説明

二重フランジ軽量形鋼

【課題】構築物、低層建築物の鉄骨構造などに用いられる軽量形鋼材であって、断面性能が高い軽量形鋼材を提供すること。
【解決手段】長尺鋼板の幅方向を断面形状略コ字に折曲形成され、前記略コ字断面形状のフランジ1a先端から180度折返し曲げて鋼板を二重にしたフランジ1bと、ウェブ2aの中央部が単板で構成されている軽ミゾ形鋼、および長辺鋼板の幅方向を断面形状略H字に折曲形成され、フランジ11aの先端が内向きにリップ13を有し、前記リップ11aの先端から180度折返し曲げで二重鋼板のリップ13とフランジ11a、およびウェブ12aの中央部が単板で構成されているリップ軽H形鋼をを特徴とする二重フランジ軽量形鋼。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構築物、低層建築物の鉄骨構造などに用いられる軽量形鋼材であって、断面性能を重視した軽量形鋼材の形状(フランジが二重)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺鋼板を幅方向に成形した軽量形鋼は、平板状の鋼板に比較して高い剛性を示し、ハット型、コ型、C型、Z型、L型、ロ型等の断面形状が一般的である。特開2003−328432号および特開2001−55807号公報(第2公知例)では、低層建築物の鉄骨構造の骨組み、例えば、柱、梁および外壁パネルの枠材に軽量形鋼材を使用した例が開示されている。
【0003】
また、軽量形鋼の製造方法としては、安全性(軽量形鋼の取り扱い時)を強調した製法が、特開2002−273521号(第3公知例)で開示され、特開2003−147900号公報(第4公知例)では、断面性能を強調した製法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−328432号
【特許文献2】特開2001−55807号
【特許文献3】特開2002−273521号
【特許文献4】特開2003−147900号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般に使用されている軽量形鋼の断面性能は、必ずしも効率的な断面形状とはいえず、前記第3および第4公知例に係わる開示でも効率的な断面形状とは言い難い。先ず一般的な軽量形鋼は、長尺鋼板を幅方向に折曲げ加工することによって製造されることから、軽量形鋼の断面は均一な厚みになっている。例えば、リップみぞ形鋼でのウェブと、フランジと、リップ共に同じ板厚になっている。そのため、断面二次モ−メントおよび断面係数等の断面性能が、必特開2003−147900号ずしも効率的な断面形状とはいえず、重量あたりの断面性能が低いのが現状である。
【0006】
次いで、第3公知例の場合は、安全性の高い軽量形鋼の製法を目的としており、フランジ部の端部がR状になるため、微少ながら断面積が減少し、断面性能は微少ながら低くなり強度面で問題がある。
【0007】
また、第4公知例の場合は、断面二次モ−メントを大きくするため、フランジ先端部分の板厚を最大1.5倍に押圧している製造方法であるが、鋼材(冷延鋼板)を一段階で押圧することは現実的でなく、比較的低い押圧力で、分割して繰り返し押圧することが開示されているが、設備装置費用及び加工時間(経済スピ−ド)等に難点がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく検討した結果、断面二次モ−メントに有効な箇所、すなわち、部材の中立軸より一番距離のあるフランジ部とリップ部の鋼板を、二枚重ね合わせて断面積を倍増させることで、断面二次モ−メントを大きくすることができ、それによって、断面性能が高い軽量形鋼を得ることに想到した。その要旨とするところは以下の通りである。
【0009】
(1)長尺鋼板の幅方向を断面形状略コ字に折曲形成され、前記略コ字断面形状のフランジ先端から180度折返し曲げて鋼板を二重にしたフランジと、ウェブの中央部が単板で構成されている軽ミゾ形鋼を特徴とする二重フランジ軽量形鋼。
【0010】
(2)長辺鋼板の幅方向を断面形状略C字に折曲形成され、前記C字断面形状のリップ先端から180度折返し曲げて鋼板を二重にしたリップとフランジ、および単板のウェブで構成されているリップみぞ形鋼を特徴とする二重フランジ軽量形鋼。
【0011】
(3)長尺鋼板の幅方向を断面形状略H字に折曲形成され、前記略H字断面形状のフランジ先端から180度折返し曲げて鋼板を二重にしたフランジと、ウェブの中央部が単板で構成されている軽H形鋼を特徴とする二重フランジ軽量形鋼。
【0012】
(4)長辺鋼板の幅方向を断面形状略H字に折曲形成され、フランジの先端が内向きにリップを有し、前記のリップ先端から180度折返し曲げで二重鋼板のリップとフランジ、およびウェブの中央部が単板で構成されているリップ軽H形鋼を特徴とする二重フランジ軽量形鋼。
【発明の効果】
【0013】
(A)本発明に係わる二重フランジ軽量形鋼によれば、フランジとリップ面(断面二次モ−メントに有効な箇所)の鋼板を二重にして断面積を倍増し、断面二次モ−メンを大きくしている。したがって、同じ外形寸法であっても従来技術より効率的な断面形状となり、高い断面性能が得られる。断面二次モ−メントの方向性から、鉄骨構造の梁部材としては最適な鋼材である。
【0014】
(B)本発明に係わる二重フランジ軽量形鋼によれば、フランジの長手方向に沿った端部は、従来の切断時のバリが付着した角張った断面でなく、180度曲げ加工のR状である。したがって、当該端部に手や身体の一部が触れても、身体を傷つけるような事故は起きにくい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係わる二重フランジ軽量形鋼の軽ミゾ形鋼の一例を示す断面図である。
【図2】実施例1の製造手順(方法)を示す説明図である。
【図3】本発明に係わる二重フランジ軽量形鋼のリップみぞ形鋼の一例を示す断面図である。
【図4】本発明に係わる二重フランジ軽量形鋼の軽H形鋼の一例を示す断面図である。
【図5】実施例3の製造手順(方法)を示す説明図1である。
【図6】実施例3の製造手順(方法)を示す説明図2である。
【図7】実施例3の製造手順(方法)を示す説明図3である。
【図8】実施例3の製造手順(方法)を示す説明図4である。
【図9】本発明に係わる二重フランジ軽量形鋼のリップ軽H形鋼の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図1〜図9に基づいて、本発明を実施するための最良の形態を実施例で説明する。なお、軽量形鋼材の材質としては、溶融亜鉛めっき鋼板、溶融55%アルミニュウム−亜鉛合金めっき鋼板等、の金属材料で、1.2〜3.2mm程度の厚みが望ましいが、特に限定されるものではない。軽量形鋼材の成形加工する方法としては、引き抜き成形方法、プレス加工方法、ロ−ル成形方法等のいずれかで成形することができる。
(実施例1)
図1は本発明に係わる二重フランジ軽量形鋼の軽ミゾ形鋼の一例を示す断面図であり、図1は外フランジ1a、内フランジ1b、外ウェブ2a,および内ウェブ2bから構成されている。以下、これに沿って説明する。
【0017】
図2に示すように、長尺鋼板の長辺両方向端部を、先ず、外フランジ1aと内フランジ1bが接触するよう、折返し点ハを基点に180度折返し曲げを行い、次いで、図2および図1に示すように、折曲げ線イを基点にコの字曲げ成形加工を行い軽ミゾ形鋼に製造する。軽ミゾ形鋼のサイズは、ウェブ寸法100〜300mm程度、フランジ寸法50〜90mm程度、長さは6〜12m程度である。
【0018】
(実施例2)
図3は本発明に係わる二重フランジ軽量形鋼のリップみぞ形鋼の一例を示す断面図であり、図3は外フランジ1a、内フランジ1b、ウェブ2、およびリップ3から構成されている。以下、これに沿って説明する。
【0019】
先ず、長尺鋼板の長辺両方向端部から成形加工を行うが、前記の実施例1で既述した成形加工の手順で、コの字に折曲形成し、さらに、図3に示すように、折曲げ線イを基点に、直角に折曲形成してリップ3を製作し、リップみぞ形鋼を製造する。リップみぞ形鋼のサイズは、ウェブ寸法60〜150mm程度、フランジ寸法30〜50mm程度、リップ寸法10〜20mm程度、長さは6〜12m程度である。
【0020】
(実施例3)
図4は本発明に係わる二重フランジ軽量形鋼の軽H形鋼の一例を示す断面図であり、図4は外フランジ11a、内フランジは11bと、11C、およびロングウェブ12aと、ショ−トウェブ12bから構成されている。以下、これに沿って説明する。
【0021】
図5に示すように、長尺鋼板の長辺両方向端部を、先ず、ショ−トウェブ12bを直角にL曲げ加工を行い、次いで、図6に示すように、外フランジ11a寸法の約半分と内フランジ11c、が重なり合うよう折返し点ハを基点に180度折返し曲げを行い、続いて、図7に示すように、外フランジ11aと内フランジ11b接点の折曲げ線イで、コの字に曲げ成形加工を行う。さらに、図7および図8で示すように、折曲げ線ロの基点2ケ所を同時に曲げ加工を行い、軽H形鋼を製造する。軽H形鋼のサイズは、ウェブ寸法75〜200mm程度、フランジ寸法75〜100mm程度、長さは6〜12m程度である。
【0022】
(実施例4)
図9は本発明に係わる二重フランジ軽量形鋼のリップ軽H形鋼の一例を示す断面図であり、図9は外フランジ11a、内フランジは11bと、11C、ウェブはロングウェブ12aと、ショ−トウェブ12b、それに、リップ13から構成されている。以下、これに沿って説明する。
【0023】
先ず、長尺鋼板の長辺両方向端部から成形加工を行うが、図5〜図8に示すように、前記の実施例3で既述した成形加工の手順で行い、続いて、図9に示すように、折曲げ線イを基点に、直角に折曲形成してリップ13を製作し、リップ軽H形鋼を製造する。リップ軽H形鋼のサイズは、ウェブ寸法75〜200mm程度、フランジ寸法75〜100mm程度、リップ寸法20mm前後、長さは6〜12m程度である。
【0024】
なお、設計上さらに剛性を求められる場合は、図1に示している外ウェヴ2aと内ウェブ2b、または、図4と図9に示しているロングウェヴ12aとショ−トウェブ12bの接点を溶接し、剛性を確保することもできる。
【0025】
以上説明したように本発明に係わる二重フランジ軽量形鋼によれば、断面性能の高い軽量形鋼を得ることができ、また、取り扱い時の安全性も考慮した軽量形鋼であり、建築業界、特に鉄骨系住宅プレハブメ−カ−に与える効用は極めて大きい。
【符号の説明】
【0026】
1a 外フランジ
1b 内フランジ
2 ウェブ
2a 外ウェブ
2b 内ウェブ
3 リップ
11a 外フランジ
11b 内フランジ
11c 内フランジ
12a ロングウェブ
12b ショ−トウェブ
13 リップ
イ 折曲げ線
ロ 折曲げ線
ハ 折返し点







【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺鋼板の幅方向を断面形状略コ字に折曲形成され、前記略コ字断面形状のフランジ先端から180度折返し曲げて鋼板を二重にしたフランジと、ウェブの中央部が単板で構成されている軽ミゾ形鋼を特徴とする二重フランジ軽量形鋼。
【請求項2】
長辺鋼板の幅方向を断面形状略C字に折曲形成され、前記C字断面形状のリップ先端から180度折返し曲げて鋼板を二重にしたリップとフランジ、および単板のウェブで構成されているリップみぞ形鋼を特徴とする二重フランジ軽量形鋼。
【請求項3】
長尺鋼板の幅方向を断面形状略H字に折曲形成され、前記略H字断面形状のフランジ先端から180度折返し曲げて鋼板を二重にしたフランジと、ウェブの中央部が単板で構成されている軽H形鋼を特徴とする二重フランジ軽量形鋼。
【請求項4】
長辺鋼板の幅方向を断面形状略H字に折曲形成され、フランジの先端が内向きにリップを有し、前記のリップ先端から180度折返し曲げで二重鋼板のリップとフランジ、およびウェブの中央部が単板で構成されているリップ軽H形鋼を特徴とする二重フランジ軽量形鋼。
【請求項5】
長辺鋼板の幅方向を折曲形成し、フランジが二重形状である軽量形鋼の製造方法に関する前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の二重フランジ軽量形鋼。























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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