説明

二酸化炭素吸着材及びこれを用いた二酸化炭素回収装置

【課題】二酸化炭素の吸着能力が高い吸着材を提供するとともに、この吸着材を用いて二酸化炭素回収装置の効率を向上する。
【解決手段】Al、Ca、Y及びCeからなる群から選択される少なくとも一種類の元素の酸化物を含む二酸化炭素吸着材を用い、二酸化炭素を含有するガスから二酸化炭素を吸着・分離する。酸化物の表面は、還元状態であることが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素吸着材及びこれを用いた二酸化炭素回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
温室効果ガスの排出による地球温暖化の問題が広く認識されてきている。温室効果ガスとしては、二酸化炭素(CO)、メタン(CH)、フロン類(CFCs)等が挙げられるが、排出量が多く、実質的に影響が大きいものは二酸化炭素であり、その排出量の削減が緊急の課題となっている。
【0003】
特許文献1には、吸収塔と、再生塔とを含み、CO吸収液を再生して再利用するCO回収装置の一例が開示されている。
【0004】
特許文献2には、COまたはCO含有ガスを約20〜100℃において遷移金属担持ゼオライトと接触させるCOの吸着方法が開示されている。
【0005】
特許文献3には、COと水分を含有する排ガスを、シランカップリング剤を化学結合させた支持体と接触せしめ、COと選択的に吸着させ、脱着する排ガスの処理方法が開示されている。
【0006】
特許文献4には、COまたはCO含有ガスを約300〜500℃において酸化マグネシウムを主成分とした吸着材と接触させるCO吸着方法が開示されている。
【0007】
特許文献5には、空孔内に炭酸カリウム水和物を担持して乾燥させた多孔質物質に、水蒸気と二酸化炭素とを含むガスを通過させる二酸化炭素の回収方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−284272号公報
【特許文献2】特開平5−131116号公報
【特許文献3】特開2004−261670号公報
【特許文献4】特開2001−70726号公報
【特許文献5】特開平8−40715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、二酸化炭素の吸着能力が高い吸着材を提供するとともに、この吸着材を用いて二酸化炭素回収装置の効率を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の二酸化炭素吸着材は、二酸化炭素を含有するガスから二酸化炭素を吸着・分離するためのものであって、Al(アルミニウム)、Ca(カルシウム)、Y(イットリウム)及びCe(セリウム)からなる群から選択される少なくとも一種類の元素の酸化物を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、二酸化炭素吸着材の二酸化炭素に対する吸着エネルギーを高め、二酸化炭素の吸着量を増大させることができ、二酸化炭素回収装置の効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例に係る温度操作を利用した二酸化炭素回収装置を示す概略構成図である。
【図2】実施例に係る圧力操作を利用した二酸化炭素回収装置を示す概略構成図である。
【図3】実施例に係る温度操作及び圧力操作を利用した二酸化炭素回収装置を示す概略構成図である。
【図4】実施例に係る二酸化炭素吸着材の交換を制御する制御部を有する二酸化炭素回収装置を示す概略構成図である。
【図5】実施例に係る多段式の二酸化炭素回収装置を示す概略構成図である。
【図6a】第一原理計算によって求めたシリカの分子構造を示す模式図である。
【図6b】第一原理計算によって求めた二酸化炭素のシリカへの吸着状態を示す模式図である。
【図7a】第一原理計算によって求めたアミン修飾シリカの分子構造を示す模式図である。
【図7b】第一原理計算によって求めた二酸化炭素のアミン修飾シリカへの吸着状態を示す模式図である。
【図8a】第一原理計算によって求めた酸化マグネシウムの分子構造を示す模式図である。
【図8b】第一原理計算によって求めた二酸化炭素の酸化マグネシウムへの吸着状態を示す模式図である。
【図9a】第一原理計算によって求めたγ−アルミナの分子構造を示す模式図である。
【図9b】第一原理計算によって求めた二酸化炭素のγ−アルミナへの吸着状態を示す模式図である。
【図10a】第一原理計算によって求めた酸化カルシウムの分子構造を示す模式図である。
【図10b】第一原理計算によって求めた二酸化炭素の酸化カルシウムへの吸着状態を示す模式図である。
【図11a】第一原理計算によって求めた還元状態における酸化イットリウムの分子構造を示す模式図である。
【図11b】第一原理計算によって求めた還元状態における酸化イットリウムへの二酸化炭素の吸着状態を示す模式図である。
【図12a】第一原理計算によって求めた還元状態におけるセリアの分子構造を示す模式図である。
【図12b】第一原理計算によって求めた還元状態におけるセリアへの二酸化炭素の吸着状態を示す模式図である。
【図13a】第一原理計算によって求めた酸化状態における酸化イットリウムの分子構造を示す模式図である。
【図13b】第一原理計算によって求めた酸化状態における酸化イットリウムへの二酸化炭素の吸着状態を示す模式図である。
【図14a】第一原理計算によって求めた酸化状態におけるセリアの分子構造を示す模式図である。
【図14b】第一原理計算によって求めた酸化状態におけるセリアへの二酸化炭素の吸着状態を示す模式図である。
【図15】比較例1〜3及び実施例1〜4における二酸化炭素吸着エネルギーを示すグラフである。
【図16a】二酸化炭素のパルス吸着試験装置(準備工程)を示す概略構成図である。
【図16b】図16aのパルス吸着試験装置におけるパルス発生工程を示す部分拡大図である。
【図17】比較例6及び実施例5の二酸化炭素飽和吸着量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る二酸化炭素吸着材及びこれを用いた二酸化炭素回収装置について説明する。
【0014】
前記二酸化炭素吸着材は、二酸化炭素を含有するガス(二酸化炭素含有ガス)から二酸化炭素を吸着・分離するためのものである。
【0015】
前記二酸化炭素吸着材は、Al(アルミニウム)、Ca(カルシウム)、Y(イットリウム)及びCe(セリウム)からなる群から選択される少なくとも一種類の元素の酸化物を含む。
【0016】
前記二酸化炭素吸着材において、酸化物は、Y(三酸化二イットリウム)又はCeO(酸化セリウム)である。
【0017】
前記二酸化炭素吸着材において、CeOの表面は(1、1、1)面を有する。
【0018】
前記二酸化炭素吸着材において、酸化物の表面は還元状態である。
【0019】
前記二酸化炭素回収装置は、二酸化炭素吸着材を用い、吸着部と、この吸着部で二酸化炭素吸着材に吸着させた二酸化炭素を脱着・回収するための脱着部とを含む。
【0020】
前記二酸化炭素回収装置において、脱着部は、二酸化炭素吸着材を加熱するための加熱装置を有する。
【0021】
前記二酸化炭素回収装置は、脱着部を減圧するための減圧部を含む。
【0022】
前記二酸化炭素回収装置は、吸着部に送る二酸化炭素含有ガスの圧力を増加させるための加圧部を含む。
【0023】
前記二酸化炭素回収装置は、吸着部と脱着部との間で二酸化炭素吸着材を交換可能としたものである。
【0024】
前記二酸化炭素回収装置において、吸着部及び/又は脱着部は、二酸化炭素吸着材の重量を測定するための重量測定部を有する。
【0025】
前記二酸化炭素回収装置は、重量測定部の出力信号の変化量を用いて二酸化炭素吸着材の交換時期の制御を行う制御部を含む。
【0026】
前記二酸化炭素回収装置は、吸着部及び脱着部のうち少なくとも1つが複数段に分割されている。
【0027】
前記二酸化炭素吸着材は、50℃程度の低温では二酸化炭素の吸着によっても炭酸塩を生成しないため、前記二酸化炭素吸着材の再生のためのエネルギーを少なくすることができる。
【0028】
従来の二酸化炭素吸着材及び実施例の二酸化炭素吸着材について、二酸化炭素の吸着能力を比較するために、第一原理計算により二酸化炭素吸着エネルギーを算出した。
【0029】
第一原理計算の手法は、表1に示す通りである。
【0030】
ここで、二酸化炭素吸着エネルギーの算出方法は、下記式(1)によるものとする。下記式(1)は、吸着エネルギーの値が大きいほど二酸化炭素吸着時に安定になることを表している。
【0031】
(二酸化炭素吸着エネルギー)=−〔(二酸化炭素吸着後のエネルギー)−{(二酸化炭素吸着前のエネルギー)+(二酸化炭素のエネルギー)}〕 (1)
【0032】
【表1】

【0033】
以下、比較例及び実施例の分子構造について説明する。
【0034】
(比較例1)
AMCSD(American Mineralogist Crystal Structure Database)より、Si(ケイ素)にO(酸素)が四配位しているシリカ(SiO)の構造を入手して担体とした。さらに、シリカの表面に水酸基(OH基)を導入し、第一原理計算による構造最適化計算を行った(図6a)。
【0035】
(比較例2)
比較例1の二酸化炭素吸着材(以下、単に「吸着材」とも呼ぶ。)において、2つの水酸基の水素の代わりにエチルアミン(−CH−CH−NH)を化学結合させた構造を作成し、構造最適化計算を行った(図7a)。これは、特許文献3の吸着材を模したものである。
【0036】
(比較例3)
Mg(マグネシウム)とO(酸素)との元素の組成比が1:1である酸化マグネシウムの(100)面を表面とする構造を作製し、構造最適化計算を行った(図8a)。これは、特許文献4の吸着材を模したものである。
【実施例1】
【0037】
γアルミナ(Al)の表面について構造最適化計算を行った(図9a)。
【実施例2】
【0038】
酸化カルシウム(CaO)の表面について構造最適化計算を行った(図10a)。
【実施例3】
【0039】
酸化イットリウム(Y)の表面について構造最適化計算を行った(図11a)。
【0040】
本実施例においては、酸化イットリウム(Y)の表面の酸素を還元して除去した条件(酸化イットリウムの還元表面)で計算を行った。
【実施例4】
【0041】
セリア(CeO)の(1、1、1)面について構造最適化計算を行った(図12a)。
【0042】
本実施例においては、セリア(CeO)の表面の酸素を還元して除去した条件(セリアの還元表面)で計算を行った。
【0043】
(比較例4)
酸化イットリウム(Y)の表面について構造最適化計算を行った(図13a)。
【0044】
本比較例においては、酸化イットリウム(Y)の表面の酸素を除去していない(大気中に置かれた)条件(酸化イットリウムの酸化表面)で計算を行った。
【0045】
(比較例5)
セリア(CeO)の(1、1、1)面について構造最適化計算を行った(図14a)。
【0046】
本比較例においては、セリア(CeO)の表面の酸素を除去していない(大気中に置かれた)条件(セリアの酸化表面)で計算を行った。
【0047】
上記の比較例1〜5及び実施例1〜4の吸着材について、二酸化炭素が吸着した構造及びエネルギーを求めるため、表1に示す条件で第一原理計算による構造最適化を行った。
【0048】
各比較例及び各実施例の吸着材への二酸化炭素の吸着状態を示す構造図を図6b、7b、8b、9b、10b、11b、12b、13b及び14bに示す。
【0049】
図6b(比較例1)において、二酸化炭素は、シリカと化学結合を形成せず、静電気的な力によって物理吸着している。このことから、シリカにおける二酸化炭素の吸着エネルギーは小さいことがわかる。
【0050】
図7b(比較例2)において、二酸化炭素は、二つのアミンに挟まれるように吸着している。これは、−NH+−NH+CO→−NHCO(−)+−NH(+)の反応により安定している状態を示している。
【0051】
図8b(比較例3)においては、二酸化炭素の二つの酸素原子(O)が酸化マグネシウムのマグネシウム原子(Mg)と結合し、二酸化炭素の炭素原子(C)が酸化マグネシウムの酸素原子(O)と結合して安定している状態を示している。
【0052】
図9b(実施例1)においては、二酸化炭素の二つの酸素原子(O)がγアルミナのアルミニウム原子(Al)と結合して安定している状態を示している。
【0053】
図10b(実施例2)においては、二酸化炭素の二つの酸素原子(O)が酸化カルシウムのアルミニウム原子(Ca)と結合して安定している状態を示している。
【0054】
図11b(実施例3)においては、二酸化炭素の二つの酸素原子(O)が酸化イットリウムのイットリウム原子(Y)と結合し、二酸化炭素の炭素原子(C)が酸化イットリウムの酸素原子(O)と結合して安定している状態を示している。
【0055】
図12b(実施例4)においては、二酸化炭素の二つの酸素原子(O)がセリアのセリウム原子(Ce)と結合して安定している状態を示している。
【0056】
図13b(比較例4)においては、二酸化炭素の一つの酸素原子(O)が酸化イットリウムのイットリウム原子(Y)と結合している。図11bと比較すると、二酸化炭素と酸化イットリウムの表面との距離が大きくなっている。このことから、酸化イットリウムにおける二酸化炭素の吸着エネルギーは小さいことがわかる。
【0057】
図14b(比較例5)においては、二酸化炭素の一つの酸素原子(O)がセリアのセリウム原子(Ce)と結合している。図12bと比較すると、二酸化炭素とセリアの表面との距離が大きくなっている。このことから、セリアにおける二酸化炭素の吸着エネルギーは小さいことがわかる。
【0058】
表2は、比較例1〜3及び実施例1〜4の吸着材について二酸化炭素吸着エネルギーを示したものである。
【0059】
【表2】

【0060】
図15は、表2の値をグラフに示したものである。
【0061】
表2及び図15に示す通り、アミンで修飾したシリカ(比較例2)及び酸化マグネシウム(比較例3)による二酸化炭素吸着エネルギーと比べ、実施例1〜4においては、二酸化炭素吸着エネルギーが大きくなっており、二酸化炭素吸着能力が向上している。
【0062】
吸着材を構成する結晶の吸着サイトの二酸化炭素吸着能力が高ければ、二酸化炭素吸着サイトへ二酸化炭素が吸着する確率が向上し、二酸化炭素吸着量は増加することは明らかである。このことから、二酸化炭素吸着材の材料成分としては、Al(アルミニウム)、Ca(カルシウム)、Y(イットリウム)及びCe(セリウム)からなる群から選択される少なくとも一種類の元素を含む酸化物が好適であることがわかる。
【0063】
表3は、実施例4(セリアの還元表面)、実施例3(酸化イットリウムの還元表面)、比較例5(セリアの酸化表面)及び比較例4(酸化イットリウムの酸化表面)について二酸化炭素吸着エネルギーを示したものである。
【0064】
【表3】

【0065】
本表から、還元表面の方が酸化表面に比べて二酸化炭素吸着エネルギーが一桁大きいことがわかる。
【0066】
下記の比較例6及び実施例5は、二酸化炭素の吸着量を調べるために比較例2及び実施例4の二酸化炭素吸着材を実際に作製したものである。これらの二酸化炭素吸着材について二酸化炭素吸着量を測定した。
【0067】
(比較例6)
特許文献3に記載された方法に準拠して、AEAPS(N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、NH(CHNH(CHSi(OCH)で修飾したメソポーラスシリカ(SBA−15、細孔径3〜10nm)を作製した。この吸着材は、アミン修飾メソポーラスシリカと呼ぶことができる。
【0068】
この吸着材を二酸化炭素吸着試験の前に150℃のHe雰囲気中で不純物の脱離処理を1時間実施した。
【実施例5】
【0069】
セリア(CeO)(第一稀元素化学工業(株)製)を用いて二酸化炭素吸着材とした。二酸化炭素吸着試験前に500℃のHe雰囲気中で不純物の脱離処理を1時間実施した。
【0070】
比較例6及び実施例5で作製した二酸化炭素吸着材について、50℃における二酸化炭素パルス吸着試験を実施し、二酸化炭素吸着量を測定した。
【0071】
図16aは、二酸化炭素パルス吸着試験装置を示す全体構成図である。本図は、パルス試験に用いる10ccのCO含有ガスを溜めておくための準備工程を示したものである。
【0072】
二酸化炭素パルス吸着試験装置は、反応部30にガスクロマトグラフィ25及びオートサンプラー29を接続した構成としてある。
【0073】
反応部30は、二酸化炭素吸着材21を充填する反応管22を電気炉23の内部に設けた構成としたものである。反応管22の周囲には、ヒータ24(加熱装置)を設けてある。また、二酸化炭素吸着材21には、熱電対27が設置してある。
【0074】
本図に示す準備工程においては、オートサンプラー29及び配管26を介してヘリウム(He)ガスを反応管22に流入させるようにしてある。また、ヘリウム(He)をベースガスとした4%の二酸化炭素を10ccのサンプル管28に流通させ、定常的に排気してサンプル管28の内部を濃度4%の二酸化炭素で置換する。
【0075】
この準備工程は、熱電対27により測定される温度が50℃で安定するまで継続される。
【0076】
図16bは、図16aのオートサンプラー29をパルス発生工程に切り替えた状態を示したものである。
【0077】
このパルス発生工程においては、4%の二酸化炭素を含むCO含有ガスを10cc反応管22に流入させて二酸化炭素のパルスを二酸化炭素吸着材21に接触させる。そして、反応管22を通過したガスを後段のガスクロマトグラフィ25によって二酸化炭素の累積排出量を測定する。
【0078】
上記の準備工程及びパルス発生工程をそれぞれ2分及び6分で交互に繰り返して、二酸化炭素吸着材への飽和吸着量を求めた。
【0079】
比較例6及び実施例5の二酸化炭素飽和吸着量を図17に示す。
【0080】
比較例6及び実施例5の二酸化炭素吸着材1mol(モル)当たりの二酸化炭素吸着量は、それぞれ12mmol(ミリモル)及び23mmolであり、実施例5の方が比較例6に比べて吸着量が多いことを確認した。
【実施例6】
【0081】
図1は、実施例1〜5の二酸化炭素吸着材を用いた二酸化炭素回収装置の例を示す概略構成図である。
【0082】
本図において、二酸化炭素回収装置は、二酸化炭素を含有するガス(CO含有ガス)を導入するための流路1と、二酸化炭素吸着前の二酸化炭素吸着材2と、二酸化炭素吸着材2によって二酸化炭素が除去されたCO除去ガスが流れる流路3とを接続した吸着部、及び、ヒータ5、6を有し、二酸化炭素吸着後の二酸化炭素吸着材4と、二酸化炭素吸着材4から流出する高濃度COガスを流し、二酸化炭素回収部16に接続するための流路7と、循環流路17とを接続した脱着部を含む構成である。流路1、7にはそれぞれ、バルブ8、10が設けられ、循環流路17には、バルブ9が設けられ、二酸化炭素の流量を調整することができるようにしてある。
【0083】
吸着部の二酸化炭素吸着前の二酸化炭素吸着材2と脱着部の二酸化炭素吸着材4とは、それぞれの設置位置を交換できるように配置されている。
【0084】
吸着部及び脱着部をそれぞれ半円筒形とし、二酸化炭素吸着材2及び二酸化炭素吸着材4を、空隙を有する一つの円柱形とし、円柱の中心軸を回転軸として回転可能としたロータとすることにより、二酸化炭素吸着材2及び二酸化炭素吸着材4が吸着部及び脱着部それぞれに所定時間滞留するように所定の速度で回転させるようにしてもよい。この場合、二酸化炭素吸着材2及び二酸化炭素吸着材4の温度変化の速度を検知して、ロータの回転速度を変動又は停止させてもよい。
【0085】
流路1には、その上流側で温度を十分に下げたガスを流し、吸着部の二酸化炭素吸着材2に二酸化炭素を吸着させる。二酸化炭素を吸着・分離されたガスは、流路3から排出される。流路3から排出されるガスは、二酸化炭素濃度が低くなる。
【0086】
脱着部においては、ヒータ5、6によって加熱された二酸化炭素吸着材4から、二酸化炭素が排出され、二酸化炭素回収部16で二酸化炭素が回収される。流路17を介して流路7を流れる高濃度COガスの一部を二酸化炭素吸着材4に循環させることができるようになっている。
【0087】
本実施例の二酸化炭素回収装置を用いることにより、流路1から導入されるガスの二酸化炭素濃度よりも、流路7の二酸化炭素濃度を高くすることができ、二酸化炭素の回収を促進することができる。
【0088】
また、流路1に流入するガスが、二酸化炭素だけでなく、水蒸気を含有する場合、二酸化炭素に比べて水蒸気を選択的に吸着(吸収)する吸着材(乾燥材)を流路1に設置してこのガスに含まれる水蒸気を除去した後、そのガスを吸着部の二酸化炭素吸着材2に二酸化炭素を吸着させることが望ましい。これにより、二酸化炭素の吸着分離による回収を更に促進することができる。
【実施例7】
【0089】
図2は、実施例1〜5の二酸化炭素吸着材を用いた二酸化炭素回収装置の他の例を示す概略構成図である。
【0090】
本図において図1と異なる点は、流路1に加圧部11を設けることにより、CO含有ガスを加圧して二酸化炭素吸着前の二酸化炭素吸着材2に導入し、二酸化炭素吸着材2における二酸化炭素の吸着量を増加させる点、及び、流路7に減圧部18を設けることにより、二酸化炭素吸着後の二酸化炭素吸着材4に導入される高濃度COガスを減圧し、二酸化炭素吸着材4における二酸化炭素の脱着量を増加させる点である。
【0091】
吸着部及び脱着部をそれぞれ半円筒形とし、二酸化炭素吸着材2及び二酸化炭素吸着材4を、空隙を有する一つの円柱形とし、円柱の中心軸を回転軸として回転可能としたロータとすることにより、二酸化炭素吸着材2及び二酸化炭素吸着材4が吸着部及び脱着部それぞれに所定時間滞留するように所定の速度で回転させるようにしてもよい。この場合、吸着部と脱着部とで内部の圧力が異なるため、ロータの密閉性を確保することが望ましい。ロータの内部に所定の圧力を維持するための仕切り板を放射状に設けてもよい。
【0092】
本実施例の二酸化炭素回収装置において、二酸化炭素を吸着した二酸化炭素吸着材4は、脱着部において吸着平衡が急激に変化するため、二酸化炭素が急速に脱着し、流路1から導入されるガスの二酸化炭素濃度よりも、流路7の二酸化炭素濃度を高くすることができる。また、流路3を設けることにより、二酸化炭素濃度が低くなったガスを排出することができる。
【0093】
なお、流路1に流入するガスが、二酸化炭素だけでなく、水蒸気を含有する場合の手段については、実施例6と同様である。
【実施例8】
【0094】
図3は、実施例1〜5の二酸化炭素吸着材を用いた二酸化炭素回収装置の他の例を示す概略構成図である。
【0095】
本図に示す二酸化炭素回収装置は、実施例7の吸着部と実施例6の脱着部とを組み合わせたものである。
【実施例9】
【0096】
図4は、実施例1〜5の二酸化炭素吸着材を用いた二酸化炭素回収装置の他の例を示す概略構成図である。
【0097】
本図に示す二酸化炭素回収装置は、二酸化炭素吸着材2の重量を測定するための重量計12(重量測定部)と、二酸化炭素吸着材4の重量を測定するための重量計13(重量測定部)と、制御部14とを有する。吸着部の二酸化炭素吸着前の二酸化炭素吸着材2と脱着部の二酸化炭素吸着材4とは、それぞれの設置位置を交換できるように配置されている。
【0098】
重量計12及び重量計13のデータは制御部14に送られ、制御部14は、これらのデータを元に二酸化炭素吸着材2と二酸化炭素吸着材4の交換時期を算出し、吸着材を交換する装置(吸着材交換部)に指令信号を発する。
【0099】
二酸化炭素吸着材2と二酸化炭素吸着材4との交換は、重量計12から制御部14に送信されたデータから二酸化炭素吸着量を算出し、二酸化炭素吸着材2の二酸化炭素吸着量が飽和に近くなると、制御部14から二酸化炭素吸着材2と二酸化炭素吸着材4との交換を指示する信号を発する。
【0100】
また、流量調整部15は、減圧部を内蔵していることが望ましい。減圧部を内蔵することにより、二酸化炭素吸着材4の脱着を促進することができる。
【0101】
本実施例によれば、二酸化炭素吸着材2の交換を適切な時期に行うことができるため、二酸化炭素の回収効率を向上させることができる。
【0102】
本実施例においては、吸着部及び脱着部に重量測定部を設けているが、これに限定されるものではなく、制御部14は、吸着部又は脱着部に重量測定部を設けて吸着部又は脱着部のいずれかの重量測定部の出力信号の変化量のみを用いて制御を行ってもよい。
【実施例10】
【0103】
図5は、実施例9の二酸化炭素回収装置において、二酸化炭素吸着材2a〜2c及び二酸化炭素吸着材4a〜4cのそれぞれの段数を複数にした構成(二酸化炭素吸着材2a〜2c及び二酸化炭素吸着材4a〜4cを複数段に分割した構成)である。各二酸化炭素吸着材2a〜2cの重量を測定する重量計12a〜12c及び二酸化炭素吸着材4a〜4cの重量を測定する重量計13a〜13cから制御部14にデータ(出力信号)を送信し、実施例13と同様、二酸化炭素吸着材2a〜2cのうち二酸化炭素吸着飽和に近くなるものがあれば、二酸化炭素吸着材4a〜4cのうち重量が減り、二酸化炭素の脱着が最も進んでいるものと交換を指示する信号を発する。
【0104】
本実施例によれば、実施例9と同様の効果が得られるとともに、二酸化炭素を含むガスの流れを止めず、効率良く二酸化炭素吸着材2a〜2cと二酸化炭素吸着材4a〜4cの交換を実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、二酸化炭素を含む排ガスから二酸化炭素を吸着分離して回収する装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0106】
1:流路、2:二酸化炭素吸着材、3:流路、4:二酸化炭素吸着材、5、6:ヒータ、7:流路、8、9、10:バルブ、11:加圧部、12、13:重量計、14:制御部、15:流量調整部、16:二酸化炭素回収部、17:流路、18:減圧部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含有するガスから二酸化炭素を吸着・分離するための二酸化炭素吸着材であって、Al、Ca、Y及びCeからなる群から選択される少なくとも一種類の元素の酸化物を含むことを特徴とする二酸化炭素吸着材。
【請求項2】
前記酸化物は、Y又はCeOであることを特徴とする請求項1記載の二酸化炭素吸着材。
【請求項3】
前記CeOの表面が(1、1、1)面を有することを特徴とする請求項2記載の二酸化炭素吸着材。
【請求項4】
前記酸化物の表面が還元状態であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の二酸化炭素吸着材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の二酸化炭素吸着材を用い、吸着部と、この吸着部で前記二酸化炭素吸着材に吸着させた二酸化炭素を脱着・回収するための脱着部とを含むことを特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項6】
前記脱着部は、前記二酸化炭素吸着材を加熱するための加熱装置を有することを特徴とする請求項5記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項7】
前記脱着部を減圧するための減圧部を含むことを特徴とする請求項5又は6に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項8】
前記吸着部に送る前記ガスの圧力を増加させるための加圧部を含むことを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項9】
前記吸着部と前記脱着部との間で前記二酸化炭素吸着材を交換可能としたことを特徴とする請求項5〜8のいずれか一項に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項10】
前記吸着部及び/又は前記脱着部は、前記二酸化炭素吸着材の重量を測定するための重量測定部を有することを特徴とする請求項5〜9のいずれか一項に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項11】
前記重量測定部の出力信号の変化量を用いて前記二酸化炭素吸着材の交換時期の制御を行う制御部を含むことを特徴とする請求項10記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項12】
前記吸着部及び前記脱着部のうち少なくとも1つが複数段に分割されていることを特徴とする請求項5〜11のいずれか一項に記載の二酸化炭素回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10a】
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【図10b】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12a】
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【図12b】
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【図13a】
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【図13b】
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【図14a】
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【図14b】
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【図15】
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【図16a】
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【図16b】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−173059(P2011−173059A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38574(P2010−38574)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】