説明

二酸化塩素により口腔感染症を治療する方法

二酸化塩素の投与により口腔組織感染症を緩和するための方法、デバイス、組成物およびシステムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、それぞれの全内容が参照により本明細書に組み込まれている、2008年7月15日出願の米国仮特許出願第61/135011号、2008年10月16日出願の第61/106026号、2009年2月6日出願の第61/150685号および2009年6月15日出願の第61/187198号についての合衆国法典第35巻第119条(e)に基づく利益を請求する。
【背景技術】
【0002】
歯を支持する組織の感染症などの口腔の感染症は、ヒトを含む哺乳動物に共通の問題である。口腔感染症は、歯の硬組織への歯垢細菌性損傷から生じるう蝕発生から、有機物質の細菌性代謝分解によって産生される揮発性硫黄化合物(VSCs)から生じる口臭、歯周組織の炎症性疾患の1種である歯周炎に進行し得る、歯垢によって引き起こされる歯肉(すなわち、歯肉組織)の炎症である歯肉炎にまで及ぶ。バイオフィルムである歯垢については、概して、米国特許第7497834号に論じられている。微生物および口腔感染症については、概して、米国特許出願公開第2009/0016973号に論じられている。未処置の歯周感染症は、歯の損失につながる進行性の歯槽骨の破壊をもたらし得る。さらに、口腔の健康は、全身の健康を示し得る(Kimら、2006、Odontology94:10〜21)。口腔感染症の治療は、全身性疾患を改善するのに寄与し得る。
【0003】
口腔組織感染症のための現在の予防的および治療的処置には、ブラッシング、フロッシング、局所用フッ化物、スケーリングおよびルートプレーニング、過酸化物、抗生物質などによる消毒口内リンス、ならびに極端な場合には感染した組織の外科的切除が含まれる。二酸化塩素は、消毒薬ならびに強力な酸化剤であることが知られている。二酸化塩素の殺細菌、殺藻、殺真菌、漂白および脱臭特性も周知である。二酸化塩素の治療用および化粧用の応用は既知である。例えば、米国特許出願公開第2009/0016973号には、口腔疾患の予防のための安定化二酸化塩素溶液の使用が記載されている。米国特許第5281412号には、歯を染色することなく抗歯垢および抗歯肉炎の利益をもたらす亜塩素酸塩および二酸化塩素組成物が記載されている。
【0004】
従来の二酸化硫黄を調製する方法は、亜塩素酸ナトリウムを、ガス状塩素(Cl2(g))、次亜塩素酸(HOCl)または塩酸(HCl)と反応させることを含む。この反応は、酸性媒体中ではるかに高い速度で進行するので、実質的に全ての従来の二酸化塩素生成化学は、3.5未満のpHを有する酸性生成物溶液をもたらす。二酸化塩素は、酸性化、または酸性化および還元の組み合わせのいずれかによって、塩素酸アニオンから調製してもよい。周囲条件で、全反応は、強力な酸性条件、最も一般的には7〜9Nの範囲を必要とする。より高温に試薬を加熱し、生成物溶液から二酸化塩素を連続的に除去することにより、必要とされる酸性度を1N未満に下げることができる。
【0005】
in situで二酸化塩素を調製する方法は、「安定化二酸化塩素」と呼ばれる溶液を使用する。安定化二酸化塩素溶液は、二酸化塩素をほとんどまたは全く含まず、むしろ中性またはわずかにアルカリ性のpHで実質的に亜塩素酸ナトリウムからなる。亜塩素酸ナトリウム溶液に酸を添加することによって、亜塩素酸ナトリウムが活性化され、in situで溶液中に二酸化塩素が生成する。得られる溶液は酸性である。一般的に、亜塩素酸ナトリウムの二酸化塩素への転換の程度は低く、相当な量の亜塩素酸ナトリウムが溶液中に残っている。
【0006】
上で要約した現在の文献は、歯肉などの軟組織ならびに歯のエナメル質および象牙質などの硬組織を含む生体組織に損傷を与える二酸化塩素組成物および方法の使用を記載している。生体組織が損傷を受けない、口腔感染症を治療するために二酸化塩素を使用する方法、組成物、デバイスおよびシステムが必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の実施形態は、これらの要求を満たしこれらに対処する。以下の概要は、詳細な概要ではない。この概要は、種々の実施形態の解決の主要素または重要な要素を特定することを意図しておらず、また種々の実施形態の範囲を正確に記述することを意図していない。
【0008】
口腔組織感染症を緩和する方法を提供する。本方法は、二酸化塩素または二酸化塩素生成成分を含む二酸化塩素源を含む組成物を口腔に投与し、それによって口腔内の組織の感染症を緩和するステップを含み、投与ステップは、i)組織と二酸化塩素源を含む実質的に非細胞毒性の組成物を接触させる工程、ii)組織と二酸化塩素源およびオキシ塩素アニオンを含むデバイスを接触させる工程(デバイスは実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を組織へ送達する)、またはiii)組織と、二酸化塩素源およびオキシ塩素アニオン、ならびに実質的にオキシ塩素アニオンの通過を妨げ、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を通過させ、それによって実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物の組織への送達を可能にする障壁物質を含む組成物を接触させる工程のうちの1つまたは複数を含む。いくつかの実施形態では、口腔組織感染症は、口臭、歯肉炎、歯周炎、う蝕発生および鵞口瘡からなる群から選択することができる。
【0009】
ある実施形態では、組成物は、約1〜約1000ppmの二酸化塩素を含む。別の実施形態では、組成物は、約20〜約400ppmの二酸化塩素を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、二酸化塩素源は、二酸化塩素生成成分として、二酸化塩素の粒子状前駆物質を含む。
【0011】
ある実施形態では、組成物は、抗菌薬をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗菌薬は、ドキシサイクリン、メトロニダゾール、クロルヘキシジン、ミノサイクリン、テトラサイクリン、ニスタチン、ミコナゾールおよびアムホテリシンからなる群から選択される。
【0012】
別の実施形態では、本方法は、抗菌薬を含む第2組成物を口腔に投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、抗菌薬は、ドキシサイクリン、メトロニダゾール、クロルヘキシジン、ミノサイクリン、テトラサイクリン、ニスタチン、ミコナゾールおよびアムホテリシンからなる群から選択される。
【0013】
一態様では、投与ステップは、組織と二酸化塩素源を含む実質的に非細胞毒性の組成物を接触させることを含む。いくつかの実施形態では、実質的に非細胞毒性の組成物は、1グラムの組成物当たり約0.2ミリグラム未満のオキシ塩素アニオンを含む。いくつかの実施形態では、実質的に非細胞毒性の組成物は、約4.5〜約11のpHを有する。いくつかの実施形態では、接触ステップは、デンタルストリップ、デンタルフィルムまたはデンタルトレーを含む。
【0014】
別の態様では、投与ステップは、組織と二酸化塩素源およびオキシ塩素アニオンを含むデバイスを接触させることを含み、デバイスは実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を組織へ送達する。いくつかの実施形態では、デバイスは、任意選択の裏張り層と、二酸化塩素源を含む層と、二酸化塩素源層と組織との間に挿入された障壁層とを備え、障壁層は実質的にオキシ塩素アニオンがそこを通過するのを禁じ、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物がそこを通過するのを許す。障壁フィルムは、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオリド、ポリビニリデンジクロライド、ポリジメチルシロキサンおよびポリテトラフルオロエチレンの組み合わせ、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリシロキサン、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択されるフィルムとすることができる。
【0015】
別の実施形態では、デバイスは、裏張り層および裏張り層に貼り付けられたマトリックスであって、二酸化塩素源およびオキシ塩素アニオンを含むマトリックスと、実質的にオキシ塩素アニオンの通過を妨げ、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を通過させる障壁物質とを備える。デバイスのいくつかの実施形態では、障壁物質は、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオリド、ポリビニリデンジクロリド、ポリジメチルシロキサンおよびポリテトラフルオロエチレンの組み合わせ、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリシロキサン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリレート、鉱油、パラフィン蝋、ポリイソブチレン、ポリブテン、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0016】
別の実施形態では、投与ステップは、組織と、二酸化塩素源、オキシ塩素アニオンおよび障壁物質を含む組成物を接触させることを含む。組成物のいくつかの実施形態では、障壁物質は、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオリド、ポリビニリデンジクロリド、ポリジメチルシロキサンおよびポリテトラフルオロエチレンの組み合わせ、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリシロキサン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリレート、鉱油、パラフィン蝋、ポリイソブチレン、ポリブテン、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0017】
二酸化塩素源を含む組成物を口腔に投与することを含む、口腔組織感染症を緩和する方法であって、投与するステップが、組織に二酸化塩素源を含む実質的に非刺激性の組成物を接触させ、それによって口腔内の組織の感染症を緩和するステップを含む方法をさらに提供する。いくつかの実施形態では、口腔組織感染症は、口臭、歯肉炎、歯周炎、う蝕発生および鵞口瘡からなる群から選択される可能性がある。
【0018】
いくつかの実施形態では、実質的に非刺激性の組成物は、約1〜約1000ppmの二酸化塩素を含む。他の実施形態では、実質的に非刺激性の組成物は、約20〜約400ppmの二酸化塩素を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、二酸化塩素源は、二酸化塩素生成成分として、二酸化塩素の粒子状前駆物質を含む。いくつかの実施形態では、実質的に非刺激性の組成物は、1グラムの組成物当たり約0.2ミリグラム未満のオキシ塩素アニオンを含む。実質的に非刺激性の組成物は、約4.5〜約11のpHを有することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、接触ステップは、デンタルストリップ、デンタルフィルムまたはデンタルトレーを含む。
【0021】
ある実施形態では、組成物は、抗菌薬をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗菌薬は、ドキシサイクリン、メトロニダゾール、クロルヘキシジン、ミノサイクリン、テトラサイクリン、ニスタチン、ミコナゾールおよびアムホテリシンからなる群から選択される。
【0022】
別の実施形態では、本方法は、抗菌薬を含む第2組成物を口腔に投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、抗菌薬は、ドキシサイクリン、メトロニダゾール、クロルヘキシジン、ミノサイクリン、テトラサイクリン、ニスタチン、ミコナゾールおよびアムホテリシンからなる群から選択される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の説明は、実施形態の特定の説明的な態様および実施を詳細に記述する。しかしながら、これらは、種々の組成物およびデバイスの原理が使用され得る種々の方法のうちの少数を示すにすぎない。本方法の他の目的、利点および新規な特徴が、以下の発明を実施するための形態から明らかになろう。
【0024】
二酸化塩素は、その消毒、殺細菌、殺藻、殺真菌、漂白および脱臭特性の結果として、生物系における種々の応用において非常に有用とすることができる。しかしながら、二酸化塩素組成物は、生体組織に損傷を与えることが分かっている。一態様は、一つには、二酸化塩素組成物中の細胞毒性の成分は二酸化塩素自体ではないという発明者らの判断から生じる。そうではなく、二酸化塩素組成物中に存在するオキシ塩素アニオンが細胞毒性の成分であると判断された。本明細書に記載の方法は、一般的に、実質的に非細胞毒性および/または非刺激性の方法で、二酸化塩素を含む組成物を組織に投与して、口腔組織の感染症を緩和することに関する。本明細書に記載の方法は、殺生物剤、特に二酸化塩素の局所曝露に対して感受性の口腔組織のあらゆる感染症の治療に有用である。
【0025】
定義
特に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術的および科学的用語は、一般的に当業者によって理解されるのと同じ意味を有する。一般的に、本明細書で使用する命名法、ならびに細胞壊死性分析、微生物分析、有機および無機化学、および歯科臨床的研究における検査法は、当技術分野で周知であり一般に使用されているものである。
【0026】
本明細書で使用する場合、以下の用語の各々は、それと関係する意味を有する。
【0027】
冠詞「a(1つの)」および「an(1つの)」は、本明細書中では、その冠詞の文法上の目的語が1つであること、または2つ以上であること(すなわち、少なくとも1つである)をさすために使用する。例として、「一要素」は、1つの要素または2つ以上の要素を意味する。
【0028】
本明細書に記載する任意の範囲の間のありとあらゆる全体的または部分的整数が本明細書に含まれると理解される。
【0029】
「約」という用語は、当業者によって理解され、その使用される文脈においてある程度変わるだろう。一般的に、「約」は、基準値のおよそプラス/マイナス10%の範囲の値を含む。例えば、「約25%」には、およそ22.5%〜およそ27.5%の値が含まれる。
【0030】
本明細書で使用する場合、「口腔感染症」は、病原体感染によって引き起こされる口腔内の組織の疾患または障害をさす。病原体は、細菌性、ウイルス性または真菌性であり得る。口腔疾患は、疾患が回復しない場合に動物の口腔衛生が悪化し続ける状態を含む。対照的に、口腔障害は、動物が恒常性を維持することができるが、動物の健康状態が障害のない場合よりも好ましくない口腔衛生の状態である。未処置にしておいても、障害は、動物の口腔衛生の状態のさらなる減少を必ずしも引き起こさない。この用語には、歯周病、口臭、鵞口瘡およびう蝕発生が含まれる。
【0031】
本明細書で使用する場合、「歯周病」は、病原体感染によって引き起こされる、患者の歯を支持する組織の感染症である。歯周病には、歯肉炎および歯周炎が含まれる。
【0032】
本明細書で使用する場合、「バイオフィルム」は、表面上に層を形成する生物凝集体をさし、凝集体は、ポリマーの細胞外マトリックスに食い込んだ微生物群集を含む。一般的に、バイオフィルムは、細菌(好気性および嫌気性)、藻類、原虫および真菌類を含む多様な微生物群集を含む。単一種のバイオフィルムも存在する。
【0033】
本明細書で使用する場合、「歯垢」は、歯の表面上に形成するバイオフィルムをさす。
【0034】
本明細書で使用する場合、疾患もしくは障害の症状の重症度、このような症状を患者が経験する頻度、またはその両方が減少した場合に、疾患または障害が「緩和した」とされる。
【0035】
「治療的」処置は、病態の兆候を示す患者に対して、それらの兆候を減らすまたは除去する目的で施す処置である。
【0036】
「予防的」処置は、疾患の兆候を示さない、または疾患の初期の兆候のみを示す患者に対して、疾患に関係する病態が発生する危険性を減らす目的で施す処置である。
【0037】
本明細書で使用する場合、「殺生物性」は、細菌、藻類、ウイルスおよび真菌類などの病原体を不活性化する、または死滅させる特性をさす(例えば、抗細菌性、抗藻性、抗ウイルス性および抗真菌性)。
【0038】
「二酸化塩素生成成分」という用語は、少なくともオキシ塩素アニオン源および二酸化塩素生成の活性剤をさす。いくつかの実施形態では、活性剤は、酸性源である。これらの実施形態では、成分は遊離ハロゲン源を任意選択でさらに含む。遊離ハロゲン源は、塩素などのカチオン性ハロゲン源であってよい。他の実施形態では、活性剤は、エネルギー活性化可能触媒である。さらに他の実施形態では、活性剤は、乾燥または無水の極性物質である。
【0039】
本明細書で使用する場合、「極性物質」という用語は、その分子構造の結果として、分子規模で電気双極子モーメントを有する物質をさす。最も一般的には、極性物質は、異なる電気陰性度を有する化学元素を含む有機物質である。有機物質中で極性を誘発できる元素には、酸素、窒素、硫黄、ハロゲンおよび金属が含まれる。極性は、物質中に異なる程度で存在してもよい。物質は、その分子双極子モーメントが大きい場合にはより極性で、その分子双極子モーメントが小さい場合にはあまり極性でないとみなしてもよい。例えば、短い2炭素鎖にわたるヒドロキシルの電気陰性度を支持するエタノールは、6炭素鎖にわたる同程度の電気陰性度を支持するヘキサノール(C613OH)と比較して、比較的より極性であるとみなしてもよい。物質の誘電率は、物質の極性の好都合な基準である。適当な極性物質は、約18〜25℃で測定すると、2.5より大きい誘電率を有する。「極性物質」という用語には、水および水性物質が含まれない。極性物質は、固体、液体または気体であってもよい。
【0040】
本明細書で使用する場合「乾燥」という用語は、遊離水、吸着水または結晶水をほとんど含まない物質を意味する。
【0041】
本明細書で使用する場合「無水」という用語は、遊離水、吸着水または結晶水などの水を含まない物質を意味する。上で定義したように、無水の物質は乾燥してもいる。しかしながら、本明細書で定義したように、乾燥した物質は、必ずしも無水ではない。
【0042】
薬剤の「有効量」は、所望の生物学的効果をもたらす薬剤の任意の量を意味することを意図している。その結果は、疾患の兆候、症状または原因の減少および/または緩和、あるいは他の任意の生物系の所望の変化とすることができる。口腔組織感染症に関しては、感染の範囲、感染の持続時間および/または感染の頻度の減少を使用して、有効量を測定することができる。任意の個々の場合の適当な治療量は、通例の実験法を使用して、当業者により決定され得る。
【0043】
「細胞毒性」は、哺乳動物細胞の構造または機能への致死性または亜致死性の損傷を引き起こす特性を意味する。組成物は、医薬品原料(API)が有効量存在する場合に、USP<87>「in vivo生物学的反応性」の寒天拡散試験(2007年現在の承認済みプロトコル)の米国薬局方(USP)生物学的反応性限度を満たせば、「実質的に非細胞毒性」または「実質的に細胞毒性でない」とみなされる。
【0044】
本明細書で使用する場合、「刺激性」は、即時の、長期の、または繰り返しの接触により、赤色化、腫脹、そう痒感、灼熱または水疱形成などの局所的炎症反応を引き起こす特性をさす。例えば、哺乳動物における歯肉組織の炎症は、その組織への刺激を示している。組成物は、真皮または粘膜の刺激を評価するための任意の標準的な方法を使用して、わずかに刺激性である、または刺激性でないと判断された場合に、「実質的に非刺激性」または「実質的に刺激性ではない」とみなされる。真皮刺激を評価するのに有用な方法の非限定的な例には、ヒトの皮膚組織モデル(例えば、Chatterjeeら、2006、Toxicol Letters167:85〜94参照)であるEpiDerm(商標)(MatTek Corp.、Ashland、MA)などの組織工学による真皮組織、またはex vivo真皮サンプルを使用したin vivo試験の使用が含まれる。粘膜刺激に有用な方法の非限定的な例には、HET−CAM(鶏卵の絨毛尿膜試験)、ナメクジ粘膜刺激試験、および組織工学による口腔粘膜または膣−子宮膣部組織を使用したin vitro試験が含まれる。他の有用な刺激測定の方法には、ラットまたはウサギの皮膚の真皮刺激などのin vivo法(例えば、Draize皮膚試験(OECD、2002、試験ガイドライン404、急性真皮刺激/皮膚腐食)、およびEPA健康影響試験ガイドライン、OPPTS870.2500 急性真皮刺激)が含まれる。当業者は、当分野で認められている真皮または粘膜刺激を評価する方法に精通している。
【0045】
「オキシ塩素アニオン」は、亜塩素酸アニオン(ClO2-)および/または塩素酸アニオン(ClO3-)を意味する。
【0046】
「実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物」は、全て本明細書で上に定義した、有効量の二酸化塩素、ならびに非細胞毒性および/または非刺激性の濃度のオキシ塩素アニオンを含む組成物を意味する。組成物は、他の成分を含んでもよく、本質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素からなってもよい。組成物は、二酸化塩素を含む、または本質的に二酸化塩素からなる気体または蒸気であってもよいが、溶液または増粘された流体を含む、任意の種類の流体であってもよい。組成物は、水性流体または非水性流体であってよい。
【0047】
「安定である」とは、二酸化塩素を形成するために使用する成分、すなわち二酸化塩素形成原料が、直ちには互いに反応して二酸化塩素を形成しないことを意味する。ClO2が生成するべき時まで結合が安定している限り、成分は経時的および/または同時などの任意の様式で結合さてもよいことが理解されよう。
【0048】
「非反応性」は、使用する成分もしくは原料が、許容できない程度に、存在する他の成分または原料と二酸化塩素を形成するほど直ちには反応しない、または任意の成分もしくは原料が必要な時に製剤中においてその機能を果たす能力を減少させることを意味する。当業者が認識するように、非反応性について許容できる時間枠は、どのように製剤が処方されかつ貯蔵されるか、どれくらいの間製剤が貯蔵されるか、およびどのように製剤が使用されるかを含むいくつかの因子に依存するだろう。したがって、「直ちには反応しない」は、1分または複数分から、1時間または複数時間、1週間または複数週間まで及ぶだろう。
【0049】
「増粘された流体組成物」という言葉には、加えたせん断応力下で流れることができ、流れる際に、同じ濃度の対応する二酸化塩素水溶液の粘度よりも大きい見かけ粘度を有する組成物が含まれる。これには、ニュートン流を示す(せん断速度のせん断応力に対する比が一定であり、せん断応力に依存しない)流体、チクソトロピック流体(流れる前に突破すべき最小降伏応力を要し、持続性のせん断によりせん断希薄化も示す)、擬塑性および塑性流体(流れる前に突破すべき最小降伏応力を要する)、ダイラタント流体組成物(せん断速度が増加するとともに見かけ粘度が増加する)、ならびに加えた降伏応力下で流れることができる他の物質を含む増粘された流体組成物の最大範囲が含まれる。
【0050】
「増粘剤成分」は、それが添加される溶液または混合物の粘度を高める特性を有する成分をさす。「増粘剤成分」は、本明細書中および上記の「増粘された流体組成物」を作るために使用される。
【0051】
「見かけ粘度」は、流れをもたらすせん断条件の任意の設定におけるせん断応力のせん断速度に対する比を意味する。見かけ粘度は、ニュートン流体についてはせん断応力に依存せず、非ニュートン流体組成物についてはせん断速度に伴って変化する。
【0052】
有機ポリマーに関して使用する「疎水性」または「水不溶性」という用語は、25℃で水100グラム当たり約1グラム未満の水溶解度を有する有機ポリマーをさす。
【0053】
「酸性源」は、通常は粒子状固体物質であり、それ自体が酸性である、または液体水もしくは固体オキシ塩素アニオンと接触した場合に酸性環境を作り出す物質を意味する。
【0054】
「粒子状物質」という用語は、全ての固体物質を意味するために定義される。非限定的な例として、粒子状物質は、なんらかの方法で互いに接触させるために互いに分散させることができる。これらの固体物質は、大きな粒子、小さな粒子、または大きな粒子および小さな粒子両方の組み合わせを含む粒子を含む。
【0055】
「遊離ハロゲンの源」および「遊離ハロゲン源」は、水と反応してハロゲンを放出する化合物または化合物の混合物を意味する。
【0056】
「遊離ハロゲン」は、遊離ハロゲン源によって放出されるハロゲンを意味する。
【0057】
「二酸化塩素の粒子状前駆物質」は、粒子状物質である二酸化塩素形成成分の混合物を意味する。ASEPTROL(BASF、Florham Park、NJ)の顆粒は、代表的な二酸化塩素の粒子状前駆物質である。
【0058】
「固形物」は、固体形状、好ましくは多孔性固体形状、または顆粒状粒子状原料の混合物を含む錠剤を意味し、粒子状原料の大きさは固形物の大きさよりも実質的に小さく、「実質的に小さい」とは、少なくとも50%の粒子が、少なくとも1桁の程度、好ましくは少なくとも2桁の程度、固形物の大きさよりも小さいことを意味する。
【0059】
「酸化剤」は、電子を引きつけて別の原子または分子を酸化し、それによって還元を受ける任意の物質を意味する。代表的な酸化剤には、二酸化塩素および過酸化水素などの過酸化物が含まれる。
【0060】
本明細書で使用する場合、「マトリックス」は、二酸化塩素生成成分の保護的担体として機能する物質である。マトリックスは、一般的に、懸濁または含有された二酸化塩素を形成する反応に関与することができる、物質中の連続的な固相または液相である。マトリックスは、物質に物理的形状を与えることができる。マトリックスが十分に疎水性の場合には、中の物質を水分との接触から守り得る。マトリックスが十分に強固な場合には、構造部材を形成し得る。マトリックスが十分に流動性の場合には、マトリックス内の物質を運搬する媒体として機能し得る。マトリックスが十分に粘着性の場合には、物質を傾斜した、垂直の、または水平の下向き表面に接着する手段を提供することができる。流体マトリックスは、せん断応力を適用すると直ちに流れる、または流れを引き起こすために降伏応力限界を超えることを要するような液体であってもよい。いくつかの実施形態では、マトリックスは、他の成分がマトリックスと結合し、かつマトリックスの中に入り得る(例えば、二酸化塩素を形成する反応を開始するために)ような、流体であるか、流体になることができるかのいずれかである(例えば、加熱時)。他の実施形態では、マトリックスは連続的な固体であり、二酸化塩素生成は、例えば、水もしくは水蒸気の浸透、またはエネルギー活性化可能触媒の光活性化によって開始することができる。
【0061】
「フィルム」は、第三の寸法よりも実質的に大きい2つの寸法を有する物質の層を意味する。フィルムは、液体または固体物質であり得る。いくつかの物質については、液体フィルムは、例えば、蒸発、加熱、乾燥および/または架橋による硬化によって、固体フィルムに変えることができる。
【0062】
特に指示しない限り、また文脈から明らかでない限り、上記および本明細書に示す選好を、本明細書で論じる実施形態全体に適用する。
【0063】
説明
二酸化塩素は、十分に裏付けられた強力な殺生物活性を有する。不都合なことに、先行技術の二酸化塩素含有組成物は、細胞毒性であり、軟組織を刺激し、硬組織に損傷を与える可能性がある。二酸化塩素含有組成物の細胞毒性は、主としてオキシ塩素アニオンの存在から生じ、二酸化塩素分解産物である可能性がある塩素の存在から生じるのではない。二酸化塩素含有組成物中に存在するオキシ塩素アニオンが、治療の標的にされるエナメル質および象牙質などの硬い歯の組織ならびに口腔粘膜および歯肉などの軟らかい口腔組織を含む細胞および組織と接触するのを実質的に防止する、または阻害することにより、組織損傷をある程度まで減少させる、または最小化することができる。軟らかい口腔組織には、頬粘膜、他の口腔粘膜(例えば、軟口蓋粘膜、口腔底粘膜および舌下粘膜)および舌が含まれる。したがって、本明細書において、非細胞毒性および/または非刺激性の方法で、二酸化塩素組成物を投与することによって、口腔組織感染症を緩和する方法を提供する。
【0064】
記載の方法は、あらゆる口腔組織の感染症を緩和するために使用することができる。口腔組織の感染症には、口臭、歯肉炎、歯周炎、う蝕形成および鵞口瘡が含まれるが、それだけに限定されない。口腔組織は、無傷であってよく、または1つまたは複数の切開、裂傷もしくは他の組織貫通性開口部を有してもよい。本方法は、予防的にまたは治療的に実施されてもよい。
【0065】
口腔内の細菌は、口腔悪臭または口臭の根拠をなす揮発性硫黄化合物(VSC)を産生する可能性がある。VSCには、硫化水素、メチルメルカプタンおよびジメチルメルカプタンが含まれる。この問題の原因となる細菌には、Fusobacterium nucleatum、Treponema denticola、Tannerella forsythia(以前は、Bacteroides forsythus)、Prevotella intermedia、Porphyromonas gingivalis、Porphyromonas endodontalisおよびEubacterium菌種が含まれる。
【0066】
歯垢と関連がある口腔感染症には、う蝕発生、歯肉炎および歯周炎が含まれる。数百の細菌が歯垢中で発見されたが、歯肉炎および歯周炎の原因となる最も一般的な細菌は、Actinobacillus antinomycetemcomitans、Campylobacter rectus、Eikenella corrodens、ならびに7嫌気性菌種、Porphyromonas gingivalis、Bacteroides forsythus、Treponema denticola、Prevotella intermedia、Fusobacterium nucleatum、Eubacteriumおよびスピロヘータである。P.gingivalis、グラム陰性嫌気性菌が、主として成人の歯周炎の原因であると考えられている。種々のヘルペスウイルスが、破壊性の歯周病の原因であることが分かってきた。主としてう蝕形成の根拠をなす細菌は、Streptococcus mutan、Lactobacillus acidophilus、Actinomyces viscosusおよびNocardia菌種である。
【0067】
鵞口瘡は、最も一般的な口腔真菌感染症である。鵞口瘡の原因となる病原体は、Candida albicansおよびCandida dubliniensisである。C.dubliniensisは、AIDS患者、臓器移植患者および化学療法を受けている患者などの免疫不全状態の患者において一般的に見出される。
【0068】
本方法は、二酸化塩素または二酸化塩素生成成分を含む組成物の単回投与を含むことができる。他の実施形態では、本方法は、接触ステップの1回または複数回の反復を含む。さらに他の実施形態では、組成物は、二酸化塩素の他に第2治療薬を含む。ある実施形態では、第2治療薬は、抗生物質または抗真菌薬などの抗菌薬である。
【0069】
本方法は、1ステップが二酸化塩素源を含む組成物の投与を含み、第2ステップが第2非二酸化塩素治療薬を含む組成物の投与を含む、代替処置ステップをさらに含むことができる。これらのステップは、任意の順序で、複数回反復して行ってもよい。連続したステップは、同じ組成物を含んでも、異なる組成物を含んでもよい。
【0070】
本方法は、二酸化塩素源を含む組成物による処置の2つ以上の逐次的なステップ、および引き続く他の治療薬による処置の少なくとも1つのステップを含むことができる。二酸化塩素源を含む組成物による処置の数および/または持続時間は、第2治療組成物による処置の数および/または持続時間と同じであっても異なっていてもよい。二酸化塩素源を含む組成物は、複数のステップで同じであってよく、二酸化塩素濃度が異なるなど、異なっていてもよい。同様に、第2治療薬組成物は、複数ステップで同じであってよく、異なっていてもよい。同じように、処置ステップの持続時間は、二酸化塩素源を含む組成物および第2治療薬組成物に関して、同じであっても異なっていてもよい。
【0071】
I.非細胞毒性および/または非刺激性の組成物
一態様では、本方法は、二酸化塩素を含む実質的に非細胞毒性および/または非刺激性の組成物を投与することを含む。ある実施形態では、組成物は、本質的に、医薬品原料(API)としての二酸化塩素からなる。他の実施形態では、組成物は、二酸化塩素、および抗生物質などの少なくとも1つの他のAPIを含む。組成物は、1つまたは複数の他の成分を任意選択で含む。このような成分には、甘味料、風味料、着色料、および香料が含まれるが、それだけに限定されない。他の任意選択の成分には、抗細菌薬および抗真菌薬などの抗菌薬、酵素、悪臭抑制剤、リン酸塩などの洗浄剤、抗歯肉炎薬、抗歯垢薬、抗歯石薬、フッ化物イオン源などの抗う蝕薬、抗歯周炎薬、栄養剤、酸化防止剤などが含まれる。代表的な抗菌薬には、ドキシサイクリン、メトロニダゾール、クロルヘキシジン、ミノサイクリンおよびテトラサイクリンが含まれるが、それだけに限定されない。代表的な抗真菌薬には、ミコナゾール、ニスタチンおよびアムホテリシンが含まれるが、それだけに限定されない。
【0072】
二酸化塩素による組成物成分の酸化が、その所期の機能のための酸化に利用可能な二酸化塩素を減少させるので、全ての任意選択の成分は二酸化塩素による酸化に比較的耐性であることが好ましい。「比較的耐性である」とは、ある用途で二酸化塩素含有組成物を調製し、使用する時間尺度において、任意選択の成分の機能が容認しがたく減少することなく、組成物が二酸化塩素に関して容認できるレベルの有効性/効力を保持し、実質的に非細胞毒性のままであることを意味する。いくつかの実施形態では、組成物は、好ましくは実質的に非刺激性のままでもある。
【0073】
二酸化塩素からなる酸化剤を含む組成物については、細胞毒性は、主としてオキシ塩素アニオンの存在から生じる。したがって、1グラムの組成物当たり0ミリグラム(mg)のオキシ塩素アニオン〜1グラムの組成物当たり約0.25mg以下のオキシ塩素アニオン、好ましくは1グラムの組成物当たり0〜0.24、0.23、0.22、0、21または0.20mgのオキシ塩素アニオン、より好ましくは1グラムの組成物当たり0〜0.19、0.18、0.17、0.16、0.15、0.14.0.13、0.12、0.11または0.10mgのオキシ塩素アニオン、さらにより好ましくは1グラムの組成物当たり0〜0.09、0.08、0.07、0.06、0.05または0.04mgのオキシ塩素アニオンを含む二酸化塩素を含み、細胞毒性の原因となる他の成分が存在しない組成物が実質的に非細胞毒性である。
【0074】
軟組織の刺激は、高反応性酸素種、ならびに/または酸性および塩基性両方の両極端なpHから生じ得る。二酸化塩素含有組成物による軟組織の刺激を最小化するために、実質的に非細胞毒性の組成物は少なくとも3.5のpHを有する。好ましくは、組成物は、少なくとも5、さらにより好ましくは約6より大きいpHを有する。特定の実施形態では、pHは、約4.5〜約11、より好ましくは約5〜約9、さらにより好ましくは約6より大きく約8未満に及ぶ。一実施形態では、pHは約6.5〜約7.5である。オキシ塩素アニオンの濃度は、軟組織の刺激の主要な原因であると考えられていない。
【0075】
二酸化塩素を含む非細胞毒性および/または非刺激性の組成物を調製する方法は、本発明の譲受人に譲渡された、「Tooth Whitening Compositions and Methods」と題された2008年7月15日出願の米国仮特許出願第61/135011号、「Tooth Whitening Compositions and Methods」と題された2008年10月16日出願の第61/106026号、および「Non−Cytotoxic Chlorine Dioxide Fluids」と題された2009年2月6日出願の第61/150685号に記載されており、これらの出願のそれぞれの全内容は参照により本明細書に組み込まれている。
【0076】
ある実施形態では、二酸化塩素を含む実質的に非細胞毒性の組成物は、中性のpHを有する実質的に純粋な二酸化塩素溶液を使用して調製することができる。いくつかの実施形態では、実質的に純粋な二酸化塩素溶液は、約5〜約9、より好ましくは約6.5〜約7.5のpHを有する。
【0077】
実質的に純粋な二酸化塩素は、任意の既知の方法、次いでその溶液を通して気体(例えば空気)をバブリングし(スパージング)、かつ脱イオン水の第2容器の中へ気体(例えば空気)をバブリングし、実質的に純粋な二酸化塩素の生成物溶液を調製することによって、調製されてもよい。ClO2およびおそらくいくらかの水蒸気のみが、原料溶液から生成物溶液へ移される。全ての塩成分および酸は、原料溶液中に残ったままである。したがって、実質的に純粋な生成物溶液中にはオキシ塩素アニオンは存在しない。二酸化塩素を調製する1つの方法は、亜塩素酸ナトリウムの水溶液を鉱酸と混ぜ合わせて溶液のpHを約3.5未満に下げることおよび溶液を十分な時間、例えば約30分間反応させて二酸化塩素を生成することを含む。次いで、得られる溶液を上記のようにスパージングして実質的に純粋な二酸化塩素の生成物溶液を調製する。
【0078】
実質的に純粋な二酸化塩素は、ある程度の分解を受け得るが、その速度は比較的遅い。溶液を覆い、紫外線曝露から保護するようにしておくことにより、分解速度は、7日で約5%〜約25%の二酸化塩素減少の速度に遅らせることができる。実質的に純粋な二酸化塩素は、米国特許第4683039号に開示されているものなどの、浸透気化技術を使用して調製してもよい。さらに、金属亜塩素酸塩および酸性源を溶液中で反応させて二酸化塩素への高い転換をもたらし、2000ppmより大きい二酸化塩素溶液を産生することができる。次いで、濃縮溶液を中性pHに緩衝することができる。同様に、二酸化塩素溶液は、米国特許第5399288号に記載の組成物を使用して調製することができ、これは酸性pHで高濃度の二酸化塩素溶液をもたらす。次いで、濃縮溶液を、実質的に中性pHを得るよう緩衝して、実質的に純粋な二酸化塩素溶液を調製することができる。
【0079】
別の実質的に純粋な二酸化塩素溶液の源は、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6432322号および第6699404号に記載されている、ASEPTROL(BASF Corp.、Florham Park、NJ)物質を使用して調製する二酸化塩素である。これらの特許は、水に添加した場合に高度に転換された二酸化塩素の溶液を調製するための粒子状成分を含む実質的に無水の固形物を開示している。固形物中の粒子状成分は、亜塩素酸ナトリウムなどの金属亜塩素酸塩、硫酸水素ナトリウムなどの酸性源、および任意選択でジクロロイソシアヌル酸またはその水和物のナトリウム塩(本明細書では、まとめて「NaDCCA」と呼ぶ)などの遊離ハロゲンの源を含む。二酸化塩素は、ASEPTROL物質が水または水性媒体と接触した場合に生成する。ASEPTROL物質は、米国特許第6432322号および第6699404号に記載のように、水溶液中で極度に高い転換率を有するように作られ、高濃度の二酸化塩素および低濃度のオキシ塩素アニオンを生じることができる。したがって、ASEPTROL物質は、実質的に中性のpHで二酸化塩素を効率的に生成する方法を提供し、より早い、酸性の二酸化塩素に基づく生成物に存在する問題を避ける。
【0080】
いくつかの実施形態では、組成物は、組成物を増粘された水性流体にする増粘剤成分をさらに含む。実質的に非細胞毒性で、いくつかの実施形態では非刺激性である、二酸化塩素を含む増粘された水性組成物を調製するために、実質的に純粋な二酸化塩素溶液を増粘剤成分および水性媒体と混ぜ合わせることができる。
【0081】
本方法を実施する場合に使用する水性の増粘された流体組成物は、水性媒体中に任意の増粘剤成分を含んでもよく、増粘された流体組成物は非細胞毒性で、いくつかの実施形態では軟組織に対して非刺激性である。さらに、増粘剤は、好ましくは、組成物の調製および処置における使用の時間尺度で二酸化塩素によって不利に影響されない。当技術分野では、カルボマー(例えば、CARBOPOL増粘剤、Lubrizol Corp.、Wickliffe、OH)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、天然スメクタイト粘土(例えば、VEEGEM、R.T.Vanderbilt Co.、Norwalk、CT)、合成粘土(例えば、LAPONITE(Southern Clay Products、Gonzales、TX))、メチルセルロース、ポリアクリレート(例えば、LUQUASORB1010、BASF、Florham Park、NJ)などの高吸水性ポリマー、ポロキサマー(PLURONIC、BASF、Florham Park、NJ)、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、トラガントおよびキサンタンガムを含む多くの増粘剤が知られているが、それだけに限定されない。このような増粘剤は、天然親水コロイド(「ガム」とも呼ぶ)、半合成親水コロイド、合成親水コロイドおよび粘土の4つのグループに分類され得る。天然親水コロイドのいくつかの例には、アラビアゴム、トラガント、アルギン酸、カラゲナン、ローカストビーンガム、グアーガムおよびゼラチンが含まれる。半合成親水コロイドの非限定的な例には、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムが含まれる。合成親水コロイド(ポリマー、架橋ポリマーおよびコポリマーを含む「ポリマー」とも呼ぶ)のいくつかの例には、ポリアクリレート、高吸水性ポリマー、高分子量ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、ならびにCARBOPOLが含まれる。粘土(膨潤粘土を含む)の非限定的な例には、LAPONITE、アタパルジャイト、ベントナイトおよびVEEGUMが含まれる。好ましくは、増粘剤成分は、半合成親水コロイドである。より好ましくは、増粘剤成分は、カルボキシメチルセルロース(CMC)である。
【0082】
非細胞毒性の組成物を調製する際、組成物の1つまたは複数の成分を、組成物の調製時より前に混ぜ合わせてもよい。あるいは、組成物の全成分を、使用時に調製してもよい。非細胞毒性の溶液または非細胞毒性の増粘された組成物のいずれかについては、本明細書の他で記載のように、非細胞毒性の二酸化塩素溶液の所期の使用に適した任意選択の他の成分が含まれていてもよい。溶液中の二酸化塩素は、経時的に分解するだろう。有効性の損失および亜塩素酸アニオンの生成を含む、このような分解から生じる問題を避けるために、好ましくは、実質的に純粋な二酸化塩素溶液を、希釈する、または増粘剤成分および水性媒体と混ぜ合わせる直前に調製する。
【0083】
さらに、好ましくは、二酸化塩素を含む増粘された組成物を、口腔組織感染症を緩和する方法において使用する直前に調製する。本明細書で使用する場合、「直前」とは、有効性の減少または細胞毒性の形跡を生じる期間以下の期間をさす。一般的に、「直前」は、約14日未満、好ましくは約24時間以下、より好ましくは約2時間以下である。好ましくは、実質的に純粋な二酸化塩素溶液は、組成物の調製の約8時間以内に調製する。二酸化塩素溶液または調製組成物を強力な紫外線または高温(例えば、周囲温度、約25℃より高い温度)に曝露しないように注意も払う。
【0084】
二酸化塩素を含む実質的に非細胞毒性の増粘された組成物は、ClO2の粒子状前駆物質および水性の増粘された流体組成物を使用して調製してもよい。二酸化塩素形成成分には、金属亜塩素酸塩、金属塩素酸塩、酸性源および任意選択のハロゲン源が含まれる。粒子状前駆物質は、これらのうちの1つまたはこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。好ましくは、粒子状前駆物質は、ASEPTROL製品、より好ましくは、それはASEPTROL S−Tab2である。ASEPTROL S−Tab2は、重量(%)で以下の化学組成を有する。すなわち、NaClO2(7%)、NaHSO4(12%)、NaDCC(1%)、NaCl(40%)、MgCl2(40%)である。米国特許第6432322号の実施例4には、S−Tab2の代表的な製造工程が記載されている。顆粒は、圧搾したS−Tab2錠剤を細かく砕くこと、またはS−Tab2成分の非圧搾粉末を乾燥ローラー圧縮することのいずれかを行い、引き続き得られた圧縮リボンまたはブリケットを粉砕し、次いで選別して所望の大きさの顆粒を得ることにより製造することができる。水または水性の増粘された流体へ曝露すると、ASEPTROL顆粒から二酸化塩素が生成される。一実施形態では、マイナス40メッシュの顆粒を水性の増粘された流体と混ぜ合わせることによって、二酸化塩素を含む実質的に非細胞毒性の組成物が調製される。一実施形態では、増粘された流体の増粘剤成分はカルボキシメチルセルロースである。当業者は、ClO2の粒子状前駆物質を使用して調製した増粘された流体組成物における二酸化塩素の製造は速いが、即時ではないことを認識するだろう。したがって、実質的に非細胞毒性の増粘された流体組成物を得るためには、二酸化塩素の生成および対応する亜塩素酸アニオンの消費にとって十分な時間が必要である。当業者は、本開示における教示および当技術分野についての知識に照らして、どれくらいの時間が十分であるかを容易に決定することができる。
【0085】
好ましくは、水性の増粘された流体は、増粘剤成分の完全な水和を可能にするために、ASEPTROL顆粒と混ぜ合わせるよりも十分に先に調製される。一実施形態では、高粘度NaCMC粉末を蒸留水に添加することによって、増粘された流体組成物を形成する。NaCMCは、少なくとも8時間水和させ、次いで混合物を攪拌して均質化する。次いで、一定の大きさのASEPTROL顆粒をNaCMCの増粘された流体と混合することによって、実質的に非細胞毒性の組成物を調製する。水和したNaCMC混合物中で水性媒体と接触させることにより、ASEPTROL顆粒が活性化し、二酸化塩素が生成する。
【0086】
別の実施形態では、実質的に非細胞毒性の増粘された流体組成物は、所期の使用の部位でも形成され得る。例えば、唾液、粘膜組織の粘液などの体液、または吐く息などの湿潤な蒸気は、ASEPTROL顆粒などの二酸化塩素の粒子状前駆物質を活性化するための水性媒体として働き得る。一実施形態では、混合物は、粉末形状の粒子状物質であり、増粘剤成分の層中で混合され、それによって増粘されたマトリックスを形成し得る。マトリックスは、口腔組織に直接適用されてもよく、組織中に存在する水分への曝露によって二酸化塩素の製造が活性化され、実質的に非細胞毒性の組成物が形成される。あるいは、マトリックスを使用の直前に湿らせ、次いで口腔組織に適用してもよい。別の実施形態では、ASEPTROL顆粒および増粘剤成分の混合物は、例えば順応性のある蝋の添加によってある形状を形成し、次いでこの形状を歯に適用する。唾液が顆粒を活性化して二酸化塩素を形成し、増粘剤成分が水和して、それによってin situで増粘された流体組成物が形成する。別の実施形態では、ASEPTROL顆粒および増粘剤成分の混合物は、デンタルストリップ、デンタルフィルムまたはデンタルトレーに配置される。デンタルストリップは、歯に貼り付けるために十分に可撓性であるプラスチック支持体から作られた実質的に平面の物体をさす。デンタルフィルムは、歯の表面に実質的に取り付けることができる柔軟な適合材料から作られた実質的に平面の物体をさす。任意選択で、デンタルストリップは唾液などの水性媒体に溶解可能とすることができる。ストリップ、フィルムまたはトレーは、歯の上に位置付けられ、唾液は上記のように水性媒体として働き、in situで実質的に非細胞毒性の増粘された流体組成物を作り出す。あるいは、ストリップまたはトレー上の混合物は、歯に位置付けられるより前に、水または水性媒体と接触する。
【0087】
II.非細胞毒性の投与のためのデバイスおよび組成物
別の態様では、本方法は、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を口腔組織へ送達するデバイスまたは組成物を使用して実施する。二酸化塩素が有効量標的組織に到達するが、オキシ塩素アニオンが標的組織または処置のための標的にされていない周辺組織を刺激するのを実質的に阻害する方法で、二酸化塩素およびオキシ塩素アニオンを含む組成物を投与するためのこのようなデバイス、組成物、システムおよび方法は、「Methods, Systems and Devices for Administration of Chlorine Dioxide」と題された2009年6月15日出願の、本発明の譲受人に譲渡された米国仮特許出願第61/187198号に記載されている。一般的に、本方法は、二酸化塩素自体または二酸化塩素生成成分のいずれかを含み、組織への細胞毒性を引き起こすオキシ塩素アニオンをさらに含む二酸化塩素源を提供することと、実質的にオキシ塩素アニオンがそこを通過するのを禁じ、二酸化塩素がそこを通過するのを許すオキシ塩素アニオン障壁をさらに提供することと、を含む。いくつかの実施形態では、オキシ塩素アニオン障壁は、陽子がそこを通過するのを実質的に阻害することもできる。二酸化塩素源は、オキシ塩素アニオン障壁が二酸化塩素源と組織との間に挿入された状態で組織に適用され、したがって、オキシ塩素アニオンが組織に到達するのを妨げる、または実質的に最小化し、それによって実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を組織へ送達することが可能になる。
【0088】
二酸化塩素源は、in situで二酸化塩素を形成することができる任意の二酸化塩素含有組成物または原料を含んでもよい。二酸化塩素源中に存在する原料は、好ましくは、本方法の実施中、ならびに原料が障壁と接触している任意の使用前期間中にオキシ塩素アニオン障壁と両立する。「両立する」とは、原料が、容認できない程度に二酸化塩素源中の二酸化塩素の濃度、オキシ塩素アニオンの通過の阻害、または障壁により許可された二酸化塩素の通過に不利に影響しないことを意味する。
【0089】
障壁は、二酸化塩素源と感染した口腔組織との間に層の形状で存在し得る。一態様では、二酸化塩素源を有さないオキシ塩素障壁を最初に組織に適用する。次いで、二酸化塩素源を障壁層に適用する。他の実施形態では、二酸化塩素源を最初に障壁に適用し、次いで組み合わせを組織に適用するが、この場合、障壁層が組織と接触する。二酸化塩素源が二酸化塩素生成成分を含む実施形態では、二酸化塩素の生成は、口腔組織への障壁(二酸化塩素源を有する、または有さない)の適用の前、間、および/または後に活性化され得る。
【0090】
別の実施形態では、感染した組織は、実質的に非細胞毒性で実質的に非刺激性の量のオキシ塩素アニオンを含む二酸化塩素源と接触し得る一方で、第2二酸化塩素源が口腔組織と反対側の障壁の側に配置され、第2源からの追加的な二酸化塩素が障壁を通過して口腔組織と接触し得るが、第2源中のオキシ塩素アニオンの障壁の通過は阻害される。
【0091】
別の実施形態では、オキシ塩素アニオンが組織から隔離されるように、二酸化塩素源は、1つまたは複数の障壁物質を含むマトリックス中に分散されてもよく、一方で、二酸化塩素は、必要ならば、障壁物質、およびマトリックスを通過して口腔組織と接触する。この実施形態では、マトリックスを組織に直接、または任意選択の介在性の組織と接触している層に適用する。一態様では、マトリックス自体が障壁物質である。障壁として機能し得る代表的なマトリックス材料には、パラフィン蝋などの蝋、ポリエチレン、ワセリン、ポリシロキサン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル(EVA)、ポリウレタン、これらの混合物などが含まれる。別の態様では、二酸化塩素源は、障壁物質によって被覆または被包される。代表的な障壁物質には、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオリド、ポリビニリデンジクロリド、ポリジメチルシロキサンおよびポリテトラフルオロエチレンの組み合わせ、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリシロキサン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリレート、鉱油、パラフィン蝋、ポリイソブチレン、ポリブテン、ならびにこれらの組み合わせが含まれる。代表的な障壁物質は、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を組織へ送達するように、高い親和力でオキシ塩素アニオンに結合し、アニオンの移動または拡散を妨害する、または止める化合物も含む。化合物は、オキシ塩素アニオンとともに不溶性沈殿を形成し得、それによって拡散を妨害する、または止める。あるいは、化合物は、物質または材料上に固定化され、それによって拡散または移動を妨害する。化合物は、アンモニウム、ピリジニウム、イミダゾリウム、ホスホニウムおよびスルホニウム、ならびにマトリックスの一部であり得る他の正に帯電した化合物など、カチオン性であり得る。任意選択で、化合物は、オキシ塩素アニオン障壁物質上に、マトリックスに対して、または任意選択の裏張り層上に固定化することができる。
【0092】
オキシ塩素アニオン障壁として種々の物質および膜を使用することができる。障壁は任意の形状をとることができ、一般的には流体または固体のいずれかである。
【0093】
他の実施形態では、オキシ塩素アニオン障壁は、ワセリンなどの流体である。この実施形態では、流体を、最初に組織に、または介在性の組織と接触している層に適用して、層として障壁を形成し、次いで、二酸化塩素源を流体障壁層に実質的に適用してもよい。二酸化塩素源を粒子状物質として適用してもよく、または物質に包含してフィルムを形成してもよい。
【0094】
いくつかの実施形態では、オキシ塩素アニオン障壁は、非多孔性膜である。膜は、二酸化塩素に関して透過性で、オキシ塩素アニオンに関して実質的に非透過性のままであれば、任意の厚さとすることができ、単一層または複数層とすることができる。代表的な非多孔性物質は、ポリウレタン膜である。いくつかの実施形態で、ポリウレタン膜は、約38〜約76ミクロンなど、約30〜約100ミクロンの厚さである。市販されている代表的なポリウレタン膜には、CoTran(商標)9701(3M(商標) Drug Delivery Systems、St.Paul、MN)およびELASTOLLAN(BASF Corp.、Wyandotte、MI)が含まれる。ELASTOLLAN製品は、ポリエーテルに基づく熱可塑性ポリウレタンである。ELASTOLLANの特定の例は、ELASTOLLAN1185A10である。
【0095】
いくつかの実施形態では、オキシ塩素アニオン障壁は、二酸化塩素に関して透過性で、オキシ塩素アニオンに関して実質的に非透過性の微孔性膜である。微孔性膜は、二酸化塩素に関して透過性で、オキシ塩素アニオンに関して実質的に非透過性のままであれば、任意の厚さとすることができ、単一層または複数層とすることができる。一実施例では、微孔性膜は、熱機械的延伸ポリテトラフルオロエチレン(例えば、Goretex(登録商標))またはポリビニリデンジフルオリド(PVDF)を含むことができる。例えば、米国特許第4683039号を参照されたい。延伸ポリテトラフルオロエチレンを形成する手順は、米国特許第3953566号に記載されている。代表的なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜、ポリジメチルシロキサンおよびPTFEの相互侵入高分子網目(IPN)は、米国特許第4832009号、第4945125号および第5980923号に記載されている。この種類の市販されている製品、Silon−IPN(Bio Med Sciences Inc.、Allentown、PA)は、単一層であり、10〜750ミクロンの間の厚さで入手できる。一実施形態では、微孔性膜は、約16ミクロンの厚さを有するシリコーンおよびPTFEのIPNである。別の実施形態では、膜は、微孔性ポリプロピレンフィルムである。代表的な微孔性ポリプロピレンフィルムは、CHEMPLEX Industries(Palm City、FL)から市販されている物質で、約25ミクロンの厚さの単一層膜で、55%の多孔度および約0.21ミクロン×0.05ミクロンの孔径を有する。微孔性膜物質は、使用のために必要とされる構造的強度を提供する支持物質とともに複合体として提供され得る。いくつかの実施形態では、膜は疎水性であり、膜の疎水性の性質が、水性反応媒体および水性受容媒体の両方が膜を通過するのを妨げ、一方で二酸化塩素の分子拡散を許す。このような障壁に使用する物質に関して考慮すべき特徴には、微孔性物質の疎水性、孔径、厚さ、ならびに二酸化塩素、塩素、亜塩素酸塩、塩素酸塩、塩化物、酸および塩基の攻撃に対する化学的安定性が含まれる。
【0096】
障壁を形成するために、種々の他の物質および膜を使用することができる。例えば、障壁は、微穿孔ポリオレフィン膜、二酸化塩素に関して実質的に透過性で組成物のイオン成分に関して実質的に非透過性であるポリスチレンフィルム、比較的開放的なポリマー構造を有するポリマー材料から形成される浸透気化膜、酢酸セルロースフィルム複合体、ポリシロキサンもしくはポリウレタン材料、または蝋を含むことができる。当然、軟組織と接触するために、微孔性障壁は、特にデバイスおよび組成物の一般的使用の時間尺度において、実質的に非刺激性で実質的に非細胞毒性であるべきである。
【0097】
障壁中の孔径は、障壁を通る二酸化塩素の所望の流速に応じて広範囲に変化し得る。孔は、そこを通る二酸化塩素ガスの流れを妨げるほどに小さくなるべきではないが、液体の流れを許すほどに大きくなるべきでない。一実施形態では、孔径は、約0.21ミクロン×0.05ミクロンである。障壁の孔の量および孔径は、適用の温度、障壁物質の疎水性、障壁物質の厚さに応じて、および障壁を通る二酸化塩素の所望の流速に応じて広範囲に変化し得る。より高温では二酸化塩素源からの二酸化塩素の蒸気圧はより高いので、より低温に比較してより高温では所与の二酸化塩素流速のためには、より少なく、より小さい孔が必要とされる。水性二酸化塩素源が高疎水性障壁の孔を通って流れる傾向は、疎水性の低い障壁の孔を通るよりも低いので、ポリウレタンなどの疎水性の低い物質と比較して、PTFEなどの高疎水性の障壁物質では、より多くより大きい孔を使用する場合がある。障壁の強度についての考慮は、選択する多孔度も要求する。一般的に、障壁の多孔度は、約1〜約98%、約25〜約98%、または約50%〜約98%で変化する。
【0098】
本方法を実施するために有用なシステム、組成物およびデバイスも提供する。
【0099】
一態様では、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素を組織へ送達するためのシステムを提供する。一般的なシステムは、第1システム成分として二酸化塩素または二酸化塩素生成成分、およびオキシ塩素アニオンを含み、かつ第2システム成分としてオキシ塩素アニオン障壁を含む二酸化塩素源を含み、障壁は二酸化塩素源と組織との間に挿入され、障壁は実質的にオキシ塩素アニオンの通過を禁じ、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物の通過を許し、それによって実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素を組織へ送達することが可能になる。
【0100】
上記の方法およびシステムを実施するための組成物およびデバイスも提供する。したがって、一態様は、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を組織へ送達するための組成物を特徴とする。組成物は、二酸化塩素または二酸化塩素生成成分ならびにオキシ塩素アニオンを含む二酸化塩素源と、実質的にオキシ塩素アニオンの通過を禁じるが二酸化塩素の通過を許し、それによって実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素を組織へ送達することを可能にする少なくとも1つの障壁物質とを含むマトリックスを含む。一実施形態では、マトリックスは、水性マトリックス、またはワセリンなどの疎水性もしくは無水のマトリックスであり得る。いくつかの実施形態では、マトリックス自体が障壁物質である。例えば、マトリックスは、二酸化塩素の拡散を許すがオキシ塩素アニオンの拡散を阻害するため、無極性または弱い極性とすることができる。
【0101】
マトリックスの大部分は障壁物質とすることができ、またはマトリックスは二酸化塩素の口腔組織への選択的送達を実行するために十分な量の障壁物質を含むことができる。例えば、マトリックスは、二酸化塩素を形成するための反応物または前駆物質が埋め込まれた、または分散されたポリマー材料を含むことができ、ポリマー材料は、二酸化塩素に関して透過性であるがオキシ塩素アニオン関して実質的に非透過性である。例えば、光波への曝露、より具体的には紫外線への曝露によって活性化されて二酸化塩素を生成する、ポリエチレンに埋め込まれた反応物または前駆物質、およびエネルギー活性化可能触媒を含む組成物を記載している米国特許第7273567号を参照されたい。
【0102】
いくつかの実施形態では、マトリックスは粘着性ポリマーマトリックスなどの粘着性マトリックスである。このような粘着性マトリックスに有用なポリマーは、二酸化塩素に関して実質的に透過性であり、好ましくは、起こりうるポリマーの分解および起こりうる結果としての粘着力の変化を制限するために、二酸化塩素による酸化に比較的耐性である。当技術分野において、粘着性ポリマーは既知である。例えば、米国特許第7384650号を参照されたい。
【0103】
組成物は、例えば、以下に記載のように、組織上に塗りつける、または塗布することにより、あるいは送達デバイスに組み入れることにより、組織に適用することができる。
【0104】
二酸化塩素およびオキシ塩素アニオンを含む組成物を標的口腔組織へ送達し、オキシ塩素アニオンが組織に接触するのを実質的に阻害または妨害しながら、有効量の二酸化塩素が標的組織に接触するようにするための種々のデバイスが想像される。実質的な阻害は、標的組織、および任意の周囲または周辺の口腔の硬組織または軟組織に対する損傷または刺激を減少、最小化または防止する。
【0105】
デバイスは、一般的に、接触される組織に遠位の層および接触される口腔組織に近位の層を含むよう方向的に配向される。遠位の層は、本明細書では、裏張り層とも呼ぶ。デバイスは、デバイスを組織に適用する前に除去される、組織に接触した層に貼り付けられる剥離ライナーをさらに含んでもよい。一実施形態では、デバイスは、二酸化塩素源を含む層および障壁層を含む。別の実施形態では、デバイスは、(1)裏張り層と、(2)二酸化塩素源を含む層と、(3)障壁層とを含む。障壁層は、口腔組織と接触するよう適合され得る、または別の組織に接触した層が障壁層と組織との間に存在し得る。障壁層または追加の組織に接触する層は、粘着性とすることができる。任意選択の追加の組織に接触した層は、二酸化塩素に関して実質的に透過性でもある。いくつかの実施形態では、障壁層は、熱機械的延伸ポリテトラフルオロエチレンフィルムから作ることができる。いくつかの実施形態では、二酸化塩素源は、ASEPTROLの顆粒などの、二酸化塩素の粒子状前駆物質である。
【0106】
一般的に、裏張り層は、二酸化塩素および二酸化塩素源の他の成分に関して実質的に非透過性である任意の適当な物質から作ることができる。裏張り層は、マトリックス層のための保護カバーとして働き、支持機能も提供し得る。裏張り層用の代表的な物質には、高密度および低密度ポリエチレン、ポリビニリデンジクロリド(PVDC)、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、ポリプロピレン、ポリウレタン、金属箔などのフィルムが含まれる。
【0107】
任意選択の組織に接触する層は、二酸化塩素に関して実質的に透過性である任意の物質とすることができる。任意選択の組織に接触する層は、吸収性物質であってもよい。この層の非限定的な例には、綿もしくは他の天然繊維、または合成繊維の布もしくはメッシュ、フォームおよびマットが含まれる。
【0108】
別の実施形態では、デバイスは、裏張り層、および二酸化塩素源が分散し、少なくとも1つの障壁物質を含む上記のマトリックスを含む。マトリックスは、組織と接触するよう適合し得る、または追加の組織に接触する層が存在し得る。マトリックスまたは追加の組織に接触する層のいずれかは、粘着性とすることができる。一般的に、マトリックスを調製し、次いで裏張り層の上に被覆する。
【0109】
オキシ塩素アニオンを含む二酸化塩素溶液を特定の組織に連続的および/または断続的に提供するためのデバイスも意図される。本デバイスは、本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第61/149784号に記載の洗浄デバイスの修正である。修正は、オキシ塩素アニオン障壁の追加である。具体的には、本明細書で意図されるデバイスは、オキシ塩素アニオン障壁を含むチャンバーを備え、デバイスは、二酸化塩素溶液をチャンバーの中へ供給するための吸入口および二酸化塩素溶液を除去するための吐出口、ならびにオキシ塩素アニオン障壁で被覆された開口部を備える。チャンバーは、感染した領域を取り囲む組織と堅固な実質的に漏れることのないシールを形成するよう設計され、開口部は感染した領域の近位にある。オキシ塩素アニオン障壁は、感染した領域とチャンバー開口部との間に挿入される。オキシ塩素アニオンを含む二酸化塩素溶液をチャンバーに導入し、二酸化塩素は、開口部を被覆するオキシ塩素アニオン障壁を通過し、それによって感染した領域と接触する一方で、障壁を通るオキシ塩素アニオンの通過は、実質的に非細胞毒性および/または実質的に非刺激性のレベルまで制限する。このデバイスは、本明細書に記載の他のデバイスのように、高濃度二酸化塩素溶液(例えば、約700ppmよりずっと高い)の使用を可能にする一方で、このような溶液中に一般的に見られるオキシ塩素アニオンの細胞毒性を最小化または除去する。
【0110】
当技術分野における二酸化塩素を調製する任意の方法を、二酸化塩素を作るための二酸化塩素源として使用することができる。例えば、水中で亜塩素酸イオンを反応させて水に溶解した二酸化塩素ガスを製造することによって二酸化塩素を調製するいくつかの方法が存在する。従来の二酸化塩素を調製する方法は、亜塩素酸ナトリウムをガス状塩素(Cl2(g))、次亜塩素酸(HOCl)または塩酸(HCl)と反応させることを含む。しかしながら、二酸化塩素形成の反応速度論は、亜塩素酸アニオン濃度において高次であるので、二酸化塩素生成は一般的に高濃度(>1000ppm)で起こり、得られる二酸化塩素含有溶液は一般的に所与の適用の使用濃度のために希釈しなければならない。二酸化塩素は、酸性化、または酸性化および還元の組み合わせのいずれかによって、塩素酸アニオンから調製してもよい。二酸化塩素は、亜塩素酸イオンを有機酸無水物と反応させることによって製造することもできる。
【0111】
水蒸気と接触すると二酸化塩素ガスを生成する物質を含む二酸化塩素生成組成物は、当技術分野で既知である。例えば、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6077495号、第6294108号および第7220367号を参照されたい。米国特許第6046243号は、親水性物質に溶解した亜塩素酸塩および疎水性物質中の酸放出剤の複合体を開示している。複合体は、水分に曝露すると、二酸化塩素を生成する。本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願公開第2006/0024369号は、有機マトリックスに組み込まれた二酸化塩素生成物質を含む二酸化塩素生成複合体を開示している。二酸化塩素は、複合体を水蒸気または電磁エネルギーに曝露すると生成する。乾燥極性物質による活性化による、乾燥または無水二酸化塩素生成組成物からの二酸化塩素生成は、本発明の譲受人に譲渡された同時係属の出願第61/153847号に開示されている。米国特許第7273567号は、亜塩素酸アニオン源とエネルギー活性化可能触媒とを含む組成物から二酸化塩素を調製する方法を記載している。適当な電磁エネルギーに組成物を曝露することにより、二酸化塩素ガスの製造を次々に触媒する触媒が活性化される。
【0112】
二酸化塩素溶液は、液体の水と接触すると二酸化塩素ガスを生成する成分を含む、粉末、顆粒、ならびに錠剤およびブリケットなどの固体密集物を含む固体混合物から製造することもできる。例えば、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6432322号、第6699404号および第7182883号、ならびに米国特許出願公開第2006/0169949号および第2007/0172412号を参照されたい。好ましい実施形態では、二酸化塩素は、二酸化塩素の粒子状前駆物質を含む組成物から生成する。したがって、二酸化塩素源は、二酸化塩素の粒子状前駆物質を含む、または本質的に二酸化塩素の粒子状前駆物質からなる。使用する粒子状前駆物質は、ASEPTROL S−Tab2およびASEPTROL S−Tab10などのASEPTROL製品とすることができる。ASEPTROL S−Tab2は、重量(%)で以下の化学組成を有する。すなわち、NaClO2(7%)、NaHSO4(12%)、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム二水和物(NaDCC)(1%)、NaCl(40%)、MgCl2(40%)である。米国特許第6432322号の実施例4は、代表的なS−Tab2錠剤の製造工程を記載している。ASEPTROL S−Tab10は、重量(%)で以下の化学組成を有する。すなわち、NaClO2(26%)、NaHSO4(26%)、NaDCC(7%)、NaCl(20%)、MgCl2(21%)である。米国特許第6432322号の実施例5は、代表的なS−Tab10錠剤の製造工程を記載している。
【0113】
本明細書の他で記載のように、二酸化塩素生成の活性化は、二酸化塩素生成成分に適当な薬剤(例えば、水性媒体、電磁エネルギーなど)を接触させることによって、投与より前にすることができる。あるいは、二酸化塩素生成は、唾液または呼気などの水性媒体と接触させることによって、in situで開始する。
【0114】
III.二酸化塩素生成成分
二酸化塩素生成成分は、少なくともオキシ塩素アニオン源および二酸化塩素生成の活性剤をさす。いくつかの実施形態では、活性剤は酸性源である。これらの実施形態では、成分は、遊離ハロゲン源を任意選択でさらに含む。遊離ハロゲン源は、塩素などのカチオン性ハロゲン源であってもよい。他の実施形態では、活性剤は、エネルギー活性化可能触媒である。さらに他の実施形態では、活性剤は、乾燥または無水の極性物質である。
【0115】
オキシ塩素アニオン源は、一般的に、亜塩素酸塩および塩素酸塩を含む。オキシ塩素アニオン源は、アルカリ金属亜塩素酸塩、アルカリ土類金属亜塩素酸塩、アルカリ金属塩素酸塩、アルカリ土類金属塩素酸塩およびこのような塩の組み合わせであってもよい。金属亜塩素酸塩が好ましい。好ましい金属亜塩素酸塩は、亜塩素酸ナトリウムおよび亜塩素酸カリウムなどのアルカリ金属亜塩素酸塩である。アルカリ土類金属亜塩素酸塩を使用することもできる。アルカリ土類金属亜塩素酸塩の例には、亜塩素酸バリウム、亜塩素酸カルシウムおよび亜塩素酸マグネシウムが含まれる。代表的な金属亜塩素酸塩は、亜塩素酸ナトリウムである。
【0116】
酸性源によって二酸化塩素生成を活性化するため、酸性源は無機酸塩、強酸のアニオンと弱塩基のカチオンを含む塩、水と接触すると溶液中に陽子を遊離させることができる酸、有機酸、無機酸およびこれらの混合物を含んでよい。いくつかの態様では、酸性源は、乾式貯蔵中は実質的に金属亜塩素酸塩と反応しないが、水性媒体が存在する場合に金属亜塩素酸塩と反応して二酸化塩素を形成する粒子状固体物質である。酸性源は、水溶性、実質的に水に不溶性、またはこの2つの中間であってもよい。代表的な酸性源は、約7未満、より好ましくは約5未満のpHを作り出す酸性源である。
【0117】
代表的な実質的に水溶性の酸性源形成成分には、ホウ酸、クエン酸、酒石酸などの水溶性固体酸、無水マレイン酸などの水溶性有機酸無水物、および塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化リチウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸水素ナトリウム(NaHSO4)、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、硫酸水素カリウム(KHSO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)などの水溶性酸塩、ならびにこれらの混合物が含まれるが、それだけに限定されない。代表的な酸性源形成成分は、硫酸水素ナトリウム(重硫酸ナトリウム)である。追加の水溶性の酸性源形成成分は、当業者に既知であろう。
【0118】
二酸化塩素生成成分は、遊離ハロゲンの源を任意選択で含む。一実施形態では、遊離ハロゲン源は遊離塩素源であり、遊離ハロゲンは遊離塩素である。無水組成物中で使用する遊離ハロゲン源の適当な例には、ジクロロイソシアヌル酸およびNaDCCAなどのその塩、トリクロロシアヌル酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウムおよび次亜塩素酸カルシウムなどの次亜塩素酸の塩、ブロモクロロジメチルヒダントイン、ジブロモジメチルヒダントインなどが含まれる。代表的な遊離ハロゲンの源は、NaDCCAである。
【0119】
エネルギー活性化可能触媒によって二酸化塩素生成を活性化するため、エネルギー活性化可能触媒は、金属酸化物、金属硫化物および金属リン酸塩からなる群から選択される。代表的なエネルギー活性化可能触媒には、二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、三酸化タングステン(WO3)、二酸化ルテニウム(RuO2)、二酸化イリジウム(IrO2)、二酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、酸化タンタル(Ta25)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、酸化鉄(III)(Fe23)、三酸化モリブデン(MoO3)、五酸化ニオブ(NbO5)、三酸化インジウム(In23)、酸化カドミウム(CdO)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、二酸化マンガン(MnO2)、酸化銅(Cu2O)、五酸化バナジウム(V25)、三酸化クロム(CrO3)、三酸化イットリウム(YO3)、酸化銀(Ag2O)、xが0と1との間であるTixZr1-x2、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される金属酸化物が含まれる。エネルギー活性化可能触媒は、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸カルシウム、酸化ジルコニウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0120】
二酸化塩素生成成分は、任意選択でマトリックス中に存在し得る。このようなマトリックスは、本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願公開第2006/0024369号に記載されているマトリックスなどの有機マトリックスであってよい。これらのマトリックス中で、複合体を水蒸気または電磁エネルギーに曝露すると、二酸化塩素が生成する。マトリックスは、含水ゲルまたは無水ゲルであってもよい。疎水性マトリックスを使用してもよい。疎水性マトリックス物質には、疎水性の蝋などの水を通さない固体成分、疎水性の油などの水を通さない流体、ならびに疎水性固体および疎水性流体の混合物が含まれる。疎水性マトリックスを使用する実施形態では、二酸化塩素の活性化は、同時係属の米国特許出願第61/153847号に記載の乾燥または無水の極性物質であってよい。
【0121】
IV.治療法
組成物の投与量は、広範囲の限度内で変化し、各々個別の場合の個々の必要条件に適合させ得る。投与量は、処置条件、受容者の一般的な健康状態、投与の数および頻度、ならびに当業者に既知の他の変数に依存する。したがって、口腔組織へ送達される二酸化塩素の量(すなわち、有効量)は、二酸化塩素の組織への適用から意図される結果に関連するだろう。当業者は、所与の使用に有効である二酸化塩素の適当な量または量の範囲を容易に決定することができる。一般的に、有用な量は、例えば、二酸化塩素約1〜約2000ppm、少なくとも約1〜約1000ppm、または少なくとも約20〜約400ppmを含む。いくつかの実施形態では、二酸化塩素は、組成物中に少なくとも約5ppm、少なくとも約20ppm、または少なくとも約30ppm存在する。一般的に、二酸化塩素の量は、約1000ppm、約700ppmまで、約500ppmまで、および約200ppmまでに及ぶことができる。一実施形態では、組成物は、約30〜約100ppmの二酸化塩素を含む。いくつかの実施形態では、有用な投与量の範囲は、接触面積(平方メートル)当たり二酸化塩素約2.5mg〜二酸化塩素約500mg/m2とすることができる。少なくとも約10mg/m2、少なくとも約15mg/m2、および少なくとも約20mg/m2の投与量も有用とすることができる。
【0122】
組成物は、患者に1日数回の頻度で投与してよく、あるいは1回、1日1回、週1回、2週間ごとに1回、月1回などの少ない頻度で、または数ヶ月ごとに1回もしくはさらに年1回未満などさらに少ない頻度で投与してもよい。投与の頻度は当業者に容易に明らかであり、治療する疾患の種類および重症度などであるが、それだけに限定されない任意の数の因子に依存するだろう。
【0123】
組織に接触することになる二酸化塩素は、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない。一実施形態では、組織に接触する実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素は、1グラム当たり0ミリグラム(mg)のオキシ塩素アニオン〜1グラム当たり約0.25mg以下のオキシ塩素アニオン、または1グラムの組成物当たり0〜0.24、0.23、0.22、0.21もしくは0.20mgのオキシ塩素アニオン、または1グラムの組成物当たり0〜0.19、0.18、0.17、0.16、0.15、0.14、0.13、0.12、0.11もしくは0.10mgのオキシ塩素アニオン、または1グラムの組成物当たり0〜0.09、0.08、0.07、0.06、0.05もしくは0.04mgのオキシ塩素アニオンを含み、細胞毒性の原因となる他の成分がなく、それゆえ実質的に非細胞毒性である。いくつかの実施形態では、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素は、接触面積の平方メートル当たり約400ミリグラム未満、約375mg/m2未満、約350mg/m2未満、約325mg/m2未満または約300mg/m2未満のオキシ塩素アニオンを含む。いくつかの実施形態では、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素は、0〜約200mg/m2未満のオキシ塩素アニオンを含む。他の実施形態では、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素は、0〜約100mg/m2未満のオキシ塩素アニオンを含む。
【0124】
オキシ塩素アニオンは、EPA試験法300(Pfaff、1993、「方法300.0イオンクロマトグラフィーによる無機アニオンの測定」、Rev.2.1、米国環境保護庁)の一般的手順に従ったイオンクロマトグラフィー、または電流測定法(Eatonら編、「水および廃水の試験のための標準的方法」第19版中の電流測定法II、アメリカ公衆衛生学会、ワシントンDC、1995)に基づく滴定法を含む、当業者に既知の任意の方法を使用して、二酸化塩素溶液または組成物中で測定することができる。あるいは、オキシ塩素アニオンは、電流測定法と同等の滴定技術によって測定してもよいが、この方法は、電流滴定法の代わりにヨウ化物のヨウ素への酸化、およびその後のチオ硫酸ナトリウムによる、デンプン終点までの滴定を使用する。この方法を本明細書では「pH7緩衝滴定」とも呼ぶ。亜塩素酸塩分析用標準試薬は、一般的に約80重量%の純粋な亜塩素酸ナトリウムを含むと推測される工業銘柄の固体亜塩素酸ナトリウムから調製することができる。
【0125】
本明細書で引用する各々のおよび全ての特許、特許出願および刊行物の開示は、全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0126】
記載の方法、デバイス、組成物およびシステムは、特定の実施形態を参照して開示されているが、他の実施形態および変形形態が、本方法、デバイス、組成物およびシステムの真の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者によって考案され得ることは明白である。添付の特許請求の範囲は、このような実施形態および同等の変形形態の全てを含むと解釈されるように意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内の組織の感染症を緩和する方法であって、
二酸化塩素または二酸化塩素生成成分を含む二酸化塩素源を含む組成物を前記口腔に投与して、それによって前記口腔内の組織の感染症を緩和することを含み、
前記投与ステップが、
i)前記組織と、前記二酸化塩素源を含む実質的に非細胞毒性の組成物を接触させる工程、
ii)前記組織と、前記二酸化塩素源およびオキシ塩素アニオンを含むデバイスを接触させる工程(前記デバイスは実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を前記組織へ送達する)を含み、または
iii)前記組織と、前記二酸化塩素源およびオキシ塩素アニオン、ならびに実質的に前記オキシ塩素アニオンの通過を妨げ、実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を通過させ、それによって前記実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物の組織への送達を可能にする障壁物質を含む組成物を接触させる工程、
の1又は複数の工程を含む方法。
【請求項2】
前記組成物が、約1〜約1000ppmの二酸化塩素を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物が、約20〜約400ppmの二酸化塩素を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記二酸化塩素源が、前記二酸化塩素生成成分として、二酸化塩素の粒子状前駆物質を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記口腔組織感染症が、口臭、歯肉炎、歯周炎、う蝕発生および鵞口瘡からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が抗菌薬をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記抗菌薬が、ドキシサイクリン、メトロニダゾール、クロルヘキシジン、ミノサイクリン、テトラサイクリン、ニスタチン、ミコナゾールおよびアムホテリシンからなる群から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
抗菌薬を含む第2組成物を前記口腔に投与することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記投与ステップが、前記組織と、前記二酸化塩素源を含む実質的に非細胞毒性の組成物を接触させる工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、1グラムの組成物当たり約0.2ミリグラム未満のオキシ塩素アニオンを含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が、約4.5〜約11のpHを有する請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記接触工程が、デンタルストリップ、デンタルフィルムまたはデンタルトレーを含む請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記投与ステップが、前記組織と、二酸化塩素源およびオキシ塩素アニオンを含むデバイスを接触させる工程(前記デバイスは実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を前記組織へ送達する)を含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記デバイスが、
任意選択の裏張り層と、
前記二酸化塩素源を含む層と、
前記二酸化塩素源層と前記組織との間に挿入された障壁層と
を備え、
前記障壁層が、実質的に前記オキシ塩素アニオンの通過を妨げ、前記実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を通過させる請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記障壁層が、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオリド、ポリビニリデンジクロリド、ポリジメチルシロキサンおよびポリテトラフルオロエチレンの組み合わせ、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリシロキサン、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択されるフィルムである請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記デバイスが、裏張り層および前記裏張り層に貼り付けられたマトリックスを備え、
前記マトリックスが、二酸化塩素源およびオキシ塩素アニオン、ならびに
実質的に前記オキシ塩素アニオンの通過を妨げ、前記実質的にオキシ塩素アニオンを含まない二酸化塩素組成物を通過させる障壁物質、
を含む請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記障壁物質が、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオリド、ポリビニリデンジクロリド、ポリジメチルシロキサンおよびポリテトラフルオロエチレンの組み合わせ、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリシロキサン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリレート、鉱油、パラフィン蝋、ポリイソブチレン、ポリブテン、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
前記投与ステップが、前記組織と、二酸化塩素源、オキシ塩素アニオンおよび障壁物質を含む組成物を接触させることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記障壁物質が、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオリド、ポリビニリデンジクロリド、ポリジメチルシロキサンおよびポリテトラフルオロエチレンの組み合わせ、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリシロキサン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリレート、鉱油、パラフィン蝋、ポリイソブチレン、ポリブテン、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
口腔内の組織の感染症を緩和する方法であって、二酸化塩素源を含む組成物を前記口腔に投与することを含み、前記投与ステップが、前記組織と、前記二酸化塩素源を含む実質的に非刺激性の組成物を接触させる工程を含み、それによって前記口腔内の前記組織の前記感染症を緩和する方法。
【請求項21】
前記組成物が、約1〜約1000ppmの二酸化塩素を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物が、約20〜約400ppmの二酸化塩素を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記二酸化塩素源が、二酸化塩素生成成分として、二酸化塩素の粒子状前駆物質を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物が、1グラムの組成物当たり約0.2ミリグラム未満のオキシ塩素アニオンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物が、約4.5〜約11のpHを有する、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記口腔組織感染症が、口臭、歯肉炎、歯周炎、う蝕発生および鵞口瘡からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記接触工程が、デンタルストリップ、デンタルフィルムまたはデンタルトレーを含む、請求項20に記載の方法。

【公表番号】特表2011−528367(P2011−528367A)
【公表日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−518869(P2011−518869)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/050641
【国際公開番号】WO2010/009200
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(505470786)ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション (81)
【Fターム(参考)】