説明

二重導電帯で構成された並列構造を有する織物の発熱体及びその製造方法

【課題】一般的に用いられる電圧である100Vあるいは220Vの電源で使用可能な織物の発熱体を提供する。
【解決手段】織機を利用して発熱体を具現するにあたり、発熱体の各両端に二重導電帯31が形成される発熱体を産み出し、二重導電帯31の内側導電帯32の一定部分を切断すると共に、内側導電帯32と外側導電帯33との間に接続された一定数の発熱線11を切断するのみで、これらの発熱線11が一連の直列構造となる。このような方法を連続して複数回繰り返すことによって、電源が接続された外側導電帯33に全ての発熱線11が並列に連結されるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱体の各両端に二重導電帯を持つ織物の発熱体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の織物の発熱体は、例えば特許文献1に開示されており、多数の発熱線(金属の極細線)が導電線と共に織り込まれ、並列構造を有する織物の発熱体である。
【特許文献1】韓国実用新案登録第110067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の織機で織る発熱体の製法は、多数の金属細線である発熱線が、経糸方向に紡績糸の間に並列に並べられ、紡織と共に発熱体の上端及び下端の一定部分で緯糸方向の導電線と数回にわたって直交しながら一定部分が組まれて導電帯を成している。2つの導電帯の間が緯糸の紡績糸で埋められ、一つの発熱体が完成される。このような製法により製造された発熱体は、その構造に次のような短所を伴う。
【0004】
まず、並列に並べられる発熱線の個数と、これらの発熱線を有する発熱体の合成抵抗値とは、反比例の関係にある。従って、上記発熱体の耐久性を高めるため、あるいは発熱線の間の非発熱部分を減らし、熱分布を均一にするために、並列に並べられる発熱線の個数を増やすと、使用される電源電圧が相対的に下がる。このため、従来の製法で製造された織物の発熱体は、一般的に用いられる電圧である100Vあるいは220Vの電源では、当然使用できなくなる。(オームの法則 電圧=電流×抵抗 を参照のこと)。
【0005】
また、従来の製法で製造された織物の発熱体は、多数の発熱線が経糸方向に並べられて織られるため、紡織の過程で、織機のリードの往復運動による擦れと摩擦とにより、発熱線が損傷を受ける。このため、上記織物の発熱体は、使用中に発熱線が破断しやすいという問題点もある。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、一般的に用いられる電圧である100Vあるいは220Vの電源で使用可能な織物の発熱体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の織物の発熱体は、上記課題を解決するために、従来の方式で経糸として使用された発熱線を緯糸に転換して使用することによって、織機のリードとの摩擦損傷を無くし、経糸には一定の距離をおいて平行した二つの導電体を実現するために細線である導電線群が、紡績糸の整経(warping)されたビーム(beam)の各両端で緯糸の発熱線と組まれることにより二重導電帯を持つ織物の発熱体を完成することにあり、上記二重導電帯が有する内側導電帯の一部と、上記内側導電帯及び上記二重導電帯が有する外側導電帯の間に接続された発熱線の一部を切断することによって、半田付けのような別途の連結工程なしで一定の発熱線が直列に連結されるようにし、さらに、必要な面積に応じて上記の方法で連結された発熱線を複数回にわたって並列接続することにより、電源が接続された上記外側導電帶に発熱線の全てが並列に連結されるようになり、並列構造の長所をもつ高品質の織物の発熱体を実現することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の織物の発熱体は、以上のように、電源側から見て完全に並列構造になることで、一部の発熱線が破断しても発熱体全体としての機能が麻痺するという状況にならない。また、使用時に、発熱線が破断すると発熱体の抵抗値は相対的に増えるので、火災の危険性は理論上完全に0となり、耐久性を備えた上で均等な熱の分布を確保すると共に、発熱線及び導電帯の連結は、別途の端子処理や半田付けのような連結工程を必要とせず、穿孔だけで成り立つという特長も持つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の具体的な実施例を図1及び図2を用いて詳細に説明する。
【0010】
まず、図1を参照すると、織物の発熱体10の製織のために、準備段階において、導電線30を綜絖(heddle)に経通、即ち該綜絖に糸を通す作業を行う時、まず与えられた発熱体の所要幅の両端末から織端(waste selvedge)及び端の編み(binding)に必要な個数の紡績糸20を経通する。
【0011】
続いて負荷電流容量に十分な導電線30を順々に経通する。例えば、負荷容量500W級の場合には、リードとの摩擦損傷を勘案し、発熱線とのより確実に結合させるために、導電線30には、0.08mm×13本を1組とし15組程度の導電線を使用する。
【0012】
次に、内外の導電帯の間の絶縁距離、及び内外の導電帯の間に接続された発熱線を切断する際の作業の容易性を考慮し、15mm程度の幅に紡績糸20を経通して、負荷電流容量に十分対応できる本数の導電線30を経通した後、残りの部分は紡績糸20で経通を完了する。以後、紡織の過程を通じて、経糸の導電線30は、緯糸の発熱線11と重なり合って組まれることにより二重導電帯31が形成される。
【0013】
図2は、必要な面積による熱分布、耐久性及び発熱体の抵抗値等が勘案された設計仕様書に従い、二重導電帯31が備える内側導電帯32が有する導電体部32A、32B、32C及び32D、並びに内側導電帯32と外側導電帯33との間に接続されている発熱線11が有する発熱線部11V、11W、11X及び11Yを切断する。これにより、発熱線11A、11B及び11Cは、外側導電帯33の両側に直列連結すると同時に、この直列連結を繰り返して並列接続することによって、全ての発熱線を外側導電帯33の両側に並列に連結されるようにする。
【0014】
以上の方法により、本発明の要旨である二重導電帯として構成された並列構造を有する織物の発熱体が完成する。
【0015】
次に、以下の通り、本発明の内容を数式と図面を使って一つの最適な実施形態を具体的に説明する。
【0016】
使用電圧が100V、発熱体抵抗値が40Ω、負荷容量が250W級、発熱部の横の長さが120cm、及び発熱部の縦の長さが縦180cmである発熱体を作るとする。但し、発熱線1m当たりの抵抗値は、約297Ω程度のニクロム線を使用する。
【0017】
発熱体に必要となる発熱体抵抗値40Ωを実現させる方法としては色々あるが、経験上最善の方法としては、均一なる熱分布と耐久性を考慮し、並列に並べる数をなるべく多くする。従って、発熱線の抵抗値を増やすためには、直列に連結される部分を、できるだけ少なくする必要がある。
【0018】
従って、2本の発熱線の間隔を1cmとする場合、120cmの幅に並べられる発熱線の本数は、以下の式に従い121本となる。
【0019】
120cm÷1cm+1=121本
発熱線一本の抵抗値は、以下の式に従い534Ωとなる。
【0020】
1.8m×297Ω≒534Ω
図2では、内側導電帯32が有する発熱体部部32A、32B、32C及び32D、並びに内側導電帯32と外側導電帯33との間に接続されている発熱線11が有する発熱線部11V、11W、11X及び11Yをプレスで穿孔し、連結の輪を切るようにすれば、発熱線11A、11B及び11Cは、外側導電帯33の両側に直列に連結された構造をもつことになり、その合成抵抗値は、以下の式に従い1602Ωとなる。
【0021】
534Ω×3本=1602Ω
上記直列に連結された構造を、約40回並列に接続すると、必要な発熱体抵抗値40Ωを有する一つの完成された並列構造を有する織物の発熱体を実現することができる。
【0022】
1602Ω÷40=40Ω
なお、この発熱体抵抗値40Ωは、並列に接続された複数の抵抗の合成抵抗値Rを算出するための式:1/R=1/R+1/R+1/R+・・・1/Rに基づき算出されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る織物の発熱体の構成を示す図である。
【図2】図1に示された織物の発熱線と二重導電帯と切り開き方の例を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
10 織物の発熱体
11 発熱線
20 紡績糸
30 導電線
31 二重導電帯
32 内側導電帯
33 外側導電帯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織物として形成される発熱体において、その発熱体の各両端に二重の導電帯を持つことを特徴とする織物の発熱体。
【請求項2】
請求項1に記載の織物の発熱体の製造において、
上記二重導電帯は、内側導電帯と外側導電帯とを有し、
上記内側導電帯と上記外側導電帯との間に接続された発熱線及び上記内側導電帯の一部を切断することにより、残りの発熱線が上記外側導電帯に連結され、一連の直列構造となることを特徴とする発熱線の直列連結方法。
【請求項3】
請求項2に記載の発熱線の直列連結方法を複数回にわたって行うことにより並列接続することによって、上記発熱線の全てを上記外側導電帯の両側に並列連結となるように並列構造の発熱体の製造方法。
【請求項4】
発熱線の抵抗値を増やす方法であり、
導電帯の一部を切断することにより、上記発熱線の全てを一連の直列構造で結合されるようにする発熱線の連結方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−110902(P2009−110902A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284881(P2007−284881)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(507362568)バリアク株式會社 (1)
【Fターム(参考)】