説明

二重床用支持脚及びそれを用いた二重床構造並びにその構築方法

【課題】木造住宅において上階の発生音を合理的なコストでかつ十分な程度に遮音する。
【解決手段】本発明に係る二重床構造1は、上階床躯体2に配置された二重床用支持脚3と、該二重床用支持脚の上面に架け渡された矩形木質パネル4と、該矩形木質パネルの上に敷設された床下地材5及び床仕上げ材6とから構成してあり、二重床用支持脚3は、木質系材料からなる正方形の板片を3枚積層して直方体の支持ブロックとし、該支持ブロックの最下層を構成する矩形板片の露出面隅部4箇所に衝撃吸収材をそれぞれ突設して構成してあり、該衝撃吸収材が上階床躯体2を構成する硬質石膏ボード9の上面に当接するように該上階床躯体2に配置してある。支持ブロック33は、幅及び奥行きが300mm、全高が72mmの扁平な形状をなし、板片の面内方向に沿った幅に対する積層方向高さの比率(縦横比)は、72/300=0.24となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として戸建て住宅、特に木造戸建て住宅に適した二重床用支持脚及びそれを用いた二重床構造並びにその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マンションに代表される集合住宅では、カーペット敷きよりも衛生面に優れたフローリング仕上げが一般的となって久しいが、フローリング仕上げでは、上階で生じた床衝撃音に対する下階への遮音対策が重要となり、建築指針では、軽量衝撃源でL−45、重量衝撃源でL−50の遮音性能が推奨されている(「建築物の遮音性能基準と設計指針」、日本建築学会)。
【0003】
最近では、居住快適性に対するニーズとも相俟って、ますます高い遮音性能が要求されるようになっており、厚さ200mmを越える鉄筋コンクリートスラブ(以下、RCスラブ)の上に二重床を構築する仕様が標準的になりつつある。
【0004】
かかる二重床をRCスラブ上に構築するにあたっては、RCスラブの上に平面2方向に所定ピッチで支持脚を配置した上、該支持脚にパーティクルボード等のパネル材を載せ、次いで、該パネル材に床下地とフローリング材を順次敷設するとともに、RCスラブとパネル材との隙間に吸音材を配置するのが一般的である。
【0005】
これに対し、戸建て住宅、特に木造戸建て住宅の場合には、木質系材料の密度がコンクリートよりもはるかに小さいため、遮音性能を高めることが構造的に難しい上、上階で生じる衝撃音が同居家族によるものであるため、上階からの音を遮音したいというニーズ自体が元来少なく、従来、二重床を用いた遮音構造を木造戸建て住宅に適用した事例はほとんどなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−270372号公報
【特許文献2】特開2007−277884号公報
【特許文献3】特開2005−325598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、最近になって梁を構造美として空間表現し、あらわし梁として施工する場合が増加傾向にあるところ、あらわし梁においては、天井を設けないがゆえに上階の床が下階に露出することとなり、上階での衝撃音が直接下階に伝達して下階における居住性が低下するという問題を生じていた。
【0008】
一方、従来の二重床やそれに用いる支持脚は集合住宅のRCスラブに適したものであって、木造住宅にそのまま転用したとしても、合理的なコストで所要の遮音効果を上げることができるかどうか必ずしも定かではない。
【0009】
例えば、集合住宅用に開発された支持脚は、専用のパネル材が必要である、RCスラブの不陸調整のために専用の工具を用いて高さを調整する必要があるといった制約があるため、数十〜数百という大量の住宅戸数に対して集中的に床工事を行うのであれば、トータルとして合理的なコストになり得ても、一戸ごとの工事にならざるを得ない戸建て住宅においては、全体の建築費用に対し、床工事が大きな負担になることが懸念される。
【0010】
加えて、集合住宅用の支持脚は上述したように、RCスラブの不陸調整を行うことを前提として、高さ調整可能になっているものがほとんどであるが、工場でプレカットされた柱や梁で組み上げられた昨今の木造住宅では、このような不陸調整が不要な場合が多く、支持脚の高さ調整機能がオーバースペックになることも想定される。
【0011】
さらに、集合住宅用の支持脚では、専用のパネル材が必要になることから、配置ピッチや配置場所が制限され、かかる制限が、注文住宅では間取りの設計自由度を拘束し、施主の要望に応えることができないことにつながる懸念もある。
【0012】
こういったさまざまな理由により、木造戸建て住宅に適した二重床構造やそれに用いる支持脚の研究開発が急務となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、木造住宅において上階の発生音を合理的なコストでかつ十分な程度に遮音することが可能な二重床用支持脚及びそれを用いた二重床構造並びにその構築方法を提供することを目的とする。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係る二重床構造は請求項1に記載したように、木質系材料からなる矩形板片を複数積層して直方体の支持ブロックを構成するとともに該支持ブロックの最下層を構成する矩形板片の露出面隅部に衝撃吸収材を突設してなり該衝撃吸収材が上階床躯体の上面に当接するように該上階床躯体に配置された複数の二重床用支持脚と、該二重床用支持脚の上面に架け渡され釘留め又はビス留めされた矩形木質パネルと、該矩形木質パネルの上に敷設された床下地材及び床仕上げ材とからなり、前記支持ブロックを前記矩形板片の面内方向に沿った幅に対する積層方向高さの比率が1を下回るように形成したものである。
【0015】
また、本発明に係る二重床構造は、前記上階床躯体を、あらわし梁の上に架け渡したものである。
【0016】
また、本発明に係る二重床構造の構築方法は請求項3に記載したように、木質系材料からなる矩形板片を複数積層して直方体の支持ブロックを構成するとともに該支持ブロックの最下層を構成する矩形板片の露出面隅部に衝撃吸収材を突設し前記支持ブロックを前記矩形板片の面内方向に沿った幅に対する積層方向高さの比率が1を下回るように形成してなる二重床用支持脚を、該衝撃吸収材が上階床躯体の上面に当接するように該上階床躯体に水平2方向に沿って複数配置し、
前記二重床用支持脚のうち、互いに離間する2つの二重床用支持脚の間に吸音材を敷設し、
前記二重床用支持脚の上面に矩形木質パネルを架け渡すとともに、該矩形木質パネルを前記二重床用支持脚に釘留め又はビス留めし、
前記矩形木質パネルの上に床下地材及び床仕上げ材を順次敷設するものである。
【0017】
また、本発明に係る二重床用支持脚は請求項4に記載したように、木質系材料からなる矩形板片を複数積層して直方体の支持ブロックを構成するとともに、該支持ブロックの最下層を構成する矩形板片の露出面隅部に衝撃吸収材を突設してなり、前記支持ブロックを前記矩形板片の面内方向に沿った幅に対する積層方向高さの比率が1を下回るように形成したものである。
【0018】
本発明に係る二重床用支持脚を用いて二重床構造を構築するには、まず、二重床用支持脚を水平2方向に沿って上階床躯体に複数配置する。
【0019】
上階床躯体は例えば、あらわし梁の上に架け渡して構成することができる。
【0020】
二重床用支持脚は、木質系材料からなる矩形板片を複数積層して直方体の支持ブロックを構成するとともに、該支持ブロックの最下層を構成する矩形板片の露出面隅部に衝撃吸収材を突設して構成してあり、上階床躯体に配置する際は、該衝撃吸収材が上階床躯体の上面に当接するように配置する。
【0021】
支持ブロックは、例えば厚さが24mmの構造用合板を300mm角に加工して矩形板片とし、これを3層重ねとすることで構成可能である。衝撃吸収材は、例えば硬度が60゜の天然ゴムを厚さ5mm程度に成形して構成すればよい。
【0022】
二重床用支持脚は、典型例として互いに直交する平面2方向の格子点に配置される。
【0023】
ここで、二重床用支持脚は、支持ブロックを矩形板片の面内方向に沿った幅に対する積層方向高さの比率が1を下回るように、換言すれば、設置状態において扁平になるように形成してあるため、水平方向に沿った設置許容誤差が大きくなる。
【0024】
すなわち、集合住宅用の支持脚に比べ、設置精度が大幅に緩和されることとなり、上階床躯体への設置作業効率が格段に向上する。
【0025】
また、柱、梁といった軸組部材を工場でプレカットし現地で組み上げる場合、上階床躯体の水平精度を1〜3mm程度に収めることが可能であるため、基本的には上階床躯体への設置作業時に高さ調整を行う必要はないし、各二重床用支持脚に高さ調整機能を持たせる必要もない。必要があればスペーサを適宜挿入して高さを調整すればよい。
【0026】
次に、二重床用支持脚のうち、互いに離間する2つの二重床用支持脚の間に吸音材を敷設する。
【0027】
ここで、パネル材の裏面に先付けしておく必要がある集合住宅用の支持脚の場合には、支持脚が配置される予定箇所を避けるようにして吸音材を敷設しなければならないが、本発明においては、既に配置された二重床用支持脚を避けるようにしながら、上方から吸音材を容易に敷設することができる。
【0028】
また、パネル材に先付けする必要がない場合であっても、集合住宅用の支持脚は、そのほとんどが縦長のため、自立させた状態が不安定であり、設置精度が厳しいこととも併せて、支持脚が倒れたりずれたりしないよう、吸音材の敷設に十分気を遣う必要があるが、本発明においては、扁平でかつ設置精度が緩和されているため、支持脚の配置状況にそれほど気を遣うことなく、吸音材の配置作業を進めることができる。
【0029】
次に、二重床用支持脚の上面に矩形木質パネルを架け渡す。矩形木質パネルは例えば構造用合板を用いることができる。
【0030】
次に、矩形木質パネルを二重床用支持脚に釘留め又はビス留めする。
【0031】
ここで、矩形木質パネルは、隣り合う矩形木質パネル同士に隙間が生じないよう、床施工範囲全体にわたって架け渡すが、床施工範囲の縁部領域及び隅部領域においては、上階床躯体との間に拡がる空気層によって音響的な結合が生じないよう、壁材との間に隙間を設け、空気の抜け道を作っておく。
【0032】
次に、矩形木質パネルの上に床下地材及び床仕上げ材を順次敷設する。
【0033】
このように敷設された床下地材及び床仕上げ材は、二重床用支持脚の配置ピッチが支持間隔となるのではなく、二重床用支持脚の配置ピッチから支持ブロックの水平幅又はその二倍の寸法を差し引いた長さが支持間隔となる。
【0034】
そのため、集合住宅用の支持脚に比べ、同じ配置ピッチでの矩形木質パネル、床下地材及び床仕上げ材の支持間隔が短くなり、かくして床の撓みを小さくし歩行感を改善することができる。
【0035】
ちなみに、集合住宅用の支持脚は、防振ゴムからなる台座と該台座に立設されたボルトやプラスチック束からなる支持脚本体と該支持脚本体の頂部に取り付けられたパネル受けとから構成される場合が一般的であるところ、パネル受けは、その中心近傍でのみ、ボルト等の支持脚本体に支持されているため、本願と同様の作用効果を得るためには、パネル受けの面外曲げ剛性を十分に高める必要があり、コスト高は避けられない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施形態に係る二重床構造の全体斜視図。
【図2】図1のA−A線方向に沿う鉛直詳細断面図。
【図3】本実施形態に係る二重床用支持脚の図であり、(a)は側面図、(b)はB−B線方向から見た矢視図。
【図4】二重床用支持脚3の配置状況を示した平面図。
【図5】二重床用支持脚3の間に吸音材51を敷き詰めた様子を示した平面図。
【図6】二重床構造の実証試験の結果を示したグラフ(比較試験体A−1)。
【図7】二重床構造の実証試験の結果を示したグラフ(試験体A)。
【図8】衝撃吸収材の配置形態の違いを調べる試験体を示した図であり、(a)及び(b)は、本試験体Bの平面図と側面図、(c)は比較試験体B−1の側面図、(d)は比較試験体B−2の側面図。
【図9】衝撃吸収材の配置形態に関する実証試験の結果であり、軽量床衝撃音レベルを示したグラフ。
【図10】衝撃吸収材の配置形態に関する実証試験の結果であり、加速度を示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係る二重床用支持脚及びそれを用いた二重床構造並びにその構築方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0038】
図1は、本実施形態に係る二重床構造を示した全体斜視図、図2は図1のA−A線方向に沿う鉛直詳細断面図である。これらの図でわかるように、本実施形態に係る二重床構造1は、上階床躯体2に配置された二重床用支持脚3と、該二重床用支持脚の上面に架け渡された矩形木質パネル4と、該矩形木質パネルの上に敷設された床下地材5及び床仕上げ材6とから構成してある。
【0039】
上階床躯体2は、梁7の上に架け渡された剛床パネル8と、その上に敷設された硬質石膏ボード9とで構成してある。
【0040】
剛床パネル8は、カラマツを用いた厚さ24mmの構造用合板で構成してあり、図1でよくわかるように長手方向が梁7に直交するように、かつ千鳥配置されるように該梁に架け渡してある。また、剛床パネル8の長手側縁部が隣り合う箇所には、図2でよくわかるようにパネル受け材10を梁7の直交方向に架け渡してあり、その上面に剛床パネル8の長手側縁部を載せてビス留めしてある。
【0041】
硬質石膏ボード9は、厚さ12.5mmのものを2枚重ねにして構成してある。
【0042】
ここで、梁7の下方には図2に示すように天井が張られておらず、下階11から見れば、あらわし梁となっている。
【0043】
二重床用支持脚3は図3に示すように、木質系材料からなる正方形の板片31を3枚積層して直方体の支持ブロック33とし、該支持ブロックの最下層を構成する矩形板片31の露出面隅部4箇所に衝撃吸収材32をそれぞれ突設して構成してあり、該衝撃吸収材が上階床躯体2を構成する硬質石膏ボード9の上面に当接するように該上階床躯体2に配置してある。
【0044】
支持ブロック33は、剛床パネル8と同じ構造用合板を300mm角に加工した上、接着剤を用いて積層してあり、幅及び奥行きが300mm、全高が72mmの扁平な形状をなし、板片31の面内方向に沿った幅に対する積層方向高さの比率(縦横比)は、72/300=0.24となっている。
【0045】
衝撃吸収材32は、硬度が60゜の天然ゴムを厚さ5mmに成形してある。
【0046】
矩形木質パネル4は、杉を用いた厚さ24mmの構造用合板で構成してあり、二重床用支持脚3に架け渡された上、該二重床用支持脚にビス留めしてある。
【0047】
床下地材5は、厚さ12.5mmの硬質石膏ボードを2枚重ねにし、その上に厚さ12mmの合板を重ねて構成してある。
【0048】
床仕上げ材6は、施主の好みに応じて適宜選定すればよいが、例えば厚さ12mmのフローリング材を用いることができる。
【0049】
なお、上階床躯体2と矩形木質パネル4に挟まれた中空空間には、必要に応じて、電気通信ケーブル、ユニットケーブルモールド、設備用配管などを配置することができる。
【0050】
本実施形態に係る二重床用支持脚3を用いて二重床構造1を構築するには、まず、厚さ24mmの構造用合板で構成された剛床パネル8を、長手方向が梁7に直交するように、かつ千鳥配置されるように該梁に架け渡してビス留めする。
【0051】
次に、図2に示すように床施工範囲の周囲に壁ボード受け材12を取り付け、次いで、壁ボード13の下縁を壁ボード受け材12に固定する。
【0052】
次に、剛床パネル8の上に1枚目の硬質石膏ボード9を敷設し、ステープルで留め付けた後、2枚目の硬質石膏ボード9をその上に敷設し、同様にステープルで留め付ける。
【0053】
このようにして、剛床パネル8及び2枚重ねの硬質石膏ボード9からなる上階床躯体2を構築したならば、次に、上階床躯体2に二重床用支持脚3を水平2方向に沿って複数配置する。
【0054】
図4は、二重床用支持脚3の配置状況を示した平面図である。同図に示すように、壁ボード13で囲まれ4本の柱41を頂点とした正方形領域を床施工範囲とし、該床施工範囲に計25個の二重床用支持脚3を配置する。
【0055】
これらのうち、床施工範囲の中央領域に配置された9個の二重床用支持脚3については、互いに直交する水平2方向に沿って910mmピッチで配置し、縁部領域と隅部領域に位置する16個の二重床用支持脚3については、中央領域の二重床用支持脚3から377.5mmだけ外周側に離間させた位置(芯々距離で677.5mm)に配置してある。
【0056】
なお、二重床用支持脚3は、下階への音の伝達ができるだけ遮断されるよう、釘やビスによる留め付けは行わず、上階床躯体2の上に置くだけとする。
【0057】
次に、図4に示すように二重床用支持脚3の上面に矩形木質パネル4を千鳥状に架け渡すが、上階床躯体2との間に拡がる空気層によって音響的な結合が生じないよう、壁ボード13との間に隙間を設けて空気の抜け道ができるよう、位置調整を行う。
【0058】
次に、矩形木質パネル4を隅部4ヶ所で、長手側縁部に二重床用支持脚3がくる場合にはさらに2ヶ所で二重床用支持脚3にビス留めする。
【0059】
次に、矩形木質パネル4の上に床下地材5及び床仕上げ材6を順次敷設する。なお、床下地材5及び床仕上げ材6を敷設するにあたっては、壁ボード13との間に隙間が形成されるよう、矩形木質パネル4と同様に位置調整を行う。
【0060】
以上説明したように、本実施形態に係る二重床用支持脚3及びそれを用いた二重床構造1並びにその構築方法によれば、二重床用支持脚3の支持ブロック33を矩形板片31の面内方向に沿った幅に対する積層方向高さの比率(縦横比)が1を下回るように、換言すれば、設置状態において扁平になるように支持ブロック33を形成したので、上階床躯体2に対する水平方向の設置許容誤差を大きくすることができる。
【0061】
すなわち、支持ブロック33を扁平に構成したことにより、矩形木質パネル4を受ける面積が大きくなり、それによって二重床用支持脚3の設置位置が設計値から例えば10mm程度ずれても、荷重支持の点では何ら問題が生じない。
【0062】
したがって、集合住宅用の支持脚に比べ、設置精度が大幅に緩和されることとなり、上階床躯体2への設置作業効率が格段に向上する。加えて、二重床用支持脚3の支持ブロック33が扁平であることにより、設置状態の安定性が高く、かかる設置安定性についても、設置作業効率の向上に寄与する。
【0063】
また、本実施形態に係る二重床用支持脚3及びそれを用いた二重床構造1並びにその構築方法によれば、二重床用支持脚3の支持ブロック33を木質系材料で構成したので、矩形木質パネル4をビス留めすることが可能となり、集合住宅用の支持脚のように専用の工具を用いる必要がなくなる。また、二重床用支持脚3へのビス留めが可能になることにより、矩形木質パネル4は、さまざまな合板類から任意に選択することができるし、そもそも木質系材料で矩形状に製作されたパネル状のものであれば、どんなものでも採用することが可能になる。
【0064】
また、本実施形態に係る二重床用支持脚3及びそれを用いた二重床構造1並びにその構築方法によれば、二重床用支持脚3の支持ブロック33を設置状態において扁平になるように形成したので、該二重床用支持脚による矩形木質パネル4あるいは床下地材5及び床仕上げ材6の支持間隔は、二重床用支持脚3の配置ピッチ、例えば910mmではなく、910mmから300mmを差し引いた610mmとなる。
【0065】
したがって、支持脚の配置ピッチに対する上部パネルの支持間隔は、集合住宅用の支持脚に比べて大幅に小さくなり、かくして床の撓みが抑制され、歩行感が格段に改善される。
【0066】
なお、柱、梁といった軸組部材を工場でプレカットし現地で組み上げる関係上、上階床躯体2の水平精度は1〜3mm程度に収まるので、基本的には上階床躯体2への設置作業時に二重床用支持脚3の高さ調整を行う必要がない。
【0067】
そのため、集合住宅用の支持脚のように高さ調整機能を持たせる必要がなくなり、二重床用支持脚3を低コストで製作することが可能になる。
【0068】
また、本実施形態に係る二重床用支持脚3及びそれを用いた二重床構造1並びにその構築方法によれば、二重床用支持脚3を格子点のみならず任意の場所に配置することができるとともに、矩形木質パネル4との関係においても、設置位置の制限が大幅に緩和されるため、注文住宅においても、さまざまな間取りに対応することが可能となり、施主の要望にも適切に応じることができる。
【0069】
また、本実施形態に係る二重床用支持脚3によれば、衝撃吸収材32を支持ブロック33の下面隅部の4ヶ所に突設するようにしたので、後述するように軽量床衝撃音を大幅に低減することが可能になる。
【0070】
本実施形態では、特に言及しなかったが、二重床用支持脚3を配置した後、該二重床用支持脚に矩形木質パネル4を架け渡す前に、互いに離間する2つの二重床用支持脚3,3の間に吸音材を敷設するのが、二重床構造の遮音特性を向上させる上で望ましい。
【0071】
図5は、二重床用支持脚3の間に吸音材としてのグラスウール51を配置した様子を示した平面図である。
【0072】
このようなグラスウール51を配置するにあたり、パネル材に先付けされる必要がある集合住宅用の支持脚であれば、パネル材が邪魔になって作業性が悪かったが、本変形例によれば、既に配置された二重床用支持脚3を避けるようにしながら、上方から容易にグラスウール51を敷設することができる。
【0073】
一方、パネル材に先付けする必要がない集合住宅用の支持脚と比べても、集合住宅用の支持脚は、そのほとんどが縦長のため、自立させた状態が不安定であり、設置精度が厳しいこととも併せて、支持脚が倒れたりずれたりしないよう、吸音材の敷設に十分気を遣う必要があるが、本変形例においては、扁平でかつ設置精度が緩和されているため、二重床用支持脚3の配置状況にそれほど気を遣うことなく、吸音材等の配置作業を進めることができる。
【0074】
また、本実施形態では、梁7があらわし仕様である場合についての適用例を説明したが、天井を設けた通常の梁7の上に本発明に係る二重床構造を構築することはもちろん可能である。
【0075】
また、本実施形態では、板片31を3層重ねて支持ブロック33を構成したが、積層数については任意であり、場合によっては2層でもかまわないし、逆に4層、5層と重ねてもかまわない。
【0076】
また、本実施形態では、二重床用支持脚3の平面形状を正方形としたが、これに代えて長方形に構成してもかまわない。
【0077】
また、本実施形態では、上階床躯体2や床下地材5の構成要素として、厚さ12.5mmの硬質石膏ボードを2枚重ねしたものを含めたが、これらの枚数は任意であるし、そもそも硬質石膏ボードを上階床躯体や床下地材の構成要素とするかどうかも任意である。
【0078】
また、本実施形態では、支持ブロックの縦横比を0.24としたが、本発明に係る二重床用支持脚の支持ブロックはもちろんこのような形態に限定されるものではなく、縦横比が1を越えない範囲、すなわち縦長ではなく扁平な形状にすることにより、設置安定性の向上や、矩形木質パネルの支持間隔の短縮といった本実施形態の作用効果を同様に享受することができる。
【0079】
(実証試験その1)
図1乃至図3を用いて説明した実施形態に係る二重床構造1において、二重床用支持脚3,3の間に吸音材としてのグラスウール51を敷設したものを試験体Aとして床衝撃音の性能試験を行った。また、梁7の上に厚さ24mmの剛床パネル8を架け渡し、その上に厚さ12.5mmの硬質石膏ボードを敷設した後、厚さ12mmのフローリング材を敷き込んだものを比較試験体A−1とした。
【0080】
図6は比較試験体A−1の結果を示したグラフであり、同図でわかるように、重量衝撃音については、床衝撃音がL−80となり、軽量衝撃音についてはL−90であった。
【0081】
これに対し、試験体Aでは図7に示すように、重量衝撃音についてはL−70、軽量衝撃音についてもL−70となり、重量床衝撃音性能で10dB、軽量床衝撃音性能で20dB、それぞれ改善できることがわかった。
【0082】
(実証試験その2)
衝撃吸収材32の効果を確認すべく、図8(a),(b)に示すように、4つの二重床用支持脚3をそれぞれの中心が910mm角の正方形の隅部に一致するように平面配置するとともに、本実施形態と同様、矩形木質パネル4、床下地材5及び床仕上げ材6の順に積層してなる910mm角の模擬床材81をそれらの隅部が4つの二重床用支持脚3の各中心に一致するように該二重床用支持脚の上に載せて試験体Bを製作した。
【0083】
一方、比較試験体として、衝撃吸収材32を突設しない比較試験体B−1と(同図(c))、衝撃吸収材82と同じゴムで形成されたシート材を支持ブロック33の下面全体に設けた比較試験体B−2(同図(d))とをそれぞれ製作した。
【0084】
試験は、模擬床材81の中央にタッピングマシンを設置することで、下階を受音室として音圧レベルを計測し、軽量床衝撃音データを取得するとともに、模擬床材81の下方に加速度計を設置し、加速度の比較を行った。
【0085】
軽量床衝撃音データを図9に、加速度試験の結果を図10に示す。
【0086】
これらの結果のうち、図9からは、衝撃吸収材32を突設しない比較試験体B−1と全面にゴム材を設けた比較試験体B−2との間で大差が見られないものの、試験体Bは、比較試験体B−1や比較試験体B−2よりも軽量床衝撃音レベルが下がっていることがわかる。
【0087】
また、図10からは、試験体を設置したフロアでの加速度が、比較試験体B−1、比較試験体B−2、試験体Bの順に下がっていることがわかる。
【0088】
これらの結果、試験を行ったフロアが既に遮音対策が施されたものであるがゆえに大差が出なかったものの、衝撃吸収材32を四隅に突設する本実施形態の作用効果は実証できた。
【符号の説明】
【0089】
1 二重床構造
2 上階床躯体
3 二重床用支持脚
4 矩形木質パネル
5 床下地材
6 床仕上げ材
7 梁
8 剛床パネル(上階床躯体)
9 2枚重ねの硬質石膏ボード(上階床躯体)
31 板片(矩形板片)
32 衝撃吸収材
33 支持ブロック
51 グラスウール(吸音材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質系材料からなる矩形板片を複数積層して直方体の支持ブロックを構成するとともに該支持ブロックの最下層を構成する矩形板片の露出面隅部に衝撃吸収材を突設してなり該衝撃吸収材が上階床躯体の上面に当接するように該上階床躯体に配置された複数の二重床用支持脚と、該二重床用支持脚の上面に架け渡され釘留め又はビス留めされた矩形木質パネルと、該矩形木質パネルの上に敷設された床下地材及び床仕上げ材とからなり、前記支持ブロックを前記矩形板片の面内方向に沿った幅に対する積層方向高さの比率が1を下回るように形成したことを特徴とする二重床構造。
【請求項2】
前記上階床躯体を、あらわし梁の上に架け渡した請求項1記載の二重床構造。
【請求項3】
木質系材料からなる矩形板片を複数積層して直方体の支持ブロックを構成するとともに該支持ブロックの最下層を構成する矩形板片の露出面隅部に衝撃吸収材を突設し前記支持ブロックを前記矩形板片の面内方向に沿った幅に対する積層方向高さの比率が1を下回るように形成してなる二重床用支持脚を、該衝撃吸収材が上階床躯体の上面に当接するように該上階床躯体に水平2方向に沿って複数配置し、
前記二重床用支持脚のうち、互いに離間する2つの二重床用支持脚の間に吸音材を敷設し、
前記二重床用支持脚の上面に矩形木質パネルを架け渡すとともに、該矩形木質パネルを前記二重床用支持脚に釘留め又はビス留めし、
前記矩形木質パネルの上に床下地材及び床仕上げ材を順次敷設することを特徴とする二重床構造の構築方法。
【請求項4】
木質系材料からなる矩形板片を複数積層して直方体の支持ブロックを構成するとともに、該支持ブロックの最下層を構成する矩形板片の露出面隅部に衝撃吸収材を突設してなり、前記支持ブロックを前記矩形板片の面内方向に沿った幅に対する積層方向高さの比率が1を下回るように形成したことを特徴とする二重床用支持脚。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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