説明

二酸化炭素回収型発電システム

【課題】二酸化炭素回収装置で硫酸ガスが液化しない濃度にまで、二酸化炭素回収装置よりも上流で、硫酸ガスを除去する方法を提供することが課題である。
【解決の手段】酸素雰囲気で燃料を燃焼するボイラと、ボイラ後流で二酸化炭素を除去する二酸化炭素回収装置と、ボイラ後流から分岐して、燃焼排ガスをボイラに戻す配管と、二酸化炭素回収装置より上流でボイラ後流に硫黄酸化物を除去する脱硫装置及び硫酸ガスを除去する硫酸除去装置とを設ける二酸化炭素回収型発電システムとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素回収型発電システムで必要になる燃焼排ガス中の硫酸除去に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化が地球規模の環境問題として取り上げられている。大気中の二酸化炭素濃度の増加が地球温暖化の主要因であることが明らかにされており、二酸化炭素排出量の削減が重要になっている。
【0003】
石炭火力発電所は二酸化炭素の有力な排出源であり、燃焼排ガス中の二酸化炭素を高効率で分離,回収することが課題になっている。
【0004】
従来の石炭火力発電では、空気を用いて燃料を燃焼しているが、空気には燃焼に関与しない約80%の窒素が含まれ、この窒素が二酸化炭素の高効率分離,除去の阻害要因になっている。
【0005】
この阻害要因を取り除くために、例えば特許文献1では、石炭を酸素で燃焼する方法が記載されている。窒素を含有しない酸素で燃焼することにより、燃焼排ガス中の二酸化炭素濃度を高くでき、二酸化炭素を高効率で分離,除去することができる。
【0006】
一方、酸素燃焼したときの燃焼排ガス温度は高く、ボイラ材料がその温度に耐えられなくなることを防止するため、燃焼排ガスの一部をボイラに戻し、酸素濃度を下げることにより、燃焼排ガスの温度を、空気燃焼の場合と同程度にする等を行う。
【0007】
ボイラで石炭を燃焼すると、窒素酸化物(以下、NOxと記載)および硫黄酸化物(以下、SOxと記載)が発生するため、これらを浄化する装置がボイラの後流に設置されている。NOxは脱硝触媒を用い、アンモニアと反応させ、窒素に変換する。SOxは石灰と反応させ、石膏を生成させる。また、SOxの一部は硫酸ガスとなる。燃焼排ガスの温度が酸露点以下になると、液化し、硫酸ミストになる。この硫酸ミストは、機器,配管の部材に付着し、その部材を腐食させる。さらに、煙突から排出すれば白煙となるので、視覚公害となる。さらに、酸性雨の発生源となる。そのため、燃焼排ガス中の硫酸を除去する装置が設けられている。
【0008】
硫酸ミストを除去する方法として、例えば特許文献2がある。脱硫装置の後流に湿式電気集塵装置を設け、硫酸ミストを荷電除去する。硫酸ミストを粗大化させ、除去性能を向上させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3068888号公報
【特許文献2】特開2002−45643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
燃焼排ガス中の二酸化炭素は、燃焼排ガスを圧縮,冷却し、二酸化炭素を液化することにより、非凝縮性ガスと分離し、回収する。その冷却温度は約−80℃以下になる。
【0011】
特許文献2の硫酸除去方法は、硫酸ガスが酸露点以下でミスト化した硫酸を除去する方法である。この方法では、硫酸ガスの飽和蒸気圧分が燃焼排ガス中に残留する。硫酸ガスの飽和蒸気圧は低温ほど低いため、冷却にともなって硫酸ガスが液化する。特に二酸化炭素回収装置では、−80℃以下に冷却するため、冷却過程で硫酸ガスが液化し、機器部材に付着し、部材を腐食させる。これは、二酸化炭素回収装置の連続運転の妨げとなる。それを防ぐために、二酸化炭素回収装置の使用温度で、硫酸ガスが液化しない濃度にまで、二酸化炭素回収装置の上流で、燃焼排ガス中の硫酸ガスを除去する必要があり、本発明は、その方法を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、酸素雰囲気で燃料を燃焼するボイラと、ボイラ後流で二酸化炭素を除去する二酸化炭素回収装置と、ボイラ後流から分岐して、燃焼排ガスをボイラに戻す配管と、二酸化炭素回収装置より上流でボイラ後流に硫黄酸化物を除去する脱硫装置及び硫酸ガスを除去する硫酸除去装置とを設ける二酸化炭素回収型発電システムとした。
【発明の効果】
【0013】
燃焼排ガス中の硫酸ガスをガスの状態で除去するため、最も低温になる二酸化炭素回収装置で硫酸ガスが液化することを防ぐことができ、長時間運転による部材の腐食を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施例の硫酸除去装置を設けた二酸化炭素回収型発電システムを示す図。
【図2】本実施例の硫酸の飽和蒸気圧線を示す図。
【図3】本実施例の硫酸吸着剤を燃料として使用する二酸化炭素回収型発電システムを示す図。
【図4】本実施例の硫酸除去装置と水銀除去装置を設けた二酸化炭素回収型発電システムを示す図。
【図5】本実施例の硫酸吸着剤の入れ替えシステムを示す図。
【図6】本実施例の硫酸吸着剤の入れ替えシステム方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施例は、酸素雰囲気で燃料を燃焼するボイラと、ボイラ後流で二酸化炭素を除去する二酸化炭素回収装置と、ボイラ後流から分岐して、燃焼排ガスをボイラに戻す配管と、二酸化炭素回収装置より上流でボイラ後流に硫黄酸化物を除去する脱硫装置及び硫酸ガスを除去する硫酸除去装置とを設ける二酸化炭素回収型発電システムとした。
【0016】
また、酸素雰囲気で燃料を燃焼するボイラと、ボイラの後流に硫黄酸化物を除去する脱硫装置と、脱硫装置の後流に水分を除去する脱水装置と、脱水装置の後流に二酸化炭素を除去する二酸化炭素回収装置と、ボイラの後流から分岐し、燃焼排ガスをボイラに戻す配管が接続された二酸化炭素回収型の発電システムにおいて、燃焼排ガスをボイラに戻す分岐点より後流に、硫酸ガスを除去する硫酸除去装置を設けた。
【0017】
燃焼排ガス中の水分を冷却除去する脱水装置で硫酸ガスが液化すれば、液化した水に硫酸が混じり、脱水装置の部材を腐食させることになるため、硫酸除去装置を脱水装置の上流に設けた。
【0018】
硫酸除去装置は、装置内に硫酸吸着剤を挿入し、硫酸をガス状で除去する方法を採用した。硫酸ガス吸着剤は粉体、あるいは塊状体とした。さらに、硫酸吸着剤は、活性炭、あるいはバイオマス燃料、あるいは石炭とした。これにより、硫酸吸着後の硫酸吸着剤をボイラの燃料として使用し、使用済の硫酸吸着剤を有効利用し、硫酸吸着剤が廃棄物にならないようにした。
【0019】
燃焼排ガス中には水銀が含まれる。水銀ガスも硫酸ガス同様、温度低下で液化し、機器の部材に付着し、部材を腐食させる。硫酸吸着剤である活性炭、あるいはバイオマス燃料、あるいは石炭は、燃焼排ガス中に含まれる水銀ガスも吸着することができる。ところが、硫酸を吸着した硫酸吸着剤は、水銀ガスの吸着能力が低下するため、硫酸除去装置の後流に別途水銀吸着装置を設けた。
【0020】
さらに、硫酸吸着剤は、いずれ吸着が飽和するため、吸着した硫酸吸着剤と未使用の硫酸吸着剤を入れ替える必要がある。硫酸除去装置に硫酸吸着剤を投入する配管と、排出する配管を接続し、それぞれの配管にバルブを設けた。さらに、硫酸除去装置の燃焼排ガス出口に硫酸濃度計測器を設け、該計測値を読み込み、所定硫酸濃度以上になったときに、投入、排出バルブを開とする制御装置を設けた。
【0021】
また、酸素雰囲気で燃料を燃焼するボイラと、ボイラ後流に硫黄酸化物を除去する脱硫装置と、脱硫装置の後流に水分を除去する脱水装置と、脱水装置の後流に二酸化炭素を除去する二酸化炭素回収装置と、ボイラ後流から分岐して、燃焼排ガスをボイラに戻す配管と、前記脱水装置の上流に硫酸ガスを除去する硫酸除去装置を設けた二酸化炭素回収型発電システムとした。
【0022】
酸素雰囲気で燃料を燃焼し、効率よく二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収型発電システムにおいて、燃焼排ガス中に硫酸ガスが含まれていると、酸露点以下で硫酸ガスが液化し、機器部材に付着し、部材を腐食させる。従来、硫酸ガスは、酸露点以下で液化,ミスト化した後、例えば湿式電気集塵器を用いて除去する。ところが、湿式電気集塵器の使用温度における硫酸ガスの飽和蒸気圧分は、硫酸ガスとして残存し、湿式電気集塵器の後流に設けられる二酸化炭素回収装置では、使用温度が湿式電気集塵器より低く、飽和蒸気圧が低下するため、冷却過程で硫酸ガスが液化する。それを防ぐための方法を提供することが本発明の目的である。
【0023】
以下、添付図を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0024】
微粉炭を燃料とした石炭火力発電システムを例とし、図1に本発明の二酸化炭素回収型発電システムを示す。微粉炭を燃焼するボイラ1の後流に、NOxを窒素に還元する脱硝装置2,燃焼排ガスの熱を回収するエアーヒータ3およびガスヒータ4,その後流に石炭灰を除去する脱塵装置5,SOxを除去する脱硫装置6の排ガス処理装置,硫酸を除去する硫酸除去装置7,水を除去する脱水装置8,二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置9を備えている。
【0025】
酸素製造装置12で空気26を取り込み、酸素27を製造し、ボイラ1に酸素27を供給し、石炭を貯蔵する石炭ホッパ10から送られた石炭を石炭粉砕機11で粉砕し、ボイラ1に微粉炭で供給し、酸素で燃焼させる。酸素で燃焼すれば、燃焼排ガスの主成分が二酸化炭素と水となり、水を除去すれば二酸化炭素濃度を90%以上にすることができる。一方、空気で燃焼する場合、空気の約80%が窒素であり、この窒素は燃焼に関与しないため、燃焼排ガス中にそのまま残り、燃焼によって生成した二酸化炭素濃度は約10%程度と低濃度となる。したがって、酸素燃焼によって二酸化炭素濃度を高くし、効率的に二酸化炭素を回収することができる。
【0026】
燃焼排ガスを脱水装置8に通気し、ガス冷却により水23を除去した後、二酸化炭素回収装置9で圧縮、冷却し、ニ酸化炭素24と非凝縮性ガス25を分離し、二酸化炭素24を回収する。
【0027】
高酸素濃度で微粉炭を燃焼させると、燃焼排ガスの温度は、ボイラ1を構成する部材の耐熱温度以上になるため、燃焼排ガスの一部をボイラ1に戻し、酸素濃度を下げることにより、燃焼排ガスの温度を低下させる。図1では、脱硫装置6の後流の分岐点28により、循環ガス22をボイラに戻すようにしている。
【0028】
脱硫装置6は、石灰をスラリにし、そのスラリを噴霧する湿式脱硫方式が用いられる。石灰スラリの噴霧により、燃焼排ガス中のSOxを吸収し、石膏を生成し、SOxを除去する。湿式脱硫は、SOx除去率が98%以上と高くすることができ、さらに、生成した石膏を有効利用できる利点がある。
【0029】
石灰スラリの噴霧により、燃焼排ガス温度は低下する。循環ガス22は脱硫装置6を通過したガスであり、その温度は約50℃となるため、エアーヒータ3で加熱し、ボイラ1に供給するようにした。これにより、ボイラの熱効率を向上させることができる。
【0030】
燃焼排ガス中のSOxの一部は、酸化され硫酸ガスとなる。燃焼排ガスが酸露点以下に冷却されると、液化し、硫酸ミストとなる。この硫酸ミストは、機器部材に付着し、部材の腐食を引き起こす。
【0031】
図2に本実施例の硫酸ガスの飽和蒸気圧線を示す。硫酸ガスは100%硫酸と、水との水和物であり、硫酸ミストの組成例として、硫酸90%,水10%の飽和蒸気圧線を示した。硫酸ガスが液化する酸露点は、硫酸ガス濃度,水濃度によって変わるが、ここでは、図2中Iの130℃とする。燃焼排ガスが温度低下し、130℃になると硫酸は液化し、一方、燃焼排ガス中には図2中Aの飽和蒸気圧で硫酸ガスが残存する。脱硫装置6によって燃焼排ガスは図2中IIの50℃に低下し、飽和蒸気圧は図2中Bに低下する。したがって、脱硫装置6では、A−Bの蒸気圧分が液化することになる。同様に、脱水装置8での冷却温度を図2中IIIの20℃とすると、B−Cの蒸気圧分が液化することになり、二酸化炭素回収装置9での冷却温度を−80℃とすると、C−Dの蒸気圧分が液化することになる。
【0032】
したがって、硫酸ミストの状態で硫酸を除去する方法では、硫酸ガスの飽和蒸気圧分が燃焼排ガス中に残存するため、その温度より低温に冷却すると硫酸ガスは液化することになる。したがって、酸露点以下で使用する機器では、液化した硫酸が部材に付着する。脱硫装置6では、噴霧する石灰スラリによって部材が洗浄されるため、部材の腐食を防ぐことができるが、脱水装置8および二酸化炭素回収装置9では部材を洗浄する液体がないため、部材腐食を防ぐことはできない。
【0033】
そこで、本実施例では、硫酸ガスを液体にして除去するのではなく、ガスの状態で除去できる方法を採用した。図1中の硫酸除去装置7の中に、硫酸ガスを吸着する硫酸吸着剤を挿入するようにした。
【0034】
硫酸除去装置7の中に、硫酸ガスを吸着する硫酸吸着剤を挿入することについて、図2の硫酸ガスの飽和蒸気圧線を用いて説明する。二酸化炭素回収装置9での冷却温度を−80℃とすると、C−Dの蒸気圧分が液化することとなるが、脱水装置8の下流側に硫酸除去装置7を設けることで予めC−Dの蒸気圧分以上の硫酸ガスを除去する。これにより、二酸化炭素回収装置9で硫酸ガスが液化することなく、部材腐食を防いで二酸化炭素を回収することができる。また、脱硫装置6の下流側に硫酸除去装置7を設けることで予めB−Dの蒸気圧分以上の硫酸ガスを除去する。これにより、脱水装置8及び二酸化炭素回収装置9で硫酸ガスが液化することなく、部材腐食を防いで二酸化炭素を回収することができる。このように、燃焼排ガス中には図2中Aの飽和蒸気圧で硫酸ガスが残存する場合に、脱硫装置6によって飽和蒸気圧のA−Bの蒸気圧分の硫酸ガスを除去した後、二酸化炭素回収装置9より上流で硫酸ガスの飽和蒸気圧線よりも下の硫酸ガスの状態でB−D又はC−D分の蒸気圧分以上の硫酸ガスを除去する。この硫酸ガスの飽和蒸気圧線から求めた温度及び気圧に基づいて気体の状態方程式から硫酸ガスの除去量を求め、硫酸ガスの除去量と吸着剤の除去能力から硫酸吸着剤の必要な量を求めて硫酸除去装置7を設ける。
【0035】
燃焼排ガス21は、分岐点28で循環ガス22に分岐するため、分岐点28の後流では燃焼排ガスが減少する。したがって、硫酸除去装置7を分岐点28より後流に設けることが望ましく、これにより硫酸除去装置7を小型化することができる。
【0036】
図1では分岐点28が脱硫装置6と硫酸除去装置7の間に設けているが、脱塵装置5と脱硫装置6の間に設けていてもよく、ガスヒータ4と脱塵装置5の間に設けていてもよい。
【0037】
さらに、硫酸除去装置7は脱水装置8の前に設けることが望ましい。脱水装置8で燃焼排ガスを冷却しても、その温度における硫酸ガスの飽和蒸気圧以下になるように硫酸除去装置7で硫酸ガスを除去させることにより、脱水装置8で硫酸ガスが液化しないようにすることができる。
【0038】
硫酸ガスを吸着する硫酸吸着剤は、石灰,消石灰あるいは活性炭の固形物であり、それらの粉末、あるいは塊状物となる。硫酸吸着剤は乾式使用であるため、硫酸ガスだけでなく、硫酸ガスが液化した硫酸ミストも吸着することができる。
【0039】
硫酸吸着剤として粉末を使用する場合、燃焼排ガスに同伴され、硫酸吸着剤が後流に流出するため、流出した硫酸吸着剤を捕集する脱塵装置が必要になる。また、捕集した硫酸吸着剤を硫酸除去装置に再投入し、硫酸吸着剤を再利用することも、硫酸吸着剤の有効利用として重要になる。したがって、硫酸除去装置7は、硫酸吸着剤の捕集,再投入の機能を有する循環流動層装置が望ましい。
【0040】
硫酸吸着剤として塊状物を用いる場合、硫酸除去装置は充填層装置となる。燃焼排ガスに同伴して硫酸吸着剤が後流に流出することはないが、燃焼排ガスとの接触面積を稼ぐために充填層高さを確保する必要がある。また、充填層の上流では早く吸着能力が低下し、さらには吸着平衡に達するため、上流の硫酸吸着剤を抜き出し、不足した分を下流から投入することが必要になる。
【0041】
上述したように、酸素雰囲気で燃料を燃焼するボイラと、ボイラ後流で二酸化炭素を除去する二酸化炭素回収装置と、ボイラ後流から分岐して、燃焼排ガスをボイラに戻す配管と、二酸化炭素回収装置より上流でボイラ後流に硫黄酸化物を除去する脱硫装置及び硫酸ガスを除去する硫酸除去装置とを設ける二酸化炭素回収型発電システムにより、二酸化炭素回収装置の使用温度で、硫酸ガスが液化しない濃度にまで、二酸化炭素回収装置の上流で、燃焼排ガス中の硫酸ガスを除去することができる。
【0042】
また、ボイラ後流から分岐して、燃焼排ガスをボイラに戻す配管を有し、燃焼排ガスをボイラに戻す分岐点より後流に、硫酸ガスを除去する前記硫酸除去装置を設ける二酸化炭素回収型発電システムにより、二酸化炭素回収装置で硫酸ガスが液化しないようにして部材腐食を防ぐとともに、硫酸除去装置を小型化することができる。
【0043】
また、脱硫装置の後流に水分を除去する脱水装置を有し、脱水装置の上流に硫酸除去装置を設ける二酸化炭素回収型発電システムにより、脱水装置で硫酸ガスが液化しないようにすることができる。
【実施例2】
【0044】
使用した硫酸吸着剤は廃棄物となるが、活性炭のように石炭と同じ炭素質のものであれば、ボイラに供給し、燃料として使用することができ、廃棄物にならなくなる。
【0045】
さらに硫酸吸着剤に吸着した硫酸は、1000℃以上の高温燃焼により、硫酸ガスではなくSOxとして燃焼排ガス中に放出されるため、硫酸ガス濃度が増加することにはならない。また、燃焼排ガス中の硫酸ガス濃度はSOx濃度の数%にしかならないため、SOx濃度が極端に増加することはない。
【0046】
このように、硫酸吸着剤は炭素質のものが望ましく、石炭火力発電システムでは燃料である石炭を使うことができる。さらに、石炭火力発電では、石炭とバイオマス燃料の混合燃焼が実施されており、バイオマス燃料も硫酸吸着剤となる。
【0047】
硫酸吸着剤が、微粉炭のように小粒子であれば、硫酸除去装置は循環流動層装置を用いればよく、塊状炭であれば充填層装置を用いればよい。
【0048】
図3に本発明の硫酸吸着剤を燃料として使用する二酸化炭素回収型発電システムを示す。硫酸除去装置7に硫酸吸着剤ホッパ31を接続し、必要に応じて硫酸吸着剤を投入できるようにした。
【0049】
硫酸吸着剤が塊状炭の場合、吸着済の塊状炭は、硫酸吸着剤輸送管32によって塊状炭を貯蔵する石炭ホッパ10に輸送し、石炭粉砕機11で微粉炭にして、燃料として使用する。硫酸吸着剤が微粉炭の場合は、微粉炭搬送管33に合流させ、ボイラ1に供給すればよい。
【0050】
上述したように、硫酸吸着剤が活性炭、あるいはバイオマス燃料、あるいは石炭とすることにより、硫酸吸着後の硫酸吸着剤をボイラの燃料として使用し、使用済の硫酸吸着剤を有効利用し、硫酸吸着剤が廃棄物にならないようにすることができる。
【実施例3】
【0051】
石炭燃焼の排ガスには、水銀ガスが含まれる。水銀ガスも硫酸ガス同様、温度低下で液化し、機器の部材に付着し、部材を腐食させる。
【0052】
硫酸吸着剤である活性炭,石炭およびバイマス燃料は、燃焼排ガス中の水銀ガスも吸着することができるため、硫酸吸着装置後流の機器、例えば、−80℃以下に冷却する二酸化炭素回収装置での水銀液化を防ぎ、装置部材を保護することができる。
【0053】
しかしながら、硫酸を吸着した硫酸吸着剤は、水銀ガスを吸着する能力が低下する。特に、液体の硫酸ミストを硫酸吸着剤が吸着すれば、硫酸吸着剤の表面が液体で覆われ、水銀ガスの吸着能力は激減する。したがって、硫酸除去装置で除去できなかった水銀ガスを除去する装置が必要になる。
【0054】
図4に本実施例の硫酸除去装置と水銀除去装置を設けた二酸化炭素回収型発電システムを示す。水銀除去装置13を硫酸除去装置7の後流に設けた。水銀除去装置13も硫酸除去装置7同様、燃焼排ガスを循環させる分岐点28より後流とし、処理ガス量の少なくすることで、小型化することができる。
【0055】
燃焼排ガス中の水銀ガスは、金属水銀ガスと塩化水銀ガスが存在する。塩化水銀ガスは、石炭灰への吸着性があり、さらに、水への溶解性もある。石炭灰へ吸着した塩化水銀は、脱塵装置5で除去され、燃焼排ガス中の塩化水銀は脱硫装置6でも除去される。さらに、硫酸除去装置7に投入した硫酸吸着剤である活性炭、石炭あるいはバイマス燃料でも除去される。一方、金属水銀ガスは、石炭灰への吸着性がなく、水への溶解性もないため、脱塵装置5,脱硫装置6を素通りする。さらに、硫酸除去装置7における硫酸吸着剤,活性炭,石炭およびバイマス燃料への吸着も少ない。
【0056】
硫酸除去装置で除去できない水銀ガスは金属水銀ガスである。したがって、水銀除去装置13は、金属水銀ガスを除去できる装置であることが望ましい。金属水銀ガスを吸着する物質として、ニッケル合金、例えばSUSが挙げられる。水銀ガスとニッケルが反応し、アマルガムを形成する。水銀除去装置にニッケル合金を吸着剤として投入することが望ましい。
【0057】
上述したように、硫酸除去装置の後流に水銀除去装置を設けることにより、硫酸除去装置で除去できなかった水銀ガスを除去することができる。
【実施例4】
【0058】
硫酸吸着剤は、硫酸ガスを吸着し続けると、吸着平衡あるいは吸着飽和になり、吸着できなくなる。したがって、適宜、吸着していない硫酸吸着剤を補充するとともに、吸着した硫酸吸着剤を抜き出す必要がある。
【0059】
図5に本発明の硫酸吸着剤の入れ替えシステムを示す。硫酸除去装置は、塊状炭を充填した充填層装置を想定し、燃焼排ガスを充填層の下方から上方に流すようにした。硫酸吸着剤ホッパ31と硫酸除去装置7を接続する配管途中に硫酸吸着剤投入バルブ41で未使用の硫酸吸着剤を投入し、硫酸除去装置7に接続した硫酸吸着剤輸送管32の途中に硫酸吸着剤排出バルブ42で硫酸を吸着した硫酸吸着剤を排出する。
【0060】
硫酸除去装置出口に、硫酸濃度計測装置44を設け、燃焼排ガス中の硫酸濃度を計測できるようにした。硫酸吸着剤制御装置43は、計測した硫酸濃度を取り込み、計測濃度と上限濃度を比較し、計測濃度が上限濃度を超えた時に硫酸吸着剤投入バルブ41と硫酸吸着剤排出バルブ42の開閉操作する信号を発信する機能を有する。硫酸濃度の上限値は、最も低温で使用する二酸化炭素回収装置で硫酸ガスが液化しない濃度であり、二酸化炭素回収装置の使用温度における硫酸ガスの飽和蒸気圧から安全率を乗じて設定すればよい。
【0061】
図6に本発明の硫酸吸着剤の入れ替え制御方法を示す。STEPIでは、硫酸濃度計測装置で計測した硫酸濃度CH2SO4を入力し、硫酸濃度の上限値C*H2SO4と比較する。CH2SO4<C*H2SO4なる関係の時は、二酸化炭素回収装置で硫酸ガスは液化しないため、引続き硫酸濃度の監視を継続する。
【0062】
硫酸吸着剤の吸着性能が低下し、CH2SO4>C*H2SO4なる関係になると、二酸化炭素回収装置で硫酸ガスが液化するためSTEPIIに進む。硫酸吸着剤投入バルブBinをOPENし、未使用の硫酸吸着剤を投入する。次に、STEPIIIに進み、硫酸吸着剤排出バルブBoutをOPENし、硫酸を吸着した硫酸吸着剤を排出する。
【0063】
+ΔWは1回の硫酸吸着剤の投入量である。この値を大きく設定すれば、STEPIIで硫酸除去装置容量以上の硫酸吸着剤が入る可能性がある。燃焼排ガスの通気に悪影響を及ぼすことが考えられるため、装置容量に適合した+ΔWを設定することが望ましい。一方、−ΔWは1回の硫酸吸着剤の排出量である。投入と排出のΔWを等しくすることにより、装置内の硫酸吸着剤量を一定保持させる。
【0064】
硫酸吸着剤投入バルブおよび硫酸吸着剤排出バルブを同一のロータリーバルブとし、その回転数,稼動時間の条件を合わせることにより投入と排出のΔWを等しくする。あるいは、硫酸吸着剤ホッパ、および硫酸除去装置にロードセルを設け、重量変化を計測することにより、投入と排出のΔWを等しくする。
【0065】
硫酸吸着剤の入れ換え操作により吸着性能を回復させ、CH2SO4<C*H2SO4なる関係を保持する。
【0066】
上述したように、硫酸除去装置の燃焼排ガス出口に硫酸濃度計測器を設け、該計測値を読み込み、所定硫酸濃度以上で硫酸吸着剤の投入バルブを開とし、未使用の硫酸吸着剤を投入し、かつ、硫酸吸着剤の排出バルブを開とし、硫酸除去装置内の硫酸が吸着した硫酸吸着剤を排出する制御装置を有することにより硫酸吸着剤の吸着性能を適切に管理することができる。
【0067】
尚、STEPIIとSTEPIIIは状況に応じて順序を逆にしても良い。
【0068】
上述した制御装置は、メモリやCPUを備えたコンピュータなどで実施することができ、また装置の有する機能としてのSTEPI〜IIIの処理などはプログラムモジュールであり、モジュールを読み込んでコンピュータに実行させることで各機能を実施することができる。データは記憶装置に記憶し、処理する際に読み込むことができる。また、プログラムモジュールを記録した記録媒体をコンピュータに読み込ませることにより制御装置の各機能を実施可能である。
【0069】
尚、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0070】
1 ボイラ
2 脱硝装置
3 エアーヒータ
4 ガスヒータ
5 脱塵装置
6 脱硫装置
7 硫酸除去装置
8 脱水装置
9 二酸化炭素回収装置
10 石炭ホッパ
11 石炭粉砕機
12 酸素製造装置
13 水銀吸着装置
21 燃焼排ガス
22 循環ガス
23 水
24 二酸化炭素
25 不凝縮性排ガス
26 空気
27 酸素
28 分岐点
31 硫酸吸着剤ホッパ
32 硫酸吸着剤輸送管
33 微粉炭搬送管
41 硫酸吸着剤投入バルブ
42 硫酸吸着剤排出バルブ
43 硫酸吸着剤制御装置
44 硫酸濃度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素雰囲気で燃料を燃焼するボイラと、ボイラ後流で二酸化炭素を除去する二酸化炭素回収装置と、ボイラ後流から分岐して、燃焼排ガスをボイラに戻す配管と、前記二酸化炭素回収装置より上流でボイラ後流に硫黄酸化物を除去する脱硫装置及び硫酸ガスを除去する硫酸除去装置とを設けることを特徴とする二酸化炭素回収型発電システム。
【請求項2】
請求項1記載の二酸化炭素回収型の発電システムにおいて、
ボイラ後流から分岐して、燃焼排ガスをボイラに戻す配管を有し、燃焼排ガスをボイラに戻す分岐点より後流に、硫酸ガスを除去する前記硫酸除去装置を設けることを特徴とする二酸化炭素回収型発電システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の二酸化炭素回収型の発電システムにおいて、前記脱硫装置の後流に水分を除去する脱水装置を有し、前記脱水装置の上流に前記硫酸除去装置を設けることを特徴とする二酸化炭素回収型発電システム。
【請求項4】
請求項1から3記載の二酸化炭素回収型発電システムにおいて、前記硫酸除去装置内に硫酸吸着剤として粉体、あるいは塊状体を挿入することを特徴とする二酸化炭素回収型発電システム。
【請求項5】
請求項4記載の二酸化炭素回収型発電システムにおいて、前記硫酸吸着剤が活性炭、あるいはバイオマス燃料、あるいは石炭であることを特徴とする二酸化炭素回収型発電システム。
【請求項6】
請求項5記載の二酸化炭素回収型発電システムにおいて、前記硫酸吸着剤が、硫酸を吸着した後、前記硫酸除去装置から抜き出され、前記ボイラの燃料として供給されることを特徴とする二酸化炭素回収型発電システム。
【請求項7】
請求項1から6記載の二酸化炭素回収型の発電システムにおいて、前記硫酸除去装置の後流に水銀除去装置を設けることを特徴とする二酸化炭素回収型の発電システム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の二酸化炭素回収型発電システムにおいて、前記硫酸除去装置に硫酸吸着剤を投入する配管が接続され、該配管途中に硫酸吸着剤を投入する投入バルブと、前記硫酸除去装置に硫酸吸着剤を排出する配管が接続され、該配管途中に硫酸吸着剤を排出する排出バルブを有し、前記硫酸除去装置の燃焼排ガス出口に硫酸濃度計測器を設け、該計測値を読み込み、所定硫酸濃度以上で硫酸吸着剤の投入バルブを開とし、未使用の硫酸吸着剤を投入し、かつ、硫酸吸着剤の排出バルブを開とし、硫酸除去装置内の硫酸が吸着した硫酸吸着剤を排出する制御装置を有することを特徴とする二酸化炭素回収型発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−72887(P2011−72887A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225921(P2009−225921)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】