説明

二重床構造

【課題】部屋の一部分に床暖房パネルを設置する場合でも、周囲に合板を使用することなく、コスト的に優れた二重床構造を提供する。
【解決手段】基礎床10上に配設した複数の支持脚11の上に、ベースパネル21及び捨貼材23を介して敷設された床暖房パネル22と、該床暖房パネル22の周囲に配置されるパーティクルボードからなるボーダー部材25とが設けられ、これらの上に床仕上げ材24が設けられており、床暖房領域から離れた位置では、支持脚11の上にベースパネル26を介して床仕上げ材24が設けられ、このベースパネル26及びボーダー部材25は、床暖房パネル22と捨貼材23との合計厚さと同じ厚さに設定され、床暖房パネル22の下方に配置される支持脚11よりも、床暖房領域から離れた位置でベースパネル26の下方に配置される支持脚11の方が高く設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリートスラブ等の基礎床上に支持脚を介して床パネルを支持した二重床構造に係り、特に床暖房パネルを敷設してなる二重床の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、集合住宅やオフィスビルなどの多くの建造物に二重床構造のものが採用されてきており、コンクリートスラブ等の基礎床と床パネルとの間に空間部を形成して、遮音性を高めるとともに、その空間部に設備配管等を設けることができるようになっている。
【0003】
この種の二重床として、特許文献1や特許文献2に記載の支持脚を利用した構造のものがある。この二重床は、基礎床上に支持脚を並べて、その上に床パネルを配置することにより、これら基礎床と床パネルとの間に空間部を形成したものである。また、特許文献3記載の二重床では、支持脚の上に床暖房パネルが設置された構造とされている。
【0004】
このような二重床構造のものは、空間部によって床パネルと基礎床とを離間させることにより遮音性を確保しているとともに、床パネルを支持している支持脚の防振ゴムにゴム等の弾性部材を使用して、床面上に物体を落下させても、その衝撃音が支持脚を経由して基礎床に伝達しにくいようにされている。
【特許文献1】特開平5−321443号公報
【特許文献2】特開平7−207894号公報
【特許文献3】特開2000−283479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献3に示されるような床暖房パネルを二重床上に敷設する場合、部屋の一部分のみを床暖房領域とし、残りの部分は普通の二重床構造とすることがある。このような場合に、床暖房パネルと壁との間を合板からなるボーダー部材によって埋めるようにしている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、部屋の一部分に床暖房パネルを設置する場合でも、周囲に合板を使用することなく、コスト的に優れた二重床構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明に係る二重床構造は、基礎床上に配設した複数の支持脚の上に、ベースパネル及び捨貼材を介して敷設された床暖房パネルと、該床暖房パネルの周囲に配置されるボーダー部材とが設けられ、これら床暖房パネル及びボーダー部材の上に床仕上げ材が設けられており、前記ボーダー部材はパーティクルボードにより構成されていることを特徴とする。
【0008】
すなわち、床暖房パネルの周囲の床仕上げ材の下地材となるボーダー部材としてパーティクルボードを設けてあるので、床仕上げ材が安定に支持される。このパーティクルボードとは、木材などの小片を主な原料として、接着剤を用いて成形熱圧した板をいい、合板に比べて安価であり、安定して供給される。
【0009】
また、本発明に係る二重床構造において、前記床暖房パネルと該床暖房パネルが接近している壁との間のボーダー部材は、前記ベースパネルの端材から構成されていることを特徴とする。ベースパネルはパーティクルボードにより形成されるので、その端材を利用することにより、パーティクルボードの有効利用ができる。
【0010】
また、本発明に係る二重床構造において、前記床暖房パネルが敷設されている床暖房領域から離れた位置では、前記支持脚の上にベースパネルを介して床仕上げ材が設けられており、このベースパネル及び前記ボーダー部材は、前記床暖房パネルとその下に敷設される捨貼材との合計厚さと同じ厚さに設定され、床暖房パネルの下方に配置される支持脚よりも、前記床暖房領域から離れた位置で前記ベースパネルの下方に配置される支持脚の方が高く設定されていることを特徴とする。
【0011】
床暖房パネルを配置することにより床下が狭くなるが、床暖房領域の周囲においては、背の高い支持脚によってベースパネルを支持して床下高さを大きくすることができるため、設備配管等の施工が容易になる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように構成された本発明の二重床構造によれば、床暖房パネルの周りにパーティクルボードからなるボーダー部材を設けたので、合板を使用することに比べてコストを削減することができる。また、パーティクルボードは、リサイクル材料となる廃材の木片チップを利用して生産されるパネルであるので、生産に際して合板のように貴重な丸太を消費することが無く、地球環境の保護という観点からも優れた効果が得られる。
【0013】
この場合、床暖房パネルが接近している壁との間のボーダー部材には、ベースパネルの端材を使用することにより、パーティクルボードの有効利用ができ、廃材を少なくすることが可能になる。
【0014】
また、床暖房領域から離れた位置では、背の高い支持脚によってベースパネルを支持することにより、高い床下空間を確保し得て、設備配管等を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
これらの図において符号10で示すものは二重構造の下部を構成する基礎床となるコンクリートスラブであって、そのコンクリートスラブ10上には、支持脚となる防振アジャスター11が設けられている。防振アジャスター11は、図3に示すように、コンクリートスラブ10上に設置された防振ゴム12と、防振ゴム12に螺合されてかつ垂直に支持された支持ボルト13と、支持ボルト13の上部に螺合されて支持ボルト13に沿って上下方向に移動自在なねじ部材14と、このねじ部材14の外周部に設けられたフランジ14a上に支持され、ねじ部材14が嵌合状態に固定された矩形ブロック状のパネル受け台座15とから構成されている。このパネル受け台座15の上面には仮止め用の両面テープ(図示略)が設けられている。また、支持ボルト13の上端面には、プラスドライバ等が挿入可能な工具挿入溝16が形成されている。なお、図1には、ねじ部材14のフランジ14aの位置が長さ方向の中間部に設けられているものと、下端部に設けられているものとの二種類の防振アジャスター11が図示されている。
【0017】
そして、このように構成された防振アジャスター11は、図2に示すように四方を壁17によって区画された部屋の中に縦横に一定の間隔をおいて複数並べられるようにして立設されており、これら防振アジャスター11のパネル受け台座15の上に、ベースパネル21等が載置状態に固定される。その際に、ねじ部材14を支持ボルト13に沿って上下に移動させることにより、各防振アジャスター11においてねじ部材14に固定されたパネル受け台座15の高さが調整され、これによりパネル受け台座15上のベースパネル21等とコンクリートスラブ10との間隔が調整され、ベースパネル21等の水平度が調整されるようになっている。
【0018】
また、図1及び図2に示す部屋の中の一部分に床暖房パネル22が敷設されている。この床暖房パネル22の敷設領域においては、防振アジャスター11の上にベースパネル21が設けられ、このベースパネル21の上に捨貼材23を介して床暖房パネル22が設けられ、この床暖房パネル22の上にフローリング材等の床仕上げ材24が設けられている。この場合、図2において破線で囲った部材がベースパネル21であり、このベースパネル21は、その上に設けられる捨貼材23及び床暖房パネル22よりも大きい面積のものが使用され、捨貼材23及び床暖房パネル22の周囲に張り出して設けられている。捨貼材23及び床暖房パネル22は同じ面積に設定される。そして、図1に示すように、この床暖房パネル22から張り出している部分のベースパネル21と床仕上げ材24との間で、床暖房パネル22と部屋の壁17との間を埋めるようにボーダー部材25が設けられている。
【0019】
一方、床暖房パネル22が敷設されている領域以外の部分、つまり床暖房領域に設けられたベースパネル21の外縁部から外側の領域では、防振アジャスター11の上にベースパネル26が支持され、そのベースパネル26の上に床仕上げ材24が敷設されている。このベースパネル26の下方を支持している防振アジャスター(図1で最も右側に配置されている防振アジャスター)11は、床暖房パネル22の下方位置でベースパネル21を支持している防振アジャスター11よりも高いものが使用されている。
【0020】
つまり、床暖房パネル22が敷設されている領域では、防振アジャスター11によってベースパネル21が支持され、そのベースパネル21の上に、捨貼材23及び床暖房パネル22と、その周囲のボーダー部材25とが敷設され、この床暖房パネル22及びボーダー部材25の上に床仕上げ材24が設けられる。これに対して、床暖房パネル22が敷設されている領域から離れた位置では、床暖房領域のベースパネル21の厚さ分だけ高く設定した防振アジャスター11の上にベースパネル26が設けられ、このベースパネル26の上に床仕上げ材24が設けられる。
【0021】
この場合、床暖房領域におけるベースパネル21、及び床暖房領域以外の部分におけるベースパネル26は、防振アジャスター11のパネル受け台座15の上に直接載せられるものであり、この防振アジャスター11の支持ボルト13の上端部はパネル受け台座15から突出する場合がある。その場合、通常は、各ベースパネル21,26のパネル同士の隙間(目地)に防振アジャスター11の支持ボルト13の上端部が配置されるが、パネルの中央部分に防振アジャスター11が配置される場合は、該防振アジャスター11の支持ボルト13の上端部を挿入する貫通孔31が形成される。図1及び図2で符号32で示す部分がパネル同士の隙間(目地)を示している。
【0022】
また、両ベースパネル21,26及びボーダー部材25の材料として、パーティクルボードが使用されている。このパーティクルボードは廃材などから得られる木片チップを接着剤で固めたものである。
【0023】
そして、床暖房パネル22の厚さが例えば12mm、その下の捨貼材23の厚さが8mmであり、ボーダー部材25及び床暖房領域の外側位置に設けられるベースパネル26は、床暖房パネル22と捨貼材23との厚さの合計20mmと同じ厚さに設定されている。この床暖房領域の外側位置のベースパネル26は、床暖房領域に設置されているベースパネル21と同じ厚さであるから、結局、両ベースパネル21,26及びボーダー部材25はいずれも同じ厚さに設定される。したがって、ボーダー部材25により床暖房パネル22の周囲が厚さ方向に隙間なく埋められており、床暖房パネル22の上面とボーダー部材25の上面、さらには床暖房領域の外側位置におけるベースパネル26の上面とは面一に形成されている。この場合、図2において床暖房パネル22が壁17に接近している部分にはボーダー部材25として、パーティクルボードの端材(ベースパネル21,26の端材)が使用されている。そして、これら面一に敷設された床暖房パネル22、ボーダー部材25及びベースパネル26の上に床仕上げ材24が敷設されている。
【0024】
なお、図1において符号34は、壁際に設けられた根太材であり、高さの小さい防振アジャスター11によって支持されている。また、符号35は壁17の床面から所定の高さ範囲に設けられた巾木を示しており、さらに符号36は、防振アジャスター11の間のコンクリートスラブ10上に配設された遮音材であり、グラスウール、ロックウール、不織布等から構成される。
【0025】
以上のように構成された二重床構造では、床暖房パネル22の周囲のボーダー部材25に、パーティクルボードを使用したので、このパーティクルボードにより床仕上げ材24を安定に支持することができる。また、パーティクルボードは、リサイクル材料となる廃材の木片チップを利用して生産されるパネルであるので、生産に際して合板のように貴重な丸太を消費することが無く、地球環境の保護という観点からも優れた効果がある。
【0026】
特に、床暖房パネル22の周囲に、従来の合板に代えてパーティクルボードのボーダー部材25としたことにより、安価に製作することができる。また、その場合、床暖房パネル22が壁17に接近している部分にはボーダー部材25として、パーティクルボードの端材(ベースパネル21,26の端材)が使用されており、施工時に発生する端材を有効利用し得て、廃材を少なくすることができる。
【0027】
また、床暖房パネル22の下地材として捨貼材23とパーティクルボードのベースパネル21とを設けたので、床暖房パネル22を固定するための木ねじを締め込んだとしても、木ねじが抜け落ちることもなく、床暖房パネル22を安定して支持することができる。
【0028】
さらに、床暖房パネル22が設置される領域では、床暖房パネル22の下に捨貼材23及びベースパネル21が設けられるが、その領域以外の部分では、床暖房パネル22と同じ高さ位置のベースパネル26を直接、背の高い防振アジャスター11によって支持したことから、このベースパネル26とコンクリートスラブ10との間の空間を高くすることができ、床暖房パネル22を設置した床でありながら、床暖房パネル22周りの床下高さを大きくすることができ、設備配管の施工が容易になる。
【0029】
次に、以上のように構成された二重床構造における遮音効果を確認するために実施した試験結果について説明する。
【0030】
この試験は、JIS A 1418に定められている「建築物の現場における床衝撃音レベルの測定方法」に基づくものである。床暖房パネルを有しない標準仕様の二重床として、防振アジャスターのパネル受け台座によって20mm厚さのベースパネルを支持し、その上に床仕上げ材として12mmのフローリング材を敷設したものを比較例とした。床暖房パネルを有する本実施形態での提案仕様の二重床としては、図1に示す構造のもので、ベースパネルとしては20mm厚さのもの、床暖房パネルが12mm、捨貼材としての合板が8mm、床仕上げ材を12mmのフローリング材とした。いずれの場合も、コンクリートスラブ上面からフローリング材の上面までの高さを130mmとした。これら「標準仕様」のもの及び「提案仕様」のものについて、63Hz〜500Hzの重量衝撃音の場合と、125Hz〜2kHzの軽量衝撃音の場合とのそれぞれの床衝撃音レベルの低減量を測定した。結果は表1の通りであった。単位はdBである。この表1の結果をグラフに示したのが図4である。
【0031】
【表1】

【0032】
「提案仕様」と「標準仕様」との性能を比較すると、重量衝撃音63Hzについては「提案仕様」は「標準仕様」よりも0.2dB悪くなっている。これは、重量床衝撃音が床下空間が低いと不利な傾向が現れる傾向から、「提案仕様」が「標準仕様」に比べ床暖房パネル12mm+合板8mmの分、床構成が厚く、床下空間が低くなったためと考えられる。一方、軽量衝撃音250Hzについては、「提案仕様」は「標準仕様」よりも0.1dB良くなっている。これは、「標準仕様」に比べ「提案仕様」のほうが、先の床暖房断面構成分だけ厚さが増したことにより面密度が高くなったための差であると考える。
【0033】
この試験結果から、本実施形態による二重床構造は、床暖房パネルのない「標準仕様」のものと重量、軽量の床衝撃音レベル低減量を比較して、差はほとんど認められないことがわかった。
【0034】
一方、この実施形態による二重床構造を採用することにより、コスト削減、資材の安定供給、床下空間確保にともなう配管自由度の向上、省廃材の効果が得られ、これらの効果は、現在の建築環境を取り巻く諸問題、材料単価の高騰、木材資源の枯渇化、リサイクル問題、地球温暖化問題に対応することができ、非常に優れた工法である。すなわち、この実施形態による二重床構造においては、遮音性に関してデメリットが少ないのに対し、その得られるメリットは非常に大きいものである。
【0035】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、実施形態では防振性能を有する防振アジャスター11を支持脚として使用しているが、これに限定されず、通常の支持脚を使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る二重床構造の一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1の二重床構造の平面図である
【図3】図1の二重床構造に使用されている支持脚の拡大断面図である。
【図4】従来の標準仕様の二重床構造と本実施形態の提案仕様の二重床構造との床衝撃音レベルの比較結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0037】
10 コンクリートスラブ(基礎床)
11 防振アジャスター(支持脚)
12 防振ゴム
13 支持ボルト
14 ねじ部材
15 パネル受け台座
16 工具挿入溝
17 壁
21 ベースパネル
22 床暖房パネル
23 捨貼材
24 床仕上げ材
25 ボーダー部材
26 ベースパネル
31 貫通孔
32 隙間(目地)
34 根太材
35 巾木
36 遮音材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎床上に配設した複数の支持脚の上に、ベースパネル及び捨貼材を介して敷設された床暖房パネルと、該床暖房パネルの周囲に配置されるボーダー部材とが設けられ、これら床暖房パネル及びボーダー部材の上に床仕上げ材が設けられており、前記ボーダー部材はパーティクルボードにより構成されていることを特徴とする二重床構造。
【請求項2】
前記床暖房パネルと該床暖房パネルが接近している壁との間のボーダー部材は、前記ベースパネルの端材から構成されていることを特徴とする請求項1記載の二重床構造。
【請求項3】
前記床暖房パネルが敷設されている床暖房領域から離れた位置では、前記支持脚の上にベースパネルを介して床仕上げ材が設けられており、このベースパネル及び前記ボーダー部材は、前記床暖房パネルとその下に敷設される捨貼材との合計厚さと同じ厚さに設定され、床暖房パネルの下方に配置される支持脚よりも、前記床暖房領域から離れた位置で前記ベースパネルの下方に配置される支持脚の方が高く設定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の二重床構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−167611(P2009−167611A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4059(P2008−4059)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(591173833)淡路技建株式会社 (7)
【Fターム(参考)】