィラメントを支持する導入線とを有する光源バルブを備えた一対の灯具ユニットが組み込まれた二輪車用の左右2灯式の前照灯において、フィラメントと該フィラメントを支持する導入線の位置関係に起因して発生する照射光の暗部領域を周囲の明るさとの平滑化を図り、進行方向の前方を配光分布が均一な照射光で照射することによりドライバーの視認性を高めて安全走行に寄与する二輪車用前照灯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載された発明は、ガラスバルブの中心軸上に配置されたフィラメントと前記フィラメントに略平行に並設されて前記フィラメントを支持する導入線とを有する光源バルブを備えた一対の灯具ユニットが組み込まれた二輪車用の左右2灯式の前照灯であって、
各前記灯具ユニットの光源バルブは前記前照灯を二輪車に搭載した状態において、前記導入線が前記フィラメントの上側の該フィラメントの真上よりも他方の前記灯具ユニット側、又は、前記導入線が前記フィラメントの上側の該フィラメントとの真上よりも路肩側に位置するように配置されていることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の請求項2に記載された発明は、請求項1において、前記灯具ユニットはプロジェクタタイプであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の二輪車用前照灯は、夫々発光源をフィラメントとする光源バルブを備えた一対の灯具ユニットを組み込んだ二輪車用の左右2灯式の前照灯であって、前照灯を二輪車に搭載した状態において、フィラメントを支持する導入線がフィラメントの上側の該フィラメントの真上よりも他方の灯具ユニット側、又は、導入線がフィラメントの上側の該フィラメントの真上よりも路肩側に位置するように、光源バルブを光源ユニットに取り付けた。
【0016】
その結果、フィラメントと該フィラメントを支持する導入線の位置関係に起因して発生する照射光の暗部領域を周囲の明るさとの平滑化を図り、進行方向の前方を配光分布が均一な照射光で照射することによりドライバーの視認性を高めて安全走行に寄与することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の好適な実施形態を図1から図8を参照しながら、詳細に説明する(同一部分については同じ符号を付す)。尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施形態に限られるものではない。
【0018】
図1は本発明の二輪車用前照灯(以下、前照灯と略称する)の正面図である。前照灯1はハウジング2とアウターレンズ3で囲まれた内部空間にプロジェクタ式の灯具ユニット4が配置された構成となっている。この場合、前照灯1は左右2灯式であり、一対の灯具ユニット4は前照灯1の左右対称の位置に配置されている。
【0019】
灯具ユニット4は図2に示すように、光源となるバルブ(以下、光源バルブと呼称する)5と、光源バルブ5のフィラメント6の位置を第一焦点f1とする回転楕円面などの楕円系の反射面7を有するリフレクタ8と、前記リフレクタ8の楕円系反射面7の第二焦点f2の近傍に設けられて略下半部を塞ぐ遮蔽板9と、遮蔽板9の前方に位置して該遮蔽板9の近傍に焦点を有する投影レンズ10と、該投影レンズ10を支持するレンズホルダ11を備えている。前記楕円系反射面7の第一焦点f1及び第二焦点f2が位置する長軸Xはこの灯具ユニット4の照射軸と一致している。
【0020】
灯具ユニット4をこのような構成とすることにより、第一焦点f1に位置するフィラメント6から出射されてリフレクタ8の楕円系反射面7で反射されて第二焦点f2に向かう光線は、遮蔽板9で下半部が遮られて断面形状が下弦の略半円状となり、この断面形状に成形された光線を投影レンズ10で照射方向に投影することによって前照灯としての配光特性を得るものである。なお、投影レンズ10で投影された像は上下左右が180°反転するため、照射光の配光特性は上弦の略半円状となり、対向車に対して幻或を与える恐れがある上向き光を含まない配光特性(すれ違い用)が得られるものとなる。このような構成は従来のプロジェクタ方式の灯具ユニットと同様である。
【0021】
光源となるバルブ(光源バルブ)は上述のように発光源としてフィラメントを内蔵しており、図3は詳しくその構成を示している。
【0022】
そこで図3より、略円筒形状のガラスバルブ12に内蔵されたフィラメント6は、その巻線方向を該ガラスバルブ12の中心軸と同一線上に位置する上記長軸Xと平行とし、且つ巻線の中心軸が長軸Xと略同一線上に位置するように配置されている。
【0023】
そして、フィラメント6の一方の端部6aは、一対の導入線13a、13bのうち一方の導入線13aの一方の端部13aaに接続され、該導入線13aの端部13aaは長軸Xと垂直な方向の上方に延びた後、光源バルブ5の後側に折曲されてフィラメント6と平行に並設された状態に架空配線されている。
【0024】
フィラメント6の他方の端部6bは、他方の導入線13bの一方の端部13baに接続され、該導入線13bの端部13baは長軸Xと垂直な方向の下方に延びた後、光源バルブ5の後側に折曲されて長軸Xと平行な状態に架空配線されている。
【0025】
これにより、フィラメント6が、一対の導入線13a、13bによってガラスバルブ12内の所定の位置に所定の方向で支持・固定されている。
【0026】
このような構成の光源バルブ5は従来例のものと同様である。従って、このような構成の光源バルブ5を光源とする灯具ユニット4の配光パターンにおいては、導入線13aの折曲形成部13abによる影によって暗い部分(暗部)が形成されることになる。本発明はこのような構成の光源バルブを内蔵した灯具ユニットを前照灯に取り付けるに当たり、灯具ユニットに対する光源バルブの取り付け状態に工夫を凝らすことにより該光源バルブが抱える前記暗部の発生を回避しようとするものである。
【0027】
具体的には、図4の背面図に示すように、光源バルブ5を従来の灯具ユニット4に対する取り付け方向に対して、前照灯の垂直方向の面Yと平行な面Y1を基準として互いに相反する方向に所定の角度αだけ傾けた状態で灯具ユニット4に取り付けるようにした。図中ではα=30°傾けた状態を示している。
【0028】
この状態を前照灯の前方から見た図が図5である。この図は前照灯からアウターレンズ及び灯具ユニットから投影レンズを取り除いた状態が示されている。
【0029】
光源バルブ5に内蔵された、フィラメント6と導入線13aの折曲形成部13abとの配置方向に注目すると、導入線13aの折曲形成部13abがフィラメント6の上側、つまり、フィラメント6を含む、路面に平行な面Zの上側の、該フィラメント6の真上よりも互いに他方の灯具ユニット4側に位置するように、光源バルブ5を灯具ユニット4に取り付けている。このとき、フィラメント6と導入線13aの折曲形成部13abを含む面Tと、フィラメント6を含む、面Yと平行な面Y1のなす角αが30°となるように設定されている。
【0030】
このように、前照灯1を構成する一対の灯具ユニット4に取り付けられる各光源バルブ5を、該光源バルブ5に内蔵されるフィラメント6と導入線13aの折曲形成部13abが上記位置関係となるように設定することにより、前照灯1の左右の灯具ユニット4の夫々からの照射光で路面を照らすと、路面上では各灯具ユニット4の照射光により形成された配光パターンが重畳された合成配光パターンが形成されるが、その合成された配光パターンは互いの配光パターンが略一致した状態で重畳されたものではなく、互いの配光パターンがずれた状態で重畳されたものとなる。
【0031】
そのため、路面上では夫々の配光パターンの明るい領域と暗い領域が互いに補完し合って明暗の差が低減され、均一な明るさで照らすことができる。
【0032】
特に、二輪車の2灯式前照灯の場合、左右の発光部端部間の距離が200mm以下と規定されており、四輪車に比べて灯具ユニット間の間隔が狭くなっている。本実施形態の前照灯では、左右の灯具ユニットの位置が接近して配置されているにも拘らず図6(前照灯による路面の照射状態)に示すように、フィラメント6から出射した光が導入線13aの折曲形成部13abで遮られて生じた暗部(影の部分)14が灯具ユニット4の照射光の互いの外側寄りに形成されて路面15上に投影される。
【0033】
その結果、各灯具ユニット4からの照射光の合成配光パターンは互いの明るい領域と暗い領域の明るさの平滑化が行われ、進行方向の前方を配光分布が均一な照射光で照射することによりドライバーの視認性を高めて安全走行に寄与する二輪車用前照灯が実現できる。
【0034】
図7は本発明の二輪車用前照灯の他の実施形態を前方から見た図である。
【0035】
光源バルブ5に内蔵された、フィラメント6と導入線13aの折曲形成部13abとの配置方向に注目すると、導入線13aの折曲形成部13abがフィラメント6の上側、つまり、フィラメント6を含む、路面に平行な面Zの上側の、該フィラメント6の真上よりも互いに同一方向にずれた位置に位置するように、光源バルブ5を灯具ユニット4に取り付けている。このとき、フィラメント6と導入線13aの折曲形成部13abを含む面Tと、フィラメント6を含む、面Yと平行な面Y1のなす角αが30°となるように設定されている。
【0036】
なお、フィラメント6の真上に対して導入線13aの折曲形成部13abのずれる方向は、前照灯1を二輪車に搭載したときに、互いに路肩側となる。
【0037】
このように、前照灯1を構成する一対の灯具ユニット4に取り付けられる各光源バルブ5を、該光源バルブ5に内蔵されるフィラメント6と導入線13aの折曲形成部13abが上記位置関係となるように設定することにより、前照灯1の左右の灯具ユニット4の夫々からの照射光で路面を照らすと、路面上では各灯具ユニット4の照射光により形成された配光パターンが重畳された合成配光パターンが形成されるが、その合成された配光パターンは互いの配光パターンが略一致した状態で重畳されたものではなく、互いの配光パターンがずれた状態で重畳されたものとなる。
【0038】
そのため、路面上では夫々の配光パターンの明るい領域と暗い領域が互いに補完し合って明暗の差が低減され、均一な明るさで照らすことができる。
【0039】
本実施形態の前照灯では、左右の灯具ユニットの位置が接近して配置されているにも拘らず図8(前照灯による路面の照射状態)に示すように、フィラメント6から出射した光が導入線13aの折曲形成部13abで遮られて生じた暗部(影の部分)14が灯具ユニット4の照射光の互いの対向車線寄りに形成されて路面15上に投影される。
【0040】
その結果、各灯具ユニット4からの照射光の合成配光パターンは互いの明るい領域と暗い領域の明るさの平滑化が行われ、進行方向の前方を配光分布が均一な照射光で照射することによりドライバーの視認性を高めて安全走行に寄与する二輪車用前照灯が実現できる。
【0041】
以上のように、本発明の二輪車用前照灯は、該前照灯を二輪車に搭載した状態において、前照灯を構成する一対の灯具ユニットに取り付ける光源バルブを、導入線がフィラメントの上側の該フィラメントの真上よりも互いの他方の前記灯具ユニット側、又は、導入線がフィラメントの上側の該フィラメントの真上よりも路肩側に位置するように配置した。
【0042】
そのため、二輪車の進行方向の前方を配光分布が均一な照射光で照射することが可能となり、ドライバーの視認性が高まって安全走行に寄与することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る実施形態の正面図である。
【図2】灯具ユニットの説明図である。
【図3】光源バルブの説明図である。
【図4】本発明に係る実施形態の背面図である。
【図5】本発明に係る実施形態のフィラメントと導入線の位置関係を示す説明図である。
【図6】実施形態による路面上の照射状態を示す説明図である。
【図7】本発明に係る他の実施形態のフィラメントと導入線の位置関係を示す説明図である。
【図8】他の実施形態による路面上の照射状態を示す説明図である。
【図9】従来例の光源バルブの説明図である。
【図10】従来例の光源バルブの配置を示す説明図である。
【図11】従来例による路面上の照射状態を示す説明図である。
【図12】従来例のフィラメントと導入線の位置関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1 前照灯
2 ハウジング
3 アウターレンズ
4 灯具ユニット
5 光源バルブ
6 フィラメント
6a、6b 端部
7 反射面
8 リフレクタ
9 遮蔽板
10 投影レンズ
11 レンズホルダ
12 ガラスバルブ
13a、13b 導入線
13aa 13ba 端部
13ab 折曲形成部
14 暗部
15 路面
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車用前照灯に関するものであり、詳しくは、発光源をフィラメントとするプロジェクタタイプの灯具ユニットを備えた左右2灯式の二輪車用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィラメント(シングルフィラメント)を内蔵した光源バルブに関しては、ガラスバルブ内に支持されるフィラメントのマウント構造体について、図9に示すように、ハロゲンガスを封入したガラスバルブ50の中心軸上にタングステン等からなるフィラメント51を配置し、該フィラメント51をフィラメント51に略平行に並設された導入線52a、52bによって支持する構成が開示されている。
【0003】
そして、上記構成の光源バルブ53を車両用前照灯に搭載するにあたり、図10(a)、(b)に示すように、フィラメント51を中心として該フィラメント51と導入線52aとが車両の天地方向に対し、同一線上に位置しない角度θをなして取り付けられたものである。
【0004】
これは、光源バルブを、導入線がフィラメントの真上に位置する状態で車両用前照灯に取り付けると、通電時のフィラメントの加熱により蒸発したタングステン原子の上昇が導入線により阻害されると共に導入線とガラスバルブの間にハロゲンガスの滞留が発生してハロゲンサイクルが正常に機能しなくなり、その結果、ガラスバルブ内面にハロゲンが付着して黒化現象が生じ、光出力が低下するためである(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2008−41545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記構成のマウント構造体を有する光源バルブは、フィラメントから出射された光のうち、導入線に向かう光は該導入線で遮られて光路が遮断され、その照射光に暗部を生じることになる。
【0006】
そのため、このような光源バルブを二輪車の左右2灯式の前照灯を構成する一対の灯具ユニットの光源として、図11、図12に示すような方向で灯具ユニットに配置すると、以下のような問題が生じる。
【0007】
図11は前照灯の上方から該前照灯を構成する一対の灯具ユニット62と該灯具ユニット62で照射された走行方向の前方の路面61を見た図であり、符号62は灯具ユニット、63は灯具ユニット62を構成する光源バルブ、64はリフレクタ、65は集光レンズを示している。図12は前照灯60の前方から光源バルブ63を見た図であり、符号66は光源バルブ63に内蔵されたフィラメント、67はフィラメント66を支持する導入線を示している。
【0008】
問題となる光源バルブ63の配置は図12に示すように、導入線67をフィラメント66の真上に位置させるものである。
【0009】
この状態でフィラメント66に通電して点灯させると、図11に示すように、両灯具ユニット62から出射された光が互いに重なり合って走行方向の前方を照射する。このとき、導入線67が灯具ユニット62の中心軸上に位置するフィラメント66の真上に位置するため、フィラメント66から出射した光が導入線67で遮られて生じた暗部68(影の部分)が灯具ユニット62の照射光の中央部に形成されて路面61上に投影される。
【0010】
そして、互いの照射光の暗部68が走行方向の前方で重畳されて暗部68が強調され、夜間走行のドライバーにとって前方の視認性が低下し、安全走行に支障をきたすことにもなりかねない。
【0011】
特に、二輪車の左右2灯式の前照灯の場合、灯具ユニットの取付要件で左右の光源バルブの発光部端部間の距離が200mm以下と規定されており、四輪車に比べて左右灯具ユニットの間隔が狭いために左右の光源ユニットからの照射光の互いの暗部が中央部で重畳されやすくなり、四輪車よりも走行環境(視認性)が悪化してより安全走行に支障をきたすことにもなる。
【0012】
そこで、本発明は上記問題に鑑みて創案なされたもので、その目的とするところは、ガラスバルブの中心軸上に配置されたフィラメントとフィラメントに略平行に並設されて該フィラメントを支持する導入線とを有する光源バルブを備えた一対の灯具ユニットが組み込まれた二輪車用の左右2灯式の前照灯において、フィラメントと該フィラメントを支持する導入線の位置関係に起因して発生する照射光の暗部領域を周囲の明るさとの平滑化を図り、進行方向の前方を配光分布が均一な照射光で照射することによりドライバーの視認性を高めて安全走行に寄与する二輪車用前照灯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載された発明は、ガラスバルブの中心軸上に配置されたフィラメントと前記フィラメントに略平行に並設されて前記フィラメントを支持する導入線とを有する光源バルブを備えた一対の灯具ユニットが組み込まれた二輪車用の左右2灯式の前照灯であって、
各前記灯具ユニットの光源バルブは前記前照灯を二輪車に搭載した状態において、前記導入線が前記フィラメントの上側の該フィラメントの真上よりも他方の前記灯具ユニット側、又は、前記導入線が前記フィラメントの上側の該フィラメントとの真上よりも路肩側に位置するように配置されていることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の請求項2に記載された発明は、請求項1において、前記灯具ユニットはプロジェクタタイプであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の二輪車用前照灯は、夫々発光源をフィラメントとする光源バルブを備えた一対の灯具ユニットを組み込んだ二輪車用の左右2灯式の前照灯であって、前照灯を二輪車に搭載した状態において、フィラメントを支持する導入線がフィラメントの上側の該フィラメントの真上よりも他方の灯具ユニット側、又は、導入線がフィラメントの上側の該フィラメントの真上よりも路肩側に位置するように、光源バルブを光源ユニットに取り付けた。
【0016】
その結果、フィラメントと該フィラメントを支持する導入線の位置関係に起因して発生する照射光の暗部領域を周囲の明るさとの平滑化を図り、進行方向の前方を配光分布が均一な照射光で照射することによりドライバーの視認性を高めて安全走行に寄与することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の好適な実施形態を図1から図8を参照しながら、詳細に説明する(同一部分については同じ符号を付す)。尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施形態に限られるものではない。
【0018】
図1は本発明の二輪車用前照灯(以下、前照灯と略称する)の正面図である。前照灯1はハウジング2とアウターレンズ3で囲まれた内部空間にプロジェクタ式の灯具ユニット4が配置された構成となっている。この場合、前照灯1は左右2灯式であり、一対の灯具ユニット4は前照灯1の左右対称の位置に配置されている。
【0019】
灯具ユニット4は図2に示すように、光源となるバルブ(以下、光源バルブと呼称する)5と、光源バルブ5のフィラメント6の位置を第一焦点f1とする回転楕円面などの楕円系の反射面7を有するリフレクタ8と、前記リフレクタ8の楕円系反射面7の第二焦点f2の近傍に設けられて略下半部を塞ぐ遮蔽板9と、遮蔽板9の前方に位置して該遮蔽板9の近傍に焦点を有する投影レンズ10と、該投影レンズ10を支持するレンズホルダ11を備えている。前記楕円系反射面7の第一焦点f1及び第二焦点f2が位置する長軸Xはこの灯具ユニット4の照射軸と一致している。
【0020】
灯具ユニット4をこのような構成とすることにより、第一焦点f1に位置するフィラメント6から出射されてリフレクタ8の楕円系反射面7で反射されて第二焦点f2に向かう光線は、遮蔽板9で下半部が遮られて断面形状が下弦の略半円状となり、この断面形状に成形された光線を投影レンズ10で照射方向に投影することによって前照灯としての配光特性を得るものである。なお、投影レンズ10で投影された像は上下左右が180°反転するため、照射光の配光特性は上弦の略半円状となり、対向車に対して幻或を与える恐れがある上向き光を含まない配光特性(すれ違い用)が得られるものとなる。このような構成は従来のプロジェクタ方式の灯具ユニットと同様である。
【0021】
光源となるバルブ(光源バルブ)は上述のように発光源としてフィラメントを内蔵しており、図3は詳しくその構成を示している。
【0022】
そこで図3より、略円筒形状のガラスバルブ12に内蔵されたフィラメント6は、その巻線方向を該ガラスバルブ12の中心軸と同一線上に位置する上記長軸Xと平行とし、且つ巻線の中心軸が長軸Xと略同一線上に位置するように配置されている。
【0023】
そして、フィラメント6の一方の端部6aは、一対の導入線13a、13bのうち一方の導入線13aの一方の端部13aaに接続され、該導入線13aの端部13aaは長軸Xと垂直な方向の上方に延びた後、光源バルブ5の後側に折曲されてフィラメント6と平行に並設された状態に架空配線されている。
【0024】
フィラメント6の他方の端部6bは、他方の導入線13bの一方の端部13baに接続され、該導入線13bの端部13baは長軸Xと垂直な方向の下方に延びた後、光源バルブ5の後側に折曲されて長軸Xと平行な状態に架空配線されている。
【0025】
これにより、フィラメント6が、一対の導入線13a、13bによってガラスバルブ12内の所定の位置に所定の方向で支持・固定されている。
【0026】
このような構成の光源バルブ5は従来例のものと同様である。従って、このような構成の光源バルブ5を光源とする灯具ユニット4の配光パターンにおいては、導入線13aの折曲形成部13abによる影によって暗い部分(暗部)が形成されることになる。本発明はこのような構成の光源バルブを内蔵した灯具ユニットを前照灯に取り付けるに当たり、灯具ユニットに対する光源バルブの取り付け状態に工夫を凝らすことにより該光源バルブが抱える前記暗部の発生を回避しようとするものである。
【0027】
具体的には、図4の背面図に示すように、光源バルブ5を従来の灯具ユニット4に対する取り付け方向に対して、前照灯の垂直方向の面Yと平行な面Y1を基準として互いに相反する方向に所定の角度αだけ傾けた状態で灯具ユニット4に取り付けるようにした。図中ではα=30°傾けた状態を示している。
【0028】
この状態を前照灯の前方から見た図が図5である。この図は前照灯からアウターレンズ及び灯具ユニットから投影レンズを取り除いた状態が示されている。
【0029】
光源バルブ5に内蔵された、フィラメント6と導入線13aの折曲形成部13abとの配置方向に注目すると、導入線13aの折曲形成部13abがフィラメント6の上側、つまり、フィラメント6を含む、路面に平行な面Zの上側の、該フィラメント6の真上よりも互いに他方の灯具ユニット4側に位置するように、光源バルブ5を灯具ユニット4に取り付けている。このとき、フィラメント6と導入線13aの折曲形成部13abを含む面Tと、フィラメント6を含む、面Yと平行な面Y1のなす角αが30°となるように設定されている。
【0030】
このように、前照灯1を構成する一対の灯具ユニット4に取り付けられる各光源バルブ5を、該光源バルブ5に内蔵されるフィラメント6と導入線13aの折曲形成部13abが上記位置関係となるように設定することにより、前照灯1の左右の灯具ユニット4の夫々からの照射光で路面を照らすと、路面上では各灯具ユニット4の照射光により形成された配光パターンが重畳された合成配光パターンが形成されるが、その合成された配光パターンは互いの配光パターンが略一致した状態で重畳されたものではなく、互いの配光パターンがずれた状態で重畳されたものとなる。
【0031】
そのため、路面上では夫々の配光パターンの明るい領域と暗い領域が互いに補完し合って明暗の差が低減され、均一な明るさで照らすことができる。
【0032】
特に、二輪車の2灯式前照灯の場合、左右の発光部端部間の距離が200mm以下と規定されており、四輪車に比べて灯具ユニット間の間隔が狭くなっている。本実施形態の前照灯では、左右の灯具ユニットの位置が接近して配置されているにも拘らず図6(前照灯による路面の照射状態)に示すように、フィラメント6から出射した光が導入線13aの折曲形成部13abで遮られて生じた暗部(影の部分)14が灯具ユニット4の照射光の互いの外側寄りに形成されて路面15上に投影される。
【0033】
その結果、各灯具ユニット4からの照射光の合成配光パターンは互いの明るい領域と暗い領域の明るさの平滑化が行われ、進行方向の前方を配光分布が均一な照射光で照射することによりドライバーの視認性を高めて安全走行に寄与する二輪車用前照灯が実現できる。
【0034】
図7は本発明の二輪車用前照灯の他の実施形態を前方から見た図である。
【0035】
光源バルブ5に内蔵された、フィラメント6と導入線13aの折曲形成部13abとの配置方向に注目すると、導入線13aの折曲形成部13abがフィラメント6の上側、つまり、フィラメント6を含む、路面に平行な面Zの上側の、該フィラメント6の真上よりも互いに同一方向にずれた位置に位置するように、光源バルブ5を灯具ユニット4に取り付けている。このとき、フィラメント6と導入線13aの折曲形成部13abを含む面Tと、フィラメント6を含む、面Yと平行な面Y1のなす角αが30°となるように設定されている。
【0036】
なお、フィラメント6の真上に対して導入線13aの折曲形成部13abのずれる方向は、前照灯1を二輪車に搭載したときに、互いに路肩側となる。
【0037】
このように、前照灯1を構成する一対の灯具ユニット4に取り付けられる各光源バルブ5を、該光源バルブ5に内蔵されるフィラメント6と導入線13aの折曲形成部13abが上記位置関係となるように設定することにより、前照灯1の左右の灯具ユニット4の夫々からの照射光で路面を照らすと、路面上では各灯具ユニット4の照射光により形成された配光パターンが重畳された合成配光パターンが形成されるが、その合成された配光パターンは互いの配光パターンが略一致した状態で重畳されたものではなく、互いの配光パターンがずれた状態で重畳されたものとなる。
【0038】
そのため、路面上では夫々の配光パターンの明るい領域と暗い領域が互いに補完し合って明暗の差が低減され、均一な明るさで照らすことができる。
【0039】
本実施形態の前照灯では、左右の灯具ユニットの位置が接近して配置されているにも拘らず図8(前照灯による路面の照射状態)に示すように、フィラメント6から出射した光が導入線13aの折曲形成部13abで遮られて生じた暗部(影の部分)14が灯具ユニット4の照射光の互いの対向車線寄りに形成されて路面15上に投影される。
【0040】
その結果、各灯具ユニット4からの照射光の合成配光パターンは互いの明るい領域と暗い領域の明るさの平滑化が行われ、進行方向の前方を配光分布が均一な照射光で照射することによりドライバーの視認性を高めて安全走行に寄与する二輪車用前照灯が実現できる。
【0041】
以上のように、本発明の二輪車用前照灯は、該前照灯を二輪車に搭載した状態において、前照灯を構成する一対の灯具ユニットに取り付ける光源バルブを、導入線がフィラメントの上側の該フィラメントの真上よりも互いの他方の前記灯具ユニット側、又は、導入線がフィラメントの上側の該フィラメントの真上よりも路肩側に位置するように配置した。
【0042】
そのため、二輪車の進行方向の前方を配光分布が均一な照射光で照射することが可能となり、ドライバーの視認性が高まって安全走行に寄与することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る実施形態の正面図である。
【図2】灯具ユニットの説明図である。
【図3】光源バルブの説明図である。
【図4】本発明に係る実施形態の背面図である。
【図5】本発明に係る実施形態のフィラメントと導入線の位置関係を示す説明図である。
【図6】実施形態による路面上の照射状態を示す説明図である。
【図7】本発明に係る他の実施形態のフィラメントと導入線の位置関係を示す説明図である。
【図8】他の実施形態による路面上の照射状態を示す説明図である。
【図9】従来例の光源バルブの説明図である。
【図10】従来例の光源バルブの配置を示す説明図である。
【図11】従来例による路面上の照射状態を示す説明図である。
【図12】従来例のフィラメントと導入線の位置関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1 前照灯
2 ハウジング
3 アウターレンズ
4 灯具ユニット
5 光源バルブ
6 フィラメント
6a、6b 端部
7 反射面
8 リフレクタ
9 遮蔽板
10 投影レンズ
11 レンズホルダ
12 ガラスバルブ
13a、13b 導入線
13aa 13ba 端部
13ab 折曲形成部
14 暗部
15 路面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスバルブの中心軸上に配置されたフィラメントと前記フィラメントに略平行に並設されて前記フィラメントを支持する導入線とを有する光源バルブを備えた一対の灯具ユニットが組み込まれた二輪車用の左右2灯式の前照灯であって、
各前記灯具ユニットの光源バルブは前記前照灯を二輪車に搭載した状態において、前記導入線が前記フィラメントの上側の該フィラメントの真上よりも他方の前記灯具ユニット側、又は、前記導入線が前記フィラメントの上側の該フィラメントの真上よりも路肩側に位置するように配置されていることを特徴とする二輪車用前照灯。
【請求項2】
前記灯具ユニットはプロジェクタタイプであることを特徴とする請求項1に記載の二輪車用前照灯。
【請求項1】
ガラスバルブの中心軸上に配置されたフィラメントと前記フィラメントに略平行に並設されて前記フィラメントを支持する導入線とを有する光源バルブを備えた一対の灯具ユニットが組み込まれた二輪車用の左右2灯式の前照灯であって、
各前記灯具ユニットの光源バルブは前記前照灯を二輪車に搭載した状態において、前記導入線が前記フィラメントの上側の該フィラメントの真上よりも他方の前記灯具ユニット側、又は、前記導入線が前記フィラメントの上側の該フィラメントの真上よりも路肩側に位置するように配置されていることを特徴とする二輪車用前照灯。
【請求項2】
前記灯具ユニットはプロジェクタタイプであることを特徴とする請求項1に記載の二輪車用前照灯。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−132228(P2010−132228A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312299(P2008−312299)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
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