説明

二酸化炭素のメチルアルコール及び関連酸素化物又は炭化水素への再生

【課題】二酸化炭素を電気化学的に直接還元して、酸素化された炭化水素を生成する方法を提供する。
【解決手段】工業的副産物として得られる二酸化炭素、水、及び発電プラントのオフピーク発電などから得られる電気エネルギーを、還元ゾーンに供給して、該二酸化炭素と水とを反応せしめて、酸素、及びメチルアルコール、ホルムアルデヒド、蟻酸、蟻酸エステルなどの酸素化された炭化水素又は酸素化された炭化水素の混合物を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素を還元して、有機化合物を形成する方法、二酸化炭素の可逆的還元を利用して、エネルギーの貯蔵並びに放出系を得る方法、及びそのための再生式燃料電池系に関するものである。
【背景技術】
【0002】
世界の増大しつづける人口及び次第に度を高める技術社会は、世界のエネルギー並びに物質的資源の消費速度を維持することを困難にしている。需要を満たし、結果として生活水準を維持し、もしくは改善するために、新たなかつより効率的な方法が必要となっている。将来の世代の利用のために、環境を保全しつつ、我々の資源に対する需要を満たす必要があることから、これら必要とされる資源の供給と環境の保護並びに改善との間の平衡を確立することが、社会の主な課題の一つとなっている。
発電用の発電プラント及び多くの他の工業的用途において、広く利用されている化石燃料、例えば石炭、石油及び天然ガス(即ち、炭化水素類)の燃焼は、二酸化炭素と水とを生成する。所謂光合成過程は、二酸化炭素と水とを炭水化物に再生し、かつ新たな植物の生命を再生するが、自然の化石燃料の形成は、有用な時間尺度では進行しない。あらゆる現実的な目的にとって、化石燃料の燃焼は、不可逆過程である。
【0003】
更に、発電プラント及びその他の工業における、炭化水素の燃焼によって生成される二酸化炭素は、温室効果に寄与し、また更なる環境問題を引き起こす。二酸化炭素の有用な燃料への再生は、我々の減少しつつある炭化水素資源に係わる問題を緩和するのに役立つのみならず、同時にこの重大な環境破壊を軽減するためにも役立つはずである。
二酸化炭素を、酸素化された炭化水素に転化するためには、水素源が必要となる。海水は、無限の水素源を含むが、二酸化炭素を水素化する方法は、過去において、H2Oにおける酸素と結合した形態のものではなく、寧ろH2ガス形態にある水素を必要としていた。従って、水をその成分元素、即ち水素及び/又は酸素ガスに分離する必要があった。
エネルギー
H2O ――――――――――→ H2 +1/2O2
典型的には、水を分解するのに必要なエネルギーは、電気エネルギーであった(電解)。
しかし、電解は問題を残している。より安全かつクリーンな原子エネルギー並びに代替エネルギー源の利用可能性が、結局のところ、環境的かつ経済的に許容される価格での、水の電解に必要な電気の供給を可能としている可能性がある。例えば、太陽光エネルギーの利用が、適当な場所においては可能である。更に、風力、波力、潮力エネルギー及びその他の代替エネルギー源が、恐らく将来において、水から水素を得るのに利用できるであろう。
【0004】
現時点においては、電気を効率よく貯蔵できないために、かなりの量のエネルギーが浪費されている。化石燃料の燃焼によるものであれ、また原子力を利用するものであれ、既存の発電プラントは、オフピーク期間において、実質的に過剰な能力を有している。従って、これらは水の電解に必要な電気量を生成し、接触的にCO2を還元して、酸素化された炭化水素又は炭化水素燃料並びに製品を得るのに必要な、水素を生成することを可能とする。このことは、間接的に電気の貯蔵を可能とし、かつこれと二酸化炭素の有用な燃料への再生において利用することを可能とし、更にこれを、エネルギー発生のために利用することを可能とする。しかしながら、この電解工程を完全に排除して、二酸化炭素及び水を、直接炭化水素に再生することが、有利であり、かつより高いエネルギー効率を与えるであろう。
水性CO2は、電気触媒的に還元して、蟻酸、ホルムアルデヒド及びメチルアルコールを生成し得ることは公知である。二酸化炭素の電気化学的還元に係わる初期の報告は、1870年代にさかのぼるが、この方法は、ハルモン(Halmon)が、水性二酸化炭素が、光励起電解還元反応において、p-型亜燐酸ガリウム等の半導体表面上で還元されて、蟻酸、ホルムアルデヒド及びメチルアルコールを生成し得ることを立証した際に初めて、最近における興味の対象となった(非特許文献1及びその引用文献を参照のこと)。しかし、この方法は、極めて低い電流密度(数mA/cm2) を生成し、かつ高い過電圧を必要とした。
【0005】
ホリ(Hori)は、二酸化炭素が、種々の金属上で電気化学的に還元できることを示し、また以下のような活性を観測した: インジウム>錫>亜鉛>鉛>銅>金(非特許文献2)。
ハッカーマン(Hackerman)は、塩化カリウム−重炭酸ナトリウム溶液における、錫及びインジウム上での二酸化炭素の還元を記載している(非特許文献3)。蟻酸形成に関して、90%なる電流効率が報告されている。100%もの高い電流効率が、水銀カソード上での、CO2の蟻酸イオンへの還元について報告されており、その電流効率は10-7〜10-2A/cm2の範囲内にある(非特許文献4)。フレーズ(Frese)は、二酸化炭素還元用の多数の異なる金属を報告しており、最大の電流効率は、銀上でのメチルアルコールの製造に関連する、78%であり、また炭素上でのメチルアルコールの製造に関連する約100%であった(非特許文献5)。
【0006】
しかし、これら参考文献の何れも、二酸化炭素を再生して、有用な量のメチルアルコール及び関連する炭化水素を製造する方法として実施可能な、二酸化炭素の電気化学的反応を記載していない。水性CO2を電気化学的に還元した場合に、多くの公知の系において必要とされる大きな過電圧は、(反応溶液のpHに依存して)幾つかの水素発生反応の一つとの競合をもたらす。従って、電極材料は、水素発生率を最小とするように選択する必要があり、また達成される電流密度は、許容できないほどに低い。
幾つかの特許が、CO2の還元について許諾されている。特許文献1は、炭酸カリウム溶液を電解することによる、CO2からのメチルアルコールの合成法を開示している。CO2は、まず水酸化カリウム溶液によって吸収され、炭酸カリウムを生成する:
CO2 + 2KOH ――――――> K2CO3 + H2O
次に、この炭酸カリウム溶液を電解して、メチルアルコールと水酸化カリウムを生成する。次いで、これらを分離する必要がある。
K2CO3+ 3 H2O ――――――> CH3OH + 2KOH + 3/2 O2
【0007】
特許文献2は、蟻酸及び蓚酸を包含するカルボン酸を、ガス伝達性電極を使用して、CO2を還元することによって製造するための、電気化学的方法を開示している。同様に、特許文献3号は、高い接触表面積をもつ多孔質ガス拡散性電極を使用して、CO2を蓚酸、蟻酸塩及びホルムアルデヒドに還元する方法を開示している。
特許文献4号は、高い過電圧を使用することなしに、硫酸ナトリウム又は硫酸溶液中で、モリブデン電極を使用して、CO2をメチルアルコールに還元する方法を開示している。しかし、達成される電流密度は、僅かにμA/cm2程度であるに過ぎなかった。
更に、補足的なメチルアルコール酸化燃料電池と共に、CO2の還元によって生成されるメチルアルコールを使用して、メチルアルコール/CO2に基づく再生式燃料電池系を提供することが望ましいであろう。従って、このような系は、過度の能力による電気エネルギー及び放出される望ましくないCO2の利用を可能とし、しかも効果的なエネルギー貯蔵系を提供する。
【0008】
再生式燃料電池を製造するための過去の努力は、例えば特許文献5に見られるように、水素/酸素燃料電池と組み合わせた、水の電解に基づく系に向けられていた。特許文献6及び7も、同様に加水分解−H2/O2エネルギー系を利用する、再生式燃料電池を開示している。しかしながら、これら再生式燃料電池系の何れも、メチルアルコール/ CO2サイクルで稼動しない。その上、このH2/O2/H2O系は、これらガスを使用するに際して、固有の欠点を有する。
従って、二酸化炭素を化学的に再生することによって、メチルアルコール及び誘導される酸素化物又は炭化水素類を製造するための新規な方法並びに化学的及び電気的なエネルギーを効率よく貯蔵するための、新規な型の再生式燃料電池に対する需要がある。
【0009】
【特許文献1】米国特許第3,959,094号明細書
【特許文献2】米国特許第4,474,652号明細書
【特許文献3】米国特許第4,673,473号明細書
【特許文献4】米国特許第4,609,441号明細書
【特許文献5】米国特許第3,839,091号明細書
【特許文献6】米国特許第5,376,470号明細書
【特許文献7】米国特許第5,492,777号明細書
【非特許文献1】ハルモン(Halmon),M.,Nature,1978,275:115
【非特許文献2】ホリ(Hori), Y., カミデ(Kamide), N.及びスズキ(Suzuki), S., J. Faculty Eng. Chiba Univ., 1981, 32:37。
【非特許文献3】カプスタ(Kapusta), S. & ハッカーマン(Hackerman), N., J. Electrochem. Soc., 1983, 130:607
【非特許文献4】リュー(Ryu), J., アンダーソン(Anderson), T.及びアイリング(Eyring), H., J. Phys. Chem., 1972, 76:3278
【非特許文献5】フレーズ(Frese), K.W., Jr., 「CO2の電気化学及び電気触媒反応(Electrochemical and Electrocatalytic Reactions of CO2)」, クリスト(Christ)等(編), 1993, p. 166
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
一局面において、本発明は、再生式燃料電池系を提供し、該燃料電池系は、酸素化された炭化水素を、二酸化炭素及び水に酸化するための第一の電気化学電池、及び二酸化炭素を、酸素化された炭化水素及び酸素に還元するための第二の電気化学電池を含む。これら2つの電気化学電池は、相互に流体接続関係にあって、各電池の反応生成物は、反応試薬として使用するために、他方の電池に搬送される。好ましくは、該第一の電気化学電池は、液体供給(式)(liquid feed)燃料電池であり、また該第二の電気化学電池は、逆液体供給(式)(reversed liquid feed)燃料電池、即ち逆方向に作用し、エネルギーを生成すると言うよりも寧ろ消費する、液体供給燃料電池である。該酸素化された炭化水素は、メチルアルコール、蟻酸メチル、ホルムアルデヒド又は蟻酸であり得る。
【0011】
もう一つの局面において、本発明は、第一のゾーンにおいて、酸素化された炭化水素を二酸化炭素と水とに酸化し、第二のゾーンにおいて、二酸化炭素と水との混合物を、酸素化された炭化水素(好ましくは、上記と同一の化合物)に還元することによって、酸素化された炭化水素及び二酸化炭素を、可逆的に相互に転化する方法を包含する。これら2つのゾーンは、反応試薬として使用するために、各ゾーンにおける反応生成物が他のゾーンに搬送されるように、相互に流体接続状態にある。該酸素化された炭化水素は、メチルアルコール、蟻酸メチル、ホルムアルデヒド又は蟻酸であり得る。該還元段階は、電気エネルギーを消費し、該エネルギーは発電プラントのオフピーク発電から、該第二のゾーンに与えられる。このオフピークエネルギーは、このようにして効果的に貯蔵され、かつ必要な場合には、該第一のゾーンにおいて生成された電気エネルギーを回収することによって、回収することができる。
【0012】
もう一つの局面において、本発明は、二酸化炭素を還元して、酸素化された炭化水素を形成する方法、即ち二酸化炭素、水及び電気エネルギーを還元ゾーンに供給し、該二酸化炭素と水とを反応させて、酸素と該酸素化された炭化水素とを形成する方法をも包含する。該酸素化された炭化水素は、メチルアルコール、ホルムアルデヒド、蟻酸又は蟻酸メチルであり得る。二酸化炭素は、工業的な副産物として得ることができ、従って大気汚染物質として放出されるしかない二酸化炭素を再生して、有用な有機化合物を生成する手段が与えられる。使用する電気エネルギーは、好ましくは発電プラントのオフピーク発電から得られる。
更に別の局面において、本発明は、再生式燃料電池系を使用して、化学的エネルギーとして電気エネルギーを貯蔵し、該貯蔵された化学的エネルギーから電気エネルギーを再生する方法を包含する。エネルギー貯蔵モードにおいては、電気エネルギーを該第二の電気化学電池に供給して、二酸化炭素の還元を実施し、かつかくして生成する酸素化された炭化水素及び酸素を、該第一の電池に搬送する。エネルギー回収モードにおいては、該第一の電気化学電池における該酸素化された炭化水素を酸化し、かくして得られた二酸化炭素及び水を、該第二の電気化学電池に移し、このようにして生成する電気エネルギーを回収する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
一局面において、本発明は、直接二酸化炭素から、メチルアルコール及び関連する酸素化物を製造する新規な方法を包含する。この還元は、水を前もって還元する必要なしに、水性電気触媒還元として達成される。我々の米国特許第5,559,638号に記載された直接酸化、液体供給燃料電池においては、メチルアルコールを、適当な金属触媒の存在下で、酸素又は空気と反応させて、電気を生成し、一方でCO2及びH2Oを形成する。
6e-
CH3OH + 1.5 O2 ―――――――――> CO2+ 2 H2O
驚いたことに、本発明によれば、メチルアルコールの酸化を、該液体供給燃料電池において逆向きに進行させて、適当な金属触媒の存在下で、CO2を水で還元することができることを見出した。
6e-
CO2+ 2 H2O ―――――――――> CH3OH + 1.5 O2
【0014】
このようにして、本発明の方法では、二酸化炭素、水及び電気エネルギーを、該'638特許に記載された燃料電池のカソードに供給する。即ち、該'638特許に記載された燃料電池は、逆方向に動作して、CO2を還元する。
該逆方向に進行する燃料電池におけるCO2の電気触媒的還元は、メチルアルコールと関連する化合物とを生成する。上記のように、この反応は、メチルアルコールを生成するが、関連する酸素化された炭化水素、例えばホルムアルデヒド、蟻酸、蟻酸メチル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタン、トリオキシメチレン、及び炭酸ジメチルも、本発明のこの方法にしたがって、容易に製造される。形成される特定の生成物は、印加された該電池の電位に依存する。従って、所定の生成物を製造するための、適当な該電池電位は、当業者によって容易に決定することができる。
有利には、該逆方向に進行する燃料電池は、水を電解するための電位の範囲外において、CO2の電気触媒的還元を達成する。
【0015】
本発明による二酸化炭素の該電気化学的還元は、メチルアルコールと関連する酸素化されたメタン誘導体を生成し、該誘導体は、直接酸化による液体供給燃料電池、例えば米国特許第5,599,638号に記載されている電池等における燃料として有用である。従って、本発明の方法は、減少しつつある我々の化石燃料資源を補充し、結局はこれに取って変わる、再生可能な炭素基剤を与える。
本発明において還元される二酸化炭素は、任意の入手可能な起源から得ることができる。現時点では、二酸化炭素は、大気ガスからの分離によって、経済性よく得ることはできない。というのは、該大気中の平均の二酸化炭素含有率は、極めて低い(約0.04%)からである。しかし、これは炭素質燃料(石炭、石油、天然ガス)を燃焼する発電プラントの放出物、発酵過程、石灰石の焼成、又はその他の工業的起源等の、種々の起源から容易に回収することができる。
【0016】
CO2をメチルアルコールに再生する場合、引き続きジメチルエーテルを、簡単な2分子脱水工程によって、容易に得ることができる。
2CH3OH ―――――――→ CH3O CH3 + H2O
更に、ジメチルエーテルの接触的脱水は、エチレンを与える。
触媒
CH3O CH3 ―――――――→ CH2=CH2 + H2O
二酸化炭素のエチレンへの全体としての転化は、従って以下の通りである。
2 CO2 + 6 H2 ―――――→CH2=CH2 + 4 H2O
エチレンを更に反応させて、プロピレンを製造することも、公知である。
触媒
CH2=CH2 + CH3O CH3 ―――――→CH2=CHCH3 + CH3OH
【0017】
これらの変換は、米国特許第4,373,109号に記載されたような担持2官能性酸−塩基触媒を使用して、あるいは種々のゼオライト触媒上で実施することができる。
二酸化炭素から製造したエチレン並びにプロピレンは、脂肪族(ガソリンを含む)及び芳香族炭化水素の全系列、並びにその誘導体を、容易に製造することを可能とする。
もう一つの局面において、本発明は、上記のCO2/CH3OH電気化学系(あるいは、上記のような関連する酸素化された炭化水素)に基づく、再生式電気化学電池又は再生式燃料電池に関する。
第1図を参照すると、本発明の再生式燃料電池系10は、第一の電気化学電池12と、第二の電気化学電池14とを含んでいる。該第一の電気化学電池12は、米国特許第5,599,638号に記載されたような、液体供給式燃料電池である。この特許を本発明の参考文献とする。この第一の電気化学電池12においては、メチルアルコール、蟻酸、ホルムアルデヒド又は蟻酸メチル等の酸素化された炭化水素を酸化して、二酸化炭素と水とを生成する。該第二の電気化学電池14においては、二酸化炭素を還元して、メチルアルコール、蟻酸、ホルムアルデヒド又は蟻酸メチル等の酸素化された炭化水素を生成する。好ましくは、該第一の電気化学電池12において酸化される該酸素化された炭化水素、及び該第二の電気化学電池14において、該還元反応によって生成される該酸素化される炭化水素は、同一の化合物である。最も好ましくは、該酸素化された炭化水素は、メチルアルコールである。
【0018】
該第二の電気化学電池14は、該二酸化炭素の還元を行うように動作し得る、任意の電気化学電池であり得る。好ましくは、該第二の電気化学電池14は、上記'638特許に記載されている、逆方向に進行する液体供給型燃料電池である。
該第一及び第二の電気化学電池12及び14は、矢印16及び18で模式的に示されたように、相互に流体結合関係にある。従って、該第一の電気化学電池12で生成される二酸化炭素及び水は、矢印16によって示されるように、該第二の電気化学電池14に供給される。同様に、該第二の電気化学電池14において生成される、メチルアルコール又は該関連する酸素化された炭化水素及び酸素は、矢印18で示されるように、該第一の電気化学電池12に供給される。
本発明の再生式燃料電池10は、更に該第一の電気化学電池12において、メチルアルコール又は該関連する酸素化された炭化水素の酸化によって生成した、電気エネルギーを回収するための電気出力手段20及び該第二の電気化学電池14における、該二酸化炭素の還元反応を実施する、電気エネルギーを供給するための、電気入力手段22をも含む。このような電気化学的出力手段20及び電気化学的入力手段22は、電気エネルギーを受け取り及び供給するための任意の適当な手段であり得、これらは当分野において周知である。
【0019】
本発明の再生式燃料電池系は、また第一及び第二の搬送手段24及び26をも含み、これらによって、必要に応じて化学成分を添加し、かつ除去することができる。従って、例えば該第一の搬送手段24を介して、追加のメチルアルコール及び/又は酸素反応試薬を、必要に応じて該第一の電気化学電池12に添加することができ、あるいは該CO2及び/又はH2O生成物の幾分か又はその全部を除去することができる。同様に、該第二の搬送手段26は、外部の起源からのCO2及び/又は水を添加し、及び/又はメチルアルコール及び/又は酸素生成物を除去することを可能とする。このような搬送手段は、当分野において周知である。
もう一つの局面において、本発明は、本発明の上記再生式電気化学電池系10を使用して、電気エネルギーを化学エネルギーとして貯蔵し、及び化学エネルギーから電気エネルギーを回収する方法にも関連する。エネルギー貯蔵モードにおいては、電気エネルギーを、該第二の電気化学電池14の該電気入力手段22に供給して、該電池反応を逆方向(非−自発的方向)に導いて、メチルアルコール及び/又は関連する酸素化された化合物を生成する。この還元反応の化学的生成物、例えばメチルアルコール及び酸素は、次いで該第一の電気化学電池12に供給される。
【0020】
エネルギー回収モードにおいて、メチルアルコール又は関連する酸素化された炭化水素は、該第一の電気化学電池12において酸化されて、電気を発生し、この反応の生成物、即ち二酸化炭素及び水は、該第二の電気化学電池14に供給される。かくして、この系は、電力の可逆的な貯蔵デバイスとして機能する。電気は、依然としてバッテリー内に効率よく貯蔵することができないので、二酸化炭素の再生により作られたメチルアルコール又はその誘導体によって動作する、再充電可能なデバイスとして効率的に機能する、この再生式電気化学電池の使用は、高効率のクリーンな電力源与えるばかりでなく、同時に有害な温室ガスである二酸化炭素の、大気中での蓄積を減じるのに役立つ。
この貯蔵並びに回収法は何れの方向にも進行し得ることを理解すべきである。該第一の電気化学電池には、有機燃料を供給して、該反応を起こさしめ、電気を発生し、かくして該第二の電気化学電池にCO2及び水を供給することができる。あるいはまた、該第二の電気化学電池に、CO2及び水を供給し、かつ電気エネルギーを供給して、該反応を起こさしめ、かくして該第一の電気化学電池に、(例えば)メチルアルコール及び酸素を供給することができる。
【0021】
好ましい態様においては、二酸化炭素を、工業的副産物として回収する。「工業的副産物」なる用語は、例えば発電プラント及びその他の炭化水素−消費源、石灰石の焼成、発酵過程及び二酸化炭素を発生する他の工業的プロセス等の、工業的起源のものを意味する。この回収された二酸化炭素は、該第二の搬送手段26を介して、メチルアルコール又は関連化合物に転化するための、該第二の電気化学電池14に供給される。このようにして生成したメチルアルコールは、該第一の電気化学電池に移し、及び/又は貯蔵又はその他の使用の目的で、外部に回収することができる。本発明の好ましい態様のもう一つの局面においては、該第二の電気化学電池14に供給される該電気エネルギーは、過度の能力をもつ発電プラント由来のオフピーク電力を回収することによって、供給される。
本発明の再生式燃料電池系は、また単一の電気化学電池を含むこともでき、該電池においては、該燃料の酸化(即ち、電力の発生)及び(燃料を得るための)CO2の還元両者は、該電池を前方にあるいはその逆方向に動作させることにより実施できる。
【0022】
更に別の局面において、本発明は、可逆的に炭化水素と二酸化炭素とを相互転化する方法を包含する。この方法によれば、メチルアルコール又は関連する酸素化化合物、例えば上記のような化合物は、第一のゾーンにおいて二酸化炭素と水とに酸化され、かつ二酸化炭素と水は、第二のゾーンにおいて、メチルアルコール(又は関連する酸素化化合物)及び酸素に還元される。該第一及び第二のゾーンは、該第一のゾーンで生成した該二酸化炭素及び水を該第二のゾーンに供給するように、相互に流体接続関係にあり、また該第二のゾーンで生成する該メチルアルコール及び酸素は、該第一のゾーンに供給される。該第二のゾーンにおける該還元段階は、電気エネルギーを消費するが、該エネルギーは、任意の適当な起源から供給することができるが、発電プラントのオフピーク発電によって供給することが好ましい。
該二酸化炭素の還元は、2つの電子還元段階を含み、該段階は最終的に完全に還元された生成物としてのメタンに導くことができる。これら工程に対する、標準還元電位を以下の第1表に列挙する。
【0023】
第1表:標準還元電位

*:SHE= 標準水素電極
【0024】
水性溶液中において、二酸化炭素は、まずCO2-.ラジカルアニオン(その標準還元電位の評価値は、標準カロメル電極(SCE)に対して約−1.89V である)に還元され、これは更に水の存在下で、HCOO.+ HO.に還元され、次いでHCOO-に還元される。種々のCO2還元反応に対する該標準還元電位は小さいが、金属上で観測される大きな過電圧は、恐らく該ラジカルアニオン中間体の形成によるものであると考えられる。二酸化炭素電気触媒の改善は、高い電流効率及び高い電流密度(>100mA/cm2)を維持しつつ、金属上の該過電圧を更に低下するであろう。
本発明の幾つかの態様及び特徴を、以下に例示するが、本発明は以下の実施例によって何等制限されない。
【実施例】
【0025】
CO2の電気化学的還元
CO2の水性電気化学的還元のために、米国特許第5,599,638号に記載された逆燃料電池を使用して、上記水の酸化経路を利用する。この記載された電気化学電池を利用して、炭素上に堆積した多くの金属、例えばSn、In、Bi、Sb、Cd、Zn、Cu、Pb、Ga、Ag、Au、Ni、Fe、Pd、Wo、Pt及びMo上で、CO2を還元する。アノードでの水の酸化は、Pt/C電極上で行う。カソードにおける該金属触媒は、種々の程度まで、CO2を還元して、蟻酸からメタンに及ぶ範囲の生成物を与えるように作用する。銀/炭素電極は、高い選択性でメチルアルコールを与えるのに最も有用である。この系の電池電位は、該カソード及びアノード過電圧における差違及びiR降下に等しく、これは、プラチナ−炭素を含む、酸素発生アノードについて、2ボルト程度の電池電圧を与える。Cu/Pd電極は、SCEに対する−1.6Vなる電位において、70%ファラデー効率で、蟻酸を生成するのに適している。
本明細書に記載し、かつ特許請求している本発明は、本明細書に記載した特定の態様によって、その範囲は制限されない。というのは、これら態様は、本発明の幾つかの局面を例示するためのものに過ぎないからである。如何なる等価な態様も、本発明の範囲内にあるものとする。事実、ここに提示されかつ説明された以外の、本発明の種々の変更は、上記の説明から当業者には明らかであろう。このような変更も、添付された請求の範囲に入るものである。
本特許出願において引用された全ての参考文献は、その全体を本発明の参考として本明細書に組み込む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1図は、本発明の再生式電気化学電池系の模式的な図である。
【符号の説明】
【0027】
10 再生式燃料電池系
12 第一の電気化学電池
14 第二の電気化学電池
20 電気出力手段
22 電気入力手段
24 第一の搬送手段
26 第二の搬送手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を還元して、酸素化された炭化水素を生成する方法であって、二酸化炭素、水及び電気エネルギーを、還元ゾーンに供給して、該二酸化炭素と水とを反応せしめて、酸素及び酸素化された炭化水素又は酸素化された炭化水素の混合物を生成する工程を含むことを特徴とする上記方法。
【請求項2】
該酸素化された炭化水素が、メチルアルコール、ホルムアルデヒド、蟻酸、又は蟻酸メチルである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該還元ゾーンに供給される二酸化炭素が、工業的副産物として得られる請求項1項に記載の方法。
【請求項4】
該還元ゾーンに供給される電気エネルギーが、発電プラントのオフピーク発電から得られる請求項1記載の方法。
【請求項5】
該酸素化された炭化水素がメチルアルコールであり、かつ該方法が更に、該メチルアルコールを脱水してジメチルエーテルを生成し、及び該ジメチルエーテルを脱水して、エチレンを生成する工程を含む、請求項2に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−138270(P2009−138270A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308932(P2008−308932)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【分割の表示】特願平10−548458の分割
【原出願日】平成10年5月6日(1998.5.6)
【出願人】(508356951)
【出願人】(508357224)
【Fターム(参考)】