説明

二酸化炭素の回収方法

a)二酸化炭素含有ガス供給流と吸収液とを気−液接触させる吸収段階であって、それによって、ガス流中に存在する少なくとも一部分の二酸化炭素を、吸収液中に吸収させて、(i)低減された二酸化炭素含量を有する精製ガス流と(ii)高二酸化炭素吸収液を生成させる吸収段階、b)高二酸化炭素吸収液を3bar(絶対圧)より高い圧力で処理して、二酸化炭素を遊離させ、かつ吸収段階において使用するために再利用される低二酸化炭素吸収液を再生する再生段階を含む、二酸化炭素の回収方法において、該吸収液が、第三級脂肪族アルカノールアミンと二酸化炭素吸収促進剤の有効量とを含有するアミン水溶液であり、第三級脂肪族アルカノールアミンが、第三級脂肪族アルカノールアミン濃度4mol/lでの第三級脂肪族アルカノールアミンの水溶液を、気−液平衡状態下で162℃の温度及び6.3bar(絶対圧)の合計圧力で該水溶液及び二酸化炭素の共存下で300時間保つ場合に、5%未満の分解を示す二酸化炭素の回収方法。該第三級脂肪族アルカノールアミンは、その分子構造において、2−ヒドロキシエチル部及びメチル部の双方によって置換された窒素原子を含まない。前記第三級脂肪族アルカノールアミンは、N−エチルジエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)−エタノール、2−(ジエチルアミノ)−エタノール、3−(ジメチルアミノ)−1−プロパノール、3−(ジエチルアミノ)−1−プロパノール、1−(ジメチルアミノ)−2−プロパノール及び2−(ジイソプロピルアミノ)−エタノールからなる群から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素含有ガス流からの二酸化炭素の回収方法において、二酸化炭素を大気圧より高い圧力で回収する方法に関する。
【0002】
ガス田において産出される天然ガスは、通常、二酸化炭素の相当量を含む。その産出場所からそのような天然ガスを遠い消費場所に輸送する費用、及びその発熱量を消費場所で標準に調節する費用を軽減するために、いくらかの二酸化炭素は、低減された二酸化炭素含量を有する精製天然ガスを製造するためにそれらからあらかじめ取り除かれる。
【0003】
工業規模では、有機塩基、例えばアルカノールアミンの水溶液は、吸収液としてしばしば使用され、ガス流から二酸化炭素が取り除かれる。二酸化炭素が溶解すると、イオン化産物は、塩基及び二酸化炭素から形成する。該吸収液は、より低圧に膨張させるか又はストリッピングによって再生することができ、その際、該イオン化産物は逆反応して二酸化炭素を遊離し、かつ/又は二酸化炭素はストリッピングされる。該吸収液は、再生方法後に再利用することができる。炭化水素ガス流からの酸性ガスの不純物の除去において使用される一般のアルカノールアミンは、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)、ジエチルエタノールアミン(DEEA)、ジイソプロピルアミン(DIPA)、アミノエトキシエタノール(AEE)及びメチルジエタノールアミン(MDEA)を含む。
【0004】
従来、製造場所で天然ガスから分離された二酸化炭素は、滅多に利用されない。すなわち、かかる二酸化炭素は、直接大気中に捨てられ、又はまれに油田で三次石油の回収のための圧入ガスとして使用されてきた。従って、前記の精製方法によって分離された二酸化炭素の圧力には、ほとんど考慮がなされていなかった。
【0005】
近年、大気二酸化炭素の増加による温暖化は、問題視されるようになってきた。従って、現状は、前記の手法で分離された二酸化炭素が、持続的な貯蔵のための地下の帯水層中にそれを圧入するために、又は石油回収増進のためにそれを積極的に使用するために加圧されなければならない。
【0006】
しかしながら、高圧天然ガスが処理されているという事実にもかかわらず、従来使用されていた方法によって天然ガスから分離された二酸化炭素は、大気圧に近い低圧を有する。このことは、上記で記載された持続的な貯蔵又は石油回収増進の目的のために、二酸化炭素を、低圧から、圧入のために必要とされる約150bar(絶対圧)の圧力に加圧しなければならないことにおいて不利である。
【0007】
先行技術は、二酸化炭素が、大気圧よりも高い圧力で回収されるいくつかの方法を記載している。大気圧より高い圧力で再生段階を行うことの利点は、圧縮の低圧段階が除かれうることである。
【0008】
従って、EP−A768365号は、30kg/cm2以上(30bar絶対圧)の圧力を有する天然ガスと吸収液とを気−液接触させる吸収段階と、減圧せずに高二酸化炭素吸収液を加熱し、それによって高圧二酸化炭素が遊離する再生段階とを含む高圧縮天然ガスから高濃縮二酸化炭素の除去のための方法を教示している。この引用文献において挙げられている吸収液の特定の例は、N−メチルジエタノールアミン(MDEA)の水溶液、トリエタノールアミンの水溶液及び炭酸カリウムの水溶液である。それらの溶液は、それらに添加されるCO2吸収促進剤(例えばピペラジン)を有してよいことが述べられている。
【0009】
US6,497,852号は、二酸化炭素を供給流から液体の吸収液中に選択的に吸収すること、得られた流れを35psia以上(2.4bar絶対圧)の圧力で、流れを回収塔の頂部に達することを十分に可能にする圧力まで加圧すること、かつ二酸化炭素を回収塔中で流れから35psia以上(2.4bar絶対圧)の圧力で取り除くことによる二酸化炭素回収方法を記載している。該吸収液は、有利にはアルカノールアミン水溶液である。挙げられている特定の例は、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びN−メチルジエタノールアミンである。
【0010】
WO 2004/082809号は、高酸性ガス吸収液を大気圧よりも高い圧力で加熱する再生方法を含むガス供給流から酸性ガスの除去のための方法を記載している。該吸収液は、ジアミン、トリアミン及びテトラミンから選択された第三級アルキルアミン、例えばテトラメチルエチレンジアミン、テトラエチルエチレンジアミン、テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、テトラエチル−1,3−プロパンジアミン、テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、テトラメチル−1,4−ブタンジアミン、テトラエチル−1,3−ブタンジアミン、テトラエチル−1,4−ブタンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ペンタエチルジエチレントリアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン及びペンタメチル−(2−アミノエチル)−1,3−プロパントリアミン又はヘキサメチルトリエチレンテトラミン並びにヘキサエチルトリエチレンテトラミンの水溶液を含む。それらのアミンが、再生段階の加熱温度で高い安定性を有し、かつ高い酸性ガス処理量を有することが請求されている。しかしながら、それらアミンは、低い二酸化炭素転送率を示す。
【0011】
WO 2005/009592号は、50psia(3.5bar絶対圧)を超え、かつ300psia(20bar絶対圧)を超えない圧力下で行われる酸性ガス再生方法に関する。再生器から発生する分離されたガス流は、圧縮され、かつ地下貯留中に圧入される。動作例において例証される吸収液は、N−メチルジエタノールアミン(MDEA)43質量%及び水57質量%からなる。
【0012】
WO 03/076049号は、3−ジメチルアミノ−1−プロパノールと活性剤として第二級アミンを含む、脱酸性ガス流のための洗浄液を教示している。その引用文献は、該吸収液が、1〜2bar(絶対圧)の圧力にフラッシュすることによって、又は1〜3bar(絶対圧)の圧力でストリッピングすることによって再生されることを示唆している。
【0013】
二酸化炭素を再生段階中で回収する圧力が高くなれば、高二酸化炭素吸収液を二酸化炭素を遊離するため及び吸収液を再生するために加熱しなければならない温度も高くなる。高温は、吸収液に対して熱応力を引き起こす。アルカノールアミン水溶液を使用する公知の方法によって、吸収液の吸収能力が、長期間害され、かつ再生時に完全に回収されないことが判明した。吸収液中に存在するアミンは、徐々に熱分解を受ける。
【0014】
本発明の基礎となる課題は、吸収液の吸収能力が長期間保たれる吸収液とガス流を脱酸する方法とを特定することである。
【0015】
最初の側面において、本発明は、
a)二酸化炭素含有ガス供給流と吸収液とを気−液接触させる吸収段階であって、それによって、ガス流中に存在する少なくとも一部分の二酸化炭素を、吸収液中に吸収させて、(i)低減された二酸化炭素含量を有する精製ガス流と(ii)高二酸化炭素吸収液を生成させる吸収段階、
b)高二酸化炭素吸収液を3bar(絶対圧)より高い圧力で処理して、二酸化炭素を遊離させ、かつ吸収段階において使用するために再利用される低二酸化炭素吸収液を再生する再生段階
を含む二酸化炭素の回収方法において、
該吸収液が、第三級脂肪族アルカノールアミンと二酸化炭素吸収促進剤の有効量とを含有するアミン水溶液であり、
第三級脂肪族アルカノールアミンが、第三級脂肪族アルカノールアミン濃度4mol/lでの第三級脂肪族アルカノールアミンの水溶液を、気−液平衡状態下で162℃の温度及び6.3bar(絶対圧)の合計圧力で該水溶液及び二酸化炭素の共存下で300時間保つ場合に、5%未満の分解を示す二酸化炭素の回収方法を提供する。
【0016】
本発明者は、本発明の方法において、第三級脂肪族アルカノールアミンの適性を評価するための試験を構想した。この試験は、第三級脂肪族アルカノールアミンの水溶液を(二酸化炭素吸収促進剤の添加なしに)第三級脂肪族アルカノールアミン濃度4mol/lので、300時間の間、気−液平衡状態下で、162℃の温度及び6.3bar(絶対圧)の合計圧力で、水溶液と二酸化炭素の共存下で、保つことを含む。試料は、開始時と300時間後に水溶液から抜き取られ、かつ例えばガスクロマトグラフィーによって解析される。不変のアミンの量は、検出されたシグナルから算出される。好適なアミンは、元のアミンの5質量%未満、有利には3質量%未満の分解を示す。該試験は、以下の実施例でより詳細に説明する。
【0017】
本発明による安定性試験は、高濃度二酸化炭素の存在下で行われる。驚くべきことに、それらの状況下で測定されたアルカノールアミンの熱安定性は、二酸化炭素の不在下での熱安定性と大きく異なることがある。従って、本発明による試験は、媒体の再生段階中で直面する状況下での、高二酸化炭素吸収液の高圧再生に対するアルカノールアミンの安定性の正当な評価を可能にする。
【0018】
第二の側面において、本発明は
a)二酸化炭素含有ガス供給流と吸収液とを気−液接触させる吸収段階であって、それによって、ガス流中に存在する少なくとも一部分の二酸化炭素を、吸収液中に吸収させて、(i)低減された二酸化炭素含量を有する精製ガス流と(ii)高二酸化炭素吸収液を生成させる吸収段階、
b)高二酸化炭素吸収液を3bar(絶対圧)より高い圧力で処理して、二酸化炭素を遊離させ、かつ吸収段階において使用するために再利用される低二酸化炭素吸収液を再生する再生段階
を含む、二酸化炭素の回収方法において、
該吸収液が、N−メチルジエタノールアミン以外の第三級脂肪族アルカノールアミンと二酸化炭素吸収促進剤の有効量とを含有するアミン水溶液である。
【0019】
該吸収液は、N−メチルジエタノールアミン以外の第三級脂肪族アルカノールアミンを含有する。第三級アルカノールアミンは、高温及び高二酸化炭素圧の条件下での安定性の面で第一級及び第二級アルカノールアミンより優れていることが示されてきた。
【0020】
本発明において使用される第三級アミンは、アルカノールアミンである。すなわち、前記アミンは、その分子構造において、少なくとも1つのヒドロキシアルキル部によって置換されている窒素原子を含む。一般的に、第三級脂肪族アルカノールアミンは、4〜12個の炭素原子を含む。有利には、該第三級脂肪族アルカノールアミンは、その分子構造において、単一の窒素原子を含む、すなわち該第三級脂肪族アルカノールアミンは、有利にはモノアミンである。
【0021】
典型的に、ヒドロキシアルキル部は、2〜4個の炭素原子、有利には2又は3個の炭素原子を有する。有利には、該ヒドロキシアルキル部は、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル及び2−ヒドロキシブチルからなる群から選択される。1つ又は複数の窒素原子上の1つ又は複数の置換基は、ヒドロキシアルキル部を除けば、有利には1〜3個の炭素原子の有利にはアルキル部、例えばメチル、エチル、プロピル又はイソプロピルである。
【0022】
第三級脂肪族アルカノールアミンの分子構造において1つより多い2−ヒドロキシエチル部によって置換された窒素原子、又は2−ヒドロキシエチル部とメチル部の双方によって置換された窒素原子を含有する第三級脂肪族アルカノールアミン、例えばN−メチルジエタノールアミン(MDEA)は、前記の方法における限られた熱安定性を有することが判明した。
【0023】
従って、好ましい実施態様において、該第三級脂肪族アルカノールアミンは、その分子構造において、1つより多い2−ヒドロキシエチル部によって置換された窒素原子を含まない。
【0024】
他の好ましい実施態様において、該第三級脂肪族アルカノールアミンは、その分子構造において、2−ヒドロキシエチル部とメチル部の双方によって置換された窒素原子を含まない。
【0025】
好ましい実施態様において、該第三級脂肪族アルカノールアミンは、その分子構造において、1つのヒドロキシアルキル部と2つのアルキル部によって置換されている単一の窒素原子を含む。
【0026】
有用な第三級脂肪族アルカノールアミンの特定の例は、N−エチルジエタノールアミン(2−[エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ]−エタノール、EDEA)、2−(ジメチルアミノ)−エタノール(N,N−ジメチルアミノエタノール、DMEA)、2−(ジエチルアミノ)−エタノール(N,N−ジエチルエタノールアミン、DEEA)、3−(ジメチルアミノ)−1−プロパノール(DMAP)、3−(ジエチルアミノ)−1−プロパノール、1−(ジメチルアミノ)−2−プロパノール(N,N−ジメチルイソプロパノールアミン)及び2−(ジイソプロピルアミノ)−エタノール(N,N−ジイソプロピルエタノールアミン)を含む。
【0027】
特に好ましい本発明において使用される第三級脂肪族アルカノールアミンは、3−(ジメチルアミノ)−1−プロパノール(DMAP)である。他の好適な第三級脂肪族アルカノールアミンは、2−(ジエチルアミノ)−エタノール(N,N−ジエチルエタノールアミン、DEEA)である。
【0028】
窒素を有する炭素をαとして、そしてその炭素に隣接する1つの又は複数の炭素原子をβとして示すことが有用である。窒素原子がプロトン化又は第四級化されると、求核試剤によってα−炭素上の窒素の交換又は置換が、崩壊反応に関与することが仮定される。もしあれば、β−炭素での置換基の性質は、かかる求核置換の容易性に対する影響を有する。β炭素での、例えば2−ヒドロキシエチル部に存在するヒドロキシ基は、かかる求核的攻撃の媒介となることが考えられる。さらに、1つの窒素原子に結合された複数のヒドロキシエチル部は、アルカノールアミンの安定性に関連があると考える。1つより多い2−ヒドロキシエチル部によって置換された1つ又は複数の窒素原子を導入した化合物は、より分解を受けやすい。反対に、β炭素が、ヒドロキシ基の他にアルキル基を有する場合に、例えば2−ヒドロキシプロピル部において、ヒドロキシ基のβ効果は、アルキル基の立体効果によって低減される。従って、2−ヒドロキシプロピル部又は2−ヒドロキシブチル部は、本発明の文脈において好適なヒドロキシアルキル部である。
【0029】
また、2−ヒドロキシエチル部の媒介効果は、少なくとも一部分で、中間的なの三員環構造を形成する安易性に起因する。四員環構造は簡単に形成されないので、3−ヒドロキシプロピル部は、大きな媒介効果を有さない、従って、3−ヒドロキシプロピル部は、本発明の文脈において好適なヒドロキシアルキル部である。実際、3−(ジメチルアミノ)−1−プロパノールが十分な熱応力にさらされる場合に、3−ヒドロキシプロピル部は、四員環構造としてよりもアリルアルコールとして放出されることが実験によって示されている。
【0030】
理論によって束縛されることなく、MDEA分解の最初の段階は、次の反応式によって説明できると考える:
【化1】

【0031】
従って、MDEA分子は、まず二酸化炭素と水から形成された炭酸からの酸性プロトンによってプロトン化される。そして、プロトン化されたMDEA分子は、そのメチル部の1つをMDEAの別の分子に転移し、ジ(2−ヒドロキシエチル)ジメチルアンモニウムカチオンとジエタノールアミンの分子とを生じうる。このように形成された該カチオンは、エチレンオキシド分子(それはまた水分子と反応しエチレングリコールの分子を生じてよい)を離脱しうる。ジエタノールアミンは、二酸化炭素と反応して3−(2−ヒドロキシエチル)1,3−オキサゾリド−2−オンの五員環構造を形成し、それはさらに分解を受ける。
【0032】
さらに、本発明の方法において使用される吸収液は、二酸化炭素吸収促進剤の効果的な量を含む。該吸収促進剤は、たいてい第一級又は第二級アミン、有利には第二級アミンから選択され、かつ二酸化炭素の取り込みをカルバメート構造の中間形成体によって促進することを担う。有用な吸収促進剤の特定の例は、ピペラジン、2−メチルピペラジン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、N−ヒドロキシエチルピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、ホモピペラジン、ピペリジン及びモルホリンを含む。
【0033】
一般に、前記吸収液は、20〜60質量%、有利には25〜55質量%の第三級脂肪族アルカノールアミンを含む。
【0034】
一般に、該吸収液は、0.5〜20質量%、有利には1〜15質量%の二酸化炭素吸収促進剤を含む。
【0035】
ガス供給流は、高圧ガス供給流、例えば高圧天然ガス流又は合成ガス流であってよい。代わりに、該ガス供給流は、低圧ガス供給流、例えば発電所又は精油所からの燃焼ガス流であってよい。高圧ガス供給流とは、10bar以上(絶対圧)、例えば10bar〜150barの圧力を有するガス流を意味する。低圧ガス供給流とは、大気圧での又は大気圧に近い圧力を有するガス流であると解される。
【0036】
二酸化炭素の他に、該ガス流は、他の酸性ガス、特に硫化水素(H2S)、及び/もしくはSO2、CS2、HCN、COS、ジスルフィド又はメルカプタンを含んでよい。存在する場合、それらの酸性成分は、少なくとも部分的に、ガス流が本発明による方法により処理に供される場合に、二酸化炭素と一緒にガス流から取り除かれる。
【0037】
有利には、高圧ガス供給流における二酸化炭素量は、1〜95体積%の範囲内である。典型的に、精製されていない高圧天然ガス流は、1〜40体積%、有利には5〜25体積%、例えば10〜15体積%の二酸化炭素を含む。好適に、精製されていない高圧天然ガス流における硫化水素量は、少なくとも0.02体積%(少なくとも200ppmv)である。精製された高圧ガス天然ガス流が管路を通して、例えば発電所に又は家庭用のガス供給系に輸送される場合に、精製された高圧天然ガス流中の二酸化炭素の量を3体積%未満、有利には2体積%未満のレベルまで低減することが所望される。有利には、精製された高圧天然ガス流中の二酸化炭素の量は、本発明の方法を使用してさらに低減されてよい。例えば、精製された高圧天然ガス流が、液化天然ガス(LNG)を発生するための低温処理装置に供給流として使用される場合に、精製された高圧天然ガス流中の二酸化炭素の量を100ppmv未満のレベル、有利には50ppmv以下のレベルまで低減することが所望される。双方の場合において、精製された高圧天然ガス流中の硫化水素の量を10ppmv未満、より有利には4ppm以下のレベルまで低減することが好ましい。
【0038】
低圧ガス供給流中の二酸化炭素の量は、少なくとも1.5体積%である。有利には、精製された低圧ガス流中の二酸化炭素の量は、100ppmv未満、より有利には50ppmv以下の値まで低減される。
【0039】
吸収段階において、二酸化炭素含有ガス供給流は、吸収液と気−液接触される。この目的のために、あらゆる好適な吸収装置が使用されてよい。該吸収装置は、例えばトレイ、充填層、又はガス流と吸収液との密着を提供する他の接触装置などの接触手段を含んでよい。ガス流は、吸収装置の下方区分中に導入され、かつ吸収装置の頂部へ通ってよい。該吸収液は、吸収装置の上方部に導入され、かつ吸収装置の下方部へガス流に対して向流的に通ってよい。
【0040】
吸収段階において、吸収液の温度は、100℃を超えてはならない。それというのも、高温では到達できる二酸化炭素処理量が少なく、かつ一般的に高温は、望ましくない腐食を生じるからである。該吸収段階は、通常、60℃〜80℃の吸収装置の頂部温度で行われるが、その温度は95℃の高さであってよい。該吸収段階は、より低い温度、例えば40℃より上でも行われうるが、しかしこのような低い温度は、特に再生が、ストリッピングによって行われる場合に、エネルギーの消費の増加をもたらす。吸収装置の底部温度は、100℃より高くないことが望ましい。
【0041】
再生段階において、高二酸化炭素吸収液を処理することで、二酸化炭素(及びガス供給流が存在する場合に他の酸性ガス)が遊離され、かつ吸収段階において使用するために再利用される低二酸化炭素吸収液が再生される。該再生段階は、典型的に130℃より高い、有利には150℃より高い温度まで高二酸化炭素吸収液の加熱を必要とする。
【0042】
吸収段階が、高圧で(典型的に高圧ガス供給流の処理中で)実施される場合に、再生段階は、吸収装置中で主流な高圧から低圧に高二酸化炭素吸収液を膨張又はフラッシングさせることを典型的に含む。圧力膨張は、例えば絞り弁を使用して行われうる。加えて、又は代わりに、吸収液は、発生機を駆動し、かつ電気エネルギーを製造することができる膨張タービンを通過しうる。このフラッシング段階において、有利には不活性ガス、例えばガス供給流の吸収された成分が放出される。
【0043】
吸収段階が、低圧で(典型的に低圧ガス供給流の処理中で)実施される場合に、高二酸化炭素吸収液を、高二酸化炭素吸収液が再生段階に入る前に、少なくとも再生段階において使用される圧力まで加圧せねばならない。
【0044】
有利には、再生段階は、不活性液体で吸収液をストリッピングすることを含む。この目的のために、吸収液及びストリッピング媒体(熱不活性ガス、窒素又は蒸気が好適である)は、向流方法で荒充填、配置された充填物又はプレートを備えた脱着塔に通過させる。
【0045】
吸収装置中に供給される前に、低二酸化炭素吸収液は、通常、熱交換器を通過し、そして吸収段階のために要求される温度にあげられる。ストリッピング塔を出た再生された供給液から除去された熱を使用して、吸収段階を出た高二酸化炭素吸収液を予熱することができる。
【0046】
本発明によると、再生段階は、3barより大きく、有利には3barより大きく10barまで、例えば3.5bar〜10barの圧力で実施される。
【0047】
有利には、再生段階中に遊離された二酸化炭素を含有する流れは、貯蔵目的のために地下域中に堆積させる。例えば、二酸化炭素を含有する流れを、貯蔵及び/又は石油回収増進のために、炭化水素含有地下形成物、特に貯蔵するための含油地下形成物中に圧入してよい。遊離されたガス流は、地下域中への圧入を可能にする十分な高さである圧力に加圧する必要がある。再生段階を大気圧より高い圧力で行う利点は、低圧の圧縮段階を排除できることである。例えば、大気圧で酸性ガスを遊離することと比べた場合に、再生段階を5bar(絶対圧)の圧力で行うことは、少なくとも1段階の圧縮を排除することを可能にし、一方で、再生段階を9barの圧力で行うことは、2段階の圧縮まで除く可能性を有する。
【0048】
ここで本発明を、附属の図及び以下の実施例に基づいてより詳細に説明する。
【0049】
図1は、本発明の方法を行うための好ましい装置を示し、かつ図2は、二酸化炭素の存在下で、アルカノールアミン水溶液の熱安定性を測定するために使用される装置を示す。
【0050】
図1に関して、例えば、約50barの圧力での天然ガスであり、かつ酸性ガス、例えばH2S、CO2及びCOSを含有するガス供給流は、供給ライン1を経由して吸収塔2中に通過される。該吸収塔2は、ガス供給流と吸収液との密着を確実にする。該吸収液は、供給ライン3を経由して吸収塔2の頂部領域中に導入され、そしてガス供給流に対して向流で通過される。
【0051】
実質上、酸性ガス成分を含まないガス流は、頂部取り出し口4を経由して吸収塔2を出る。
【0052】
高二酸化炭素吸収液は、ライン5を経由して吸収塔2を出て、そして膨張塔6の頂部領域中に通過する。膨張塔6において、吸収液の圧力が、急に、ガス流の軽成分が吸収流から蒸発できる約5〜9barに減少される。これらの成分は、燃焼されるか、又は吸収塔2に再循環されうる。吸収液は、ライン8を経由して塔の底部で最初の膨張塔6を出るが、一方ガス流の気化された成分は、ライン7を経由して膨張塔6の頂部で取り出される。
【0053】
そして吸収液は、塔10中を通過する。塔10中で遊離された二酸化炭素は、塔頂部で塔を出る。収集容器12を有する還流冷却器11は、連行された供給液滴を塔10に再循環する。二酸化炭素は、ライン13を経由して抜き出され、そして圧縮装置19によって圧縮され、そしてライン20を経由して貯蔵装置中に導入することができる。塔10の底部を出た再生された吸収液の一部は、再沸器18によって加熱され、そして塔10中に再循環される。
【0054】
塔10の底部を出た再生された吸収液は、ライン8を通過し高二酸化炭素吸収液の予熱を担う熱交換器9を通ってポンプ16を経由して圧送される。次いで再生された吸収液は、任意の低品質の冷却器21を通過してよく、液の温度は、さらに調整される。供給流は、供給塔2にライン3を経由して入る。新たな供給流を、ライン17で補ってよい。
【0055】
図2に関して、アルカノールアミン水溶液の熱安定性を評価するために使用される装置は、電気駆動の櫂形攪拌機2、圧力制御弁4を有するガス入り口ライン3、弁6を有するガスパージライン5、及び熱電対7を装備した反応容器1(約1リットルの容積を有する)を含む。該反応容器1は、その容器の表面に取り付けられた透過加熱器(図示されていない)によって調節された温度で保つことができる。試料は、反応容器の内容物から試料採取ライン8を経由して抜き取ることができる。圧力信号及び温度信号は、連続してデータ記録装置(図示されていない)中に電気的データのライン9および10を経由して送られる。
【0056】
実施例1
図2において示された装置を、熱安定性試験のために使用する。典型的な実験のために、所望されたアミン濃度のアミン溶液600mlを、圧力釜中に撹拌しながら入れる。該圧力釜及び液体を、圧力釜をCO2で10回、交互に加圧及び減圧する(大気より高い0〜5bar)ことによって、CO2ガスで取り除いた。該圧力釜を、徐々に加熱し、そして所望の温度で保った。ストリッピングされたCO2を排出し、そして圧力を所望の圧力で保った。蒸発させた水蒸気を5℃で冷却し、そして凝縮水を圧力釜中に還流した。圧力釜中の温度及び圧力を所望の値で安定化した後に、分解の試運転を開始した。試運転より前の準備手順を、約30分行った。
【0057】
試料の液体を、圧力釜から適切な間隔で抜き取り、そしてガスクロマトグラフィーによって解析した。
【0058】
分解の試運転を、162℃の温度及び6.3barの圧力(絶対圧)で300時間にわたって行った。二酸化炭素吸収促進剤は、添加されなかった。
【0059】
ガスクロマトグラフィーのために使用した条件は、以下である:
機種:TC−5キャピラリーカラム(日本、東京、GL Sciences株式会社の30mに内径0.32mm)を装備したShimadzu GC−14A;カラム温度:40℃(5分)−10℃/分−280℃(15分);キャリアガス:He;試料圧入量:1μl;検出器:FID。
【0060】
該結果を、以下の図1中にまとめる。C0は、実験開始時のアミン濃度を表し;cは、300時間後の不変のアミンの濃度を表す。
【0061】
表1:第三級脂肪族アルカノールアミンの162℃及び6.3barでの熱安定性
【表1】

MEA 2−ヒドロキシエチルアミンを示す。
(モノエタノールアミンとも呼ばれる)
DEA ビス(2−ヒドロキシエチル)アミンを示す。
(ジエタノールアミンとも呼ばれる)
DIPA 1−(2−ヒドロキシプロピルアミノ)プロパン−2−オールを示す。
(ジイソプロパノールアミンとも呼ばれる)
DMAP 3−ジメチルアミノ−1−プロパノールを示す。
MDEA 2−(2−ヒドロキシエチル−メチル−アミノ)エタノールを示す。
(N−メチルジエタノールアミンとも呼ばれる)
DMEA 2−(ジメチルアミノ)エタノールを示す。
(N,N−ジメチルエタノールアミンとも呼ばれる)
DEEA 2−(ジエチルアミノ)エタノールを示す。
(N,N−ジエチルエタノールアミンとも呼ばれる)
EDEA (2−[エチル−(2−ヒドロキシエチル)−アミノ]−エタノールを示す。
(N−エチルジエタノールアミンとも呼ばれる)
DEAP 3−ジエチルアミノプロパノールを示す。
【0062】
前記結果は、第一級及び第二級アルカノールアミン(例えばMEA、DEA又はDIPA)の安定性は、第三級アルカノールアミンの安定性と比べて極めて劣っていることを示している。また、該試験は、MDEA(その窒素原子上に2個のヒドロキシエチル部を有する)は、DMAP及びDEAP(ただ1個の3−ヒドロキシプロピル部を有する)又はDMEA及びDEEA(ただ1個の2−ヒドロキシエチル部を有する)よりも安定していないことを示している。驚くべきことに、MDEAとEDEAの双方は、それぞれの窒素原子上に2個のヒドロキシエチル部を有するが、EDEAは、MDEAよりもより安定であることが証明されている。このことは、(EDEA分子中に含まれている)エチル基の抽出又は置換が、(MDEA分子中に含まれている)メチル基の抽出又は置換よりも容易に進行しないという事の一因となってよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、本発明の方法を行うための好ましい装置を示す。
【図2】図2は、二酸化炭素の存在下で、アルカノールアミン水溶液の熱安定性を測定するために使用される装置を示す。
【符号の説明】
【0064】
図1
1 供給ライン、 2 吸収塔、 3 供給ライン、 4 取り出し口、 5 ライン、 6 膨張塔、 7 ライン、 8 ライン、 9 熱交換器、 10 塔、 11 還流冷却器、 12 収集容器、 13 ライン、 14 ポンプ、 15 ライン、 16 ポンプ、 17 ライン、 18 再沸器、 19 圧縮装置、 20 ライン、 21 冷却器
図2
1 反応容器、 2 櫂形攪拌機、 3 ガス入り口ライン、 4 圧力制御弁、 5 ガスパージライン、 6 弁、 7 熱電対、 8 試料採取ライン、 9 電気的データのライン、 10 電気的データのライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)二酸化炭素含有ガス供給流と吸収液とを気−液接触させる吸収段階であって、それによって、ガス流中に存在する少なくとも一部分の二酸化炭素を、吸収液中に吸収させて、(i)低減された二酸化炭素含量を有する精製ガス流と(ii)高二酸化炭素吸収液を生成させる吸収段階、
b)高二酸化炭素吸収液を3bar(絶対圧)より高い圧力で処理して、二酸化炭素を遊離させ、かつ吸収段階において使用するために再利用される低二酸化炭素吸収液を再生する再生段階
を含む、二酸化炭素の回収方法において、
該吸収液が、第三級脂肪族アルカノールアミンと二酸化炭素吸収促進剤の有効量とを含有するアミン溶液であり、
第三級脂肪族アルカノールアミンが、4mol/lの濃度での第三級脂肪族アルカノールアミンの水溶液を、気−液平衡状態下で162℃の温度及び6.3bar(絶対圧)の合計圧力で水溶液及び二酸化炭素の共存下で300時間保つ場合に、5%未満の分解を示す二酸化炭素の回収方法。
【請求項2】
a)二酸化炭素含有ガス供給流と吸収液とを気−液接触させる吸収段階であって、それによって、ガス流中に存在する少なくとも一部分の二酸化炭素を、吸収液中に吸収させて、(i)低減された二酸化炭素含量を有する精製ガス流と(ii)高二酸化炭素吸収液を生成させる吸収段階、
b)高二酸化炭素吸収液を3bar(絶対圧)より高い圧力で処理して、二酸化炭素を遊離させ、かつ吸収段階において使用するために再利用される低二酸化炭素吸収液を再生する再生段階
を含む、二酸化炭素の回収方法において、
該吸収液が、N−メチルジエタノールアミン以外の第三級脂肪族アルカノールアミンと二酸化炭素吸収促進剤の有効量とを含有するアミン水溶液である、二酸化炭素の回収方法。
【請求項3】
前記第三級脂肪族アルカノールアミンが、その分子構造において、1つより多い2−ヒドロキシエチル部によって置換された窒素原子を含まない、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
該第三級脂肪族アルカノールアミンが、その分子構造において、2−ヒドロキシエチル部及びメチル部の双方によって置換された窒素原子を含まない、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
該第三級脂肪族アルカノールアミンが、その分子構造において、1つのヒドロキシアルキル部及び2つのアルキル部によって置換されている単一の窒素原子を含む、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ヒドロキシアルキル部が、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル及び2−ヒドロキシブチルからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記第三級脂肪族アルカノールアミンが、N−エチルジエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)−エタノール、2−(ジエチルアミノ)−エタノール、3−(ジメチルアミノ)−1−プロパノール、3−(ジエチルアミノ)−1−プロパノール、1−(ジメチルアミノ)−2−プロパノール及び2−(ジイソプロピルアミノ)−エタノールからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記二酸化炭素吸収促進剤が、ピペラジン、2−メチルピペラジン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、N−ヒドロキシエチルピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、ホモピペラジン、ピペリジン及びモルホリンからなる群から選択される、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記吸収液が、20〜60質量%の第三級脂肪族アルカノールアミンを含有する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
該吸収液が、0.5〜20質量%の二酸化炭素吸収促進剤を含有する、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記再生段階が、3barより高く10bar(絶対圧)までの圧力で行われる、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記の遊離された二酸化炭素が、圧縮装置中に導入される、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−518281(P2009−518281A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544988(P2008−544988)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【国際出願番号】PCT/EP2006/069597
【国際公開番号】WO2007/068695
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【出願人】(000004411)日揮株式会社 (94)
【Fターム(参考)】