説明

二酸化炭素溶解装置、二酸化炭素分離装置および海藻工場

【課題】 二酸化炭素を高濃度で水に溶解可能な二酸化炭素溶解装置を提供する。
【解決手段】 圧力容器11と、水導入手段13と、二酸化炭素含有ガス導入手段12と、二酸化炭素含有水導出手段14とを備え、前記圧力容器11内部の下部に、二酸化炭素含有水15が貯留され、前記二酸化炭素含有ガス導入手段12により、前記圧力容器11の前記二酸化炭素含有水15の貯留部よりも上側空間16に、二酸化炭素含有ガス22が導入され、前記水導入手段13により、前記圧力容器11の前記上側空間16に水21が導入され、前記二酸化炭素含有水導出手段14により、前記圧力容器11内に貯留された二酸化炭素含有水15が外部に導出可能であり、前記上側空間16が、大気圧よりも加圧されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素溶解装置、二酸化炭素分離装置および海藻工場に関する。
【背景技術】
【0002】
石油等の化石燃料の枯渇等の資源問題および大気中の二酸化炭素の低減等の環境問題を解決する手段として、サトウキビおよびトウモロコシ等の植物を発酵させて製造するバイオエタノールが注目されている。しかしながら、サトウキビおよびトウモロコシ等のバイオエタノールの原料は、そもそも食糧として生産されるものであり、開発途上国の食糧問題とリンクして問題視されている。この問題を解決するために、海洋で藻類を培養し、培養した藻類をバイオエタノールの原料にすることが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−11721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の藻類の培養は、培養容器、培養する藻類の種類、培養条件等のハード面での検討はあるが、藻類の生育に必要な二酸化炭素の供給に関しては、検討が不十分である。一般的な気体の溶解方法は、水にガスを噴射する方法(バブリング)であるが、この方法では、二酸化炭素を十分に水に溶解させることはできない。二酸化炭素は、地球温暖化ガスとして削減が求められているが、藻類にとっては重要な栄養源であり、二酸化炭素ガスの削減と藻類の育成効率の向上の観点から、二酸化炭素ガスを高濃度で水に溶解する技術が求められている。
【0005】
そこで、本発明は、二酸化炭素を高濃度で水に溶解可能な二酸化炭素溶解装置、それをもちいた二酸化炭素分離装置および海藻工場の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の二酸化炭素溶解装置は、
圧力容器と、水導入手段と、二酸化炭素含有ガス導入手段と、二酸化炭素含有水導出手段とを備え、
前記圧力容器内部の下部に、二酸化炭素含有水が貯留され、
前記二酸化炭素含有ガス導入手段により、前記圧力容器の前記二酸化炭素含有水の貯留部よりも上側空間に、二酸化炭素含有ガスが導入され、
前記水導入手段により、前記圧力容器の前記上側空間に水が導入され、
前記二酸化炭素含有水導出手段により、前記圧力容器内に貯留された二酸化炭素含有水が外部に導出可能であり、
前記上側空間が、大気圧よりも加圧されている、
ことを特徴とする。
【0007】
つぎに、本発明の二酸化炭素分離装置は、
二酸化炭素ガスおよび二酸化炭素ガス以外のガスを含む混合ガスから、二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離装置であって、
前記本発明の二酸化炭素溶解装置を含み、
前記装置がさらに、二酸化炭素ガス分離後のガスを導出する分離後ガス導出手段を含み、
前記装置において、前記混合ガスが前記二酸化炭素含有ガス導入手段によって、前記圧力容器の上側空間に導入され、
前記上側空間において、前記混合ガスの二酸化炭素ガスが、噴射された水に溶解し、
前記上側空間において、二酸化炭素分離後のガスが、前記分離後ガス導出手段によって前記圧力容器外に導出される
ことを特徴とする。
【0008】
つぎに、本発明の海藻工場は、
海藻培養槽、栄養成分供給手段、光照射手段および二酸化炭素供給手段を備えた海藻工場であって、
前記二酸化炭素供給手段が、請求項1から4のいずれか一項に記載の二酸化炭素溶解装置であり、前記二酸化炭素溶解装置により、二酸化炭素含有海水が前記海藻培養槽に供給される
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の二酸化炭素溶解装置によれば、二酸化炭素ガスを高濃度で水に溶解可能である。また、本発明の二酸化炭素溶解装置を用いた二酸化炭素分離装置では、高い効率でかつ低いコストで混合ガスから二酸化炭素ガスを分離可能である。そして、本発明の二酸化炭素溶解装置を用いた海藻工場では、高濃度で二酸化炭素が溶解した海水を海藻に供給可能であるから、海藻を効率的に培養可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の二酸化炭素溶解装置の構成の一例を示す構成図である。
【図2】図2は、前記例における圧力容器内壁のその他の例を示す構成図である。
【図3】図3は、前記例における圧力容器天井内壁のその他の例を示す構成図である。
【図4】図4は、本発明の二酸化炭素分離装置の構成の一例を示す構成図である。
【図5】図5は、本発明の二酸化炭素溶解装置の構成のその他の例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の二酸化炭素溶解装置において、前記水の導入が、前記圧力容器の天井側に向かって噴射されることが好ましい。
【0012】
本発明の二酸化炭素溶解装置において、前記圧力容器の内壁形状が、凹凸形状であることが好ましい。
【0013】
本発明の二酸化炭素溶解装置において、前記圧力容器の天井内壁の形状が、上側に突出した凸形状であることが好ましい。
【0014】
本発明の二酸化炭素溶解装置において、前記水の噴射が、シャワー状の噴射であることが好ましい。
【0015】
本発明の二酸化炭素溶解装置において、前記圧力容器に開放弁が取り付けられていることが好ましい。この場合、前記解放弁は、一定間隔で解放されることが好ましい。
【0016】
本発明の二酸化炭素分離装置において、前記混合ガスが、天然ガスであることが好ましい。
【0017】
つぎに、本発明について例をあげて説明する。ただし、本発明は、以下の例に限定および制限されない。
【0018】
(実施形態1)
図1の構成図に、本発明の二酸化炭素溶解装置の一例を示す。図示のように、本実施形態の二酸化炭素溶解装置1は、圧力容器11と、水導入手段(パイプ)13と、二酸化炭素含有ガス導入手段(パイプ)12と、二酸化炭素含有水導出手段(パイプ)14とを備える。圧力容器11内部の下部には、二酸化炭素含有水15が貯留されている。圧力容器11の天井側には、二酸化炭素含有ガス導入手段(パイプ)12の一端が挿入され、これにより、圧力容器11の二酸化炭素含有水15の貯留部よりも上側空間16に、二酸化炭素含有ガス22が導入される。二酸化炭素含有ガス導入手段(パイプ)12の途中にはバルブ121が取り付けられている。圧力容器11の側部には、水導入手段(パイプ)13の一端が挿入され、これにより、圧力容器11の前記上側空間16に水が導入される。圧力容器11の底部付近には、二酸化炭素含有水導出手段(パイプ)14の一端が挿入され、これにより、圧力容器11内に貯留された二酸化炭素含有水15が外部に導出可能である。
【0019】
本実施形態の二酸化炭素溶解装置において、二酸化炭素ガスの水への溶解は、例えば、つぎのようにして実施される。
【0020】
まず、圧力容器11の下部に、二酸化炭素含有水導出手段(パイプ)14により、二酸化炭素含有水15を導入して貯留する。この状態で、二酸化炭素含有ガス導入手段(パイプ)12により、圧力容器11の上側空間に二酸化炭素含有ガス22を導入すると共に、水導入手段(パイプ)13により圧力容器11の上側空間に水を導入し、圧力容器11の天井側に噴射する。図1において、21は、噴射された水を示す。この場合、圧力容器11内部において、上側空間の圧力が、貯留部の二酸化炭素含有水の圧力よりも高い状態とする。このようにすることによって、噴射された水21に、二酸化炭素ガスが高濃度で溶解する。
【0021】
圧力容器11内部において、上側空間16の圧力は、大気圧よりも加圧されている。上側空間16の圧力は、例えば、大気圧×1.8±10%の範囲である。また、圧力容器11内部において、上側空間16(A)と貯留部の二酸化炭素含有水15(B)との容積比は、例えば、A:B=8:2±10%の範囲である。
【0022】
本発明において、圧力容器11の内壁面の形状は、図2に示すように、凹凸形状であることが好ましい。凹凸形状であれば、圧力容器内壁に付着した水が落下するまでの時間が長くなり、その結果、二酸化炭素ガスの溶解濃度がさらに上がるからである。
【0023】
本発明において、圧力容器11の天井内壁面の形状は、図3に示すように、上側に突出した凸形状であるが好ましい。凸形状であれば、圧力容器11の天井内壁面に付着した水が、側壁面に誘導されて落下するため、水が落下するまでの時間が長くなり、その結果、二酸化炭素ガスの溶解濃度がさらに上がるからである。
【0024】
本発明において、圧力容器11内部での水の噴射は、シャワー状の噴射であることが好ましい。このため、水導入手段(パイプ)13の先端部には、シャワー口を取り付けることが好ましい。
【0025】
本発明において、二酸化炭素ガスを溶解させる水は、特に制限されず、例えば、河川の水、湖水、海水、水道水等の水があげられ、さらに、これらの水に海藻等の生育に必要な栄養素が含まれた水であってもよい。
【0026】
本発明において、二酸化炭素含有ガスは、特に制限されず、例えば、火力発電所の排ガス、天然ガス、工場の排ガス等があげられる。
【0027】
本発明において、圧力容器11には、開放弁を取り付けることが好ましい。例えば、火力発電所および工場の排ガス、天然ガス等は、二酸化炭素以外のガスを含む混合ガスである。このような混合ガスを圧力容器11に導入した場合、二酸化炭素ガスは水に溶解しても他のガスが溶解せず、圧力容器11内の圧力が上昇し、この結果、二酸化炭素ガスの水への溶解を阻害する場合がある。このため、解放弁を取り付けて、二酸化炭素ガス以外のガスで圧力容器11内部の圧力が高まった時に、解放弁を解放して二酸化炭素以外のガスを外に逃がすことが好ましい。解放弁は、パイプに取り付け、このパイプの一端を圧力容器11内に挿入してもよい。また、二酸化炭素以外のガスは、パイプを通じて、別の容器内に案内する等して処理してもよい。解放弁の取付箇所は、例えば、圧力容器11の天井部である。圧力弁の解放は、自動制御で、一定間隔で解放と閉止を繰り返してもよいし、解放圧力を設定して一定圧力になったら解放するようにしてもよい。
【0028】
(実施形態2)
図4に、本発明の二酸化炭素分離装置の構成の一例を示す。図4において、図1と同一部分には同一符号を付している。図示のように、本実施形態の二酸化炭素分離装置は、二酸化炭素ガス分離後のガスを導出する分離後ガス導出手段(パイプ)17の一端が、圧力容器11の上側に挿入されている。また、分離後ガス導出手段(パイプ)17の途中にはバルブ171が取り付けられている。これ以外は、実施形態1の二酸化炭素溶解装置と同じ構成である。
【0029】
本実施形態の二酸化炭素分離装置において、二酸化炭素ガスの分離を混合ガスとして天然ガスを例にとり説明する。図示のように、二酸化炭素含有ガス導入手段(パイプ)12により、天然ガス(二酸化炭素とメタンガスの混合ガス)23が、圧力容器11内部の上側空間16に導入される。そして、圧力容器11の上側空間16において、天然ガス23の二酸化炭素ガスが、噴射された水21に溶解し分離される。そして、圧力容器11の上側空間16において、二酸化炭素分離後のガス(メタンガス)が、分離後ガス導出手段(パイプ)17によって圧力容器11外に導出される。
【0030】
本発明の二酸化炭素分離装置では、二酸化炭素を水に溶解するという手法を採用し、かつ構造も簡単でエネルギーコストも低い。したがって、本発明の二酸化炭素分離装置は、ガス分離膜等を用いた従来の分離装置よりも低コストかつ高純度で二酸化炭素を分離可能である。
【0031】
(実施形態3)
図5に、本発明の二酸化炭素溶解装置のその他の例を示す。図5において、図1と同一部分には同一符号を付している。図示のように、本実施形態の二酸化炭素溶解装置は、複数の圧力容器11を備え、各圧力容器11に、水導入手段(パイプ)13、二酸化炭素含有ガス導入手段(パイプ)12および二酸化炭素含有水導出手段(パイプ)14が、取り付けられている。水導入手段(パイプ)13、二酸化炭素含有ガス導入手段(パイプ)12および二酸化炭素含有水導出手段(パイプ)14は、それぞれ、一本のパイプから、各圧力容器11付近で分岐した構造をとっている。これら以外は、実施形態1と同じ構成である。本実施形態のような構成にすれば、二酸化炭素溶解装置を大型化して処理能力を大きくすることが可能となる。また、同様に、実施形態2の二酸化炭素分離装置も、本実施形態のように構成することにより、大型化して処理能力を大きくすることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上、説明したように、本発明は、水に高濃度で二酸化炭素ガスを溶解させることができるため、二酸化炭素溶解水を必要とする海藻工場に適しており、その他、混合ガスから二酸化炭素ガスを分離する必要がある分野にも適しており、その用途は制限されず、広い用途に適用可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 二酸化炭素溶解装置
11 圧力容器
12 二酸化炭素含有ガス導入手段(パイプ)
13 水導入手段(パイプ)
14 二酸化炭素含有水導出手段(パイプ)
15 二酸化炭素含有水
16 上側空間
17 分離後ガス導出手段(パイプ)
21 水
22 二酸化炭素含有ガス
23 混合ガス
121 バルブ
171 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力容器と、水導入手段と、二酸化炭素含有ガス導入手段と、二酸化炭素含有水導出手段とを備え、
前記圧力容器内部の下部に、二酸化炭素含有水が貯留され、
前記二酸化炭素含有ガス導入手段により、前記圧力容器の前記二酸化炭素含有水の貯留部よりも上側空間に、二酸化炭素含有ガスが導入され、
前記水導入手段により、前記圧力容器の前記上側空間に水が導入され、
前記二酸化炭素含有水導出手段により、前記圧力容器内に貯留された二酸化炭素含有水が外部に導出可能であり、
前記上側空間が、大気圧よりも加圧されている、
ことを特徴とする二酸化炭素溶解装置。
【請求項2】
前記水の導入が、前記圧力容器の天井側に向かって噴射されることを特徴とする請求項1記載の二酸化炭素溶解装置。
【請求項3】
前記圧力容器の内壁形状が、凹凸形状であることを特徴とする請求項1または2記載の二酸化炭素溶解装置。
【請求項4】
前記圧力容器の天井内壁の形状が、上側に突出した凸形状であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の二酸化炭素溶解装置。
【請求項5】
前記水の噴射が、シャワー状の噴射であることを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の二酸化炭素溶解装置。
【請求項6】
前記圧力容器に開放弁が取り付けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の二酸化炭素溶解装置。
【請求項7】
前記開放弁が、一定間隔で解放されることを特徴とする請求項6記載の二酸化炭素溶解装置。
【請求項8】
二酸化炭素ガスおよび二酸化炭素ガス以外のガスを含む混合ガスから、二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離装置であって、
請求項1から7のいずれか一項に記載の二酸化炭素溶解装置を含み、
前記装置がさらに、二酸化炭素ガス分離後のガスを導出する分離後ガス導出手段を含み、
前記装置において、前記混合ガスが前記二酸化炭素含有ガス導入手段によって、前記圧力容器の上側空間に導入され、
前記上側空間において、前記混合ガスの二酸化炭素ガスが、噴射された水に溶解し、
前記上側空間において、二酸化炭素分離後のガスが、前記分離後ガス導出手段によって前記圧力容器外に導出される
ことを特徴とする二酸化炭素分離装置。
【請求項9】
前記混合ガスが、天然ガスであることを特徴とする請求項8記載の二酸化炭素分離装置。
【請求項10】
海藻培養槽、栄養成分供給手段、光照射手段および二酸化炭素供給手段を備えた海藻工場であって、
前記二酸化炭素供給手段が、請求項1から7のいずれか一項に記載の二酸化炭素溶解装置であり、前記二酸化炭素溶解装置により、二酸化炭素含有海水が前記海藻培養槽に供給される
ことを特徴とする海藻工場。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−230066(P2011−230066A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103185(P2010−103185)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(511094428)一般財団法人海洋バイオマス推進機構 (1)
【Fターム(参考)】